闇を来たれし

    作者:幾夜緋琉

    ●闇を来たれし
    『ケーッケッケッケ。ほーら、どうだぁ、苦しいかぁ? 苦しいだろぉ? へっへっへ』
     狂気の笑みを浮かべている若者が一人。
     その若者の周りには、まさしく死屍累々とも言うべき精算たる光景。
    『な、なんなんだ……たすけ……』
     手を差し伸べた……しかしその男は、差し伸べた手をガッ、と足蹴にして。
    『うるせぇ!! てめぇらは死ぬ運命なんだよぉ……あぁ? 運命に応じてさっさと死にさらせや!!』
     どこからともなく取り出したナイフをブッ刺す男。そして。
    『さぁどうだぁ? 早くこねえとモットモットしんじゃうんだぜぇ……?』
     と、また笑い始めるのであった。
     
    「皆さん、お集まり頂けた様ですね? それでは、説明を始めます」
     五十嵐・姫子は、集まった灼滅者達に向けてしんしな表情で以て説明を始める。
    「集まって貰ったのは他でもありません……ダークネスが一つ、六六六人衆を灼滅するか、撃退してきて欲しいのです」
    「今回の六六六人衆は、灼滅者がくるのをどうやら待っている様なのです。そして彼は武蔵坂学園の灼滅者を闇墜ちさせよう……という事を考えている模様なのです」
    「無論ダークネスという事は、強力で危険な敵である事は間違い在りません。しかし……ダークネスを灼滅する事は、同時に灼滅者の使命でもあります。皆さんには危険な目に遭わせることになってしまいますが……協力をお願い致します」
     と頭を下げる。
     そして皆が頷いてくれたのを見てから。
    「ありがとうございます。皆様も知っての通り、ダークネスはバベルの鎖による予知が有り、普通にしては彼に迫る事は出来ません。しかし……私達エクスブレインの未来予測があれば、その予知をかいくぐり、ダークネスに迫る事が出来ます」
    「ダークネスは都内外れの埠頭で、一般人を呼び寄せては殺して殺して殺し続けているようなのです。彼は六六六人衆の中では序列四五九番を名乗っており、かなりの実力者である事と思います」
    「既に戦った事がある方は言わずもがな判って居るかもしれませんが……六六六人衆のダークネスは強力です。一人で皆さんよりも多い数の灼滅者を血祭りに上げることすら可能でしょう。だからこそ……未来予測を使う事が重要なのです」
    「ダークネスは埠頭にて、その殺人を行っている模様です。この埠頭に事前に張り込む事が出来るので、皆さん事前に張り込み、作戦に応じてダークネスを叩く、といった手段が必要になると思います」
    「勿論ダークネスは一筋縄ではいかない相手です。皆さん、作戦をよく考えて……彼に勝つにはどういう手段が良いか、を考えて見て頂ければと思います」
    「今回の目的は、一般人の殺戮する彼を止める事……かなり難しい作戦である事は間違い在りません。無論……皆様が闇堕ちしなければ、それにこしたことはないのですが……」
     静かに皆を心配そうな瞳で見つめる姫子。
     そして。
    「……いえ、きっと皆さんなら、大丈夫だと思っています。決して油断せずに……頑張ってきて下さいね」
     最後にはそう微笑んで、灼滅者達を送り出すのであった。


    参加者
    風雅・月媛(通りすがりの黒猫紳士・d00155)
    内藤・エイジ(中学生神薙使い・d01409)
    槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877)
    西土院・麦秋(ニヒリズムチェーニ・d02914)
    黒澤・蓮(スイーツ系草食男子・d05980)
    桜塚・貴明(櫻ノ森ノ満開ノ下・d10681)
    フィン・アクロイド(デッドサイレンス・d11443)
    永舘・紅鳥(仇の死を求めさまよう暗殺者・d14388)

