阿佐ヶ谷地獄~早朝の惨劇

    作者:J九郎

     時刻は午前4時。昼は多くの人が行き交う地下鉄阿佐ヶ谷駅も、始発前のこの時間は静寂が支配していた。
     だがその静寂は、いくつもの低いうなり声と、何かが這いずるよう不快な音に破られた。
     地下鉄の線路から何かが……いや、何かの群れが、阿佐ヶ谷駅へと迫っているのだ。
     見るものが見れば、それが無数のアンデッドであることに気付いたろう。その手に握られているのは、奇怪な文様の刻まれたナイフ。
     そのアンデッドの群れが阿佐ヶ谷駅から地上に溢れ出した時、惨劇の幕は上がった。

     朝早く、住宅街の住人のほとんどがまだ目覚めていなかったことは、幸運だったのか不運だったのか……。
     アンデッド達はある者は窓ガラスを割り、ある者は玄関のドアを叩き壊して住宅内へと侵入した。
     そして、まだ心地よい眠りの中にいる住人に、無慈悲に手に持ったナイフを突き刺す。多くの住人が、自分の身に何が起こったのかも分からぬままに死んでいった。彼らはまだ、幸せな部類ではあっただろう。
     より不運だったのは、早起きをしていた者、アンデッドの気配に気付き目を覚ましてしまった者だ。彼らは、アンデッド達が家族や近所の住人を殺すところを目撃してしまい、さらに自分も殺される恐怖を味わいながら、苦痛と絶望の中で死んでいかねばならなかったのだから。
     そして、ごく一部、アンデッドの持つナイフにさされても死ななかった者がいる。だが、彼らは果たして幸運だったのだろうか?
     生き残った彼らの体は、全身は蒼く染まり、四肢が丸太のごとく膨れ上がり、鋭い牙を持つ口以外、目も鼻も判然としない異貌と化してしまっていたのだから。
     それはまさに、デモノイドと呼ばれる姿に他ならなかった。
      
    「大変な事態が起こりました」
     いつもはマイペースな五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)の深刻そうな表情に、灼滅者達はただならぬ事態が起きたことを悟る。
    「阿佐ヶ谷の街に、大量のアンデッドが現れたんです。しかも、そのアンデッドに襲われた人間の一部が、デモノイドに変化してしまっているのです」
     話を聞いた灼滅者達に動揺が走る。デモノイドといえば、鶴見岳の戦いでソロモンの悪魔達の尖兵となっていた強力な存在だ。
    「なぜノーライフキングの眷属であるアンデッドが、デモノイドを生み出す力を持っているのかと疑問に思った方もいるでしょう」
     未確認情報だが、アンデッド達の持っているナイフが、少し前にソロモンの悪魔の配下達が行っていた儀式に使われていた短剣と同様のものである可能性があるらしい。
    「いずれにせよ、このままでは阿佐ヶ谷の街が大変なことになってしまいます。今は、これ以上の被害を生み出さない為、アンデッドと、そして生み出されてしまったデモノイドの灼滅をお願いします」
     緊張をはらんだ姫子の言葉に、灼滅者達も真剣な表情で頷いた。
      
     その頃、阿佐ヶ谷の街は、地獄と化していた。
     ようやく事態に気付き、逃げまどう人々にアンデッドが儀式用のナイフで襲いかかり、血しぶきと悲鳴が街を満たす。
     先程まで人間であったはずのデモノイドが、息絶えて地面に倒れ伏す幼い少女の体を踏み砕き、道端に捨て置かれていたバイクを無造作に抱え上げ、前方を逃げていく群衆に投げつける。運悪くバイクの直撃を受けた老人は、そのまま動かなくなった。さらにバイクのエンジンが衝撃で爆発し、周囲の人々を吹き飛ばす。巻き起こる黒煙と炎を背景に、デモノイドが雄叫びを上げた。
      
    「現在、他の灼滅者達も現場に向かっています。お願いします、みなさん。一人でも多くの人を救ってあげて下さい。そしてもちろん……あなた達も生きて帰ってきて下さい」
     姫子はそう言って、灼滅者達を送り出すのだった。


