●阿佐ヶ谷地獄
闇に沈む早朝の街。
その静けさを踏み荒らすように、奇妙な音が響いていた。
まだ始発も走っていないはずの地下鉄の駅。当然ながらまだ客もほとんど出入りしていないその階段を、複数の物音が這い上ってくる。
足音である。しかし人間のものではない。動いてはいるが、生きてはいない。
腐肉を纏った何か。
アンデッド、という名を知らずとも、それが尋常ならざる存在であることは容易に理解できただろう。
あちこちで悲鳴が上がっている。
その手に奇妙なナイフを携えたアンデッド達による、住宅街の襲撃。
ほとんどの住民がまだ寝静まっていた時間だ。それゆえに多くの住民は、己の身に何が起こったのかすら理解することなく、侵入してきたアンデッド達によって殺害された。
たとえ目を覚ましていたとしても、目の前で起こっているこの出来事を、すんなりと理解できた人間はほとんどいなかっただろう。アンデッド達による大量虐殺ですら理解の埒外だというのに、襲われた者のうちの一部は、その肉体を人ならざる怪物――デモノイドへと変貌させ、新たな惨劇を生み出す側へと回ったのだ。
●惨劇の朝
「さっそくだが、話を聞いてくれ」
いつになく厳しい表情で、神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)は集まった灼滅者たちに告げる。
「鶴見岳の戦いで現れたデモノイドが、杉並区の阿佐ヶ谷に現れた。急いで向かってほしい。このまま放置すれば、阿佐ヶ谷地区は……壊滅する」
壊滅。
それが誇張や比喩ではないという証拠に、ヤマトはひどく苦い表情でその言葉を口にした。
「ソロモンの悪魔『アモン』によって生み出されたはずのデモノイドだが、今回は少し違う。どういうわけか『アンデッド』どもが街に現れ、儀式用のナイフのようなもので次々に人を襲っているようなんだ。多くの住民はそのナイフで刺されて死ぬが、何人かに一人は、死なずにデモノイドとなってしまう……ってわけだ。
まだ確認できたわけじゃないが、そのナイフは、少し前にソロモンの悪魔の配下達が儀式に使っていたのと同じようなものである可能性もある」
ともかく、とヤマトは息を吐く。
「これ以上の被害を出さないために、アンデッドと、生まれたデモノイドの灼滅を頼みたい」
――時ならぬ大きな物音で、少年は目を覚ました。
ドアを破壊する音と振動。最初は、家に泥棒でも入ってきたのかと思った。
だが違う。階下で寝ていたはずの両親の悲鳴が聞こえる。たくさんの物音が聞こえる。この家だけではない。この街のあちこちで、何かが起こっている。
逃げなきゃ。
でも、どこへ?
何かが階段を上ってくる。両親の声はもう聞こえない。
焦燥にかられ、少年は裸足のまま、窓から屋根の上へ出た。庭の物置小屋を伝えば、難なく外に出られるはず。厳しい親の目を盗んで遊びに行くために、何度もやったことだ。いつものように、こっそり靴を持ち出すことは出来なかったけれど。
立ちこめる腐臭が鼻を突く。その理由を考える余裕もなく、物置小屋の屋根から庭へと飛び降りる。大丈夫、何も追ってはこない。少年がほっと息をついた、次の瞬間。
「!?」
一階の掃き出し窓のガラスを砕き、巨大な青い化け物が庭へ飛び出してきた。
化け物の太い腕が、唸りを上げて振り下ろされる。
足が竦む。逃げられない。
それが父親の変じた姿であることを知ることもないまま、少年はその身を叩き潰され、息絶えた。
「……分かっていることが限られていてすまない。少しでも犠牲を減らすために、できるだけ早い灼滅を頼みたい。慌ただしい話ではあるが、お前達にならできると信じてる。後は頼んだぜ」
そう言って、ヤマトは頭を下げた。
参加者 | |
---|---|
百瀬・莉奈(ローズドロップ・d00286) |
