例えば、歌舞伎町の飲み屋。
「えっへっへ姉ちゃん、野球拳やろうぜ、野球拳」
「お客さんエッチねぇ~」
絡むお客とあしらうホステス。なおも野球拳と絡む所に、
「ちょいと待っておくんなんし!」
芸者姿の少女が現れる。
「ぬしらに正しい野球拳を教えてあげんしょう! まず、正しい野球拳は……」
唖然とする二人の視界に、彼女の左右から二人の芸者が現れて。
「三人一組。服は脱がないのでありんす」
さらに後ろからは三味線と太鼓を持った芸者が――、
またある時はデートに最適な雰囲気のカラオケ屋で。
「なぁなぁ、誰も見てないしいいだろ、野球拳やろうぜ?」
「やーん、タカくんエロい~☆」
「ちょっと待っておくんなんし!」
イチャイチャするカップルの、部屋のドアをバーンと開けて。
またある時は、高校の野球部室で。
「よーし、今から野球拳なー」
「先輩男の裸見たいんですかー!?」
「か、勘違いしないでよね! 俺はみんなの筋肉の発達具合を見たいだけで、全然怪しくないんだから!」
「おい、尻を隠せみんな!」
「ちげーよ! ただ……」
「ちょっと待っておくんなんし!」
楽しくふざけ合う野球部の、部室の窓から飛び込んで。
もはや野球拳発祥の地・松山のご当地怪人となってしまった彼女は、不法侵入を繰り返しながら今日も正しい野球拳を広めるために駆け回る。
「ちなみに正しい野球拳とはー!」
嵯峨・伊智子(高校生エクスブレイン・dn0063)がやたら活き活きした顔で、黒板にギャル文字気味で何やら書かれた方眼紙を貼り付ける。
「まず、『こんばんは』と握手をしてから三味線と太鼓に合わせて歌い踊り!」
元がお座敷芸だけあって、かなり華やかなものだそうである。
「次に、『アウト!』『セーフ!』と言いながら塁審の真似をします!」
要するにあのポーズである。
「で、よよいのよいではグーを出します! これ絶対ね!」
「……そこでじゃんけんするんじゃ、ないの?」
ちょこんと端の席に座っていた緋音・奏(中学生サウンドソルジャー・dn0084)が尋ねれば、にやりと伊智子が笑って。
「ふっふっふーそこがミソなのですよ! たぶん!」
なんでかはよくわかっていない顔だった。
「で、じゃんけんぽん、でじゃんけんするんだよね。ちなみに三人一組で一人ずつ勝負して、三人破ったらスリーアウトで負けね!」
「……なるほど」
それで、野球拳、と奏は頷く。
「でもって! 今回は野球拳を愛する女の子が松山野球拳怪人になってしまったので、でもまだ自我とか残ってるし助けれるかもしれないので、よろしくお願いします!」
彼女の名前は渡部・るい。元々松山の出身で、野球拳を愛する一家に育ったのだが、闇堕ちをきっかけに家を飛び出して野球拳を広める為「人口の多い所すなわち東京!」とすっ飛んできたようである。
「今回は、るいちゃんが通りかかるのはこの辺で」
地図を取り出して、ぐりぐり丸を付ける伊智子。
「でもって裏路地かどっかででも野球拳の話をしていたら、るいちゃんめっちゃ飛び込んでくると思うから!」
ちなみに三人一組の野球拳のもう二人と、三味線と太鼓の担当は、彼女の思想に共鳴しちゃった一般人である。
強化は特にされていない。あくまでファンクラブみたいな感じである。
「もちろんすぐに戦闘しかけてもいいんだけどさ……『正しい野球拳で』るいちゃんと勝負すれば、めっちゃ感銘受けて心も戻ってくると思うんだよね! 勝ったらなおさらじゃん!」
で――ここには、九人。
「3チーム作れるね!」
びし、と親指立てる伊智子。「脱がないんだよねだったら大丈夫」と呟く奏。
「あ、これ野球拳の踊りのDVD用意したから、練習しといてね! あとるいちゃんはご当地ヒーロー技と、野球拳の踊りでパッショネイトダンスっぽい技使ってくるから!」
そして野球拳以外の説明はすさまじくざっくりする伊智子だった。
「るいちゃんが灼滅者として目覚めたら、武蔵坂に誘ってみるのもいいよね♪」
野球拳するメンツには事欠かないし、と伊智子は笑って。
「てなわけで頑張ってねー!」
灼滅者達を送り出した。
参加者 | |
---|---|
字宮・望(穿つ黒の血潮・d02787) |
黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566) |
