スクールチャンネルレボリューション

    作者:黒柴好人

    「な、なんだと……こんなゲーム、一切やったこともみたこともないのに、何故光景が脳裏に浮かぶの!?」
     某私立中学。
     ここには複数のダンス部が存在する為か、部に所属していてもそうでなくても、日夜校内でその腕を競い合ったりしている。
     今まさに、部対抗のダンスバトルが行われ、そして決着しようとしていた。
    「くうっ、これ以上動きについていけな……ぐあああああっ!!」
     1人の女子生徒が体育館の床を滑っていった。
     体育館の床はつるつる滑るようで実の所摩擦係数が高い。女子生徒は数mと動かずに止まった。
    「あっは☆ もう動けなくなっちゃったの? ダメダメだねぇ~」
     敗北した少女を見下ろすのは、対戦相手であったもう1人の少女。
    「ぐぬぅ、あんたはシューティングスターズの中でも最も最弱のダンサーだったはず……コメットドロップで第4位の実力を持つ私が負けるはずが……」
    「んふふー、それはヒミツだよっ。次はミーティアライトの子を潰しに行かなくちゃ!」
     星が降りすぎである。
    「それじゃあばいば~い!」
    「ま、待て……!」
    「あ、そっか。あたしに負けたら罰ゲームを受けるって約束したもんね~」
    「いややっぱ待たなくていい!」
     きらきらと輝く少女が指を鳴らすと、どこからともなく2人の男がやって来た。
     どちらもこの中学の制服を着ている。
    「「クックック……」」
    「んじゃ、あとはまかせたよ~」
    「ちょ、何だこのムサい男たちは……なに、なにをするつもり――!」
     グッドラック、と無邪気な笑顔を残し、少女――桜鳥・舞(おうどり・まい)は去っていった。
    「ククク」
    「フフフ」
    「あれ、さっきまで笑い声が統一されていたはず……! いや、来ないで……!」
     敗北した少女は、じりじりと男たちに詰め寄られ……。
    「これから毎日、貴様にはこのネコミミとネコしっぽを付けて語尾に「にゃん♪」と付けて喋って貰おうか……ヌフフ」
    「グフフ、あざとい。あざといのう」
    「い、いやあああぁぁぁ!!」
     こうして、彼女は学校内での地位を失う、ある意味極刑に近い罰ゲームを受けざるを得なかったという。
     
    「突然だが、音楽は好きか?」
    「大好きだよ!」
     神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)は灼滅者たちにそう問いかけた。
     そして即答する観澄・りんね(中学生サウンドソルジャー・dn0007)。
    「なら、ダンスは?」
    「大好きだよ!」
     ヤマトの問いにやはり即答するりんね。
    「ではゲーム音楽は……!」
    「大……え、ゲーム?」
    「今回はそれらがキーワードになる依頼になるな」
     とある中学校で闇堕ちしそうな一般人がいるのだとヤマトは状況を説明する。
    「知っての通り、基本的に闇堕ちした奴はすぐに人間としての意識は消え去るが……どうやらこの桜鳥・舞はまだ人間の意識を遺しているらしいな」
    「ということは、まだ助けられるんだよね?」
    「ああ、その通りだ。灼滅者としての素養があれば、倒した後に生き残る事ができるだろうな」
     りんねの言葉に頷くヤマト。
     今回の主要人物たる舞は中学2年生。彼女が通う中学校に複数存在するダンス部のひとつ、『チーム・シューティングスターズ』に所属している。
     だが、先輩や同学年の友人は勿論、後輩にまでダンスの腕前が劣っており、最も実力がないのだとチーム内外で噂になっていたという。
    「しかしダークネスの力が舞を変えた。それも厄介な事に彼女にとって良い方向に、な」
    「むう。淫魔の力で魅力とかが人一倍高くなっちゃったりしたんだね」
    「その力を利用し、これまで自分をコケにしていた相手にダンスバトルを挑んでは勝利し、敗北した者に屈辱的な罰ゲームを強要しようとしているらしい」
