オチこぼれと言うな!

    作者:相原あきと

     歓楽街にあり、半地下に扉を構える高級BAR。
     かつては流行ったであろうそのBARも、今は潰れて久しい。
     いつしかチンピラ達の格好のたまり場になっていたその店の扉が、ギィっと内側から開く。
     店から出てきたのはアイドルのような服を着た淫魔の少女。
    「それじゃぁ~、さっき言った通りよろしくお願いしますねぇ」
     そう言うと、淫魔はスタスタと階段を上って夜の街へと消えていった。
     一方、店の中では――。
    「おい、俺様がお前達のために呼んでやったんだ。感謝しろよ!」
     カウンターに立てかけたエレキギターの横、細目で生意気な顔つきの不良高校生が、店の中で服を着始めている強面のチンピラ8人に高圧的に言う。
     もちろん、別に高校生が呼んだわけではなく、たまたま淫魔が高校生達を見つけてお願いをしに来たというのが事実だ。
     だが、この高校生は常に虚勢を張りたいタイプなのだろう、事情を知らない手下達に平然と嘘をつく。
    「ああ、感謝してるよ西場さん、あんたについて行く事にしてから良いことづくめだ」
     8人のチンピラの1人が言うと、ほかの7人もそうだそうだと同意する。
     西場と呼ばれた不良高校生は満足げにうなずくと。
    「くくく……俺にも追い風が吹いて来たぜ。俺をオチこぼれ扱いしやがったあいつ等め、いつか見ていろ」

    「みんな、淫魔が他のダークネス達と接触しているって噂は知ってる?」
     エクスブレインの鈴懸・珠希(小学生エクスブレイン・dn0064)がみなを見回しながら質問する。
    「実は未来予測で、ヴァンパイア学園の不良学生とその手下達が淫魔と会ってるのを見つけたの」
     場所は都内にある潰れた半地下のBAR。
     貸し切りで店員や店長すらおらず、中にはヴァンパイア学園の不良が1人と、その手下が8人いるようだ。
    「ただ注意して欲しい事が2つあるわ」
     珠希が言うには、不良とチンピラはその店で淫魔と会っているらしい。その淫魔は少したてば勝手に店から出て行きどこかへといなくなるのだが、その淫魔に手を出した場合、ヴァンパイアとチンピラ達が増援に駆けつけて大変な事になると言う。
     そしてもう1つの注意点、それはヴァンパイア学園の不良を灼滅した場合、なんらかの問題が発生する可能性があると言うのだ。灼滅する事ができないわけでは無いようだが、その結果どんな事が起こるのか珠希もわからないと言う。
    「もちろん、私たち武蔵坂学園の存在を知られるのもまずいと思うから、その点は意志を統一しておいて」
     珠希は注意点を説明すると、今度は戦う事になる相手の説明を始める。
    「ヴァンパイア学園の不良学生は西場・一人(さいば・かずと)、ダンピールとバイオレンスギターに似たサイキックを使ってくるわ。戦いになると後ろから弱そうな人を攻撃してくるみたい。典型的な小物性格で、誰かにオチこぼれって言われたのかしら? その言葉を言われると頭に血がのぼるみたいよ」
     一緒にいるチンピラ8人は、西場に力をもらった強化一般人だ。手裏剣甲に似たサイキックを使う者が4人、解体ナイフに似たサイキックを使う者が4人。西場を守るような戦いを強いられてきたため、そのような戦い方が得意のようだ。
    「このまま放っておいたら、彼らは力を使って悪事を働き続けると思うの。だから、みんな、お願いね!」


    参加者
    花楯・亜介(花鯱・d00802)
    玖珂・双葉(緋ノ坂幽城ノ主・d00845)
    柩城・刀弥(高校生ダンピール・d04025)
    卑虎・イチ(雑魚・d04610)
    睛・閏(ウタワズ・d10795)
    漣・静佳(黒水晶・d10904)
    久鷲見・珠郎(マッジョーレ・d15514)
    シェリル・メイティス(実はじゃじゃ馬・d15832)

