男と華奢な青年によるある意味予想通りの展開

    作者:聖山葵

    「へへっ、あんた最高だったぜ……」
     壁にもたれかかった男はぐったりとしたまま熱っぽい表情で一人の青年を見ていた。
    「はぁはぁ……そうですか、それは良かった。では、先程のお話――承諾して頂けますね?」
     男同様壁にもたれかかった華奢な青年は肌をほんのり朱に染めながら、相手の言葉を待つ。
    「ああ、もちろんだとも。まぁ、また相手してくれるならだけどな?」
     口の中を切ったのか、こぼれてきた血を拭いながら男は笑みを浮かべ。
    「良かった、私も肩の荷が下りましたよ」
     ほぅ、と息をはいた青年は殴られて赤くなっている場所を押さえ、ゆっくりと壁から背中を引きはがす。
    「なんだ、もう行っちまうのかよ」
    「報告もありますからね。続きはまた今度にして下さい」
     不満そうに声を投げた男に青年は苦笑の成分を幾割か混ぜた笑みで応じると廃墟の入り口に向かって歩き出す。
    「しゃーねぇか、ラブリンスター様とやらによろしくな?」
    「はい」
     背にかかる言葉へひらひら手を振ってみせて。
     
    「みんな、来ているな」
    「あ、うん。たぶん大丈夫だと思うよ」
     鳥井・和馬(小学生ファイアブラッド・dn0046)を含めた面々を見回したエクスブレインの少女は、今まで予知にもかからなかったダークネスの動きが察知されたことを明かした。
    「判明した理由はあるダークネスが野生のアンブレイカブルを訪問したことによるんだが」
     単独でアンブレイカブルのもとに赴いたそのダークネスは、何というか予想通りの交流を得て自分達の邪魔をしないようにと約束を取り付けるらしい。
    「流石にこのまま放置するのは色々拙いからな、そこでみんなを呼んだ訳だ」
     とは言うものの、訪問した側のダークネスを狙った場合、アンブレイカブルもこのダークネスを護る為に参戦してくる可能性が高い。
    「よって今回は交渉が終わってアンブレイカブル一人が残された時点でアンブレイカブルの方を襲撃、灼滅してもらいたい」
     接触のタイミングは、おそらく夕方日が沈みかけた頃になるだろうと少女は言う。
    「場所はシャッター街の外れにある人気のない廃墟だ。戦いになる頃にはまだ夕日も完全に沈んではいない。明かりは不要だろうし、ありがたいことに討つべきアンブレイカブルの男も消耗した状態にある」
     たぶん訪問者と殴り合いの戦闘でもしたからだろうと少女は告げて。
    「くっ、野性味溢れる男と華奢な青年、私のドキドキを返……あー、まぁ、そういうことで敵は若干弱った状態にあるからきっとチャンスだと思うぞ」
     ちなみに灼滅対象のアンブレイカブルはストリートファイターのサイキックと酷似した攻撃手段を持ち、バトルオーラのサイキックとそっくりなサイキックも使ってくるとのこと。
    「戦場となる廃墟はダークネス達が直前に一戦やらかしただけあって問題なく動ける程度の広さがある。特筆すべき点はとくにないな」
     そこまで説明を終えると少女は一つ頷いて己の拳を握る。
    「相手は疲弊しているもののダークネス、油断や慢心は危険だ」
    「あ、うん。解ってる」
     くれぐれも気をつけてなとかけられた声に和馬は笑顔で応じ。
    「しかし、やけに機嫌がいいな」
    「や、ホラ。今回変態が相手じゃないし。じゃ、いってくるね」
     訝しんだエクスブレインに晴れやかな表情を見せた和馬はスキップでもしそうな勢いで教室を後にした。
     


    参加者
    水瀬・瑞樹(マリクの娘・d02532)
    宮村・和巳(傷付けたくない殺人鬼・d03908)
    皐月森・笙音(山神と相和する演者・d07266)
    七篠・神夜(お姫様の為の夜想曲・d10593)
    八葉・文(夜の闇に潜む一撃・d12377)
    宍場・陵太(浮雲・d12433)
    リノ・ラファリオ(二面のパイロン・d12447)
    緋金・藍璃(全力全開絶好調・d13378)

