●頑固一鉄!
カン、カン、カン。
その怪人は、鉄で出来た両腕のハンマーを打ち鳴らす。
「木、プラスチック、アスファルト、コンクリート、全て……。全て、軟弱すぎる! 男、いや漢なら鉄だ! 鉄を使え!」
公園のど真ん中に、そこらへんを歩いていたサラリーマンを引っ張りこむと。
怪人、釜石イッテツは説教を始めた。
ちなみに、ハンマーを打ち鳴らしてるのはただの癖であって、威嚇とかの意図はない。
しかし一般人にとっては、恐怖でしかなかった。
「ごめんなさい! なんだかわかりませんけど、ごめんなさい!」
その時、サラリーマンの手首のあたりがキラリと光る。腕時計だ。それも高そうな。
「むっ? お主、それはなんだ。金か? 銀か? 銅か?!」
くわっ!
怒りと共に、イッテツの体温は急上昇、真っ赤になったボディが熱を放ち出す。
カン、カン、カン。
「いいか! 限りなく純粋な鉄は、プラチナのような光沢を持ち、金のように伸びやすく、弱点の錆をも克服するのだ。よって、この世で最高の金属は鉄! このような軟弱物、こうしてくれる!」
「あぁ!? それは女房とのペアで……!」
イッテツは素早く、サラリーマンの腕から腕時計を抜き出すと、宙に投げ、頭上で粉砕する。
サラリーマンが止める暇さえなく。
「見た事か! 軟弱な金属を選ぶからだ!」
カン、カン、カン。
それで満足したのか、イッテツは公園を去っていった。
あとに残されたのは、涙を流すサラリーマンと、粉々になった腕時計だけであった。
●鉄の意地
日本で最初に安定稼動した製鉄所があるという地、岩手県の釜石。
現れた怪人は、鉄のような頑固者であった。
「何がなんでも、自分の道は譲らねぇ鉄の魂。俺には激しく共感できる。だが、強制するのは間違いだ!」
話しをする鎧・万里(高校生エクスブレイン・dn0087)の魂は、鉄を溶かす高炉のように、熱く燃えたぎっていた。
それはまさに鉄の魂、略して鉄魂(てっこん)!
「いくら純度の高い鉄が優秀と言ってもな、魂に不純物が混じれば、ただの悪党と変わらねぇんだ! お前達ならわかるよな!?」
万里のテンションについていけるかは別にして、ダークネスによって事件が起こる事は確かである。
「まぁ、そういう事だ。相手はダークネス、当然一筋縄じゃいかねぇけどな、お前達にも魂があるってんなら、負けられねぇ。そうだろ?」
ここで、万里のキメ顔。
そして、話は強制的に怪人の情報へとシフトする。
「敵の名は釜石イッテツ。岩手県釜石で活動する、ご当地怪人の一人だ。その狙いは一つ!」
世界の金属という金属を鉄へと変え、やがては鉄の教えを広め、ゆくゆくは世界征服するという、鉄のように硬い計画だ。
「一応、鋼はギリセーフだ。鉄を焼いて硬くしたやつだからな、実質は鉄だと思ってるらしい」
果たしてその情報は役に立つのか。それでも万里は続ける。
「イッテツの両腕は拳であり、ハンマーだ。その破壊力は強大! さらに、鉄で出来た頑固なボディを持ってる。少しの攻撃は通じないかもしれねぇな」
だからといって離れていても、ボディに仕込んだ無数の鉄球を打ち出してくるとか。
「そこで俺から言えるアドバイスはこれだ。『叩いてダメなら、死ぬ気でぶっ叩け!』どんなに堅い金属だろうが、いつかはぶち抜ける!」
より細かい手段を言えば、鉄の塊であるイッテツは、その質量ゆえに鈍重なので、そこを狙う手もあったりする。
「とにかくまずは気合だ。んで次は、気合ごとぶつかっていけ! そしたら、鉄なんて簡単にぶっ壊せるから。お前達の鉄魂を見せつけてやるんだよ!」
最後に万里は、髪櫛を突き出しながら言い切った。
その髪櫛は当然のようにプラスチック製だった。
参加者 | |
---|---|
佐渡島・朱鷺(第五十四代佐渡守護者の予定・d02075) |
