「おい、聞いたか?」
「ああ、あの洋館の噂だろ?」
白・彰二(虹色頭の反抗期・d00942)がたまたま耳にしたのは、怪談めいた噂話に興じる少年達の会話だった。
(「半身ねぇ……っ、嫌な記憶思い出しちまった」)
何でも街外れの洋館の中を夜中になると人の上半身が浮遊しながら彷徨っていると言うのが、話の内容で。
「いや……上半身だってんならアレとは無縁だぜ」
これだけなら極まっとうな怪談っぽくあるのに、彰二は思わず顔をしかめた。たぶん忘れたかった嫌な感触でも思い出してしまったのだろう、過去に遭遇した都市伝説の。
「つーか、やめてくれよ。怖いの苦手なんだからさぁ」
自分とは別の意味で嫌そうな顔をした少年達と別方向に彰二は歩きだし。
(「一応確認はしといた方が良いんだろうな。まぁモロ見えでも上半身なら……」)
そして、見つけてしまうのだった、新たな都市伝説を。
「都市伝説が出現したという報告があったの」
そう告げたのは、眼鏡をかけたお下げ髪の少女だった。おそらくはエクスブレインなのだろう。
「発見者である彰二君からの情報だと今のところ被害者は出てないわ」
都市伝説とは、一般人の恐怖や畏れなどのマイナスの思念の塊がサイキックエナジーを受けて実体化した暴走体で、バベルの鎖を有するが故に一般人では対処出来ない厄介な存在なのだ。
「今回確認された都市伝説は、上半身のみの姿で浮遊しつつ洋館の中を彷徨い、遭遇したものに襲いかかるのだという」
洋館の地下に怪しい祭壇があって、そこで行われた何らかの儀式に失敗した結果『それ』は誕生したと言うことになっているらしい。
「ただ、噂事態にもかけてる場所やあやふやなところがあって」
討伐対象の外見性別と服装は不明、とのこと。
「どっちにしても上半身だけで浮遊してる一般人なんて存在しないから見間違えようはないわ、ビハインドなら兎も角ね」
つまり、それを倒してくれば良いと、それだけの話でもある。
「この都市伝説が出現するのは夜中のみ、洋館は住人が居なくなって久しく、入り口も封鎖されてるから人が入ってくることはまず無いわ。あなた達の身体能力なら塀を越えて侵入出来ると思うけれど」
件の上半身は地下室から現れ、館の中目的もなく徘徊し、夜明け前に地下室に戻って行くと少女は説明する。
「よって、確実に遭遇するなら夕方に乗り込み、地下室に続く階段の前で待ちかまえるのが一番確実ね」
夜明け前に帰ってくるのを待つのも手だが、こちらは徘徊中の都市伝説と移動中に遭遇してしまうリスクがある。
「当然だけれど無人の洋館は暗いから明かりの用意は忘れないで」
尚、戦場になると予想される階段の前は大部屋になっており、壁にはロウソクを立てる燭台が無数に設置されていると言う。
「ちょうど実家に余っていた和ロウソクがあったから、良かったらこれを使って頂戴。ただし、火の元には充分気をつけて」
言いつつ差し出されたマッチとロウソクを受け取った灼滅者達が戦う相手は、戦闘になると、ご当地ヒーローのサイキックに似た技で襲いかかってくる。足がない為、キックのかわりにパンチを繰り出してくるが、効果は殆ど替わらない。
「上半身だけの美女、上半身だけの半裸男、例えどんな姿であったとしても力なき人に害を為すなら放ってはおけないわ」
お願いすることしかできないけれど、と前置きして少女は頭を下げ灼滅者達を送り出した。
参加者 | |
---|---|
若生・めぐみ(癒し系っぽい神薙使い・d01426) |
裏方・クロエ(魔装者・d02109) |
クノン・マトーショリカ(トラブルメーカー・d04046) |
レイシー・アーベントロート(宵闇鴉・d05861) |
久遠寺・ほのか(赤い目のうさぎ・d06004) |
犬蓼・蕨(白狼快活・d09580) |
