春の訪れと応援服

    作者:黒柴好人

    「言語というものはだな兄弟」
    「どうした、とてつもなく哲学的な予感だが」
    「単一の音の組み合わせだ」
    「そりゃそうだろう。『あ』とか『い』とかが組み合わされば言葉になろう」
    「例えば愛知という言葉があるな、兄弟」
    「愛知県の愛知だな。工業が盛んであると授業で習う、あの」
    「うむ。これは『あ』と『い』と『ち』の組み合わせだな」
    「紛うことなきそれらだ」
    「『い』はノイズとし取り払うとして……兄弟、逆さから読んでみろ」
    「いを除いて? ……ち、あ……チア? ま、まさか!!」
    「そうだ、チアリーディングのチアだ」
    「何だ……単語の順番が変わるだけでどうしてこんなドキドキするんだ……!?」
    「それが言語の不思議な所だ」
    「チア、チア……うう、連呼すればする程愛おしい!」
    「と、このようにチアリーディングに対して異様なまでの感情を爆発させるとチア服を着た少女の幽霊が出るとの噂があるのだが……試して、みないか?」
    「断る!」
    「何ッ!?」
    「俺、学ラン着ている女の子の方が好みだから」
    「そっか」
    「うん」
     
    「スク水、ブルマときたら次はチア服ですぅ」
    「そうなのかなと思いながら調べてみたら、そうだったよ!」
     風野・さゆみ(自称魔女っ娘・d00974)の理論に間違いはなかったと須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)が感心したように頷いている。
     そう、チア服に関連する都市伝説が現れたというのだ!
     ……今更ながら、都市伝説とは何でもアリなのだろうか。
    「でも、これまでは絶滅しそうな服ていうのが共通点だったけど、チア服って今でも普通によく見るよね?」
    「そうですねぇ。応援されたいけど応援される要素のない人たちの悲しみの感情が基になっているんじゃないでしょうかー」
    「そっか!」
     チアリーダーにあんな応援やこんな応援をしてもらいたい! あわよくば名前をローマ字で1文字ずつ呼んでもらいたい!
     だが、帰宅部だ。もう青春時代はとうに過ぎ去った。そもそも男子校だ……などの鬱積した負の感情から生まれ出た都市伝説なのだろう。
     きっと。
    「都市伝説が出る場所はとある高校の体育館かな。2階建てになっていて、1階は色々なスポーツができる大きなスペースやステージ。2階はちょっとした応援席とか、小さめのフロアとかがある割りと豪華なところかも」
     この講堂兼体育館の館内であればどこでも出るようだ。
     勿論、戦闘を考えれば1階フロアが妥当だろうが……。
    「みんな知っているとは思うけど、都市伝説はとある条件を満たさないと出てこないようになっているよね?」
     それは都市伝説ごとに異なりネタには困らな……もとい、他のダークネスよりも一般人への被害が少ないように思える。
     果たして今回の条件とは。
    「チアリーダーにすっごく萌えちゃえばいい!」
     チアリーダーに……萌える!
    「この中の誰かがチア服を着たりして、それを他のみんながあれこれ褒めたりすればいいのかな」
     とてもシュールな光景になりそうだった。
     特に人数は決められていないようで、それぞれの配役についてのバランスは灼滅者に一任される事になる。
    「さて、気になるのはどんな都市伝説が出てくるのか……だよね」
     敵の戦力を知る事は、戦闘において何よりも重要な情報だ。
    「なんと、すっごく可愛いチアリーダー風の女の子が出てくるんだって!」
     ……外見も、重要な情報だ。
     まりんが言うには、対象はセミロングの髪を片側でまとめ、白を基調とした所々に青や黄色の意匠やラインを施されたシェルトップにスカートといった格好をしているらしい。
     チアリーディングといえば、大抵は複数人でのコンビネーションを駆使した多彩な動きで選手を応援したり競技を行ったりするものだが、この都市伝説は1体のみ。
     残念なような、脅威が少なくて安心なような。
    「強さはまぁまぁかな。どの距離でも攻撃手段を持っているから気を付けないとダメだよ」
     純粋な戦闘力も気は抜けないが、チア服にも気を取られないように注意したい。
     もう一度告げよう。チア服に気を取られてしまわないように注意したい。
    「それにしてもチアリーディングってすごいよね。どうしてあんなにぽんぽんジャンプできるのかな」
     そう言いながらまりんはぴょんぴょんとその場でジャンプした。
     そんな様子を一言で表すと、こうなる。
     ……可愛かった。