中島九十三式・銀都(シーヴァナタラージャ・d03248) |
相羽・龍之介(中学生ファイアブラッド・d04195) |
赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996) |
禰宜・剣(銀雷閃・d09551) |
カミーリア・リッパー(切り裂き中毒者・d11527) |
緑谷・瑞樹(翡翠の魔女っ子プチフィーユ・d12934) |
秋野・昴(中川オレンジ・d14028) |
●受けよ正義の鉄拳
シャキ、シャキ、シャキリ。
鉄怪人イッテツの説教は、怪人自身が打ち鳴らす音とは別の、ある音によって遮られた。
振り向けば、そこにいたのは、一人の少女のような服装をした少年、カミーリア・リッパー(切り裂き中毒者・d11527)。
カミーリアが鳴らしているのは鋏だ。
シャキシャキと、二枚の刃が動き、擦れるたびにその音は鳴る。
「何の用だ、女のように着飾った軟弱者が!」
露骨に怒りの感情を表し、イッテツは威嚇の意を込めて、ハンマーの拳を打ち鳴らす。
カン、カン、カン。
しかし、次に割って入ったのは、鋏の音ではない、少女の声。
「ならば問おう。貴様の心は真に頑固であるか、強固であるか!」
見上げれば、公園の滑り台の上に立つ、佐渡島・朱鷺(第五十四代佐渡守護者の予定・d02075)の姿。
越後上布で出来た着物が、朱鷺色のストールが、風に揺れる。
「当たり前だ!」
対するイッテツも揺らがない。鉄の意思はなんびとにも曲げられぬ。その一言は頑固な魂を証明する。
「さぁ、今のうちに逃げてください。大丈夫です、この街の平和は、僕たちが守りますから」
対峙するその間に、相羽・龍之介(中学生ファイアブラッド・d04195)は、説教をくらっていたサラリーマンを避難させる。
怪人もそれに気づいていたが、あえて放置した。
「だよな。アレを追いかけるのは漢らしくねぇ……だろ? だから言葉じゃなくてさ、漢らしく、拳で語りあおうぜ」
朱鷺のいる滑り台の下、中島九十三式・銀都(シーヴァナタラージャ・d03248)は怪人へと勝負を提案する。
怪人はその提案を受け入れ、逆に聞き返した。
「男、いや、漢に二言はないか!」
『応!』
返事は銀都だけでなく、周囲からも同時に。物陰から、残りの灼滅者たちが飛び出す。
「鉄をも溶かす正義の明かり、小江戸に輝く太陽の子、赤星緋色、参上!」
公園を照らすための街灯の上に、赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996)が立ち。
「俺の迷いは、鉄さえ曲げる! 葛飾区を彷徨えるオレンジの閃光、秋野・昴、只今推参!」
ジャングルジムの頂点で、秋野・昴(中川オレンジ・d14028)が叫ぶ。
「芽吹きの音色は鉄の向こうへと響く。高原に流れる新緑のメロディー、プチフィーユ!」
さらに、緑谷・瑞樹(翡翠の魔女っ子プチフィーユ・d12934)が木の上から、ゆっくりと降りてきて。
「ナノナノ!」
合わせて、瑞樹のナノナノも男(?)気を見せる。
「それで、お主はなんだ?」
雑多なヒーローたちの名乗りを聞いたイッテツは最後に、ごく普通に前に出てきた、禰宜・剣(銀雷閃・d09551)に尋ねた。
「アタシは禰宜・剣。あいにく、ご当地ヒーローじゃなくて、ただの灼滅者よ。けど……」
剣はヒーローとしてでなく、灼滅者として名乗り返す。そして、次に放った言葉は、灼滅者以前の個人としての言葉。
「貴方の、その超高純度鉄、アタシが貰い受ける!」
全ては、新たな刀を生み出すために。
この場において、ある意味、最高に真っ直ぐな思いだった。
●鉄壁のボディ
鈍重な鉄塊であるイッテツが歩を進める度、わずかに大地が揺れた。
