未知への飛翔~ゲルマンシャークの飛行船

    作者:邦見健吾

    ~宮古島・うえのドイツ文化村地下秘密基地~

    「ゲルマンシャーク様が3分間だけ復活なさったぞ!」
    「全員整列! ゲルマンシャーク様のお言葉を拝聴しろ!」
     注目するドイツ化ご当地怪人達の前に、ゲルマンシャークがゆっくりと姿を現す。
     そして、確固たる威厳ある口調で、怪人達に檄を飛ばし始めた。

    「いずれの勢力も大きく減衰している現状で、蒼の王コルベインを制する者達が現れた!
     我が復活も未だ遠い。お前達は危急に、ご当地パワーを高めなければならぬ!
     ならば、取るべき方法はひとつ!」

     怪人達を静かに見回したゲルマンシャークは、声高らかに宣言する。

    「グローバルジャスティス様よご照覧あれ!
     これより『第2回ご当地怪人選手権』を開催する!
     急ぎ、出場選手を集めるのだ!」
    「まずは昨日の不死王戦争、お疲れ様でした。皆さんの奮闘で、この武蔵坂は窮地を脱することができました。ありがとうございます」
     教室に集まった灼滅者に対し、冬間・蕗子(中学生エクスブレイン・dn0104)が礼を述べた。
    「しかし、蒼の王コルベインが灼滅された事は、他のダークネスの動向にも影響を及ぼすでしょう。今後も一層の注意が必要です」
     蕗子はそこまで言うと、灼滅者たちの顔を見回す。
    「さっそくですが、以前からその存在が噂されていた、ご当地幹部ゲルマンシャークが動き出したようです」
     ゲルマンシャークは、山梨県の富士急ハイランドで、第2回全国ご当地怪人選手権を開こうとしているらしい。ゲルマンシャークの招集を受け、既に多くのご当地怪人が山梨を目指しているようだ。
    「ようするに、そのご当地怪人を灼滅すればいいんだな?」
     灼滅者の一人が口にした問いを、蕗子は首を横に振って否定する。
    「ご当地怪人選手権に参加する怪人は数多く、また、この選手権の間だけ闇堕ち状態となったご当地ヒーローの方も多くいるようです。全面対決は避けるべきでしょう」
     全面対決となれば、富士急ハイランドに限らず、大規模な被害が発生することになるだろう。
    「現地に赴き、施設や一般人に被害が及ばないように対応をお願いします。方法はお任せしますが、選手権に出場するのも手段の一つかもしれません」
     もう一つ大事なことがある。
    「現地には、ご当地幹部ゲルマンシャークの飛行船も現れるようです。皆さんは、手分けをして富士急ハイランドの平和を守ると共に、ご当地怪人ゲルマンシャークの野望をつきとめてください」
     ゲルマンシャークの目的が分かれば、今後の対策を立てることも出来るかもしれない。
    「ご当地怪人選手件の開催を見守るように、富士急ハイランドの上空には、ご当地幹部ゲルマンシャークの飛行船が遊覧しています」
     だが、灼滅者の力だけでは、ゲルマンシャークの飛行船に乗り移ることはできない。
    「皆さんは、高さ50mを超える天空の回転ブランコ『鉄骨番長』の遠心力を利用し、タイミングを合わせて飛び移ってください」
     蕗子はしれっと、とんでもないことを言った。
    「「ええええっ!?」」
     その発言に、灼滅者の多くがどよめいた。なお、その高さは日本初という代物。詳細はホームページで見ることができる。
    「それがゲルマンシャークの飛行船にたどり着く唯一の方法です。灼滅者なら、どなたでもそれくらい出来ます」
     恐怖にすくむ者、スリルに顔を輝かせる者、反応は様々だ。
    「失敗して落ちても、灼滅者にはバベルの鎖があるので死にはしません。……死ぬほど痛いかもしれませんが」
     灼滅者の様子を気に留めることなく、蕗子は淡々と説明を続けた。
     なんにせよ、この作戦には『鉄骨番長』から飛行船に乗り移る度胸と、ご当地幹部の飛行船に乗り込む勇気が必要になるだろう。
     また、侵入がばれたところで飛行船は高度を上げてしまうため、侵入できる人数は限られる。
    「ゲルマンシャークの飛行船の内部がどうなっているかは不明です。不測の事態にも用心しながら探索してください。……いつも灼滅者の皆さんの勇敢さには頭が下がります。それでは、お気を付けて」
     さっきまでの無表情はどこへやら、蕗子は手を振りながら、満面の笑みで灼滅者たちを見送った――。

    ■このシナリオは『TRPGリプレイ連動シナリオ』です
     このシナリオは『サイキックハーツRPGリプレイ(2)灼滅者に刃は輝く』との連動シナリオです。
     是非、第2回全国ご当地怪人選手権を、お楽しみ下さい!

