国崎・るか(アンジュノワール・d00085)は、こんな噂を耳にした。
『女装美人が危険な世界へと誘う地域がある』と……。
どうやら、エクスブレインの話では、この女装美人は都市伝説であるらしく、既に沢山の犠牲者が出ているようだ。
都市伝説は女装のプロフェッショナルらしく、一見すると女性にしか見えない、というよりも、女性以上に美しい。
しかも、やけに積極的なタイプで、奥手な男性が好みとか。
そのため、例え真実に気づいたとしても、『あ、あれ? 男? でも、まあ、いいか』と言う気持ちになってしまい、禁断(男)の世界に目覚めてしまうようである。
だが、相手が完全に気を許した途端に、濃厚な口づけで生気を吸い取ってしまい、後はポイッ!
おそらく、現場に駆け付ける頃には、誰かと一緒に行動をしている可能性が高い。
しかも、ターゲットに選ばれた男性は、すっかり都市伝説を信じ込み、場合によっては命懸けで攻撃を仕掛けてくるかも知れない。
また、都市伝説は濃厚な口づけによって、相手の生気を吸い尽くそうとするので注意が必要である。
参加者 | |
---|---|
国崎・るか(アンジュノワール・d00085) |
橙堂・司(獄紋蝶々・d00656) |
羊飼丘・子羊(北国のニューヒーロー・d08166) |
高倉・奏(拳で語る元シスター・d10164) |
レヌーツァ・ロシュルブルム(﨟たしマギステラ・d10995) |
藤堂・十夜(カニスディルス・d12398) |
雛本・裕介(早熟の雛・d12706) |
クリス・レクター(ブロッケン・d14308) |
●禁断の世界
「……女装美人が危険な世界へと誘う都市伝説か」
藤堂・十夜(カニスディルス・d12398)は険しい表情を浮かべて、都市伝説の確認された場所に向かっていた。
事前に配られた資料を読んでも、よく分からなかったが、都市伝説は女装美人で、多くの男性(主にチェリーボーイ)を禁断の世界へと誘っているらしい。
その中には、『あ、ある!?』、『つ、ついてる!』、『これはまさか!?』的な驚きをする者もいたようだが、濃厚な口づけと催眠ですっかり騙され、ついていないと逆に駄目な人間になってしまっているようだ。
「男装女子ノ次は女装男子カ……、日本は面白いイ国だネ」
前回、参加した依頼と見比べつつ、クリス・レクター(ブロッケン・d14308)が資料に目を通す。
資料の中には、都市伝説のイメージイラストも入っていたが、どこからどう見ても女性にしか見えず、男である事を見破る事は困難に思えた。
おそらく、相手の正体を知ったとしても、『あ、この人は両方ついている人なのか』と思う程度で、拒絶反応を示すケースは、極稀だったようである。
「な、何だか許せない気持ちになります……! やるからには思いっきりやっちゃいますよぉ……!」
複雑な気持ちになりながら、国崎・るか(アンジュノワール・d00085)が気合を入れる。
確かに、都市伝説は美人……、思わず嫉妬してしまうほどの美人だが、その正体が男だというのは、嬉しいような、悔しいような、何とも言えない気持ちが、心の中で渦巻いていた。
「うう、やだなぁ。女子には来ないよね? きっと来ないよね?」
そんな中、橙堂・司(獄紋蝶々・d00656)は都市伝説とキスをしている自分を思い浮かべて、全身に鳥肌を立たせていた。
もしも……、万が一、都市伝説とキスをするような事があれば、それこそ絶望モノである。
都市伝説のキスがどんなにロマンチックでレモンの味がしたとしても、司にとっては恐怖と嫌悪の対象でしかないのだから……。
「まあ、そうなる危険は平等にあると思うけどね。だから謙虚で大人しくて、か弱い僕が狙われちゃう可能性だって捨てきれないよ」
思いっきりイイ笑顔を浮かべながら、羊飼丘・子羊(北国のニューヒーロー・d08166)が答えを返す。
都市伝説の狙うのは、チェリーボーイばかりだという噂だが、それ以外の相手を絶対に襲わないという訳ではない。
自分の好みであれば……、とっても美味しそうな相手であれば、迷わず襲う事だろう。
例え相手がどんなに嫌がったとしても、濃厚な口づけと催眠で虜にしてしまうのだから……。
「それにしても、変わった都市伝説じゃのう。じゃが生気を啜る、人に綽名す存在等、滅すべし」
都市伝説が確認された場所に辿り着き、雛本・裕介(早熟の雛・d12706)が息を殺す。
どこからか、チェリーボーイの吐息混じりで甘く切ない声が聞こえてくる。
その声は一気にテンションが下がるほどアレであったが、そこに都市伝説がいる事は間違いなかった。
逆にこれで都市伝説がいなければ、今日は帰ろう、明日にしよう、と言う気持ちになってしまう。
「あ、あの……。こ、こんなところで……」
そこにはチェリーボーイと思しき青年と、都市伝説がいた。
都市伝説は必要以上に身体を絡ませ、まるで見せつけるようにして、何度も青年と口づけを交わしていた。
「まずは都市伝説から、一般人を引き剥がしましょうか」
視線のやり場に困りながら、レヌーツァ・ロシュルブルム(﨟たしマギステラ・d10995)がコホンと咳をした。
どちらにしても、このままでは気まずい、気まず過ぎる!
