阿佐ヶ谷地獄~日常の終わり

    作者:光次朗

     早朝、地下鉄南阿佐ヶ谷駅。
     まだ始発の動いていないその時間に、構内を動く影があった。
     一つや二つではない。
     うごめく大量の人──否、人であったもの。
     アンデッド。死した肉体だ。
     ゆらりゆらりと、しかし確実に、それらは階段を上っていく。
     地下から町へと、這い出していく。
     異臭を放ち、爛れた肉片で地面に跡を残しながら、まだ眠る町へと──静かに、音もなく。
     それらの手には一様に、装飾の施されたナイフが握られていた。
     
    「阿佐ヶ谷に、デモノイドとアンデッドが出現した」
     山之上・スエ子(小学生エクスブレイン・dn0091)は唇を噛んで、重々しく告げた。
    「アンデッドたちは儀式用の短剣のようなものを持ち、住民を襲っている。どうやら襲われた住人の中から、デモノイドとなっているものがいるようだ。デモノイドは、ソロモンの悪魔アモンにより生み出されたはずだが……今回はどういうわけか、アンデッドによる襲撃で生み出されている」
     アンデッドは次々に住人たちを襲っているのだという。当然、時間が経つにつれ、デモノイドの数も増えていくことになる。
    「アンデッドが装備している短剣については、少し前にソロモンの悪魔の配下達が行っていた儀式に使われていた短剣と、同様のものである可能性もある……が、これについては未確認だ」
     そしてもちろん、いま問題にすべきはそこではない。
     スエ子は大きな瞳に真剣な光を宿し、灼滅者たちを見た。まるで懇願するように、震える拳を握りしめて。
    「このままでは、阿佐ヶ谷地区が壊滅してしまう。これ以上の被害を生み出さないため、アンデッドと、生み出されてしまったデモノイドの灼滅を。急ぎ、阿佐ヶ谷に向かってくれ」
     
    「やべ、もうすぐ四時じゃん」
     少年は時計を見て、声をあげた。特に何をしていたわけでもない、だたなんとなく夜更かしをしてしまった。
     四時といえば、深夜ではなくもはや早朝だ。しかし部活や塾で忙しい彼にとっては、貴重な時間だった。ゲームをしたりネットを見たりしているうちに、外が明るくなってしまうことも珍しくない。
     さすがに寝なくてはと、灯りを消す。
     ベッドに潜り込む直前、聞こえてきた音に、動きを止めた。
     複数の物音。
     両親も、妹も、この時間に起きているということはまずない。しかし確かに、音が聞こえた。
    「誰か起きてんのかな」
     それにしては、妙だ──胸騒ぎは、響き渡る悲鳴で確信に変わる。
     妹の悲鳴だった。ただ事ではない。少年は考えるより早く部屋を飛び出す。
     そして、立ち尽くした。
     見たことのない、腐敗し爛れた人の形をしたものが、立っていた。
    「お、お兄ちゃ──」  
     妹は、まさにナイフを振り下ろされるところだった。容赦なく胸元を貫かれ、崩れ落ちる。
     たったそれだけで、終わる。妹がもう二度と動かないことは、一目でわかった。
    「…………っ」
     口を開けるが声が出ない。何を叫べばいいのかもわからない。意味のない音さえも、空気を揺らしてはくれない。
     無我夢中で駆けだして、家を出た。しかし、まだ日の昇らない町を埋め尽くしているのは、澄んだ空気ではなく、濁った異臭だった。
     数え切れないほどのアンデッドが、徘徊していた。
     そのうちの一つが、こちらを向く。
     まるであたりまえのことのように、ゆっくりと、ナイフを持って向かってくる。
    「────あ……っ」
     終わった。
     そう思った。
     刺された瞬間、身体のあちこちが膨れあがるかのような感覚に襲われる。
     少年の意識は、そこで途切れた。
     
