決めろ! ダンスアピール!

    作者:かなぶん

     『甘射・こころ』はごく普通の、ダンスを愛する中学生。
     ステージの上でキラキラと輝くアイドルに憧れて、いつか自分もそうなりたくて、下手でも諦めずに一生懸命ダンスの練習を積み重ねてきた。
     そう、昨日までは。
    「こころとダンスで勝負しよ。逃げたら死刑ね☆」
     ライバルの少女を呼びつけたこころは、突然ダンス勝負を強要してきた。
    「え、いきなり? てゆーかこころと私はライバル同士だけど親友じゃない!」
    「問答無用! それじゃあミュージックスタート!」
     逃げれば死刑。ライバルに拒否権は無かった。
     ステージに流れるアイドルソング。
     それに合わせて踊る二人の少女。
     観客はこころのファンである取り巻き達。
    「な!? こころってばいつの間にそんなに上手く!?」
     ライバルの少女は驚愕した。
    「どう? こころ、輝いてるでしょ?」
     スイートコーデに身を包むこころは、別人のようなダンスを披露していたのだ。
     甘く可愛いコーディネートの衣装で踊るこころは、振り付けに合わせて弓を構えると、観客のハートを射止めるようなポーズで自分の魅力をアピールする。
    「みんなのハートを撃ち抜くぞ~♪」
     途端、こころの取り巻き達が歓声を上げた。
     動揺したライバルは思わずステップを躓き無様に転ぶ。
    「転んじゃったからこの勝負はこころの勝ちだね、あはは☆」
     こころは「ふんす」と鼻息荒く胸を張る。
     うなだれるライバルの少女。
     しかし何より彼女を戸惑わせたのは、親友の変貌ぶりだった。
    「こんなのこころらしくないよ。ねぇどうしちゃったの!?」
    「あらあら~もしかして負け惜しみぃ~?」
    「くっ……!」
     こころと呼ばれた淫魔はにこりと笑う。
    「元気出して。落ち込むことないよ。あなたのダンスもそこそこ素敵だったけど、才能がないんだから、こころに勝てないのはしかたないよ」
     グサッ!
     言葉のトゲがライバルの心に突き刺さる音がした。
    「うう、ひどいよ~……」
     堪えきれず少女はめそめそと泣き出してしまう。
    「あははは、勝った勝った♪ 今日はこころの輝かしいアイドル伝説の始まりの日だよ☆」
     
     五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)は依頼の説明を始める。
    「現在、ダンス好きな一般人の女の子が、淫魔に闇堕ちしようとしています」
     淫魔の力に目覚めた少女の名前は『甘射・こころ』。
    「元は素直でダンスが好きな良い子だったんですが、今はライバルをいじめる悪い子になってしまっています」
     だが彼女はまだ人としての意識を残しており、完全なダークネスにはなりきっていない。
     もし彼女が灼滅者の素質を持つのであれば闇堕ちから救い出して欲しい。
     しかしそうでないのなら、
    「完全にダークネスになってしまう前に、灼滅をお願いします」
     姫子は街の地図を広げ、その一点を指差した。
    「淫魔の力に目覚めたこころさんは、ライバルの少女をダンス勝負で負かすために、都内にあるダンスホールへ相手を呼び出します」
     こころがライバルとのダンス勝負で勝利した直後、その場に乱入すれば、敵の予知をかいくぐる事が出来ると姫子は言う。
    「現場に到着したら、皆さんにはこころさんにダンス勝負を挑んで頂きます」
     今回の事件は特別で、『ダンスバトルで、こころに敗北を認めさせなければ』彼女を助け出す事ができない。
     ライバルに勝って有頂天になっている今のこころは挑戦者を拒まない。
     しかしこころにダンスで勝つためには、ただ踊るだけではダメだ。
    「勝利の鍵はコーデとアピールです!」
     こころとのダンス勝負には衣装のコーディネートや、自分の魅力をアピールする決めポーズや振り付けが重要なのだという。
     ダンスには小道具として殲術道具などを使ってもいい。
    「踊りが苦手な方は、応援やはったりでこころさんの自信を揺さぶって下さい」
     自慢の可愛いコーデとアピールがこころの自信の源だ。
     ならば自分より優れたダンスを見せられ、プライドを傷つけられれば、こころも自分の負けを認めざるを得ない。
     勝負に負けたなら、こころは勝者を殺して負けた事実をなかったことにしようとする。
    「そうなったら遠慮なく倒しちゃって下さい」
     彼女に灼滅者の素質があれば、KOすることで闇堕ちから救うことが出来るだろう。
     こころは「サウンドソルジャー」と「天星弓」のサイキックに似た攻撃をする。ダンスの上手い者を優先的に狙って来るので注意してほしい。
     更に戦闘ではこころの取り巻きが二人加わる。とはいえ素手による攻撃しか出来ないので弱い。こころと一緒に襲ってきても、全員で力を合わせれば勝てるはずだ。
    「たとえ技術はなくとも、心を込めて踊ればきっと彼女の胸に響くはず。皆さん、頑張って下さいね」