    ●このシナリオは『参加無料』です
     みなさん気軽に右下の『参加する』をクリックし、参加してください。
     ただし、参加するには自分のキャラクターが必要です。まだキャラクターを持っていない人は、ここから作成してください。キャラクター作成も無料です。
     https://secure.tw4.jp/admission/

    ●リプレイには『抽選で選抜された100人』が描写されます
     このシナリオは学園シナリオです。参加者は必ずリプレイで描写される訳ではありませんが、冒険の過程や結果には反映されます。
     なお、今回のシナリオでは、抽選で選抜された100人のキャラクターが描写されます。抽選はトミーウォーカーが行います。

    ※このシナリオには、ご当地ヒーローの『選手権だけ闇堕ち』ルールはありません。


    ■リプレイ

    ●いざ鉄骨番長!
     灼滅者たちはエクスブレインの指示通り、『鉄骨番長』を利用して次々とご当地幹部ゲルマンシャークの飛行船へと飛び移っていく。
     飛行船にとりつくことに成功し、傑人(d01130)はいつものことながら灼滅者の身体能力の高さに驚く。
    (「怪人じゃなくてヒロインが待ってるなら良かったけど……。まあいいや、カッコイイポーズ決めてやるぜ!」)
     飛行船に飛び乗るというアニメさながらのシチュエーションに、琥太郎(d01463)の胸が高鳴る。大げさに何か叫びながら、主人公のように飛んで行った。
     あくまでゲルマンシャークの野望を探ることが目的なのは分かっているが、柚姫(d01913)は内心ブランコを楽しんでいた。遠心力を利用し、タイミングを合わせて跳躍すると、飛行船にたどり着くことができた。
    「思っていたより、簡単でしたね」
     灼滅者なら誰でもできますから。
     九里(d02006)は船体に張り付くと、中に侵入しようとはせず、そのまま外から先端を目指す。強い風に吹かれながら、馬鹿となんとかは高い所になんとやらという言葉を思い出した。自分のことかと思いつつ、ついでに風邪をひかないようにと願う。
    「空中ブランコから飛び移れって、蕗子ちゃんも言うねえ。けど女の子の期待に応えるのが男ってもんだよな、ガゼル?」
     高明(d04232)は自身のライドキャリバーに呼びかけながら、膝が震えるのを必死に抑えていた。落ちても死なないしエアライドもある。だが、地に足がつかない浮遊感はどうしても苦手なのだ。数秒後、彼は刻の涙を見る。
    「飛べない人はただの人だ!」
     どこかで聞いたようなセリフを発しながら鉄骨番長を飛び出したのは咢(d10721)。鳥がはばたくように両手を広げ、勢いよく頭から窓に突っ込む。ガッシャーンと派手な音を立て、砕けたガラス窓に頭が刺さった。そこから抜け出すのに十分かかった。
    「おぉーホントに上がってる! 回ってるーいい景色!」
     鉄骨番長に振り回されながら、恒汰(d11264)が興奮して声を上げる。しかし楽しんでいる間に他の灼滅者たちは乗り移ってしまった。
    「オレが最後? せーのっ、うわーなにこれすげー楽しい!」
     そして、恒汰も未知が待つ空へと飛び立った。
    「うっひょー! 飛行船なんて乗るの初めてだぜ! やっぱり空は青いのかな!? やっぱり空は高いのかな!?」
     風凛(d11950)はもはやゲルマンシャークのことなど忘れ、はしゃぎまくって意味不明なことを口走っている。水を得た魚のように、嬉々とした表情で飛行船へと向かって飛んでいく。
    「きゃーーーー! 降ろしてーーーーー!!」
     絶叫しながら、ブランダーバス(d14185)はこの状態から抜け出そうと安全装置に手をかけた。結果、空中へと投げ出され、またも絶叫しながら頭から飛行船に突っ込んだ。涙で小さな虹ができたとか。
    「チクショー、こうなったらやるしかねーよな! あいきゃんふらーい!」
     啓介(d15835)は覚悟を決め、目に涙を浮かべながら鉄骨番長を飛び立つ。そしてなんとか飛行船にしがみついた。啓介は飛行船への侵入に成功すると、いそいそとWCと書かれた扉の先へ消えていった。ジャー。
     影虎(d16331)が飛行船にとりついたところで異変が起こった。飛行船の高度が上がり始めたのである。地上にいるものがだんだん小さくなっていく。
    「わ、私の推理よりも高すぎじゃないかねコレ!? え、ええい推理ジャーンプ!」
     ホームズ(d12006)がまごついているうちに、飛行船がさらに遠ざかっていく。意を決して番長から飛び立つが――。
    「わとすーん!?」
     あさっての方向へ射出された彼は、奇妙な悲鳴を発しながら星になったのであった……。
     道化師の装いをした少年、桐真(d14089)は鉄骨番長から飛び出し、空中で華麗に三回転半を決めたあと――鈍い音を立てて、頭から地面に激突し、赤い花を咲かせた。地に伏せる彼の顔は、どこか満足そうだった。
    「……死ぬほど痛いだろうって言ってたけど、これはあれだね……。痛すぎて、死んでる場合じゃないってやつだね……きっと……。まさか失敗するとは……みんな、がんばって……ガク」
     いつの間にか落ちていたらしい。幸(d06678)は思いを仲間に託して力尽きた――。