    ■リプレイ

    ●和馬補正
    「初めに言っておく。私はオタクだ。腐女子要素もある。BLもGLも有だ」
     言っておくと言うからには心の中ではなく直に声に出していたのだろうか。口に出していたなら水瀬・瑞樹(マリクの娘・d02532)はそう力説していたと思われる。
    「でもあくまでも許容範囲というだけ。私はノマカプ、年の差カップル派だ!」
     何というか自分の趣向を暴露しつつ。まぁ、実際にあったかどうかは現場にいた灼滅者達以外は知り得ないことなのだが。
    「えーと」
    「俺はぜってーツッコまないからな……!」
     助けを求めるような鳥井・和馬(小学生ファイアブラッド・dn0046)の視線から宍場・陵太(浮雲・d12433)が顔を背けたのは、陵太自身もその手の話しに関わりたく無かったのかもしれない。顔を見たなら、きっとこう書いてあったことだろう。
    「すげー苦手だ、こういう依頼、何事もなく終わってほしいぜ……」
     と。
    「って言うか、今回の相手はごく普通の相手だよね?」
    「和馬はまだ知らない……この依頼がただの戦闘依頼ではないという事を……」
    「え゛っ」
     思わず周りに尋ねる和馬に不穏な呟きを吹き込んだのは、宮村・和巳(傷付けたくない殺人鬼・d03908)。
    「まぁ、普通のアンブレイカブルだといいッスね!」
     実に良い笑顔を浮かべる和巳を見ると『和馬さんの動向する依頼の相手が普通の訳がないじゃない』という本音さえ置いておきたくなってしまう、と言う訳ではないが七篠・神夜(お姫様の為の夜想曲・d10593)は、引きつった少年の顔を見て浮かんできた言葉を放置しつつ真顔を作る。
    「元アイドル志望としては、ラブリンスターを1発殴ってやりたい所だが……な?」
     だとしても今できることは推定その部下が接触したアンブレイカブルをぶちのめすぐらいであり、それだけで済ませた方が精神衛生上良さそうな灼滅者が複数いるのだ。
    (「情報も欲しいけど……何より、仲良くされるのも困るんだよね」)
     精神的ダメージを負う危険と情報を得られるかもしれないと言う期待との板挟みに合う皐月森・笙音(山神と相和する演者・d07266)の様な者もいた。
    「つーか、ほかのヤツらはノリ気満々なのか……?」
     たとえそうでなかったとしても、沈黙は時として消極的同意ととられる。
    (「……筋肉モリモリマッチョマンの変態、だろーな、どーせ……」)
    「大丈夫……だよね?」
     緋金・藍璃(全力全開絶好調・d13378)の様に、まあいいかで割り切れたならおそるおそるという態で問題のアンブレイカブルが潜んでいる廃墟を窺う少年も救われたことだろう。
    「……男、どうしの、話し合いは、夕日を、バックに、川原で、やると、聞いた」
     もしくは八葉・文(夜の闇に潜む一撃・d12377)の様に周りの話を聞いてもピンと来ていなかったなら。
    「もしこのアンブレイカブルも変態だったら、『あ、やっぱりそういう運命なんだ……』ってしみじみと思うッスよ」
    「や、思わないでいいからね?」
     不安は仲間の言葉で加速する、もしくは後ろから這い寄ってきて和馬の身体を登り出す。
    「何だかいきなり消耗してるよね」
     戦闘始まる前から応援に来た灼滅者が施したサイキックは肉体的には過剰回復だと思うが、それはそれ。
    「最初の一声、和馬にかけて貰っても良いよね?」
    「とりあえず、和馬君、声掛け先鋒は任せたッスよ!」
     とこの少年はファーストコンタクトを笙音達に依頼されていたのだから。
    「和馬ちゃんのサポートで参加するんだよー よろしくね」
    「あ、うん。こんごともよろしく」
    「よろしく頼む、俺は周囲の警戒や、撤退する場合の経路の確保を優先的に行おう」
     応援に駆けつけてくれた灼滅者との挨拶の時もまともな精神状態であったかどうか。ただ、こんな状況にもかかわらず、感じていた。
    「ぁ、同意の上でも犯罪はダメですからね、神夜さん」
     この一件、平穏に終わらないんじゃないか的な予感とかは。

