●
『馬鹿野郎ッ』
なぜだろう。このお守りを手にしていると、悲しそうな、悔しそうな声が聞こえてくる。不愉快ではないが、愉快でもない。
「……ま、どうでも良いか」
お守りを捨てようかと暫く逡巡するも、そのままポケットに突っ込み、少年は慣れた様子でゲームセンターの奥へ進み格闘ゲームに興じていた。
不意に、彼の画面に「challenger」の文字。対戦を挑まれたようだ。
ほどなくして彼の画面には「you win」の文字が並ぶ。
再び「challenger」の文字。同じ相手に挑まれたらしい。
それを幾度と無く繰り返し――、
「ハメ技なんて使ってんじゃねえよ!」
「言い掛かりはやめてくんないかな」
「反則技でゲームに勝って楽しいのかよ。ツラ見せやがれ!」
男は少年の胸元を掴む。すると、その反動で被っていたパーカーのフードが落ち、顔が露わになった。
少年の瞳の色は、異質な赤。
その瞳がすう、と細められる。
「アンタが格闘ゲームで勝てないなら、違うゲームをしない? そうだな――例えば『殺人ゲーム』とか」
『――馬鹿野郎ッ!』
「あーあ、ここ、レアな筐体置いてたから気に入ってたのにな」
ぼやきながらも、彼の所作には躊躇いは無い。
ゲームセンター内にいる人々を次々に手に掛ける少年のポケットからお守りが、落ちる。
お守りを渡した友の声は、彼の耳にはもう届かない。
●
「集まったな。――良いニュースだ」
目の下にべっとりと隈を作った神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)が集まった灼滅者達を見てニヤリと微笑んだ。
「六六六人衆・レムとの戦いで闇落ちした、黒鉄・伝斗(電脳遊戯パラノイア・d02716)の情報をキャッチした」
レムの情報を灼滅者達に伝達したのはヤマトだ。それは彼の役目であり、責められる謂れは無いのだが、闇落ちさせてしまったことに大きく責任を感じており、彼の情報を少しでも集めんと尽力していた。
未来予測によると伝斗は闇落ち後も殺人はまだ犯していなかった。
本人は自覚していないのかもしれないが、人としての理性が残っていたのだろう。が、ゲームセンターで因縁をつけられたことによりタガが外れ、本能の儘に殺傷行為を行い――ダークネスへと完全に覚醒する。
「絡まれた事により闇落ちゲームへの参加を思いつくレムと、因縁をつけられた事により完全にダークネス化する伝斗……状況がどこか似通ってるのは皮肉な事だな」
ヤマトは薄く笑う。
「だが、この未来は覆す事が出来る。今から手順を説明する」
先ずは、伝斗がゲームセンターに入ったのを確認したら、因縁を付けた男より先に対戦台に座り彼に対戦を申し込む。
彼は自他共に認めるゲーム好きの為、ゲーム絡みのルール・マナー違反には嫌悪感を示し、その場で対戦者を攻撃する可能性がある為注意しなくてはならない。
「この勝敗については気にする必要は無いから、正々堂々とプレイすれば良い。これは、お前達が接触する為の切っ掛け作りと、一般人が巻き込まれるのを回避する為の二重の意味を持っている」
そして、ゲーム終了後に彼に声を掛け屋外での戦闘を提案する。『ゲームはルールがあるからこそ面白い』を持論とする彼は、両者共に公平なルールだと判断すればそのルールに則って戦闘をするという。
しかし、ここにも注意点がある。灼滅者側に有利すぎるルールを提案すれば、伝斗は不快感を示し、ダークネスへと更に心を傾ける結果となるだろう。
「ルールを提案するかは否かはお前たちの判断に任せる。下手に刺激しない方が良いと思ったら、無理に提案する必要はない。シンプルに『戦おう』という誘いでもゲームの提案と解釈する筈だ。
後は戦闘中も言葉を掛け続けてくれ。何か心に響く所があれば、それだけ救出する可能性も上がってくる。元は仲間とはいえ今の能力はダークネスだ。充分に注意してくれ。――これで俺に出来る事は全てやり尽くしたか?」
