小さきを好みし鬼達

    作者:緋月シン

    ●好みは人それぞれ
    「いや、やっぱり小さいのは最高だな。見てるだけで幸せな気分になれる……ていうか見る以外何もしねぇけどな!」
    「まったくっすね。あの掌に収まっちゃう小ささ、最高っす。別に触ったりはしないっすけどね!」
    「ええ、やはり小さいものこそ至高です。というかそれに悩む姿が最高です。他の何を譲っても、これだけは譲れませんね」
     なんだろう、褒められてるはずなのに嬉しくない。淫魔の少女はそう思ったが、果たすべきことを果たせたことに違いはない。
    「まあ、それじゃあ私は帰るけど……約束、忘れないでよね?」
    「分かってるって。お前らの邪魔をするなってことだろ?」
    「その代わり、絶対また来てくださいっすよ?」
    「はい、私達は再びそれを手にすることが出来るのでしたら、幾らでもあなたの言うことに従いましょう」
     言葉と共に動く三対の視線。それは全て同一の場所に向けられている。
     それを受けた少女は、気付かれぬ程度の溜息を吐いた。
     知り合いの淫魔がいつも言っていたことは、なるほどこういうことなのかと納得する。
     しかし自慢げにしていた彼女とは異なり、優越感など欠片も覚えないのは何故だろうか。
     再会を約束する言葉を適当に流しつつ立ち去る少女の背中は、何処か哀愁が漂っていたのだった。

    ●七十二
    「何の数字かは……まあ言わないでおこう」
     言いつつ神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)は視線を逸らした。
     まあ人の魅力はそれだけで決まるわけではないしそれが好きって人も居るんだから別にいいんじゃないかな。何の話かはさっぱり分からないが。
     ともあれ依頼の話である。
    「お前達の中には既に話を聞いたことがあるやつもいるかもしれないが……何やら淫魔の奴らが動いてるらしい」
     どうやら他のダークネス連中に自分達の邪魔をしないように言って回っているようだ。
     勿論言ってはいそうですかと頷くような奴らではない。
    「自分達の特徴を最大限活かして取り入った後で言うことをきかせているようだな。方法は、察しの通り……と、言いたいところだったんだがな」
     何処か遠くを眺めるようにヤマトが呟く。しかしすぐに気を取り直すと話を続けた。
    「まあともあれ、そのおかげと言うべきか、今まで動向を掴むことが出来なかったダークネスの存在を察知することが出来た」
     そのダークネスの名前は平・恭平(たいら・きょうへい)。強化一般人と化した不良二人を配下にしている羅刹だ。
    「で、こいつらの居る場所だが、とある路地裏のビル、その三階部分だ」
     入り口は、外周部にある階段から入ることの出来る一つだけ。つまりそこから突撃することになるだろう。
     恭平達は戦力的には灼滅者達より上だ。しかし淫魔との逢瀬によりだらけきったところに突っ込めば、即座に態勢を整えるのは難しいだろう。
     その隙をつき上手く立ち回ることが出来れば、勝てるはずだ。
    「ただ、淫魔も狙う場合は別だがな」
     その場合、おそらく恭平達が助けにやってきてしまうだろう。そうなるとダークネス二体分の戦力と戦うことになる。さすがにそれは無理だ。
    「淫魔も倒したいとは思うが……すまん、堪えてくれ」
     灼滅者達がそのビルに到着できるのは、大体淫魔が出てくる少し前になる。その場で待機し、淫魔が出て行った後に恭平達を襲う、ということになるだろう。
     路地裏はごちゃごちゃしているうえに脇道も沢山ある。監視しつつやりすごすのはそう難しいことではないはずだ。
    「恭平達の居る部屋はそこそこ広く、戦うには問題ない程度にはある。そのビル自体がほぼ廃ビル同然だから、被害などを考える必要もない」
     恭平は神薙使い相当のサイキック、配下達はバトルオーラ相当のサイキックを使用する。ポジション的には恭平がクラッシャー、配下の一人がディフェンダーに、あとの一人がジャマーだ。
    「あと注意すべきこととしては……そうだな。話から分かる通り、こいつらはちょっとあそこが貧しいというか何というか……まあそういうやつを好む」
     故にそういう人物が居た場合、おそらく積極的に狙ってくるだろう。だが狙ってくるとはいえ、攻撃をするわけではない。ジッとそこを眺め、その行動を観察するのである。
    「当然攻撃されたら反撃はしてくるがな」
     しかしその性質……性癖? ともかくそれを利用すれば戦闘を有利に進めることが出来るだろう。
    「居ない場合は、まあ頑張って普通に倒すしかないがな」

