射抜けハート☆心の壁はアンブレイクじゃなかったよ♪

    作者:旅望かなた

     御年27歳、好きなものは鍛錬、嫌いなものは軟弱。
    「この俺を色仕掛け? へぇ物好きな淫魔もいたもんだ。ま、せいぜい楽しませてもらおうじゃないの」
     そう強気で言い放ったアンブレイカブル・羽根谷が――数時間の時を経て。
    「メロディちゃんマジ可愛いよメロディちゃん♪ CD10枚買いました!」
     なんということでしょう、匠淫魔の技でご覧の通り!
    「なぁ今度いつ会えるかな。俺、携帯とか持ってないんだけど」
    「大丈夫、あたしは公衆電話でも着拒してないよ☆ 呼んでくれたらすぐ来るので次の葛葉メロディのライブよろしくお願いします!」
    「もちろん行くよーグッズも買うよーちゃんとサイリウムも持っていくよー」
     きゃー嬉しい、とハートマークを作って頬にキッスを送る淫魔アイドル・葛葉メロディ。
    「それじゃ、あたしはレッスンあるので帰ります!」
    「おお頑張ってるんだね! 今度差し入れ送るね!」
    「ありがとーございますー!」
     こうして一人のアンブレイカブルの精神力は、全力でブレイクされメロメロにされたのであった。
     
    「というわけでアイドル淫魔なんですよアイドル淫魔!」
    「…………アイドル……?」
     嵯峨・伊智子(高校生エクスブレイン・dn0063)がぺしぺし教卓を叩くのを眺めて、緋音・奏(中学生サウンドソルジャー・dn0084)が難しい顔をする。
    「でね、でね、あんまし言葉に出来ない営業活動で、アンブレイカブルを籠絡しちゃったのよ! アンブレイカブルですよアンブレイカブル!」
    「……アイドル?」
     奏がすごく複雑な顔で首を傾げる。
    「まーそれで淫魔を狙うと、淫魔と仲良くなったダークネスが戦いに加わってきて危なさ倍々なので、今回は淫魔が居なくなった後の油断したアンブレイカブルを撃破しようって感じなのね!」
    「アイドル…………」
     ついに頭を抱える奏。
    「アンブレイカブルの羽根谷さん27歳はストリートファイターのサイキックと強力なチョップで無敵斬艦刀のサイキックを使って来るので」
    「……チョップで、無敵斬艦刀?」
     思わず灼滅者の一人がツッコミを入れる。
    「んー、戦艦斬るんじゃない? チョップで」
    「……そっか」
     まぁアンブレイカブルだから仕方ないかな、って顔で灼滅者達は頷く。
    「ちなみに羽根谷さんはるんるん気分な上に、今まで恋愛に興味が無かった反動で、女の子と見たら口説いて来たり胸なんか揉んで来たりするかもしれないから注意してね! あ、でも明らかに攻撃が散漫になるから狙ってみるのもアリかも!」
     ぶんぶんと奏が首を振りまくる。奏んにやれとは言ってないよ、と伊智子に突っ込まれて、うーと呻いて机に突っ伏す奏。
    「今回はアイドル淫魔は倒せないと思うけど、おかげでダークネス事件を予知出来たし結構強いアンブレイカブル上手く倒しちゃう機会なんで!」
     ちなみにアイドル淫魔の葛葉メロディちゃんはかなり強い上に、そっちを狙うと羽根谷が激昂して殴りかかってくるので、二人が解散して羽根谷がるんるん気分で去ろうとするところを襲撃するのがいいと思います、と伊智子は告げて。
    「まぁ羽根谷さんも最後にいい夢見れたってことで、灼滅お願いしちゃうね! よろよろ!」
     びし、と親指を立てて、灼滅者たちを送り出した。


    参加者
    堀瀬・朱那(空色の欠片・d03561)
    黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566)
    猪坂・仁恵(贖罪の羊・d10512)
    原坂・将平(中学生ストリートファイター・d12232)
    紅月・燐花(妖花は羊の夢を見る・d12647)
    奏森・あさひ(騒ぐ陽光・d13355)
    草薙・鴇(ツンデレ不良中学生・d13703)
    千歳・ヨギリ(宵待草・d14223)

