●片手に収まる殺人行為
情報。
インターネット社会においては、これを多く得る者が強者となりえる。
それほど価値があるのだ。もっとも、バベルの鎖を持つダークネスには、あまり関係ない事だが。
「実にくだらん……くだらんが、実に面白い」
男は駅の改札を通り抜ける人々、切符を買う人、駅員など。大勢の人間たちを眺め回したあと。
手にもつ携帯端末(ボタンでないタッチ式のもの)に映る、とあるゲームのルールを確認し直し、アプリを切り替える。
インターネットに繋がるアプリから、ギロチンを模したマークのアプリへと。
「予定外の交戦だったが。実戦でのデータが集まっただけ、良しとしよう」
アプリが完全に起動したのを見ると、無造作に携帯端末を振った。
「データさえ、あれば。相応の調整も出来る。実に胸糞の悪いガキどもだが、そこだけは認めてやらんでもない」
駅の構内に、血が舞う。
その後も、男は二度三度と携帯端末を振る。
振る度に人が死ぬ。首を切断されて、全身を何かに絞めつけられて。
「さあ、実に急ぐ事だ。来ないのならば、ここの人間を一人残らず殺すだけだがな」
男の名は、明星・光太郎。六一一の番号を持つ六六六人衆の一人。
「どのような手段でこれを知るかは知らんが……ついでだ。この傷の借りも返してやる」
光太郎は癒えきっていない額の傷を、そっとなぞる。
恨みを、殺人衝動をより高めるために。
●調整されたアプリ
自らの予測によって、危険へと灼滅者たちを導いている。
そう思うところのある園川・槙奈(高校生エクスブレイン・dn0053)が、口を開くまでには、数秒ほど必要とした。
「以前に現れた時は……確かな油断がありましたので、その隙をつく事が出来ました。けれど、今回はそれも難しいかもしれません」
語られた未来予測に現れた六六六人衆、明星・光太郎は、これよりも前に槙奈自身が予測し、灼滅者たちの活躍によって一度、撃退に成功している。
その時は、光太郎がサイキックを行使するために用いる携帯端末のテストを行う、という油断を利用して、奇襲に持ち込む事が出来たのだが、今回は勝手が違った。
「傷を癒し、戦いで得たデータをもとに、武器を調整し直したダークネスは、再び殺人を行うようです。……ただ、目的はテストではなく。……みなさんが狙いだとか」
つまり、殺人行為自体は、灼滅者たちをおびき寄せるエサであり、同時に罠であるという事。
槙奈がいつも以上に思い悩むのにも、こういった理由があった。
「最近……六六六人衆に関わる事件で多くなっている、灼滅者を闇堕ちさせるための罠だと思います……」
それこそ、危険度は高い。死と同等に槙奈の心を苦しめるものの一つだ。
「……待ち受けていると言っても、いつ来るかまでは予知する事が出来ないので、こちらから仕掛ける事は可能です」
駅の構内という見通しの良い環境で完全な不意をつく事は難しい。そういった点から見れば、真っ向勝負とも言える。
「……無駄が嫌いな性格のせいか、みなさんの姿を見つければ、周囲の一般人には見向きもせずに攻撃してきます。……現場にさえ着けば、被害の出る可能性は低くなるでしょう」
ただし、前回現れた際、光太郎は逃げの一手として一般人への攻撃を行おうとしている。今回も土壇場で同じ行動を取る可能性があるため、油断はできない。
「……一般の方々さえ守りぬければ。殺戮を阻止する事が出来れば、それで構いません。ダークネスを撃退さえすれば、それで……。決して無理だけはしないように、お願いします」
一般人の命も大事だが、灼滅者たちの命も大事なものである。
時には闇堕ちも、仕方ない事かもしれない。ただ、しないに越した事はないのだ。
参加者 | |
---|---|
鬼無・かえで(風華星霜・d00744) |
月雲・彩歌(月閃・d02980) |