    ■リプレイ


     歓楽街にあり半地下に扉を構える高級BAR。その店から出てくる者を確認できるよう、灼滅者8人は路地裏の角に隠れるように待機していた。
     やがてBARから淫魔が出てきて夜の街へと去っていく。
     突入のタイミングだ。
     ふと、漣・静佳(黒水晶・d10904)は震えていた自身の手を押さえる。
     本にのる事の無い、人では無い彼らの感情を知る為。
     静佳の中の知識欲が震えを抑えると、それはやがて微笑みとなった。
    「行くぞ」
     仲間達に久鷲見・珠郎(マッジョーレ・d15514)がぶっきらぼうに言う。
    「怒ってるの?」
     シェリル・メイティス(実はじゃじゃ馬・d15832)が聞けば。
    「いや、違う。今回のような相手は……嫌悪感がどうしても、な」
     珠郎の答えにシェリルが同意する。
    「それ、同感」
     もっとも、シェリルの場合は個人的な理由で好きになれないだけなのだが……。

     半地下へ続く階段を降り、8人はそのBARの扉を勢いよく開ける。
     中ではいかにもなチンピラ8人と、学生服の不良が1人。
     不良達が第一声を放つ前に、機先を制して声をかけたのは不良の装いをした花楯・亜介(花鯱・d00802)だった。
    「今出て行った女ってお前の? いい身分じゃん、ちょっと遊べよ」
     亜介の視線の先には学生服の不良、西場・一人(さいば・かずと)だろう。
     西場は一瞬で顔を真っ赤にすると。
    「な、なんだ手前ェらは!」
     と、叫んでくる。
     だが、灼滅者達はあくまで自分達のペースを崩さない。
     亜介と同じく不良の格好をした玖珂・双葉(緋ノ坂幽城ノ主・d00845)が店内を見回しながら。
    「バーをたまり場、なんてかっこいいじゃん……おい、俺等もまぜろよ?」
    「だから! なんなんだ手前ェらは!」
    「食い物もけっこう揃ってるようだな。気に入った、この場所は俺らがもらうぜ?」
     西場の叫びを無視して物色する双葉に、ほかのチンピラ達が拳をポキポキ鳴らしながら近づいてくる。

     ギュイーンギュラララッ!

     突然響いた騒音にチンピラ達がギョッとする。
     それはけたたましく唸りをあげるチェーンソー。
     入ってきた8人のうちの1人(柩城・刀弥(高校生ダンピール・d04025)だ)が、表情一つ変えずに持っていたチェーンソーにエンジンをかけたのだ。
     武器を持っていたのは刀弥だけではない。
     卑虎・イチ(雑魚・d04610)は両手に持ったナイフに舌を這わせているし、最初に扉を開けた亜介も怪しい槍を持っている。
     そう、入ってきた8人は全員、武器を携帯していたのだ。
     チンピラをかき分け学生服の不良、西場が前に出てくる。
    「おい、殺し合いが望みとあっちゃぁ生かして帰すわけにはいかねぇなぁ?」
     両手をポケットに入れたまま下からねめつけるように言う西場。
    「……ねぇ」
    「あぁん? 聞こえねぇなぁ?」
     西場に答えたのは睛・閏(ウタワズ・d10795)だった。
     消え入りそうな声に対し、西場が催促する。
     閏は一度息を吐くと、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
    「……ここ……頂戴」
    「……て、手前ェら!」
     西場の問いを無視するような言葉に、頭からブチと何かが切れる音をさせつつ西場がチンピラ達へとわめき出す。
    「この舐め腐った野郎共を、八つ裂きにしてぶっ殺せ!」
     西場の言葉にチンピラ達が各々の武器を手に構える。4人はナイフ、4人はダーツ。
    「ヴァンパイアが相手、か……厄介な相手だが、いっちょ派手にかましてやりますか」
     双葉の言葉に灼滅者達が皆頷く。
     戦いが、始まった。


    「げへへ、勝負は常に顔が良い方が勝つ運命ザンスよ? そうこの美しき戦士、イチ様が勝つザンス!」
     西場を指差し宣言するイチは、どう控えめに見ても雑魚顔だ。
     まぁ今は『自称美形』について言及はすまい。仲間の灼滅者達もチンピラ8人もツッコミはいれない。
     だが!
    「貴様……か、かっこいい!?」
     西場だけは打ちのめされていた。
    「げへへ、その通りザンス! 負け組の雑魚は身をわきまえるザンス!」
    「ふ、ふざけるな! 美形だからって調子に乗るなよ!」
     西場はいつの間に出したのか、悪趣味なエレキギターを野球のバットのように構えると……イチに向かって一瞬で距離を詰める。
    「なっ、早いザンス!?」

     ――ドゥグゴボッ!

