レッツタコヤキパーリィ!

    作者:灰紫黄

     たこ焼きとは。
     ダシで溶いた小麦粉に切ったタコを入れて丸く焼いた食べ物である。大阪が発祥の地とされており、関西では非常にポピュラーな料理でもある。タコ以外にも具に天かす、紅ショウガなどを入れることもある。ソースをかけて食べるのもいいが、たっぷりのネギとだし醤油で食べるのもお勧めだ。
     ちなみに京都市の北部ではキャベツを入れるが、本場の人は邪道と感じるかもしれない。
     また、鉄板に多めに油を敷けばカリカリとした食感に仕上がる。

    「どうよ」
    「なにが」
     放課後の食堂。珍しくドヤ顔で口日・目(中学生エクスブレイン・dn0077)が話し始める。向かいに座ってそばをすすっていた猪狩・介(高校生ストリートファイター・dn0096)は訝しげな視線を送る。
    「食堂を借りて、たこ焼きパーティとかどうかなと思って。食べるだけでもいいけど、自分で焼いてみるのもけっこう楽しいものよ」
     最近は出来合いのたこ焼き粉も売っているので家庭でも簡単に作ることができる。もちろん、ダシをとるところから始めてもいい。ちなみにたこ焼き機は関西なら一家に一台はあるとかないとか。
    「たこ焼きに飽きたら、ホットケーキをたこ焼き機で焼くのもいいと思う。一口カステラみたいになって楽しいわ。チョコソースとかシロップとかかけてもいいし」
     というわけでみんなでどう、と目は尋ねる。猪狩・介はからかうように肩をすくめた。
    「それって僕が手伝うことになるっていうか君がやるとろくなことにならないよね。……睨まないでよ。わかったわかった。じゃ、灼滅者達にも声をかけておくよ」
     そう言って彼は食堂を後にする。携帯を手に、誘いのメールを送り始めた。


    ■リプレイ


     ある使命のために灼滅者達は休日の食堂に集まった。使命とはそう、タコヤキパーティである。たこ焼き機に油を敷き、鉄板が温まるのを待つ。
    「平和さん凄いです! 本物のたこ焼き屋さんみたいです!」
    「ほ、褒められても何も出んよ!」
     桐子は【月恋】の仲間と参加。隣で平和が手際よくたこ焼きを焼きあげていく。熱いせいなのか照れなのか、顔が真っ赤だ。そしてその傍から菊乃が次々と平らげていく。楚々とした笑顔からは想像もできない食欲だ。
    「もくもくもくもくもく……」
    「きぃちゃん……よ、よし! 私も負けずに食べる!」
     作り方の分からぬマリデンエールももとりあえず食べ専。菊乃に負けじとたこ焼きを頬張る。でないとなくなりそうだった。
     【治療研究同好会】の五人はちゃんとしたたこ焼きが食べたいということで集まった。聞けば、最近ロシアンたこ焼きをしたばかりであるらしい。だから普通に焼いて普通に食べる。
    「最後に油を足すといいんだっけ?」
    「ええ、いい感じです」
     芽衣のアドバイスに従って、桐はおそるおそる焼いていく。油を多めに使うとカリカリになるのだ。
    「ふふ、かりかりふわふわ~」
     口に運べばスヴェンニーナも笑顔になる。たこ焼きってこういうものですよ。
    「さ、どうぞ。たくさん食べてくださいませ」
    「甘党には天国だな」
     たこ焼きの後は充がチョコでホットケーキをたこ焼き風にトッピング。優雅な笑みは、さすが執事見習いである。直人は山盛り焼いて、たっぷりの蜂蜜でいただく。男らしい食べっぷりだった。
     Fは家族(Family)のF。【circle of F】の面々は和気あいあいとたこ焼き機を囲む。
    「ふふふー、赤い悪魔再びもとい赫い悪魔にバージョンアップ!」
     杏はイイ笑顔で細切れにした赤いものをたこ焼きに入れていく。辛いのもいっぱい。宿敵トマト入りを皿に乗せられた遥翔は逆に顔色を青くする。やっぱ悪魔は伊達じゃなかった。その間にみんなでロシアンたこ焼きを焼く。というか普通の少ないです。
    「辛っ!? だれか……みず、を……」
    「これは……熱っ」
     口を押さえてぷるぷる震える赤兎。織緒の目にも涙が浮かぶ。さすがに溶けた飴玉は熱すぎたか。飴玉を入れた張本人の李はチーズ入りを引き当て、困り顔。どうせなら、もっと変わり種がよかった。美味しいけど。
    「うう、またリアクションとりにくいものが……」
    「たこ焼きたこ焼き、家族でたこ焼きってなんだか良いわね♪」
    「せやな。こういうのもええもんや」
     笑顔でコンビーフ入りたこ焼きを頬張る紫苑に、伊織が頷く。さりげなく杏に気研究がいかないようにガードしていた。