説明を終え、張りつめていた緊張の糸が緩んだのか、倒れそうになるヤマトを水上・オージュ(中学生シャドウハンター・dn0079)が慌てて支える。
「……多分、彼は寝ないで情報を集め続けてたんだと思う。今度は僕達が頑張る番だよ」
力無く目を瞑った儘のヤマトをオージュは気遣わしげに見た。
「救出か灼滅か……今回が最後のチャンスだって言うけど、最初も最後も無いよね? だって、これで伝斗君を救うんだから。ヤマト君はヤマト君の最善を尽くした。これで僕達が最善を尽くさなくちゃ、彼に申し訳が立たないよ。――『救出』の一択で良いよね?」
オージュはヤマトを真似て不器用ながら不敵に微笑んでみせた。
「行こう。彼を救う為に」
参加者 | |
---|---|
アリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814) |
宗原・かまち(徒手錬磨・d01410) |
彩瑠・さくらえ(宵闇桜・d02131) |
埜々下・千結(八杯抱えし空見人・d02251) |
近江・祥互(影炎の蜘蛛・d03480) |
或田・仲次郎(好物はササニシキ・d06741) |
尾崎・ひなた(変なものコレクター・d06773) |
七六名・鞠音(戦闘妖精・d10504) |
●
薄い雲に覆われた月は頼りなく地上を照らし続けていた。
そんな朧に見える月とは異なり、助けたいと思う気持ちに一切の曇りは無い。だが、手が震えてしまうのは何故だろうか。怖いから? 自信が無いから? それとも自分にはその力が――、
「救出一択。お前もそのつもりだろ?」
埜々下・千結(八杯抱えし空見人・d02251)の思考を中断する様に宗原・かまち(徒手錬磨・d01410)が言う。
「大丈夫だよ。絶対助かるし、助ける。だからここにいるんだから」
「そうっすね。その為の力なんっすから。絶対、今度こそ全員守ります」
内心の不安を気取られない様に水上・オージュ(中学生シャドウハンター・dn0079)が千結に微笑み、それを受けて彼女は気合を入れ直す。
「今はとにかく、上手く接触、誘導出来るのを待つだけだ……二人とも、頼んだぞ」
簡単に人払いの工作を終えた近江・祥互(影炎の蜘蛛・d03480)が戻って来ると、ゲームセンター内にいる二人の仲間と、今は闇に心を傾けた友人の事を思い目を伏せた。
(「……ちゃんと、持っててくれたんだな。俺の願いはあいつに届いてる。だから必ず、この手で」)
痛い程に拳を握り、友の姿が見えるのを待つ。
「黒鉄さん、見つけましたよ」
「格ゲー……上手いね」
「ん? ああ、やたら上手いと思ったら対戦したのアンタだったんだ。中盤の大技凄かった。ゲージごっそり持ってかれた時はヤバいと思ったよ。……それにアンタも知ってる顔だ。何か用?」
「……新しいゲーム、興味ない? リアル、対戦ゲーム」
「へえ? ここでやるの? 2対1で?」
「仲間は外に待機してます。お互いに平等な条件で存分に戦いましょう。でも、ここで暴れるのはしたくないですよね。屋外で良い所があるんで、そこに行きませんか? お互い100%の力で戦いたいですし」
「あの筐体……もう、あんまり、見ない。……もったいない」
フードを目深に被った少年――黒鉄伝斗は、尾崎・ひなた(変なものコレクター・d06773)と或田・仲次郎(好物はササニシキ・d06741)の提案に少し思案し――、
「良いよ。リアル対戦ゲーム、興味あるし」
と、首を縦に振る。
(「黒鉄くん、結構……慕われてる。ちゃんと……伝えて、あげないと……ね」)
「何か言った?」
「……別に」
ひなたは息を吐き、その後は3人共無言で戦闘場所となる屋外へと伝斗を誘う。
外へ出て自動ドアが閉まると、喧騒はそのままゲームセンターへ置き去りとなり、痛い程の沈黙が3人を包む。歩みは自然と速足となり、仲間達が待つ場所へと足を進めた。
●
