横浜ビーフを食ろうてみれば文明開化の味がする

    作者:相原あきと

     横浜、そこは幕末の開港とともに発展した町。
     そして日本で初めて牛鍋屋が開かれた場所である。
     そんな横浜の歓楽街、裏通りにあるホテルの前に……3人の牛人間が突っ立っていた。
     ホテルに入ろうとするカップルが近づくが、牛人間達に気付いて逃げ去ってしまう。
     すごく営業妨害である。
     やがてホテルから1組の男女……なのか知らないが、中年顔の牛人間と眼鏡のショートカット少女淫魔が腕を組んで出てきた。
    「フッ、なかなかやるじゃないか、気に入ったよ」
    「そんなぁ~、ありがとうございますぅ~」
     アイドルのステージ衣装っぽい服を着たその少女淫魔がしなを作り、中年牛人間もまんざらではない。
    「ちょっと隊長、隊長だけずるいぎゅう!」
    「俺達にも分けて下さいぎゅう!」
    「隊長ズルイんだうし~」
     中年牛人間を非難する牛人間3人、どうやらこの中年牛人間が3人の隊長らしい。
    「黙れ! このメモるんちゃんは隊長たる俺のものだ。お前らは統一飼料の横浜ビーフAでも食っていろ!」
     隊長に怒られしゅんとする3人。
     そんな3人にメモるんと呼ばれた淫魔が小声で言う。
    「今度ぉ、隊長さんに内緒でぇ……♪」
    「ぎゅう!?」
    「やったぎゅう!」
    「うひょ♪……ん? なに書いてるうし?」
     隊長に内緒で小躍りする3人に対し、メモるんは小さなメモ帳を取り出してカキカキ……。
    「私ぃ、もの覚えが悪いんでぇ、こうやって大事な事はメモらないとすぐ忘れちゃんですぅ」
     てへ、と小さな舌を出して笑顔。
    「それではぁ、私達の邪魔しないで下さいねぇ♪」
     そうして、横浜ビーフ怪人とその手下達に営業をした淫魔メモるんは横浜の闇へと消えて行った。

    「神奈川には『横浜ビーフ』があるし、豚の次は牛カナって思ったんだよね」
     教室に集まった皆に話すのは十津金・旭(桜火転身トツカナー零五・d06921)だった。
    「それで、ボクがエクスブレインに予知をお願いしんだけど」
    「ええ、ご当地怪人のダークネスを見つけたわ」
     旭の言葉にエクスブレインたる鈴懸・珠希(小学生エクスブレイン・dn0064)が同意する。
    「依頼内容はもちろん、横浜ビーフ怪人の灼滅よ!」
     敵は横浜ビーフ怪人と、その手下が3人。
     ビジュアルは牛頭の人間、つまりミノタウロスのような怪人達らしい。
     服装は隊長と呼ばれている横浜ビーフ怪人がトレンチコート、残りの手下3人が背広らしい。
    「ただ、今回の未来予測はちょっといつもと違って……」
     珠希が言うには、横浜ビーフ怪人とその手下3人は、横浜のとある歓楽街の裏路地にある建物の前にいるのだが、そこには淫魔もいるらしい。
     淫魔はアイドルっぽいメガネのショートカット少女で、名前はメモるん。
    「でも今回の目的は怪人の灼滅だから、この淫魔は放っておいて良いわ」
     逆に言うと淫魔を狙った場合、怪人組が淫魔の救援に来てしまい、その両方を相手にしなければならなくなり、こちらの敗北の危険度が大増してしまう。
     淫魔と怪人達はすぐに手を振って別れるらしいので、淫魔がいなくなって油断している怪人達を奇襲することが今回の作戦だ。
    「さて、横浜ビーフ怪人がどんな技を使ってくるなんだけど……」
     淫魔の話をひと段落させ、珠希が怪人の話に戻る。
     横浜ビーフ怪人はご当地ヒーローとガンナイフに似たサイキックを、手下の牛人間達は斧を持っており龍砕斧に似たサイキックを使ってくるらしい。
    「怪人達は連携して襲ってくると思うけど、みんなならきっと大丈夫! 宜しくお願いね!」