     恋人同士で参加の雪花とジネットは鉄板も負けるアツアツっぷり。なんたって初デートである。ちょこんと膝の上に座ったジネットは脚をパタパタ揺らす。あーんしてホットケーキを食べさせてやると、照れて帽子で顔を隠す。すると雪花は頬を撫でて、口を耳元に近付けた。何かをささやけば、ぽんと火が点いたようにジネットの顔が赤くなる。見ている方が恥ずかしいくらい、甘~い空間であった。
    「言っておくが、私は意外とこういうの上手なんだぞー」
     言葉通り、弥咲は綺麗にたこ焼きをひっくり返していく。技を盗むべく、遙がその手際をじっと観察していた。【Outsiders】の面々だ。
    「タコ以外も試さねー?」
     大阪のたこ焼きの十個に一個はタコが入っていない、と臆面もなくガセを言う戒。どちらかというと、本場は一個に二個タコが入っている方向の雑さである。
    「外側が芳ばしく、中はあつあつのとろとろで素晴らしい」
     それらしい感想を呟いて、にこにこ悠樹は笑みを浮かべる。しかし、彼のカメラはあとでいじるネタを探してレンズを光らせている。抜け目のないことである。
    「えーと、こうか!」
     遙は見よう見まねでひっくり返すが、まだ焼きが足らず、崩れてしまう。けれど何回か繰り返すうちにコツを覚えたようで、みるみるうちに上達していく。
    「モグモグ……ふむ、何をやってるんだかな」
     たこ焼き初体験のヒラニヤは炭酸飲料を片手に食べ専である。いろんな味を試そうとして、赤いソースに撃沈した。悠樹が用意したソースだった。
     【パンドラのお菓子箱】で集まった四人はロシアンたこ焼き。バクダン(超絶辛いからし)入り。
    「じゃあ、せーのでとるよ」
     きららの号令に従い、四人はたこ焼きを自分の皿へ。
    「はふはふ、おいしい♪」
    「ふぅ、俺は大丈夫だったよ」
    「僕も大丈夫」
     たこ焼きを口に入れた大輔はほっと一息。外れだ。続く江夜も笑顔でぺろり。まだまだ食べ足りないのか、追加を焼くために生地を注ぐ。残るは乃愛だけ。
    「!!!」
     あまりの辛さにがっと立ち上がる。周りが何事かと視線を向けるが、本人はそんなことは気にしていられない。両手を握りしめて、不憫なくらいに震えていた。
     同級生のケイトと創、先輩の結季は仲良しトリオでホットケーキパーリィ。食べるより焼くのが好きというケイトはもっぱら焼き専である。結季が大量に用意した生地を使ってホットケーキボールを量産していく。みるみるうちに皿には山が出来上がった。
    「タクサン食べてネ」
     創は焼き上がったホットケーキにチョコソースで絵を描いていく。しかしその途中で結季が横からかっさらう。不敵な笑みを浮かべる結季。
    「ふふふー、何個食べられるか勝負だよ創くん!」
    「よぉし、勝負なら負けないぞー!」
     創もノリノリの様子で、次々とホットケーキを口に運ぶ。
     雛子は仲の良い熊娘と参加だ。小動物ちっくな二人がそろうとそれだけで微笑ましい。
    「くまくま、あ~ん」
    「べ、べつにいいクマ……じゃあ、あ~ん」
     たっぷりマヨネーズをかけたたこ焼きをあーんする雛子。熊娘も照れながら口を開ける。でも目を閉じたまま近づくものだから、見事にごっつんこ。熊娘が雛子にのしかかってしまった。
    「わたしはおいしくないよー!?」
    「ご、ごめんクマー!」


