阿佐ヶ谷地獄~平穏の終わり~

    作者:佐和

     時計が朝4時を指そうという、紛れもない早朝。
     普段は静かで気だるげな地下鉄南阿佐ヶ谷駅は、だが今朝は地獄絵図と化していた。
     ホームに、改札口に、そして地上へ向かう階段に。
     横たわるのは、数分前まで人間として動いていたモノ。
     終電を逃し、やっと始発が来る時間になったと背伸びをしていたサラリーマン。
     一晩中遊んでもまだまだ遊び足りなく騒いでいた大学生達。
     割りはいいけど早起きは辛いなぁと考えながらアルバイトに向かうフリーター。
     それぞれがそれぞれの事情で駅へと集まってきていて。
     そのほとんどが同じ姿に成り果てていた。
     まばらに、だが決して少なくない数の死体が転がるその凄惨な光景を横切って、何の感傷も見せずに通り行くのは、アンデッド。
     手に手に、何かの儀式に使われそうな華美な装飾をされたナイフを握って、地上を目指し進んで。
     そして出会った人間を例外なく刺し殺す。
     1つ、また1つと人間だったものが道に転がり動かなくなり……
     そのうちの1つ、ぴくぴくと痙攣していたモノが、突如膨れ上がったかと思うと立ち上がった。
    「グルウアァァァ!!」
     それは悲鳴か慟哭か。歓喜か焦燥か。
     人間としての生を追え、デモノイドとして生を受けた青い巨人は、アンデッド達を追い抜くように走り出し、より多くの人間をなぎ倒し始めた。
     
     はあっ。
     大きく息を吐いた八鳩・秋羽(小学生エクスブレイン・dn0089)は、未開封のお菓子の袋を破裂させんばかりに握り締めて、こわばった顔を上げた。
    「阿佐ヶ谷、に……デモノイドが生まれてる。どんどん、どんどん……」
     地下から現れたアンデッド達が無差別に始めた殺戮。
     その中で、殺された人の一部がデモノイドとなり、さらなる惨劇を起こしている、という。
     デモノイドを生み出していたのは、ソロモンの悪魔『アモン』。鶴見岳での戦いを経て、その事実は確認されている。
     だが今回デモノイドを生み出しているのは、アンデッド……ノーライフキングの眷属だ。
     食い違う情報に、灼滅者達は顔を見合わせる。
    「……アンデッドは、ナイフを、持ってる。
     ソロモンの悪魔、の配下……持ってたのと似てる、って言ってた」
     それは最近エクスブレインとして学園に来た秋羽には分からなかったこと。
     他のエクスブレインが呟いた、秋羽には見えなかった情報。
     秋羽に見えたのは。
    「アンデッド達、住宅街に、向かってる……」
     ……さらなる、悲劇。
     
     住宅が立ち並ぶ区画で、アンデッド達は3体ずつに分かれて、片っ端から侵入していく。
     1軒を血の海に染めたら、次は隣の1軒へ。
     起きたばかりの人も、まだ眠っていた人も、出かけようとしていた人も。
     母親も父親も、兄も姉も、妹も弟も、老人も赤ん坊でさえ。
     生きている人間を見つけるなり、そのナイフを躊躇いもなく突き出す。
     悲鳴が、逃げろと叫ぶ声が、助けを求める嘆きが、静かだった朝に絶え間なく響き渡る。
     また1軒の家を血の海に変え、アンデッドがぞろぞろと外へと出てくる。
     その後ろに、青い巨人の姿が、あった。
    「グオオォアァァ!」
     叫ぶ巨人は真っ直ぐに向かいにある住宅へと向かい、アンデッド達は隣の住宅へ方向を変える。
     そのいずれにも、平穏な日々を穏やかに過ごしていた家族があり、そして、これからも続くはずだった平穏を打ち砕く惨劇が待ち受けている……
     