    参加者
    糸井・翔(目指せトリプルスリー・d00158)
    露木・菖蒲(戦巫覡・d00439)
    天羽・瑠理香(幻想パッサカリア・d00607)
    水無月・戒(疾風怒濤のナンパヒーロー・d01041)
    青柳・諒(ゆるふわ魔法少年・d04524)
    香佑守・伊近(イコン・d12266)
    桐山・明日香(風に揺られる怠け者・d13712)
    綾原・明菜(灼滅の舞言葉・d15052)

    ■リプレイ

    ●こころブレイク
     煌びやかなダンスステージの上で、甘射こころが観客に手を振る。
    「みんなありがとー! これからも応援よろしくねー☆」
     ライバルとのダンス勝負に勝ってこころは有頂天。
     その時、ステージ上に乗り込む者達がいた。
    「だれ!?」
    「俺は水無月戒! 通りすがりの正義のヒーロー!」
     水無月・戒(疾風怒濤のナンパヒーロー・d01041)は真っ赤なバンダナを引き締め登場する。
    「ひとつ勝負だぜ!」
    「あなた達何者? ここはこころのステージだよ!」
    「えへへ、ものすごいダンス勝負だったのですよ。……で、よかったら、わたしともどうなのです? 簡単には負けないのですよー?」
     天羽・瑠理香(幻想パッサカリア・d00607)達がダンス勝負を持ちかける。
     調子に乗っているこころは自信満々で、
    「ふふん、こころは誰の挑戦でも受けるよ♪」
    「なんだなんだ?」
    「こころちゃんに挑戦者らしい」
     新たな挑戦者に観客が沸く。
     彼等の視線がステージに集中している隙に、青柳・諒(ゆるふわ魔法少年・d04524)と香佑守・伊近(イコン・d12266)がその中に紛れこんだ。
    「でもこころちゃんに勝てるわけないよなー」
     怪しまれないよう、伊近は周囲と話を合わせる。
     ステージの上のこころは余裕で、
    「ダンスも曲もそっちの好きなのをやっていいよ。どうせこころが勝つけどね。それじゃあミュージックスタート!」
     流れ出す軽快なラップソング。
    「ダンスで堕ちた心は、ダンスで取り戻すしかありません。僕ら、灼滅者の力で彼女を闇の淵から救い出しましょう!」
     側転からのバク転「ロンダート」から、糸井・翔(目指せトリプルスリー・d00158)のダンスはスタートした。
     ヒップホップ系のストリートスタイルでブレイクダンスを踊る。
     バク転から更にバク宙、翔は軽やかに回転する。 ブレイクダンスにカポエイラを組み合わせたダンスは、華麗な蹴り技を繰り出しているようで、まさに「バトル・オブ・ダンス」の名前通りだ。
     逆立ち状態で停止するフリーズ技「チェアー」を決めてフィニッシュ!
    「ぐ、ぐぬぬ……!」
     いきなりアピールを決められ、たじろぐこころ。
     この流れに綾原・明菜(灼滅の舞言葉・d15052) が続く。
     彼女の衣装は空色半被とクリーム色の短袴。
     流れてくるユーロビートにあわせて、ブレイキンを踊る。
     複雑なフットワークから、逆立ちで独楽のように旋回する「1990」へ。
    「人の評価を目的に身に付けた踊りは本物じゃないよ」
     何時でも、何処でも完璧に踊りたいから必死に練習する。完璧に踊る為に自分の世界に入り込む。これは究極の自己満足だと明菜は言った。
     それが彼女なりのダンス。
     そんな自分の踊りで喜んでくれる人がいる。
    「だからアウェイでも私は失敗しないよ」
     縦横無尽にエアートラックスをこなし、コークスクリューへと繋げる。
     着地と同時に、指鉄砲とウィンクのポーズで明菜はフィニッシュ!
     完璧に踊る明菜と、彼女に見入る観客。
    「む~~……」
     それらをこころは悔しそうに睨みつけた。
     戒は片手に龍砕斧、もう片方の手にライドキャリバー「烈風弐号」を掴み、人機一体のダンスを披露した。
     エンジンと遠心力でダイナミックに踊る姿は、まさに嵐。
    「風は常識に囚われないのさ!」
     荒々しく踊る度に、漆黒の特攻服に刺繍された金地の文字が輝く!
     戒はこころに語りかける。
    「お前のダンスは何の為に踊ってるんだ?」
    「何の、為? こころは……」
    「俺は踊ってみて思ったぜ! 『ダンスって楽しい!』ってさ。他人を蹴落とす為だけに踊ってるのはアイドルじゃねえぜ!」
    「こころがアイドルじゃない? うそ! だってこころ、こんなに輝いてるもん!」