「その活きや良し! ならば倒して見せぃ!」
大振りの、重量を最大限に活かした鉄拳が、剣に迫る。
動きは遅い。しかし、避ける暇があるほどではない。
ならば、避ける必要はない。
「虎穴に入らずんば、虎子を得ず。攻撃に転じたその間こそ、無防備になる瞬間よ!」
剣は逆に、拳に対して一歩踏み込み。
真っ直ぐな、一振りの剣のような殺気の刃を、正面からぶつける。
「気迫だけでは、わしの拳を止めれはせんぞぉ!」
叫ぶイッテツ。だが、その拳は剣を捉える事なく、弾き落とされた。
「その瞬間を、最大に活かしてこそ……鉄の兵法!」
滑り台から飛んだ朱鷺が、羽を模したWOKシールドを足へと持ってきて、真上から踏み抜いたのだ。
その様は、まさに一羽の朱鷺の如く。
重さによって生まれる慣性に耐え切れず、イッテツの態勢が崩れる。
「な、ぬぉぉオォ!?」
シャキ。
思わず驚愕の声を挙げるイッテツの周囲を、黒い闘気を纏ったカミーリアが駆けていく。
ガリッ、鋏が鉄を咥える音。シィァ、鋏が鉄の表面を滑る音。
弾かれれば、すぐに次の一撃を入れていく。
何度も、何度も。
「…………」
カミーリアは無口な少年である。人形のように表情を変えず、人形のように口を利かない。
だからと言って、何も思わないわけではない。
意思疎通は筆談でこなすし、本音を曝け出す時は口も使う。この戦いにおいても、ある一つのこだわりを持って臨んでいた。
自分の持つ鋏は、鉄よりも強いのか。それを確かめたいとして。
「ふぅ、焦ったわい。……なれど! このわしの鉄の体は易々と貫けまい!」
やっとの思いで態勢を持ち直したイッテツは、素早く動くカミーリアへと、無造作に蹴りを入れる。
ついに、鋏は鉄を裂く事なく。少年の小柄な体は蹴り飛ばされた。
「大丈夫か、カミーリア」
それらの様子を見ていた昴は、地面に転がるカミーリアのもとへ、急いで駆けつけ、手当てを行う。
「いいか、落ち着け。今はチャンスも道に迷ってるとこだが、必ず巡ってくるもんだ。目に見えるくらいにな……」
パッと見、喋らず無表情を貫くカミーリアにそう語りかける昴の姿は、滑稽に見える。
癒しの力をもった気を流しこむ間、昴は何気なく怪人の方へと振り向いた。
「なっ?!」
怪人の胴体正面が、門扉のように開いていた。
ただ、昴が声を挙げたのは、その事にではない。エクスブレインから聞いた情報にもあった事で、別にそこは気にならない。
その狙いが、昴の方を向いていたからだ。
●鉄の切り札
「そうはさせんぞ、小僧! 鉄砲球を喰らえぇぃ!」
胴体の中は、四角く仕切られたスペースが幾つか並び、それぞれの中に鉄球が収まる。そんな構造をしていた。
一つの鉄球の大きさは、野球ボールよりも少し大きいほど。
もちろん、普通の人ならば、頭に投げつけられるだけで簡単に死ねる。
それらが全てサイキックの力によって、一人の灼滅者に向け、無数に吐き出された。
風を切る音が聞こえるほどの高速。
昴に避ける暇はない。剣のように、立ち向かってどうとなる物でもない。
だが、漢ならば立ち向かうしかない。
「見せてあげますよ。真の漢を」
飛来する無数の鉄球へと、龍之介が飛び込んだ。
龍砕斧を平らに、巨大な扇のようにして振り回し、鉄球を叩き落す。
それで足りない分は、もう一方の腕につけたシールドで、強引に弾く。
「ぁくっ……。まだまだ。ご自慢の鉄とやらは、この程度ですか」
受け損なった鉄球の幾つかが龍之介の体をかすめていくが、それも根性で押し通し、鉄球の嵐を防ぎきる。
「わしの鉄砲玉が防がれただと!?」
さすがのイッテツも、驚きを隠せない。
「無茶のしすぎはいけませんよ。台詞の割に怪我がほら、仰山あるじゃないですか」
龍之介の背後で、瑞樹が目ざとく、怪我の箇所を指摘する。