弓塚・紫信(煌星使い・d10845) |
星宮・諭(機神の加護を受けるライダー・d15076) |
●洋館へ
「そろそろゆくぜ」
と、仲間達を促しつつ、塀に手をかけたレイシー・アーベントロート(宵闇鴉・d05861)は、そのまま身体を持ち上げながら、横目で沈む夕日を見やった。
(「ここんとこやっとあったかくなってきたけど、背筋冷やすのはもうちょっと先でいいんじゃねーか」)
日没に近づき冷え込んできた大気は容赦なく灼滅者達の肌を撫で、体温を奪って行く。
(「ま、都市伝説にシーズンなんて、あんま関係ないのかもしれねーけどさ」)
生みの親である噂に縛られた存在に融通を利かせろと言う方が無理なのか。
「帰る頃には夜になってるかな」
それこそ肝試しみたいだな、と呟きながらひらりと塀を乗り越え。
「べつに怖くなんかないぜ!」
振り返ってわざわざ声に出すところがかえって怪しいのだが、それはそれ。
「このまま迅速に目的地を目指すのです。さーて、お化け探検発見ボクのたびっとー」
何やら泥棒さんになった気がしますですけどね~と間延びした口調で続け、裏方・クロエ(魔装者・d02109)が洋館を指さしていた腕を下ろして歩き出せば、他の灼滅者達が後を追い、数分後には扉をくぐって洋館への侵入を果たす。
(「何の儀式、だったんでしょう……か?」)
よほど人が訪れなかったのか、埃の積もった廊下に足跡をつけながらクノン・マトーショリカ(トラブルメーカー・d04046)がこれから向かう先にあるのは、地下へ続く階段。そして、階段の先には祭壇の設置された地下室がある筈だった。
(「噂、でも……ソロモンの悪魔さんが絡んでいないか、心配なの、です」)
おそらくは、儀式と言うキーワードや祭壇がクノンを必要以上の不安に駆らせたのだろうが、あくまで噂は噂。
「今回のケースは結構珍しい気がしますですね。都市伝説のみならず祭壇を壊すと祭壇ごと復活するとか」
祭壇を気にする灼滅者は他にもいたが、一行のすべき事は、都市伝説の撃破なのだ。
「この都市伝説どうして人を襲うのかしらね」
ポツリと久遠寺・ほのか(赤い目のうさぎ・d06004)が口にしたように、エクスブレインも言っていたようにこの都市伝説が遭遇した者を襲う性質を持つ以上、放置しておく訳にはいかない。
「どんな見た目なのかのー?」
「上半身だけってどうなっているんしょうね……こう、内臓的に」
となると、自然に話題へあがるのは、都市伝説の容姿。辿り着いた地下への階段の前、壁の燭台へ和ロウソクを設置する作業を手伝いながら犬蓼・蕨(白狼快活・d09580)が時折尻尾を揺らせば、ほのかも疑問に思うところがあったのか同調するように口を開き。
「現れるのが上半身の方でよかったです。……は、誰もが思うことですよね」
弓塚・紫信(煌星使い・d10845)がわざわざ周囲に確認したのは、余程とんでもない都市伝説の姿を想像してしまったのか。
「数は多いが、取り外すのは無理そうだな」
並ぶ燭台に目をやりながら一番近いそれに近寄った星宮・諭(機神の加護を受けるライダー・d15076)は、手に持っていた和ロウソクを立てると、壁との接続部分に手をかけて結論づける。
「やっぱり……雰囲気でますですよね」
準備は着々と進み、時計の針も進んで、灼滅者達は持参したものと蝋燭の明かりの中、ただ階段を上がって来るであろう者を待つ。
●出現
(「上半身だけで浮遊してる都市伝説ですか……こ、怖くなんてないんですから、怖くなんて……」)
顔を強ばらせた若生・めぐみ(癒し系っぽい神薙使い・d01426)と向き合ったまま、ナノナノのらぶりんは主の様子に首を傾げた。
「ナノ?」