    参加者
    タージ・マハル(武蔵野の魔人・d00848)
    霧島・竜姫(ダイバードラゴン・d00946)
    編堵・希亜(全ては夢の中・d01180)
    七生・有貞(アキリ・d06554)
    十津金・旭(桜火転身トツカナー零五・d06921)
    百舟・煉火(彩飾スペクトル・d08468)
    神孫子・桐(放浪小学生・d13376)
    結城・麻琴(陽烏の娘・d13716)

    ■リプレイ


     横浜の歓楽街は裏通りにあるホテルの前に、3人の牛人間が立っていた。
     その様子を通りの角に隠れながら偵察する学生が8人。
     そんな中。
    「……わ、わたしは……」
     自身を両腕で抱くように震えるのは編堵・希亜(全ては夢の中・d01180)だ。
     今回、灼滅対象では無いとはいえ宿敵の淫魔がそばにいる。その事が希亜の忘れられない過去を刺激する。
    「おい、大丈夫か?」
     七生・有貞(アキリ・d06554)が声をかける。
     希亜はゆっくり首を振ると、大丈夫……と言葉を返す。
     淫魔を目の前にして見逃がすのはとてもじゃないが良い気分ではない……けど、今回ばかりは……。
     希亜が静かに笑顔で皆を見回す。
     ホテル前を見てみれば、淫魔メモるんが怪人達に別れを告げて去っていく所だった。
    「さ、シャレオツで生意気な横浜ビーフ怪人に、挨拶しにいこうか」
     有貞の言葉に灼滅者達がコクリとうなずいた。

    「で、隊長、メモるんちゃんはどうだったぎゅう?」
    「貴様に言う必要は無い。……素晴らしかったぞ」
    「どう素晴らしかったか教えるぎゅう!」
    「なぜ言う必要がある。……もう服を脱いだらそれはもう、な」
    「ど、どうだったうし!?」
     メモるんの話で盛り上がってる4人。
     そこに響くはヒーローの声!

    「淫魔に篭絡され、ご当地名物の名を背負った事も忘れたか!」

    「だ、誰だ!?」
     怪人達4人が声の方を振り向けば、裏路地の先、後光を背負った1人のヒーロー。
    「幾百の舟を迎えし横浜のヒーロー、ここに参上だ!」
     後光が僅かにおさまり百舟・煉火(彩飾スペクトル・d08468)の顔を映す。
     煉火はビシッとポーズを取ると。
    「覚悟しろ! 我がご当地に居る資格無し、灼滅してくれるわ!」
     ドーンっ! と煉火の背後で爆発でも起こりそうな登場に、怪人達が。
    「な、ご当地ヒーローだぎゅう!?」
    「狼狽えるな! たかが1人、お前達は3人もいるだろう」
     隊長たる横浜ビーフ怪人の言葉にハッとする牛人間達。
     だが!

    「市内牛の飼育数NO1!」

     声と共に煉火の横に別のヒーローが登場する。
    「戸塚のヒーロートツカナー零五……今ここに、桜火転身!」
     十津金・旭(桜火転身トツカナー零五・d06921)だった。
    「2人に増えたぎゅう!?」
    「ヤツは……トツカナー零五うし」
    「知ってるギュウ?」
    「そう名乗ってたうし」
     ボカッ!
     隊長に殴られる牛人間。
    「落ち着け、どちらにせよこちらの方が人数は多い!」
     隊長たる横浜ビーフ怪人の言葉にハッとする牛人間達。
     だがしかし!

    「台場発の湾岸警備、地獄の牛頭より横浜を守ります」

     声と共に三度別のヒーローが登場する。
    「虹色に燃える竜、ダイバードラゴン!」
     霧島・竜姫(ダイバードラゴン・d00946)が現れ煉火と旭の横に並ぶ。

     3人に増えたー!? とか牛人間達が叫んでいるのを横眼に、路地の角から仲間のヒーロー達が登場するのを見ているのは残りの灼滅者5人。
    「わー。皆、格好いい!」
    「うん、さすがご当地ヒーローだね」
     笑顔で喜ぶ神孫子・桐(放浪小学生・d13376)に、タージ・マハル(武蔵野の魔人・d00848)が朗らかに同意する。
     じゃあ僕たちも行こう、とタージ達5人が先に登場していた3人に並ぶ。
    「なんかいっぱい出てきたぎゅう!?」
    「ちっ、この人数……お前達だけでは荷が重いか」
     慌てる牛人間達を落ちつかせるように怪人が言う。
    「で、お前達は何者だ」
     怪人の問いに答えたのは桐だ。
    「美味しいお肉に釣られてきた! ビーフカレーが好きな正義の味方だ!」
     微妙に違います。主に前半。
    「……―フ」
     ゾクリと悪寒が走る牛人間と怪人。
     ぎょっとして視線を向ければそこには結城・麻琴(陽烏の娘・d13716)がいた。
    「横浜ビーフ……」
     瞳を怪しく輝かせる麻琴。
     ……どうやら前半も意外と当たっているようだ。


