嬢なる顔と粗暴の影

    作者:幾夜緋琉

    ●嬢なる顔と粗暴の影
    「……まったく、貴方達はその程度の実力ですか? ……興ざめですわね」
     ブロンドの髪をたなびかせながら、肩を竦める女性が一人。
     何処か上流階級そうな彼女が来るにはふさわしくない、暗闇に包まれた路地裏……そして彼女の目の前に倒れているのは、この様な場所にいそうな目に傷を負ったり、目つきの悪い筋骨隆々なゴロツキ達。
    『ぐ……な、なんだよ……つ、強すぎる……』
    『あのナリをしてるのに……おかしいぜ……ふざけんなよ……』
    「……ふざける? いーえ、ふざけてなんかいませんわよ?」
     そう言いながら、呻き声を上げるゴロツキ達の頭をガッ、と足蹴にし、足をグリグリと踏みつける彼女。
     ……そして。
    『もういいわ……貴女達には興味を失いましたの。さぁ……やってしまいなさいな』
     その言葉を告げると共に、彼女の周りに居た配下の者達が……ゴロツキ達を殺しにかかるのであった。
     
    「……と、皆集まってくれたみたいだな! それじゃ早速だが、俺の脳に秘められた全能計算域(エクスマトリックス)が、お前達の生存経路を導き出してやるぜ!」
     神崎・ヤマトが、集まった灼滅者達にニヤリ笑いながら、早速説明を始める。
    「今回皆には、とある羅刹の者を灼滅してきて欲しいんだ。その羅刹とは……こいつだ」
     とヤマトが差し出した写真には、可愛く、お嬢様の様な雰囲気を持った彼女。
     そんな彼女が羅刹だとは、にわかに信じがたい所ではあるが。
    「まぁ皆が良く分からない、と言った顔をするのも仕方ないがな。でも、こいつが羅刹なのは間違い無く、強力な力を持っているんだ」
    「勿論皆も知っての通り、ダークネスにはバベルの鎖による予知の力がある。でも俺の導き出した生存経路によれば、羅刹は宵闇の頃、繁華街の裏道を闊歩しているので、そこにやってくれば彼女に迫る事が可能だ。とはいえ厳しい戦いになるのは間違い無いが、宜しく頼むぜ?」
     そしてヤマトは、詳しい説明へと続く。
    「この彼女だが、羅刹のダークネスとしては彼女一人……とは言えその可憐な風貌とは全く違い、とても強力な力で以て攻撃を仕掛けてくる。イメージ的にはパワーファイターと言ったところだ」
    「そして彼女の周りに居る、彼女に力を受けた一般人のゴロツキ達もパワーで押しきるファイターだ。彼らの攻撃手段は拳で殴りかかる、そういう攻撃をメインに仕掛けてくる」
    「羅刹の彼女含め全員が前に出てのパワーファイターだ。力押しで彼らは攻防を行ってくるので、水母その勢いに負けないように気をつけて灼滅に当たって欲しい」
     そして、最後にヤマトは。
    「人は見た目によらず、という所はあるかもしれないが、可愛い見た目に欺されれば痛い目を見ることになる。皆、決して油断しないように灼滅してきてくれな。宜しく頼むぜ!」
     と告げて、ニヤリと微笑むのであった。


    参加者
    鷲宮・密(散花・d00292)
    上條・和麻(黒炎宿りし二刀流・d03212)
    九条・泰河(陰陽の求道者・d03676)
    霧凪・玖韻(刻異・d05318)
    志藤・遥斗(図書館の住人・d12651)
    逢魔・歌留多(黒き揚羽蝶・d12972)
    小野屋・小町(二面性の死神モドキ・d15372)