源・頼仁(伊予守ライジン・d07983) |
八千代・富貴(牡丹坂の雛鳥・d09696) |
阪爪・楊司(爪楊枝の申し子・d11442) |
晶・結花(不香の花・d12983) |
木戸・美影(商店街の常連客・d14664) |
契葉・刹那(高校生サウンドソルジャー・d15537) |
「何や俺と同じように、ご当地愛こじらせて堕ちてしもたみたいやなー」
そう呟く阪爪・楊司(爪楊枝の申し子・d11442)の出身地は、爪楊枝の生産量一位の河内長野。同じご当地仲間として、他人事とは思えずに。
「しっかし、野球拳は負けたら拭の脱衣お色気モンやと思っとったけど、ちゃうんやなー。勉強不足やったで」
「野球拳に正統とか本家とかがあったなんて! 野球拳発祥の地が松山だったなんて!」
楊司の言葉に黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566)が、「初めて知りました。衝撃です」と深く頷く。
「これまでイメージしてた野球拳は間違いだったんですね。何だか感動しちゃいました」
契葉・刹那(高校生サウンドソルジャー・d15537)も瞳を煌めかせる。
「野球拳に正しいも間違いもあるものなのか……と思うのは、世間にはゲーム的な遊びでしか伝わってないからなんだろうな。僕だって正統派があるなんて初めて知ったし」
字宮・望(穿つ黒の血潮・d02787)がふむと顎に手を当てて。その素直な言葉に、源・頼仁(伊予守ライジン・d07983)はそうだろうなと頷いて。
「俺も愛媛のご当地ヒーローとして、地元の芸能が誤解されているのは悲しい。だからるいの気持ちは解る……」
「何か一途な人は素敵ね」
気持ちを正面から受け止めたいという頼仁に、八千代・富貴(牡丹坂の雛鳥・d09696)が穏やかに頷く。
「るいさんにはこのまま正しい野球拳を広めてもらいたいと思います。でも、事土怪人でなくてもそれはできるはず」
そう笑みを浮かべた摩那に、「まぁ被害がひどくなる前にとりあえずなんとかしないとな」と望が嘆息。
「せっかくのご当地愛も、人に押し付けるのは良くないわ。誰かを傷付ける前に止めてあげましょうね」
ゆらり、と富貴が長い髪を揺らし微笑んで。
「結花みたく助かるのよね。戦うのやだけどじゃんけんなら任せろー」
晶・結花(不香の花・d12983)がぐぐぐっと拳を握る。木戸・美影(商店街の常連客・d14664)が大きく頷いて微笑む。絶対にがんばろうね、とその瞳には決意を宿して。
「絶対にるいを救いたいぞ!」
九つの拳が、強い決意で突き上げられる。
「「……ところで」」
ふと、富貴と結花が首を傾げる。
「『正しくない』野球拳ってどんなのかしら?」
「オイロケ? 野球拳ってどんなのだろ」
そんな純粋な問いに、仲間達は答えていいものか迷うのだった。
――というわけで。
野球拳の発祥や蔓延る誤解についての座学から、正しい野球拳の遊び方の実習。
「最初はグーなのは普通のじゃんけんと同じだよね」
結花が一生懸命動作をなぞり、「らんなになったらえっさっさー……難しいの」と首を傾げながら必死に振りを覚える。
「でも、るいおねえちゃんが助かるならがんばって覚えるよ!」
そう決意を固める結花も頑張って振りをマスターし、頼仁はサウンドソルジャーの刹那や緋音・奏(中学生サウンドソルジャー・dn0084)には、太鼓や三味線での演奏についてまで指導を繰り広げ。
歌を口ずさむときには、刹那は男性が苦手である事も忘れるほど熱中して。
「野球拳はじゃんけんで一枚ずつ服を脱がす、エッチなゲームとばかり思ってました。でも違うんですね。勉強になりました」
「面白いね、本当に……歌、ダンス、魅せのアピールが一体になった感じで」
やり遂げた顔で汗を拭う頼仁に、摩那と奏が感嘆を言葉にする。
準備は、ばっちり。
――そして、路地裏。
「ふっふっふ、野球拳で脱ぎ脱ぎさせちゃうわよー。負けても大丈夫なように今日は着込んで来たわ!」
「……勝負的には負けたら服を脱ぐ方も緊張感はあるな。参加者に限り。ボクは勿論脱がないけど」
そう語る灼滅者達の前に、ふっと立ちはだかる五つの影。
「それは本物の野球拳ではありんせん!」
――けれど、それは計算通り!