    参加者
    福沢・チユキ(黄金の旋律・d00303)
    シュラハテン・ゲヴェーア(屠殺銃・d00837)
    風野・さゆみ(自称魔女っ娘・d00974)
    東雲・由宇(神の僕(自称)・d01218)
    龍宮・巫女(貫天緑龍・d01423)
    狩野・翡翠(翠の一撃・d03021)
    日野森・沙希(劫火の巫女・d03306)
    水樹・亜璃子(重低音歌姫(アニソン限定)・d04875)

    ■リプレイ

    ●「ちあ」って書くとKawaii
    「案内と解錠、ご苦労様」
    「終わったら鍵を返しに行くわ……じゃなくて、行くぜ!」
     男子制服を着た線の細い2人を、宿直の若い教師は「後は頼む」と軽いノリでその場を後にした。
     実のところ男装した女子である福沢・チユキ(黄金の旋律・d00303)と東雲・由宇(神の僕(自称)・d01218)はお互いに目配せすると体育館の玄関扉を引き開けた。
    「それにしても効果絶大ね、このプラチナチケットは」
    「それじゃうまくいった事を連絡っと」
     由宇が連絡した相手はすぐに現れた。
    「そんな隠れていなくても、水樹さんも一緒についてくればよかったの」
     ダンボールを頭に被りながら。
    「に」
    「潜入アクションみたいで楽しそうだったもので。ちょっとした冒険ですよね」
     水樹・亜璃子(重低音歌姫(アニソン限定)・d04875)はいそいそとダンボールを仕舞いながら照れ笑いを浮かべた。
     この学校のジャージを着て、さらに三つ編みという格好をしているが、それで誤魔化せるのも下校時刻まで。以降はひっそりと潜伏していたらしい。
     とにかく一行は埃っぽい独特の香りが漂う体育館へと足を踏み入れた。
    「隠れるにしても闇纏いとかを使えばもっと楽だったような気もするけれど、ね」
     体育館の様子が見える位置で闇纏いをして待機していた龍宮・巫女(貫天緑龍・d01423)もまた、苦笑しながらチユキに続いた。
     1階のフロアには、ボール等の衝突により破損を防ぐべく鉄製の格子が張られた窓ガラスからうっすらと月明かりが差し込んでいる。
    「少し幻想的にも思えるわね」
    「そうね、しんと静まり返っていて――ん?」
     巫女の感慨深そうな言葉に同意しようとしたチユキがふと上を見上げる。
    「は~い、到着ですよ~」
     薄暗い世界を斬り裂き、流星のように舞い降りた……文字通り、空飛ぶ箒に乗って2階フロア方面から降りてきた風野・さゆみ(自称魔女っ娘・d00974)の肩、そして箒の柄の先端にはそれぞれに可愛らしい猫がちょこんと座っていた。
     まるで魔法少女の使い魔のような2匹はぺこりとお辞儀をしながら床へと下りた。
     瞬間、猫たちは一瞬にして少女の、狩野・翡翠(翠の一撃・d03021)と日野森・沙希(劫火の巫女・d03306)に姿を変えた。
    「猫の姿で箒に乗るのも楽しいですね」
    「本当、ちょっぴりわくわくしちゃいました」
     アニメのような登場演出に、亜璃子は満足層に頷いていたという。
    「2階の窓には格子がなくて助かったです~」
    「偶然、窓も開いていましたしね」
    「窓が、開いていた?」
    「はい、全開でしたよ?」
     さゆみたちの言葉に巫女がはてと首を傾げる。
     2階フロアの窓は、巫女が待機していた場所からも確認できていた。下校時刻を過ぎてしばらくは閉まっていた気がするが。
     その答えは意外な所から出てきた。
    「私が開けておきました」
    「「「!?」」」
     にょっ、と吹き抜けになっている2階フロアの手すりから目だけを覗かせるのはシュラハテン・ゲヴェーア(屠殺銃・d00837)。
    「もしかして、私たちがプラチナチケットで入ってくるよりも前に?」
    「はい。戸締りされる前から潜伏していました」
     由宇の問いに首肯するシュラハテン。
     どうやら旅人の外套を使って、随分前から2階の隅っこで待機していたようだ。
     そして、空中からのアプローチを試みるさゆみを発見し、窓を開け放ったというわけだ。
    「そ、そうだったの」
     1階に下りてきたシュラハテンは再びこくりと頷いた。
     ともあれこれで灼滅者全員が揃った。後は『作戦』を遂行するのみ。