「……まあ、予想はしてたけど。1対多数ってのはある意味壮観ではあるな。しかも見慣れた顔も、知ってる顔もちらほらと。念の為訊くけど……何しに来たんだよ?」
「こちら側に戻ってきて。――言える事はこれだけだよ」
「伝斗さん。あなたに救われた人がいる。同じ学園の生徒として、あなたを助けたい私がいる」
「あー……でも、万が一そっちに戻っちゃうとテストが」
「心配するところそこっすか!?」
彩瑠・さくらえ(宵闇桜・d02131)とアリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814)の説得に、そっと目を逸らしテストの心配する伝斗に千結が思わず突っ込みを入れる。学生の本分は勉強なのだから、心配をするのは当然なのかもしれないが。
「まあ……それは、黒鉄くんが……帰ってきてから……悩めば、良いよ。今はリアル格闘ゲームの、ルールを決めない?」
ひなたが淡々と軌道修正をし、皆は慌てて真面目な顔を作る。
【リアル格闘ゲーム:ルール案】
・互いに戦う手段、全てを見せる。
・奇襲はなし。降参も逃亡もなし。
・一般人は巻き込まない。
「つまり、ルールは基本何でもあり。但し一般人への手出しは無し。OK?」
アリスがルールを総括し、伝斗の反応を待つ。
「これが互いに公平なルールねえ……」
つ、と伝斗が顎を上げる。フードの裾から見える赤い目が灼滅者達を捉えた。
「『一般人は巻き込まない』。これ、そちら側だけのプラスに見えるんだけど。ルールとして考えるなら一般人だろうが、灼滅者だろうがダークネスだろうが同列としないと。ゲームに邪魔な対象は排除する。それだけだ。それに、こっちが求めてるのは『ルール』であって『交渉』じゃないんだけど」
「……。これは……互いに、全力を出す為のルール。力のない一般人がいたら……戦闘の、邪魔……なの」
ひなたが唇を湿らせて暫し思案し、ルールの補足をする。これで伝斗がルールを受け入れない事には何も始まらない。皆の顔に緊張が走る。
「ふぅん。説得の内容としては弱いような気もしないでもないけど……ま、良いや。呑むよ。こんなところでごねても面白くないしね」
「それじゃ、黒鉄さんが快く了承してくれたってことで、邪魔が入らない様に仕掛けをさせて貰いますよ。互いに気持ち良く対戦する為にね」
仲次郎が仲間に目線を送ると、素早くESPが展開された。
「さぁ、一つの魂を賞品に、ゲームを始めましょうか。負けるつもりは一切無いけれど。 『Slayer Card,Awaken!』」
「気が早いな。ルールでも決めてたじゃないか。オレは逃げるつもりは一切ないよ。勿論負けるつもりもね。――アンタ達も逃げちゃ駄目だよ?」
アリスが解除コードを唱えると同時に伝斗も臨戦態勢を取る。
「……何を求め、何を思い、今戦うのか。教えて、ください。そして、ソレが望み、であるのか。真意は、夢は、何なのか、私に教えて、ください」
「そんなもの、もう忘れたよ」
七六名・鞠音(戦闘妖精・d10504)の真っ直ぐな瞳と攻撃を避け、フードを深く被り直すと伝斗は嘯く様に言う。
「人殺しはゲームじゃねぇ。人殺しは人殺しだ……なぁ、オメーにとってゲームってなんだよ。人の血見るモンじゃねぇだろ……? 芸術発表会ん時みてぇに、皆の心ワクワクさせてくれよ」
「饒舌な宗原さんってなかなか珍しいな」
「テメェが闇落ちなんかしやがるからだろうが! あー……もう、なんつったら良いかわからねぇ……俺ぁ拳で語るしかねぇからよ。テメェもそれを望んでるみたいだしな。目ぇ覚ませ、黒鉄っ!」
かまちの拳は伝斗の顎を掠め、その拍子にフードがはらりと落ちた。隠されていた瞳はダークネスである事を認めざるを得ない、普段の彼の瞳の色とは違う、赤。
その瞳が、かまちと入れ替わる様に距離を詰めてきたさくらえを捉え、斬撃を放つ。
「くっ……」
痛みに顔を顰めるがそれでも伝斗の腕を掴み、目を逸らそうとしない。