    「ごめんなさい……僕、予知は、できなかった……」
     ぼろぼろと涙をこぼしながら、しかし秋羽は灼滅者達から視線を反らさなかった。
    「阿佐ヶ谷、酷いことに……なってる。壊滅、するかも、しれない」
     伝えることだけが自分にできることだと覚悟しているかのように。
    「でも、みんななら、まだできること、ある……と、思う、から……」
     搾り出すように、必死で声を繋げて。
    「……だから、お願い……」
     秋羽は縋るようにお菓子の袋を抱きしめながら、その場に崩れ落ちた。


    参加者
    海野・歩(ちびっこ拳士・d00124)
    蓮華・優希(かなでるもの・d01003)
    媛神・まほろ(イーストマリアージュ・d01074)
    アイティア・ゲファリヒト(見習いシスター・d03354)
    御盾崎・力生(ホワイトイージス・d04166)
    天ヶ瀬・空(焔火の姫・d11206)
    霧夜・篝(茨杯の烙印・d11906)
    桜庭・黎花(はドジッコと呼ばれたくない・d14895)

    ■リプレイ

    ●終わり行く平穏
     辿り着いた住宅街は、ぱっと見ただけでは普段と変わらぬ、平穏な朝を迎えようとしていた。
     だが、外灯の灯る薄闇の中、よく見ると建物のところどころに不自然な欠損がある。
     そして辺りの空気に混じる、明らかに平穏とは異なる匂い……
    「……っ」
     その血臭を感じ取って、霧夜・篝(茨杯の烙印・d11906)が悲鳴に似た呼気を飲み込んだ。
    「何か不気味ですぅ」
     天ヶ瀬・空(焔火の姫・d11206)も不安そうに辺りを見回す。
     それぞれの家の中は、それぞれの平穏が脆くも崩れ去った、惨劇の跡になっている。
     直接見えなくとも、秋羽が見て伝えてくれた情報と、今この肌に感じる雰囲気から、それは充分に感じ取れて。
    「こんな暴虐を許しておけるものか」
     苦々しく奥歯を噛みしめながら、御盾崎・力生(ホワイトイージス・d04166)は秋羽に示された場所へと、さらに足を速めた。
     力生に続きながら、蓮華・優希(かなでるもの・d01003)は、傍らを走る媛神・まほろ(イーストマリアージュ・d01074)の様子を伺って、
    「……怖い?」
    「いえ……大丈夫です、優希様」
     気丈に答えるまほろの頭を、優希は優しく撫でた。
     灼滅者達は、真っ直ぐに走る。
     自分達に任された戦場へ。自分達が戦うべき相手へ。
     その戦いによって自分達に助けられる人々が居る場所へと。
    「いました! あそこです!」
     最後の角を曲がった桜庭・黎花(はドジッコと呼ばれたくない・d14895)が、開けた視界の向こうに敵の姿を見つけて声を上げた。
    「各自、作戦の通りに」
     力生の声に、灼滅者達は4つの班に分かれる。
    「ぽち、重要な役割だけど、全力で頑張ろうねっ!」
    「わんっ!」
     霊犬・ぽちの背中をぽんと叩き、自身もバトルオーラを犬形に展開させた海野・歩(ちびっこ拳士・d00124)は、青の巨人・デモノイドへ。
    「……行こう、兄さん」
     ビハインド・露樹と共にアンデッド3体へと向かうのは篝。
     そして。
    「まほろさん、黎花さん」
     アイティア・ゲファリヒト(見習いシスター・d03354)は、呼びかけに頷く仲間と共に、見える敵の奥にある住宅へと走る。
     残る3人、力生、優希、空はその向かいの住宅に。
     そのいずれにもアンデッドが3体ずついる。
    「危険な相手です。……皆様、どうかお気を付けて」
     それぞれの戦場へと分かれる直前、まほろの声が皆の耳に届いた。
     
