血の衝動は友をも奪う

    作者:篁みゆ

    ●共に堕ちる
     いつもの待ち合わせ場所は、学校の裏門の近くの空き地。夜に女の子に来てもらうなんてかっこ悪い気がしたけれど、それでも会いたいと彼女が言ってくれたから、佐雅(さが)は飛香(あすか)と定期的にそこで待ち合わせをしていた。
     今日は久々の逢瀬のはずだった。寮の自習時間にこっそり抜け出し、待ち合わせ場所に向かったのだ。同室の林を拝み倒して、万が一の時は体調が悪くて寝てるって言い訳まで頼んだ。奴は「リア充め!」なんて言いつつも仕方がないなぁと協力してくれて。
    「飛香……」
     携帯の待ち受け画面を見てその名を呼ぶ。恥ずかしいから嫌だって言ったのに、飛香が無理やり写真を待ち受けにしてしまったのだ。
     数日前かかってきた電話を頭の中で繰り返す。飛香のお母さんからだった。飛香が家は出たのに学校に行っていない、帰ってきていない、と。もし飛香が来たら連絡して欲しいと言われ、もしかしたら今日の待ち合わせには来るかもと思ったけれど……佐雅のタイムリミットぎりぎりになっても飛香は姿を見せなかった。
     これ以上外にいては夜の点呼に間に合わなくなる。同室の林にもこれ以上迷惑を掛ける訳にはいかない……ああ、部屋に戻って林にも相談してみようか、そう思ったその時。
     ドクンッ……。
     心臓が大きく跳ねた。思わず胸を抑える。なんだろう、自分の身体なのに違和感を覚える。そしてこの、飢餓感にも似た気持ちはなんだろう。夕食ならきちんと取ったはずなのに。
     とりあえず早く寮に帰ろうと足を進める。飛香を心配する心の何処かで、なぜか酷く喉が渇いていた。

    「よく来てくれたね」
     神童・瀞真(高校生エクスブレイン・dn0069)は灼滅者達が集まると、和綴じのノートを繰る。彼が動くとミント系のすっとした香りが不快にならない程度に室内に広がった。
    「一般人が闇堕ちしてヴァンパイアになる事件があるよ」
     通常ならば闇堕ちしたダークネスからはすぐさま人間の意識は掻き消える。しかし今回のケースは元の人間としての意識を残したままで、ダークネスの力を持ちながらダークネスには成りきっていないのだ。
    「彼を闇堕ちから救い出してほしい。けれども完全なダークネスとなってしまうようなら、灼滅をお願いするよ」
     手遅れになる前に彼をKOすることで、闇堕ちから救い出す事ができる。
    「彼の名は、花守・佐雅(はなもり・さが)。高校1年生男子だよ。彼には恋人がいてね。一つ上の幼馴染だった高井・飛香(たかい・あすか)君、彼女との関係が数年前に幼馴染から恋人へステップアップしたらしい」
     両親が海外へ単身赴任するということで寮のある高校へ入った佐雅だったが、なかなか自由に会えなくなっても飛香との関係は続いていた。しかし飛香は数日前から行方不明になっている。今日の待ち合わせに来るんじゃないかと思って待ち合わせ場所に行った佐雅だったが、彼女は現れなかった。
    「彼女はどこか遠くで闇堕ちした。と同時に佐雅君も闇堕ちしたんだよ」
     だが、飛香とは違い、佐雅はまだ助けることができる。
    「彼は学校の敷地を通過して寮へ向かっているよ」
     佐雅は裏門から学校の敷地に入り、学校の敷地を突っ切って寮の敷地へと向かおうとしている。
    「彼が寮へと向かう途中、渡り廊下のある中庭を通るよ。そこで接触するのが最もいいタイミングだね」
     だが渡り廊下の近くにあるフェンスを乗り越えれば、ショートカットして寮の敷地へはいることができる。注意が必要だ。
    「時間的に、まだ仕事をしている先生がいないとも限らない。職員室は離れているけれど、万が一がないとも限らないからね」
     佐雅をそのまま寮に向かわせれば、まず犠牲になるのは同室の林という友人だろう。そして彼が寮内を血で染め上げるのは想像に難くない。大切な友人に相談を持ちかけようと思いながらもその血がほしいという欲求に耐えられなくなってしまえば……もう助けられない。
    「佐雅君はダンピールの皆と同じサイキックを使うよ」
     上手く彼の心に言葉を染み込ませれば、彼の力を減ずることができるかもしれない。
    「幼馴染で恋人でもある相手が行方不明だということは彼に衝撃を与えているだろうね。けれどもそれを相談したい相手を傷つけてしまうという悲劇は……止めてほしいと思うよ」
     瀞真は悲しそうに、小さく微笑んだ。