    ■リプレイ

    「淫魔がアイドルすると怖いわね。硬派なアンブレイカブルが匠の技ですっかりメロメロだもの」
     硬派な人ほど落ちちゃうと、突き進むというけれど、それはアイドル道でも同じなのね。
     そう言って、黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566)は肩をすくめる。
    「不憫な羽根谷さん……せめて、最後は幸せな気持ちで灼滅してあげてーですね……?」
     猪坂・仁恵(贖罪の羊・d10512)がちょこん、と首を傾げる。
    「お、そして今日の奏はなかなかいい格好をしてますね」
     そう声を掛けられて、緋音・奏(中学生サウンドソルジャー・dn0084)はこく、と頷いて。
    「いちごさんが、見立ててくれたんだよね」
     隣で手を振るサポーターいちご。
    「誘惑作戦は奏さんもやればいいのに? やらないんですか?」
    「ん? カナデはアイドルの格好ハしないのかイ?」
     いちごと反対側からのクリスの言葉に、ぶんぶんと奏は首を振る。
    「あの、その、これで女の子判定されたらちょっと……うん、うん……」
    「あぁそうなノ。ちょっト残念だネ」
     奏の言葉に頷いてから、クリスは「でモ、男らしイ格好モなかなカ様になってるヨ☆」とスマートフォンのカメラで奏をぱしゃり。「で、もっとこうワイルドな感じのポーズをですね」と仁恵が演技指導をつける。
     ちなみにいちごも女装しないならと奏に会わせて、長い髪を束ね伊達眼鏡を掛けての男性スタイルである。
     ちなみに奏の付け髭は、全力でいちごに阻止されたのだけれど。
    「奏おにーちゃん、カッコいー男の人するんだね! つけひげ? つけひげ?」
    「あ、う……うん……」
     陽桜にめっちゃ期待されてるし、実はポケットの中にもう一つ用意しておいた。
     いざってときに必要かもしれないし。
    「すごいね、楽しみなの!」
     そう言う陽桜の隣で舞夢まで目をきらきらさせているし。
    「お元気そうで安心いたしました」
     そう言って微笑む紅月・燐花(妖花は羊の夢を見る・d12647)に、奏は小さく頷いて「あの時は、本当にありがとう」と頭を下げる。
    「今度は共に戦う仲間としてご一緒させていただきます」
     どうぞ宜しくお願いいたします、とスカートを摘まみ一礼する燐花に、「よろしく、お願いします」と奏ももう一度ぺこり。
     そんな様子に、摩那はくすりと笑って。
    「このまま淫魔アイドルと、親衛隊と化したアンブレイカブルが徒党を組んで、コンサートとかされると超迷惑なのは必須。小さいうちに叩いておくのは必定ね」
     くい、と赤縁の眼鏡を掛け直し、摩那は大きく頷いて。
    「せっかく新しい世界が開けたばかりで悪いけど、ここでジ・エンドにさせてもらいます」
     並んで歩き出した燐花が胸に手を当て、「私の中にあるもう一人の私よ、今ここに……」と小さく呟く。普段からメイドとして生きる燐花であるが、今日の彼女はアイドルモード。
    「淫魔の思い通りにはさせないぞ!」
     奏森・あさひ(騒ぐ陽光・d13355)が拳を突き上げてから、「あと、アイドルごっこ楽しむぞー♪」と嬉しそうに笑って。
     残った男性陣は、しっかりと頷き合う。
    「今日の俺達は共犯者だな。親衛隊参上だ」
     原坂・将平(中学生ストリートファイター・d12232)が「○○ちゃんラブ!」と書いたうちわを女の子全員分用意して、にやりと笑って。
    「共犯者……ったく、しゃーねーなやってやるよ。アイドルのファンとかよくわかんねぇけど……弟でもアレだけど……」
     草薙・鴇(ツンデレ不良中学生・d13703)が目を逸らして「これで仲良くなったとか思うなよ!」と言い放つ。くすり、と奏がそれに笑んだ。
    「よし、頑張るか!」
    「おう!」
    「頑張ろ……!」
     再び頷きを交わし、男子三人はうちわを握り締め歩き出した。

