命を燃やして

    作者:相原あきと

     愛知県内のとある山の中を、のしのしと歩くのは2体の巨大な怪物デモノイド。
    「ウロロロロォォォォォン……」
     ぐしゃ……べちょ……ず、ずずーん。
     デモノイドの片方が悲痛な雄叫びをあげ、身体中を腐敗させながら崩れ落ちる。
     しかし、もう一体のデモノイドはそれに気付かず山を進み続ける。
     やがて木々に隠れるように建つ小さな神社が見えてくる。ぼろぼろの様子から無人のようだった。
    「オオオオオッ!」
     デモノイドが吠え、スピードが増し山中を駆ける。
     ぐずぐずと崩れ去ったもう一方と同じように、駆けるデモノイドの肉体も各所が壊死し始めていた。

     山中の神社にお参りに来ていた老夫婦が、吠え声と共に現れた青い化け物に腰を抜かす。
     味方でないものを見つけ次第襲え……そう作られているデモノイドは、無慈悲にその老夫婦へと太い腕を振るうのだった。

    「みんな、鶴見岳での戦いの報告書は読んである?」
     教室に集まった灼滅者達を見回しながら鈴懸・珠希(小学生エクスブレイン・dn0064)が皆に聞く。
    「今回、みんなにお願いしたいのは、鶴見岳でソロモンの悪魔達が使っていたデモノイドの討伐よ」
     珠希によればそのデモノイドは愛知県のとある山中にある無人の神社に現れるらしい。
    「みんなが到着するのはデモノイドが神社に現れるのとほぼ同時になるわ」
     デモノイドは鶴見岳戦でイフリートと一対一で戦えるほどの強さだ。油断できる相手では無い。だが……。
    「このデモノイド……腐敗をはじめているの」
     珠希が言うには、暴走しているからか、調整に失敗しているのか、とにかくデモノイドの命は長く無いらしい。
    「でも、それを待ってはいられない状況なの」
     デモノイドが現れる神社に、ちょうどお爺ちゃんとお婆ちゃんがお参りに来ており、このままだと殺されてしまうらしい。
     しかも、老夫婦は腰を抜かしていて自力で歩くこともできない。本気で助けるなら人手を裂く必要がある。
     イフリートと同等に力を持つデモノイド、それと戦いながら老夫婦を助けるにはリスクを伴う。
     それを選ぶかどうかは……。
    「このデモノイドの攻撃手段を教えるわね」
     珠希が仕切り直すように説明する。
     1つは太い腕でなぎ払う攻撃、1つは拳で連打を浴びせる攻撃、1つは雄叫びによる衝撃派の計3つ。
    「最後にもう一度言うわ。今回の目的はデモノイドの灼滅よ。そこは忘れないで」


    参加者
    フェリス・ティンカーベル(万紫千紅・d00189)
    響・澪(小学生魔法使い・d00501)
    四方屋・非(ルギエヴィート・d02574)
    高橋・雛子(はっちゃけ高機動型おちび・d03374)
    久世・瑛(晶瑕・d06391)
    布都・迦月(獄炎の剣を繰る者・d07478)
    有馬・由乃(歌詠・d09414)

