目玉焼きこそ、世界最強!

     神凪・朔夜(月読・d02935)は、こんな噂を耳にした。
     『目玉焼きに拘りすぎて他の卵料理を排除する輩がいる』と……。
     しかもエクスブレインの話では、この一件……都市伝説が絡んでいるようである。
     至高の料理、目玉焼き。
     かつて、その焼き方によって国を二分するほどの争いがあったとされる、その料理は、多くの者達……特に王族達の心を虜にしたと言われている。
     そのため、究極の卵を求めて、世界に散った勇者達がいたのも、また事実……。
     ある者は山で巨大な卵と戦い、そしてまたある者は、海の中に眠る卵の花を求めて溺死した。
     皆、究極の目玉焼きを作るため、散っていったのである。
     そんな胡散臭いでっちあげ設定が噂となり、生まれたのが都市伝説である。
     そのためか、都市伝説は王族スタイル。
     何となくアラブの石油王チックな、その外見は、いかにも金を持っていそうな雰囲気満載。
     現在、都市伝説は卵料理を排除すべく、近所の食堂を襲っている。
     そこには金の匂いを嗅ぎつけたチンピラ達もおり、危険度MAX。
     ヤバイ空気がプンプンである。
     しかも、卵を手に入れるため、国をひとつ滅ぼしたという噂があるためか、無駄に派手でぶっといビームを飛ばしてくるらしい。
     ただし、見た目だけ。一瞬、死ぬ! 時が見える! ああっ、今までの出来事が走馬灯のように……、となるかも知れないが、思ったよりも痛くない。
     だからと言って、油断は禁物。
     臆病者が食らうとショック死、必至。
     ……くれぐれもご注意あれ。


    参加者
    アリシア・ウィンストン(美し過ぎる魔法少女・d00199)
    紫苑・十萌(桜花幻影・d00461)
    神凪・朔夜(月読・d02935)
    天城・優希那(の鬼神変は肉球ぱんち・d07243)
    楪・奎悟(不死の炎・d09165)
    南雲・響(マシーナリーヴァンパイア・d12932)
    斎場・不志彦(黒い人間賛歌・d14524)
    カテラ・カトラ(不思議系・d15263)

    ■リプレイ

    ●最強の料理
    「目玉焼きってアレだな。何をかけるかでいつも議論になるやつだろ?俺は塩をかける派。まぁ、他の卵料理も食いてぇし、スパっと片付けちまおうぜ」
     楪・奎悟(不死の炎・d09165)は仲間達と共に都市伝説が確認された場所に向かっていた。
     都市伝説が現れた事によって、町から目玉焼き以外の卵料理が姿を消した。
     おそらく、近隣の住民達でさえ、『たかが、卵料理程度で』と思っていたかも知れない。
     それは極一部にしか影響がなく、とても些細な事であったが、それでも確実に周囲の影響を及ぼしていた。
    「目玉焼き大好きな都市伝説さんですかぁ~。目玉焼き、おいしいですよね! 私は醤油派ですよ~」
     そう言って天城・優希那(の鬼神変は肉球ぱんち・d07243)が話題を振れば、南雲・響(マシーナリーヴァンパイア・d12932)が、
    「ちなみに私は片面焼き派! 両面焼いちゃうと黄身のところが破れたり、硬くなって半熟じゃなくなるから、あまり好きじゃないんだよねぇ~」
     と答え、紫苑・十萌(桜花幻影・d00461)が
    「私は基本、塩胡椒でシンプルにいただくのが好きですが……。場合によっては黄身を少しだけ割り、醤油を垂らすのも好きです」
     と述べる。
     目玉焼きひとつをとっても、これだけバリエーションがあるのも驚きだが、その拘りを語れば、いくら時間があっても足りなかった。
    「確かに、最強の卵料理は、目玉焼きかも知れませんね。下にベーコンが敷いてあると、なお嬉しいですし」
     脳裏に目玉焼きを思い浮かべ、カテラ・カトラ(不思議系・d15263)が淡々と語っていく。
     ある意味、目玉焼きは世界。黄身は世界の中心!
     だんだん、そう思えてきた。
    「やれやれ、目玉焼き以外にも美味しい卵料理はあるんじゃがのぅ……」
     少し寂しそうにしながら、アリシア・ウィンストン(美し過ぎる魔法少女・d00199)が溜息をもらす。
     都市伝説がどうしてそこまで目玉焼きにこだわるのか分からないが、おそらく本人ですらその理由が分かっていない。
     何故なら、都市伝説は噂によって作り出された存在。故に、きちんとした理由もなく、行動している場合が多かった。
    「それにしても、都市伝説がでるぐらい目玉焼きが珍重された料理だったとは……」
     未だに信じられない様子で、神凪・朔夜(月読・d02935)が資料に目を通す。
     朔夜が聞いた噂はほんのキッカケでしかなかったため、詳しい事までは分からなかったが、資料を見る限り金に匂いを嗅ぎつけたチンピラ達も加わり、かなり面倒な事になっているようである。
    「穏便に済ませようと思ったのに、由々しき話だ」
     険しい表情を浮かべながら、斎場・不志彦(黒い人間賛歌・d14524)が頭を抱えた。
     都市伝説だけならまだしも、チンピラを相手にするとなると、色々と面倒になる。
     チンピラといえども一般人。
     例え、どんな理由があったとしても、命を奪う事など出来はしない。
     だからと言って、ここで悩んでいても埒が明かない。
     そのため、不志彦達は食堂の店主に事情を話し、都市伝説を待ち伏せする事にした。