    参加者
    美泉・文乃(幻想の一頁・d01260)
    御神本・琴音(天国への階段・d02192)
    竜胆・きらら(ハラペコ怪獣きららん☆ミ・d02856)
    高橋・雛子(はっちゃけ高機動型おちび・d03374)
    風波・杏(陣風・d03610)
    楯守・盾衛(シールドスパイカ・d03757)
    黒澤・蓮(スイーツ系草食男子・d05980)
    木元・明莉(楽天陽和・d14267)

    ■リプレイ


     巻き起こる黒煙と炎、そして化け物の雄叫び。
     逃走を続けていた人々の心に、絶望と諦めが蔓延していく。
     蒼い肌をした巨大な化け物が、今度は路上に駐車してあった自動車を持ち上げる。
     ――もう駄目だ。
     誰もが思ったその時。
    「やらせねぇっ!」
     鋭い声が朝の街中に響き、無敵斬艦刀を構えた黒澤・蓮(スイーツ系草食男子・d05980)が、デモノイドの前に立ちはだかった。
    「皆サァーン! 助けに来たンでお帰りはコッチラァー!」
     割り込みヴォイスのESPを発動した楯守・盾衛(シールドスパイカ・d03757)の声は、阿鼻叫喚の地獄の喧噪を破り、人々の耳に届く。
    「ここは危険です! 早く逃げて下さい!」
     警備員を装った木元・明莉(楽天陽和・d14267)が人々の誘導を開始した。
     助けが来た――。その事実が、絶望しかかっていた人々の心にわずかな希望の火を灯す。
    「この辺りは危険だよ。阿佐ヶ谷から出来るだけ遠くへ逃げて!」
     竜胆・きらら(ハラペコ怪獣きららん☆ミ・d02856)が、逃げるだけの気力を取り戻した人々を誘導し、
    「駅の方向はダメだよ。あっち!」
     御神本・琴音(天国への階段・d02192)は怪我人をサイキックで癒しつつ、なるべく安全と思えるルートを示す。
    「ヴォオオオ……!」
     逃げ出した人々へ、アンデッドが襲いかかろうとするが、そこに割り込んだのは美泉・文乃(幻想の一頁・d01260)だ。
    「ここは僕たちが防ぐから大丈夫。さあ、はやく行くんだよ」
     アンデッドの鋭い爪を解体ナイフで受け止め、人々が逃げる時間を稼ぐ文乃。
    「ァァァァァァッ!」
     デモノイドが、眼前に立ちはだかった蓮を無視し、持ち上げていた自動車を、逃げる人々へ向け投げつける。
    「しまった!」
     蓮が無敵斬艦刀で自動車を両断しようとするが、間に合わない。自動車は逃げまどう人々の中心へ向けてゆっくりと飛んでいき――
    「1人でも多く、助けなきゃ……わたしはっ!」
     だが、飛んでくる自動車と人々の間に割って入った者がいた。WOKシールドを展開させた高橋・雛子(はっちゃけ高機動型おちび・d03374)だ。
     WOKシールドに自動車が激突するが、雛子は小さな体に全力を込めてこれを受け流す。
    「ァァッ……」
     デモノイドの表情の読めない顔が、逃げる一般人から雛子に向けられた。それは、デモノイドが雛子を敵と認識した証。だが、それは望むところ。これで、人々を逃がすことが出来る。
    「なんとか一般人は逃がせたようだね。じゃあ、今度は誰かが迷い込んでこないようにしないと」
     風波・杏(陣風・d03610)の全身から殺気が立ち昇り、見えざる殺意の結界を形成する。
    「お前の相手は、わたしだっ!」
     デモノイドの巨体に、WOKシールドを叩きつける雛子。さしてダメージを与えられはしないが、構わない。目的は、デモノイドの注意を自分一人に引きつけることだから。
     ――仲間も、わたしが守るんだ。
     強い決意を胸に、雛子はデモノイドに立ち向かう。
    「さて、それじゃあ俺達は、雑魚を先に片付けるか」
     一瞬で仲間達とアイコンタクトを交わした蓮は、無敵斬艦刀をアンデッドに向ける。この場にいるアンデッドの数は4体。まずはアンデッドを素早く殲滅するのが、彼らの作戦だった。
    「余のため俺のため、テメェらコッチ見ろ、聴け、そして死ねオラァ!」
     未だ一般人を追おうとしていた1体のアンデッドに、盾衛が影を刃に変えて斬りかかった。確かな手応え。だが、アンデッドは何事もなかったかのように、ただ虚ろな顔を盾衛に向けただけだった。
    「チッ、何考えてんのか分かんねえ奴はやりにくいな、オイッ!」
     それでも、自分に注意が向いただけでも上等だと、盾衛は自在刀“七曲”を抜き放ち、ニヤッと笑った。
     