弾みで、らぶりんの首にかけられた懐中電灯が揺れ、蝋燭の明かりに照らされた床を切り取る黒いシルエットも揺れる。痛いほどの沈黙が僅かに破られ、再び静けさを取り戻した階段の前で、灼滅者達は息を潜めた。
「うぉぉぉぉぉ」
たぶん時間にすれば六十分にも満たない時が経過した頃、地下から聞こえてきたのは唸り声とも悲鳴ともとれる性別不明の声で。
「HopetheTwinkleStars」
スレイヤーカードの解除コードを口にした紫信は、張りつめた空気の中、横目で仲間を見やった。
(「大丈夫そうですね」)
最初に視界に入っためぐみは、右手の指でスレイヤーカードを挟んだままじっと階段の方を見ており。
「おぉぉぉぉ」
数十秒後、階段から姿を見せたのは、フード付きのローブに身を包み、浮遊しつつゆらゆら揺れる何かだった。
「祈願、封印解除!」
形だけなら、確かに上半身。フードの奥は暗くなって見えないが、情報がないからこそ直接顔を拝めないような姿をしているのかもしれない。
「……上半身でよかったですね」
と言うか、下半身だったらこういう誤魔化し方は出来なかっただろう。めぐみの上擦った叫び声を聞いた瞬間、紫信は想定外の姿に驚きを感じはしたが。
「うーん、あの中はどうなってるのかな?」
好奇心旺盛で、ローブの中に興味津々な様子の蕨程ではないものの、気になったのは事実。もっとも、この場にいる面々は好奇心が満たせればそれでいいという訳でもなくて。
「興味はあるけれど、気持ち悪いしさっさと潰しちゃいましょう」
「だな。上半身でも有害指定だから、さっさと消えて貰おうか。夕飯作るのまだだし」
ほのかの声に頷きを返した諭は、ポツリと漏らしながら燭台の明かりで生じた影を視線の先の都市伝説へとけしかけた。
「ちぃ、お願いします。ね」
「わうっ」
クノンは己の霊犬に声をかけつつ両手にオーラを集中させ。
「世界の不思議はボクが見つけるのだぜ。フードの中、見せて貰うよ!」
クロエがすくい上げるようにして捻りを加えた妖の槍を突き出す。
「うお゛ぉぉぉ」
そのまま頭部を貫くかに見えた螺穿槍は都市伝説の頭部を掠めてフードを跳ね上げ。
「って、うわっ」
「うっ」
現れた上半身の顔に何人かの灼滅者が各々の顔を引きつらせた。一行が目にした都市伝説の顔は、皮膚がない側の人体模型とでも言えばいいか。
「なんだ、顔だけ美女で下がマッチョメンじゃなかったのー」
「いや、なんだそれは? つーか、情報が出来てないから作成中ですってことならこうい」
残念そうに呟く蕨の発言に微妙に強ばったままの顔でツッコミを入れたレイシーは視線を戻して、言葉を失う。
「おぉぉぉぉ」
さっきまで皮膚のない人の顔だった都市伝説の顔が目鼻立ちの整った美女の顔に変貌していたのだから。ついでに、身体の方も無駄に筋肉質へと変貌しており、ローブが中身に引っ張られてパッツンパッツンになっている。
「天はあなたに美貌は与えても、足は与えなかったんですね……」
「いや、美貌とかそう言う問題じゃねーぜ?」
ご希望通りの容姿に変わったことで蕨がちぎれんばかりに尻尾を振っていたが、それはまだ良い。むしろ、急に変態した都市伝説と哀れみの視線を向けたまま漆黒の弾丸を生成する紫信の方がツッコミの優先順位は高いと思われ。
「あの都市伝説に出会った時、容姿によってどんなことを言うか色々考えていたんですよ、まさにこの状況は渡りに船。複数の案を使える素晴らしい機会じゃないですか」
ここは流石しっかり者と感心するところだろうか。
「うぼぁぁ」
弾丸を撃ち込まれた上半身だけのそれは身体に穴を穿たれて悲鳴を上げつつ身を捩り。
「またあんなものを見せられても嫌だもの、さっさと終わらせちゃいましょ」
興味やツッコミどころより目の前の敵の処分を優先させるべく、ほのかは都市伝説の死角に回り込む。