     羽根谷は、とっても楽しく愉しかった淫魔アイドル葛葉メロディとの逢瀬を終え、帰って寝ようと大あくびをしたところだった。
    「お兄ちゃん」
     ふと後ろからかけられた声に、「ああん?」と振り向いてから――目が点。
     女子体操服です。
     女子体操服です。
     小学生の女子体操服です。
     大事なことなので三回言いました。あとブルマです。
     今日の千歳・ヨギリ(宵待草・d14223)は体操服アイドルなのです。
    「お兄さんがメロディ先輩の目を付けた人? ボクはあさひ、アイドルの卵だよ!」
    「羽根谷サンだよね? メロディちゃんから聞いてマス!」
     さらにあさひと堀瀬・朱那(空色の欠片・d03561)に声を掛けられ、羽根谷は唖然。
    「メロディさんの後輩アイドルとして、私も応援してください」
     さらに燐花が横から声をかける。見上げる角度はやや上目遣い、手はさりげなく羽根谷に触れて。
     彼女のキャッチコピーは『今夜の私はちょっぴり大胆』!
    「い、いやー困るなー。メロディちゃんにも応援頼まれたばっかりなんだけどなー」
     あまりの状況にぼんやりしていた羽根谷も、五人もの女の子に囲まれてもうデレデレ。
    「イヤー、この筋肉! 強そうだナー男らしくて憧れちゃうナー♪」
     朱那がそう煽れば、即座に「そうだろうそうだろう」とマッスルポーズを取ってみせる羽根谷。
     反対側からは燐花が私も見て、と言いたげに視線を送り、その視線に気付いて振り返れば柔らかな微笑みが待っていてデレデレ。
    「お兄ちゃん……メロディお姉さんも良いけど、ヨギの……こともよろしく……ね」
     さらにうるうる上目遣いで正面から女子体操服のヨギリが見上げれば、「うへへ可愛い女の子にそんな事言われちゃーなー」と頭をぐりぐり。
    「ねぇ、お兄さん。ボク達の中から一番選んでくれる?」
     挑戦的にあさひが笑えば、「うおー悩むなーみんな可愛いじゃダメかよー」とにへらにへら、もう羽根谷の笑いは止まらない。
    「でも俺はやっぱ割とアイドルっぽい子がいいかなー」
     そう羽根谷が言った瞬間、摩那は前に出た。
     そう――赤縁眼鏡は、世を忍ぶ仮の姿。
     黒縁ビン底眼鏡を掛けると――!
    「世の不正を質す正義のアイドル、委員長マーナ参上!」
     なんということだ委員長が登場したぞ!
    「羽根谷さんはファンになってくれないと、指導しちゃいますよ」
    「うっひょー! 真面目ちゃんも可愛いじゃねーのぉ!」
     躍り上がる羽根谷。そしてその反対側からは、もう一人の少女が顔を出していた。
     アイドル達のコアな追っかけ――もとい、仁恵である。
    「あーっ! あの子達は今人気急上昇中の……!」
     ぐぐ、と握られる拳。捕まれるカメラ。