     その執行は配下……というかファンの男子生徒にやらせるようだ。
     直接手を下さないというスタイルだろうか。
    「とにかく、舞を救うためにはこの負けたら色々な意味で地獄のダンスバトルに挑み、彼女に負けを認めさせる必要があるというわけだ」
    「そっか。ダンスバトルかぁ……ちょっとだけ面白そうだね!」
    「趣旨は凝っているよな。だが、ダンスのお題は向こうが指定してくるからな……こっちは完全にアウェーな状況だぜ」
    「テーマがあるんだね」
    「そうだ。そのテーマこそ、ゲーム風の音楽を使った創作ダンスだ!」
     既存、オリジナルを問わずゲーム風の音楽を使い、その雰囲気や物語性などを表現したダンスを求められる事になる。
     舞は昔のRPGの戦闘BGMや知り合いの妹が作ったというオリジナルゲームの音楽から激しく、時には可愛く、巧みなステップと共に独特の世界観を構築する事を得意としている。
     彼女と同じ音楽を使ってもいいし、自分たちで音源を用意しても構わない。
     それぞれ別々の音で踊っても、同じ音でも戦ってみせるという舞の姿勢は、絶対的な勝利を確信しているからであろう。
    「ダンスバトルって、部外者の私たちが挑んでも受けてくれるのかな?」
    「それなら問題ない。この学校はダンスの対外試合の受け入れに寛容みたいでな……灼滅者やダークネスといった事情を抜きにしても違和感を与える事無く学校に潜入できるぜ」
     実に変わった校風だが、そもそも武蔵坂学園が特異すぎるのでそれをどうこう言えたものではないだろう。
    「お前達は既に勃発しているダンスバトルが終了した時点で乱入してもらう事になる」
    「途中で割り込むのは失礼だもんね」
    「あ、いや、そうしないとバベルの鎖の効果で察知されるって方が大きいんだが……」
     ところで、とりんねが手を挙げる。
    「ダンスバトルの勝ち負けってどうやって決まるの?」
    「審判がいればいいんだが……これは言わば裏のダンスバトルだからな、全ては舞の気分や気持ち次第らしい」
    「うーん……すごいダンスで対抗すればいいのかな」
    「精神的なダメージを与えて屈服させる方法もあるな。そのあたりはよく考えてみてくれ」
     灼滅者側が勝利すれば、負けを認めたくない舞が戦いを挑んでくる。
     それをも華麗に打ち負かしてやればいいのだ。
    「それにしてもダンスかぁ。ゲーム音楽はよくわからないから、私はギターで音楽担当しようかなっ!」
    「役割分担も重要だな。このルービックキューブのブロック一つ一つのように、な!」
    「ん?」
    「……」
     無理やりルービックキューブを絡めてみたかっただけだった。


    参加者
    エステル・アスピヴァーラ(白亜ノ朱星・d00821)
    館・美咲(影甲・d01118)
    風水・黒虎(黒金の焔虎・d01977)
    セーラ・シュガーポット(ミーアンドマイテール・d03532)
    葉月・十三(高校生殺人鬼・d03857)
    椎葉・武流(ファイアフォージャー・d08137)
    天城・兎(青龍偃月刀・d09120)
    黒崎・白(モノクロームハート・d11436)

    ■リプレイ

    ●チューといったら
     あざとく生きる事を強要された少女を尻目にダークネスとなりかけの少女、桜鳥・舞が次の標的に向けて歩く、その時だった。
    「ちょっと待った! 俺たちと勝負してもらうぜ!」
     どこから現れたのか。
     片手を突き出したポーズの少年――椎葉・武流(ファイアフォージャー・d08137)が舞を制した。
    「キミたち、だれ?」
    「俺たちは武蔵坂学園から来たダンスチーム、『スターセイバー』だ!」
    「ふぅ~ん?」
     武流の宣言に、舞は目を細めてチームメンバーたる灼滅者を眺める。
    「いきなり現れ、不躾なのは承知じゃが……お主にダンスバトルを申し込みたいのじゃ」