    ●sweetheart
     仲間のアピールが決まる度、観客に紛れた伊近が応援の歓声を上げた。
    「一番最初の奴、格闘技の蹴り技みたいでかっこよかったよなー。他の奴らも結構やるんじゃねーか?」
     それとなく仲間を褒めれば、
    「ま、まあ、ブレイキンの子は元気一杯で躍動感があったかな。こころちゃんが一番だけど」
    「バイクの奴も楽しそうだったよな。こころちゃんが一番だけど」
     こころのファンからの反応も悪くない。
     次第にこころの自信は揺らぎ始めていた。
    「次は私だね」
     桐山・明日香(風に揺られる怠け者・d13712)がハウスミュージックに合わせて軽やかなステップを踏む。
     衣装はラフなスタイルで、Tシャツにデニムのショートパンツ。
     テコンドーの動作を混ぜた足さばきで見る者を魅了する!
     更に会場を盛り上げようと、明日香はステージに妖の槍を突き立てる。それに脚を絡めてポールダンスのムーブも織り交ぜれば、観客の男性が釘付けになる。
    「おお……ひっ!?」
     冷たい視線に気付くと、ジト目でファンを睨むこころがいた。
     露木・菖蒲(戦巫覡・d00439)は事前にとあるアイドルソングを用意していた。
     ダンス好きの淫魔に勝負を挑むならこれしかないと思ったのだ。
     流れてきたのはまるで話題になっていない曲だった。
     心なしか観客の反応も微妙。
    「なぁ、この曲知ってる?」
    「さあ」
     まるで話題になっていない!
     アイドルソングに合わせて瑠理香と菖蒲が踊る。
     最前で応援する諒は、
    「相手を負かす高い技術は、確かに観客を喜ばせるかもしれない。でも、今の甘射さんのそれは、みんなの心に響く、魂を揺さぶるパフォーマンスなのかな」
    「なんですって!? そんなに言うなら見せてあげる!」
     対抗してこころも踊り始める。
    「こ、こころだってすごいダンス負けてないもん!」
     すでに日本語があやしい。
     それでもこころのダンスは流石の物だった。可愛らしい振り付けでスイートコーデの衣装をめいっぱい可愛く魅せる。
     スイート・アローを完璧に決めるとファンからも歓声が上がった。
    「ど、どう? やっぱり一番輝いてるのはこころ……」
    「負けないのですよー!」
     瑠理香は踊りながらバトンをくるくると自在に操る。
     沢山の装飾をあしらった丈の短いドレスが、回ったり跳んだりするたびにふんわりと広がった。
     そしてクライマックス。
     低めのエーリアル2連続から、より高くバトンを投げる。舞い上がったバトンが落ちてくる間に高く足を上げるように2回転、最後は座ってキャッチ!
     両足をクロスさせて、両手を斜め上に上げて決め!
    「な……っ!?」
     菖蒲のコーデはネコミミ&シッポ、にゃんこグローブ&ブーツの黒猫風ゴスパンク。
    「ボクは歌って踊れる可愛い子猫さんなのにゃ☆」
     様々なステップやスピンを菖蒲はポップ&きゅ~とに決める。
     さらに影業が本人とは全く違う振り付けで踊っていた。
     灼滅者だからこそ出来るテクニックだ。
     最後に猫っぽいポーズで「にゃん♪」とあざとくアピール!
     しかもバトルオーラでキラキラと輝くエフェクト付き!
    「こころより輝いてる~!?」
     ガーン! という効果音が聞こえた気がした。
    「おおおおお!」
     思わず観客からも歓声が漏れた。
     こころは愕然としてステージに膝をつく。
    「あんなアピール勝てないよ……はっ! 負けてない! こころ、負けてないもん!」
     淫魔はぶんぶん首を振って必死に敗北の事実を否定する。
     しかし誰よりも彼女自身が敗北を実感していた。
    「……おねーさんも、すごかったのですよ、またやりたいのです!」
     瑠理香の素直な賞賛にも、こころは涙目。
     不意に淫魔は素敵なアイデアを閃いた。
    「そうだ、みんな殺しちゃおう。そうすればこころの負けもナシだよね」
     そう言うとこころは灼滅者に向かって弓矢を構えた。