遥・かなた(こっそりのんびりまったりと・d00482) |
結音・由生(夜無き夜・d01606) |
長姫・麗羽(高校生シャドウハンター・d02536) |
ロロット・プリウ(ご当地銘菓を称える唄を・d02640) |
宮森・武(高校生ファイアブラッド・d03050) |
松下・秀憲(午前三時・d05749) |
オリキア・アルムウェン(壊れかけた翡翠の欠片・d12809) |
●夜明け前
かすかに白み始めた空の下で、電線からカラスが数羽飛び立った。
本来ならばきっと、この時間の阿佐ヶ谷の街は、まだ穏やかなまどろみの中にあるのだろう。
だが、今この街の中で人々にもたらされつつあるのは、その対極とも言うべき苦痛と恐怖。たとえ灼滅者ならずとも感じ取れるであろう異様な雰囲気が、街を静かに満たしている。
「まったく、忙しないこった。こちとら期末テストで手一杯だってのに」
「本当に。テストの邪魔はいけませんよっ」
周囲を警戒しながら、松下・秀憲(午前三時・d05749)と結音・由生(夜無き夜・d01606)がそんな会話を交わしている。こんな時に、テストの話なんて――と口を挟もうとしたロロット・プリウ(ご当地銘菓を称える唄を・d02640)は、ライトの光に浮かんだ秀憲の横顔を目にして、思わず言葉を呑み込んだ。
まるで平常運転に見える無表情と、何気ない軽口。けれどその涼しげな態度の奥に、ともすれば容易く破裂してしまいそうな危うさが見えた気がしたのだ。……考えすぎ、なのかもしれないが。
「まぁ、危ない奴は静かにさせるべき。それだけだよ」
彼が呟いたその言葉は、果たして誰に聞かせるためのものなのだろう。
ロロットは先を行く由生に視線を移す。道を急ぐ彼女の動きに合わせて、腰に吊ったライトが跳ねるように揺れている。
「近そうですね」
抑えた声で、遥・かなた(こっそりのんびりまったりと・d00482)が呟く。薄闇の中にライトを向ければ、時おり明らかな襲撃の痕跡が浮かび上がる。今この街には、どれだけのアンデッドとデモノイドが存在しているのだろうか。
「こりゃまた……随分派手に動き始めたな」
宮森・武(高校生ファイアブラッド・d03050)が顔をしかめる。あまりに派手すぎる襲撃だけに、何か裏がありそうだが――と考えたところで、小さく首を振る。
「まー細かい事は良い! とにかく今は目の前の敵をぶっ潰すだけだぜ!」
うん、と百瀬・莉奈(ローズドロップ・d00286)が頷く。
「これ以上、犠牲を増やさないために、早急に奴らを倒すの!」
そのために、灼滅者たちはここにいるのだから。
「本当に許せないっ」
莉奈が口にしたその言葉に、幾人かが同調の声を上げる。と、長姫・麗羽(高校生シャドウハンター・d02536)が手で皆の言葉を制した。ほぼ同時に、ずん、と重く響くような音がする。
「目的地はその角の向こうだ。気をつけて」
前方を指さす麗羽。もし巻き込まれそうな人間がいれば避難させなければと思っていたが、どうやら今のところその必要はなさそうだ。いざとなれば殺界形成を、と考えていたオリキア・アルムウェン(壊れかけた翡翠の欠片・d12809)も、通行人が見当たらないところから、ひとまず様子を見ることにする。もとより、ほとんど人の通らないであろう時間帯ではあるのだが、この場に人がいない理由をあまり深く考えたくはなかった。
道の角からおそるおそる顔を出し、様子を窺う。薄闇に慣れてきた目に、飛び込んでくる異様な光景。
ずん、と再びあの音がする。何かが家の塀を壊している。蒼い巨体。それを家の外に追い立てようとするアンデッド。
(「いつも訪れる筈の日常が、こんな酷い形で破壊されるなんて……許せないよ」)
思わずオリキアは唇を噛みしめる。行き場のない感情が心の奥から湧き上がる。いけない、とゆっくり息を吐く。