    「この学校に物凄いダンサーがいるって噂を聞きつけてな! それが君だろ?」
     館・美咲(影甲・d01118)と風水・黒虎(黒金の焔虎・d01977)が一歩前に出て話の補足を行う。
    「いいよ♪ まあキミたちが勝てるとは思えないけど、それでよければ……ね☆」
     新しい遊び相手を見つけたように、舞は無邪気な笑顔になった。
     舞はファンという名の強化一般人に対し、舞は先程の敗北少女の解放を指示した。
     件の少女は「にゃんなんて言えるか、私は帰らせてもらう!」とばかりに逃げ出した。
    「これでこころおきなく踊れる、ですね」
     セーラ・シュガーポット(ミーアンドマイテール・d03532)は他に一般人の姿がない事を確認して言った。
    「ダンスのテーマはゲーム音楽で間違いないですよね?」
     天城・兎(青龍偃月刀・d09120)がそう尋ねると、舞は大きく頷いた。
    「もしかしてキミたちも?」
    「むい、アクションからRPG、MMOまでなんでもござれなの~」
     エステル・アスピヴァーラ(白亜ノ朱星・d00821)の返答に、舞はどことなく嬉しそうな表情を浮かべた。
    「音楽はバッチリまかせて!」
     ダンスだけでなく演奏面でも劣らないと観澄・りんね(中学生サウンドソルジャー・dn0007)は胸を張る。
    「勝負の方法はどうしますか? 人数も、そちらは1人ですし」
     葉月・十三(高校生殺人鬼・d03857)の言葉に、しかし舞は自信に満ちた様子を崩さない。
    「もちろん全員と相手になるよ♪ 勝負の方法はアレで!」
    「アレか!」
    「アレですか」
     アレである。
     つまり先攻と後攻を決め、途切れぬ間もなくお互いのダンスを見極め合う、一種のメドレーのような形式のバトルだ。
    「そして負けた方は屈辱的な罰ゲームを受ける、それでいいですよね?」
     そう確認した黒崎・白(モノクロームハート・d11436)は何故かとてもいい笑顔だった。
    「もちろん♪ どんな罰ゲームがお似合いかな~?」
    「さて、どうでしょうね?」
     空前のダンスバトルがその幕を開けようとしていた!

    ●アンサーサウンドはオンで
     先攻はスターセイバーに与えられた。灼滅者は予め決めていた順番に並び、その時を待つ。
     音源は兎たちの生演奏に加え、外部出力を備えた音楽プレイヤーを。それから、
    「DJはおまかせなの!」
     寛子がミキシングを務める事により、音の幅は大きく広がった。
    「私もバッキングでサポートしよう」
    「楽器持ってきたよ! 私も音楽やっていい??」
    「もっちろん! よろしくねっ!」
     咢と、りんねのそれとソックリなヘッドホンとギターを携えた蛍にりんねは快く了承する。
    「無名の歌い手、いざ参りますよ」
    「なんかそれカッコいいね! えーと、私は……」
    「それは後で考えましょうか」
    「あ、そうだね。それじゃ!」
     兎とりんねは音楽プレイヤーから流れる音にあわせ、弦を弾いた。
    「皆、がんばってー」
     眠そうながらもペンライトを振るエールの応援を受け、リードギターたる兎が主旋律を、リズムギターのりんねが付随するように奏で、メロディに深みを与えていく。
    「うーん……りんねのダンスも見たかったなー」
     黒虎はどことなく残念そうに、ストラップで強調された一部分を視界に収めつつ呟いた。
    「黒虎さん、そろそろ出番ですよ?」
    「おわっと! わ、忘れてなんかないぜ!? 一番槍、行かせてもらうぜ!」
     にこやかな白に声を掛けられ、慌てて飛び出す黒虎。
     気を取り直して赤龍槍を手に握り締める黒虎は、熱い……いや、熱苦しいまでの熱気と漢気を感じさせる演舞を始めた。
    「うりゃうりゃうりゃうりゃ――」
     槍を頭上で回転させ、突き出し、あるいは払う様は戦国時代の武将を彷彿とさせる。
     そう。黒虎は今、無数に群がる敵をなぎ払い、強大な力を持つ敵将との一騎打ちを果たしているのだ!