    「私は、甘いのかもしれない。だが──」
     スエ子は瞳を伏せる。
    「デモノイドとなったばかりの人間ならば、もしかしたら、救うことができるのではないだろうか……」
     それは半ば独り言のようだった。次の瞬間には灼滅者たちを見据え、はっきりとした声で激励を口にした。
    「阿佐ヶ谷がどうなるかは、おまえたちの活躍にかかっている。健闘と、無事を、心から祈る」
     


    参加者
    風音・瑠璃羽(散華・d01204)
    那賀・津比呂(ホーリーシット・d02278)
    六連・光(リヴォルヴァー・d04322)
    森山・明(少女修行中・d04521)
    神楽火・天花(和洋折衷型魔法少女・d05859)
    明石・鏡華(淡き光の狙撃手・d06007)
    リーファ・シルヴァーニ(翡翠姫士・d07947)
    東野・竜武(高校生神薙使い・d11679)

    ■リプレイ

     日常。
     朝起きて、まだ眠いと瞼をこすり。
     両親と、妹と一緒に、慌ただしく朝食をとり。
     学校や部活や塾や、友人との他愛のないケンカや、気になる女の子とのちょっとしたやりとりや、ほんの少しのゲームやアニメの時間、それらが漫然と続く、繰り返しの日々。
     あたりまえのことを、煩わしいと思うことすらあった。
     失って初めて知る。しかし現実には、知ることすら叶わず。
    「ア、アアアア……オオオオアアアア──!」
     感情の追いつかない、混乱にまみれた咆哮が響き渡る。
     灼滅者たちが到着したとき、少年はまさにデモノイドへと変化を遂げたところだった。
    「この光景……成程、地獄ですね」
     六連・光(リヴォルヴァー・d04322)は声を抑え、つぶやく。
     エクスブレインから聞いてはいたが、実際に目の前にすると、想像を遥かに超えていた。
     地獄としかいいようがない。
     暗闇の町を徘徊するアンデッドと、吼えるデモノイド。
    「こんな事を許すわけにはいかない! せめて手の届く範囲だけでも、止めてみせる!」
     語気を荒くして、明石・鏡華(淡き光の狙撃手・d06007)がいう。彼女の脳裏には、両親を失ったときのことがよぎっていた。怒りがこみ上げるが、冷静であることに努め、武器を構える。
     彼女だけではなかった。日常の終わりを経験している灼滅者は、少なくない。
    (「でも……目の前で妹が家族が殺されるのを、見るなんて」)
     森山・明(少女修行中・d04521)は唇を噛んだ。
     助けることが、本当に彼のためになるのだろうか。辛い現実を抱えて生きることが、彼にとって本当に最良なのだろうか。
     しかしそれでも、助けたい。救わずにはいられない。
    「短剣が気になる……可能なら回収、または破壊かしら」
     刺されると多くが死亡、中にはデモノイドになるものもいるという短剣。リーファ・シルヴァーニ(翡翠姫士・d07947)は警戒しつつ周囲を見た。
    「もし呪いが原因なら、言葉じゃきっと助けられない……呪いと肉体のつながりを、なんとかしないと」
    「短剣のせいでデモノイドったんだろ? じゃあさ、短剣ぶっ壊せば良いんでね?」
     神楽火・天花(和洋折衷型魔法少女・d05859)と那賀・津比呂(ホーリーシット・d02278)もまた、短剣の存在を気にかけていた。まだこちらに気づいていない様子のデモノイドを注意深く観察するが、少なくとも、その身体に刺さったままではないようだ。
    「どうやら、そういう問題ではなさそうだな。アンデッドが持っているものを、回収できるものなら回収したいところだが」
     東野・竜武(高校生神薙使い・d11679)が冷静にいう。 
     デモノイドのもっとも近くにいるアンデッドの手に、短剣が握られていた。実用というよりも儀式用、装飾の施されたナイフは、この状況では余計に禍々しく、まさに呪術具に見える。