    ●それぞれのせんたく
     多くの灼滅者たちが飛行船へと飛び移っていく間、それをサポートしている者がいた。
     フィーナル(d03799)とラジョーネ(d16431)は箒にまたがり、飛行船に乗り移るのに失敗した灼滅者を救助していた。それでもこぼれ落ちてしまったものは……うん、仕方ない。
    「それにしても、この飛行船……」
     フィーナルは眉をひそめながら飛行船を見上げる。飛行船は、ミサイルにサメの顔を貼り付けたような、そんなデザインをしていた。
    「……凄いなあ」
     水希(d06828)は鉄骨番長と飛行船を交互に見やりながら、この作戦に名乗りを上げた同じクラブのメンバーのことを思う。
    「まさか、ブランコごと飛んでったりしない、よね……」
     ぼんやりとブランコを眺めながら、ポツリとつぶやいた。
    「撮影です!」
     この奇々怪々な状況をごまかすため、一嘉(d09082)はクラブの仲間とともに一般人に呼びかける。バベルの鎖で伝播はしないのだが、一般人の不安を取り除くのも立派な仕事だ。
     スガタ(d03740)は誰か落ちてこないかと観察、もとい確認をしていた。期待はしていない、多分。飛行船の高度が上がっているので拡声器で伝えようとしたのだが、残念ながらおそらく届いていないだろう。
     フォリナ(d14857)もまた飛行船の動きに気付き、旗を振って飛ぼうとする灼滅者を止めようとしたのだが、それでも挑戦する灼滅者もいてあまり効果がなかったよう。気を取り直して、双眼鏡で飛行船の観察を始めた。

     彼女と食べ歩きする逢真(d12994)の頭上を、鉄骨番長から飛んでいく灼滅者たちが通り過ぎていく。
    「あの作戦本気で実行したのか!?」
      もちろん。
    「便利だな……バベルの鎖」
     そして逢真は、何事もなかったようにデートを続行した。

    ●ゴゥトゥコックピット
    「ふう……」
     ひとまず侵入に成功し、立花(d00205)は一息ついた。落ちてネタにならずに済んだのは幸いだ。鬱憤を晴らすべく、操縦室めがけて駆けていく。しかし油断してはいけない。脱出するまでが潜入です。
     アロア(d00565)は先頭めざして走る。飛行船に乗る機会があまりないせいか、ルンルン気分。ふと外を見れば、富士急ハイランドが広がる。
    「気持ちいーい!」
     立ち止まって、思わず叫んだ。
     六合(d11240)は飛び降りるときに視界に入った富士山を脳細胞に焼き付けつつ、操縦室を探して走っていた。
    「おっとっと」
     曲がり角に差しかかり、手鏡を使って先を確認する。ちらっと、見えた。なんかドデカいソーセージが。怪人がいる模様。気付かれないよう経路を変更する。
     操縦室を目指す者がもう一人。愛梨栖(d12997)だ。敵陣に乗り込むという危険な作戦ではあったが、まるで映画のようなシチュエーションにワクワクを隠せない。気分はアクション女優だ。