    「よっしゃあぁぁ!!」
     地を穿ち、空を割るような咆哮と共に槍を掲げる。
     漢とは、漢の生き様とは何か。その証を立てる力強さが黒虎の魅力を引き立てる。
    「ゲームの曲……なのかな、一応。まあいいや。それならあたしはこれで勝負!」
     流れるように舞のターンに移行する。
     それは数百、数千の敵を切り伏せ、宙に舞わせる一騎当千の戦士を思わせる動き。
     武将・黒虎と武将・舞の激突か!
    「Let's get crazy!」
     これで圧倒されるわけにはいかない。続く十三はスタイリッシュにダンスフィールドへと飛び込んだ。
    「yeah!」
     地上を蹂躙し、それでは飽き足らず空中にまで飛び出し悪魔をもきっと泣かせてしまうであろう双剣捌き。
     それはヌンチャクに姿を変え、そして時には搭乗している乗り物さえも大胆に振り回し、クレイジーなまでに敵を殲滅する。
     全てを狩り取るかのようなギター型の大鎌を薙ぎ払い、幕を下ろす。ロックであり、ショータイムをも超えたスタイリッシュさだった。
     四方八方に死角はない。あるのはただ十三の前に平伏す悪魔のみ。
    「まだまだ!」
     爽快さと狂気を孕んだダークファンタジーで対抗した舞からスイッチし、挑戦するのはエステル。
    「さぁ、飲み込まれるのはどっちかしら?」
     長めのバトンを持つ今、エステルからは不思議な雰囲気が滲み出ていた。
     演目となるのは宇宙規模の戦争が行われている世界を舞台としたMMORPGのメインテーマのようだ。
     侍のような美しい剣技を中心に敵対勢力を、異形の者を倒しながら自身の成長を描くエステル。
     時に生き方の選択を迫られ、迷い、やがて大きな存在へと昇華していく。
     エステルは己の『闇』を調伏させるか、それとも……。
    「次はクロサキさんと私です」
    「はい、行きましょうか」
     舞のターンを挟み、4回目のスターセイバーの攻撃。
     先程までのSFから一転、王道ファンタジーを思わせる雄大な音楽の中にジャズダンスを通して身を委ねるのは白とセーラ。
     セーラは一国の美しい姫君である。だが、不運か必然か。セーラは悪の魔王に攫われてしまったのだ。
     そこで立ち上がったのが勇者・白。
     しかし白は魔王を倒す実力を持たぬままセーラを救う旅に出てしまった。
     装備も貧弱で、ザコと呼ばれる魔物と対峙する度に七転八倒する。
     だが、自らの運命を嘆く姫の姿を想うと、不思議と力が湧いてくる。
     苦戦していた魔物の弱点を見抜き、時には力でねじ伏せ白は一歩ずつだが確実に魔王の居城へと進んでいく。
     ――やがて、身も心も成長した……いや実際エイティーンを使って成長した白は……おお、かつてのザコ1匹に慌てふためいていた姿はどこにもない!
     数々の技を繰り出し、ついには魔王をも倒してしまったのだ!
     暗い闇から解放されたセーラは光を放ち……うん実際プリンセスモードで燦然とした輝きを放ちながら喜びのダンスを白に捧げた。
     後に控えるのは武流。
    「俺の『好き』なものはこれだ!」
     8bitサウンドが武流の心に火を灯す。
     名作と呼ばれたゲームのワンシーン。感動でコントローラーに涙を零した一作。誰もが熱狂し、手に汗握ったラストバトル。どうしようもないクソゲーだが、どこか憎めない珍作。
     どれもこれも武流が好きになったゲームであり、BGMの数々だった。
     かつて面白いゲームを見つけたらどうしただろうか。そう、誰かと共にこの感動を分かち合いたいと思ったはずだ。
     武流はこのダンスを通して舞と対話しているのだ!