    ●声をかけてみる
    「えーと、ごめんください?」
    「うん?」
    「さっきの人と何してたの?」
     ごくありきたりな挨拶に振り返った男へ次に声をかけたのは、リノ・ラファリオ(二面のパイロン・d12447)だった。
    「殴り合いだ」
     これについては和巳も聞いてみたかった所だったが、男の返答は簡潔そのもの。
    「えっ」
    「良かったぁ」
    「で、何の用だよ?」
     変態性を期待した者には拍子抜けであり、平穏な展開を期待した者には安堵をもたらした男は灼滅者達を眺めて聞き返す。これも男側からすれば至極もっともな疑問だろう。一人の訪問者が去ってそれ程経たないうちに今度は団体の訪問客があったのだから。
    「ラブリンスター様に会いたいんですが、何か知りませんか?」
     男の問いかけに質問を返したのは、神夜。
    「悪ぃな。俺はコイツのことにしか興味がねぇんだわ」
     予め考えていた「自分もラビリンスターの声を聞いてアイドルを目指そうとしている」と言う設定で事情を話して見るも、男は自分の拳を示して軽く頭を下げる始末。本当に何も知らないのかとぼけているのかは解らない。
    「まぁ、やっぱそうなるか」
     もっとも、藍璃もアンブレイカブルが素直に口を割るとは思っていなかった。
    「どーも、こんにちわッス、俺の名前は宮村和巳、よろしくッス!」
    「お、おぅ」
    「早速ッスけど、俺らと勝負ッス」
     だkらこそ、かわりに進み出た和巳は、男をビシッと指さすと微妙に気圧された男へいきなり勝負を申し込み。
    「ほぉ、そいつはいい。雑魚にゃ見えなかったしな」
     勝負という言葉を聞いた男の顔が一変する。
    「まだ、満足出来てないんだろ? ……なら、オレが満足させてやるぜ?」
     更にこれを神夜が煽り。
    「そう、勝負しよう。私達が勝ったら質問に答えて」
    「僕らが勝ったら、ラブリンスターについて、貴方が知っていることを話して貰います」
     やる気を見せた男に瑞樹や笙音が条件を出す。もちろん渋られることも瑞樹は考えていた、だが。
    「その賭けって俺にメリットないぜ? いや一方的な約束か」
    「えっ」
     真っ正面から問題点を指摘されたのは、予想外だった。
    「そもそも俺が勝ったときはどーすんだ?」
     確かにこの時点で灼滅者達は相手側が勝った時の条件を提示して居らず。
    「だったら、こうだ。俺達が勝ったら喋ってもらう、お前が勝ったら、この噂のラブリンのCDをやるぜ!」
     すかさず藍璃が条件を提示して補完するも。
    「いや、ンなもんもらってもなぁ」
     藍璃が待機中に「普通だ、これ。思ってた以上にありきたりだ」とコメントを漏らしたCDはお気に召さなかったらしい。
    「ってことはアレっすか? やっぱりボンキュッボン女の子より和馬君みたいな男の子がいいんッスか?」
    「え゛っ」
    「いや、これはごく普通に殴り合いしか興味が無かったってだけじゃ無いのか?」
     顔をつきあわせヒソヒソ話し合う灼滅者数名と。
    「なぁ、これって『実はそうなんだぜ……うほっ、そこのガキ、いい身体してるじゃねぇか』って合わせるべきなのか?」
     文や陵太と言った面々に困惑顔で問うアンブレイカブル。
    「……交渉の、間は、邪魔、しない」
    「あー、邪魔とかそう言う事じゃなくて、な?」
    「いや、俺にも訳解らねぇ会話だからなぁ……」
     首を横に振った文に続き、困った顔で応じる陵太の顔には「どうしてこうなった」と書いてあるようであった。
    「あー、なんだ。じゃあとりあえず、やるか? 話もすすまねぇし」
    「おう、そうするか」
     と、こんな感じで灼滅者達と男の対話は終了し。
    「主よ、やはり愚問であったわ!」
     リノが一人二役で結論を出した頃には場の空気は既に戦いのものへと移行しつつあったのだ。