     一人をデモノイドにしたことで、短剣が効力を失うということではないのだろう。無論、突き刺したままでもない。アンデッドはさらなる標的を探そうと、移動を開始する。
    「まずはアンデッドから殲滅、だね。作戦通り、行くよ!」
     日本刀に緋色のオーラを宿し、風音・瑠璃羽(散華・d01204)は地を蹴った。紅蓮斬で真っ先にアンデッドに切り込んでいく。
     まずはアンデッドを一掃、それからデモノイドの説得を試みるというのが彼らの作戦だ。とはいえ、その間デモノイドを放っておくわけにもいかない。
    「制約の弾丸!」
    「影縛り!」
     竜武と明が、デモノイドに向かって最初の一撃を放った。倒すのではなく、あくまでも動きを止めておくことが目的だ。
    「オオアアアア!」
     魔法弾と影の触手が、デモノイドに襲いかかる。なすすべなく直撃を受け、デモノイドの悲鳴が空気を揺らした。
     その巨体が、震えているようだった。怒りか、あるいは。
    「オオオオオ!」
     デモノイドが一際高く吼え、暴れ出す。
    「リビングデッドは任せます……作戦通り、彼は私が」
     膨れあがった巨大な手を振り下ろした先には、光が躍り出ていた。
    「ぐ……っ」
     槍で防ぐも、その質量に身体ごと圧される。その横から津比呂がシールドバッシュで叩き付けた。
    「先にアンデッドをぶっ倒す! たーめーにーはっ、少々お待ちを!」
     オレだけを見ろをいわんばかりに、デモノイドと対峙する。
    「ヴァンパイアミスト!」
     先手を打つ彼らのなかで、防衛へと力を注ぐのはリーファだ。仲間の様子を察知するべく戦況を見据え、もちろんデモノイドの観察も忘れない。
    (「前に組したデモノイドは、戦いの半ばで意識のようなものを取り戻していた。今回はなりたてで時間が経っていない、そして内への呼びかけならきっと……!」)
     彼女には策があった。しかしまだそのときではない。焦りは危機を招きかねない。
     もちろん、彼らが作戦のもとで動く中でも、アンデッドたちが攻撃の手を止めるようなことはなかった。知ったことではない、というよりも考えるという行為自体が無縁なのだろう。ずるりずるりと緩慢な動きに見えるものの、振り上げた手が牙を剥く、その瞬間が俊敏だった。一撃が重くのしかかる。
    「今の私はまだ無力かもしれない……でも、できることがある!」
     なあコウヤ、そうだろう──?
     霊撃を放つビハインドのコウヤに心中で語りかけつつ、鏡華がヒーリングライトで天花をサポート。それを受け、天花は回復の手を休めない。
    「イバラとイチイは盾となり、斧は災いを切り払う……行けっ!」
     冷静に仲間のダメージを見据え、防護符を飛ばす。
     二人がかりの回復は、決して過剰ではなかった。
    「オ、オ、オ、ア、ア、ア──!」
     デモノイドは溢れる力をもてあますかのように、暴れていた。少年であったはずのそれは、灼滅者たちと戦おうとしているわけではないようだった。
     ただ、力を、負のすべてを、爆発させていく。
    「悔しかったんでしょ、悲しかったんでしょ! あなたが他の人に、その思いを繰り返させるのか!」
     あくまでアンデッドを相手取りつつも、明はデモノイドを常に意識していた。声をかけつつ、サイキックを放ち続ける。
    「しっかりしろー! 諦めるなー! ──ひッ、ちょ、も少し加減してくんないかな……!」
     緊迫する状況でも、津比呂はあえて自分のスタンスを崩さなかった。自らがかき乱されてしまっては、不利に繋がる。ソニックビートとシールドバッシュを交互に当てていく。
     デモノイドは避けるということはしなかった。しかし、呼びかける声はもとより、攻撃そのものが響いているかどうかも怪しい。時折よろめくものの、混乱状態にあるのだろう、暴れ続けるのみで、こちらからの一切が届かないかのようだった。
    「ねえ、落ち着いて! 目を覚まして!」
     自らの居るべき位置に気を配り、アンデッドへの攻撃の手を休めることなく、瑠璃羽はデモノイドへ声をかけ続ける。