    ■リプレイ

    ●荒ぶる姫に秘めし力
     ヤマトから話を聞いた灼滅者達。
     とある繁華街に現われたダークネス……羅刹の少女。
     正しく人は見た目に寄らないと言うべくか、可愛いお嬢様の様な姿形をしている彼女が、羅刹の力を横暴に振っている訳で。
    「女性の羅刹、か……」
    「ふむぅ……お嬢様な羅刹と言う事ですね……いぢめたら、どんな顔してくれるんでしょう。ワクワクしますね!」
     上條・和麻(黒炎宿りし二刀流・d03212)に逢魔・歌留多(黒き揚羽蝶・d12972)が笑みを浮かべる。
     何故ワクワクするのか……神薙使いだからこそ、その因子に自然と引き付けられているのかもしれない。
     とは言えお嬢様な外見であろうとも、彼女の実力は折り紙付きのホンモノの力、下手をすれば、こちらが返り討ちに遭ってしまう。
    「こうして外見と力が一致しないというのは、ダークネスとしてはむしろ普通と言うべくかだな。最早驚くにも値しないが……非力に見える方が戦闘能力が高い様な気がするのは、気のせいだろうか?」
    「まぁ……見た目で弱そうに見えているのに、実際には強い……油断しきりの所を不意打ちされるようなものだろうし、そう思うのは仕方ないさ」
     霧凪・玖韻(刻異・d05318)の言葉に和麻は僅かに微笑み、そして。
    「まぁ実力あるなら決して油断はしない。例え女性だろうが、オレの障害になる者は斬るだけだ」
     静かに決意を語ると、それに鷲宮・密(散花・d00292)、小野屋・小町(二面性の死神モドキ・d15372)が。
    「そうね……まぁ、退屈させない程度には善処するわ。羅刹もきっと興味を持ってくれるんじゃないかしらね? 尤も……私は灼滅出来ればそれで結構なんだけど」
    「そう。一般人をいたぶるだけいたぶって始末するなんてねぇ……おふざけが過ぎる彼女には少々……いや、死ぬ程の痛みをもって反省して貰いましょうか」
     と。
     そんな血の気の多い仲間達の言葉に対し、九条・泰河(陰陽の求道者・d03676)は。
    「……もう、全く……どうして皆、こうもバイオレンスなのかな? 僕は、力比べは好きじゃないんだよ。僕としては、ベッドでの運動の方がよっぽどいいのに……」
    「……まぁ、何でしょうか、灼滅者であるからこそ、荒ぶる心を持つのも仕方ないとは思いますよ?」
     泰河に、カマル・アッシュフォード(陽炎・d00506)が苦笑しつつ笑うと、それに志藤・遥斗(図書館の住人・d12651)も。
    「まぁその荒ぶる心のままに、無関係な人が沢山巻き込まれかねない……だから、速やかに対処しないといけないと。という訳で皆、もう準備はいいか?」
    「ん、OKですよ!!」
     歌留多が元気よく言うと共に、頭に付けたヘッドライトの動作を確認。
     そして周りの仲間達も、ヘッドライトやら懐中電灯を準備し……そして、姫の居る夜の繁華街へ、足を踏み入れるのである。