    ●スパイアクション的な
    「レッカー!」
     飛行船内部では、ジョッキを帽子のように被ったビーア戦闘員がご当地グルメで一杯やっていた。侵入者がいるにもかかわらず呑気なものである。こっちはこっちでお祭りムードだった。
     かなめ(d00623)は壁を背にして、足音を殺しながら進む。時にしゃがんで戦闘員の視線をかわした。仲間と情報を共有すべく、敵の配置や船内の構造をメモしておく。
     なぜかメイドの姿をしている少女、メイ(d00625)。もちろんフリフリフリルメイド。飛行船に乗るまでは面白かったのだが、戦闘員が酒臭くて気分台無し。結局日本刀を振り回して切り倒した。
    「みんなの犠牲は無駄にはしない……!」
     アンカー(d00625)はクラブの仲間のことを想い、胸の前で拳を握る。他のメンバーは多分みんな落ちた。お化け屋敷よろしく女の子に触れるチャンスだと思ってたので、一人肩を落としたのであった。
    「……前代未聞過ぎる、ブランコで乗り込めとか。……何故エクスブレインは無茶ばかり」
     さっきの跳躍を思い出し、白夜(d02425)はため息をついた。だってコレしかないんだからしかたない。ダークネスの予知を無効化するためでもある。命懸けということを肝に銘じ、息をひそめて戦闘員たちの警備をかいくぐる。
     翼(d02688)は通路に隠れ、戦闘員をやり過ごす。恋人とははぐれてしまったが、すべきことは変わらない。中の様子を小型のカメラに収めつつ、奥へ進む。
     鉄骨番長の興奮も冷めやらぬ中、銀河(d2950)は物珍しそうに目を輝かせて、あたりを見回す。一応は緊張感を持って抜き足差し足忍び足。しかし携帯のカメラでパシャパシャ音を立てていたら意味がないというものである。
     光明(d03420)は怪人や戦闘員に注意しつつ、飛行船の構造を探る。地上から観察してもよく分からなかったが、中に入ってみても結局よく分からなかった。目指している機関部は遠そうだ。
     さっきまで光明と一緒にいた断(d03902)は物陰に隠れながら、今まで見たことがないご当地怪人に目を奪われていた。ちなみに今、断が目撃しているのはアイスバイン怪人。塩漬けした豚のすね肉の怪人である。ジューシーでおいしそうだった。
     他の灼滅者と離れ、聡士(d05138)は一人で飛行船の中を進む。時折部屋に入って探るが、目ぼしい物は見つからなかった。その時、戦闘員の足音が聞こえる。
    「あれ、誰もいないぞ?」
     戦闘員の足元を、一匹の蛇がすり抜けて行った。
     優雨(d05156)は連れとはぐれ、一人で船内を歩く。なんとか警備が厳重なところへ潜り込みたいが、しっとりバウムクーヘン怪人がどこにあるか分からない目を光らせているため、入れそうにない。諦めて他の場所を探ることにした。
     息をひそめ、琉嘉(d05551)は密かにご当地怪人たちの様子を探る。今までに確認したのはバウムクーヘン怪人、ヴァイスブルスト(白ソーセージ)怪人、シュトレン(ドライフルーツとかナッツが入った菓子パン)怪人など。地上のご当地グルメ大会に対抗しているのだろうか。
     メアリ(d06603)は聞き耳を立ててラグナロクの情報がないか怪人たちの話を盗み聞きしているが、どうやらラグナロクはこの件には絡んでいないようだ。あとは戦闘を避けつつ、ぶらりぶらりと船内を散策。
    「ぜぇ……ぜぇ……」
     鉄骨番長の余韻に苛まれながら、司(d08234)は今後の予定とか作戦とか書かれてそうな書類を探す。正直、マジ怖かった。ちなみに見つかった書類は、ご当地グルメに関するものばかり。おかげで少し食欲が戻ってきた。
    「ううう……もう二度とあんな危ない乗り物には乗らないのです……!」
     ちょっとトラウマになりそうだと思いつつ、銀二(d08733)はナノナノとともに飛行船内部を進んでいく。なお、鉄骨番長は普通に乗れば危なくないので一般人の方は安心して乗ってください。
     壁に手を当て耳を当て、ユエファ(d02758)は隠し部屋などがないか探ってみる。
    「……ん?」
     力を入れると、ガコンと音を立てて壁の一部が沈んだ。ウィーン、ガシャ。どこかから機械が動く音がした……気がした。

    ●ビーストチェエンジ!
     灼滅者たちはそれぞれ工夫を凝らして船内を探索していた。動物に変身するESPを使用していた者がいい例だろう。
     猫に変身したのはエリザベス(d07499)とわんこ(d09625)、夕月(d13800)、凛音(d14050)の4名。エリザベスは、この飛行船で秘密兵器か他のご当地幹部を運んでいると睨んでいるが、今のところそういったものは見つかっていない。改めてゲルマンシャークの野望を考えてみることにした。
     厨房を探して走るのはわんこ。名前はわんこだが変身しているのはにゃんこ。酔っぱらったアイスバイン怪人からお肉をもらってご満悦の様子。ビーア戦闘員に見つかった夕月は戦闘員と追いかけっこ。捕まったら捕まったでボードゲームの勝負を挑むつもりが、いつの間にかまいていた。本場ドイツの怪人と対戦してみたかったので、少し残念。
     凛音は怪人や戦闘員の足元をくぐり、ゲルマンシャークを探すが、思うようにはいかない。意外と機密保持に関してしっかりしている組織なのか、データも紙媒体も入手できなかった。
     一方、アルベルティーヌ(d08003)と継夜(d13455)は蛇の姿になって船内を進む。
     継夜はダクトを通って部屋を移動するが、運悪くどこも空室。ただ、ダクトがきれいに掃除されていて通りやすかったことは敵ながら少し感謝しておく。ドイツのお菓子を少しつまみぐい。
     アルベルティーヌは蛇の体を生かし、にょろにょろと狭いところを進んでいくと。
    「フハハハ、ゲルマンシャーク様サイコー!」
    「他のダークネスたちめ、ご当地怪人選手権でサイキックエナジーを集めて復活の糧にするなど、夢にも思うまい!」
     怪人が割と大声で話しているのが聞こえてくる。ゲルマンシャークの目的は、割とだれでも思いつきそうなものだった。