    ■リプレイ

    ●闇堕ちゲーム
     姫子より話を聞いた灼滅者達。
     彼女の真摯な表情が印象的であった、今回の事件……相手は六六六人衆が序列四五九の男。
     少なくとも、手練れの者であるのは間違い無いだろう……そしてそんな彼が、今企てて居るのが、灼滅者達を闇堕ちさせようというもの。
    「闇堕ちさせようとするダークネス、か……まったく、嫌な感じだぜ」
    「そうね。ダークネスは本当にどいつもこいつも、胸糞悪い奴らばっかりよね」
     黒澤・蓮(スイーツ系草食男子・d05980)に風雅・月媛(通りすがりの黒猫紳士・d00155)が肩を竦める。
     確かにダークネスはいけすかない奴らが多い……今回のダークネスのやっている事もそう。
     一般人を殺し、灼滅者達を誘い出し、闇堕ちさせる。
     今、他の場所でも同様に、灼滅者を闇堕ちさせる事件が頻発している……これは今、六六六人衆の中で多発しているのだ。
    「俺等を呼ぶ為に人殺し……そんなことしなくても、呼んでくれれば行くのにな。というか、楽しそうだな……いや、楽しんでるのかな?」
    「まぁ楽しんでるわよねぇ……面白そうな玩具を与えられて喜んでるみたいなものよね」
    「……そう、だね……」
     フィン・アクロイド(デッドサイレンス・d11443)に西土院・麦秋(ニヒリズムチェーニ・d02914)が応じる。
     そしてその言葉に桜塚・貴明(櫻ノ森ノ満開ノ下・d10681)と、槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877)が。
    「まぁ闇堕ちするのも腹立たしいですが、一般人を見殺しにしなきゃならないってのも腹立たしいですね。どちらをとっても踊らされているに過ぎないなんて……」
    「ああ。悔しいけれど、まだまだ俺達には力が足りねー。だけど、許せねーもんは許せねーし、譲れねーもんは譲れねーんだ!!」
    「ええ……今回発生する犠牲を、私は、決して忘れません。絶対に、倒します」
     拳を振り上げる康也と、ぐっと唇を噛みしめる貴明。
     ……そんな灼滅者達の会話の中……。
    「ううう、寒いよ……部屋の炬燵でぬくぬくしてればこんな目にはあわなか……」
     内藤・エイジ(中学生神薙使い・d01409)がぽつり呟く一言。
     その一言に、永舘・紅鳥(仇の死を求めさまよう暗殺者・d14388)がじーっと視線を向ける。
     視線に気付いたエイジは。
    「……いえ、なんでもないです……な、なるべく多くの人を助けたいですね!?」
     慌てて取り繕う彼に、肩を竦める月媛。
    「まぁ、しっかりしなさいよ? さてと……狙い通りに誘い出されてあげるけど、最後まで思い通りになるとは思わないでもらいたいわよね。闇堕ちせずに、倒してあげましょう」
     と、皆にそう声を掛けて、灼滅者達はまだ昼の刻の埠頭へ向かうのであった。