中島九十三式・銀都(シーヴァナタラージャ・d03248) |
佐和・夏槻(物好きな探求者・d06066) |
サフィ・パール(ホーリーテラー・d10067) |
茂扶川・達郎(新米兵士・d10997) |
天野・白蓮(斬魔の継承者・d12848) |
渡辺・綱姫(渡辺源次綱・d12954) |
●ゲームの私怨
人の流れが変わった。
明確な違いが出てきたほどではないが、微妙にそう光太郎が感じた、わずか数秒後。駅の構内に、少女の怒鳴り声が響く。
「ここにいたら危険おす! 早う、逃げなはれ!」
その声に少女、渡辺・綱姫(渡辺源次綱・d12954)は強い精神波をのせる。
一般人を対象に混乱を引き起こすためのESPを込めたのだ。
これにより混乱に陥った人々は、逃げろという言葉に従って、わけもわからないままに駅から逃げ出し始める。
「何が起こったかは知らんが、実に五月蝿いハエどもだ。どれ、黙らせて……なるほど、そういう事か」
突然の事に様子を見ていた光太郎は、携帯端末を懐から取り出した時。出ていこうとする人ごみに逆らい、こちらへ向かってくる少年たちの姿を見つけた。
納得したのは、その先頭を走る軍服を着た少年に見覚えがあったからだ。
「実に丁度良い。まだ誰も殺していないというのに、君達が駆けつけてくるとは……実に興味深い」
「一般人を殺しても、性能は測れないでありますよ。相手なら自分たちが引き受けるであります!」
その事態を興味という言葉で済まそうとする光太郎に、茂扶川・達郎(新米兵士・d10997)はWOKシールドを構え、突っ込んでいく。
「突撃か。実に利にかなった選択だが。今度もやはり、人間が狙われるのを警戒していると見える、どうだね?」
正面に迫りくるシールドに対して、光太郎はその場を動かず。疑問を口にしながら携帯端末を振る。何らかのサイキックを行使した合図である。
「茂扶川、足元だ!」
時間帯もあるだろうが、いまだ駅の構内に残っている人の避難に回っていた中島九十三式・銀都(シーヴァナタラージャ・d03248)は、偶然、その瞬間を目にしていたため、注意する事が出来た。
銀都の声に、達郎は前のめりの態勢で跳び、光太郎との距離を一気に詰める。同時に達郎の足の下を刃が駆ける。
「今度こそ、灼滅してやるであります」
「威勢はいいが、この程度か? 避けるなど造作もない動きだな」
距離を詰めきった達郎は、その場でシールドを備えた腕を振りぬくが、軽く後ろに下がられただけで、攻撃は避けられる。
「全部が全部、思った通りになると思ったら大間違いってとこかな」
だが、達郎の背を鬼無・かえで(風華星霜・d00744)が踏み越え、回避しきった後の隙を突いた。
宙から繰り出した槍の一撃が、光太郎の肩を軽く抉っていく。
「ぅっく……!」
呻きを押し殺し、光太郎は更に下がろうとしたが、その足に抵抗がかかる。見れば、足に細い鋼の糸が巻き付いていた。
「一度、状況をリセットするために、距離を取り態勢を整えようとする。無駄をなくすための行動だろうけど。癖のように続けていれば、動きも読める」
糸の繋がった先で、手に巻きつけたそれを繰り、佐和・夏槻(物好きな探求者・d06066)は淡々と言う。夏槻も以前に光太郎と交戦しており、その時の経験から、有効な策を用意してきたのだ。
実質、距離を取る事も出来ず。動きを制限されたまま、灼滅者たちと対峙する事になる。
その周囲で、綱姫と銀都、天野・白蓮(斬魔の継承者・d12848)の3人による一般人の避難を進める声が続く。
今、灼滅者たちが仕掛けないのは、戦力が揃いきっていない事の他に、避難を優先させる意思があったからだ。向こうが仕掛けてこないのならば、丁度良い。
「なるほど。君達は実に二度も、私の予定を狂わせてくれたな。改めて評価してやろう」