    「例の深夜番組で、なぜか常にカメラ目線と言う事がネットで人気になり、じわじわカルト人気を集めている燐花ちゃんに、その横にいるのは悪い意味で大人な大きなお友達にストライクショットのヨギリちゃん! それに子ども番組に委員長の風を吹かせて叱られて喜ぶ児童続出先生泣かせの摩那ちゃんに、新人アイドル異種格闘戦大会で足技一本絶対領域健康美で優勝した朱那ちゃんに、大物俳優からのデートの誘いをギタークラッシュで粉砕したと裏で噂のあさひちゃん!」
     何か凄まじい経歴が捏造された瞬間だった。
    「むむ、そしてあの男は……」
    「ん?」
     羽根谷が振り向いた次の瞬間、思わず目を見開いて呆然と立ち尽くす仁恵。
     数秒。
     駆け出した仁恵は、ぎゅっと羽根谷の手を握り締めていた。
    「……好きです、一目見たその瞬間から……突然で驚いたでしょうけれど……」
     謡うように囁いた仁恵に、「うひょう! 君もアイドルかい!?」と嬉しそうに羽根谷は目を見開く。
    「今まではアイドルに目を奪われた者……今は、あなたに……」
    「ちょっと待ったーッ!」
     突然の男の声に、がばりと一同は振り向いた。
    「それよそれそれ! ひどいじゃないか! 俺たちを差し置いて、そんなぽっと出のオッサンと……!」
     迫真の演技でぎりぎりと奥歯を噛み締める将平。
    「おい……その、ね、姉さん……たちに、近づいてんじゃねぇよっ」
     盛大に顔を真っ赤にし、照れながらそれでも羽根谷に言い募る鴇。
    「へっへっへ、この世はモテる者が第一なんだよ! 現にアイドルちゃん達だって、俺にべったりじゃないか!」
    「……こんなの、アイドルの営業じゃないよ、みんな……!」
     奏が必死の声で呼びかける。微妙に演技なのか本音なのか、将平と鴇は若干迷う。
    「嘘だと言ってくれよ! あさひちゃん! 朱那ちゃんも! ていうかヨギリちゃんはまずいって!」
    「芸能誌にすっぱ抜かれたら大スキャンダルだぞ!」
    「ファンレターにカミソリ入れられちゃうよ!」
     とにかく気を取り直して必死に羽根谷から女の子達を奪い返そうとする男子三人組。
     慌てず騒がず修羅場には慣れた顔で、朱那はにこりと手を伸ばす。
    「喧嘩は楽しくナイよ、歌って楽しもう!」
     そして歌いだす楽しいメロディ。具体的にはディーヴァズメロディ。
    「ぐはぁっ!」
     突如の攻撃に血を吐く羽根谷。
    「な、何をするんだ君達!」
     慌てる羽根谷の手を、そっと燐花が取って。
    「喧嘩は止めて、私の歌を聞いて下さいな」
    「そうか、なら仕方ないな」
     あ、納得した。
    「レッツ・プレイ!」
     その間にあさひが封印解除。そのまま羽根谷に手を伸ばして。
    「ね、お兄さんも一緒に歌って踊ろう? さぁ、手を出して!」
     そして当然のように繰り広げるはパッショネイトダンス。
     周囲を警戒していたヴィランが頷けば、機会を伺っていた舞夢と陽桜が元気いっぱい加わって、辺りはもはや混沌の渦。
     さらにはクリスがミラーボールの如く妖冷弾を撒きまくる。
    「アイドルっておっかねぇなぁ」
     こっそりそう耳打ちした将平に、鴇と奏は無言で頷いた。