「いや、でもこれは……」
「男でしたら、言い訳も不要でしょう? こういうのは治せるうちに治さなね」
治療されないのも困るが、男の勲章ともいえる怪我は、瑞樹が呼んだナノナノに、その場で癒された。
なんとも言えず肩を落とす龍之介の視線の先、転がる鉄球の一つを銀都は拾い上げていた。
「なかなか、いいボールじゃねぇの」
先ほどの通り、鉄球は野球ボール大の大きさである。掴み上げるには重く。ましてや野球ボールの代わりに使うものでもない。
しかし銀都は、野球ボールのように宙に放った。早く落ちてくるから、やや高めに。
「堅い鉄に歯が立たねぇなら、同じ鉄をぶつけてやるぜ! 名付けて竜巻打法だ! 一球、入魂!」
振りかぶる無敵斬艦刀に風を纏わせると、全力フルスイング。
鉄塊同士がぶつかる衝撃音が、耳の奥を揺さぶるように痛ませる。
「たかが風の後押しごときで、わしに当てられると思うな!」
真っ直ぐと飛んでくるそれに、イッテツは、ズリズリと最小限、足を横にずらす事で回避しようとする。
重いボディのせいで、横っ飛びとかが出来ないのだ。
その残念さが、命取りでもあった。
「ひっさーつ! 小江戸、太陽落とし!」
鉄球の軌道上に跳びあがった緋色が、回し蹴りを繰り出す。
蹴りが当てられた鉄球は進路を変えた。横に動いたイッテツの方へと真っ直ぐに。
「ぬぅわにぃぃぃ!!?」
再び鉄塊同士がぶつかる音。片方は空洞があるためか、いい音が鳴る。
「鉄の時代なんて、とっくの昔。エコの時代は鉄なんかより、プラスティックと軽金属! まったく要らないわけじゃないけど、世の中バランスが大事なんだよ!」
綺麗に着地した緋色は、一息に言い切り。
ズズンと、砂埃を巻き上げて倒れるイッテツ。自分自身の鉄球をぶつけられた頑丈なボディには、へこみが出来ていた。
●貫鉄、漢と鉄の心意気
へこんだ。この事実は、灼滅者たちの士気を上げた。
細かく小さな傷ならば、幾つかはつけられても、目に見える大きなダメージは、少なからず確実に攻撃が通じている事を証明するからだ。
「舐めていたつもりはなかったが……よもや、ここまでやるとは予想外!」
イッテツの中に怒りがあるわけではないのだが、高揚した魂はイッテツの体温を限界まで引き上げた。
赤熱する鉄のボディ。
「今度こそ、鉄砲玉で仕留めてくれる!」
「そうはさせへんよ。プチフィーユ・テンパランス・バレット!」
素早く瑞樹が掲げた指輪から、魔力を込めた弾丸を飛ばす。テンパランスとは節制の意味を持つ。
「ひ、開かん?!」
その魔力は、イッテツが胴体を開く事を許さない。
「まだだ、お前の重い足を封じさせてもらうぜ!」
続けて昴が、ロケットハンマーで地面を殴りつける。公園一帯が揺れた。
地を走る衝撃は、イッテツの足元を脆くさせて、あとは自重で沈ませる。
「俺の正義は深紅に燃える。鉄をも砕けと紅蓮が渦巻く! 足元見てる暇はないぜ! これが、俺の漢道だ!」
銀都は、真っ赤な鉄のボディに真っ赤な拳を叩き込む。その狙いは鉄球によってへこんだ一箇所。
「なんの。まだ、両腕が残っておるわ!」
イッテツは殴られながらも、むしろ地面に固定されているからこそ、懐に飛び込んできた銀都の体を掴もうとした。
「だったら、その腕を持って行く!」
シャキ、シャキ。
相手を掴もうとする時は普通、腕を突きこむように動かすか、サイドから挟み込むようにするか、どちらかの動きをとる。
イッテツの動きは後者であり、自然と両腕が左右に開く形となっていた。
その左腕を剣の持つ太刀が、右腕をカミーリアの鋏が咥え込んで、押さえる。
「知ってるかしら。鉄は、熱して一気に冷やすと強度が増すけれど。熱している間は、物凄く強度が落ちるのよ!」