     本来ゲームやダンスは人を楽しませるものだが……今の舞は。
    (「誰かを負かす為のダンスでは、誰かを楽しませる事は出来ないんだ!」)
     武流はどこか心が揺れていそうな表情の舞を見た。
    「さて、最後は妾じゃな」
     最後の演者である美咲がリズムに合わせて歩きながら大胆な宣言を行う。
    「妾は舞、お主のダンスを覚え、その場で踊ってみせようかの」
    「なっ!?」
     ワンフレーズ毎に舞が踊り、直後にそっくりそのまま美咲が踊り返す直接対決!
    「いいよ……ついてこられるなら、ついてきて!」
    「楽しませて欲しいものじゃな!」
     BGMは灼滅者らに委ねられた。あるゲーム音楽の楽譜を開き、兎とりんねは互いに視線を交わした。
     ギターに合わせ、腕を動かす舞。その動きをコピーしたかのように再現する美咲。
     腕だけでなく、腰や脚をも動かし、ステップを交える舞。忠実に再現する美咲。
     踊る舞。再現する美咲。
    「ど、どういうコト……!?」
    「まだ準備運動といったところかの」
    「りんねさん、もっとテンポ速くても大丈夫そうです」
    「おっけー!」
     テンポが加速しても崩れない舞だが、美咲もまた遅れる事なくついてくる。
    「きゃー! 美咲さーん!」
     応援する悠花が同じ動きを真似しつつ声援を送っている。シチョーリツが高まっている証だ!
    「さぁ、締めくくりましょうか」
     さらに加速するテンポ!
    「むいむい、いっしょに踊るの~」
    「カーテンコールは基本、ですよね」
     なんとエステルやセーラを始めとした全員が美咲の踊りに加わった。
     チームが1つの星となった瞬間である!
    「これで終いじゃ!」
     神々しく輝く美咲の前に、ついに舞がへたり込んだ。
    「そんな……あたしのダンスについてこられるわけが……」
    「所詮、お主の踊りなぞ素人の妾でも真似できる程度のものじゃよ」
    「!」
     軽く額の汗を拭う美咲は、余裕の表情で舞を見下ろした。
     いくらダークネスの力が芽生えつつあれど人間の身体能力には限界がある。
     古武術を通して修練と見稽古で日々鍛えている美咲にとって、その動きを再現する事は容易なのだ。
    「さあ、踊れなくなったお主の負けで構わんな?」
    「……キミを」
     舞はゆらりと立ち上がった。
    「キミたちを消せばあたしの黒星は消えるッ!」

    ●ACのボタン配置に慣れてるもので
    「くくく、ここでより高みを目指すのではなく、自分より上を消そうとする時点で底の浅さがしれるというものよ!」
    「こんのぉ!」
     怒りに任せ、マテリアルロッドで殴りかかってくる舞を前に、
    「四獣顕現、纏え玄武!」
     同じくロッドで受け止め、弾き返す美咲。
     更にシールドで殴り、矛先を自分に向け続けさせる事を狙う。
    「灼滅の六連星、楽しんでもらえましたか?」
     そう言いながらバイオレンスギターを構えるセーラ。
    「引き続き混沌たるカオスの深淵をお楽しみくださいです」
    「ケイオスすぎ!?」
     そしてソニックなビートを刻み込む。
    「心の闇に抗い、闇を灼滅する力。特と御覧じろ!!」
     力を欲する中、偶然得た力で増長するのは理解できなくもない。
     だが、御せない力に心は宿らない。やがてそれは悪意となり、己を、他人を貶める闇となる。
     その闇を人は悪魔と呼ぶのだ。その悪魔に抗え!