    ●我らダークネス!
     シュヴァイネハクセ(ロースト豚足)怪人はジョッキを両手に船内を巡回し、侵入者を捜索していた。
    「貴様、何者だ?」
    「私はご当地幹部ロシアンタイガー様から遣わされたご当地怪人シベリアンフォックスだ! 私の言葉はロシアンタイガー様のお言葉と思え!」
     虎の威を借る狐のごとく名乗りを上げたのはジュラル(d02576)。
    「よし飲め飲め」
     未成年に飲酒はご法度。危なく飲まされそうになるジュラルを救ったのは――。
    「こんにちは~」
     ぴっちりラインのチャイナ服にネコミミ、猫なで声の友(d04605)だった。淫魔に扮しているのだ。
    「がんばってくださいね♪」
    「では一緒に飲もうではないか」
     酒を勧める豚足怪人は友をしつこく引き止める。
    「とぁああーっ!」
     シュタッ! 黒衣の忍者がなぜか壁から飛び降りてきた。
    「何奴!?」
    「拙者はご当地怪人シャドウニンジャ!」
     シャドウニンジャこと信蔵(d07956)は無駄に忍者っぽいポーズでアピール。
    「飲め飲め」
    「とうっ!」
     ジュラルと友がこの場を離れたのを見届け、シャドウニンジャはスカイダイビング――というか、ただの飛び降りで脱出した。未成年の飲酒は厳禁なのだ。

    「やめて! 私に乱暴する気でしょう? 薄い本みたいに!」
    「な~にが横須賀カレー怪人だ。ご当地怪人をバカにしおって」
     一方、変装がばれてシュトレン怪人と戦闘員に囲まれた霧緒(d04905)。
    「にゃんにゃん、ゲルマンシャーク様にご挨拶に来たにゃん」
     そこに黒い猫耳と赤いリボン付き尻尾装備のリーンハルト(d07672)が現れた。彼女もまたご当地怪人に扮しているのだ。けっこう楽しい。
    「待て、ゲルマンシャーク様がどういう状態か知らんのか?」
    「え?」
    「貴様、敵だな!」
     鋭い奴なのか、シュトレン怪人はリーンハルトの変装を見抜き、ナッツガンの銃口を向ける。リーンハルトの頬を汗が伝う。
    「ゲルマンはドイツ語でシャークは英語だ! シャークマウス? しらねえよ! 僕はそっち方面疎いんだし! ご当地としてもどうなんだよ! どこのご当地だよ!」
     よく分からない怒りを募らせながら、ちくさ(d04216)が通りかかった。
     紆余曲折の末、三人まとめて船から放り投げられた。