(「ボクは、ボクに出来る事をやるしかない」)
これ以上、犠牲者が増えてしまう前に。
「……過去の被害は戻りませんが、未来の被害はまだ防げます」
そんなオリキアの思いを知ってか知らずか、かなたが口を開く。
「暴力は好きではないのですが……」
しかしどう足掻こうと、目の前の現実は変わらない。ここで戦わなければ、あのアンデッドとデモノイドはさらに被害を広げるだろう。
「行こう。――La Vie en rose」
飛び出しざまに、莉奈がスレイヤーカードの封印を解く。武がサイキックソードを握る。
「Get ready」
かなたもまたその装いを変える。躊躇うような空気を振り捨て、ひとりの灼滅者として迷いなく踏み出す。
ロロットの手の中にもエレキギターが現れた。ネックを押さえる手が僅かに震える。
彼女の視線が向けられる先は、デモノイドの巨体。
目にしてしまえば、思い出さずにはいられない。以前の戦いを。暴れ狂っていたデモノイドの、最期の声を。
(「だから、もう……っ」)
光輪を従え、ロロットは一気にアンデッド達との距離を詰める。
「エクスブレインさんも、確定した未来には手出しできないのですね……残念です」
呟く由生は、いつの間にか敵の逃げ道を塞ぐ位置に立っている。標的であるアンデッドを見据え、油断なくガトリングガンを構える。秀憲はサウンドシャッターを使い、周囲への音漏れを防いでいる。
「それでも! これ以上、思い通りにはさせないぜ!」
武が叫ぶ。デモノイドが、異形へと変じたその顔をゆっくりと彼の方へと向けた。
●交戦
「皆、一気に片付けよう!」
声をかけながら、莉奈は油断なく周囲に気を配る。デモノイドが一体と、その傍にアンデッドが三体。これだけか? いや――違う。
「庭のほうにもいるよ、気をつけて!」
「了解!」
戸惑うような様子を見せるアンデッド達に対し、灼滅者達の行動に迷いはない。真っ先に麗羽が動く。恐れず距離を詰め、エネルギーの盾でデモノイドを殴りつける。まずは自分に注意を向けさせること。その上で、一秒でも長くデモノイドの攻撃に耐え続けること。それが麗羽のすべきことだ。
デモノイドの傍にいたアンデッド目がけ、莉奈が槍を突きこむ。かなたと秀憲が息を合わせて同じアンデッドを殴りつける。ロロットがギターをかき鳴らし、武が拳に雷の力を篭めてアンデッドを殴れば、集中攻撃に耐えられずに一体のアンデッドが倒れる。その隙を突くように別のアンデッドがナイフを振りかざす。吹き荒れた毒の風を、秀憲の清めの風が吹き払う。別のアンデッドを牽制しているのは、デモノイドを抑え込むべく浴びせられた由生の弾丸だ。
「その危険なナイフを持ち帰らせるわけにはいきません」
武目がけて振り下ろされようとしていた刃を、かなたが身を挺して受け止める。すかさず闘気を雷へと練り上げて反撃。待ってました、とばかりに、莉奈がそのアンデッドの背にロッドを叩きつける。
「莉奈の魔力を召し上がれ!」
インパクトの瞬間に流し込まれた魔力は、アンデッドの身体を内側から破壊していく。
「うすぎたねぇ死体はぶっ潰す!」
一声叫び、武がアンデッドの胸倉を掴んで投げ飛ばす。敵はそのまま起き上がらない。かなたが負った傷も、秀憲の手ですかさず塞がれていく。
これならすぐに――という灼滅者たちの考えを薙ぎ払うように、鈍い音が響く。
デモノイドの太い腕が、麗羽の細い身体を塀へと叩きつける音だった。
由生の撃ち込んだ魔法弾が、デモノイドの動きをわずかに鈍らせる。蒼い巨体へと果敢に打ちかかるのは、オリキアが連れるビハインドのリデルだ。
並みの人間ならば一撃で命を落とすデモノイドの攻撃も、灼滅者の命を簡単に奪うことはできない。シールドを構え守りを固める麗羽に、オリキアが小光輪を纏わせ彼の傷を癒していく。