    「ああ、ちなみに、無は駄目らしいぜ? 貧じゃないと駄目なんだとか……まあどうでもいいな」
     ともかく、頼んだ。そう言ってヤマトは、灼滅者達を見送ったのだった。


    参加者
    八幡・向日葵(詠うプロレタリアート・d00842)
    ヘカテー・ガルゴノータス(深更の三叉路・d05022)
    大條・修太郎(紅鳶インドレンス・d06271)
    穹・恒汰(本日晴天につき・d11264)
    鈴宮・伊織(甘党文学少女・d11663)
    天瀬・麒麟(小学生サウンドソルジャー・d14035)

    ■リプレイ


     そこを一言で表すのに相応しい言葉は、おそらく雑然だろう。決して汚いわけではないのだが、そこら中に物が溢れ転がっている。
     だがだからこそ、身を隠すのには適していた。
    「世の中には貧――ごほん、いろんな嗜好があるもんなんだな……」
     そんな路地裏に身を潜めながら、穹・恒汰(本日晴天につき・d11264)がぽつりと呟いた。
     危うく貧ほにゃらららと言いかけたせいで視線が集中するのを感じるが、気付いていない振りをすることでやり過ごす。
    「好みは好みでべつにいいんだけどな。気付かれない程度にこっそり見てるんならまあ……いいと思う」
     そう言うのはレイシー・アーベントロート(宵闇鴉・d05861)だ。事前にインナーを、身体のラインが見えやすいものにしておくなど、準備は万端である。出来ればそんなものしたくはなかったが。
    「けど連中は、殺してないとはいえ一般人に迷惑掛けてるんだから、戦わなきゃだよな」
    (「あと俺のコンプレックスだから刺激すんのやめてくれ」)
     さすがにそれは口に出せずに、心のだけでだけ呟く。
    「いくら手をださんでも……の小さい子をさらって観察するとか許せんっちゃ~」
     八幡・向日葵(詠うプロレタリアート・d00842)の言葉は一部が聞こえなかったが、誰もそこを追及したりはしなかった。敢えてその単語を口にすることでわざわざその現実を直視する必要はないのである。
    「こっちは本気で悩んでいるのに、それを……何なんですかね、本当」
     鈴宮・伊織(甘党文学少女・d11663)の纏う本来は透明なはずのバトルオーラが黒く染まってる気がするのは、きっとその場が薄暗いせいだろう。うん、そういうことにしておこうと思う。
    「……好みは人それぞれ、なのはいいけど。それをあんまり主張しすぎるのはよくない、よね?」
     とはいえ正直なところ、天瀬・麒麟(小学生サウンドソルジャー・d14035)にとってはどうでもいいことだった。相手はダークネスなので、結局は灼滅するだけだ。
     それに、個人的には普通だと思ってもいる。今この場に居る四人とはあまり変わらない気もするが。
    「きりん、小学生だしね」
     聞いた者の心に傷を負わせそうな言葉は、幸い誰の耳にも届くことはなかった。
     ヘカテー・ガルゴノータス(深更の三叉路・d05022)は、今回戦う羅刹について考えていた。
     それらが好むものとは一体何なのか。手のひらに収まるサイズということは、間違っても身長ではない。
    (「相手は男、淫魔は女で悩みの種ならば……」)
     自然と視線が下へと向かう。
     そこのあるのは、慎ましやかなメイド服に身を包む自分の身体だ。いや別に服が慎ましいんであって、決して身体の一部が云々という意味で言ったのではない。
     が。
    「……実に、馬鹿らしい」
     何処か忌々しげな声が、口の中で転がされた。
     と、その時だ。
     不意に扉の開くような音が響く。視線を向けると、件のビルから淫魔が現れるところだった。
     しかし淫魔は放置することに決めていたので、歩き去るのを黙って待つ。
     それにしても、歩く姿が気落ちしているように見えたのは気のせいか。
     その様子と、事前に聞いていた内容を思い出し、つい伊織が同情する。
     だが幾らその気持ちが分かっても、それが敵である事実に変わりはない。
    「……今度会う事があったら灼滅したいな」
     声に嫌悪感を滲ませながら、麒麟がこっそりと呟いた。