あの時、レムを退けることができたのは、皆を守りたいと願った伝斗の優しさと覚悟があったから。過去に闇に落ちた恐怖から、どうしても闇落ちを選択出来ないさくらえにとってそれは憧憬にも近い気持ち。だが、選択出来なかった事を悔いて自分を責めていても仕方がない。ワタシにはワタシにしか出来ないことがある。
「今ここで、あの時のゲームを今度こそ一緒に終わらせるんだ」
「彩瑠さん!」
仲次郎の声が聞こえるや否や、さくらえは伝斗から手を離しその場に伏せる。その頭を掠める様にして仲次郎の放つ弾丸が伝斗を捉えた。
「なっちゃん! さくらえ先輩を回復するっすよ!」
千結は鞠音へと精度を上げる術を施しながら、ナノナノのなっちゃんへと指示を飛ばす。
彼女が思ったのはレムを追いかける直前に見せた伝斗の笑顔。
(「なんでそんな綺麗に笑えたんすか? なんで、会ったばかりの自分達を信じられたんすか?」)
分からない。だけど、応えたいと思った。伝斗をこのまま独りにしてはいけないと思った。
「……お願いだから帰ってきて。貴方を犠牲にして、終わらせたくない」
囁く様に願った声は戦闘の音に掻き消された。
「あなたの帰りを待っている人がいるのよ? 嫌だと言っても力尽くで連れ帰らせてもらうわ。覚悟してちょうだい。――万象の根源よ、力ある言葉に従いて猛き矢となれ!」
アリスの放った魔法の矢はガードしようとした伝斗の腕を掻い潜り執拗に撃ち続ける。目を細める伝斗へと肉薄し鞠音は影を叩きつける。
「それが、望んだ、結末ですか」
装飾された言葉になど意味は無い。長々と綴るよりも重い言葉と攻撃を、一撃。それだけで良い。
「本当に戻りたいなら、今、手を取りなさい」
「戻る気なんかさらさら無いよ」
「――鞠音さん!」
後方から戦況を伺っていたオージュは、鞠音へと攻撃を放とうとする伝斗に気づき、その腕を狙い弾丸を放つ。そのおかげか狙いは僅かに逸れ、鞠音は致命傷を免れた。
「回復は……任せて」
すかさずひなたが符を投げつけ鞠音の治療を行う。
「……回復禁止もルールに入れておけば良かったか? これはミスったな」
後方に飛びのきながら伝斗は苦笑を零す。
「休んでる暇なんてねぇぞ。やっぱリアルファイトのが楽しいなぁっ!」
息つく暇も無くかまちが伝斗に攻撃を仕掛け、それに合わせるように仲次郎が弾丸を撃つ。
「オレはインドア派だからリアルファイトはあまり好きじゃないんだけどな」
「そりゃ、『伝斗』の方だろうが! 諦めんならさっさと出て行きやがれ、ダークネス!」
「……あ」
伝斗が戸惑う様に動きを止める。視線を彷徨わせ、かつて仲間だった灼滅者達の方を見る。止まない攻撃と説得により『伝斗』が僅かながら表に出てきたのかもしれない。
「仲間を守ろうとした事はダチとして誇らしい。俺達を信じてくれてんのも素直に嬉しい。 けどな。だからってその仲間に、ダチに……俺に! 心配かけるような大バクチ打ってんじゃねえよ!」
祥互の炎を宿した攻撃は伝斗を焼き続ける。しかし、そのダメージより辛そうな伝斗の顔。赤の瞳が苦しそうに歪められた。
「アンタ……煩いよ」
絞り出す様な声で伝斗はそう言うと祥互に攻撃を叩きこむ。その攻撃の衝撃で、後ろに数歩下がる祥互を咄嗟に庇おうとした仲間達を手で制し、そのまま伝斗を睨みつける。
「今までの攻撃に比べたら全然大したことない。もう少しだ」
「そろそろ……黒鉄くん自身を、コンティニュー……する、時間」
「本当にアンタ達、煩い。目障りなんだよ」
殺気を繰り出す伝斗の攻撃は前衛陣を撃ち据えたが、回復層を厚く積んでいた灼滅者側は声を掛け合いながら回復を行い、その間も伝斗へと声を掛け続ける。灼滅者達の声は伝斗自身が闇落ちした状況を否が応にも思い出させた。
『――仲間を殺させるわけにはいかない』
「自分達やあの不良さん達を守る為に、自分達を信じて笑って、守ってくれたその手で、力の無い人を傷つけて欲しくないっすよ!」