    「光よ、私に癒しの力を!」
     琴音が自らの身に光を集め、癒しの力を増幅させる。
    「霧よ、漂い来たりて我らの存在を虚ろなものと為せ」
     文乃の持つナイフから漂い出た霧が、文乃自身と隣にいた明莉の姿を隠していく。
    「最初から全力でいかせてもらうよ!」
     明莉が無敵斬艦刀“激震”を大きく振りかぶり、一気に振り下ろす。剣から発した衝撃波がまとめて向かってくる3体のアンデッドを同時に吹き飛ばす。
    「続けていくぜ!」
     蓮がすかさず無敵斬艦刀に炎を宿し、その炎の剣を1体に向けて振り下ろす。アンデッドの腕が切り落とされ、さらに切り口から炎が全身に広がっていく。
     それでも、アンデッドは一向にひるんだ様子はなく、炎に包まれたまま、拳を突き出してくる。
    「黒澤さん、危ない!」
     そんなアンデッドの攻撃を代わりに受け止めたのは、杏だ。アンデッドの重い一撃を、なんとか妖の槍で受け止める。だが、
    「ヴォワッ!」
     別のアンデッドが横合いから杏に殴りかかる。守りを固めていたとはいえ、2体からの連続の攻撃にはさすがに耐えきれず、杏が苦しげに膝をつく。
    「杏さん、回復はお任せだよ!」
     すかさずきららが天星弓から癒しの矢を放ち、杏の傷を癒した。
    「だー、クソッ! しつっけえぞ、こいつらっ!」
     盾衛が吐き捨てる。先程から何度斬りつけても、アンデッドは全く意に介した様子を見せないのだ。例え腕が千切れようが胴を貫かれようが体が炎に包まれようが、何事もなかったように迫ってくる。
     すでに普通の人間なら――いや、たとえ灼滅者やダークネスであってさえ、戦意を喪失してもおかしくないダメージを受けているはずなのだ。
     しかし、痛みもなく、生への執着もないアンデッドは正に死を超越した存在であり、それゆえにその行動は生者の想像の範疇を超える。
    「殺しても死なないのなら、石に変えてしまえば!」
     文乃が禁断の呪言を紡ぎ、契約の指輪をアンデッドの一体に向けてかざすと、アンデッドの体が徐々に石化を始める。
    「なるほど、動きを封じるのはありかもね」
     杏は妖の槍を構えると、その切っ先を別のアンデッドに向けた。
    「――凍てつけ」
     槍から放たれた妖気が巨大なつららとなり、アンデッドの腹部を貫く。さらに貫いた部分を中心として、全身が氷に覆われていった。
     だが、それでもアンデッドたちの動きは止まらない。あるものは腕を振り回し、あるものは鋭い牙でかみつき、少しづつ灼滅者たちを傷つけていく。
    「みんな! 焦らず、傷ついたアンデッドから順番に集中攻撃していこう!」
     傷ついた仲間たちを癒しの矢で治療しながら、琴音が皆を励ますように声をかける。
    「アンデッドにばかり手間取ってると、雛子さんが保たないよ!」
     きららは、デモノイドの猛攻をひとりで凌いでいる雛子を癒していた。見れば雛子の小さな体はボロボロで、サイキックによる癒しも追いついていないように見えた。
    「高橋、配置を変わろう。やっぱりデモノイドを一人で相手取るのは無理だ」
     杏が雛子の元へ向かおうとするが、当の雛子がそれを制する。
    「大丈夫! 今のあいつはわたしだけを狙ってるから、わたし一人で相手をした方がいい!」
     傷だらけの顔に笑みを浮かべて、雛子は一人、デモノイドに向かっていく。
    「わたしより先に絶対誰も倒れさせないっ! だからみんなは先にアンデッドをっ!」
    「だったら、せめて俺の“影”を回すよ。少しでも弾除けになればいいけど」
     明莉が、自らの背後に控えるビハインドの暗に指示を出すと、暗は無言でデモノイドへ向かっていく。
    「さて、こっちもこれ以上時間かけてられねぇなっ!」
     蓮が素早いフットワークで、半分凍りついたアンデッドの懐に飛び込む。
    「閃光百裂拳っ! くらえっ!」
     そのままオーラを込めた拳を、連続でアンデッドに叩き込んでいく。息つく間もない猛攻に、アンデッドには反撃する暇すら与えられない。そしてついに、アンデッドは氷が砕け散るように無数の破片となり、砕け散った。
     一方で、
    「いくら不死身の化け物でも、さすがにアタマァ潰されりゃくたばんだろっ!」
     盾衛が自在刀“七曲”を振りかぶり、大地を蹴った。そのまま、唐竹割りに刀を振り下ろす。
    「俺の雲耀剣で、もう一度死んでこいやーっ!!」
     盾衛の一撃は、アンデッドの頭部どころか、全身を一刀両断した。それでもアンデッドの体はしばらくピクピクと動いていたが、やがて動きを停止し、地面に倒れ伏した。
    「あと、2体!」
     体が燃え盛るのも構わず襲いかかってくるアンデッドの攻撃から後衛をかばいながら、杏がカウントする。
    「いや、あと1体だよ。死体を殺すのは骨が折れるけど、石を砕くのは簡単だからね」
     文乃が手をかざした先にいるのは、ほとんど全身が石と化したアンデッド。次の瞬間、かざされた文乃の手から、マジックミサイルが放たれ、その石化したアンデッドを粉々にする。
    「あと1体か。ならっ!」
     杏に殴りかかってきたアンデッドが動きを止める。見れば、杏の影が触手のように、アンデッドを縛り上げている。
    「よしっ、捕まえたッ!」
     そのまま、一歩後退する杏。そこに明莉の放ったオーラキャノンが飛び込んでくる。
    「これで終わりだっ!」
     アンデッドは身動きできないままオーラキャノンの直撃を受け、腹部に大穴を開ける。さらに全身に回っていた炎が煽られ、アンデッドの肉体を焼き尽くしていった。
    「なんとか、アンデッドは倒せたね」
     琴音が傷ついた仲間たちを清めの風で癒しながらホッと息をつく。だが、その時、
    「雛子さん!」
     きららの悲痛な叫びが、その場に響き渡った。