    参加者
    セリル・メルトース(ブリザードアクトレス・d00671)
    宗形・初心(星葬薙・d02135)
    三芳・籐花(和ぎの揺籃・d02380)
    紫・アンジェリア(魂裂・d03048)
    土方・士騎(隠斬り・d03473)
    鮎宮・夜鈴(宵街のお転婆小町・d04235)
    鎮守・珀都(黒染めの白猫・d09453)
    久保田・紅(タイトロープ・d13379)

    ■リプレイ

    ●おもい
     夜の学校は不気味なもので、大勢でいるとはいえ電気の消えた校舎と校舎の間を歩くのは、あまり気持ちのいいものではない。それでも8人もいれば、多少は気が紛れるものか。
    「相も変わらず胸クソ悪ぃナ、ヴァンパイアはヨ」
     目的の中庭につくとフェンスの位置を確認しながら、久保田・紅(タイトロープ・d13379)は吐き出すように呟く。
    「……カノジョと『再会』するチャンス作り程度は手伝ってやるか」
     佐雅を助けだして灼滅者として連れ帰れば、いつか彼は飛香と再会できる日が来るのかもしれなかった。それがたとえ、辛い再会になろうとも。
    「ここにもまた、吸血鬼によって大切な者を失いかけている方が……私の二の舞には決してしません。助けます」
     強く誓うのは鎮守・珀都(黒染めの白猫・d09453)。幼い頃ヴァンパイアに血族を皆殺しにされた彼は、ヴァンパイアの被害者になろうとしている佐雅をどうしても救いたいという思いが強い。
    (「全てを救う、そんな事がただの夢物語なのは知っている。其れは所詮独り善がりだ。救う救えないを言い出した時点で押し付けがましい」)
     心の中で呟くのは、戒めにも似た言葉。
    (「けれど、だからこそ、救えるものを救う。悪夢の連鎖を、此処で断ち切る」)
     セリル・メルトース(ブリザードアクトレス・d00671)は強い決意の元に声を発した。
    「――さあ、いこうか」