    ■リプレイ


    「オオオオオッ!」
     老夫婦の前で雄叫びをあげるのは、異常に膨れ上がった青い筋肉の化け物デモノイド。
     腰を抜かし自力で動くことすらできない老夫婦に、青く太い腕が降り上げられ、そして――。
     ぶんっ!
    「「ひぃ!?」」
     しかし、いつまで経ってもやってこない衝撃に、老夫婦が恐る恐る目を開いて見れば、目に映るのは小柄な少女の背中だった。
    「あん時みたいなのはゴメンだからな………おじいちゃんとおばあちゃんも、そして仲間も……みんなわたしが守るんだから」
     高橋・雛子(はっちゃけ高機動型おちび・d03374)はそう覚悟を口に出すと同時、両足のバトルオーラが青い炎のように燃え上がる。
     気が付けば、雛子以外に7人の少年少女が現れていた。彼らは皆、青い化け物から老夫婦を守るように立ち塞がる。
    「効いてください……!」
     そのうちの1人、久世・瑛(晶瑕・d06391)が魂鎮めの風を使い老夫婦を眠らせる。
     ばたりと倒れる夫婦を四方屋・非(ルギエヴィート・d02574)が両肩に担ぎ、そばにいた有馬・由乃(歌詠・d09414)が手を上げれば目の前の木々がざわざわと左右に曲がり森に小路ができあがる。
    「ガアアアアアッ!」
     老夫婦が連れ去られる事を理解したのか、デモノイドが拳を振り上げる。
     だが、その頭部を荒々しい風の刃が打ち据える。
    「余所見してる余裕があるんですか? あなたの相手はこちらですよ」
     瑛だった。
     非と由乃は瑛達6人に目で頷くと、森の中へと老夫婦を抱えて疾走する。
    「デモノイドは初めて見ます。これも辿ればアモンに巡りつくのでしょうか……」
     夫婦を抱えて前を行く非に、後ろを警戒しつつ由乃が呟く。
    「かもな……だが今は」
    「はい、お二人を安全なところまで」
     デモノイドを仲間に任せ、2人は老夫婦を安全圏まで運ぶために走っていった。

    「これが噂のデモノイドかぁ」
     ドゥルルルとエンジンを呻らせる非のライドキャリバーと並び立ち、フェリス・ティンカーベル(万紫千紅・d00189)がデモノイドを見上げる。
    「どうしてこんな姿になってしまったのかはわからないし、じきに腐り果ててしまうんだろうけど……」
     突進してくるデモノイドを左右に避ける1人と1台、フェリスの方は地を蹴りデモノイドに向かって跳躍し。
    「不幸な出来事を回避するため……止めないといけないね!」
     拳を燃え上がらせるとそのまま脇腹を撃ち抜く。
     ぐちゅりと青い肉が飛び散った。
    「デモちゃん腐敗してるんだったよね。うぅ……気持ち悪い……」
     響・澪(小学生魔法使い・d00501)がそれを見て顔を歪める。
     とはいえ、これを放置して一般人に被害が出るのは止めなければならない。
    「ソロモンの悪魔も……自分のペットは最後まで面倒見てほしいんだけどね!」
     澪はしかめっ面から笑顔へ一転、箒(ヘクセンベーゼン)を取り出すと、ひらりと空へ飛び上がるのだった。
    「さあ踊りましょうデモノイド。あなたの敵がここには居るわ」
     白いゴシックドレスをひるがえし、デモノイドの前で優雅に一礼するのはフローレンツィア・アステローペ(紅月の魔・d07153)。ダンスに誘うように右手を差し出すと。
    「来なさい、黒き風のクロウクルワッハ」
     鋼糸を操るための爪の付いた篭手が召喚される。
    「そろそろ良いか」
     森の小路が元に戻り、老夫婦を連れた2人が遠ざかった事を確認した布都・迦月(獄炎の剣を繰る者・d07478)が殺界形成を発動させ、もしもに備えた戦場を作る。これで準備は整った。
    「さて、黄泉比良坂へのご案内と行こうか」


