スイーツナ

    作者:佐和

     神奈川県三浦市三崎港。
     日本でも指折りの、だが日本一ではない、マグロ漁港。
     そんな港を、黒芭・うらりは歩いていた。
    「三崎マグロの知名度は上がってきてるけど、もっと広める方法はないものかしら……」
     マグロ漁船に乗る父と、マグロ専門の料理店に勤める母を持ち、幼い頃から身近に親しんできたマグロ。そんな大好きなマグロを、もっと皆に大好きになってもらうことはできないものか。
     寿司。大トロは皆の憧れ。
     刺身。マグロの赤身は外せない。
     海鮮丼。一番手頃に楽しめるメニュー。
     ツナ缶。おにぎりにもサンドイッチにも、利用法が様々に広がって。
     味噌漬・粕漬。今日の夕飯にも、ちょっとした手土産にもなる汎用品。
     かぶと焼き。見た目のインパクトより、案外食べれるところが多いことにびっくり。
     マグロラーメン。真新しさで勝負の最近の新定番。
     歩きながらうらりは、マグロを使った料理を心の中で挙げていく。
     これらのメニューに負けない斬新さを持った、これら以上にマグロを有名にできるもの……
     悩めるうらりがふと顔を上げると、同年代の少女達が楽しそうにお喋りをしていた。
    「ちょっとお腹すいたね」
    「甘いものでも食べない?」
    「あ、いいね。じゃ、あそこのパフェとか!」
    「うんうん。早速行こう!」
     わいわいと移動する少女達の背を見送って。
     うらりは力強く、呟いた。
    「……これだわ」 
     
    「マグロを愛しすぎてしまった、黒芭・うらりさんという中学生の少女が、ご当地怪人として闇堕ちしかかっています」
     おずおずと、園川・槙奈(高校生エクスブレイン・dn0053)は集まった灼滅者達へ説明を始めた。
    「うらりさんは、三崎マグロの知名度を上げるため、新しいマグロメニューを考えていたのですが……
     斬新さを求めるあまり、マグロを使ったスイーツ、という発想になってしまいました」
     そしてうらりは、スイーツ……ケーキでもパフェでもクレープでもおしるこでも、とりあえず甘味やデザートに分類されるものを見かけると、そこに問答無用でマグロを投入するようになってしまったのだ、という。しかも、新鮮な生マグロ。
     当然合うわけもなく、食べようとしていたスイーツを台無しにされたと怒る人を、うらりは片っ端から攻撃しているのだとか。
    「精神的にダメージの大きいことをしていますが、まだうらりさんは完全に闇堕ちはしていません。
     ですが……自身のアイディアを否定され続けている現状では、闇堕ちは時間の問題です」
     どうか彼女にマグロ本来の美味しさを思い出させて欲しい、と槙奈は灼滅者達に訴えかけた。
    「もしうらりさんに灼滅者としての素質があるならば、KOすることで救うことができます。
     しかし、完全にダークネスになってしまうようならば……」
     槙奈は一度目を伏せて、それから悲しそうな表情ながら真っ直ぐに灼滅者達を見て、
    「灼滅を、お願いします」
     搾り出すような声で、そう告げた。
    「皆さんは、三崎の魚市場近くの駐車場で、何かスイーツを食べていてください。
     そうすれば、うらりさんは現れます」
     駐車場は朝市の開かれる朝は混雑するが、昼を過ぎればあまり車も人もいないらしい。
     広さも充分で、戦闘にはちょうど良いだろう。
     ……食べかけのスイーツは、うらりが現れた時点で諦めざるを得ないわけだが。
    「うらりさんは特に武器は持っていませんが、本物そっくりのマグロの模型を携えています。
     近づいてきた相手には、それを振り回しての攻撃をしてくるようです」
     元々彼女が持っていたのはマグロのストラップだったらしいのだが、本物に近いものを求めていった結果、紆余曲折を得てそうなったらしい。
     入手経路はともかくとして、マグロ1匹と同等の重量、そして冷凍マグロ相当の強度。
     そこから生み出される破壊力は想像に難くない。
    「それと、うらりさんにはパティシェの配下が4人います」
     配下との連携で、自身のアイディアを否定した相手に、マグロ入りスイーツを投げつける攻撃をしてくるのだという。
    「配下達は解体ナイフを装備していますが、うらりさんにスイーツを渡す時はナイフを調理に使用するため攻撃ができません。
     そこを上手く利用すれば、相手の攻撃の手数を減らすことはできると思います」
     何か間違ったものが混じっていても、食らうのは柔らかいスイーツである。
     HPとしてのダメージはさほどではないだろう。
     が、精神的な破壊力は推して知るべし。
     まともに戦うか。
     相手の性格を利用するか。
     それは選択次第だ、と槙奈は少し困ったような顔で告げた。
     灼滅者達も思わず互いに顔を見合わせる。
     何となく気まずい雰囲気が訪れた中で。
     槙奈は、そういえば、思い出したように手を叩く。
    「三浦では、今、桜祭りが行われているそうです。
     もしうらりさんを救うことができたなら、一緒に桜を眺めてくるのもいいかもしれませんね」
     話題を少し反らされたような気はするが。
     槙奈の苦笑に見送られて、灼滅者達は教室を後にしたのだった……