    ●些細なこと
    「変態じゃないッスか……よかったね、おめでとうッス!」
    「や、ちょっと」
     たぶんそんなこと言ってる場合ではないと言いたかったのだろう。
    「でもなんか物足りないッスよね……和馬君には悲劇が似合うというか……?」
    「させないっ」
     ブツブツ呟いている和巳の前に飛び出したリノが飛び出し。
    「うおらぁっ」
    「うぐっ、よそ見は禁物だよ、キミ」
     鋼のように鍛え上げられた男の拳をかわりに受けたリノは顔を歪める。
    「今回の戦において我らの役目は防壁! 堪えるのだ主よ!!」
    「わかってるよもぉ~」
     一人二役でビハインドであるガルメシアの分までしゃべりつつ、振り下ろす無敵斬艦刀が殴りつけてきた男を捉える。
    「うぐっ、やるじゃねぇか。ちっこ」
     顔を歪めつつもニヤリと笑ったアンブレイカブルに今度はガルメシアの霊撃が叩き込まれ。
    「こ、こいつが好きなのは女じゃなくて華奢な男だよね……? また年端もいかない少年を狙ったッスよ?!」
    「いや、いくら何でもそれはこじつけですからね。実際はどうか知りませんが」
    「いや、ちょっと待てお前ら! その話終わってな……うげばっ」
     和巳と瑞樹のやりとりに気をとられた男は死角から斬りつけられた上に炎を宿した二振りの解体ナイフを叩き付けられて廃墟の床に突っ伏す。
    「もー、そんな些細なことに気をとられてるからだよ」
    「俺はぜってーツッコまないからな……!」
     目の前のあんまりな光景に若干顔を引きつらせつつも、陵太は左手中指に填めた契約の指輪から魔法弾を放つ。これは戦いなのだ、ましてや消耗しているとはいえ相手はダークネス。
    「がっ」
    「それなりにタフそうだね、阿吽」
     笙音は分裂させた小光輪を自分の盾にしつつ仲間の攻撃に晒されている男を観察して結論を出すと、霊犬の名を呼び。
    「がうっ」
    「うおっ?!」
     呼応した阿吽が身を起こしたアンブレイカブルに斬りかかる。
    「くっ、流石にこんだけ数に差が」
     かろうじて斬魔刀を両手で挟み、顔を険しくした男へと。
    「いくぜ、黄金の左ならぬ、緋色の左!」
    「あ」
     今度はシャツの袖をまくった藍璃の腕が巨大化して落ちかかる。左半分だけ脱いだ上着が動きに合わせてはためき。
    「うぉぉぉっ」
     振り下ろされた腕が廃墟の床へダークネスを挟み込む音の中、男は咆吼する。
    「まだまだぁっ! はっ、いいじゃねぇか。最高だぜ。楽しいねぇ」
     埃をまき散らし自分を押し潰そうとした藍璃の腕をはね除け、楽しそうに笑って周囲を見回す。
    「んで、次は誰だ?」
    「……ウチは刃。 ……あんたを、切り裂き、穿つ、モンや」
     問いかけに名乗るように口を開いたのは、文。
    「……殺技、霧」
    「おぅ、来いやぁっ」
     袖口から溢れてくるどす黒い殺気を待ちかねたかのようにダークネスは叫ぶ。
    「ならオイラも」
     文へ便乗するように撃ち出された光の刃が殺気とは別方向から男を狙い。
    「ぐぅぅぅ、甘いぜぇっ」
     殺気に押し潰されながらも迷わず刃をかわして見せた男はただ一度の跳躍で和馬に肉薄する。
    「おらぁっ、返礼だ受けと」
    「とーぅ」
     この時、一人の灼滅者が割り込んで来なければ繰り出されたアッパーカットで宙を舞っていたのは和馬だっただろう。
    「痛ぁ……それじゃ、僕はこれで」
    「は?」
    「えーと、ありがとうでいいのかなぁ?」
     殴り飛ばされるなり、颯爽と去っていった一人の灼滅者に、一瞬時が止まったが、たぶん気にしてはいけなかったのだ。
    「ぐおっ?!」
     一瞬気をとられたダークネスは気がつけば音波で吹き飛ばされていたのだから。
    「オレが、本当のアイドルって物を……教えてやるぜ?」
     そう、前置きして口を開いた神夜の歌声をBGMに戦いは、続く。
    「……殺技、雨」
    「いいねぇ、いいねぇっ」
     文の向けたガトリングガンの銃弾が雨の如く打ちつける中で男は笑い。血を吐きながらお返しとばかりにオーラを撃ち出し。
    「あーっうぜーなもう……!!」
    「そいつはすまねぇなぁっ」
     鯉口を切って一瞬腰を落とし、飛び込んでくる陵太へ悪いとは思っていないような顔でカウンター気味に拳を突き出す。
    「ぐあっ」
    「お楽しみの所悪いけど、何時までも付き合う訳にいかないからね」
     もし突き出された腕が笙音の射出したリングスラッシャーに切り裂かれていなければ、陵太と男のぶつかり合いはどちらに軍配が上がっていたことか。
    「そうかぁ? だが楽しかったぜ、本当に――」
     結果として何度かの目の居合斬りが致命傷に至ったアンブレイカブルは、楽しそうな笑みを浮かべたまま、ゆっくりと傾ぎ、倒れ込んだ。
     