「足がない、ってのもお化けの定番みたいな都市伝説だけど、まさかこんな展開とはな」
設定がなかった要望をオーダーされたのは都市伝説側にとっても渡りに船だったのかもしれないが、何とコメントすれば良いやら。
「ひぎゃぁぁぁっ」
「わうっ」
ほのかに切り裂かれ仰け反る上半身都市伝説へちぃの撃ち出した六文銭が襲いかかり、ライドキャリバーの機銃掃射が追い打ちをかけた。
●戦いとは
「室内での援護射撃は辛いな」
あくまで使用者の感想ですとテロップがつくかどうかは定かでないが、連射し終えたガトリングガンを下ろしながら諭はそう呟いた。
「おぉぉぉ」
戦いは、まだ続いている。正確にはコントめいたやりとりの混じっていたあれはただの序章に過ぎなかった。ロウソクの揺れる明かりの中で、蕨と都市伝説が対峙し。
「貴様をほふるっこの私のっ…………あれ?」
葬魔を振りかぶった姿のまま、蕨が固まる。
「……どうしましたか?」
心配に思ったのか、クノンがかけた声にかえってきたのは、下半身がないから急所が狙えないと言う旨の答えと蕨のしょげた表情。訂正、コントっぽいやりとりはまだ終わりでなかったらしい。
「と言う訳で、八つ当たりフォースブレイクっ!」
「ぐがぁぁぁぁ」
たぶん、都市伝説からすればたまったものでは無かったんじゃないだろうか、そんな理不尽な八つ当たりをされるのは。
「うぉぉぉぉ」
故に、苦痛で顔を歪めた上半身都市伝説がそのまま拳を繰り出しても誰が責められよう。そもそもこの都市伝説は最初から遭遇した相手に襲いかかる性質を持った存在なのだ。
「きゃぃんっ」
「大丈夫ですか? 今、癒しの矢を――」
「ナノナノ~」
仲間が殴り飛ばされる様を目撃しためぐみは天星弓に癒しの力を込めた矢をつがえ、弦を引き絞り。らぶりんも主に倣って蕨へとハートを飛ばす。
「油断は大敵ですよ」
「うごぉぉぉぉ」
拳を繰り出したはずみで体勢の崩れた都市伝説の身体を紫信の影が刃と化して切り裂き。
「……あちらは、大丈夫そうですね。援護、します!」
回復は充分と見たクノンがけしかけたのもまた、己の影。
「おぉぉぉふ」
切り裂かれた都市伝説の上半身を床からせり出した影が生き物のように都市伝説を捕食し。
「っしゃぁぁぁぁ」
「ま、これで終わりじゃねーとは思ってたぜ」
咆吼を上げながら影を突き破って出てきたそれを見据え、レイシーは詠唱圧縮した魔法の矢を撃ち出した。
「ぐふしゅぉぉぉぉ」
「まだ終わりじゃないわよ」
マジックミサイルが直撃し、ノックバックされたかのように後方へ飛ばされ行く都市伝説を待ち受けていたのは、距離を詰め追いついたほのかの拳。
「ご、が、ぐ、げ、ご、ぎっ」
「急所がないなら満遍なくぼこぼこにするよっ」
オーラを拳に集中させての乱打が上半身都市伝説を踊らせ、更に別方向から蕨が同じ技を叩き込む。
「ご、ぐふしゃぁぁぁっ」
二人がかりの袋叩きに遭いながらもそれは反撃とばかりに拳を振り上げ。
「そうは、させませんよ」
下ろされる拳の前へと、ロケットハンマーを握り直したほのかは割り込んだ。
「うっ」
肉を切らせて骨を断つ戦い方は既に一度見ていたのだ。自身がダメージを受けたとしても他者への攻撃を阻害することぐらいならば出来る。
「流石に相殺出来るほど柔な拳じゃないみたいね、だけど――」
ここまでの攻防は都市伝説にも軽視出来ないほどのダメージを与えていた。決着の時は、今。
「ええ、そろそろ幕です」
一度は炎を振り払った上半身都市伝説を爆炎の魔力を込めた弾丸の連射によって紫信は再び炎に包み。
「ぎゃぁぁぁぁっ」
「……下半身のみじゃなくってよかったですね……」
服破りの効果でローブからこぼれた裸体を見ないようには目をそらした後、呟く。
「さて~追撃なのです」
「ちぃ、も援護をお願いします。ね」