真っ赤なボディは見た目どおりの高温状態だ。そこに銀都の炎が加わり、さらに温度を引き上げる。それはイッテツ自身の限界を上回った。
メリメリと、カミーリアの持つ鋏の刃が万力のように絞まっていく。当然、熱が伝わるので、とっくに火傷だらけだ。
それでもカミーリアは鋏を更に突きこみ、ついに鉄の腕を断ち切る事に成功する。
「強度の低下は、鉄が純粋であればあるほど大きくなるわ……我が全霊の太刀、受けなさい!」
合わせて剣も太刀を振り下ろす。当然のように、腕は斬りおとされた。
「くっ、不覚……! だが、敵の弱点を敵に教えるとは、迂闊だったな!」
真っ赤な鉄塊のが発熱を止めると、段々と色が戻っていく。剣の言う通りであれば、それは更に堅くなるという事を意味している。
両腕を失くし、両足が沈んだままでありながら、イッテツは不適に笑う。
「何も迂闊ではありませんよ。ついでにもう一つ、鉄の知識を教えてあげましょう」
下がってと、後ろで龍砕斧を振りかぶった龍之介が言うや、手前の3人がその場を退いた。
「熱した鉄の強度は、急激に冷やす事で熱する前よりも上がります。ですが、一つだけ、弾性に対する強度だけは変わりません」
つまり、衝撃強度。
余談だが、この世で最も硬いとされる物質、ダイヤモンドはこの衝撃に弱い。上からハンマーで叩くだけで簡単に砕け散る。
そう、斬るわけではなく、衝撃で割るのだ。
龍砕斧は、その役割を受け持つに十分すぎる重量を持つ。
「軟弱者はどちらか、その身で確かめなさい」
ガキンと、今までの中で一番激しい音が鳴った。
斧をぶつけたのは、へこんでいた箇所だ。そこに裂け目が出来る。
一箇所裂け目さえ出来れば、あとは拡げるだけでいい、鉄は破れる。
「つらぬけ、ひっさつの小江戸スパイラル!」
槍を正面に構えた緋色が、やや高めの位置にある亀裂へと跳びあがる。
突撃姿勢からの一撃は、亀裂を押し拡げて中へと食い込んだ。が、貫ききれない。
「ぐ、ギギ。ま、まだだ。わしはまだ負けてはおらぬ……鉄は敗れぬ!」
あと一手、足りず。緋色の体は突き立つ槍を握ったままで、宙ぶらりんに。
「その鉄の闘志には敬意を払おう。だが、これで終わりだ。合わせるぞ、赤星!」
まだ終わらないのは、灼滅者も同じだ。朱鷺は走りながら、拳を鬼のように巨大に変化させる。
「りょうかい! せーの!」
声を掛けられた緋色は、ぶら下がったまま身を捻り、後ろに向けて両足蹴りの態勢に入る。
それらの動作の意味に気づいたイッテツの口は、声を捻り出していた。
拳と足がぶつかる瞬間に、朱鷺のご当地パワーが緋色を通して、緋色の持つ槍へと伝わり。
「おおおオオォォォ………!!」
緋色の体ごと、二つのご当地パワーを蓄積した槍が貫いて。イッテツの胴体に大穴を開ける。
「お前の敗因は一つ。己の信じる鉄の、真の価値を見抜けずにいた事だ。魂に混じった不純物は、お前の目をも曇らせた」
拳を突き出した視線のまま、朱鷺は言い捨て。
「わし、の……敗北、か。……お主らの、漢っぷり……天晴れだ!」
最後の言葉を残して、イッテツの体は爆散。鉄の破片を撒き散らした。
「無事灼滅、か」
戦いの名残は、斬り落とされた鉄の腕のみ。
漂う鉄粉も、風が全て吹き流す。鉄のような色をした雲と共に。
「うわっ、めっちゃ綺麗やん。鉄やと思われへんわ……」
雲の間から覗く陽の光を浴びたイッテツの腕は、白銀色の輝きを放っていた。
作者:一兎 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年3月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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