    ●のこったもの
    「おじさんまだ生きてる? 教えてよさっきのこと」
     リノは倒れた男に近寄るが、灼滅されたダークネスはただ崩れゆくのみ。
    「えーと……」
     何故かと問われれば「だってあなた方誰一人として手加減攻撃をしなかったじゃないですか、やだー」である。
    「何だか満ち足りた顔でしたね……」
     救いがあるとすれば、倒れた男が満足そうな顔で逝ったことぐらいだろうか。最強の武を求める、狂える武人ならば戦いに果てたのは本望だったことだろう。
    「そうッスね、変態だったッスけど」
    「えっ?」
     変態っぽいことなど何一つしていなかったのは気のせいだったのか。
    「……こんなの、出てきた」
     言いつつ文が見せたのは、部屋の隅に転がっていたマッチョが表紙の雑誌。どうやら文はアンブレイカブルが倒れてからずっと部屋と男の持ち物を探っていたらしいが。
    「やっぱりッスか」
    「俺はぜってーツッコまないからな……!」
    「って言うか……それ、どっちかって言うと格闘技関連の本だよね? 格闘家とかちゃんと書いてあるよね?」
     男を変態にしておきたい誰かの意図が感じられるのは、気のせいだと思いたい。
    「あっさりと他のダークネスを誘惑する能力は、やっぱり厄介だよな」
     まるっきりコントになっている仲間達のやりとりをチラ見した神夜は、「やってる事は、ひとまず置いておくとして」と前置きしつつ、壊れた窓の外へ目をやった。
    「早く何とかしないと、本気で面倒な事になりそうだ……」
     結局、情報らしい情報は手に入らなかった訳だが、それでもターゲットの灼滅には成功している。
    (「それに……な」)
     だと言うのに手放しで喜ぶ気になれないのは、気にかかることがあるからか。
    「聞き出せても聞き出せなくてもダークネスは殲滅方針、とりあえず目的は果たしましたよね?」
    「あ、ああ」
     帰りましょうと言う瑞樹の声にそうだなと頷いて、神夜は廃墟の出口に向かって歩き始め。
    (「声が聞こえた、か」)
     何気なく立ち止まって痛んだ天井を仰ぐが、悩む神夜を満足させてくれる答えなど書いてあるはずもなく。
    「神夜先輩?」
    「あぁ、悪い」
     笙音に名を呼ばれ、我に返ってその部屋を後にする。残されたのは、一冊の雑誌と少量のゴミ、そして一人の男が居た証だけだった。
     

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年3月3日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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