オリキアのお陰でずいぶん楽にはなっているものの、癒しきれない傷が少しずつ積み重なっているのが、麗羽自身にはよく分かる。
だがそれでも、まだ立てる。塀に手を添え、立ち上がる。
「オレは君のことを何も知らなさ過ぎる。だから……伝えたいことがあるなら、思い残すことが無い様に喋って欲しい」
声をかけてみる。だが、デモノイドが麗羽の言葉に耳を貸す様子はない。聞こえてはいるのだろうか。それとも、もはや麗羽の言葉を理解することさえできないのだろうか。
「オレは胸を張って、君を助けられるなんて言い切れない」
そもそも「彼」を助ける方法があるのかどうか、それすら麗羽には分かりはしない。
「でも、オレは君の言葉を忘れない。それくらいなら約束できるよ」
せめて一言、声を聞かせてくれるなら。
「長姫!」
鋭い警告の声が飛ぶ。デモノイドの腕が振り上げられる。ぎり、と奥歯を噛む。駄目なのか。届かないのか。
重い一撃を受け止める。ここまで何とか致命傷は避けてきたが、あとどれだけ耐えられるだろう。
由生が再び弾丸の雨を降らせる。彼女の攻撃は、少しずつ、だが確実に、デモノイドの動きを鈍らせている。ちらりと視線を走らせれば、アンデッドがまた一体倒れたところだ。
せめてアンデッドの掃討が終わるまでは、リデルもろとも、何とか立っていたいものだが。
そう考えながら、麗羽は次なる攻撃に備えて防御態勢を取った。
「大人しく只の死体に戻りやがれってんだ!」
剣に炎を纏わせ、武がアンデッドの身体を袈裟懸けに切り裂く。莉奈が緋色に輝くロッドで、ロロットが愛用のギターで、それぞれアンデッドに狙いを定め、攻撃を加えていく。
「死者には真の死を」
そう告げたかなたの手から、魔法の矢が放たれた。アンデッドの掃討だけ見れば、実に危なげのない戦いである。
「世話の焼ける連中だな……っと」
秀憲が肩をすくめ、息を吐く。
確かに戦いは安定しているが、それは麗羽たちがデモノイドを抑えてくれているからに他ならない。そして、今の掃討ペースを考えれば、抑え班がアンデッドの掃討完了まで耐えきれるかどうかは分からない。絶対に無理だとは思わないが、決して余裕があるとは言えない。
「宮森、頼む」
秀憲が視線で抑え班の方を示すと、武は委細承知とばかりに頷く。
「そっちは任せた!」
言い残し、彼は踵を返した。膝を突いた麗羽に「動けるなら下がってろ」と声をかけながら、リデルの隣でデモノイドと向き合う。武自身もいくらか傷を負っているとはいえ、麗羽に比べればまだ余裕がある。
「それじゃ、改めて……行くぜ!」
武が叫び、手にする剣から光刃を放出する。デモノイドの蒼い肉体に、新たな傷が刻まれた。
(「化け物にされたとは言え、子供を手にかけた親か」)
目の前にあるのは、もはや人であったという痕跡すら見てとれない、異形の巨体。
(「……人の心を取り戻させない方が、彼の為でもあるかもしれないな」)
●幕引き
武とリデルがデモノイドの攻撃を引きつけ、受けた傷をオリキアが癒し、その間に由生が敵の動きを縛って行く。時間が経つごとに前衛の消耗は大きくなるが、同時にデモノイドの動きも大きく鈍りつつあった。ある時には身動きが取れず、ある時には明らかに外れた場所を殴りつける。だが、油断すれば容赦なく力強い攻撃が襲ってくる。
オリキアの治療は的確だ。とはいえ、そろそろまずいか――と武が思ったのと、かなたが横合いからデモノイドを殴りつけるのはほぼ同時だった。
「私の仲間はやらせませんよ?」
見れば、もはや動いているアンデッドはいない。仲間達もこちらに向き直り、いつの間にかデモノイドを取り囲むような格好になっていた。
「おい。あんた」
秀憲が巻き起こした烈風の刃が、デモノイドの身体を切り裂いていく。
「これ以上はやめてくれよ。……頼むよ」
デモノイドの動きが止まったのは、おそらくはその言葉が通じたからではなく、由生が積み重ねたパラライズの結果だろう。