    「お前達、淫魔と手を結んで一体何を企んでいるんだ!」
     ビシッ! とポーズの小学2年生女子の旭。
    「企む?」
     怪人が眉根を寄せて聞き返す。
    「もし教えてくれたら……ボクも淫魔と同じ物をあげてもいい!」
    「俺にその手の趣味は無い」
    「え? 普通誰でも必要じゃないの?」
    「そんなわけあるか!」
     旭の言葉に思わず怪人がつっこむ。
     ちなみに旭に対して仲間の灼滅者も「そんな事を言っちゃダメだろう」といさめる(主に免疫の無い煉火)。
    「え、でもみんなは枕使わないの? せっかく持ってきたのに」
     枕を取り出す旭。
     ベタなオチに溜息の仲間達と、下らないとジト目の怪人達。
     だが――。
    「た、隊長がいらないなら貰おうと思ったのに! ぬか喜びだうしー!」
     約1名が異常に憤慨。
    「うしーッ!」
     そしてそのまま勢い良く突っ込んでくる牛人間。もちろん狙いは旭だ!
     ガシッ!
     その突進を割って入って来た影が止める。
     麻琴だ。
    「ところでさっきのあの子、可愛い子だったわねぇ」
     語尾がうしの手下と組み合いながらも、後ろの怪人達にも聞こえる声で麻琴が言う。
    「あなたたちの誰が本命なのかしら、ね?」
     無言で自分を指す怪人と手下2人。
     目の前の組んでいる牛人間はなぜか旭を指していたが……。
    「七生くん」
    「わかってるよ」
     視線も合わせず言葉だけのやりとり。
     同時、煉火のシールドが壁のように広がり、有貞の背から炎の翼が吹き出し双方力が付与される。
     語尾のうざいフザケた怪人達だったが、こと戦闘においては手を抜ける相手ではなかった。連携して戦ってくる牛人間3人と、数人をまとめて射撃してくる怪人相手にジリ貧な灼滅者達。
     そんな中、飛び出したのは竜姫だった。
     怪人の撃たれつつもそのまま前へ。
    「おい、突破されるな!」
     隊長の声に手下が竜姫へ殺到する。
     ダダダダダッ!
     その足を止めたのはライドキャリバーだ、道を開けろとばかりに機銃が掃射される。
     そして、ディフェンダー役の牛人間の背後に回り込むと、腰をしっかり両手でホールド。
    「レインボーダイナミック!」
     竜姫のスープレックスが虹色に輝きながら爆発!
     そのまま手下の1人が動かなくなる。怪人が慌ててタージ達前衛の5人を一斉に射撃し、2人の牛人間も闘牛のように突撃する。
    「くっ」
     先ほど無理をして突っ込み、けれど戦況を変えた竜姫が膝をつく。
    「……大丈夫」
     天使のような歌声が響き、竜姫の傷がみるみる癒えていく。
     笑顔の希亜がいた。
     伊達にメディックを2人は置いていない、桐がキュアを優先すれば、希亜はHP回復を優先しいつのまにか役割分担ができていた。
     持ち堪えた前衛5人、その中から一歩出てタージが怪人に語りかける。
    「わかってるよ、横浜ビーフ怪人」
    「?」
     タージの雰囲気に眉を潜める怪人。
    「君は無理やり僕に、自慢の焼肉を食べさせるつもりだね」
    「……は?」
    「でも僕に隙はない。朝ごはんを抜いてきたからね」
    「ふ……ふっ、はははは」
     タージの言葉に高笑いをあげる怪人。
    「バカめ! 焼き肉など無いわ!」
    「……え、ないの? 横浜ビーフって、所詮その程度の怪人だったのか。がっかりだよ」
    「だが、横浜ビーフステーキならここにあるがな」
     怪人がズボンの後ろポケットから調理済みのステーキを取り出す。肉汁が滴っていた。
     結局残念そうなままのタージ。
    「ま、俺に勝てたら食わせてやろう」
     怪人は肉汁滴るステーキを再びポケットに押し込みつつ、掌をタージに向けると。
    「即死光線横浜ビーフッ!」
     ビーフと言いつつ手から真っ赤なビームが放たれタージを直撃。
    「えっ?」
     何が起こったかわからないと言った表情でタージが倒れそうになるが、必死に踏みとどまる。怪人のビームは、それほどの威力だった。
     思わず静かになる灼滅者達。
     その空気を破ったのは桐だ。
    「すごい! 今の格好いいね!」
     天真爛漫な桐の言葉に嘘は無い。それを感じ取ったか怪人がにやりと笑う。
    「ふふふ、わかればいいのだ」
    「ぎゅ、ぎゅう?」
    「ぎゅう」
     2人の牛人間が隊長だけ誉められてちょっと不満げだが。
    「うん、牛の人達も強そうで格好いいよ! パワフルな感じ!」
    「ぎゅう~♪」
     手下2人もにんまり。
    「そういえば、牛怪人はどの部屋でメモるんとお泊まりしたんだ?」
    「ははは、もちろん一番高い部屋に決まっているだろう」
     そういう時にケチる男はダメだと偉そうに語る怪人。
    「お前は見所がある。特別だ、コレをやろう」
     怪人が何かを桐に投げてよこす。
     まさか何かの手掛かりか!?
     皆の視線が一斉に集まる。
     そして桐が手を出し――。
     ベチャ。
     ステーキだった。さっきポケットにしまったヤツ。
     皆、とても残念そうな顔だ。