     突撃した瞬間大條・修太郎(紅鳶インドレンス・d06271)の視界に飛び込んできたのは、だらけきった恭平達の間抜け面だった。
     しかしそれは予想通りであるし、遠慮をしてやる理由もない。構わずオーラキャノンをぶちこんだ。
     それに続き連続で叩き込まれる攻撃。そのままいけるか、とも思ったが、やはりそこまで甘くはないらしい。
     死角より放たれたレイシーの一撃が、恭平の腕によって防がれた。同時に向けられる視線。
    「てめぇら……!」
     何かを堪えるような声に、咄嗟にレイシーはその場を飛び退いた。震える身体は、怒りのためか。
    「お前らも寝てる場合じゃねぇぞ!」
     恭平の言葉に、吹き飛ばされていた二人も即座に立ち上がった。襲撃してきた面々へと視線を向けると、やはり身体を震わせる。
    「こ、これは……!」
    「な、なんと……!」
     そして。
    「ああ、まさかの貧乳パラダイスだ!」
    「ここは理想郷っすか!?」
    「楽園がこんなところに!?」
     あ、こいつらバカだ。知ってたけど全員が改めて再認識した。
     ていうかあれだけ避けてた貧乳って言葉さらっと言いやがった。
     そして食らったダメージも何のその、三人は即座に鑑賞モードに入った。思い思いの格好で、思い思いの対象の鑑賞を始める。
     明らかに戦闘どころか反撃すらする気がない。どうやらあまりの貧乳の多さにそんなものはどこかに放り捨てたらしい。
     あまりのアレっぷりに、普段は寡黙なガイスト・インビジビリティ(亡霊・d02915)すらもはっきりと呆れの溜息を吐く。
     だがそれすらも、麒麟にとってはどうでもいいものだ。
    「……見たかったら見れば? きりんは気にしないから」
    「マジっすか!?」
     思ってた以上に食いついた。配下その1は周辺にスタンバると、早速ベストポジションを探し始めた。
     元より隠す気もなかった麒麟であるが、さすがにそこまでされるとイラッと来る。目の前に来たタイミングでフォースブレイクをぶち込んでやった。
     しかし奴はただでは転ばなかった。吹っ飛んだ方向に伊織が居ることに気が付くと、地面を踏みしめ急停止。向き直ると、今度は伊織へと纏わり付いた。
     その視線の中心にあるのは当然胸だ。胸を中心に、最もそこが映える場所を探していく。
    「う~ん、こっちの方が胸の平ら具合が……いや、やっぱりこっちのがそのぺったんこ具合を……やっぱりこれが一番その小ささを――」
     呟きつつ位置を変えていた男の頭を、スパコーンと本が直撃した。それは伊織が持っていただけの本なので、ダメージはない。ただあまりにイラッとしたのでついぶん投げてしまったのである。
    「……っ、人のコンプレックスをそんなに刺激して楽しいですか。どうせ小さいですよ悪いですか!」
    「いえ最高っす! ずっと見てたいぐらいっす!」
     いい笑顔でサムズアップまでされた。
    「……ちっちゃいのを褒められても、全く嬉しくないって本当なんですね。喧嘩売られてるようにしか思えないです」
     言いながら影喰らいをぶちこんだ。
    「っ……!? こ、これは……!?」
     直後、トラウマが発動したのだろう。戦慄きだす男に、いい気味だと少しだけ気が晴れる。
    「まさか巨乳に!? あ、悪夢っす……!」
     ブチ切れた。ビハインドのひかると合わせ、全力でぶっ飛ばした。
     さすがに効いたのか、恭平達の傍まで吹っ飛ばされた男は震えながらゆっくりと立ち上がる。
    「あ、アニキ、大変っす」
    「何だ、俺は今忙しいんだが」
     正座でガン見状態の恭平は、男の様子などどうでもいいのかそちらに視線すら向ける気配はない。
     しかし相変わらず震えながら、男が告げる。
    「貧乳っ娘に殴られるの、結構癖になるかもしれないっす。これはいいものっすよ!」
     余裕そうだった。
    「マジか!?」
     そしてバカが釣れた。
    「本当ですか!?」
     もう一匹のバカも釣れた。
    「なんかこう、男として来ちゃいけない所に来ちまったような気もする……色んな意味で」
     放っといても被害はなさそうとか思ってしまっていたのは気の迷いか。恒汰はそんなことを思ったが、ともかくやるしかない。
     しかし恭平達は思ってたよりもしぶといというか、正直ダメージを受けているのかが分からない。
     いや食らっていることは間違いないのだが、それが表に見えないというか、ノリで全てを吹き飛ばしている感がある。
     ならばここは、とばかりにヘカテーが一歩前に出た。