「おじさん、意識ありますか? 自分がやってること、わかりますか?」
由生の声にも、やはり反応らしき反応はない。ガトリングガンのトリガーを引き、爆炎の力を篭めた弾丸を撃ち出す。莉奈がマテリアルロッドを振りかざし、巨体を中から揺さぶっていく。
「分かって下さい……痛みから、救いたいんです!」
光輪を撃ち出しながら、ロロットが呼びかける。声が届いている実感はなかったが、そんなことは諦める理由になどならない。
「貴方自身の心を、守って下さい……っ」
デモノイドとしての彼ではなく、人としての彼に、ロロットは繰り返し訴える。
(「……あれ」)
ふと視界が滲んで、オリキアは自分の目に涙が浮かんでいることに気付いた。
目の前のデモノイドは、恐らくもう限界だ。蒼い巨体は炎に包まれ、あちこちに深い傷が見える。こちらの損耗も激しく、特にかなたと武は一歩間違えれば倒れてもおかしくないところだが、それでももう、ここから押し切られることはないだろう。
(「ごめんね。あなたは何も悪くないのに……ごめんね……」)
胸に手を押し当て、オリキアは目を伏せる。
片腕を異形化させ、秀憲がデモノイドに飛びかかる。緑の長い髪が跳ねる。蒼い身体の異形とは、どこか似ているようで、まるで違う存在。
「まだ朝も早い。二度寝したってバチは当たらないよ」
淡々とした口調とは裏腹に、その表情にはほんの僅か、やり場のない憤りが滲んでいるようにも見える。
次の瞬間――デモノイドの姿は、紙細工の人形が燃え落ちるように融け崩れた。
●余燼
「触っても、大丈夫……かな?」
おそるおそるオリキアが手にしたのは、アンデッドが持っていた儀式用と思しきナイフだ。触れてみるが、特に何も起こる様子はない。
「こちらは別物のようですね」
由生が拾い上げたナイフは、確かにオリキアが拾ったものとは少し様子が違う。こちらはごく普通のナイフだろうか。考えてみれば、アンデッド全員が一本ずつ、問題のナイフを持っているとは限らない。ひとまずそれらのナイフも集め、武がサイキックソードの光刃を放って破壊する。
ロロットは振り返るが、デモノイドの残滓に変化は見られなかった。その身体が崩れてしまった時点で、きっと無理なのだろうと頭では考えていたけれど、それでもやりきれない思いに胸が詰まる。
こんな事件さえなければ、この家には今日も、いつもと同じ平和な朝が訪れていたはずなのに。
「……っ」
嗚咽が漏れる。
こらえきれず流れた涙が一粒、アスファルトの上に落ちた。
かなたは改めて、目の前に建つ家を見つめる。昨夜までは、穏やかな日常が紡がれていたはずの家。
勝利したはずなのに、喜ぶ気持ちは湧いてこない。全てを未然に防ぐことは出来なかったと分かっていても、未来の惨劇を食い止めたのだと自分に言い聞かせてみても、心の中に燻る暗雲が晴れない。
複雑な感情を持て余すのは、彼女だけではない。隣に立つオリキアもその一人。
(「救う事が出来たらよかったのに……。それとも、息子を殺してしまったことを考えると……ううん、どんな状況でも命さえあれば……」)
とりとめのない思考を巡らせてみるが、答えは出ない。
オリキアは静かに手を合わせ、黙祷を捧げる。
そうするほかに、どうすることもできなかった。
作者:田島はるか |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年3月22日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 6/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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