    「この状況じゃ、こっちの声が届いてるかどうか」
     アンデッドに向けて放った竜武のブレイジングバーストが炸裂する。呻くような悲鳴を上げ、アンデッドの一体が倒れた。その機を逃さず、たたみかけていく。
    「いまなら!」
    「セイクリッドクロス!」
     天花が動きの鈍くなっていた一体に向けてマジックミサイルを放ち、鏡華がタイミングを見計らって十字架を降臨させた。この好機にと一気にアンデッドを相手取り、やがてアンデッド四体がすべて沈む。
     刹那、アンデッドの手にしていた短剣が、落ちた。すかさず天花がそれを拾い、壊す。
     息を飲み、時を待った。しかし、デモノイドには一切の変化が見られない。
    「そんな……!」
     しかし、ここからが、勝負所だった。息つく間もなくそれぞれがデモノイドに対峙する。デモノイドにダメージの蓄積は感じられないが、アンデッドと戦いながらも壁となりデモノイドの動きを制していたこちら側は、そういうわけにもいかない。
     それでも背筋を伸ばし、陣形を整え、デモノイドを見つめる。
     周囲のアンデッドがいなくなったことで、灼滅者たちの気持ちと周りの空気に、かすかな変化が生まれていた。本能でそれを察知したのか、デモノイドの動きが一瞬、止まる。
    「オ……アア……」
     声が漏れる。しかしそれは、意味を伴わない。
    「根性見せてもらいましょうか……人間、まだ辞めたくはないでしょう?」
     光が語りかけた。槍を構え、相対する。
    「心を、手放しちゃダメ! 貴女は、誰? 思い出して!」
     どうか届いてと願いながら、瑠璃羽が言葉を投げかける。
    「お前は人間だろう! しっかりしろ! お前を、助けたいんだ!」
    「自分をしっかり持て、闇に飲まれるな」
     鏡華の叫びと、竜武の諭すような声。
     八人が、デモノイドと向き合っていた。
     気持ちを伝えようと、懸命に──しかし戦いである以上、武器を構え。いままでデモノイドに攻撃をかけ続けた、紛れもなく戦闘の渦の中にいた、その姿で。
    「アアアアアアア!」
     デモノイドの低い咆哮は、暗い空を引き裂くかのようだった。しかし現実には光が生まれるわけではなく、ただ激しく空気を揺らす。
     彼らは悟った。戦いを、やめることはできない。それは決して、諦めるということではなく。
    「──応えて!」
     重い拳をすんででかわし、リーファが紅蓮斬を見舞う。アンデッドのいなくなったいまこそが、チャンスだった。攻撃と同時に、接触テレパスで必死に語りかける。
    「戻って来て、戻って来て! 負けてしまわないで──!」
    「聞こえる? あなたは、まだ、戻ってこれるはず!」
     同様に、明も接触テレパスを試みる。しかしデモノイドは、ただただ暴れ狂っていた。意志の関与しない攻撃はひどく無秩序で、不意に大きなダメージとなる。
    「うお……! 本当に、聞こえてねえのっ」
     直撃を受け、津比呂がよろめく。即座に第二激が飛び、光が庇うように間に入った。
    「軽い……漢の矜持見せて見ろッ」
     軽いはずがなかった。それでもそう言葉を投げつけて、反撃に出る。
    「回復を!」
    「私たちが、みんなを守るよ!」
     後衛から、鏡華のヒーリングライトと天花の清めの風。強敵といえども、八人対一体となれば、灼滅者たちの腕、戦いの経験が、生まれたばかりのデモノイドを上回っていた。連携をとり、まだ残っているはずの少年の心へ語りかけながらも、丁寧に攻撃を重ねていく。
     やがて、デモノイドの動きが、重くなっていった。暴れ回るその体躯に、明らかに力がこもっていない。先程までとは確実に、違っていた。
    「オオオオ……アアアア……!」
     絞り出すような咆哮をあげ、それでも両手両足を振り回す。
     弱ってきていた。
     体力が削られ、動きが鈍くなっていく。
    「まるで、小さな子どもみたい……っ」
     拳を向けてくる以上、攻撃の手を止めるわけにはいかなかった。明の声に、辛さが滲む。