     戦いは続き、ジャマー役だった牛人間を撃破し。
    「そっちの黒い方を集中攻撃だよっ」
     タージの指示に、旭と麻琴が攻撃を集中し残っていた最後の手下も倒れる。
    「ちっ、こうなれば俺自ら引導を渡してやる。いくぞ、スーパー横浜ビーフッ!」
     さっきと技名違うぞ……と有貞がツッコミを入れるがスルーし、再び手から真っ赤なビームが放たれタージを直撃。
     2度目の強烈な攻撃にタージがばたりと倒れる。
    「なんて強いんだ。こんなに強いのに淫魔にいいように使われてるなんて……」
    「なん……だと……?」
     倒れたまま呟くタージに怪人が聞く。
    「まさか、知らないはずよね? 横浜ビーフともあろうものが」
    「あ、ああ、まぁな、もちろん知っているとも」
    「………………」
     黙るタージと、灼滅者達。
    「あ、あれだ、焼き肉パーティーがしたいから肉の調達をな、そう、そんなことを言っていた……ような、気もするかもしれん、うん」
     どう見ても嘘です。
     タージも思わず起きあがる。なんとなく魂がここで倒れたら負けだと囁き凌駕したのだ。
    「立ち上がるか!?」
    「こんな美味しそうな匂いがしたら、寝てられないよね」
     そう、この時戦場には最高品質の牛肉を焼いたような良い匂いが立ちこめていた。
    「なっ!?」
     いつの間にか怪人の脇腹に灼熱の手刀が刺さっていた。
     有貞のレーヴァンテインだ。
     慌てて手刀を打ち払い距離をとる怪人。
     だが――。
     じゅるり♪
     唾を飲み込む音がすぐそばで聞こえ即座に身を屈める。
     頭上を麻琴のオーラを纏った蹴りが通り過ぎる。
    「あら、ごめんなさいね? あたし牛肉には目が無いのよね! あなたのその牛頭。そこも美味しいかしら?」
     思わずバク転をくり返し麻琴から距離を取る怪人。
    「横浜ビーフ怪人たるこの俺が、おまえ達ごときに!」
     周囲をきょろきょろと見回す怪人。
     途中、希亜のビハンイドの顔が視界に入りビクリと止まる。
     ちょっとトラウマになる顔だった。
    「……どこを、見てるのですか?」
     ビハインドの横で希亜が神秘的な歌声で催眠効果のある唄を歌う。
    「くっ……余裕だと思って遊んでいたのが間違いだったか……」
     くるっと怪人が背を向ける。
     先ほどチェックした人のいない隙間の経路に向けて猛ダッシュ!
    「いかせないよ!」
     逃げ出すことを予測していた桐が、その経路上に立ち塞がり両手を広げてとーせんぼ。
    「どけ! どかぬなら必殺……横浜ビーフ焼――」
    「横浜の牛は美味しい! 牛肉大好きだ! どの料理も美味しい!」
     絶対に退かない覚悟と、頭に浮かんだ言葉をそのまま口に出す桐。
     怪人は必殺キックのモーション――を、やめて桐の前で。
    「その通りだ! 横浜ビーフ! これこそ世界を支配する肉にふさわしい! そもそも横浜にはかつて『牛鍋食わぬは開化不進奴』という言葉があってだな――」
     熱弁を振るいだし。
     それが致命的な隙となった。
     フッと怪人の顔に影が落ちる。
     見上げる怪人。
    「ボクは横浜みなとみらいのご当地ヒーロー! 地元の名を汚す者は許さない!」
     煉火が必殺キックのモーションで落下してくる所だった。
    「いっくぞぉっ!」
     さらに助走をつけて怪人に向けてキックのポーズで跳躍してくる旭。
     さらにさらに! 吠え猛る竜の咆哮が響きわたり、視線を向ければ空中で一回転する竜姫が虹色に輝き、斜め45度で怪人に向けて必殺キックを放つ。
    「赤煉瓦キーーーック!」
    「トツカナーキーーック!」
    「レインボーキィィーック!」
     3ヒーロー同時の必殺ご当地キックが横浜ビーフ怪人の胸に炸裂!
     錐揉みして吹っ飛び、ホテルの壁へとめり込む。
    「お、俺が……負ける……だと……?」
     命が尽きる寸前の怪人の前に、トツカナー零五が立つ。
    「なにか……聞きたいことがあるようだな」
     全員がうなずく。
     旭は皆を見回してから怪人に向き直り。ずっと気になっていた質問をぶつける。
    「戸塚のマスコットがアレなのはお前達のせいか横浜ビーフ怪人!」
    『………………』
     怪人は最後の気力を振り絞り。
    「あのイラストはインパクト大だな……だが、残念ながらアレは俺のせいじゃ……な……い……」