    「……ってね」
     そういった願いを込めたダンス、そして灼滅者としての一撃を繰り出した十三。願いは届くだろうか。
     その時。
    「我らの心の癒しに」
    「なんつー事すんじゃい!」
     熱狂的ファンが物凄い形相で迫って来た。
    「ごめんな、ちょっと黙っててくれ」
    「服といわずに骨までいきましょう」
    「「ほぎゃあああ!!」」
     が、武流と白によって即制圧。
    「床が汚れちゃいますね。モップにでもなっていたらどうですか?」
     倒れたファンを龍砕斧でついつい突く白はやはり笑顔。
    「むい、少し痛いけどがまんしてなの~」
     エステルの炎を受けて怯む舞だが、それも一瞬の事。
    「これ以上、あたしをバカにしないでッ!」
     踊りながら暴れる舞の攻撃は、しかし大きな効果を得られない。
     心の弱点を突かれた彼女は、もう無力化したも同然。
    「最後まで頑張ろうっ!」
     りんねの援護を受け、黒虎と兎が飛び出した。
    「舞、今のお前は楽しむ事を忘れているんだ!」
     螺穿槍で舞の防御姿勢を崩した黒虎は、
    「兎、任せた!」
    「了解です――赤兎、ここからが本番だろ?」
     ライドキャリバーの機銃掃射と共に妖冷弾を撃ち込む兎。
     放射状に撃ち出されるそれはまさに弾丸と氷塊の弾幕!
    「う、うああっ!」
    「妖氷散弾とでも名づけましょうかね。試してみたかったんだ」
     見事な波状攻撃により、舞は気を失ったように床へと崩れ落ちた。

    「むい、まいちゃんだいじょーぶー?」
    「……え、あ……」
     暫くの後。目を覚ますと舞の目の前には自分を見つめるエステルの姿があった。
    「ここは……」
    「カザミさんの腕の中、でしょか」
     セーラの言葉に、舞はふと首を横に動かした。
    「目、覚めたか?」
    「わわあっ!」
     何と黒虎が抱えるように舞を支えているではないか!
    「まだ横になっていて構いませんよ」
    「解放されたばかりでしょうからね」
     十三や兎の言葉にあうあうと顔を赤くしつつも、確かにまだ力が入らない。
    「こうして目覚めたという事は、もう妾たちの仲間なのじゃな」
     美咲の言う事にピンと来ない様子だが、そんな中むいっとエステルが手を挙げる。
    「まいちゃん、どうしてこういう風になったか、覚えてる~? くろまく~、とか」
     その黒幕は1面ボスのようだ。
    「何か、声が聞こえたような。誰かの、誘うような声が」
    「こえ?」
     そのあたりの記憶が朧げのようだ。
    「ともあれ無事で良かった! 今だから言うが、さっきのダンスも戦闘中も、十分イケてたぜ!」
    「えっ」
    「君のダンス、俺は好きだぜ?」
    「ええっ!?」
     何て、急に格好いい男子と呼べる黒虎から言われるものだから、舞は瞳を白黒するしかない。
     そこへ武流が声を掛ける。
    「そうだ、途中元ネタが分からなかった曲があるんだ。今度そのゲーム紹介してくれないか?」
    「あ……それはもちろん!」
     表情から察するに、彼女は武流の思っていた通りのようだ。
    「そして、俺達と一緒に遊ぼうぜ」
    「ああっ! それは俺が言おうと! りんねも誘って今度ライブとかカラオケでもどう?」
     慌てて黒虎が乗り出すが、
    「いいねっ、みんなで行こうよ!」
     りんねの言う皆とはこの場にいる全員だろう。つまり、男ももれなくついてきます。
     楽しそうに笑う舞に、朗らかな白が手を差し伸べる。
    「少しはすっきりしましたか?」
    「あ、うん……」
     その手を握り返し、舞は立ち上がる事ができた。
    「その、ありがとね」
    「いいえ、礼には及びませんよ――ところで、罰ゲームの存在を忘れてはいませんよね?」
    「へ……ええー!?」
     新たな仲間が増えた午後はドタバタと過ぎていった。

    作者:黒柴好人 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年2月28日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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