     力なく暴れる姿は、疲れ切った子どもが、それでも駄々をこねていやいやをしている姿を連想させた。
     それはもしかしたら、最初から──ただ混乱し、アンデッドに向けられた敵意も、自分への足止めもすべてが、ただただ恐ろしくて。
    「なんとか、もとに戻すことができれば……!」
     鏡華の声にも悲痛な色が混ざっていた。諦めたくはない──けれどおそらくはと、彼らは察していた。
     覇気を失っても、暴れ続けるデモノイド。それを阻止するしか、手だてはない。
     戦いが続き、デモノイドの勢いが徐々に弱くなっていった。ゆっくりと、命そのものを絞り出していくように、すべてを攻撃に変え続ける。
     やがて、動きが、止まった。
    「ア、ア、ア……」
     その変化に、八人も手を止めた。
     警戒は解かず、見守る。
    「ア、ア、アア……」
     デモノイドが、人間のそれとは遥かに違ってしまった右手を、伸ばそうとする。
     戦いの末に傷だらけになった皮膚から、体液がしたたり落ちていた。伸ばした手は助けを求めようとしていたのかもしれない。しかしもう遅いということは、誰もが気付いていた。
    「ア……ア………………──」
     ぶつりと、声が途切れた。
     なんで。
     どうして。
     やめて。
     こわい。
     こわい。
     こわい。
     それは幻聴か、あるいは疲れ果てた灼滅者たちの精神と肉体が、いたずらに声を作り上げてしまったのか。
     それとも──
     チッと、津比呂が小さく舌打ちをした。
     デモノイドの肉体は皮膚と体液を残し、静かに崩れ落ちていった。やがて、肉片も何もかも、跡形もなく消える。
    「……終わりましたね」
     光が、つぶやいた。
     救えなかった。
     しかしその一言は、だれも口にしない。
     彼らの任務は、達成されたのだ。救うことができるかもしれない──それは最初から、とても小さな可能性だった。
     しれでも、挑んだのだ。わかっていた。彼らは弱音を吐くようなことはしなかった。
    「もしかしたら、まだ助けられる人がいるかもしれない。……まだ、戦いは終わってないんだ」
     行こう、と天花がいう。八人はうなずき合った。
    「助かった人達も心のケアは……必要だな」
     残された人々のことを案じ、竜武がその先を見据える。
     阿佐ヶ谷の地獄は、ここだけではない。彼らは地獄の中のほんの一端に触れ、デモノイドを殲滅したにすぎない。
    「うん。次に、目を向けなくちゃね」
     顔を上げ、努めていつもの通りに、瑠璃羽がいった。
    「撤収! のついでに、できそうなことはするってことで」
     津比呂も続く。
     リーファは落ちたままになっていた壊れた短剣を見つけ、拾い上げた。
    「一応、回収ね」
     布で包み、しまい込む。
     鏡華は黙って、傍らのコウヤに視線を投げかけた。それから決意を込めてうなずき、歩き出す。
     最後に一人、明が振り返った。
     昨日まで、ごくあたりまえの日常を過ごしていたであろう少年の家を、見上げる。やがて朝が来る。この惨状を最初に目にするには、誰なのだろう。
    「殺されるも地獄、辛い十字架背負い生きるも地獄……ダークネスに関わったものには、過酷な道しかないのか──」
     それは答えのない問い。
     ゆっくりと、首を左右に振った。感傷に浸っているときではない。
     視線を戻すと、仲間を追って走り出した。
     

    作者:光次朗 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年3月22日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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