    参加者
    九湖・奏(たぬたん戦士・d00804)
    仲村渠・弥勒(世果報は寝て待てない・d00917)
    氷上・蓮(白面・d03869)
    桜庭・理彩(闇の奥に・d03959)
    周防・ゆずき(紅茜・d08338)
    神堂・律(悔恨のアルゴリズム・d09731)
    斎賀・真琴(海とマグロを愛するヒーロー・d10872)
    深海・魚々(アイオライト・d13040)

    ■リプレイ

    ●水揚高は全国4位らしいです
    「到着ー! ここが三崎港だ!」
     バスから降りるなり両手を広げて、斎賀・真琴(海とマグロを愛するヒーロー・d10872)は仲間達へと港を指し示した。
    「それで、駐車場は?」
     問う桜庭・理彩(闇の奥に・d03959)に、真琴は地図を見ることなく歩き出す。
     朝市も終わった、平日の昼間。事前の情報通り、人通りも車も少ない、絶好の条件だ。
    「あたしと同じ地元で、同じマグロを愛する子をダークネスになんて絶対させない!」
     絶対に助けて友達になるんだ、と決意する真琴を先頭に、うらりを救うために集まった面々は、すぐに見えてきた駐車場へと向かう。
    「マグロとスイーツか……どっちも美味いとは思うけど、なぁ?」
     指定の場所で、神堂・律(悔恨のアルゴリズム・d09731)はソフトクリームに口をつけつつ呟いた。
     まだ少し寒いけれど、この冷たさと甘さは心地いい。
    「よりによって混ぜるだなんて……なんて暴挙……っ!」
     超辛党、そして上物好きの理彩は、わなわなと両手を震わせて。
    「最近、目新しいモン求めすぎて、何か違った方向行ってる気ぃするの、多いよな」
     落ち着けと理彩の肩を押さえて律は苦笑した。
    「でもさ、マグロのスイーツは別に悪くないと思うんだよねー。
     インパクトあるし、話題作りにも良いんじゃね?」
     仲村渠・弥勒(世果報は寝て待てない・d00917)はマドレーヌにかじりついて、アイディア自体には賛成の様子。
    「うんうん。面白いよね」
     九湖・奏(たぬたん戦士・d00804)もフルーツサンドを片手に、頭上の小狸と一緒に頷いて。
    「でも、生のマグロそのままじゃ、さすがに……だね」
     クレープを食べつつ、周防・ゆずき(紅茜・d08338)がため息一つ。
    「醤油スイーツ、とか、塩スイーツとかでしたら、あうかも……」
     ちまちまと鯛焼きを食べる深海・魚々(アイオライト・d13040)も、勿体無いと首を振った。
     そんなマグロ話に花を咲かせる仲間達の後ろに無言で立つのは氷上・蓮(白面・d03869)。
     その手は、他の仲間と違って空っぽで。
    「蓮、スイーツ持ってる?」
     見咎めて真琴が声をかけると、蓮は舐めていた棒つきキャンディーをかざした。
    「……ソーダ味」
    「あ、そっか……」
     どこかぼーっとした蓮の言葉に、ぎこちなく頷く真琴。
    「いや、スイーツ持って来てないなら、あたしの分けようと思ったんだ」
     と、気を取り直して真琴が広げたのは、真琴母特製タルト。
     たっぷり乗ったイチゴはもちろん三浦農家の旬なもの。
     その美味しそうな見た目に、既にスイーツを手にした皆も集まってくる。
     わいわいと楽しむ仲間から、理彩はふと視線を反らして、呟いた。
    「……早くマグロが食べたいわ」
     赤い『それ』が飛来してきたのは、ちょうどその時、だった。