     少しの後。
    「こげん可愛いか人達のチア姿見れるとか眼福眼ぷ……」
     由宇は両手を頬にあて、「はあぁぁぁん」ととろけるような表情でそれらを見ていた。
    「ゲフンゲフン。あー、みんなとっても似あっているよ!」
     が、ギリギリのところで自分の役目を思い出し、表情と口調を整えた。
     由宇はまだ男装の身。今この時はイケメン男子でなくてはならない! と心の中で喝を入れる。
     作戦は順調である。
    「本当に。チアの人……なんて素敵なんでしょう……」
     その隣ではうっとりとした様子で沙希が両手を組み、その光景を見ていた。
     シュラハテンもまた黙々とカメラを構え、眼前の目標を次々とファインダーに収めている。
     時には接写、時には遠距離からと、無心にシャッターを切り続けている。
     レンズ、そして称賛と羨望の気持ちが織り交ざったような視線を向ける沙希の瞳には一体何が映っているのか。
    「はーい、それじゃ今度は2人ペアで背中合わせにくっついて……そう、腕を組んで背中を伸ばしましょうー!」
     ツインテールにまとめた髪を流し、亜璃子が周囲に声を掛けた。
    「うぐぐ……く、くるしいです~」
     亜璃子に持ち上げられ、軽くエビ反りの形になっているさゆみが手をぺしぺししている。
    「よっ、と。どう、大丈夫?」
    「はい、大丈夫です。背骨が伸びて心地良いくらいです」
    「体育の時くらいしかしない動きだから、よりそう感じるのかもしれないわね」
     巫女の背中に乗る翡翠はどこか気持ちよさそうに体を預けている。
     それは仲睦まじい姉妹が楽しそうに運動をしているようにも見える。
     いや、それよりも特筆すべきは……彼女らが皆、ミニスカートである事……そして、身体にフィットした服装をしているという景観にある。
     すらりと伸びる脚が宙に浮き、そしてしっかりと強調された少女たちの山脈が――。
     い、いやいや! そうじゃない。そうじゃあないんだ!
     それらの服装はチアリーディングの制服である事が特筆事項なのだ!
    「この場に男子がいなかった事が悔やまれるわね……」
     そんなドリームワールドを目の前に、チユキがふと思いふける。
     それを言うなら男子がいなくて良かった、となるだろうが。
    「この準備運動だけで、どれだけお金にできたかしら」
     人生で一番に大切なものは金だと声を大にして宣言できるチユキはブレない。
     チア服が輝くのは演技の時だけではない。
     その真価は、準備運動……とりわけ柔軟運動中であると亜璃子は知っていた。
     あのアニメも、ゲームも、マンガも。どれを見たって大抵柔軟運動のシーンがあるではないか!
     露出度が高く、生地も軽量なこの服で開脚前屈を、あるいは前傾姿勢での屈伸、伸脚をしたらどうなるか。
    (「その萌度たるや想像を遥かに超えるものになる!」)
    「い、いつまで背中でゆさゆさされていれば……いいのですか~……」
     人知れず亜璃子がほくそ笑む中、さゆみはずっと背骨を伸ばしていた。