    ●まだ終わらない
     壊された玄関の扉をくぐる前から、悲劇を連れた侵入者の背中は見えていた。
    「Kyrie eleison」
     祈りのようなまほろの解除コードと共に、アイティアとまほろは手にした槍を突き出し、揃って同じアンデッドを穿つ。
     乱入者に気付いたアンデッドは振り返り、すぐさまナイフを振るった。
     アイティアの腕が、長い袖ごと深く切り裂かれる。
     しかしすぐに小さな光輪がアイティアの周囲に展開し、盾となりつつ傷を癒した。
    「怪我は任せて! きっちり治してみせるから!」
     後方から聞こえた頼もしい黎花の声に笑って、アイティアは持ち替えたマテリアルロッドで打撃と魔力とを打ち込む。
     まほろも負傷を恐れず、着物の袖を翻してその腕を振るい、1体のアンデッドを倒した。
     残る2体のアンデッドの向こう、玄関を上がった廊下には、1人の老婆が倒れている。
     動かない老婆の傍らで呆然と座り込んでいるのは、パジャマ姿の少女。
    「この世の地獄、とはよく言ったものですが……」
     その光景に表情を曇らせながら、まほろは拳へオーラと共にやりきれない心を集め、
    「神は罪無き人々を地獄へ落としはしません!」
    「その通りだよ!」
     合わせるように、アイティアの拳も同じアンデッドへと叩き込まれた。
     これ以上、この家の平穏は壊させない!
     そして、その向かいの家。
     朝食の準備をしようとしていた母親へ、侵入したアンデッドが今まさに襲い掛からんというところで、リビングのガラス戸を破って更なる侵入者が現れた。
     新たな侵入者は、アンデッドへガトリングガンを連射しながら母親へと振り返る。
    「土足で失礼しています。ここは危険なので2階へ」
    「こっちだよぅ」
     侵入者……力生の言葉にかくかく頷いた母親は、空が手招きする廊下へと向かった。
     そこで見たのは、見事に切り裂かれた玄関の扉と、別のアンデッドと対峙する優希。
    「空はメディックだから、無理しすぎないでね」
    「わかってるもん」
     答えながら、だが、空の影は通りすがりのついでとばかりにアンデッド1体を包みこんで。
     やれやれ、と肩をすくめて、優希は再び光の剣を振るう。
     その背後で、母親は2階へと上っていった。
     これで1階に住人は誰もいない。階段を守りきれば、ここでの被害者はゼロだ。
     守る場所を1点にした3人は、アンデッドと改めて対峙する。
    「標的を合わせて、着実に」
     短く言って、異型巨大化した右腕を振りかぶり敵との間合いを詰める優希に、
    「無論だ」
     短く応え、力生はその攻撃をフォローするように裁きの光条を打ち込んだ。
     4ヶ所に分かれた敵の同時襲撃。
     それに対して、灼滅者達も4班に分かれての対応を選択していた。
     既に住宅に入り込んだアンデッド2組へは、クラッシャー中心の3人ずつ、2班が向かい、早期灼滅を狙う。残る2人とそのサーヴァントは、路上に見える敵を可能な限り足止めし、仲間が合流するまでの被害軽減と、敵の動きを監視する役目だ。
    「行けーっ! ぽちっ!」
    「わんっ!」
     だからこそ、デモノイドへと向かった歩は、攻撃を前衛のぽちへ任せてメディックとして回復役に務めていた。
     デモノイドの攻撃は近接のみ。つまり、その怪力を受け止めるのもぽちだけだ。
    (「僕がもっと強ければこんな必要はなかったんだ……
     ぽち、一緒に戦えなくて、本当にごめんっ!」)
     大切な相棒を囮にするような作戦に心を痛めながらも、だからこそしっかり守ろうと、その光輪を盾として癒しとして隙なく展開させる。
     そして、別の家に向かったアンデッド3体と対峙する篝も同様に、露樹を前衛にしての回復役となっていた。
    (「できれば、海野くんと合流したかったけど……」)
     デモノイドもアンデッドも、攻撃程度ではそれぞれの進路を変えることはなく。
     仕方なく歩と篝は、その進行を妨げるように、それぞれの家を背に別々に戦っていた。
     露樹が妹を護るようにその攻撃を一身に受け止め、わずかな隙に反撃を試みる。
     傷つき続ける兄の姿に、篝は、胸に下げた傷だらけの銀のペンダントを握り締めた。
     強く。強く。
     そのうちに露樹に限界が来る。
     実質の3対1、篝が回復をし続けているとはいえ、全ての傷を癒せるわけではない。
     溜まったダメージにこれまでと悟ってか、露樹は心配そうに篝を振り返って……
     そのまま、次のアンデッドの攻撃を受けて、消滅した。
    「兄さんっ!」
     悲鳴のような篝の声。
     しかし、アンデッド3体は、篝に悲しみに浸る時間すら与えずに襲い掛かる。
     逃げ切れず、身体のあちこちを走る痛み。
     兄が護ってくれたものも、与えられた役目すらも、守れないまま終わるの?
     涙で視界が歪む。
     そこに。
    「お待たせっ!」
     声と共に、アイティアが槍を抱えて飛び込んできた。
     唐突に抉られ、深手を負ったアンデッドが数歩よろめいたそこに、
    「……せめてもの神の慈悲を、Amen」
     まほろの槍がとどめとばかりに突き刺さる。
    「篝さん、大丈夫ですか?」
     駆け寄って癒しの歌を歌い始めた黎花に、篝はこくりと頷き、涙をぬぐう。
     そして、住人を庇ったためわずかに遅れた力生達3人も、ほどなくして合流し。
     残るアンデッド全てが倒れるのに、さしたる時間は必要なかった。
     