    ●潜入中 逃げ切れたら○○万円
    「は、はわ! わ、私は札幌のご当地怪人ガラナおじさんの仲間の……そ、そう、カツゲンねえちゃんです!」
     戦闘員と鉢合わせしたレイラ(d04793)。とっさに以前戦ったご当地怪人の名前を出すが……苦しい。戦闘員はレイラの顔を見つめると、何も言わず去った。それでいいのか戦闘員。
    「これ終わったら次の楽しいイベント考えてるの?」
     朱花(d05354)はアイスバイン怪人に見つかってしまったのだが、話してるうちになんか打ち解けた。
    「ん~、オラはしらねえな」
     田舎っぽい口調のアイスバイン怪人。
    「そっか、ありがと」
    「気ぃ付けてな~」
     そして、お互い手を振って別れたのであった。
     目の前にはセンサーのレーザーっぽい光。レオン(d08240)は息を呑んだ。
    「せーのっ、アイン、ツヴァイ、ドライ!」 側転、バク転、バク宙! 華麗に着地!
    「どうじゃ」
     ブー、ブー、ブー! 一分後、レオンは怪人たちに取り押さえられた。
     エリシア(d09962)は単身隠密行動で進むも、行く先々にご当地怪人が配置されていて思うように進むことができない。何かを押してはいけない、と怪人の会話から聞くことができただけだ。
    「ジョウホウ、情報、と。」
     どうにかして情報を引き出そうとエール(d10774)はパソコンなどの端末を捜索したが、それらしいものは見つからない。
    (「鉄骨番長で飛び移れとか、エクスブレインってたまに無茶言うよな」)
     とか考えつつ、桜太郎(d10960)はゲルマンシャーク及びグローバルジャスティスについて情報を探してみるが、今のところよく分からないということだけは分かった。
    「窮屈だけど我慢我慢♪」
     豊かな胸がきつそうな、というか絶対きついであろう黒のレオタードを着ているのは舞(d11898)。歩くたびに胸がぷるぷる揺れるけど気にしない気にしない。
    「ええと、これはつまり……ほとんどが落下した、ということなんだろうか……」
     凛弓(d12218)がポツリと呟いた。ちなみに先に飛行船が飛びたってしまって番長に乗れなかった者も割といる。だが、エアライドがない凛弓も落下ほぼ確定だと気付いているだろうか。式(d13169)はビハインドの神夜とともに、気配を殺しながら船内を回る。重要そうなことはメモしているが、なかなか核心に迫ることができない。今のところ壁や床にも怪しいところは見当たらなかった。
     蜜花(d14129)は大胆だった。
    「ゲルマンシャークさんのいるお部屋はどこですか? あと、これ長野のお土産なのね!」
    「どうも御丁寧に」
     バウムクーヘン怪人に手渡したのは生のおそば。長野の名産品である。しかしこの怪人、割と抜け目ない奴で、うまいこと蜜花を煙に巻き、そばだけせしめてしまった。
    「さーて、鬼が出るか蛇が出るか」
     春夜(d14564)はスパイ気分で飛行船の中を探索。通路を曲がろうとしたところで気配を感じ、とっさに身を隠す。すると、リーゼントのように白いソーセージを頭に付けた怪人が通り過ぎっていった。間一髪だった。
    「ったく、空中ブランコから飛び移って潜入とか、どこのアクション映画だよ」
     まぁ死ぬことはねぇからいいかと、御伽(d15646)はぼやく。成果はあまり芳しくないが、他にも灼滅者は潜入しているし、誰かが必要な情報を持ち帰ってくれるだろう。
    「俺、地域を愛してる皆さんに感動してここで働かせてもらってるんです!」
     飛行船スタッフの制服を探しているうちに、ヴァイスシュパーゲル怪人に見つかった零(d14333)。ちなみにこの怪人、腕と頭が白アスパラガスである。
    「「……」」
     いぶかしむような視線に我慢できなくなった零は対艦刀を振り回して暴れ始めた。
    「うまくいきませんね」
     雅(d14866)は同じクラブの零と同じようにスタッフの制服を借りて紛れ込もうとしたのだが、それらしいものが見つからない。ここの戦闘員は会話できないようなので、下層グループからの情報収集は難しそうだ。
     他にも、小町(d15372)や加奈(d15500)が船内を探してみたが、データや書類などは見つけることができなかった。
     その頃。
    「フハハハ、ゲルマンシャーク様サイコー!」
    「他のダークネスたちめ、ご当地怪人選手権でサイキックエナジーを集めて復活の糧にするなど、夢にも思うまい!」
     虚(d03063)はアホみたいに声のデカい怪人たちの話を盗み聞きしていた。