    ●水産高校の実習船もよく来ます
    「ああーっ! ゆずきのクレープがぁ!」
     まず涙目で悲鳴を上げたのはゆずき。
    「分かってた……こうなることは分かってたけど……」
     奏も赤色の増えたフルーツサンドを見下ろして愕然としていた。
     子狸が慰めるようにぽんぽんと頭を叩いている。
    「なんで一緒にするかねー……」
     深くため息をつく律のソフトクリームにも、鮮やかな赤が追加されていて。
     魚々の鯛焼きにも赤い『それ』が埋もれていた。
     赤い『それ』……そう、新スイーツ・マグロ。
     じっと、 あんこの中の新鮮な赤身を見下ろしていた魚々は、不意に、ふふふ、と笑んで顔を上げた。
    「……鯛でマグロ、釣れました」
    「釣れてない釣れてない」
     思わずつっこむ律。
     と、魚々が何かに気付いて、律にくっつくようにして身を隠した。
     その視線を追って律が振り向いた先に現れたのは、マグロ1尾(模型)を持った1人の少女。
    「さあ、新感覚マグロスイーツを味わって、三崎マグロの名を深く心に刻み込みなさい!」
    「……確かに、ある意味深く刻まれた、な」
     待ちかねた黒芭・うらりの登場だが、気を削がれた律はぽつりとつっこみを入れるに止まった。
    「新感覚ってゆーけどさ」
     代わりにうらりに声をかけたのは弥勒。マドレーヌの上から赤身を取り、用意しておいた醤油をつけてから、うらりに見せるようにマグロだけを食べる。
    「こっちの方が美味しいし」
    「……いっしょは、よくない」
     蓮も飴からマグロを剥がして醤油でぱくり。
    「マグロは、素材を活かして生のまま頂戴するのが一番魅力を引き出せるって、貴女なら解っているでしょう!?」
     普段は冷静な理彩だが、よほど衝撃だったのか珍しく声を荒げた。
     だが、うらりはそんな声を振り払うように首を振って。
    「でもそれじゃ駄目だった! ただ普通に食べてるだけじゃ!
     昔は三崎が日本一のマグロ漁港だったのに、今は……
     だから、三崎でしか食べられない、新しいマグロを考えなきゃいけないのよ!」
     どこか悲鳴にも近いその叫びに、
    「マグロはね、尻尾の部分焼いた奴が好き!」
     明るく声をかけたのは、真琴だった。
    「他所ではあまり食べれない部位じゃないかなっ。
     地元でしか食べれない、素材そのものの味ってあると思うんだ」
     にかっと笑顔を見せる真琴に、戸惑いながらもうらりの瞳が向かう。
    「貴女は……」
    「あたしもうらりと同じだ」
     同じ三浦を愛する地元民として、真琴はうらりへ手を差し伸べる。
    「それにさ、ほら」
     醤油をしまった弥勒が取り出したのは、新しいマドレーヌ。
     だがそれはマグロの入った『マグレーヌ』だった。
     気付いたうらりにいたずらっぽく笑いながら、弥勒はマグレーヌをひとかじりして。
    「ちゃんと考えれば、結構美味しいよー?」
     うらりの全てが間違っているわけではないと伝えるように、弥勒はマグレーヌをもうひとかじり。
    「斬新なのも良いけど、美味しさを大事にしないとマグロが可哀相じゃん?」
     涙を拭いて、奏がクレープと、そしてそこに突っ込まれた赤身を無駄にせんと訴えかける。
    「もっかい考えてみようよ!」
     一緒に考えるから、とゆずきも言葉を添えて。
    「闇堕ちなんてしないでさ、一緒に三浦のご当地ヒーローになろう」
     差し伸べた手に想いを乗せて、真琴はまっすぐにうらりを見た。
     数々の言葉と思いに、うらりは頭を抱えるようにして、ふらふらと数歩後ろに下がる。
    「私……私はっ!」
    「危ないっ!」
     真琴を押しのけたゆずきを、混乱するようにうらりが振り回したマグロ模型が直撃した。
    「うあああぁぁっ!!」
     声を上げてマグロを掲げたうらりの後ろに、4人の配下が現れる。
     灼滅者達は顔を見合わせ、決意とともに頷きあって。
    「絶対救って、連れて帰るんだ」
     スレイヤーカードを解放しながら、真琴が力強く宣言する。
     それが、真の戦いの始まりだった。