    ●まだ終われない
     歩は隠れてその光景を見ていた。
     デモノイドが住宅に入っていくところを。
     その巨体ゆえに、家のドアを、壁を、床を、天井を、進むだけで壊していくところを。
     建物が崩れる音に混じって、悲鳴や助けを求める声が聞こえる。
     ぎゅっと拳を握りしめながら、歩はただその光景を、見る。
     見失わないことが、今の歩の役目だから。
    (「……悔しい」)
     もっと僕が強ければ、守れたかもしれないのに。
     悔やむその傍らに、ぽちの姿はない。
    (「もっともっと、強くなるよ」)
     誓う歩の前で、住宅は完全に崩れ潰れ、その瓦礫の下からデモノイドの姿が現れた。
     そして、歩の肩がぽんと優しく叩かれる。
    「よく頑張ったね。さあ、フィナーレを始めよう」
     振り向いた先、優希の向こうに仲間達を見て、歩はしっかりと頷いた。
    「アイティア様!」
    「おっけい! 狙って、黎花さん!」
     攻撃は自分達の役目と、まほろとアイティアが飛び出すと、巨大化した腕を袖ごと振るってデモノイドへ殴りかかる。
     その隙を狙うのは、同じ班で行動に慣れた黎花。
     バスターライフルの照準に、青い身体をしっかりと捕らえた。
     デモノイドも犠牲者であることは分かっている。
     でも、だからこそ、これ以上の悲劇は繰り返させるわけには行かない。
     だから。
    「貴方はここで止めるわ」
     黎花の光線は、その思いと共に真っ直ぐにデモノイドへ向かった。
    「聖なる光の裁きです!」
     続けて、きりりとした空の声と共に、悪しきものを滅ぼす光条がデモノイドを貫く。
     やり返すように振るわれた青く太い腕を、仲間を庇い受けたのはディフェンダーについた力生。
     見た目以上の怪力に、飛ばされながらも踏みとどまり、
    「頑丈さには自信があるのでな」
     その顔には、不敵な笑みと共に仲間に対する信頼があった。
     力生の思いに応えるようにすかさず、歩の光輪と篝の指輪が輝き、デモノイドの注意を自らへ引きつけんと優希の光剣がその軌跡を刻む。
     デモノイドへ向けて、灼滅者達はひるまず攻撃を続けていた。
     だが、その布陣が崩れる時は、彼らが思っていたよりも早く訪れる。
     近接攻撃だけとはいえ、デモノイドの攻撃力はダークネスと戦えるほどのもの。
     それを再び受けた力生は、今度は地面に膝をついた。
     倒れそうになるところを、ガトリングガンを地面に突き立てて支え、何とか踏み止まる。
    「まだいける」
     そう声に出しながらも、その身体は満身創痍。
     力生だけではない。同じディフェンダーの優希も、クラッシャーのアイティアとまほろも、前衛陣は皆似たような状態だ。
     アンデッド戦から続いての前衛は、かなりの殺傷ダメージを4人に与えていた。
     ふらついたまほろに、デモノイドの腕が勢いよく襲い掛かり、
    「優希様!?」
     だがその衝撃は、直前に割り込んだ優希を代わりに殴り飛ばす。
    「……っ、ごめん。お願い……」
     倒れる優希の最後の声に、まほろは槍を構え直して、青い巨体へと穿ち放った。
     アイティアもその穂先を揃えて連撃を狙う。
     デモノイドに深々と刺さる2本の槍。
     しかし。
    「きゃあっ!?」
     直後に振るわれた腕に生えた刃が、槍ごとまほろとアイティアを切り裂いた。
     倒れた3人を庇うように力生が前に出るも、長くは耐えられず、続くように地に伏す。
     そして残ったのは……メディックの4人。
     歩が拳の連打を叩き込み、空が弓を放ち、黎花の光輪と篝の弾丸がデモノイドを捕らえるが、クラッシャーのように決定的な威力は持てない。
     一方で、デモノイドの重い一撃は、歩を数メートル飛ばし転がした。
     すぐに起き上がった歩だが、その身は一撃だけで酷い傷に覆われ、攻撃の手は回復へと向かわざるを得なくなる。
     このままでは防ぎきれない。
     全員の脳裏に、最悪の展開が浮かんで……
     進み来るデモノイドの前に、静かに立ちふさがったのは、空だった。
     仲間へと背を向けたまま、空は真っ直ぐにデモノイドを見上げて、覚悟の言葉を紡ぐ。
    「守るのが姫巫女の務め、だから」
     そして、空の身体は業火に包まれた。
    「焔の姫の力、見せます」
     