     致命的に鈍い音を立て、偶然のような会心の一撃がイチの顎をかち上げる。
     きれいに放物線を描いて吹き飛ぶイチ。
     そのまま顔面から「ぐしゃぁ」と落ちると、大量の血を流して動かなくなる。
     それはクラッシャーたる西場のまさかのクリティカル。
    「へ、へへ、天は二物を与えなかったようだな。ざまぁ見ろ」
     西場が戦闘不能となったイチに吐き捨て、チンピラ達に指示を出そうと背を向けた時。
    「チミごときが、あちしを倒せると思ったザンスか?」
    「なに!?」
     振り向けばイチが立っていた。
    「さっきのは残像ザンス」
     ボロボロのイチが言う。
     残像だろうと何だろうと、西場にとっては倒せなかった事が屈辱だったのだろう。「ぶっ殺せ!」と手下達に命令する。
    「クベベ」
     冷静にイチが凌駕した事を悟った珠郎が霊犬のクベベに合図を送り、共にイチへ回復を飛ばす。
     さらにシェリルもビハインドのルナを前面に立たせつつ、イチに癒しの矢を射かける。
     回復役では無い灼滅者達の動きも早い。
     亜介がチンピラの振るうナイフを紙一重でかい潜って肉薄し、必殺の槍の一撃をたたき込めば、華奢な白銀の枝を閏が振るい、槍に刺されてたたらを踏むチンピラを轟く雷で焼き殺す。
     手下達を手際よく灼滅する8人を見て西場が驚愕しつつも、自身に注がれる視線に気がつき振り向く。
     それはチェーンソー剣で逆十字をきりギルティクロスを放つ刀弥だった。
    「罪過の十字よ!」
    「舐めんじゃねー!」
     刀弥の声に重なるように西場が吠え、赤き十字架が相殺される。
    「はっ! そんな攻撃が俺様に――」
     西場の言葉はそこで遮られる。
     刀弥に意識が向いた隙に、静佳が生み出したプリズムの十字架から無数の光がはなたれ、気持ちよくしゃべる西場を打ち据えたからだ。
     西場の顔が大きく歪む。
    「手前ェら……ゆるさねぇ。全殺しだ」
     西場はそう言うとテキパキと手下に指示を下す。
    「一番弱い所からリンチにしろ。まずはあのサーヴァント達からだ」
     人形のようなルナと霊犬のクベベに、チンピラ達のナイフが容赦無く刺さり、ジグザグに斬り刻まれ、手裏剣のようなダーツが無数に突き刺さる。
     ディフェンダーとして防御を優先していたからこそだろう、ルナとクベベはギリギリで立ち続ける。
    「ふざ……けるな!」
     激昂しそうなほどの怒りを見せる珠郎に、西場は溜飲が下がったのかチンピラ達へさらに指示を出す。
    「いいぞ、次のターンでしとめろ。はっはっはっ、弱いものいじめは本当に楽しいぜぇ!」