やがて、人の姿もまばらになってきた頃。光太郎は口を開く。
「あなたの評価、要りません。殺人、楽しむ人の評価、など……!」
サフィ・パール(ホーリーテラー・d10067)は、思わず食いつく。今回集まった灼滅者の中では、最年少の少女だったが、それだけに言葉は純粋なもの。
真っ直ぐに浴びせられた言葉に、光太郎は皮肉るように返事をすると思われた。少なくとも達郎や夏槻、月雲・彩歌(月閃・d02980)の三人はそう思った。
だが光太郎は、意外にもキレた。
「それだ。その態度が、物言いが気に喰わん! ガキのくせに知った風に口を聞く気か? 知能に劣るサルどもがこの俺に楯突くな!」
わずかに呆然とする灼滅者たちの前で、光太郎は自身のメガネを握り潰す。
もはや光太郎にとって、ゲームなど関係なかった。そもそもの目的が復讐だったのだから。
「執着心の強い方とは思っていましたが、ここまでとは。ですが」
彩歌の漏らした呟きに、自然と他の灼滅者たちも頷き返すと、各々の武器を構え直し。一般人の避難が終わった3人もそこに加わる。
「俺たちも、譲れない物があるんでな。お前のちんけな癇癪に、付き合ってやる暇はねぇんだよ」
言葉を繋げ白蓮は、金剛と言う名の木刀を突きつける。
●失敗の意味
調整されているだけあって、携帯端末からアプリを介して放たれるサイキックの威力は、以前のものを上回っている。
予想されていた事だが、以前のものでも灼滅者たちは苦労していたのだ。
回復役として動くサフィの補助に、銀都も癒しの力を持った風を巻き起こし続けるが、それでもじりじりと削られていた。
そして、前線で攻撃を引きつける達郎たちの隙間を縫い、光太郎はサフィたちの方へと携帯端末を振る。
「貴様だな。俺の評価を、殺人衝動を否定するガキは!」
アプリによって、宙に次々と現れたギロチンの刃が、一斉に降り注ぐ。
「人間がこの世において、どれほど無駄な存在であるか、実に考えた事があるのか!」
「分かりません。人は、無駄ではありません。ただ……私には貴方の方が、よっぽど、無駄に見えます!」
幾つものギロチンの雨の中、サフィは立ち続ける。その視線は光太郎へと真っ直ぐに。
サフィに当たるはずだった攻撃は、霊犬のエルが受け止める。
光太郎はそれに舌打ちをすると、携帯端末を振り直そうとするが、灼滅者たちがそれを何度も許すわけがなく。
「キレても、戦い方を変えないあたり。自身のやり方にさえ固執しているようですね」
動きを変える間の、わずかな隙を狙い、彩歌は刀を振り下ろす。
さすがに反応できるはずのない一撃。名刀『斬線』の斬れ味はそのまま、光太郎の腕を切り裂いた。
「くっそがぁァ!」
圧倒的、憎悪と怒り。傷つく度、屈辱を味わう度、光太郎の中にある殺人衝動は膨らんでいく。
「経験は活かせなければ意味がない。同じやり方に固執し続ける事は、周りを見ていないのと変わらない」
その膨らんだ感情を、夏槻の闘気を纏った拳が十字に引き裂く。
精神ごと傷つける一撃。光太郎の頭を激しい痛みが襲う。
「こ、の……調子に乗るなよ小僧ォ!」
しかし、腐っても光太郎は六六六人衆の一人。真の意味での戦闘経験ならば、灼滅者たちよりも上である。
夏槻はその声を聞き、やっと気づいた。自身の体に巻きつく細い線に。
一つ言っておくならば。夏槻は決して油断などしていない。単純な力量の差だ。
次の瞬間、アプリの力によって出来た鋼の糸が絞まり、夏槻の体を締め上げる。当然、首も含めて。
呼吸を止めるだけでなく、食い込む糸が肌をジリジリと削る。
「このまま首ごと絞め落としてくれる」
怒りに任せ、締め上げ続ける光太郎。
そこに、かえでが走った。
「随分と安っぽいプライドだけど。一応、へし折ってあげる。君は、ロクな奴じゃなさそうだからね」
爽やかな風が吹くように素早く動き、鋭い蹴りを繰り出し。