    ●マグレーヌは実在します
     弥勒の掌から放たれた炎の奔流は、まずは配下4人を飲み込んで。
     そこに槍を携えた理彩と奏、そして奏の霊犬・響が飛び込む。
     狙うは同じ配下1人。まずは配下の数をある程度まで減らす作戦だ。
     そしてその間の足止めにと、蓮は槍を捻りうらりへと突き出す。
     まずは、とシールドで前衛へのBS耐性を狙った律だが、ある理由から前衛に人数を集中させた布陣では思ったほどのEN付与はできず。なら足止め役を果たそうと、蓮と並んでうらりへとはりつくように接近する。
     数少ない後衛・メディックとなった真琴と魚々の回復を受けて、ゆずきも配下へと雷を纏った拳を突き出した。
     ある理由……それは、うらりの行動を利用した作戦。
    「スイーツにそのままマグロ投入とか、いい加減にも程があるだろ!」
     奏がオーラを集中させた拳を配下へ連続して叩き込みながら、うらりへと声を向ける。
     うらりの睨むような視線が奏へと突き刺さった。
     マグロ模型を持たない手に現れたのは、配下達が用意したスイーツ。
     パティシェである配下作なので、とてもしっかり本格派。ただし、マグロ饅頭にバニラマグロアイス、マグロパフェにマグロ団子と、もれなくマグロの赤身入り。
     それが奏を中心とした灼滅者達へと飛来した。しかも、狙い違わず口の中へ。
    「う、うわ……甘さの中に魚の生臭さが……酷すぎるよこれ……!」
     あんことマグロのハーモニーに、奏があうわうと口を開閉させて。
    「甘ったるいし味がぐちゃぐちゃ……い、嫌ぁ!」
     元々甘いモノを好まない理彩は、半ばパニック状態。その瞳からは涙が零れ落ちそうだ。
    「生クリームに生マグロとか……生しか合って……
     いや全然合ってないよ! 香りも喧嘩してるし! 見た目も駄目ー!」
     イチゴと同じ鮮やかな赤色なのに、こんなにダメージがあるのかと、気持ちでは負けまいと挑んだはずのゆずきも、思わず目だけでなく鼻からも出そうになった汁をティッシュでぬぐった。
     ただ1人、無表情にもぐもぐ口を動かしていたのは蓮だったが、
    「美味しく……たべよう……」
     こぼした言葉には、げんなりした雰囲気が混じっていた。
    「お気を確かに、頑張って下さいませ……!」
     慌てて魚々が護符を飛ばし、真琴が立ち上がる力になれと気持ちを込めてギターをかき鳴らす。
     前衛6人+1匹に対し、うらりのスイーツ攻撃は4人にしか届いていなかった。
     スイーツを生み出す配下パティシェの数が、この攻撃の限界。
     だからこそ、灼滅者達は前衛の人数を極端に増やした陣形を取っていたのだ。
    「マグロが好きなら、真っ当な味で勝負だろ! 斬新さ求めて基本見失ってんじゃねぇよ!」
     その作戦によりスイーツ被害を免れた律が、仲間の回復時間を稼がんと、うらりの死角へ回って斬り込む。
     一方で弥勒は、配下1人にガトリングガンの弾丸を集中させた。
     パティシェが減れば、スイーツの数も減る。
     ショックから回復した他の前衛陣も、次々に配下へと攻撃を繰り出した。
    「お菓子とマグロを粗末にするな!」
     ゆずきが配下を1人ぶん投げ地に沈めれば、奏がロッドでもう1人をぶん殴って昏倒させる。
     パティシェが2人になったところで、灼滅者全員の意識がうらりへと向いた。
     配下がいなくなれば、強烈なマグロ模型の一撃だけが襲い掛かることになる。
     だからこその、ダメージを抑えるために選択した戦法だった。
     心のダメージは覚悟の上。
     覚悟してても強烈ですが。
    「思い出して。新鮮なマグロのお刺身に少々の山葵醤油を絡めて食べるあの味を!」
     悲痛な声と共に、理彩がうらりへ漆黒の弾丸を心の底から打ち出して。
     弥勒も爆炎を纏った弾丸を連射した。
    「そうそう。ショートケーキにマグロとか、ありえないよー」
     スイーツ攻撃を仕向けるための挑発も忘れずに。
     そのネタふりとも取れる弥勒の言葉に、うらりの手に現れたのはショートケーキ。
     当然上に乗っているのも間に挟まっているのも、鮮やかな赤い、マグロ。
     それはTVのコントで見る1シーンのように、見事に弥勒の顔を直撃した。
    「もっと生クリームと調和してーっ」
     弥勒は顔についたクリームを拭い去りながら絶叫。
     もう1つは奏へと向かい、だが当たる直前、庇うように飛び出した響がパクリ。
     もぐもぐごくんと食べ終えて。声を発することもなく、響はその場に突っ伏した……
     恐るべし、マグロスイーツ。
     それをぼんやりとした瞳で見つめていた蓮は、ふと思いついて。
    「次、ウェディングケーキ、とか……?」
     その呟きにパティシェ魂が反応したのか、配下達がどこからともなく現れた材料でどでかいケーキを作り出した!
    「余計なこと言うな!」
     つっこみながら、あれを食らいたくはないと律はうらりへ刀を振り下ろす。
     うっとおしそうにうらりが振るったマグロ模型へ、
    「まぐろは……武器じゃない」
     蓮が攻撃ついでに槍でのマグロ串刺しを狙うが、冷凍マグロ並みの強度に弾かれた。
    「マグロだってちゃんとスイーツにすれば美味しいんだ!
     なんでもかんでも生のまま入れるなんて……マグロが可哀そうじゃんかっ!」
     あと少しと、真琴も回復から攻撃へ転じ、マグロキックを炸裂させる。
    「目ぇ覚ましなさいよねー!」
     ゆずきも必死に拳を繰り出して。
    「焦らず考えれば、マグロを愛する黒芭さんならきっともっといいモノ思いつくよ!」
     奏が、掌に集めたオーラと思いを撃ち放つ。
    「三崎マグロの良さを広める為に必要なのは斬新な新商品じゃない……
     常に泳ぎ続けるマグロの様に、地道なPR活動を絶やさない事よ!」
     武器を刀に持ち替えた理彩は、その柄を言葉と共に握り締めてうらりへと駆け寄る。
    「せっかく、海を楽しむ里……『海楽里』ってゆー素敵な名前なんだしさ」
     その理彩の動きを助けるように、弥勒の弾丸がうらりへ撃ち込まれて。
    「マグロのPRってゆー目標もあるってーのに、闇落ちしちゃったら勿体ないよー?」
    「私も協力するからお願い、戻って来て!」
     願いと共に、理彩の居合い切りが一閃した。
     倒れるうらりを律が慌てて支え、女の子を地面に転がすわけにはいかないと抱きかかえる。
    「……こんだけマグロ好きなアンタなら、絶対に良い方法見つけられるって」
     闇堕ちから戻った新たな仲間を見下ろして、律はそっと呟いた。