「では本物の野球拳、良かったら私達と一緒に遊びましょう?」
せっかくですから賑やかにいきましょう? と一気にゴージャスモードに変形させた戦装束を纏う富貴を前に、るいの連れである女性達から歓声が零れる。さらに刹那が花魁衣装風に戦装束を変形させれば、ゴージャスなその姿に一斉に拍手。
「ホンマモンの野球拳、いっちょ楽しんだる!」
「ふふふ、本当の野球拳を楽しんでもらえるなら、これほど嬉しいことはありんせん」
楊司の気勢に頷くるいの前に、最初に進み出たのは、望、摩那、富貴。
「それじゃ、勝負と行こうか。負けはしない……」
「ふっ、るい姐さんにまで回る前に、3アウトにしてあげんしょう !」
闘志をむき出しに、けれど楽しげに向き合った二人は、握手を終えて三味線と太鼓に合わせて踊りだす。野球の動作を取り入れた踊りを、歌と共に。
「「アウト! セーフ! よよいの……よい! じゃんけんぽん!」」
出した手は――女性がパー、そして望がチョキ!
「えっと、ヘボのけヘボのけおかわりこい!」
残念そうに女性が引き下がる。そして次に進み出たのは少女芸者、また握手して踊って――アウト、セーフでよよいのよい。じゃんけんぽん!
ふ、と嬉しそうに少女が笑った。彼女の手はグー、そして望の手はやはりチョキ。
読まれたかな、と考えながら、望は次の摩那へとバトンタッチ。
(「脱ぎ野球拳の方が広がってるんだから、もうこっちが本家でいいんじゃない?」)
そんな疑問を飲み込んで、「よろしくね」と少女と握手。冬用の重装備でも、摩那は軽やかに野球拳踊りを舞ってみせる。
「アウト!」
「セーフ!」
「「よよいのよい! じゃんけんぽん!」」
ぱ、と出した手は――摩那がグー、そして相手はパー!
雑念が出ちゃったかしら、と摩那は苦笑い。けれどまだ肌寒い陽気、体を動かすのはやはり悪くない。
そして、富貴がしずしずと進み出る。にっこり笑って「楽しみましょう」と言って、ふわり、ふわりと戦装束の袖を揺らして舞い踊る。
手拍子も、踊りの振りも、大きく大きく。
「アウト!」
「あうと」
「セーフ!」
「せーふ」
「よよいのよい、でいいのかしら」
「ええ、よよいのよい! じゃんけんぽん!」
出した手は少女がグー、そして富貴はパー!