    ●あなたのハートを狙い撃ち
     こころが弓を構えると、取り巻き二人が彼女に付き従う。
    「何がどうしたんだ。ダンス勝負じゃなかったのか?」
     ただの取り巻きでしかないこころのファン達を、諒と伊近が外へと誘導する。
    「皆こっちへ」
    「あ、あんたたちここの関係者か?」
    「さあ、早く」
     こころはそれには見向きもせず、
    「それじゃあ死んでね♪」
     にっこり微笑み、ダンスを踊る。
     先ほどのダンスに似た振り付けだが、今回は明らかに殺意が込められていた。
     アピールが決まると、こころの魔力が高まる。
     菖蒲もパッショネイトダンスで対抗した。
    「ボクは猫が好き。音楽もダンスも好き。可愛い格好だって好き。つまり、ちょー楽しいのです♪ ねこねこにゃーにゃー♪」
     こころを負かした猫のポーズを決めれば、
    「むむむ~! こ、今度は負けないもん!」
     ムキになる淫魔。
     配下達をすり抜け、戒はこころの懐に飛び込む。
    「風は何にも遮られないのさ! そして暴風となって吹っ飛ばす!」
     身の丈程もある龍砕斧を振り上げる。龍骨斬りがこころの衣装の胸元を切り裂いた。
     敗れた衣装の隙間からやわらかそうなふくらみが露わになっ
    「きゃぁっ! 変態!」
     ちっ。こころは胸を隠して赤くなる。
     あくまで事故だが、視聴者へのサービスも忘れない。
    「うぅ~、こころの大事な衣装……。もう許さないんだから!」
     涙目で睨むこころ。
    「こころちゃんを泣かしたのはどいつだ!」
    「お前か!!」
     こころの涙に激怒した配下二人が戒と菖蒲を殴った。
     追い討ちをかけるようにこころが弓を構え、弦を引き絞る。
    「こころよりダンスが上手い人なんか死んじゃえばいいんだよ♪」
     一直線に放たれた矢は菖蒲の心臓を僅かに逸れて肩を貫いた。
     痛みによろめく菖蒲を明菜が支える。
     明菜の響かせる天上の歌声が即座にその傷を癒した。
     こころがもう一度弓を構える。
    「それならもう一回――」
     瞬間。ステージに銃声が響き、爆炎の銃撃がこころを包んだ。
    「素敵な衣装、燃えちゃったらごめんね」
     こころはステージ上空を見上げる。そこには箒に乗った諒がガトリングガンを構えていた。
     一般人を非難させた諒と伊近が戦闘に参加する。
    「さーて、はじめよーか。 賑やかなのが良いねぇ」
     伊近が高らかにメロディを口ずさむ。
     心を惑わす彼の歌声にこころは目を回した。
    「こころちゃんを守れー!」
    「うおー!」
     拳を振り上げる強化一般人だったが、烈風弐号の機銃掃射が彼等二人を足止めする。
     この機を逃さず、瑠理香と菖蒲は走った。
     リズムに乗ったアクロバティックな動きで敵を翻弄する菖蒲。
     戦いの型を織り交ぜたダンスは、振り付けの可愛さとは反対に、異形化した腕で容赦なく配下達を殴り飛ばす。
    「んー……めんどくさいなぁ」
     気だるそうに呟き、明日香が妖の槍を振るう。
     放たれた氷柱が配下を凍てつかせ、ひと時の冷たい眠りにいざなった。
     残された配下の服を翔はおもむろに掴むと、渾身の力で投げ飛ばす。
     敵は床を派手に転がりながらそのままステージ袖に消えた。