    「えっと、どんな応援すればいいですか?」
     チア服を着た翡翠たちが横一線に並んでいる。
    「もうその場に立ってるだけでも……ハッ! いや、全員とても似合っているもので、つい」
     とろけかけた表情を正す由宇。
    「このユニフォーム、龍宮さんに用意してもらったものでしたね」
     軽くスカートの裾をつまむ翡翠。どう見てもジャストフィットであり、間違いなく翡翠たちの魅力を引き立てている。
     白地に情熱的な赤のラインが入ったシェルトップにスカートという出で立ちで、都市伝説に対抗するようなデザインに仕上げたと巫女は語っていた。
     ちなみに巫女のチア服には緑色の龍の意匠が施されている。
    「でも~、わたしたち身長やサイズなんて巫女さんに教えましたか~?」
    「確かに妙ですね。さっき渡されて何の疑いもなく着ましたが……」
     さゆみと亜璃子は揃って眉根を寄せた。
    「まぁまぁ、そのあたりは気にしないで?」
     深い追求は身を滅ぼす事になりそうだ。
    「では、あらかじめ勉強しておいたあのフォーメーションからやってみましょうか」
     亜璃子の提案に、チア一行は映像で観た演技を思い出した。
     そう、スタンツと呼ばれる一人を持ち上げ、直立させる技だ。
    「それじゃ、よろしくお願いするのです~」
     持ち上げられるのはさゆみ。
     リズムに合わせ、
    「「「いざ!」」」
    「えっ、いざって掛け声おかしくないですか~……って、おお~?」
     3人の中心で勢い良く飛び出すさゆみ。脚は固定されているのでそのまま飛び出す事はないが。
    「わ、と、こ、これはぐらぐらするのです~」
     バランスの維持は上に立つ者の力量に依る所が大きい。
     ベースがエクステンションし、高度が増すにつれてその負担はさらに大きくなり。
    「「「あ」」」
     次の瞬間にはさゆみはおしりから床に墜落していた。
    「大丈夫ですか!?」
    「いたた~。平気ですよ~」
     怪我はないようだが、不時着のためあらゆる所があらぬ状態になっており……。
    「こら逃せへんな」
     神速のシュラハテンがもれなくカメラに収めていた。
     こんなハプニングもまた、チアの醍醐味である。
    「次はパートナースタンツからリバティーの流れでいきましょう。今度はスポッターも付けて」
    「まずはペアでストラドルから慣らしていくのは?」
    「その後ダブルサイスタンドで」
     用語が飛び交う中、シュラハテンはとても興味深そうにしながらも、しかし撮影の手は緩めない。
     まるでその妙に格好いい技名の全てを収めようとしているかのように。
     ――その後、上達の速い巫女、努力とパワーで援護する翡翠、知識で指揮する亜璃子、重要な癒し要素のさゆみの4人は音楽に合わせてのダンスからテクニカルな技まで、様々な活躍を魅せてくれた。
    「いいよいいよその笑顔! もっと笑って! もっとおお!」
    「撮影速度と精度では負けません」
    「何ッ! その動きは……! だがッ私とてアクロバティックさと情熱においては負けないわ!!」
     一方で観戦サイド、由宇とシュラハテンの戦いもお互いの撮影技術を切磋琢磨していた。
     地を滑り、宙を舞い、天を駆ける。そう、全ては感動的な一枚のために。
     ……それ、本当に撮れているのだろうか。
    「あ、あの。わたしも写真撮らせて頂いてもよろしいでしょうか? いつまでもこの光景が思い出せるように、残しておきたいんです!」
     奥ゆかしい沙希の存在が、ここが平穏な日常の最中である事を思い出させてくれる。
    「マーベラスよ。お金を払ってでも、あなたたちは見る価値があるわ!」
     一通りの演目が終わると、パイプ椅子に深々と腰掛けていたチユキが立ち上がり、扇状に広げた札束を扇いだ。
     どこの悪徳会長だと問い詰めたくなった、その時。
    「……うぅ、そんなに褒めたら……」
    「!」
     灼滅者以外の、
    「……ワタシの存在がより一層薄くなっちゃうじゃない……!」
     ちょっとアレな声が聞こえた。