ロケット噴射を伴う一撃を繰り出すべく、ほのかがタイミングを見計らう間も都市伝説は畳みかけるべく重ねられた灼滅者達の攻撃に晒されて。
「おぉぉぶ、がっ、ふしょあぁぁっっ」
「がるるっ」
影に斬られ、影に呑まれるそれへと再び撃ち込まれるのは、ちぃの六文銭。
「らぶりん、横に――」
「ナノナノ~」
「ごっ、おぉぉぉぉ」
指示に従ったナノナノが避けた場所をめぐみの撃ち出したオーラが通過し、上半身都市伝説を飲み込む。
「ふふ、これで最期ですよ」
そして、振るわれるは、盛大にロケット噴射を噴き出したロケットハンマーの一撃。
「とっとと……」
大振りの一撃に耐えきれず都市伝説の身体が粉砕され、消滅して行く残骸を尾としてたなびかせたままハンマーは少しだけ主を振り回し。洋館の戦いは幕を閉じた。
●地下室
(「被害が出る前で、よかったです……」)
安堵に胸をなで下ろすクノンの顔をロウソクの炎が照らす。灼滅者達は都市伝説を倒すことに成功し、ひとまずの目的は果たしたと言って良いだろう。
「火はちゃんと消しておかないとね」
「そうですね」
火の始末だけはきっちりと、それがロウソクの使用を決めた面々の共通認識だったと思われる。もしこのまま帰路につくなら、ロウソクを消してしまっても問題はない。
「あとは、地下の祭壇も確認しておくのです」
エクスブレインの話通りなら祭壇も都市伝説の一部、浮遊する上半身が倒された今となっては何も残っていないはずなのだが。
「探検開始だよっ」
「あ、ちょっと」
ありあまった好奇心を原動力にして既に走り出している蕨とは目的もテンションも大いに異なっていたが、ここにもう用は無いと思っていなかったのは、クロエも同じ。
「ま、念のためだ。他に怪しいもんがなければ、ろうそくを消して回収。んで、帰ればいいだろ?」
ロウソクを消してすぐさま帰るつもりだっためぐみを宥めるレイシーの声を背後に聞きながら、階段は規則正しいクロエの足音を刻みつつゆっくり下降して行く。
(「それにしても此処で何をしていたかは気には為りますね。魔法陣とか祭壇とかはソロモンの悪魔の十八番ですし」)
都市伝説が何をしていたかと言うなら、噂に従って行動していただけの筈なのだが。
(「バベルの鎖がある限り情報は漏れないとは思いますけど」)
自分の目で確認しないと気が済まなかったのだろう。
「さーて、階段は終わりですね。この先はどうなっ」
そんなクロエを待ち受けていたのは、ただ埃が積もっただけの何もない空間だった。
「見事に何もないな。そりゃそっか」
「……祭壇、消滅してるみたいですね」
噂で浮遊する上半身を出現させた祭壇は、上で戦闘が終わり、階段を下りてくるまでの時間で消えてしまったということか。
「確認出来ましたし、火を消して早く帰りませんか?」
「……そうですね」
地上でしそびれためぐみの提案に誰かが同意して、踵を返した灼滅者達が階段を登り始める中、は一人立ち止まり。
「次は……」
完全な身体で現れてもらっても困りますねと続けてから、仲間達の後を追う。
「くぅん、髪の毛べとべとするよぅ」
館を出るまでに埃と蜘蛛の巣まみれになった灼滅者が約一名出たものの、人が住まなくなって久しい館を探検したのだ、それも仕方ないだろう。こうして被害者を出さぬうちに彷徨う上半身の噂は幕を下ろし、洋館は元の静けさを取り戻したのだった。
作者:聖山葵 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年3月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 9
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