    ●移ろいし荒舞
    『……ふふ。真っ暗で怖い道ですわねぇ……そして、そんな所にいるのは、不良ばかり、と……貴方達も不良の一つですわよね?』
    『あぁ……何だてめぇ!! 可愛い姉ちゃんだが、顔だけで全てが通ると思ったら大間違いだぜ!!』
     そして闇夜の繁華街の裏路地に……女性と男の声が響く。
     むしろ女性の挑発に対し、男がくってかかっている……と言った風ではあるが、雰囲気の悪いこんな場所だからそういうのも何時も起きていそう、とも思えてしまう。
    「全く何をやってるのかしらね……仕方ないわね」
     と密がやってくるなり、その場に殺界形成を展開。
     状況的に、羅刹の彼女から発せられている様にも思えてしまう。そして……不良達は。
    「ち、ちくしょう……覚えてやがれよ!!』
     と言って、その場から逃げ帰っていく。
    『あらあら……弱者は尻尾巻いて逃げるものなのですか? ほんとう……参りましたわねぇ……貴方達も』
     その殺界形成に気付いた羅刹の彼女が、微笑みながら灼滅者を睨んでくる。
     それに対し。
    「なるほど……確かに聞いたとおり、かわいらしいお嬢さんだね。いや、敵なのが本当に惜しいよ」
    「うん。ほんと可愛い顔してバイオレンスだね! でも僕には逆リョナの趣味はないんだよ!」
     カマルと泰河の言葉……それにクスクスと笑みを浮かべる彼女。
    『ふふふ……そう、敵、という事なのですわね? まぁ……さっきのような男達。ゴロツキ、とでも言うのでしたっけ? あれが相手だとこちらも楽しめそうではありませんでしたし……貴女達は楽しませてくれるのかしら?』
    「ええ。でもダークネスである貴女には、ひとかけらの興味もありませんので、蟻を潰す感覚で倒させていただきますね?」
    「そうだよ。さぁ、アンタらの断罪の時間だよ!!」
     歌留多、小町がそう言いながらスレイヤーカードを解除し、戦闘態勢を取りつつ構えると、それに羅刹も。
    『まぁ……楽しませてくれるのですわね。本当、期待外れにはさせないで下さいましね?』
     と言って、配下の男四人を横に並ばせ、構える。
     執事とも、不良と、どちらとも付かない男達が、お嬢様の言葉に応じて構え、突撃開始。
     一人目、二人目、三人目、四人目……と、次々攻撃。
    「っ……力押しの相手ってのも厄介なもんだね。でも、それだけじゃ勝てないって事を教えてあげるよ!!」
    「……そうだな。攻撃力だけでは勝てない……それを、教え込んでやろう」
     カマル、玖韻がディフェンダーポジションで、二人ずつの攻撃を受け止めつつ……玖韻、カマルが反撃の雲櫂剣をまずは一体に叩き込み、武器封じを与える。
     そして、その攻撃に続け羅刹の彼女が。
    『それでは……いきますわよっ!』
     可憐な姿からは想像も付かない、素早い動き。
     僅かに驚きを覚えるも、密と和麻の二人が、迎撃するような体制。
    『邪魔、ですわよ!!』
     熾烈な攻撃力が、まずは和麻に叩き込まれる。
    「っ……こりゃ、中々な力持ってんな!」
    「そうね。でも……所詮その程度、と分からせてあげるわよ」
     反撃に密が鬼神変でEN破壊を付加しつつ、和麻が雲櫂剣で武器封じ。
     ……そして泰河も。
    「本当、力自慢なんだろうね。ならば、己の力を自分で楽しめ……!」
     と影喰らいを羅刹に放ち、トラウマ付加。
     しかしそのトラウマに対し、羅刹の彼女は何処か。
    『ふふ……自分と戦うのも、また一興ですわね!』
     と、むしろ楽しんでいる様にも見える。
    「本当戦闘狂な奴だぜ……ったく、仕方ねぇな!」
    「そうですね……!」
     小町がシールドリングで和麻にシールドリングで盾付加をしつつ、遥斗も自分へ預言者の瞳で狙アップ。
     又、歌留多もパッショネイトダンスで術を列付与する。
     そして2ターン目。
     姫と配下達は素早く、またも攻撃。
     武器封じを受けて居たとしても、脅威となる高い攻撃力は変わらないが。
    「悪いが男相手には、思う存分やるって事に決めてるんだ。とっとと倒して終わりにさせてもらうよ!!」
     カマルが自信満々に言う通り、玖韻と手分けし、各自己が前にいる相手に向けて攻撃。
     更に小町、遥斗のジャマー、スナイパーのも。
    「さぁ、行くぜ!」