「ふんっ……実に運が良かったな、小僧め」
仕方なく、光太郎はアプリを中断して、その場を退いた。
その間にサフィが、拘束の解かれた夏槻にリングスラッシャーを飛ばす。
「まだ、大丈夫です。まだ、戦えます。必ず、全員無事に帰るんです……」
滞空するリングスラッシャーが、夏槻の怪我を癒していく。
「実にくだらん。甘ったるい思想で俺を殺せると思っているのが、大間違いなんだよ、このガキども!」
退いた光太郎もまた、端末を操作すると、端末から音楽を流し始める。
どこで録音してきたのかもわからない音楽だが、そこには癒しの力が込められているのだ。
「これでも諦めないのか。絶望しないのか!」
「力を見せつけられて、それで敵わねぇから簡単に闇堕ちしろってか? さっきからガキだサルだの、俺達を舐めんのも大概にしろ! お前に勝つ覚悟なら、とっくに出来てんだ!」
だがしかし、銀都は即座に言い返す。
同時に、構内を吹き抜けていく力強い風。銀都が呼んだものだ。
その風の持つ癒しの力は、決して強いものではないが、立ち上がるためには十分。
「足の怪我が治りよったようで、仕切り直しますえ。お手伝い、よろしゅう頼みおす」
風に包まれる中、綱姫は立ち上がり、再度の挑戦を申し出て、足の調子を確認するように地面を蹴ると、自身の斬艦刀『鬼王丸』を掴む。
失敗が続いていたが。恐らく、これは活路となるはずの作戦なのだ。そういう確信が灼滅者たちにはあった。
「何度やろうと同じだ。これ以上、俺をイラつかせるな!」
光太郎の叫びなど聞く必要はない。必要なのは、狙いを澄ます集中力。
「失敗は成功の元、言うのは知っとりますえ?」
「俺は正直、失敗のない人生なんて、つまらねぇって思うぜ。お前の見てると、なお更だ」
一度でダメならば、二度でも三度でも、成功するまでやり直せば良い。白蓮の口は気軽そうなものだが、その失敗の大きさも知っている。
「時には諦める事も必要でありましょう。ただし今は、その時ではないのであります。次は抜かせないでありますよ!」
代わりに、失敗という物が大きいほど、踏み越える事が出来た時、得る物は多い。
達郎はもう一度、光太郎に向かい突撃を仕掛ける。
●執着の果て
達郎が抑えこんでいる間に、灼滅者たちは足と腕に攻撃を集中させた。
既に消耗しきっている体力も、少しでもマシにするため。絶えず風が吹き、リングスラッシャーが宙を舞い続けていた。
「無駄を嫌うというのならば、なぜ傷の癒えきらぬうちに動いたでありますか。失敗を帳消しにしたかったからでありましょう!」
事実、その達郎の指摘は図星だった。
「だから、どうした! 俺に揺さぶりをかけているつもりか!」
対する光太郎は逆上。シールドも関係なしに端末を振り、ギロチンを生み出すと、目の前の達郎にぶつけて、押し飛ばす。
そのままギロチンの動きは止まらず。地面に転がる達郎へと迫る。
十分に距離はあり、少し動けば避けられるのだが、達郎は動かない。
「雷鋼義兄さま、頼みおす」
ギリギリの所で、それに気づいた綱姫がビハインドを向かわせて、ギロチンの軌道を逸らす事が出来た。
「ダメ、意識がない。相当、無茶してる」
同じように飛んで来ていたギロチンの一撃を弾き返すと、かえでがチラと見て、何があったかを知らせる。
攻撃を引きつける事自体は、十二分な活躍を見せていたのだが、その分のツケが大きかったのだ。
「まずは一人だ」
「やっと一人の間違いだろ?」
しかし、その合間に白蓮が背後から距離をつめ、木刀を振りかぶる。
光太郎は、振り向く動作でソレを迎え撃とうとする。瞬間、それらを見ていた銀都は叫ぶ。
「俺の正義が以下省略ぅ! 天野、そいつを割れぇ!」
長い技名を言い切る暇はないと、白蓮の正面へと水風船を投げる。
「おうよ!」
返事と共に、木刀で水風船を割る。