    ●それも1つの平穏の終わり
     闇堕ちした空は、デモノイドを圧倒した。
     それまで前衛陣が積み重ねたダメージが、そして空の覚悟を苦くも見守った後衛陣の回復サイキックが、空を後押ししているのだ。単体のデモノイドが敵うわけもない。
     以前とは比べ物にならない威力のレーヴァティンを叩き込まれ、ついにデモノイドは崩れ落ちる。
     その青い身体は、地面に溶けるかのように崩れ落ちていった。
     そして、それを見下ろしていた空は。
     何も言わずに踵を返すと、獣のような速さでその場から立ち去った。
     倒れ、傷ついた仲間達には、それを見送ることしかできない。
     ……やがて。
     誰からともなく倒れた仲間へと向かい、その手当てをすべく動き出す。
     目覚めた力生は、俺は大丈夫だ、と歩を優希へと向かわせて。
     傷の深い優希、そしてまほろは、未だ気を失ったまま。
     そして、やっと目を開けたアイティアが見たのは、黎花の泣き顔だった。
    「ごめんなさい……ごめんなさい……」
     流される涙は仲間へか、それとも、助けられなかった人々に向けてか。
     アイティアは、泣きじゃくる黎花の向こうにある未だ暗い空を見上げた。
    「強く、なりたいよね。仲間も、目の前の人みんな、助けられるくらいに……」
     語りかけるような、呟きのようなその声に、まほろを癒していた篝は、胸元のペンダントを握り締めて目を閉じた。
     つう、とその頬を涙が一筋、落ちる。
     今更ながらに思い知らされた、現実に。
    (「……わたし達が戦っている相手は、そういうモノなんだ」)
     薄闇の中、夜明けの陽光はまだ、遠い……
     

    作者:佐和 重傷:蓮華・優希(かなでるもの・d01003) 媛神・まほろ(夢見鳥の唄・d01074) 
    死亡:なし
    闇堕ち:天ヶ瀬・空(焔火の姫・d11206) 
    種類:
    公開:2013年3月22日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
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