    「いやーもう誰もかれもかわいいなぁふへへ。無礼講でいいんだよな?」
    「お兄ちゃん……! いやっいじめないで……!」
     ヨギリの胸に手が伸びようとしたので、慌てて朱那が庇いに入る。
    「ボクじゃ、ダメなの?」
    「いやいや君でもいいぜふへへ」
     あ、なんか逆効果だったかもしれない。
     なんかいろいろ触って来ようとする手を一生懸命避けまくりながら、スキンシップのふりをしてぺしぺし閃光百裂拳を当てる朱那。
    「ニエだけを見てればいいんですよ、君は!」
     げしげしと仁恵がロッドの先に魔力を宿して叩き付けまくる。
    「ねぇ、ボクを見て。お兄さんの為に、今、歌うよ」
     あさひが思いっきり誘惑の声を張り上げ、じっと熱い眼差しで羽根谷を見つめ。
    「こんな簡単に誘惑されるなんざ、男として情けねぇ奴だぜっ!」
     鴇がバトルオーラに焔を宿し、思いっきり拳に乗せて殴りつける。「男はいらん!」と投げ返す羽根谷。
    「私の心はちょっぴりダークネス。貴方の心を灼滅したいの」
     そう燐花が歌姫のメロディに乗せて歌い上げてから、「……私、作詞のセンスはございません、残念ながら」と遠い目をする。
    「鬼さん、こちらっと」
     やはり歌いながら、こちらは物騒にオーラを宿した拳や影で、素早く体力を削り取っていく摩那。スリットの深い拳法服から美脚がチラチラするけれど、そんな直接攻撃を加えられているのに見取れたりなんかするわけが。
    「いやー姉ちゃん、アイドルらしいイイ脚だよなぁ」
     あった。
    「いやでもこっちもいいなぁ」
    「女の子を乱暴に扱うなんて! 酷いよ!」
    「あいててて」
     今度はあさひに手を出し、手痛いオルタナティブクラッシュを喰らう羽根谷。
    「酷い、私よりもそちらの方がよろしいのですね」
     燐花のぽかぽか鬼神変ぱんちを、「嫉妬かい可愛いねぇ」とにやにやしながら羽根谷は正面から受け止めた。
     頭で。
    「うおいたたたた!」
     世間一般にはそれを直撃と呼ぶ。
    「俺達のアイドルを……独り占めなんて……しかも目移りなんてうらやま……ゆるさーん!」
     ファンのルールって奴を教えてやる、と全力で演技を継続しつつ、将平は抗雷撃で得た雷を纏いながら拳をがしがし叩き込む。鴇がさらに「よそ見してんじゃねぇよ!」と毒を重ねて気を惹こうとする。
    「いってーなー嫉妬は醜いぞー」
    「してねぇよ! よしんばしてもお前にはしねぇよ!」
    「あいででで」
     攻撃を打ち込まれつつ、でも華麗によそ見する羽根谷。
    「……やっぱり……子どもじゃダメ……?」
     うるうる瞳で見上げるヨギリに、羽根谷はイイ笑顔で笑って。
    「そんなオールオーケーに決まってるじゃないか今行くよ!」
    「いや……っお兄ちゃんの、えっち……!」
     オーラの閃光でぶっ飛ばされた。
    「ところでそこの……もしかして」
     その視線が行ったのは奏である。
    「男装少女?」
    「なんで!?」
     思わず愕然と叫ぶ奏。
    「今日はちゃんとジャケットにスラックスだしネクタイして来たし髪も低めに結んだし靴だって革靴履いてきたのに!」
    「男装じゃん」
    「言葉そのままの意味で男装だけど!」
    「まぁ胸揉めばわかるんじゃね」
    「やーめー……!?」
     おっと細くて硬い感触。
    「揉めばわかると申したか」
     おっとウツロギの胸だった。
     しょっぱい顔をする羽根谷。
    「ったく、胸くらい減るもんじゃ……」
     そう言ってウツロギを放り投げると、そこには。
     立派な鼻髭(付け髭)を装着した奏が腕を組んで立っていた。
    「あっはっはおひげさんおもしろいっ!」
    「つけひげ! つけひげだー!」
     思う存分笑い転げる舞夢と陽桜。
    「……わかった、私が男だって……」
    「女でもそれはないわーひくわー……」
     超やる気なさげに右手を振り上げ――無造作に横に薙ぐ羽根谷!
    「おおおおお!?」
     実は今日初めての斬艦刀チョップ、それも森羅万象斬だ!
     だがしかし!
    「っと……」
     鴇がバトルオーラを全力で展開し、その一撃をクロスした両腕で食いとめる!
    「つ、つか別にどうでもいいんだけどなっ! ただ一応ディフェンダーとして守る義務があるから……」
    「御託はいいから道開けろチビ」
    「…………」
     げし。
    「ドウブッハ!?」
     急所にレーヴァテイン蹴りを喰らって悶絶する羽根谷。
    「ボクの足技も凄いよ! 見てくれる?」
     足をチラリと見せながら飛び込んだ朱那が、凄まじい勢いでオーラを乗せた蹴り技を決める。最後に吹っ飛んでごろんごろんして「ナイス・絶対領域……」と呟く羽根谷。
    「アンブレイカブルって、こういう役回りなんだ……」
     心の壁、鍛えたいなぁと目を逸らしながら、軟弱者を戒めるトラウマを呼ぶべく将平は影を呼び。ヴィランがくるっとヒーリングライトを呼んで鴇を癒す。心もちょっと癒す。
    「……いや、変なひと……」
     ヨギリがすっかり冷たくなった目で羽根谷を見ながら、容赦ない神薙刃を繰り出して。
    「よそ見はしないでくださいませ、どうか私をずっと見ていて……」
     燐花が無理やり羽根谷の頭を引っ掴んで、自分の方を向かせた。
     めきょり。
    「……ご褒美です」
     ぐっとサムズアップして、そのまま羽根谷は地面に溶けるように消えた。

     戦いを終えた灼滅者達の表情はさまざまである。
     疲れ切った者、手を合わせる者、達成感と爽快感に溢れる者。
     だけど。
     強敵に(色んな意味で)勝った事実は――消えない。
     色んな意味で。

    作者:旅望かなた 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年3月8日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 19
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