そのおかげで、飛び散る中身の液体の大半が、光太郎の手に降り掛かった。
「漏電でもすると思ったか、馬鹿ども!」
だが光太郎は、液体のついた指で画面も見ずに端末を操作。虐殺アプリに切り替え、間近にいる白蓮へと、端末を振る。
「そんじゃあ、馬鹿にも分かる様に教えてもらいたいね。あんたが携帯を振って遊んでる理由をさ」
「何故アプリが起動しない?!」
ただ、光太郎が慌てたように何も起こらなかった。画面はアプリを切り替える前のメニューで止まっており。指を動かしても思い通りに操作が出来ない。
原因は液体の正体にある。
「名付けて、必殺、闇堕ちゲーム終了のお知らせっ! 中性洗剤の力、思い知ったか!」
細かく言えば、その原液である。
この方法。指先程度の量ならば、少し操作しづらくなるだけで済むが、銀都の取った方法は、幾つもの水風船に入れてきたものをまとめてぶちまけるという物で、洗剤の量が違う。
結果、光太郎は端末の操作を封じられたに等しい。
それでも諦めまいと、スーツの袖で端末の洗剤を拭おうとする。完全な隙だった。
その隙を逃すまいと、綱姫が駆ける。
「あんたはんの大事にしとる、その力の源。うちが叩き斬らせて貰わしおす!」
最悪、腕ごと。一箇所を狙うにしては大きすぎる刀身を、大上段に持ち上げ。
「私も、手伝います……!」
斬艦刀を持ち上げる少女の背に、サフィが矢を射ち込み。綱姫の内に備わる超感覚を引き出す。
次の瞬間、鬼王丸は振り下ろされた。今までを越える速度で、今までを越える精密さで。小さな携帯端末に目掛け。
鈍い手応え。
「ゥぅォぉ俺の、俺の武器が……ァァァ!」
さすがに端末だけとはいかなかったのか。光太郎の拳からも、血が流れ出る。
そんな風にいて、痛みに呻く光太郎の前へと、彩歌はゆっくりと歩み寄り。一言だけ。
「これで、終わりにしましょう」
あとは言う事もないと、斬線に手をかける。
「終わりだと? ふざけるな! 俺が、貴様らのようなサルに負けるものか! ちんけななまくらで俺の首を落とせるか? 実に、実に不可能だ!」
武器がなくなったにも関わらず。傲慢な物言いだった。
かえでが言ったような、安っぽいプライドが、ここまでさせているのだ。
「その考えが、貴方自身の価値を貶めているという事に、なぜ、気づかない」
これは夏槻の言葉。
「はっ、俺の価値を決めるのは、俺だ。そして俺の予定は実に完璧なものだ。だからだ、だからこの傷を消すために貴様らを殺すんだよ、このクソカスどもがぁぁぁ……ぁ、っ……!」
血まみれの拳で殴りかかろうと動くが、そこで光太郎の声は途切れる。
彩歌の抜き放った斬線が胴を斬りつけ、命を断ったのだ。
力を失くし拳は地面を殴りつけるに終わり、彩歌は斬線を鞘に収めた。
「執念だけで、ここまで出来るものなのですね」
「昔に何かあったとしても、僕たちには関係ない。こいつがやろうとしてた事に比べたらね」
零れた呟きに、かえでは淡々と返し。
しばらく、誰も口を聞かなくなる。
「んなことよりも、こっち手伝ってくんね? ごついから、茂扶川、重くてさ」
その雰囲気の中、白蓮は最初に口を開く。
怪我人とはいえ、さすがに駅のど真ん中に放置しておくわけにもいかないとの提案のつもりだった。
この後、人が戻って来るまでの間。
疲労しきっていた灼滅者たちは、予想以上の苦戦を強いられる事になる。
作者:一兎 |
重傷:茂扶川・達郎(新米兵士・d10997) 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年3月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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