    ●チンピラ
    「おいおい、ここの店は目玉焼き以外の卵料理も出すのか? そんな事をしたら、どうなるか教えてやろうか、ゴルァ!」
     しばらくして、チンピラ達が店に現れた。
     チンピラ達はあれこれ難癖をつけ、店の店主から金を搾り取る気満々であった。
    「何だか物凄く強気なところ申し訳ないんだけど、怪我をしないうちに返ってくれるかな?」
     愛想笑いを浮かべながら、響がチンピラ達の説得を試みた。
    「なんだ、お前らは? 俺達が怪我をするだと!? 笑わせるな。怪我をするのは、お前達の方だろうが!」
     チンピラ達は調子に乗っていた。
     おそらく、自分達の勝利を100%……いや、それ以上に確信しているのだろう。
    「……雑魚に用はない。分かったら、早くここから去るのじゃ」
     アリシアがチンピラ達をジロリと睨む。
    「おお、怖い、怖い……って、言うと思ったか、コラァ!」
     その言葉を合図にチンピラ達が殴りかかってきた。
     それに気づいた不志彦が手加減攻撃で倒していく。
    「もう終わりか?」
     床に突っ伏したままのチンピラ達を見下ろし、不志彦が疲れた様子で溜息をもらす。
     だが、チンピラ達もこれで終わらせるつもりはないらしく、隠し持っていたナイフを握り締めて再び襲い掛かってきた。
    「あらぶるゆきなのぽーず!」
     すぐさま優希那が殺界形成を使うが、チンピラのナイフが頬をかすり、あっという間に戦意喪失。どうやら、髪の毛が数本切られた程度のようだが、それでも心臓が止まるほど驚いた。
     しかも、冷静になって先程の事を思い出してみると、恥ずかしさで顔が真っ赤になった。
    「……まったく。こんな物騒なものを振り回して」
     不機嫌な表情を浮かべ、朔夜が当て身を放つ。
     その一撃を食らってチンピラが崩れ落ち、床とキスをしたまま動かなくなった。
    「これで分かっただろ? 怪我をしたくないのなら、ここから去れ。命あっての物種だろ?」
     警告混じりに呟きながら、奎悟がチンピラ達に視線を送る。
     それでも、チンピラ達は怯えた様子で、ナイフを握り締めたまま。
     もしかすると、背中を向けたのと同時に攻撃され、命を奪われてしまうのではないかと心配しているのかも知れない。
    「私としてもこのような手荒はしたくないので素直にお帰りいただけませんか?」
     それに気づいた十萌がチンピラ達の緊張を解すようにしてニッコリと笑う。
     その途端、チンピラ達がナイフを捨てて、脱兎の如く逃げ出した。
    「一体、これはどういう事だ? 俺は食堂の埃を払っておけと命令したはずだが……、埃どころか、ゴミだらけじゃねえか」
     そう言って都市伝説がチンピラと入れ替わるようにして、店の中に入ってきた。
     都市伝説は両手に光り輝く宝石を散りばめた指輪をはめており、いかにも金を持っていそうな雰囲気を漂わせ、ハマキを口に咥えていた。
    「さあ覚悟して下さい、目玉やキング……ブフッ」
     その言葉にカテラが一人で大受けした。