     クラブ【人部】の四人は探り探りで焼き始める。ピックを操る手つきもどこか覚束ない。適当にいろんなものを入れていたら、いつの間にかどれに何を入れていたのか分からなくなって食べるのも探り探りに。
    「…………」
    「蛙石さんなんで一個だけ凄い回してるんですか!」
     人とぶつかりたくないのか、徹太は一個を延々とクルックル回し続けていた。
    「あっあっ、ヤバい妖怪みたい。あっ、ちょ、誰か助けてマジ」
    「何すかそれ、どうやったらそうなるんすかっ。ほら俺の綺麗っすよ……ごふっ!!」
     生地が柔らかすぎたらしく、周のたこ焼きはぼろぼろに崩れてしまった。中身と相まってもうたこ焼きじゃないよこれって感じに。他人事だと思って時春はゲラゲラ笑って見てるだけ。でも口にしたたこ焼きは大量の柚子胡椒入りである。ちなみに、普通のたこ焼きを食べられたのは幾彦だけだった。
     昴は普通に油を敷き、じゅっじゅとたこ焼きを焼く。黒斗がたこ焼きは食べたことがないらしいので、美味いたこ焼きを食べさせてやりたい次第である。タコに天かす、ネギに紅しょうが。キャベツを入れるか聞くと、任せると返事が返ってくる。ではまずは普通に。
    「あ、熱いから火傷には注意しろよー」
    「よっし、頂きまーす……って熱っ!?」
     言った傍から、水をかっこむ黒斗。昴も思わず苦笑する。それからいくつか変わり種も試したが、やっぱり普通が一番だと落ち着いた。たこ焼きに飽きれば、ホットケーキも焼いてみる。チョコソースやメープルシロップで食べると懐かしい味がした。
     じゅじゅーと生地の焼けるいい音がする。目に、鼻に、耳に美味い。さすれば口にも上手い。関西人の腕の見せ所である。ひらりが持ってきた鉄串で一子は腕前を披露する。
    「はい、あ~ん」
    「むぐむぐ……ん~~!」
     一子は焼きたてアツアツカリカリをひらりにあーんしてやる。熱さのあまり涙目になるが、それでもやっぱり美味しい。コンニャク入りで食べごたえも十分である。たくさん食べてもタコが余ったので、一子は強力粉でいか焼き風たこ焼きを焼く。ソースと混む五個の組み合わせが、何とも言えない大阪の味である。
     【股旅館】の中でも本場出身の爽太の盛り上がりは熱い。
    「俺、たこ焼き作りは子供の頃からやってたから本当に得意なんすよ!」
    「そーたの料理の腕前で依然酷い目にあったからな……」
     爽太の主張はあまり信じていないようで、くるりとサザキはおそるおそるといった様子たこ焼きをで口に運ぶ。途端、半信半疑の目が見開かれた。普通に美味しかった。
    「おおお……満足の行く改心の作品に焼き上がったっす!!」
     綺麗に焼き上がったたこ焼きに感嘆の声を上げる虎次郎。しかし瞬時に式夜とくるりに掠めとられた。
    「オススメはクリームチーズ餅! はちみつかけて召し上がれ?」
     サザキはプレーンとココアの二種類の生地でホットケーキを焼く。生クリーム、チョコ粉砂糖、エトセトラ……デコレーションも完備だ。
    「なんだろ、丸ドーナッツに似てる気がする!」
     ピックを持ってきた割に食べ専の式夜。マイペースにたこ焼きもホットケーキももっちゃもっちゃ食べていた。