そんな状況で戦う事など、不可能。
だが、しかし……。
「か、彼女は僕が守る!」
都市伝説よりも先に、青年の方がレヌーツァ達の前に立ち塞がった。
「貴方が望んでいた恋人は、そんなイケイケGOGOな痴女っぽい女性を装った『男性』なんですか!?」
信じられない様子で、高倉・奏(拳で語る元シスター・d10164)が問いかけた。
「か、彼女が男……だと!? そんな訳ないだろ。この……大ウソつきが!」
だが、青年は奏の言葉を全く信じていなかった。
それどころか、奏が都市伝説に嫉妬しているのだと勘違いして、口汚く罵ってきた。
●純朴な青年
「さ、さっきから、とんでもなく酷い事を言っていますけど、本当の気持ちは違うでしょ!? もっと慎ましやかで、上品で、手を触れたいけれど恥ずかしくて自分から積極的にいけない、そんな大和撫子のような『女性』を恋人に求めていたのではないのですか!? ひょっとして、馬鹿か! いやもう、本当に馬鹿なのか! 男っすよ!? その気があるならまだしも、何故男に揺らぐ!? 何だ!? 顔か!? 顔が良ければなんだっていいのか!?」
青年に捲し立てるようにして語り掛け、奏が改心の光を使う。
だが、青年は迷っていた。
おそらく、半信半疑なのだろう。
都市伝説と奏を交互に見まわし……、悩んでいた。
「あ、あの……、その方は男の方ですよ……? 本当にいいんですか……? 女の子より男性を取るんです……?」
唖然とした表情を浮かべ、るかが青年にラブフェロモンを使う。
「な、何を言っているのか、分からないなぁ。彼女は間違いなく、女性。それは僕が保証する」
青年が動揺した様子で答えを返す。
おそらく、ラブフェロモンが効いているのだろう。
あからさまに動揺しており、酷くおびえた様子で、両目が泳いでいる。
それに彼女が持たざるモノか、そうでないのか、自分の目で確かめた訳ではない。
しかし、こんな可愛い男など、いる訳がない。存在する事などあり得ない!
それだけで十分だった。もちろん、全く不安でないと言ったら嘘になるが、それでも……そうであったとしても、彼女の事を信じたかった。
そして、それ以上に『ついていたっていいじゃない。人間だもの』的な思考が、青年の脳裏を駆け巡っていた。
「それなら、こうした方が早そうね」
青年の背後に忍び寄り、レヌーツァがボコッとどつく。
かなり鈍い音が聞こえたが、青年は気絶しただけ……のはず。
「さあ、どうするのじゃ? もう誰も守ってはくれんぞ」
一気に間合いを詰めながら、裕介が都市伝説に鬼神変を放つ。
だが、都市伝説はその攻撃をひらりとかわし……。
「だったら、また新しい駒を作るだけ。これだけ沢山いるんだから、ひとりくらいコロッといくでしょ、きっと」
妖艶な笑みを浮かべながら、都市伝説が華麗に舞う。
おそらく、この中に一般人が混ざっていれば、その笑みによって心を奪われていた事だろう。
しかし、都市伝説の望みは虚しく、打ち砕かれる事になる。
……全く効果がない。
もしかすると、多少なりとも効果があったのかも知れないが、それが見てわかるほどのレベルではなかった。
「そこまでだよっ! 日本列島! 全国各地! ご当地愛がある限り! 北国のニュー☆ヒーロー、羊飼丘・子羊参上!!」
次の瞬間、子羊がブロック塀の上に立ち、自ら名乗りを上げて、格好よくポーズを決める。
「ちょっ、ちょっと! 何よ、これ! 信じられない。まさか、何の効果もないなんて。まさか、あなたも……?」
そう言って都市伝説がクリスに視線を送る。
「僕ヲご所望かイ? 物好きな都市伝説だネ、可愛いヨ」
ニヤニヤと笑いながら、クリスがさらりと答えを返す。
この様子では、効果がない。おそらく、タイプではなかったのだろう。
