Friend~裏切りに涙の衝動~

    作者:篁みゆ

    ●愛憎に満ちて
     ジャキ……ジャキ……ジャキ……。
     躊躇いなく写真を切り捨てる音が室内に響く。
     葉央(はお)は物持ちのいいほうだ。小学校の頃使っていたお道具箱に可愛い包装紙を貼って、写真箱にしていた。そこには新友の薫との写真が沢山詰まっていた。けれども今は、その写真は徐々に細切れにされている。
    「薫なんて……薫なんて……こうして、こうして……いつか絶対にこうして」
     ジャキジャキン!
     小学生くらいだろうか、写真の中の少女が真っ二つに切り裂かれたその時。
    「葉央ー、薫ちゃんがきてくれたわよー!」
    「!」
     階下から響く母の声。ああ、「いつか」が来てしまったんだ……葉央は覚悟を決めて、使っていた鋭い裁ちばさみとカッターナイフをバッグにしまった。
     家じゃまずい。薫だって話をしにきたのだろう、外で話をしようと誘えば了承するはずだ。
     だから外の、人気のない場所で……。

    「やあ、よく来てくれたね」
     教室に足を踏み入れると、神童・瀞真(高校生エクスブレイン・dn0069)が穏やかに灼滅者達を迎えた。椅子に腰を掛けるように示し、全員が座ったのを確認すると和綴じのノートを開いた。
    「一般人が闇堕ちして六六六人衆になる事件があるよ」
     通常ならば闇堕ちしたダークネスからはすぐさま人間の意識は掻き消える。しかし今回のケースは元の人間としての意識を残したままで、ダークネスの力を持ちながらダークネスには成りきっていないのだ。
    「彼女が灼滅者の素質を持つようであれば、闇堕ちから救い出して欲しいんだ。ただ、完全なダークネスになってしまうようならば、その前に灼滅をお願いしたい」
     彼女が灼滅者の素質を持っているならば、手遅れになる前にKOすることで闇堕ちから救い出すことができる。また、心に響く説得をすれば、その力を減じることもできるかもしれない。
    「彼女の名前は高見沢・葉央(たかみざわ・はお)。中学二年生だね。彼女には、小学校の時からとても仲の良い薫(かおる)という親友がいてね、中学に入ってからずっと好きな人のことを彼女に相談していたらしい」
     薫も葉央の話をちゃんと聞いて、時にはアドバイスや彼に関する情報をあげたりしていたようだ。
    「けれども、その彼小泉君は薫君に告白し、薫君もそれを受けた。彼女も実は、葉央君と同じ頃から小泉君が好きだったんだ。葉央君の手前、ずっとずっとそれを言い出せなかっただけで」
     そして二人が両思いになったことを、偶然その告白を見ていた別の友人から聞いた葉央は、それがきっかけで六六六人衆へと闇堕ちしてしまった。
    「今は、小学校の頃から沢山撮って大切にためていた薫君との写真を切り刻むことでなんとか衝動を抑えている。いつかこうしてやる、と、写真の中の薫君を切り刻むことでね」
     だが、携帯電話にも出ない葉央に事情を説明したいと薫が葉央の家を訪ねたことでその時はやってきてしまう。
    「葉央君は訪ねてきた薫君に話をしようと持ちかけて、近くの人通りの少ない道へと彼女を誘導するよ。そこで薫君が、小泉君のことを話し始めたら……葉央君の歯止めは効かなくなる」
     葉央は隠し持って来たカッターナイフとはさみで薫を襲うだろう。
    「接触に一番いいタイミングは、事が起こる道で二人が足を止め、話を始めようとしたころだよ。完全に葉央君が激昂してしまう前だ」
     突然現れる灼滅者達に葉央も薫も困惑するだろう。葉央に危害を加えようとしたら、薫が彼女を庇おうとするかもしれない。だが葉央はそんな薫を疎ましく思うだろう。一般人である薫にどう対処するか、考える必要がある。
    「葉央君は誰よりも信頼していた親友に裏切られたと思っているのかもしれない。けれども薫君も、ずっと想いを言い出せずに辛い思いをしてきたはずだよ」
     どちらが悪いとか、そういうものではない。けれども起こった事実に対する衝撃は強くて。
    「葉央君は殺人鬼の皆と同じサイキックと、解体ナイフ相当のサイキックを使うよ。気をつけて」
     瀞真は小さくため息を付いて。
    「二人が直ぐに仲直りをするというのは難しいかもしれない。けれども相手の気持が少しでもわかれば、いつか仲直りすることはできるかもしれないね」
     さみしげに、微笑んだ。