    ●本当のこころ
     明菜のエンジェリックボイスと伊近のディーヴァズメロディが戦場に響き渡る中、歌声をバックに灼滅者とダークネスが踊る。
     両の拳にオーラを集め、明日香は連続で打ち出す。あわあわしながらもこころは右へ左へと繰り出される連撃をかわした。
    「ん、めんどくさい……」
    「ふんだ! こころの邪魔するライバルなんかみんな死んじゃえ!」
     菖蒲の操る風が渦を巻いてこころを切り裂き、瑠理香がフォースブレイクを叩き込む。
    「対抗心を、自分の成長の種に出来る、それこそがライバルだと思うのですよー!」
    「うるさいうるさいうるさい!」
     こころが弓を構えて瑠理香を狙う。
    「あなたの心臓を撃ち抜いちゃうんだから☆」
     放たれた矢は、しかし瑠理香には届かなかった。
     彼女を庇った烈風弐号に矢が突き刺さる。
    「もー! なんでうまくいかないの!? 殺しも、ダンスも、なんで!」
     焦げてぼろぼろになった衣装を見下ろしこころは涙ぐむ。
    「それにこころの大事なコーデまで!」
    「怒ったの? それとも悲しいのかな」
    「両方に決まってるでしょ!」
     少女は諒の言葉に声を荒げた。
    「でもそれは、どうして? 大好きな衣装だから? 勝たせてくれる衣装だから? 着れば勝てるから、そのコーデが好きなのかい?」
    「違う! 違うもん! この衣装を着てると勇気が出るの。だからこころは……!」
     諒の影がこころの足を絡め取った。
    「ねえ君は、どうして踊るの? 何の為に、着飾るの? それは、誰かを貶め悲しませるため? ダンスって、才能だけで決まるもの?」
    「わたしはダンスでキラキラしたいの!」
     それが彼女の本音だったのかもしれない。
     こころはもがきながらもう一度ダンスを踊ろうとする。
     しかし。
    「本当にダンスが好きなら! まずは自分と向き合ってください! それがさらなるステップアップへの近道です! 目を覚まして!」
     翔は中段の構えから刀を一閃する。
     鋭い斬撃がこころの弓を両断した。
     弓を取り落とすこころ。
    「これじゃダンスもアピールも出来ないよ……」
     戒は己のダメージを無視して一気に押し切る。
    「オラオラオラァァァァー! 強風暴風台風突風旋風烈風疾風怒涛!! 風は止まらない!!!」
     こころを持ち上げご当地パワーで地面に叩きつける。
     ステージに大爆発が巻き起こり、少女は意識を手放した。

     闇堕ちから救われたこころが目を覚ます。
    「わたし……みんなにひどいことしちゃったの……?」
    「こころ……」
     ライバルの少女が彼女をみつめていた。
     俯き青ざめるこころの背中をそっと諒が押す。
     こころは覚悟を決めて、
    「ごめんなさい、わたし、わたし……」
    「よかった。いつものこころに戻ったんだね」
     泣き出しそうになるこころを、ライバルの少女は抱きしめた。
     今度こそこころは本当に泣き出してしまう。
     何度も謝る彼女をライバルの少女はずっと抱きしめていた。
     伊近はラブリンスターについて、何か知っていることはないかこころに尋ねたが、彼女は首を横に振った。
    「声が聞こえたの。きっとわたしが弱かったから、誘惑に負けちゃったんだね……。いろんな人を傷つけちゃった。だからもうダンスは……」
    「負けでもそこで終わりじゃない、一度負けてから、また上がってくるからこそ、素敵なモノが出来ると思うのです」
     「これ、受け売りなんですけどね」と微笑みながら、瑠理香は落ち込むこころを励ました。
    「よければ、僕らの学園に来ませんか? 歓迎します」
     翔がこころを学園に誘う。
    「いいの?」
     こころはおずおずと頷いた。
     天真爛漫な笑顔で瑠理香は喜ぶ。
    「戻って来れて、良かった……お互いに、これからももっとがんばるのですよー!」
    「うん、わたし負けないよ」
     今度こそ本当の意味で輝けるように。

    作者:かなぶん 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年3月26日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 9
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