    「ルナ!」
     結局、前のターンでクベベに庇われ生き残ったルナも、次の猛攻で消滅してしまった。シェリルの叫びがBAR内に響き、西場が嘲笑する。
     まだ最初の数分しか戦っていないが、灼滅者達は指示を出すリーダーの下、しっかり狙ってくる複数の敵の厄介さを思い知らされていた。
     西場はサーヴァントにチンピラ全員でかかる必要が無いと判断すると、即座に手下2人ずつを使って、灼滅者の中衛と後衛に毒の範囲攻撃をばらまき出したのだ。
     そして問題となったのが列でキュアをかけられる者が1人もいない状況……つまりキュアの手数が足りない事だった。
     もちろん作戦通りの部分もある。
     攻撃を集中させたおかげで、すでにチンピラを2人、順当に倒していたのだ。
     作戦開始の3人まで、あと1人。
    「良い腕してるじゃないか……だけど、俺達も負けるわけにはいかないんだ。その命、喰らわせてもらおう……」
     刀弥がチェーンソー剣に鮮血の紅をまとわせ西場に切りかかる。
     だが、西場はエレキギターでチェーンソー剣を受けると、耳障りな音を立てながら鍔迫り合いを行う。
    「ちっ……まあ、頭を張るんだから相応に強いよな」
    「あぁん? 俺様が弱いとでも思ったのか?」
    「ああ、想定外だ。特に、手下全員よりも強いというのは、な」
     ガキンッと押し返すように両者が離れる。
     ちなみに手下全員分より強いというのは、よいしょの方便だ。
    「うう……」
     弱々しい声に西場が視線だけそちらに向ければ、閏がよろりと膝を付く所だった。
    「その女、毒が回ってるぞ、ジグザグに切り裂いてやれ」
     西場の言葉にナイフ持ちの1人がイヤらしい笑みを浮かべて向かっていく。
    「やだ、こわい」
     閏の言葉を聞いたチンピラが、目の前で閏をなめ回すように見ると。
     ドフッと音を立てて吹き飛び動かなくなる。
     閏のオーラキャノンだ。
    「……やだ。負けない、もん」
     閏の逆襲に西場がチッと舌打ちする。
     だが、今ので3人目。灼滅者達はアイコンタクト。
    「おらぁ!」
     亜介が地獄投げでダーツを投げてくるチンピラを壁に叩きつけるが、ゆらりとチンピラが立ち上がり、さらに良いタイミングで西場がエレキギターをかき鳴らし自身と手下達の傷を全快にさせる。
    「おいおい、今のが一発で全快かよ……」
     亜介が冷や汗を拭くようなそぶりをしつつ、驚愕したっぽい表情を西場に向ける。
    「あん? 手前ェの攻撃が弱ェだけだろうが、俺様は自分の回復のついでであいつ等の傷も癒してやってるだけだからなぁ!」
     西場が笑いながら言い放つ。
     正直、こんな奴持ちあげんのはくっそ不愉快だが……と亜介は内心毒づきつつ。
    「てめえみたいな強い奴が、もしかして他にもゴロゴロいたりするのか?」
    「けっ、俺様みたいに強さも知能も兼ね備えた奴はいねぇが……まぁ、手前ェらより強いゴリラどもはゴロゴロいるぜ」
    「げ、げぇ~~~っ」
    「くっくっくっ、驚いたか」
     イチの絶妙な『あいづち』に、西場が気分良く応える。
     その様子を観察しつつ、静佳がぼそりと。
    「……貴方以外にも、強い人が多く、いる学校?」
    「ん? ああ、まぁな! 手前ェらなんぞ一捻りよ」
    「……朱雀門」
    「そうそ――」
     ふ――と西場の表情が引き締まり、目が据わる。
    「手前ェ、どこでその名を……」
    「………………」
     西場の質問に、静佳はどこを見ているのか、視線をさ迷わせて答えない。
    「ふん、まぁいい。どの道手前ェらはここで死ぬんだしな!」
     頭を切り替え再び優位に発言する西場。
     だが、その場の空気を壊すように、ズカンと床が破壊される。
     双葉が龍砕斧を床に叩き付けた音だった。
    「数で上だからって粋がるなよ? 負けねぇからな?」
     睨み付けるように言う双葉を西場が嘲笑う。
    「弱い奴が吠えるな!」
    「だったら俺から狙え! 俺はお前らにやられて死ぬ気も無いし、今日もしっかり帰るつもりだ」
    「はぁあ? 手前ェはバカか? 弱い奴から狙うのが常識だろう? おいお前達!」
     西場が再び手下に指示を下す。
    「次は回復役を狙え!」
     西場の指が珠郎とシェリルを差す。キュア要員である事が見抜かれている。
     西場達がつけてくるバッドステータスの解除は、特に回復専任の珠郎がいなくなれば、各々自身とシェリルだけでは解除する暇と手数が足りなくなる。
     珠郎は影を持ちあげ西場を切り刻みたくなる衝動を抑えると、再び仲間達を癒す事に専念する。珠郎も解っているのだ、ここで回復の手を休めれば、ただでさえ毒の累積でぎりぎりの状況が一気に瓦解してしまうという事を……。