    ●大富豪……風
    「まあ、キングである事には間違いないが……。邪魔だ、退け」
     次の瞬間、都市伝説の両手から無駄に派手でぶっといビームを飛んできた。
     そのビームは一瞬にして響を包み、今までの出来事が早馬の如く駆け抜ける。
     ……新しい出会い。相棒や親友達との再会。
     おかあさんが増えたり、自分の知らない間にひびきちゃん人形が作られて商店街でプチブレイクしたり……。
    「……って、納得いくかぁぁぁあ――!! 私の人権はどこいった――!! ふかぁ――!!」
     ハッとした表情を浮かべ、響が八つ当たり気味に都市伝説を殴る。
    「ば、馬鹿な! 俺のスペシャルアームストロングビームが効かない……だと!?」
     都市伝説が信じられない様子で、響に殴られた頬を押さえた。
     ほんの一瞬、まっ黒焦げになったように見えたが、まるで大袈裟な汚れ落としの実演販売の如く、いつの間にか綺麗になっていた。
    「おい、ビームは見かけ倒しなのかよ……? これなら、俺の炎の方が、上手く目玉焼き焼けるぜ?」
     心底ガッカリした様子で、奎悟がレーヴァテインを仕掛ける。
    「い、いや、これは誤解だ。いつもは、もっと……。いや、さっきは本気を出していなかっただけだ」
     その一撃を食らって傷口を庇いつつ、都市伝説が必死になっていい訳をする。
     まだ本気を出していない。今から本気を出そうと思っていたところ。お前のせいでやる気が失せちまったじゃないか、とお約束の言葉を並べ、都市伝説がしどろもどろになった。
    「見掛け倒しなら出直してこい!」
     イライラとした様子で、十萌が都市伝説に閃光百烈拳を叩き込む。
    「ちょっと待て! 今出すところだ!」
     まるで客を待たせた蕎麦屋の応対の如く答えた後、都市伝説が思わせぶりにポーズを取った。
     何やら気を練っているようにも見えるが、そもそもこういった前フリが必要だったのか疑わしいほど、いま考えた感が満載であった。
    「ところで、あなたは目玉焼きに何をかける派なんですか? ちなみに私はソース派です」
     待っている時間が勿体なかったため、カテラが都市伝説に話題を振った。
    「いや、ちょっと待て」
     都市伝説は精神集中をしている最中だった。
     眉間に皺を寄せ、何やら呪文を唱え、いかにもそれっぽい。
     霊犬のラシードもきちんとお座りをして待っているが、なかなかチャージが終わらない。
    「目玉焼きも好きですが、卵焼きもプリンも大好きなのです! ところでプリンも卵料理に含まれますかねぇ? プリンはデザートで別枠なのでしょうかねぇ?」
     都市伝説に語り掛けながら、優希那が制約の弾丸を撃ち込んだ。
    「プリンなど戦力外だァ!」
     優希那の攻撃を避けつつ、都市伝説がキッパリと言い放つ。
     その言葉にショックを受けた優希那は、半ベソになりながら都市伝説に攻撃を仕掛けていく。
    「ちなみに、俺はハーブ&ソルト派だぜえ」
     続いて不志彦が待ちきれない様子で、オーラキャノンを撃ち込んだ。
     その一撃を食らった都市伝説が『チャージが終わるまで待ちやがれ!』とブチ切れた。
     どうやら、都市伝説のビームはチャージが終わるまで絶対に動いてはいけないらしく、顔を真っ赤にして怒っていた。
     おそらく、普段はチャージが終わるので、チンピラ達がガードしていたのだろう。
    「貴様が出たのも……オレも責任の一端を担ってんだろうな。なら、オレの手で灼滅してやるよ!! 覚悟しな!!」
     都市伝説と対峙しながら、朔夜がビシィッと言い放つ。
    「そう簡単に死んでたまるか。俺は目玉焼きで世界を統べるその日まで滅びる訳にはいかんのだァ!」
     それと同時に都市伝説の両手から放たれた強烈な一撃。
     それはほんの一瞬だけ眩く輝き、線香花火の如くポトリと落ちた。
    「食に対する偏見は天が許しても妾が許さぬ!」
     手持ちの杖を素早く向け、アリシアがマジックミサイルを放つ。
     それに合わせて朔夜が鬼神変を仕掛け、都市伝説にトドメをさした。
    「グッ……、グホッ! こんなはずでは……。こんなはずではァ!」
     そして、都市伝説の断末魔が辺りに響いた。
    「アラブの目玉焼き王……貴方もまた求道者だった……! でも、美味しい物を粗末にする子は滅っ(めっ)だよ♪ ……というわけで、これからスーパーのタイムセールに出かけて激安卵さんを買ってきます! 正直、都市伝説よりタイムセールの時のおばちゃん達の覇気の方が全然怖いんだけどにゃ~……」
     都市伝説が消滅した事を確認し、響が慌てた様子で走り出す。
     タイムセールはいわば戦場。一瞬、一秒の差が勝敗を分ける。
     それ故に、立ち止まっている暇などなかった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年3月27日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
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