「あら、私の勝ちかしら? ふふ、残念ね」
そう笑ってからおかわりこい、と歌う富貴の前に、「それではわっちがお相手しんしょう」と出てきたのは花魁姿のるい。
こくりと頷き微笑んで、握手を交わした二人は踊りだす。ゴージャスモードの戦装束と贅を尽くした花魁姿、二人がすれ違う様は路地裏がお座敷に見えるほど。
「「よよいのよい! じゃんけんぽん!」」
次の瞬間チョキを出した富貴に対し、るいの手はグー。
にっこり笑顔で富貴が頭を下げれば、望と摩那も笑顔で手を振って引き下がる。そして円陣を組んだのは、頼仁、楊司、そして奏。
「勝っても負けても、正統派野球拳を知る者がいる、ってことを伝えることが大切だ!」
「じゃんけんは弱いほうやさかい、すぐ負けて『へぼのけ』言われてしまうかもやけど……踊りも掛け声も元気よういくで!」
「うん……歌って、踊って、正統派野球拳を一緒に、楽しもう……!」
「「「ファイトッ!!」」」
気合を入れた三人が進み出れば、「元気も仲も良くて、素敵でありんすね」とるいが笑う。
そしてまた、女性から進み出て――最初に出るのは、奏。
実はこっちも練習してきたんですよ、と刹那が三味線を取り出し、見事に演奏の二人に合わせてみせる。結花が美影の腕に絡みついたり、刹那の腕を取ったりしながら嬉しそうに眺めて。
野球拳の歌が、ハーモニーを奏でて――ステップを踏むように場所を交換した二人は、アウト、セーフ、と楽しげに言って。
「「よよいの……よい! じゃんけんぽん!」」
出した手は、奏がグー。そして――女性は、パー。
「へぼのけ、へぼのけ、おかわりこい」
奏がちょっと悔しそうに、でも楽しそうに頷いて。「あと、頼むね」と楊司にバトンタッチ。
「よっしゃ、行くで! よろしゅうな!」
「よろしくね」
女性と楊司が握手を交わし、そしてそのまま踊りだす。
掛け声も、歌も、元気いっぱい響かせて。よよいのよい、で元気いっぱいグー。そしてじゃんけんぽん、で元気いっぱいのチョキ!
相手が出したはパーで見事に勝利。ここ一番で勝てたのが嬉しくて、よっしゃ、と楊司は笑う。
次の少女とも握手して、また疲れ知らずに元気いっぱい踊りだす。
「「よよいのよい! じゃんけんぽん!」」
次に出したのは二人ともパーで、あいこ。
そしてあいこでぽん、で楊司はグー。そして――少女はパー!
順繰りに出す癖がバレてしまったのかもしれないけれど、精一杯踊ったのが楽しくて。
「それじゃ、行こうぜ!」
「よろしくね!」
頼仁がしっかりと握手を交わす。そして馴染んだ地元の野球拳踊りを、軽やかに元気に踊りだす。
刹那の鳴らす三味線に、その隣で奏が叩く太鼓に、取るリズムは自然と楽しげになって。相手の少女も、誘われるように笑顔になって。
「アウト!」
「セーフ!」
「「よよいのよい! じゃんけんぽん!」」
出した手は気合のグー、そして少女の手はチョキ。
へぼのけへぼのけ、と歌う頼仁の目は、けれど優しげに輝いている。その前に進み出たるいが、「あんさん、地元でありんすね」と笑顔になって。
「でも、負けないでありんすよ」
「ああ! 真っ向勝負だ!」
強く握手を交わして、二人は軽やかに舞い踊る。バットを振るも、取って投げるも、楽しげな舞となって。
「アウト!」
「セーフ!」
「「よよいのよい! じゃんけんぽん!」」
二人の出した手はどちらもグー。
あいこでしょ、でパー。次はチョキ。パー。チョキ。グー。パー。
そして――ようやく、決着がつく。
頼仁の出した手はパー、そして相手の手はチョキ。
「……いい、相手でござんした」
固く握手して、そして最後のチームにバトンタッチ。進み出るのは、結花、刹那、そして美影。結花がふわりとエイティーンを使い、18歳の姿となる。
「じゃあ次私ね」
少し大人びた口調で微笑めば、女性も笑顔で握手。そして二人はゆらり、ゆらりと舞い踊る。
こう打って、こう取って。
場所を変え、向き合って。
「アウト!」
「セーフ」
「「よよいのよい! じゃんけんぽん!」」
最初に迷わず出した手はグー。相手のチョキに勝ったとみて、結花はにこりと笑みを浮かべて。
「へぼのけへぼのけおかわりこい。ふふ、私の勝ちだ」
おやと女性は一礼して、そのまま少女と入れ替わる。再び握手、十八姿の結花はどこか妖艶に舞い踊り。
「「よよいのよい。じゃんけんぽん!」」
出した手はチョキ。相手の手は、グー。
「ありゃ。流石に強いね」