    ●ことば
     灼滅者達は佐雅のフェンス超えを警戒して、フェンス側と中庭側の両方へ人員を割いて待機をしている。ここに到着するまでの間、幸いにも他の人間が中庭に近づいてきそうな様子はなかった。注意していたからか、校内へ侵入時も誰かに見咎められた様子はない。後は佐雅の到着を待つだけだ。
     暫く暗闇に潜むようにすると、校門の方から駆ける足音が聞こえてきた。静寂の中に足音はよく響く。それでも咎められぬように音を抑えているつもりのようだった。
     足音が近くなる。中庭に入ってきた人影は渡り廊下を横切ることを目指しているようだ。その渡り廊下の先には学校の敷地と寮の敷地を遮っているフェンスがある。その人物――佐雅はフェンスを目指しているようだった。だが、中庭には数人の灼滅者達が待機している。
    「!?」
     突如佐雅の行く手に現れた四人の人物は月に照らされて。佐雅と同じ学生くらいに見えた。だがこんな時間に未だ敷地内にいるなんて、彼が少し戸惑いを見せて足を止めたその隙を突いて、珀都は穏やかに口を開いた。
    「こんばんは、月が綺麗ですね」
    「あ、ああ……こんばんは」
     つられたように挨拶を返す佐雅。土方・士騎(隠斬り・d03473)は殺界形成を発動させて念の為の人払いとし、言葉を投げかける。
    「少し話をしよう」
    「すいません、俺、時間がなくて……」
     はっと思い出したように足を動かす佐雅はすっと士騎の横を抜けていこうとした。彼女はすれ違いざまに言葉の続きを紡ぐ。
    「その餓え、焦りが何者か、知りたいのだろう」
    「え……」
     びくり、佐雅が反応して足を止めて士騎を見る。そっと三芳・籐花(和ぎの揺籃・d02380)が笑顔を崩さずに声をかける。
    「一度深呼吸して、あなたの大切な人たちを思い浮かべてみて。このまま寮へ戻っては、大切な友人を傷つけてしまうことになる」
    「俺が? 林や他の友達を傷つける? まさか」
     彼自身、自分の中の変化は自覚してるはずだ。だがそれはきっとまだ微々たるもので、自分がおかしいとは認めたくないのかもしれない。
    「嘘じゃないのよ。花守は今までの花守ではないのよ。ダークネスという――」
    「あっ!」
     紫・アンジェリア(魂裂・d03048)が現状を優しく説明しようとしたその時、佐雅が再び足を動かした。四人を振り切るようにしてフェンスへと向かう。
     だが、彼の向かったフェンス側にも灼滅者達はいた。コイントスをしていたコインをキャッチして、紅は他の仲間にアイコンタクト。
    「しっかり話を聞いた方が身のためだと思うゼ?」
    「あなたがそのままで居ると、血を求めて殺戮に走る事になります」
    「!? どういうことだ……俺はそんなこと」
     宗形・初心(星葬薙・d02135)の言葉に、佐雅は明らかに動揺を見せた。
    「しないと言い切れますの? 身体の中に渦巻く衝動、自覚されてますよね?」
     そっと、鮎宮・夜鈴(宵街のお転婆小町・d04235)が告げる。佐雅は胸に手を当てるようにして、ぐっと下唇を噛んだ。
    「その衝動の正体は、闇堕ちというものです。大丈夫ですわ、今ならまだ治す方法は有りますの」
    「ダークネスってやつが花守の中で悪さをしてるんだゼ」
    「貴方は自分の中に眠っていた力に目覚めただけ。ですが、このままだと人外の者に変化してしまいます。今は、私達の事を信じて貰えませんか?」
     夜鈴や紅、初心が順に現在佐雅が置かれている状況を説明していく。セリルは自分にはあまり有効な内容が思いつかない、と余程の矛盾がない限りは黙っている。と、中庭組の四人も追いついて、佐雅の背中に声をかけ始めた。
    「不安、ですよね。身体に満ちる力、どう使っていいのかわからないと思います」
     ひとつひとつ言葉を選ぶように、籐花は語りかける。佐雅は自分の掌を見て、灼滅者達を見て。戸惑うように、灼滅者達の言葉をそのまま受け入れていいものか迷うように視線を泳がせている。
    「私達も同じような能力を持っていますの。大丈夫ですわ、心細くなどありません」
    「……同じ? おな……!?」
     夜鈴の言葉に少し希望を見出したのだろうか、しっかりと視線を固定した佐雅だったが、次の瞬間、自分の身体を抱きしめて苦しむように身体を折った。口の端からは呻き声のようなものが漏れ出ていて、常ではない様子を感じさせる。素早く珀都がサウンドシャッターを使い、佐雅の様子の変化に気がついた灼滅者達は順に解除コードを唱えていく。
    「カノジョの居場所が分かる方法なら有るゼ? だが今のままじゃ話を聞ける状態じゃねぇか」
     紅の言葉に答えるように顔を上げた佐雅の表情は、今までの彼とは違って歪んだものになっていた。