     貧乳っ娘に殴られるのはどんな気分かを話していた恭平達は、ヘカテーが動いたのに気付くと一斉にそちらに視線を向けた。
     ちなみに先ほどからヘカテーは、敢えて胸を腕や体の向きなどで隠すように動いていた。見えそうで見えない、時々見えるという感じだ。
     その甲斐あってか全員から一斉に視線を向けられたわけだが、当然ガン見だ。正直ぶっ飛ばしたいと思ったものの、抑えて口を開く。
    「ちょっと聞きたいんだが、この中で一番タイプなのは誰なんだ?」
     しかしガン見。
    「……この中やったらどの子が好みやろ?」
     変わらずガン見。
    「……良いから早く答えてください」
     ひたすらガン見。
    「炎上弾丸、射出」
    「ぬお!?」
     向日葵と伊織の言葉にも反応しなかったので、とりあえずガイストはブレイジングバーストを配下その1にぶっ放してみた。
     ついでにビハインドのピリオドによって恭平達もぶっ飛ばされる。
     しかしやはりというべきか、余裕で立ち上がった。
    「何すんだてめぇ! ていうかなんで貧乳っ娘じゃねぇんだよ!」
     そういう問題なのか。
     だがとりあえず注意は向いた。
    「質問。私達陣営、女性陣。好み、如何程か」
    「ああん? んなもん全員に決まってんだろ!」
    「全員に決まってるっすね!」
    「全員に決まってるでしょう」
     今度は間髪居れずに返ってきたが、その内容は少し予想外であった。が、実際に恭平達を見た後だと納得できてしまうのが何か嫌だった。
    「これ、選ばれても選ばれなくてもイラっとすると思いましたけど……どんな答えだろうとやっぱりイラっとするのは変わりませんね」
     伊織の言葉に、女性陣全員が頷く。しかも特に仲間割れとかをする気配もないので、ただこちらがストレスを溜めるだけの結果となってしまっただけだ。
    「なあ、あんた達にとって72って何なんだ?」
     なので、修太郎の言葉も、意味はないだろうとは思いつつも聞いてみただけなのだが。
    「何、72!?」
     思いの外食いついた。
    「ってなんだよ男じゃねぇかよ、期待させんじゃねぇよ!」
    「いや、待ってくださいっすアニキ! 今のはもしかしたら、あの中に72の娘が居るっていう俺達に対しての援護なのかもしれないっす!」
    「ということは、あの中に……!?」
     あっれなんか予想外の方向に話が飛んでった、と思ったものの、時既に遅し。恭平達の観察により力が入った。
     何か俺余計なこと言ったんじゃね? とか思った修太郎だが、ぶっ飛ばせば同じかと開き直って突っ込む。
    「人を目の前にしてじろじろ観察するとか失礼な奴らだ。パッドでも入れて鏡みてニヤニヤしてたらいいんじゃないのか」
     答えはどうでもいいとか思っていたものの、はっ、こいつ何も分かってねぇわー、みたいな目で見られ、ついでに鼻で笑われる。
     むかついたのでぶっ飛ばした。
     ヘカテーとは異なり、向日葵は大きな身振りで注意を惹くように動いていた。
     しかし当然好きでやっているわけでもなければ、見られるのを望んでいるわけではない。しかもその状態で見られるということは、つまりアレがそれだということと同義だ。
    「むぅ~、お母さんも大きいけんこれからっちゃ……」
    「親族が大きいことを理由に事実から目を背けるその姿……最高ですね! しかもこの真下から見ても余裕で天井が見える大きさ……ええ、やはり最高です!」
     ついポツリと漏らした呟きに返答があったばかりか、真下に変態が居た。というかその位置だと見えてはいけない別のものも見えてしまっている気がするが、どうやらこの変態はそっちには興味がないらしい。
     それはそれでイラッとくるが、とりあえず。ニコリと笑みを浮かべ。
    「女の子の胸ばっかりみとったらいけんっちゃ~!」
     制約の弾丸を叩き込んだ。
     ――女の価値は胸じゃねー! いくらでもごまかせる外見なんかより、中身で勝負だぜ。
     そんなことを嘯くレイシーであるが、実際は見られていることを感じ普段より攻撃が力任せ且つ大雑把になっていたし、それでも止まりそうにないので。
    「――よーし、そこ動くなよ。しばき倒す」
    「レイシー、待つ」
    「止めんなー!」
     何か闇堕ちしてでも恭平を倒そうとしたレイシーを、思わずガイストも止めた。
    「いやいや、全然オレ達ピンチですらないからね!?」
    「うるせー! そういう恒汰だって俺の胸部見てただろ!」
     何故か恒汰に飛び火した。
    「うぇ!? いやいや見てないよ!?」
     何度も見そうになったけど! 葛藤してたけど!
    「あーもー! いたたまれないから! ほんともう早く沈んでくれーっ!」
    「身体、穿ち」
     ガイストと協力してぼこるが、どうにも倒れる気配がない。相変わらず正座でガン見しっ放しだ。
     しかし他の皆の攻撃も加わることで、ようやくその身体がぐらつき始める。
     そして。
    「罪の無い婦女子をかどわかし、よこしまな視線を這わせるなど万死に値する――とっとと灼滅されてしまえ」
     ヘカテーの一撃が、恭平の身体を切り裂いた。