    参加者
    橙堂・司(獄紋蝶々・d00656)
    色梨・翡翠(シンリョクアンサイズニア・d00817)
    陽瀬・すずめ(パッセロ・d01665)
    若宮・想希(希望を想う・d01722)
    ユエファ・レィ(雷鳴翠雨・d02758)
    ロイド・テスタメント(無へ返す元暗殺者・d09213)
    八川・悟(闇色の夜・d10373)
    藍堂・ルイ(歌う愛弩留総長・d11634)

    ■リプレイ

    ●想うに
     ここからならば葉央と薫の姿が見える。近くの家の陰に分かれて隠れた灼滅者達はそっと二人の姿を伺って。
     携帯電話をそこで待機するロイド・テスタメント(無へ返す元暗殺者・d09213)と繋いだままにしたことを確認したユエファ・レィ(雷鳴翠雨・d02758)と陽瀬・すずめ(パッセロ・d01665)は急ぎ、葉央達の元へと向かう。
    「……悲しい結末だけは回避しないと、ね」
     その後姿を見守りながら、橙堂・司(獄紋蝶々・d00656)がぽつり、呟いた。返すように色梨・翡翠(シンリョクアンサイズニア・d00817)も呟く。
    「心の中では……きっと、薫様と和解……したいと願っていれば良いです」
     大切な人同士だと思うから、落ち着いて話せば分かる、そう思いたい。
     二人の呟きを聞いた若宮・想希(希望を想う・d01722)はふと、自信の境遇に葉央を重ねて。
    (「裏切られたと、思ってるんだろうな……。その気持ち、ちょっと、分かる」)
     想希は自らが助けた妹に怖がられた過去がある。その時に裏切られたと思わなかったとは、正直言えない。
    「薫さんは、多分。大事だから、……言えなくて。でも、これ以上、裏切りたくなくて……告白を受けたんじゃないかな……なんて」
     ぽそりと零して想希は続ける。
    「相手の立場に立って考えるのって、難しいけど。これ以上、二人がすれ違わないように……伝えられたらって思う」
    (「……」)
     あえて言葉を紡がないのは八川・悟(闇色の夜・d10373)。じっと葉央達と、それに近づく仲間達を見つめている。
    「恋愛の事は分かりませんが、闇落ち事件が発生しているのであれば止めるしかありません」
    「アタシも。アタシにはまだホントの恋なんて分らないよ……でも、分ることだってあるんだ」
     携帯電話を片手に告げたロイドの言葉に頷くようにして、藍堂・ルイ(歌う愛弩留総長・d11634)もまたじっと遠目に見える葉央達を見つめた。