    ●かたち
     佐雅が出現させた赤き逆十字は夜鈴を狙い、引き裂いた。
    「見極めよう、君の覚悟を」
     士騎が素早く反応し、胸前に差し出した刀を抜く。そして『蝕喰』に影を宿し、佐雅を斬りつける。佐雅にしか見えぬトラウマが彼を襲う。
    「それが君の闇、焦りと餓えの正体だ」
     続くようにしてアンジェリアが『残菊』を抜き放ち、闇に溶けこむようなしなやかな足どりで佐雅へと接近する。
    「私も花守と同じよ」
     纏わせたのは緋色のオーラ。彼が持つ技と同じ。
    「これはね……私達ダンピールが纏って、はがせない、奪い連れ去る定の色よ」
     独りじゃない、そう示すように『残菊』を操る。
    「貴方に恨みはないけれど、その闇の力、削ぎ落とさせて頂きます」
     初心の影業が鋭い刃となって佐雅の肩を斬り裂く。セリルは自らを覆うバベルの鎖を瞳に集中させ、自身の力の向上をはかった。
     夜鈴の片腕が異形化をみせる。巨大になったその腕を見せるようにして、彼女は佐雅に語りかける。
    「身は鬼に変じても、誰かを想う気持ちがあれば、人でいられますの。ご友人を想って迷っていらっしゃるのでしょう? その優しさは、貴方が人である証ですのよ!」
     凄まじい力で殴りつけられた佐雅はのけぞるように身体を傾かせて。その間に籐花は珀都にシールドを与えた。
    「貴方には……私のようになってほしくないんです」
     届け届け、言の葉に乗せた想い。佐雅はきっと自分の中のダークネスに抗おうとしている。そう信じて珀都は慈愛を込めた攻撃を加える。
    「テメーが『堕ち』たらカノジョは助けらンねェゾ?」
     紅の影業が佐雅を縛り付ける。動きを阻害されて表情を歪めた佐雅だったが、それでも何とか再び逆十字を出現させて紅を引き裂く。
    「呑み込まれば、全てを忘れてしまう。堕ちて別人となれば、高井君への思いも消えてしまう」
     士騎は高速の動きで佐雅の死角へ回りこみ、斬り裂く。
    「吸血鬼は最も近しい者を道連れとする。その業は深い。しかし彼女は花守君、君を選んだ」
     その意味がわかるはずだと佐雅に語りかける。彼の歪んだ表情の奥に、飛香を思う本当の佐雅を探しながら。
    「血への渇望……飢えを癒す方法ならあるの。飛香に愛された佐雅ならできるでしょう?」
     上段の構えから真っ直ぐに素早く繰り出される一撃。アンジェリアのそれは、佐雅を覆うモノを両断したくて。
    「このまま、飛香より血を望む――飛鳥を愛した事を忘れた男に、なるつもり?」
     欲しいのは血じゃないはず。そう、彼が望むのは……。
    (「私の勤めは、メディックとして皆の生命線を守ること!」)
    「誰も倒れさせたりはしない!」 
     初心が浄化をもたらす優しき風を呼び込む。風に包まれた中衛の夜鈴と紅の傷が癒されていく。
    「此処で、断ち切る!」
     素早く佐雅に肉薄したセリルが、ありったけの魔力を流しこんで彼の体内を蹂躙していく。苦しげに呻き、身体を折る佐雅。
    「変わらないことが、貴方の戦いなのですわ。恋したままの貴方がいる日常に、飛香様を連れ帰る、そのときのために」
     夜鈴の優しい言葉が、優しい攻撃が佐雅を打つ。きっと、彼には届いている、そう信じて。
    「使い方を間違えれば悲劇にもつながるその力、どうか守るために使ってください」
     彼の不安を和らげるためになるべく笑顔でいたい、籐花は優しい表情を崩さずに佐雅へと訴える。彼とて人を傷つけるために力を振るいたくはないはず。気弱な自分を奮い立たせて、届け届けと願いながら変化させた腕で彼を打つ。目覚めさせるように。
    「貴方の大切な人達の為にも……ここで負けないで下さい」
     珀都の言葉はまっすぐに佐雅へと向かう。いや、ダークネスの後ろに隠れさせられてしまっている本当の佐雅に。仲間達を援護するように射撃を続けながら。
    「衝動を御してみろヨ。こんな風にナ!」
     紅が放ったのは赤きオーラの攻撃。佐雅を挑発するように見えるが、裏には彼を奮い立たせる気持ちを持って。テメーならできるよナ――そんな想いを抱いて。
    「うう……」
     呻き声を漏らした佐雅はふらつきながらもまるで紅の挑発に乗るように、緋色のオーラを纏う。その一撃をセリルに振り下ろそうとしたその時、誰かが二人の間に割り込んだ――珀都だ。佐雅の想いをすべて受け止めるように、その攻撃を受け止めて。
     珀都の傷がそれほど深く見えないのは説得が彼に届いているからだろうか。士騎は拳にオーラを纏わせて佐雅の腹部を打つ。連打による激しい攻撃とは裏腹に、彼女はまっすぐに落ち着いて言葉を紡いだ。
    「君が今力を持ったのは、愛されていたということ。深淵の闇の果てで彼女が君を縛るとしても」
     佐雅が闇堕ちしかかっているのは、飛香に愛されていた証。
    (「愛の証、ね……」)
     アンジェリアはふと思う。自らの額にあるハートマークを。今はメイクで自分で書いているが、彼女にとっては大切な大切な証。
    「今の花守が、愛された印。それだけで充分よね?」
     そう、彼自身が愛された証なのだ。影が彼を捕えるように動く。初心が癒しの矢を珀都へと放つ。その間にセリルは再び佐雅へと魔力を叩き込んだ。彼の体内で爆ぜた魔力が、彼に悲鳴を上げさせなかった。
    「うぅ……」
     呟くように漏らした後、佐雅の身体は大きく傾いで、そのまま重力に従って倒れ伏した。