    ●戦いあるのみ
     多くの灼滅者は戦いを避けて探索する方針をとっていた。しかし、血気盛んに戦いを挑む者や見つかって仕方なく戦闘に突入する者、他の灼滅者のために注意を引こうとした者も少なくなかった。
    「!?」
     こっそり怪人を尾行していたところを、うっかり物音を立てて気付かれてしまったさくら(d01657)。霊犬のルディとともに複数のビアー戦闘員を迎え撃つ。守りを固めつつも、増援を呼ばれないように積極的に攻撃。そこにグロード(d06231)が加わり、注意を引き付けるべく斬艦刀を駆使して応戦する。マキシミン(d15501)はナイフに蓄積された呪いを解き放ち、毒の風を浴びせて戦闘員たちを牽制した。
    「次があるかどうかわかりませんから自己紹介くらいはしましょうか。私は鷹合・湯里……鷹甘の地が生んだ神薙使いです」
    「神薙使いなのか!」
     湯里(d03864)のご当地ヒーローっぽい名乗りに、シュペックカルトッフェル怪人が反応した。ちなみにシュペックカルトッフェルとは日本で言うジャーマンポテトのことである。湯里はとりあえず神薙使いらしく鬼神変をぶちかます。戒(d04253)が二振りの刀を抜いて助太刀、所狭しと通路を蹴り、雲耀剣をお見舞いした。
    「ご当地とか良く知らないし興味ないわすまんな」
     怪人どころかご当地ヒーローまで怒らせるようなセリフを吐いたのは椿(d06320)。
    「ゲルマンシャークってつまり鮫でしょ? 鮫って美味しいらしいよねじゅるり。飛行船落下させようぜ! ひゃ――」
     一般的にサメはおいしくない。そして椿はビハインドともども激怒した怪人に投げ捨てられた。
    「何とかと煙は高い所が好きという事でしょうか。私達の事も考えてもう少し低い所を飛んでほしいものです……うっ」
     利亜(d06760)は重力に逆らった代償で何か胃から出てきそうなのを抑えつつ、閃光をまとった拳を連打。こんな状況でもちゃんと力を発揮できるのが灼滅者である。
    「富士急ハイランドを荒らさないでよ……結構楽しいんだから……」
     アイリス(d16651)は周囲に護符を展開し、結界を発動。積極的には攻撃せず他の灼滅者をサポートする構えだ。
    (「世界征服って言うけど……具体的にはどうすればいいのかしらね」)
     ご当地怪人たちのやり方に疑問を覚える剣(d09551)だが、強者に挑み、戦うのは嫌いではないため、問題はない。
    「いい天気ね」
    「ああビールがうまい!」
     刃を交えつつ、なぜか怪人と世間話をする剣であった。
    「にゃ」
     『肉球戦隊ヌコレンジャー』の中で唯一ここまでたどり着いた戦士、それが『滴る長毛種・ホワイトシルバー』こと綾鷹(d10144)である……らしい。左右対称にポーズを決めてから、紅蓮にゃん(紅蓮斬)で怪人に襲いかかる。
    「ウチがスターイエローや。ボコッて星屑にしたるさかいに覚悟しいや」
     澄香(d16114)は大阪なまりの口調で言うと、ガンナイフを構え、弾丸を撃ち出す。弾は見当違いの方向に飛んだかと思うと、弧を描いて戦闘員に突き刺さる。
     他の灼滅者が探索しやすいようにと、静(d11587)は怪人たちを引き付けるため、刀を抜いて一閃。海賊に扮したドナ(d12443)が、すかさず死角から斬撃を繰り出すと、プレッツェル怪人の体から塩の鎧がはがれる。
    「乳酸発酵パンツァー!」
     怪人たちも黙ってはいない。ザワークラウト(すっぱいキャベツ)怪人が、全身にキャベツの装甲をまとい、灼滅者に突進する。
    「ぬおー!」
     そこに壁をぶち抜いて遼人(d12886)が駆け付けた。しかし遼人はそのまま外壁を突き破り、青い空に消えていった。
    「……なにあれ」
     李狗(d13760)は遼人が通ったあとを呆然と見やりつつ、味方に防護符を飛ばし続ける。双調(d14063)のガトリングガンが火を噴いて戦闘員を撃ち抜いていく。少しでも仲間の役に立とうと、正確な射撃で灼滅者たちを援護する。
    「必殺ゥウ!」
    「やめ――」
    「シュトゥルム・カルトッフェル!」
     プレッツェル怪人の制止を無視し、シュペック何とか怪人が気合の一声を発すると、全身に装備したイモの鎧が弾け、周囲にいる者を攻撃した。
    「「うわああああっ!」」
     壁と床がさらに崩壊。戦闘に参加した灼滅者と怪人のほとんどが巻き込まれて落ちていった。

    ●火事場泥棒
     ごっそごっそ。
     飛行船の一室。ビスコ(d00552)は積み上げられた荷物を漁っていた。
    「やぁねぇ、これはれっきとした敵の資金源の情報収集よ」
     と誰もいないところに向かって言い訳している。
    「面白そうなの発見!」
     倉庫に忍び込んだのは一人ではない。恵(d01159)もまた興味をひかれ、目を輝かせながら荷物を探っている。恵の目にかなう物は見つかるだろうか。おっと、ドイツのお菓子を発見。
     食糧目当てに倉庫にやってきた銀都(d03248)が見つけたのは大量のビールの缶と瓶。果実で香り付けしたものなど、日本ではあまりみられない種類のビールが山積みになっていた。当然お酒は学生にはまだ早い。
    「……ましろ、行ってこい」
     飛び移るので力を使い果たしたのか、昴(d03592)は完全に休憩モード。探索は霊犬に任せ、自分は音楽の世界に浸っていた。
     コン、コンと扉をたたき、ビハインドの波音とともに現れたのは彩葉(d11279)。空き箱をつついたり、箱の中身を調べたりと遊ぶのに忙しいようだ。
     そして、ゆみか(d13385)は飛行船内に蓄えられた食料を一心不乱に口に放り込んでいた。彼女いわく兵糧攻めらしい。灼滅者たちも怪人に負けずフリーダムだった。