    ●想うから
     すずめとユエファはできるだけ自然を装いながら、葉央と薫に近づいていく。薫の安全を確保するためにはなるべく穏便な方法で葉央から離れてほしい。
    「薫先輩!」
    「……?」
     今にも口を開きそうだった薫にかぶせるように声を掛けたすずめ。プラチナチケットを使用して、用意してきた口実を使う。
    「担任の先生が探してたよ! 火急の用だから急いで学校に戻って欲しいって」
     ユエファと共に駆け寄って、すずめはさり気なく葉央と薫の間に入り込む。薫は不思議そうに首を傾げていたが「何の用だろう?」と呟いた事から、すずめの事を同じ学校の後輩か何かだと思ったようだ。
    「薫」
     低い呼び声がすずめの背後から聞こえた。薫の方を向いていたすずめには見えなかったが、視線を移したユエファはその声を発した葉央の表情が歪んでいるのを見た。
    「葉央ちゃん……」
    「薫、行くの? 私を置いていくの?」
     それは脅迫のようにも懇願のようにも聞こえて。複雑な葉央の感情が窺い知れるようだった。
    「置いてなんて……あ、学校に電話して……」
     こっそり持ち込んでいるのだろう携帯電話。火急の要件なら使うのも仕方ないと判断したのか、シンプルなストラップがついた携帯電話を鞄から取り出そうとする薫――それを見たユエファの判断は早かった。
    「一緒に逃げる……よ」
     パニックテレパスを発動させて薫の手を引く。薫は鞄を落としたが、取りに戻る余裕などない。
    「薫!」
     葉央の叫び声が聞こえる。それでもユエファは足を止めない。
    「葉央先輩、聞いて!」
     背中にすずめの声が聞こえた。すずめが葉央を食い止めてくれている。ユエファは混乱している薫の手をしっかりと握り、来た道を戻る。途中で待機場所から飛び出した仲間達とすれ違った。仲間達が駆けつけてくれればきっと大丈夫、そう思ってユエファは薫を安全な所まで送り届ける。
    「葉央先輩も苦しんだよね。でも薫先輩も辛かったと思うんだ」
     すずめにはまだ恋愛の経験がない。けれども二つの大好きな人を一気に失ってしまうというのは本当に辛いと思う。だから、薫を追いかけようとする葉央の両肩を向かい合ったまま掴んで、言葉をかけ続ける。
    「きっと直ぐに受け入れるのは難しいと思う。今は怒っても、辛くても仕方がないと思う」
    「あなたに何がわかるの!」
    「聞いて! 殺してしまったら許すことも、仲直りしてまた一緒に居る事もできなくなっちゃうよ!」
     パタパタパタ、駆け寄ってくる足音に葉央は視線を上げて目を見開き、すずめは仲間達の訪れの安堵を得る。
    「……キミにとって、親友の彼女はこんな事で殺しちゃっていい存在なの?」
     澄んだ声が葉央に問いかける。足を止めた司が真っ直ぐに彼女を見つめている。
    「……彼女だって、本当はキミにしっかり話をしたかったはずだよ……」
    「きっと、話をしたかったけれど、できなかったのだと思います。……薫様が葉央様に好きな方を打ち明けなかったのは、葉央様が大切だからだと思うのです」
     続けた翡翠の言葉に、葉央は「大切?」と眉を顰める。なら何故、今にもそう叫びそうな葉央に一歩近づいて、想希は言葉をかける。
    「好きな人と親友、両方一気に失った……と思ってるんですよね。でも、薫さんは、今でもあなたを、親友だと思っている」
    「そんなこ……」
    「あなたも、そう思ってるから、今まで写真で、我慢していたんじゃないですか?」
     ぴくり、葉央の肩が撥ねたのを想希は見逃さなかった。
    「今なら……悲しいけど、失うのは好きだった人だけで済むんです」
     タタタッと小さな足音が聞こえる。ロイドが振り返ると、薫を安全な所まで送り届けたユエファが戻ってきたところだった。
    「どれだけ憎くても、どれだけ殺したくても、友人と過ごした日々は否定できないだろう」
     悟が紡ぐのは戯言だ。彼自身が嘘でできているのだから。語る言葉が本心と言えるか言えないか。
    「今のその自分がいるのは友人との出会いがあったからこそなのだから」
     それでも悟は真実がどうであれ、戯言を吐き続ける。相手と、自分自身の乾きを、望みを、悲しみを潤すために。
     真意であってもなくても、その言葉は葉央を揺らす。
    (「恋愛……は、まだよく分からない……けれど、とても悲しい気持ちも、それに付け入る殺意も、両方を耐える……は、辛かた思う……よ」)
     それでも耐えた葉央をこのまま闇に渡す訳にはいかない、ユエファはまっすぐに葉央を見つめる。
    「友達……でも、悔しい事や恨んでしまう事……ある、思う……よ。普通の事……ね。けれど、それを殺意で示そうするは、貴方じゃなくて、貴方の中の闇のせい……よ」
    「闇……?」
    「大切な人を自分の手で……壊そうとしましたね? 後悔しても帰ってこないモノがあります。それが、大切な人です」
     訝しげに口を開いた葉央の言葉には答えず、ロイドは諭すように言葉を続ける。
    「自分の思いを口に出してください。何も出来ませんが、話を聞くくらいはできます」
    「わたし、は……薫が裏切って、小泉君と付き合ったら、薫も私から離れて行って……」
     混乱気味な葉央に、ルイは問いかける。望む答えが帰ってくると信じて。
    「なあ、葉央ちゃんの中の薫ちゃんとの思い出は写真みたいに色褪せちまうものなの? 切ったくらいで無くなるものなの? ……答えてよ」
    「そんな、なくなるわけないよっ!」
     ルイの問いに間髪入れずに答えた葉央は泣きそうな顔をして言葉を続ける。せきを切ったように我慢していた言葉が溢れてくる。
    「薫は大切な親友でっいっぱい一緒に過ごしてきたんだもん! ずっと友達でいたかったのに、でも、心がぐるぐるしちゃって、憎くて、憎くて仕方無くなっちゃったんだもん!」
    「さっきも言ったけど……それは闇のせい、よ。そのお相手は、私達する……ね。だから一緒に戦うしてほし……よ」
    「薫様にお会いになられるなら……その狂気を終わらせてからに……いたしましょう?」
     片言だが、ユエファの精一杯の訴え。翡翠の優しい導き。ルイは葉央の言葉に頷いて、カードを解放してギターを取り出した。
    「その答えだったら、これで応える! さあアタシ達のライブのスタートだぜ!」