     どーんっ!

     横浜ビーフ怪人は、そう言い残すと爆発し塵と消えたのだった。
     残された灼滅者の中、旭がシリアスに言う。
    「そうか……キミじゃなかったか」
    「いや、それ聞きたい事違うぞ」
     有貞が冷静にツッコミを入れるのだった。


     希亜は1人、淫魔が立ち去った方向へゆっくりと歩いていく。
     メモるんが落とした何かが無いかと思ったからだ。
     もちろん、痕跡を探すのは希亜ばかりではない。
     旭もホテル前を落とし物が無いか探していたし、タージなどなぜか自信満々に落ちてるであろうメモを探していた。
    「おかしいね、無いはず無いんだけどね」
     ちなみに自信満々だが根拠の無い行動である。
    「こ、これは!?」
     怪人の爆発跡を探していた麻琴が声をあげる。
     旭、タージ、竜姫が何か見つけたのかと集まる。
    「この辺り……良い匂い」
     横浜ビーフの焼けたとても良い残り香だった。
    「もう少し、何か探してみましょう。あとは……ホテル組に期待でしょうか?」
     竜姫がホテルを見上げると、他の仲間もホテルを見上げるのだった。

     一方、闇纏いでホテルの一番高い部屋へと潜入したのは桐と有貞、煉火だった。
     しかし――。
    「このベッド回るぞ!」
     桐は何か無いか探しつつ、面白設備にはしゃいでいた。
    「ほら! 見て見て!」
     桐が有貞に向かって言うが、有貞は黙々と探索を続ける。
     正直ホテルの部屋には興味津々だし、ここに入る時なぜか手を繋いで入った桐がここをどう思っているかも気になる、なんというか平静を保つだけで結構一杯一杯だ。
     もっとも、テンパり気味なのは煉火も良い勝負である。
     淫らな事柄には一切耐性が無い煉火は精神を無にして無表情で探索を続ける。
     そんな煉火の横で有貞が。
    「ベッドサイドとか、ゴミ箱漁るか……やりたくねぇけど」
     嫌々ながらゴミ箱に手を伸ばす。
    「や・め・ろ!」
    「え゛……」
     なぜか煉火にマジギレされる有貞だった。

     彼らが事後、何かを見つけたかは定かでは無いが、ひとまず横浜ビーフ怪人を倒し、一件落着とするのだった。

    作者:相原あきと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年3月7日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 13
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