その態度をみれば、容易に分かる事だった。
「アンタの催眠も、所詮はその程度だったという訳か。もう諦めろ。無駄に足掻いたところで、結果は見えている」
無表情に事務的に冷めた目で、十夜が都市伝説に吐き捨てた。
「そ、そんな嘘よ。た、確かに、ターゲットをチェリーボーイばかりに絞っていたけど……。嘘よおおおおおお!」
大粒の涙を浮かべながら、都市伝説が八つ当たり気味に、司めがけて飛びかかってきた。
「うわあぁぁぁ!! やめて、こないで!! やだっ――!!」
途端に司がダッシュで逃げる。
間違いなく、狙われている。
その唇を、その体を。
それが分かっているから逃げるのだ。
初めてのキスはレモン味。それとも、まったく別の味。
そんな事を考えてしまうほどの恐怖。
だからと言って、こんなところでケイケンなんてしたくない。
……それだけは間違いなかった。
●都市伝説
「はーい、楽しい、楽しいお仕置きの時間っすー。お覚悟しやがれ、都市伝説野郎!」
都市伝説の行く手を阻み、奏が抗雷撃を放つ。
主に股間……、シンボル的なところを狙って、抉り込むように撃ち込んだ。
それに驚いた都市伝説が『ひゃん!?』と声をあげ、内股気味に飛び退いた。
「お、おい、テメェ……じゃない。アナタ、そんな事をしたら……ダ・メ・ヨ」
一瞬、男に戻っていた事に気づき、都市伝説が誤魔化すようにして、可愛らしくウインクする。
だが、今更。後の祭り。
「……あァ、やっぱリ怒ってるネ。そんなに怒ったラ可愛い顔ガ台無しだヨ? ……まァ、僕の好みでハないけどネ」
苦笑いを浮かべながら、クリスが都市伝説に攻撃を仕掛けていく。
「あたしの魅力が分からないなんて可哀想。でも、こっちの坊やはどうかしら?」
その狙いは一番奥手っぽい子羊に向けられた。
「僕……、ご当地愛以外に興味ないんだよね!」
眩い光を放つ羊の角と不敵な笑みを浮かべ、子羊が近距離からご当地ビームを炸裂させる。
子羊をすっかりウブッ子だと思っていた都市伝説は、ビックリ。
そのせいで攻撃を避ける事さえ出来ず、『な、なんでよっ!』と愚痴をこぼした。
「いや、どんなに可愛くても、所詮はオトコ。そんな相手にときめいたりせん」
都市伝説に答えを返しながら、裕介がジャッジメントレイを放つ。
それでも、都市伝説は諦める事なく、今度は十夜の唇を狙う!
「さすがに同性は勘弁してくれ……」
だが、十夜も都市伝説を断固拒否。
肌に触れる事すら許さず、ひらりとかわす。
「何だか、ちょっと寂しいですね。あたしがゆりゆりしても良かったのですが、都市伝説は都市伝説。ああ許されざる……これが恋?」
思わずベルサイユめいた耽美系の妄想をしつつ、レヌーツァが制約の弾丸を放つ。
その一撃を食らった都市伝説が動きを止め、『嘘っ!?』と言わんばかりの表情を浮かべた。
「そろそろ、終わりにしましょうか。これ以上、犠牲者を増やす訳にはいきませんしね」
都市伝説の逃げ道を塞ぎ、るかがオーラキャノンを撃ち込んだ。
次の瞬間、都市伝説が『嫌ァ!』と叫び、跡形もなく消滅した。
「はぁ……、早く帰ってお風呂に入りたい……」
魂の抜けた表情を浮かべ、司がその場に座り込む。
何だかよく分からないが、とにかく疲れた。
おそらく、その原因の一部は、都市伝説に追いかけられたせい。
途中で狙いが変わったものの、それでもやっぱり怖かった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年2月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 7/キャラが大事にされていた 1
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