    ●想って
    「私が全て終わらせてあげます」
     ルイ、ロイドに続いて他の灼滅者達も解放の言葉を唱えて武装を整える。その異様な雰囲気に葉央の中のダークネスが反応したのか、葉央の表情が変わった。苦しそうな、泣くのを我慢しているようなものから、口の端を吊り上げて目が座った凶悪なものに。
     鞄からハサミとカッターを取り出した葉央に、司が一気に距離を詰める。その手に持つ槍に捻りを加えて思い切り突く!
    「……彼女を殺しても、彼がキミの物になるなんてことはなくて、ただ彼を悲しませるだけだよ……親友の彼女は大切じゃないの? キミは彼を悲しませたいの? ……違うよね?」
     接近したまま告げて、そして槍を引きぬく。次いで葉央に接近したのはすずめだ。緋色のオーラを纏わせた武器を振るい、葉央を斬り裂く。
    「……親友を恨むのも、きっと辛いよね。親友への、好きな人への思いが強いぶんだけきっと許すのも時間もかかるし、辛い思いも大きいと思う」
     座った眼の奥にいる本当の葉央に向けて、言葉を絶やさないようにと。
    「でも……いつか許せるかもしれないし、また親友として笑い合える日が来るかもしれないし……その可能性、潰えさせてほしくないの!」
     血が、葉央の服を濡らす。撥ねた鮮血はすずめの頬についた。
    「戻って……きて、欲しいよ……」
     ぽつり呟き、ユエファは雷に変換した闘気を宿した拳を振り上げる。悟が激しくかき鳴らしたギターによる音波が、アッパーで僅かに宙に浮いた葉央を襲った。
    「まだ戻れる」
    「親友だけじゃない、あなた自身まで失わないように」
     メガネを外した想希は翡翠の前に盾を出現させ、その身を守る。翡翠は葉央をあまり傷つけたくないと思う。けれどもダークネスを倒さねば彼女は救えない。だから武器を取る。
    「薫を傷つけても状況は変わらない。……君もわかってるんじゃない?」
    「うるさいうるさいうるさい!」
     葉央の身体にいる葉央でないものが、彼女を叫ばせる。素早く翡翠の死角に回り込んだ葉央は、持っていたカッターで彼女を斬り付ける。
     薫を傷つけても何も変わらない。薫を傷つけたら葉央自身が悲しい思いをするのではないか、翡翠はそう思いながら巨大な刀を振り下ろした。
    「人は悲しいけど、本当に大事な想い出も捨てて涙する。君にとって、彼女との想い出は大事じゃなかった? 望まない結果で、全て捨てられるほど小さい事なの?」
     届け届け、皆そう思いながら言葉をかけている。帰ってきて、帰ってきてと。
    「まぁ、お嬢さん少し落ち着こうか?」
     ロイドの繰る鋼糸が葉央の動きを封じる。そんな彼女目掛けて、ルイはギターを掻き鳴らす。
    「何でもないことで笑ったり、隣に居るだけで嬉しかったり、言葉に出来ないことだって、君は分ってくれたよね」
     説得の言葉は旋律に乗せるようにして。
    「謝るタイミングが分らなく、君に頼ってしまってたよ、その度写真の君に謝ってたよ、君は笑ってくれたよね」
     彼女に思い出を思い起こさせることが出来ればと、紡ぐ。
    「君と私がずっと友達でありますように。きっとこの幸せは続くよね」
    「……選ばれなくたって良いじゃない。キミの好きな二人が幸せになるんだから、それを応援してあげようよ」
     ごめんね、接近して魔力を叩きこむ時にぼそりと付け足して、司はロッドを叩きつける。
    「……いまはココロが痛いだろうけど、彼より素敵な人を見つけてうんと幸せになってやろうよ」
     しっかり自分で考えなきゃダメ。衝動なんかに任せちゃダメ。だから帰ってきて――。
     すずめのオーラを集束させた拳が、無数の打撃を繰り出す。ユエファが斧を振るって強烈な一撃を叩きだす。葉央が口の端から悲鳴を漏らしてふらつく。悟は小光輪を翡翠にの盾として出現させ、その傷を癒していく。
    「思い出して……二人で、重ねた楽しかった日々を」
     日々箱に溜まっていく写真のように、積み重ねた二人の時間は幻ではないから。想希は前衛に盾を広げて守りとして葉央の攻撃に備える。
    「わたし……薫、が……」
     ぼそり、葉央がその後に何を言おうとしたのかわからない。ふらつきながらも彼女の放出するどす黒い殺気が前衛を包んだ。それでも怯まずに、翡翠は刀を振るう。
    「生きて欲しいと願っている人達の為に生きてください」
     高速の動きで葉央の死角に回り込んだロイドはそっと告げて、服ごと彼女を斬り裂く。ルイが両手に集中させたオーラを放った。オーラの直撃にあった葉央はドサリと膝をついた。しかしまだ諦めていないようで、立ち上がろうとしている。その隙を、司が突いた。
    「痛いだろうけど我慢してね」
     槍が再び葉央の身体にねじ込まれる。
    「ぐぁっ、ああっ……」
     最後は溜息を付くようにして、葉央は道に仰向けになるようにして倒れた。