    ●血に濡れたゲーム
    「……ここなら、大丈夫かな……」
     紅鳥が周りを見わたす。
     埠頭の中にある倉庫の屋根上に到着する紅鳥。
     ここからなら、この埠頭をある程度見わたすことが出来るし……連絡も取りやすい。
     他の仲間達も、倉庫の上やら、物陰やらに隠れ……猫変身して猫の姿で調査するなど、埠頭完全包囲網を築き上げる。
     そして包囲網を築き上げたらば、六六六人衆の来訪を待ち構える。
     ……空が次第に夕暮れに変わり始める頃、途端に埠頭が騒がしくなる。
     その方向へ視線を向けると……一般人の群れ。
     まぁ一般人の群れというよりかはゴロツキ不良連中が集まっていたという状態ではある。
     そこに人の気配を嗅ぎ付けて、六六六人衆の男が……下卑た笑みを浮かべながら埠頭にやってくる。
    『キヒヒヒヒ……いるぜいるぜぇ……こんだけいりゃぁ上々だぜぇ……』
     狂気じみた笑みを零す彼。そんな彼に対し、見慣れる者に対する警戒心だろうか……ゴロツキ連中は。
    『あぁ……? なんだてめぇはよぉ……?』
    『ヒヒ……ヒーッヒッヒ……! 愉快愉快だぜぇ!!』
     馬鹿にした笑い声を上げる彼と、それに怒りを覚えて絡んでくるゴロツキ達。
     そんなゴロツキと六六六人衆のやりとりを見ながら、麦秋とフィンが。
    「わかってたけど……悔しいより情けないわねっ。アタシ達の力がこんなもんだなんてね……」
    「そうですね……でも、まだです。まだ……」
     ダークネスが手を掛けるまでは、下手に手出しは出来ない。
     ……ともあれ、ゴロツキ達は六六六人衆の買い言葉に着々とヒートアップしていく訳で。
    『ったく、てめぇ……俺達を苛つかせる気かぁ? 上等じゃねぇか!! 殺してやらぁ!!』
     ナイフを構えるゴロツキ、それに対峙する六六六人衆も。
    『いいぜぇ……おもしれぇ、実力の違いってのを見せて上げるぜぇ!』
     彼も又解体ナイフを構え、ただならぬ闘志を発現……今にも襲いかかろうとする彼に対し。
    「……大人しく指加えて、見ててなんか居られないわ……行くわよ!」
    「分かりました……行きます」
     麦秋に貴明が頷き、灼滅者達は身を現す。
     そして現われると共に、貴明が即座にティアーズリッパーをぶっ放す。
     が、その攻撃は微かに六六六人衆の顔をかすめだ程度で、彼は交す。
     彼はぐるりと灼滅者達を見わたすと。
    『……ぉおっと、現われたようだなぁ……キヒヒヒ』
     ニヤリと笑う男に対し、康也、麦秋、月媛が。
    「これ以上は、好きにはさせねー! ぶっ飛ばしてやる!!」
    「そうよそうよ。アンタ達の思い通りになるなんて思ったら大間違いよ~★ 覚悟なさいな!!」
    「全く……貴女のような胸糞悪いダークネスは、さっさと闇の中に葬ってやるわ」
     と、同じく荒げた声と共に威勢良く登場。
     黒死斬とブレイジングバースト、そしてカジキで螺旋槍。
     更にフィンとフィンのライドキャリバー、紅鳥、蓮も、次々に黒死斬とキャリバー突撃、更にティアーズリッパー、レーヴァテイン、と次々攻撃を嗾けていく。
     灼滅者達の疾風怒濤の初撃……さすがに彼はくそっ、と苛ついた表情を取る。
     しかし大きなダメージを与えたというのは無く、彼は。
    『ったくよぉ……そうやって群れなきゃ仕掛けてこられねぇのかねぇ? ……ったく……面倒くせー奴らだぜ』
     ギロリと睨み付ける……六六六人衆としての威勢、怒気に。
    「ひ、ヒィィ、怖い怖い、すげえ怖いでゲスッッ!!」
     それにちょっと怯むエイジだが、麦秋が。
    「エイジクン!」
    「ひっ、や、やりますでげすっ!! 貴明さん、頼むでゲスよっ!」
    「ああ。ほら……死にたく無ければここから離れろ!!」
     エイジに頷き、貴明が通る声を張り上げてパニックテレパスを使用……周りに居た一般人達を、パニック状態に落とし込む。
     そしてその状態に、すぐ康也、エイジが。
    「早く逃げろ!」
    「そうでゲス、こっちに逃げるでゲスよ!!」
     と一般人を避難させようとする。
     ……しかし、彼は。
    『んなの、させっかよぉ……!!』
     殺意に満ちた笑いと共に……一番間近にいた一般人をぐっ、と引き寄せて解体ナイフで胸元に深く突き立てる。
     何が何だか良く分からないまま……声も上げることなく絶命する一般人。
     崩れ落ちた一般人……それを足蹴にしながら。
    『さぁ……次は誰で行くかねえ……ヒヒヒヒ』
    「っ……ほら、早く逃げるんだ!! ああなりたくないだろう!?」
     蓮が更に声を上げて、一般人の避難誘導を図る。
     そして灼滅者達自身も、一層彼の元に近づき、動きを狭めるようにしながら。
    「これ以上はちょこまかと動きはさせないわよぉ!」
    「ああ……ぜってー通さねー!」
     麦秋が螺旋槍、康也がレーヴァテインで攻撃、更にクラッシャーの月媛、蓮は。
    「止まりなさい!」