    「……これでも、喰らって下さい!」
     とブラックウェイブやヴォルテックスで、敵列に範囲攻撃を叩き込む。
     続けて密、和麻は、動き回る姫に牽制しつつ、雲櫂剣、螺旋槍で更なるバッドステータスの追加。
    『もう……面倒くさいわいですわねぇ……!』
     ちょっとだけ苛立った口調で、再度和泉に攻撃……今度は結構なダメージ。
    「くっ……!」
    「あら、一応はやる様ですわね? でも、甘いですよ?」
     と歌留多がシールドリングを飛ばして付与……又泰河も、前衛陣に溜まったダメージを清めの風で回復を行う。
     強力な攻撃ではあるが、泰河、歌留多がしっかり回復し、重傷までは至らない。
     三ターン目……小町と遥斗が、斬影刃とセイクリッドクロスで、カマル前のを継続的に攻撃……かなり玄海レベルまで近付いた状態であると見定めたカマルが、その胸ぐらに入り込み。
    「トドメだ!」
     と、背負い地獄投げを一発。
     大きな身体が宙を舞い……そのまま灼滅される彼。
    『そう……やるようですわね、ふふふっ』
     その笑みは崩れる事無い。むしろ戦いを楽しむかの様。
    「正しく戦闘狂といった感じだね……でも、戦いはパワーだけで決まるものではない……僕はそう信じるんだよ!!」
     でも泰河が声を上げ、着実に影喰らいを羅刹に蓄積していく。
    『そう思うのは勝手ですわよ? なら、貴方が分からせてくれれば良いのですわ』
    「っ……なら、分からせてあげるよ。どうだい……自分で自分の技を楽しむ乾燥。存分に味わい楽しみな!」
     と泰河は影喰らいを更に追加……そうしたら歌留多が。
    「清めの風は、私の刀で起こしましょう。逢魔っ! 清風奏ッッッッ!!」
     と、清めの風を放っていく。
     そして……四ターン、五ターン、六ターン……と時が進むと共に、確実に一人、一人と配下を倒して行く。
     全ての配下を倒し、残るは羅刹の彼女のみ。
    「さて……可愛い女の子に手をあげるってのはポリシーに反するんだが……ま、殺るか殺られるかじゃ仕方ないよね。悪いが眠って貰うよ!」
     カマルが宣言すると共に、泰河が流れるように斬影刃。
     服破りの効果で、肌が露わになるのに。
    「中々色っぽい姿をさらしてくれるね!」
    『っ……屈辱ですわ!!』
     どうやらこういう方のに対しては、怒りを覚える様で。
    「……ならば、これでもどうだ?」
     と玖韻が光刃放出で更に服破り。
     怒りと共に反撃をしてくる彼女だが、次第にその攻撃の緻密さが失せてくる。
    「あら……やっぱりこの程度ですか。申し訳ありません、元々興味ありませんでしたが、より興ざめしてしまいました」
     歌留多が言い放つトドメの一言。
     そして密が。
    「ええ……終わりにしましょう」
     無慈悲に、渾身のフォースブレイク。
     追撃効果も合わさり、大ダメージが彼女を襲い……甲高い悲鳴と共に、彼女は灼滅されたのである。

    ●荒れし心は永遠に
    「……ふぅ。恨み言は、私がそちらに行った時に聞くわ」
    「そうです。『ダークネスである貴女』には興味がありません。私の宿敵ですから……ただ『ヒトである貴女』とならば、きっと……友達になれていたのでしょうけれどね」
     密と歌留多が、静かに灼滅されし影に告げる……そして戦闘後の静寂が、その場を包む中。
    「はぁ…………」
     目を閉じた小町……そして。
    (「……またもう一人のあたいが、頭を出したのか……」)
     自分の中の、戦闘に掛ける好戦的な顔……それに対し、若干自己嫌悪を覚えてしまう。
     ……まぁ、戦に掛けて人が変わってしまうのは、それはそれで良くある事な訳で。
    「ま……何はともあれ、無事に終わりましたね」
    「ええ、そうですね。それじゃさっさと帰りましょうか!」
     遥斗に歌留多が言って、そして灼滅者達は一応痕跡を片付けてから、他の一般人が来る前にその場を後にするのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年4月6日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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