     6対1の戦闘、それは戦い始めて数分しか経っていないはずだった。
     だが、灼滅者達はその数倍の時間を戦ったかのごとく神経をすり減らしていた。
    「くっ!?」
     青く太い腕が地面ごと雛子を吹き飛ばす。
     その一撃だけで、雛子の体力は3分の2ほども消し飛んだだろうか。
     その前にやってきた咆哮ですら、最前列で戦っていた雛子、フェリス、迦月それぞれの体力を半分弱は持っていかれたのだ。追加で混乱させられる点においては瑛の風で浄化されたが純粋な回復としては心許ない。
     だが、それで二の足を踏む灼滅者達では無い!
     高速で繰り出されるフローレンツィアの鋼糸が、デモノイドの各所を次々に切り裂き、最後に右手首に巻きつく。
    「可哀想なデモノイド、その身が崩れて倒れる前に必死に抗って、戦う高揚の中お逝きなさい?」
    「そこが弱点?」
     懐に走り込んだフェリスが輝く拳を右手首に向かって何度も撃ちつける。
    「オオオォォォッ」
     悲痛な叫びと共にポロリと青い右拳が大地へ落ち、ぐちゃりと潰れた。
    「ああいうの、昔の有名なアニメで見たことあるんだよね。腐ってやが……――」
     フェリスの呟きに挑発されたわけじゃないだろうが、拘束から解かれたデモノイドが拳の無い右腕でフェリスに襲いかかる。
    「あ、いやなんでもないよ?」
     慌てて回避しようとするフェリスだが、デモノイドの方が一瞬早い。
     だが、直撃前に僅かに怪物の動きが止まる。すかさず飛び退くフェリス。
    「ありがと!」
     上空にいる澪に感謝の言葉をかける。
    「どういたしまして! あたしは上から攻撃するから……みんな、がんばって」
     先ほど怪物に隙を作ったペトロカースを上空から撃ち放ちつつ澪が言う。
     もっとも澪は心の中で――。
    「(腐汁飛び交う前衛で殴り合ってるみんなにくらべれば、これくらいは……本当、ご愁傷様)」
     前衛の3人に感謝するのだった。
     事実、前衛3人の被弾率は相当なものだった。
     特に雛子はオーラで自らを回復させなければ、仲間の回復だけでは次で落されるラインを行ったり来たりしていた。
    「高橋さん、大丈夫?」
    「もちろん! ぜんぜんヘーキなのだ!」
     フェリスの心配に、元気に返事をする雛子。
     心の中では鶴見岳での苦い経験が首をもたげ、だからこそ必要以上に元気に仲間に呼び掛けるのだ。
     そんな雛子の周りに小さな光輪が現れ彼女を守護する。瑛のシールドリングだ。
    「あきらくん、ありがとうな!」
    「守りが厚くなったといっても油断しないでください」
     回復補助メインで戦っている瑛にとって、仲間にかけた言葉は真実以外のなにものでもなかった。冷静に戦場を把握している瑛にとって、敵の一撃でいつ戦線が崩壊してもおかしくなく、自分ではバッドステータスを回復するので精一杯で、傷の完全回復まではとても手が回っていないのが現状だったのだ。
    「オオオオオッ!」
     デモノイドが青い腕で薙ぎ払ってくる。
     最初に一撃をくらってから仲間達からの回復を受けていた雛子や、自己回復も視野に入れていたフェリスはまだ大丈夫だったが、3人の中で最大火力を保持していた迦月が膝をつく。
    「かづきくん!」
    「いや、大丈夫だ」
     雛子にそう返すと再び立ち上がる迦月。その言葉に焦りの色は見えない。しかし、体力は通常時の1割といった所でありギリギリだった。
     3人を薙ぎ払ったデモノイドの腕からボタボタと腐汁が……いや肉片が剥がれ落ちる。
    「話には聞いていたが、これがデモノイド……壊れかけても、止まる事を許されない哀しい存在だな」
     迦月の言葉に返事するかのごとく、デモノイドが叫ぶ。
    「ウロロロォォォン!」
    「……苦しいだろうにな。楽に、してやる」
     刀身に禍々しく炎の影が映る日本刀を構える迦月に、再びデモノイドが拳を振り上げる。
     ここで一撃を受ければ――絶対絶命。
     覚悟を決める迦月。