     デモノイドが、無造作にその丸太のような腕を振り回す。だが、自動車すら軽々と持ち上げるその豪腕は、それだけで暴風のようなもの。デモノイドを足止めしていた雛子もビハインド“暗”も、まとめて吹き飛ばされてしまう。
    「くううっ……!」
     雛子は必死に立ち上がろうとするが、体に力が入らない。もう既に何度も、デモノイドの攻撃を受け止めているのだ。いくらきららに癒してもらっていても、もはや限界が近い。
    「……だが、こんなんで、わたしは倒れてられっか!」
     それでも自分を鼓舞し、なんとか立ち上がった雛子だったが。
    「ァァァァッ!!」
     いつの間にか目前までデモノイドが迫っていた。思わず目を見開く雛子に、デモノイドが容赦なく拳を振り下ろす。
    「つっ……!!」
     咄嗟にWOKシールドを構えたが、デモノイドの膂力はそんなものはお構いなしに、雛子の体をアスファルトの道路に叩きつけた。
    「雛子さん!」
     薄れゆく意識の中で、こちらに駆けてくる仲間達の姿が見える。
     ――ここで倒れるのは悔しいけれど、後はきっと仲間達が何とかしてくれる。
     仲間達に後事を託し、雛子は意識を失った。
    「ァァァァァァッ」
     デモノイドが、倒れた雛子にとどめを刺そうと、再度拳を振り下ろそうとする。だが、
    「おまえも犠牲者なんだろうけど……これ以上被害は出させない」
     そこへ杏が割って入り、両腕を交差させて、デモノイドの豪腕を受け止める。想像以上のパワーに膝を折りそうになるが、杏はなんとか耐え抜いた。
    「高橋は何度もこんな一撃に耐えてきたんだ。おれだってっ!」
     その隙に、灼滅者達はデモノイドを囲むように布陣していた。
    「もうあなたには、誰も傷つけさせない!」
     琴音が杏の傷を癒しながら声高に宣言する。
    「雛子さんをこんなに痛めつけて……、絶対に許さないんだよ!」
     きららの怒りを表すように、前髪の一部がピンと跳ね上がった。
    「あんたは俺達と同じ人間だ! 目を覚ましてくれ!」
     そんな中、デモノイドを説得するように声をかけたのは明莉だった。目の前にいるデモノイドは、つい数時間前までは普通の人間だったはずなのだ。だったら、人間だった時の記憶や心が少しでも残っているかもしれない。そう考えてのことだったが、
    「ァァァッ!」
     デモノイドは声にならない雄叫びを上げると、周囲を囲む灼滅者達をなぎ払うように、腕を大きく広げ振り回した。
    「くっ、もう人間の心は全く残ってないって事か」
     デモノイドの一撃を受け、よろめきながら明莉は無念そうに唇を噛んだ。
    「残念だけど、僕達に出来るのは、彼を灼滅してあげることだけのようだね」
     デモノイドの攻撃を紙一重でかわしていた文乃が解体ナイフを振るうと、そこから放たれた毒霧が、デモノイドを包み込む。
    「ォォォォッ!」
     毒に全身を蝕まれ、デモノイドが身じろぎする。
    「「もらった! 彗星撃ちっ!」」
     琴音ときららの声が重なり、二人の弓から同時に放たれた矢がデモノイドを射抜いた。
    「引き裂け」
     態勢を立て直した杏がつぶやけば、鋭い刃と化した影がデモノイドの蒼い皮膚を切り裂き。
    「平凡な日々が他人によって捻じ曲げられるなんて許せる事じゃない!」
     デモノイドへの説得を諦めた明莉の放った強烈なアッパーカットが、デモノイドの顎を砕く。
    「俺は今、闇落ちしてでもてめぇを倒したい気分だぜっ!」
     顎を砕かれ動きを止めたデモノイドに、蓮が鮮血の如き緋色のオーラをまとった無敵斬艦刀を振り下ろし。
    「上かと思ったら、足元注意だオラァ!」
     蓮同様、無敵斬艦刀を振り下ろそうとしていた盾衛の影がうごめき、無敵斬艦刀に気を取られていたデモノイドの胸を鋭い槍のように貫いた。
    「ァァァッ!? ォォォッ……ォォ」
     声にならない悲鳴と共に、デモノイドの巨体がドウッと音を立てて倒れた。
     