    ●想ったから
    「お帰りなさいませ、お嬢様」
     目を開けた葉央に掛けられたのは、ロイドの発した出迎えの言葉。ゆっくり起き上がろうとする彼女の背中をすずめが支えて。ロイドは起き上がった彼女にそっと上着をかけてあげた。
     葉央が無事に起き上がったのを見て、悟は小さく頷いて。目標であった葉央の救出は成功だ。
    「大丈夫ですか?」
     優しく語りかけた想希が、葉央の置かれた状況と学園のことを説明していく。
    「不安が多いかもしれませんが、学園には同じ境遇の方が多いので安心してください」
    「同じ……そうなんだ」
     ロイドの言葉に少し安心したように表情を緩めた葉央。ルイは彼女に近寄って、満面の笑みで手を差し出した。
    「ね、またねって言う時間くらいあるからさ。写真にも残せないことがいっぱいあるアタシ達の学園に来てよ! 葉央ちゃん!」
    「……うん」
     戸惑うように葉央は手を伸ばす。薫の事が気になっているのだろう、ユエファが元気づけようと口を開いた。
    「薫さん……葉央さんを想うから、直接話しに来てくれた……し、貴方も、闇に負けなかたくらい、強い……から。時間はかかるかもしれない……けれど、きっと大丈夫……思う、よ」
    「そう、だよね……」
    「あ……」
     ちょっと自信無さ気な葉央。戦闘中に薫が戻ってきやしないかと気にかけていた翡翠は、ふと足音を耳にして声を上げた。
    「……カオル」
     視線を移した司がその足音の主の名を呼んだ。葉央がびくっと身体を震わせて目を伏せる。けれどもその足音は躊躇いなく葉央に近づいて。
    「葉央ちゃん! ごめんね、ごめんね……!」
     葉央の首に腕を回して抱きついた薫は、謝り続ける。葉央は驚いたような顔をした後目を細め、薫の背中に腕を回した。
    「わたしこそ、薫の気持ちに気づかないでごめんね」
     そんな二人を、灼滅者達は暖かな瞳で見つめる。
     この友情は修復されるだろう。

    作者:篁みゆ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年3月13日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 2
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