     ――今を春べと咲くやこの花。

     声が、聞こえた。
     そして。
    「引き裂きなさい、定家」
     定葛の蔦を模した影が無数に伸び、迦月に振り下ろされそうになっていた青い拳を撃ち払う。
     さらに瑛のでは無い光輪が迦月の周囲に現れその傷を回復する。
    「ずいぶんと早かったな」
     迦月が再び戦場に現れた仲間2人に声をかける。
    「ああ、これ以上祭りに遅刻するわけにはいくまい?」
     にやりと笑う非のそばに、ライドキャリバーがピタリと止まる。
    「あのお二人は安全な所までお連れしたので、安心して下さい」
     由乃の言葉に老夫婦を心配していた仲間達が安堵する。
     これで憂いは無くなった。
    「ウロロロォォォン!」
     8人に揃った灼滅者達を見て、この後の戦いに何かを感じ取ったのかデモノイドが雄叫びをあげる。
    「なんだ? 悪魔が神に縋ろうってか? どんな願い事があったかは知らんが諦めてもらおう」
     非がギターを構えてデモノイドを指差す。
    「災厄を振りまくなら……灼滅するのみ!」


    「お疲れさんな。まだこれからが本番だが……悪い、前衛は任せる」
     迦月が由乃と入れ替わるように後衛へと下がる。
     その判断はクレバーであり、タイミング的にもベストだ。
     今回の戦いは老夫婦を避難させなければ普通に戦ってもぎりぎり勝てる依頼だった。しかし灼滅者達はそれを是とせず一般人の救出を優先した。
     しかし故に、6人での耐える戦いは想像以上に大きなリスクとなった。特に前衛で戦っていた3人にとっては……。
    「早々に終わらせます」
     新たに前に立った由乃が螺旋に捻りつつ槍を突きだす。
     咄嗟に手首の無い右手を盾にするデモノイド。
     ドュシャ!
     螺旋の槍は青い腕にめり込むと、周囲の肉を巻き込むかのように深くえぐり込み――。
     パンッ!
     デモノイドの右手が破裂した。
    「ふおっ!?」
    「すごい……」
     横に並ぶ雛子とフェリスが驚く。それほど、由乃の放つ威力は桁外れだった。
     そこに響き渡るはギターの演奏。
     非だ。
     激しくかき鳴らしたギターから発せられる音波がデモノイドを直撃する。
     2人が合流した効果は戦力としてだけでなく、苦戦していた皆の心に希望の光を灯らせる効果もあったのだ。
     非が皆に聞こえるように言う。
    「私達が負ける道理はない! あんなデカブツ、軽くぶちのめしてやろうじゃないか!」

     メディックとして非が来た事により回復に関して安定した戦闘が行えるようになり出した事を、一番実感していたのは瑛だ。
     いつクリティカルな一撃を貰って誰かが倒れるという危険は常にはらんでいたが、それでも先ほどまでの絶望感は無い。
     特に、前衛をまとめて混乱させるデモノイドの咆哮は強烈ではあったが、瑛がキュアに専念できるようになり、ほぼ完封したと言って良い。他の仲間達も瑛がいるおかげでバッドステータスに関しては気にせず戦えるようになった。
    「仲間ってやっぱ……嬉しいなっ!」
     雛子が雷をまとった拳でデモノイドの拳を捌きつつ、心強い仲間達の想いを背中に感じる。空元気な必死さは、いつの間にか自然な笑みへと変わっていた。