     結局恭平達は、最後まで自らの望むところを貫き通した。
    「……あなたは闇墜ちしてもしかたない人だったんだと思うの」
     麒麟の言葉にも何も応えない。ただ満足そうな顔で、黙って消えていった。
     まあちょっとシリアスっぽく言ってみても結局はただの変態だったんですけどね。
    「……うん。無事倒せて、よかったな」
     色んな意味で。
    「しかしある意味、御しやすいというか分かりやすいというか……ダークネスがこんなのばっかりだったら苦労……」
     そこまで言ったところで、修太郎は先ほどの戦闘……のような何かを思い出す。
     そして。
    「……やっぱ普通のダークネスがいいわ」
     疲れたようにそう呟くのだった。
    「……作戦上もっとも合理的な行動をとっただけのはずなのだが。何故だろうな、切なくなってくる」
     ヘカテーもそれを思い返していたが、すぐに頭を振って止めた。考えても悲しくなるだけである。
    「人間、ダークネス問わず、好み多様。何れ成長、大小、気にせず、推奨」
     思わずガイストがフォローした。
    「むぅ~……お兄ちゃんも女の子の胸ばっかりみとるんやろか」
     ぽつりと向日葵が呟くも、さすがにそうであってもアレほど酷くはないだろうと思う。……うん、大丈夫、ない、と自分に言い聞かせた。
    「思った以上に疲れた……帰ってお菓子食べたい……」
     そんなことも呟きつつも、恒汰としては恭平達の気持ちも分からなくもなかった。ないが……だからこそ。
    (「オレはあいつらと同類にはならない! ならないぞーっ!」)
     心の中で高らかに宣言した。
    「お疲れさまでした。……ダークネス達も後悔がなかったのなら、これで良かったのかな」
     言いつつ麒麟は淫魔の手掛かりなどがあればとその部屋を探すが、特に何も見つからなかった。いや、正確に言えば何もなかったというわけではないのだが……。
    「あー、うん、そうだな……そりゃ写真とかも撮ってるよな……」
     最後に妙な気疲れを感じながらも、とりあえず依頼は無事に終了したのだった。

    作者:緋月シン 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年3月23日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 14
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