     気の置けない友人同士の徹也と立夏は落ち着いた様子でたこ焼きを焼いていく。焼ける音と匂いが穏やかなひと時を彩る。
    「美味く、作成出来ているだろうか?」
    「へへ、やっぱ徹やんのたこ焼きが一番美味いわ」
     定番のチーズ入りはもちろん、餅とイカも入れる。出汁醤油とポン酢も完備で、いたれりつくせりだ。普段は食事に気をかけない徹也も存分にたこ焼きを楽しむ。やはり友との食事は楽しいものなのだ。
    「どうした?」
    「いや、こういう日常が幸せっていうんやろなぁって」
     空気が、ひたすら柔らかい。
     【猪鹿蝶】の五人は変わり種と普通のを同時に作ることに。
    「一度も食べたことがないって珍しいな……そういえば帷はクォーターだったか」
     まずは千早が普通のたこ焼きを作ってみせる。味の要は『だし』だ。これがなくてはただの小麦粉とタコである。見るのも食べるのも初めてな帷はじっと見詰める。
    「俺にもできるでしょうか……」
     慣れない手つきでピックを操る。形は不格好かもしれないが、味には問題ないはず。
    「ワビサビっていうでしょう? わさびは両方だもの、きっと美味しいと思うのよ!」
     自信満々に自分が焼いたたこ焼きを見せるオデット。見た目では分からないが、たこわさ味のようだ。
    「……ん? たこわさ? ……思った通りの奇想天外っぷりだが思いの外悪くねぇ」
     一口食べた華丸が感想を漏らす。爽やかなわさびの香りが鼻を抜け、あっさりした味わいだ。
    「こういう風にみんなで何か作って食べたりすることって中々なかったので、私も凄く楽しいです」
     由乃が焼いたのはコンニャク入りのたこ焼きだ。みんなで交換して試食すれば、それぞれの味が口に広がる。たこ焼きの後は、華丸が特製デザートたこ焼きを披露してくれた。
    「『たこやき』かー。……たこ!? あくまのさかなじゃねーか!?」
     シャルロッテに限らず、タコに苦手意識を持つ人も少なくない。こわごわといった様子で口に入れると、熱さに口の中を火傷しそうになる。
    「うめーけどたこののろいがあってきけん! あたい、おぼえたぞ!」
     唐辛子、イカスミ……と変わった材料を一通り用意したニーナはドヤ顔で言う。
    「ボクの用意したこのロシアンたこ焼きに当たりはないのだーはっはっはー!」
     目が食べると、辛さで火が出るかと思った。涙目になった目と視線が合うとニーナもぱくり、結局全く同じ目に遭った。そこに琉希が桜茶を淹れてくれた。ありがとう、と二人とも茶を飲む。
    「いやはや、桜の花を使ったジャムとはいったい、誰が考えたんでしょうかねぇ……」
     お手製の桜ジャムでホットケーキを食べる琉希。屋内の食堂にいるのに、彼の背後には桜吹雪が見えたとか見えなかったとか。
    「ねぇ、一緒に食べない?」
    「喜んで!」
     まどかの目の前では美味しそうなたこ焼きが焼き上がっていた。下調べも下ごしらえも完璧なこだわりの逸品である。介も是も非もなく飛び付いた。
     こうして、灼滅者達は生地がなくなるまでたこ焼き作りとホットケーキ作りを楽しんだ。明日からはまた戦いの日々かもしれないが、これだけ元気なみんななら大丈夫だろう。

    作者:灰紫黄 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年3月29日
    難度:簡単
    参加:56人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 8
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