    ●ウィーラヴダンボール
     ソーセージまん。そう書かれたダンボールが飛行船内を徘徊していた。
    「うわー、まさかゲームとかのをこういうとこで使うとは……!」
     ダンボールの中でそう呟いたのは雷(d01046)。小さく開けた穴から外を覗くと、視界が狭かった。
    「こんなところに箱が?」
     レープクーヘン怪人が見つけたのは仁人(d02544)が入ったダンボール箱。レープクーヘンとは香辛料を使ったケーキの一種。
    「戦闘員め、ちゃんと片づけておけ」
     仁人は身動きせず怪人をやり過ごし、背後からこっそり追跡。しかし問題が起こった。
    「……?」
     怪人がもう一つ、ダンボール箱を見つけたのだ。中に入っているのはへる(d02923)。怪人に気付かず、ずるずる動いている。ダンボールは周りがほとんど見えなくなるので、後ろから近づかれても分かりにくい。某伝説の傭兵とかでないと割と危険な装備だ。
    「フン!」
     レープクーヘン怪人がクーヘン手裏剣を投げてダンボールを切り裂くと、中から仁人とへるが出てくる。二対一では灼滅者に勝ち目はない。
    「俺に任せて先に行けぇ!」
     そこにまたダンボールが飛び出してきた。ダンボールの中から咲楽(d09216)が現れ、怪人の足元を切り裂き、一緒に落ちていった。へるはラッキーと思って咲楽が残したダンボールをかぶりなおした。

    ●ゲルマンシャーク!
     灼滅者や怪人たちが戦ったり追いかけっこしたり仲良くなったりしている間に運良くゲルマンシャークの元にたどり着いた灼滅者も数名いた。
    「なんだこれは?」
     瑞樹(d00403)は他の灼滅者を囮に使い、飛行船内をさまよっているうちにいつの間にかボス部屋っぽいところにいた。見つけたのは、プロペラ戦闘機が二足歩行になったかのような石像。
    「像? どんだけ自分好きだよ……。キモいな」
     さらに、啓介からトイレの場所を教えてもらって用を足してきた蓮二(d03879)もやってくる。
     いつからそこにいたのか、像の足元には泰河(d03676)が座り込んで、短冊に何やらお願い事を書いている。
    「お体に気をつけてくださいね」
     そう言ってメロンを差し出す泰河。
    「貴様ら、ご当地幹部ゲルマンシャーク様に何をしている?」
     何を隠そう、この石っぽい像が今のゲルマンシャーク。そんなこんなしているうちに、三人はドイツビール怪人に見つかってしまったのだが――。
     ウィーン、ガシャ。何か変な装置が作動する謎の音が響いた。

    ●戦いは続く
     ゴゴゴ……飛行船が突然揺れ始めた。
    「な、なんだ?」
    「大変だ! 集めたサイキックエナジーが暴走している!」
    「何ぃ!? 誰だあのスイッチを押したのは!? あれほど押すなと言ったのに!」
     慌てた様子でシュネーバル怪人が駆け付け、状況を説明した。そこかしこからバチバチと火花っぽいものが出て、ところどころ煙が噴き出していた。
     船内に残っていた灼滅者は危機を察知し、脱出を試みる。さっきまで船内を火祭りにしていた七緒(d07209)は、用意してきたエアライドをあてにして飛び降りた。出口を確保していた流水(d07761)の誘導により、灼滅者たちが次々と外へ飛び降りていく。
     箒やエアライドが使えるものは落下の心配はないが、逆にない者は地面激突確定である。キャーキャー悲鳴とか歓声を上げて飛び降りていく灼滅者。今日ほどバベルの鎖のありがたさと恐ろしさを感じた日はない……かもしれない。
     灼滅者たちが脱出した後、飛行船は黒い煙を出しながらフラフラと空をさまよい――「ドカーン!!」と空中で華麗に爆散、夕暮れの空に消えていく。一般人からは多分花火か何かだと思われただろう。
    「このくらいでゲルマンシャークが滅びるはずがない! 戦いはまだこれからや!」
    「「おーーー!!」」
     澄香が勢いよく拳を突き上げると、灼滅者たちの雄叫びが富士急ハイランドに響いた――。

    作者:邦見健吾 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年4月16日
    難度:普通
    参加:1491人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 21/感動した 6/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 83
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