    ●ゆくえ
     目を覚ました佐雅を見つめていたのは、場所の遠近あれども8対の瞳だった。ゆっくり今までのことを思い出そうとしている彼を、セリルが背に手を当てるようにして起き上がらせる。
    「私たちは、貴方と同じ様な異能を持った学生、武蔵坂学園の者です」
    「武蔵坂……?」
     初心の言葉に佐雅は校名を繰り返すようにして。
    「彼女も今、どこかで……貴方と同じように吸血鬼になろうとしています」
    「飛香が!?」
     珀都に掴みがからんばかりの勢いで体勢を直した佐雅の瞳は不安に揺らいでいる。
    「飛香さんを探す方法はあります。彼女を救う役目は、花守さんのものだと思います」
     ゆっくりと噛み締めるように告げた籐花の言葉。紅が補足するように、学園なら飛香の情報がてにはいりうる予測手段があること、その予測手段によって佐雅の行動も予測できたことを教える。
    「カノジョに会いテェなら学園に来い。情報くらいは入手できんゼ? 断っとくが『手遅れ』なら俺は灼滅する……が救出の目はあるかもナ? ……後はテメー次第だ」
     じっと、紅は佐雅の瞳を見据え。佐雅も紅の瞳を見据え返す。
    「佐賀様が恋人を救いたいと願うなら、私もその手を取りますのよ。飛香様と同じ闇の淵に苦しみ、それでも血の衝動に抗った佐賀様の強さなら、大切な方に届くと思いますの」
     そっと横から言葉を添えたのは夜鈴。明るく、未来を思わせる声色で続ける。
    「大丈夫。きっと運命など、こてんぱんにしてしまえるのですわ」
    「縁は絆として新たに結ばれる。君が彼女を忘れなければ。君の覚悟は私が支えよう」
     士騎の心強い言葉。まるで背を押されているようだ。
    「飛香は探して会いにいけばいいもの。一緒に探そう?」
    「探せば……うん」
     小首を傾げるようにして提案するアンジェリア。佐雅はその言葉を口の中で繰り返して。
    「私達と来てください……飛香嬢を救えるのは、佐雅、貴方だけなのですから」
     珀都の言葉は佐雅への信頼が籠められた言葉。差し出されたその手は彼を導く手。佐雅は戸惑いを見せずにその手を取ろうとして、自らの手が汚れていることに気がついた。手をはたいて汚れを落とし、今一度珀都の手に手を差し出して。
    「……ありがとう、助けてくれて」
     八人の顔を、一人ひとりじっくりと見て、もらった思いを受け止めたことを視線で伝える。
    「あと……これからよろしく、でいいのかな」
     こそばゆそうに告げて珀都の手をとった佐雅に、灼滅者達はめいめい肯定を返し。ある者は微笑みをも返す。
     幼馴染が、恋人がダークネスになってしまったということは彼にとって辛い事実だろう。
     だが彼は一人ではない。少なくともここに8人の仲間がいるから。
     夜風はまだ冷たいが、夜の闇は見守るように暖かく、彼らを包み込んでいた。

    作者:篁みゆ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年2月28日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 10/感動した 3/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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