    「終わっ……ってない、よね」
     琴音が、気を引き締めるように言う。確かに目の前の戦いは終結したが、街のあちこちに傷ついた人の姿が見える。
     自分たちにもほとんど力は残されていないけど、彼らを励まし、一緒に阿佐ヶ谷を脱出するくらいはできるはずだから。
    「ふみふみ、行こ」
     同じ写真部に属する文乃に呼びかけると、
    「そうだね、琴音ちゃん。救える命があるのなら……」
     文乃も頷き、歩き出した。今は、自分たちに出来ることをするしかない。
    「雛子さん、学園に戻ったら、すぐに治療してもらうからね」
     杏が抱き上げた雛子に、きららが必死に声をかける。
     そんな中、明莉は倒れたデモノイドから目が離せなかった。
     ――デモノイドっていっても、ついさっきまで人間だった人達。変化して、人以外のものになるって一体どういう気分なんだろう。
    「影は、何かわかるんかね?」
     自分のビハインドに向かって、独りごちる様に話しかけるが、当然返事はなかった。
    「そういえば」
     重傷を負った雛子を抱えて歩きながら、杏はあることに気付く。
    「ここのアンデッド達は、デモノイド化を促すらしいナイフを持っていなかったな」
     できればナイフの回収もしたかったが、今はそれどころではない。今は全員で無事、学園に帰り着くことが最優先だった。

    作者:J九郎 重傷:高橋・雛子(はっちゃけ高機動型おちび・d03374) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年3月22日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
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