    ●桜まつりの駅前は特産品で賑わいます
    「到着ー! 三浦海岸駅だ!」
     再びバスから飛び降りるなり真琴は両手を広げた。
     ちょうど見頃の河津桜を目にして歓声と共に次々とバスから降りた灼滅者達は、その数を1人増やしていた。
    「桜まつり会場は少し離れた小松ヶ池公園だけど、今は駅前が見頃よ」
     少し気恥ずかしそうに、でも嬉しそうに真琴の隣で説明するのは、増えた1人、うらりだ。
    「あ、見て見て! あったよトロまん!」
    「本当にマグロ入ってるんだ!」
     ゆずきと奏が声を上げて出店に駆け寄れば、おずおずと魚々が、その保護者的な感覚で律が後に続く。
    「マグレーヌは、あるかしら?」
    「おっ。理彩ねーさんも食べる?」
     見回す理彩に、弥勒がまだ残っていたマグレーヌを差し出した。
     初めてのマグロに思わず笑みを浮かべると、嬉しそうにそれを見ていたうらりと目が合った。
     返すようににっこりと笑いかければ、気付いてうらりの頬が染まる。
     そこに、両手にトロまんやマグロ串など、めいっぱいの食べ物を抱えた蓮が現れて、
    「桜餅、とか……甘いもの、ない?」
    「まだ食うのか」
     うらりへ問う蓮に、律が呆れてつっこみを入れた。
     思い思いにマグロを楽しんでいた仲間を見回して。
    「それじゃ、みんなで記念撮影だ!」
     父から借りてきたというデジカメを取り出して声をかけたのは真琴。
     賛成の声が上がり、みんなで写ろうと、奏が早速通りかかった人を捕まえている。
     理彩も仲間の元へ足を踏み出そうとして、ふと振り返ると、笑顔で手を伸ばした。
    「黒芭さんもほら、こっちに」
    「……うん」
     伸ばされたうらりの手はしっかりと理彩のそれを取って。
     思い出の1枚は、最高の桜と笑顔に彩られた。
     

    作者:佐和 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年3月9日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 13
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