くすと笑って、結花は刹那にバトンタッチ。握手から二人歌い踊りだせば、楽しさが体中を駆け巡る。
(「野球拳も歌と同じなんですね。全員で作り上げられる素敵な場……」)
自然と笑顔になりながら、刹那はそっと相手と心を寄り添わせる。
「アウト!」
「セーフ!」
「「よよいのよい! じゃんけんぽん!」」
やはり出した手は読み通り、パー。もちろん刹那が出したのはチョキだ。
けれど――ご当地怪人であるるいの手までは、読む事は出来ない。
一層高らかになるお囃子に合わせて、けれど楽しく刹那は舞い踊る。歌う声を張り上げる。楽しい。すごく、楽しい。
「アウト!」
「セーフ!」
「「よよいのよい! じゃんけんぽん!」」
出した手は二度のあいこのあと――刹那のグー、るいのパーで勝負が決まる。
そして最後に歩き出したのは――美影。
美しく煌びやかになった戦装束を揺らめかせ、握手を交わした二人は舞い踊る。最後の、一番最後の――これで、勝負は決まる。
刹那が三味線に加わり、奏が太鼓を打ち鳴らし――、
「アウト!」
「セーフ!」
「「よよいのよい!」」
もちろん最初はグー。そして。
「「じゃんけんぽん!」」
ばし、と出した手は、パー。
そして――るいの手は、グーを形作っていて。
「「「やったぁぁぁぁぁ!」」」
灼滅者達の歓声が、路地裏に響き渡った。
「お疲れ様、とても楽しかったわ」
「ふふ、強かったでありんすよ。正統派の野球拳をしてくれて……っ!」
富貴の言葉に、そう嬉しげに言ったるいの膝が、かくり、と折れた。
そして立ち上がったのは――瞳に闇を揺らめかせた、少女。
「俺は仁(あい)に頼(よ)ってあんたを救う! さぁ、あんたの利(あい)、この伊予守ライジンが受け止めて進ぜよう!」
スレイヤーカードの封印を解除し、ライジン野球拳を解き放つ。同時に放たれたビームは、野球拳の誤解を今まで解けなかった己の罪と受け止めて。
「爪楊枝への愛、全開や!」
さらに楊司が力を解き放ち、槍の魔力を氷へと変えて解き放つ。
魔法少女のように本来の姿に戻った結花も、冬の象徴ダイヤマークを胸に浮かべてから素早く雪大好きの魔法――フリージングデス。
「せっかくだ、戦いにも混ぜてやる。アウト、セーフ、よよいの……」
にやりと笑って望が放ったのは――「よい!」とグー代わりの螺穿槍。
「じゃんけんで脱がせられないなら、実力で脱がしちゃうわよ☆」
摩那がサイキックを駆使し――とことん服破り!
「渡部さんのご当地愛がとても伝わってくるの。だからこそ、その力で人を傷付けるのは良くないわ」
貴方のご当地愛は受け止める。そう言って富貴は吸血鬼の魔力を展開しながら、仲間達を守るべく刀を抜いて向き合って。
「勘違いされてもどかしい思いはここで全部吐き出していってね」
そのまま真っ向から斬りつける。彼女が、戻って来られるように闇を切り裂く。
「俺も、るいはんが堕ちた気持ちようわかるわ。せやから……」
学園へ、一緒に行きたい。
その想いを込めて、楊司は爪楊枝ダイナミックを決め――闇を、打ち砕かんとする。
ちょっとごめんなさいな気分で結花が斬影刃を解き放ち、美影がくるりくるりとリングスラッシャーからシールドリングを分離させ仲間達の盾と為す。さらに刹那が鬼神の如く闇を穿った腕を戻し、歌声を張り上げて。
望が再びよよいのよい、で、チョキを出してギルティクロス。ちなみにパーならブレイジングバースト!
そして――頼仁のライジンノボールシュートが、闇からるいを呼び戻した。
「戻って来れてよかったね。これからも野球拳の家元目指して頑張ってね」
粒チョコを頬張って美影が言って、「食べる?」と笑って差し出す。「ありがとうございんす」とるいは笑って。
「学園に来んか? るいはんの野球拳愛、絶対生かせるで!」
「実は私も救われたんです。これから一緒に、野球拳を楽しみましょう」
「……一緒に、楽しんでくれるでありんすか?」
そっと灼滅者達を見上げた少女に、全員が一斉に頷いて。
そして――再び路地裏に響くは、野球拳音頭。
新たなる彼女の門出を、祝う為に。
作者:旅望かなた |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年3月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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