     今回の戦い、灼滅者達が完璧だった事がある。それは西場を封じるという点だ。
     常にバッドステータスを付与する事で、西場は毎ターン回復&キュアを行い、クラッシャーの利点を全く発揮できておらず、ただ指示を出す人になっていた。
     結果、着実に1体ずつチンピラを倒し、残り3体まで減らしていた。
     もっとも灼滅者側が払った代償も大きい。
     どのチンピラも範囲で毒を放ってくるし、ナイフ組はそれをジグザグで列増加、ダーツ組はアンチヒールをこれまた列で付与してくる。
     最初に倒れたのはシェリルだった。毒でふらふらになっている所を集中砲火を受け、凌駕してすらさらに追撃を受けたのだ。
     そして珠郎もまた――。
    「俺達が……甘かった、のか……?」
     その呟きは誰に向けたものだったか。
     最後の回復は自分ではなく仲間を癒し、珠郎は紙一重で倒れてしまう。
     彼らはヴァンパイアの西場に対しては甘く考えてはいなかった。
     ただ、チンピラ8人の攻撃方法をもっと精査するべきだったのだろう。
    「くたばれっ!」
     強敵との戦いに瞳を輝かせる亜介が、仲間を傷つけた怒りも己が影に乗せてチンピラをぶっ飛ばす。
     さらに着地点から閏の黒いドロドロした無数の影の手が現れチンピラが喰われるように倒された。
    「これで残りは雑魚2人とお前だけだ!」
     亜介が西場に叫ぶ。
    「あぁん!?」
    「……本気、出した、だけ。その程度に押されてばっかり……は、きらい」
     無数の黒い腕を足元の影に戻しつつ閏が言う。
    「さっきはそっちの様子が見たくて手加減してたんだ。良いのか? 手下が2人しか残って無いぜ?」
     さらに双葉は「お帰りはこちらですよ」とばかりに、地上に出る階段への道を開ける。
    「手加減だと……手前ェら、この俺様を……こ、こ、コケに!」
     もちろん、灼滅者側も決して手加減していたわけではない。
     だが、このままどちらかが全滅するまで戦えば、どっちが勝ってもおかしくない状況でもあり、西場にもそれが解るからこそ……。
    「い、いいだろう、今日の所はお前達に勝ちを、ゆ、ゆ、譲って、やる」
     腹の底から悔しさが滲み出た口調で絞り出す。
     ゆっくりと西場とチンピラ2人が地上への階段へと向かって灼滅者達の前を歩いて行く。
     だが、ブレ無い男がここに一人。
    「強さと美しさを兼ね備えたあちしに、チミたちが勝てる道理は無いザンス」
     それは挑発でも無くイチに取っては素の一言だった。
     西場の額に怒りマークが浮き出るが、まだ……まだ我慢できた。
     しかしイチの言葉は続く。
    「しかし、落ちこぼれだけにどんどん落ちていくザンスねぇ」

     ぶちッ!

    「お前達! あのザンス野郎だけはぶっ殺せ!」
     西場はそう叫ぶと階段に向かって走って行く。
     イチに向かってきた1人は閏が庇うが、もう一人が放ったダーツがイチの額のど真ん中に命中。
    「ぺぎゃあっ!?」
     奇妙な叫びを上げてイチが倒れるが、その脇をチェーンソーの雄叫びをあげて刀弥がすり抜け、ダーツを放ったチンピラを一刀両断する。
     そして閏が目の前のもう1人をなんとかしようと、寒昴を振り上げれば。
     ――ピキ。
     その時にはすでに、最後の1人は石化しきって動かなくなっていた。
     静佳の放った石化の呪いが決まったのだ。

     そしてBARに静けさが戻る。
     西場は逃がしたが手下は全員倒す事ができた。
     ヴァンパイア達との因縁を思い描きつつ……とりあえず今は、傷ついた仲間を背負い灼滅者達は武蔵坂学園へと帰還するのだった。

    作者:相原あきと 重傷:卑虎・イチ(雑魚・d04610) シェリル・メイティス(実はじゃじゃ馬・d15832) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年4月2日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 11
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