     仲間が揃った事で互角の戦いを繰り広げる灼滅者達。さらに序盤から積み重ねてきたバッドステータスが作戦通りに機能し始め、デモノイドの左足は石化し、背中は燃え、拳は砕けていた。
     しかし、灼滅者側の体力が底を尽き出しているのも事実であり――。
    「そん……な……」
     青いラリアットがフェリスを吹き飛ばし、その身体が木々をへし折りぐったりと倒れる。
     序盤から前線に立ち続けたフェリスは、回復サイキックを受けてもレッドラインを割っていたのだ。
    「フェリス……」
     迦月が倒れる仲間を視界に収めつつ、攻撃し前のめりになっている怪物の後ろに回る。
     もし前衛で戦い続けていたら、必要な回復はさらに足りなく被害はもっと出ていただろう。
     迦月は手に持つ錫杖でデモノイドの背を打ち魔力を爆発させる。
    「オ、オオオォォ」
     うつ伏せに倒れ込む青い怪物に対し、上空から明るい声。
     上空、箒の上に立った澪がその周囲に幾本もの魔法の矢を展開していた。
    「これで終しまいだよ!」
     機械式の杖につけられた宝玉がキラリと光ると同時、魔法の矢が一斉掃射。
     雨あられと降り注ぐ!
     ズバババババッ!
     もうもうと土煙が巻き起こり、ぱらぱらと吹き飛んだ小さな石や砂が落ちて行く。
     だが――。
    「オオオオオーッ!」
     咆哮と共に土煙が吹き飛び、そこには青い化け物がいた。
     顔は半分が崩れ落ち、両足も潰れ、拳の無い片手で上半身を支えている……しかも吠え続けながらも、身体のあちこちが腐り落ちていた。
    「うわぁ、腐ってる腐ってるよ……」
     トドメを刺せなかった事より、そのグロテスクな姿に澪が空中で二歩下がる。
     澪だけでなく、皆がその凄惨な光景に動きを止めた、まさにその瞬間。
     青い化け物の咆哮が止まる。
    「まずい!」
     注意の声より早く、デモノイドが全力の咆哮、いや怒号を前衛2人に叩きつける!
    「ガアアアーーーッ!」
     咄嗟に反応できたのは雛子だった。
     由乃の前に立ち塞がり全身でその衝撃を受け切る。
    「高橋さん!?」
     燃えた後のように全身から煙を上げ、雛子はゆっくりと前に倒れ――。
    「まだ……だぞ」
     ――そうになる身を、前に足をドンと出し踏ん張る。
     雛子のそれは魂の力、肉体を凌駕する意志の力。
     咆哮が止んだ。
     倒れぬ前衛2人に青い怪物の中に諦めに似た何かが芽生える。
    「あなたはもう十分、レンを楽しませてくれました」
     背後での声。
    「傷の痛み感じぬまま逝きなさい。楽しませてくれたお礼で、レンにできる手向けよ」
     背後からの声に振り向こうとその身をねじる。
     だが、その人物を視界に捉える前に青い怪物の身へ逆十字に鋼糸が絡みついた。
    「引き裂き爆ぜろ、咎の十字架」
     フローレンツィアの言葉と共に、怪物が4切りにされ大地へと転がる。
     ずぶずぶと崩壊を始めるデモノイドが、途切れるような声で呟く。
    『オジ……オバ………………ナイフ………………ゴメ……――』


    「おじいさんとおばあさんも上手く助けられましたし、なんとか敵も倒せましたね」
     倒れたフェリスを助け起こしながら瑛が言う。
     何かを諦めれば簡単な勝利だったかもしれない、だが灼滅者達は全てを掴む選択をした。結果、激闘ではあったが全てのリスクを越え選択した物を全て掴んだのだ。
    「人間よりこっちの血の方が面白いと思ったのに……」
     吸血捕食を行おうと思っていたフローレンツィアが、すでに崩壊しきったデモノイドの残骸を見詰めて呟く。
     それは残骸と呼ぶのもはばかられる程ではあったが……。
     同じく見つめながら心から同情するように澪が言った。
    「デモちゃん……どうやって生まれたか知らないけど、可哀相だよねぇ…」
    「デモノイド……元は一般人なんだったか?」
     澪に答えるように非が語るが、それはあくまで推測の域を出ない。他の7人はただ黙って、非の言葉に答える者はいなかった。
    「有馬? どうして泣いてる」
    「……え?」
     最後の瞬間、デモノイドにテレパスを使って表層意識を読もうとしていた由乃。だが、あの個体が何を考えていたかは解らなかった。ただ、なぜか涙が溢れたのだ。
     デモノイド……あれは――。
    「悪魔も酷いことをする……いや、俺達も同じ、か」
     山中の隠れた神社の前で、迦月の声がやけに寂しく聞こえるのだった。

    作者:相原あきと 重傷:フェリス・ティンカーベル(千紅万紫・d00189) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年2月24日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 11/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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