『――復活呪文もないんじゃ、死んだらおしまい。でも』
「戻って来て、黒鉄君! あんなに仲間思いな君を助けたいんだ、ダークネスに負けないで!」
『――闇堕ちから戻れる可能性はゼロじゃないから』
「その希望、今度はワタシ達が繋ぐよ。キミを闇から引き戻してみせる」
『――……ごめんね』
「そんな殺人紛いの行為を大好きなゲームと同じモノとして扱ってることに抵抗はないのかい? そんな事してちゃ駄目だよ……戻っておいで」
「オレ……ボクは……」
「いいからとっとと帰って来い!『馬鹿野郎ッ!!』」
祥互の叫びと共に放たれた拳と、拳の形に象られた影は幾重にも伝斗を撃ち、その衝撃に耐えきれなくなった彼はそのまま押し切られる形で仰向けに倒れ、その弾みでポケットからお守りがひらりと舞った。
●
ポケットから零れたお守りを赤茶の髪の少年が拾う。そしてそのまま倒れた伝斗の傍まで行き、彼の様子を見てニッと笑うと、助け起こしお守りを手渡すついでに――、
「ばーか」
「痛っ」
ぺしっと頭を叩いた。叩かれた頭を撫でながら情けない顔をしているのは黒い瞳の伝斗。
彼を救えたのだ。
「お帰りなさい。気分はどう?」
「ったく、面倒かけさせやがって……おかえり。良いダチ持ったんじゃねぇの? 俺以外。動いたら腹減ったな……。黒鉄、奢ってくれ」
「……よし……じゃ、ゲームの続き、やろうか。黒鉄くんの奢りで」
「私、ゲームセンターって、初めてですの。皆様とご一緒に、ゲーム出来たら、嬉しいですわ。黒鉄様の奢りで」
「私もゲームはあまりしませんが、今日は皆さんと行くのも良いですねー。黒鉄君の奢りで」
「ちょ……もう止めるっすよ! 伝斗先輩の(財布の)ライフはとっくにゼロっすよ!」
「奢るお金ないからちょっと闇落ちしてくる」
「そんな借金踏み倒すような感覚で闇落ちしないで!?」
「あはは……奢る奢らないは別の機会にして、折角の機会なんだし皆でちょっとだけゲームセンター寄って行かない?」
「ゲームセンターか。やかましいのは得意じゃないけど、偶には良いかもしれないわね」
収集の付かなくなってきた一行をさくらえが何とか纏め、その提案にアリスが頷く。
ある意味ホームでもあるゲームセンターでレトロゲーム部の面々は自分が得意なゲームを次々に披露し、非レトロ―ゲーム部(?)の称賛を一身に受け、皆誇らしげな顔をしている。
「あのゲームは、何と、言うのですか? 私、あの、お人形が、欲しいです」
「ありゃあ、クレーンゲームっていうんだ。あぁ、アレか……取りにくい場所にあるが……やってみるかね」
「ところで『ハメ』ってどういう技なんですかー?」
「実践してみようか?」
「……。ああ、これは反則だね……」
思い思いにゲームに興じる姿は灼滅者ではなく、まるで只の学生の様で。その中には伝斗の姿も入っている。
日常とは程遠い世界に身を置いている自分達だが、今日は仲間を救う事が出来た。今日はもう戦闘を忘れて遊ぶのも良いだろう。
伝斗。
学園に帰るまでは秘密にしておこうと思っていたけれど。俺、お前がいない間にレトロゲーム部に入ったんだ。偶には驚いた顔のひとつでも見せちまえ……まあ、普通に返されそうな気もするけど。
「何?」
祥互の視線に気づいた伝斗が首を傾げる。何となく気恥かしい。こんな時は思い切り指に力を込めて。
「痛ぁっ!?」
「天罰だ。馬鹿野郎」
祥互は伝斗に遠慮も容赦も無く全力でデコピンをした。
作者:呉羽もみじ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年3月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 3/素敵だった 11/キャラが大事にされていた 3
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