     影縛りとギルティクロスでバッドステータスを蓄積させる。
     ジャマーの貴明自身も再度ティアーズリッパーでの服破りでのダメージアップを狙い、スナイパーのフィンも。
    「ホンモノの外道を見せてやるよ……いくぞ、Barrett!」
     銃を構え、後方からのバスタービーム。
     次々とバッドステータスを加え、彼の動きを制限。
     ……そして、紅鳥はエイジに。
    「避難を優先してくれ……。しかし……一般人を殺るなんて、臆病者のやる事だな」
    『なぁんだとぉ? おめぇらに言われたく無いねぇ……ヒヒ!』
    「……ふん。まぁ今の内に言えるだけ言っていろ……」
     紅鳥がソニックビートで攻撃。
     ……そして、次のターン。
     さすがに一般人の姿は、六六六人衆の近くにはもう無い……一般人に攻撃出来ないと認識すると、ダークネスは。
    『チキショウ……全く興ざめだぜ。しゃーねぇから、ちーっと遊んでいってやるよ!!』
     その手の解体ナイフを抜いて構える。
     バッドステータス効果を受けながらも、灼滅者達に比べればまだまだ高い攻撃力だろう。その武器で以て……素早く動く。
    「っ……早いわね」
    「ああ……」
     月媛と蓮が静かに呟く。
     そして……ダークネスの一閃が狙いを定め……蓮に一閃。
     かなりのダメージ……片膝を落す蓮。
     そのダメージに対し、一般人避難誘導から復帰したエイジがまず。
    「心配ないでゲスよ!」
     とシールドリングで回復……でもそれでは不足しており、更に紅鳥も集気法で回復を追加。
     前回まではいかないが、どうにか戦線復帰は出来る程度。
    「っくそ、でも、こっちは諦める訳にゃいかねーんだよ!!」
    「そうよ。この薄ら笑いが目障りに感じるなら、アンタが引っぺがしてみなさいなっ!」
     挑発の言葉を加えながら、ディフェンダーの二人とライドキャリバーが防衛網を作り出す。
     そして作られた防衛網の後ろから、月媛、蓮がクラッシャーの力でダメージを倍にして与える。
     ……ジリジリと、着実にダークネスの体力を削る様に動く。
     勿論その間、貴明がフォースブレイクで追撃、フィンもブレイジングバーストで炎を付与。
    『っ……ったく、うぜえんだよ!!』
     次第に彼の口調が、荒々しくなる……そしてその口調に応じ、ダークネスの攻撃手段も荒々しいものになる。
     そしてそんな彼に。
    「ハハッ、戦場で死ぬ運命なんだよ、とか、そういうナルシストな発言をする奴らから死ぬらしいぜぇ?」
     と挑発するエイジ。
     ……それに。
    『あぁ? んじゃあてめぇが死ぬかぁ??』
     かなり苛立った口調のダークネス。
    「ひ、う、嘘でゲス、あっし、弱いでゲスよ!?」
     エイジはまた悲鳴を上げてしまったり……。
     それはさておき……そんな攻防が続く事8ターン。
     さすがに灼滅者達の体力もかなりの瀬戸際……だが、ダークネス自身も、かなり疲労の色が見える。
    「さぁ……どうしたよ。本気を出してみろよ!」
     でも、灼滅者達は決してそれを見せないように、威勢を張り続ける。
     ……それに、彼は。
    『……ったく、しゃーねぇ……てめぇらこのままじゃ闇堕ちしそーもねぇしよ……だがなぁ……油断してんじゃねぇぜぇ!!』
     素早く、ダークネスは後方待避。
     灼滅者達は追いかけようともするが……既に疲労困憊の身体では、それを追いかける事も叶わなかった。

    ●安息の近くで
    「……ふぅ……どうにか終わったわね。勝てた……とは言えないかもしれないけど」
    「そうだな。まぁ……撤退させられただけでも良しとしねぇとな……本来の実力では、まだ勝利も難しいだろうからな」
     月媛に頷く蓮。
     改めて周りを見わたせば戦いの跡……幸い一般人の犠牲は、迅速に逃がす事が出来たおかげで最小限に済んだと言えるだろう。
     でも……目の前でもう息をしていない一般人がいるのを見ると……悲しさがこみ上げてくる。
    「……すみません。しっかり成仏、して下さい」
     貴明が手を合わせ、冥福を祈る。
     ……そしてその後、周りの後片付けも一通り終わらせてから、帰路へ。
    「……なぁ、みんな、これでも食べるか?」
     元気づけようと、康也が缶おでんを皆に差し出し、紅鳥もチョコ菓子を配る。
     ……とは言え、あまり気は晴れない……一人とはいえ、被害者を出してしまったことに変わりは無いのだから。
     自分達の出来る事はしたけれど、それでも護る事が出来なかった命がある……という事に、灼滅者達は静かに唇を噛みしめるのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年2月27日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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