    ●「血阿」って書くとKowai
    「貴方の魂に優しき眠りの旅を……」
     翡翠は殲術道具を展開すると、手にポンポンを……違う。これはバトルオーラだ!
    「明るく元気をくれるのがチアさんです! なのに、そんな後ろ向きでどうするんですか!」
    「それじゃあ、皆さんを一生懸命チアしますね~」
     ポンポンをくるりと回すように両手を広げ、翡翠は不死鳥の力と元気を仲間たちに振りまくと同時にさゆみもエンジェリックボイスで究極の癒しを与える。
    「はあぁぁぁん☆ そげなチアされたらやってやるしかないわね」
     更に目立ったチアに憤慨する都市伝説に荘厳っぽいチェーンソー剣を向ける由宇。
    「あんなかわいい子をチェーンソーでぶった斬るのとか趣味じゃないんだけど、ね……」
    「ひ……!」
     ただならぬ雰囲気を感じ取り怯える都市伝説は、チェーンソーを低く唸らせる由宇の闇に飲み込まれた。
    「チアリーダーなら何人組かで出てくればいいと思うのだけれど」
     単体の方が戦いやすいとはいえ少し気になる巫女。だが、容赦なく螺穿槍を捩じ込む。
     先んじられた都市伝説だが、勿論これで終わりはしない。
    「あ、あんまり見ないで……でも見てっ!」
    「どうすればいいのよ……」
     呆れるチユキたちの間を前転から側転、空中で何回転かしながらの着地を繰り返す都市伝説。
     その動き一つ一つが攻撃なのだ。
    「そんな動きに!」
     しかし翻弄されてなるものかと沙希はサイキックソードを払い、その動きを捉える。
    「ひゃん!?」
    「その動きはもう、わたしには通用しません。あなたに形を与えている汚らわしい想念をここで清めます」
     払いたまえ清めたまえ、と祝詞を唱える沙希のサイキックソードに炎が纏われた。
    「チアリーダーに萌える気持ちも今は解らないではないですが、ここは浄化させて頂きます」
     さゆみたちのチアを心に浮かべる沙希。目の前のアレは、本当のチアリーダーではない!
    「はっ!」
    「私も便乗させて貰おうかしら」
     気合と共に炎の剣を振るう沙希の隣に駆け付け、同様に炎を薙ぐチユキ。
     十字となった火炎の斬撃。その火力は尋常ではない。
    「燃えなさい――ああ、年齢制限には気をつけてね?」
     服も燃えてしまう程に!
    「うぅ、なんてことを……」
     ガクリと両膝を付く都市伝説。所々がこげ落ち、露出度が向上している。
    「今のあなたは人を元気にする事が出来ない」
     諭すように告げる亜璃子の言葉に反応したのか、都市伝説は思い切り飛び上がりながらの蹴りを見舞った。
    「うるさいうるさーい!」
     だが。
    「チアの子たちを傷付けるわけにはいかないわ。勿論、チアじゃなくても沙希も可愛いから守らないとね」
    「大丈夫! これくらいなら平気だから」
    「なら、もう少し一緒に頑張るとしましょうか」
    「はい!」
     チユキと沙希がしっかりと受け止め、被害を最小限に食い止めた。
    「自棄になり、全てを放棄する。チアリーダーとしてそれは悲しい事ではないの?」
     もう言葉は届かないだろう。だが、亜璃子はバトルオーラを滾らせながらご当地パワーを炸裂させる。
     次いでカメラからバスターライフルに持ち直したシュラハテンが一瞬で狙いを定める。
    「あんたの技、ちゃっかり覚えたで」
     実は戦闘中もライフルで援護しながら撮影していたようだ。何という早業か。
     そしてそのトリガーで全てが、終わった。
    「もっと、目立ちたかった……」
    「あなたも十分魅力的だったけど、残念ね。私たちの方がずっと魅力的だったのよ」
     チユキの言葉に項垂れた都市伝説は、
    「でも、見ないで……」
     そう言いながら消滅した。
    「結局どうすればいいんでしょうか~?」

    「次は人間に生まれてきて欲しいですね。それで、皆が元気になる応援をして欲しいです」
    「そうね。こんな形でじゃなく、同じ学生として会えてたら、ね……」
     亜璃子と由宇は残念そうに静かな体育館を見つめた。
    「悲しい気持ちを吹き飛ばすのもチアの仕事です。見ていて下さい!」
     翡翠は先程都市伝説が繰り出していた技、タンブリングからの巫女をベースにしたトップ技を――。
    「きゅう」
    「か、狩野さん!?」
     繰り出そうとして途中で派手に転んでしまった。
     だが、それは自然と灼滅者たちに微笑みをもたらし、やがて体育館は笑顔に包まれた。
     これが本当のチアなのかもしれない。
     シュラハテンは興味深そうに頷いていたという。

    作者:黒柴好人 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年4月5日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 11
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