全国ゆるきゃら怪人選手権! 温泉もあるよ

    作者:海あゆめ

    ~宮古島・うえのドイツ文化村地下秘密基地~

    「ゲルマンシャーク様が3分間だけ復活なさったぞ!」
    「全員整列! ゲルマンシャーク様のお言葉を拝聴しろ!」
     注目するドイツ化ご当地怪人達の前に、ゲルマンシャークがゆっくりと姿を現す。
     そして、確固たる威厳ある口調で、怪人達に檄を飛ばし始めた。

    「いずれの勢力も大きく減衰している現状で、蒼の王コルベインを制する者達が現れた!
     我が復活も未だ遠い。お前達は危急に、ご当地パワーを高めなければならぬ!
     ならば、取るべき方法はひとつ!」

     怪人達を静かに見回したゲルマンシャークは、声高らかに宣言する。

    「グローバルジャスティス様よご照覧あれ!
     これより『第2回ご当地怪人選手権』を開催する!
     急ぎ、出場選手を集めるのだ!」
     

    「みんな、お疲れ様! ま、あたしは最初からみんななら勝ってくれるって信じてたけどね♪」
     そう、悪戯っぽく笑って、斑目・スイ子(高校生エクスブレイン・dn0062)は灼滅者達を労った。
     昨日の不死王戦争に、無事勝利した灼滅者達。だが、この戦いで蒼の王コルベインが灼滅された事で、ダークネスの世界にも動きが出る。油断できない日々が続くのは言うまでもなかった。
     今日、灼滅者達がここに集められたのも、何か事件があるからなのだろう。案の定、スイ子が少し申し訳なさそうにしながら灼滅者達の顔色を窺ってくる。
    「あのね、さっそくなんだけど……ゲルマンシャークがね、なんか、第2回全国ご当地怪人選手権とかっていうの、するんだって」
    「だ、第2回ご当地怪人選手権!?」
    「何、それ……?」
     思わずどよめく灼滅者達。起こる事件は思いのほか壮大だった。
     ご当地怪人幹部、ゲルマンシャーク主催の、第2回全国ご当地怪人選手権。開催地は、山梨県の富士急ハイランド。
     ゲルマンシャークからの召集を受けた多数のご当地怪人達が、すでに山梨県を目指して移動しているらしい。
    「っしゃ! したっけそこに皆で乗り込んで、怪人達をぶっ飛ばせばいいんだな!」
    「は~い、ストップストップ。もぉ、コロ夫ってば早とちり君なんだからぁ。そんなんじゃ女の子に嫌われるぞ♪」
     気合充分に勇んだ、緑山・香蕗(高校生ご当地ヒーロー・dn0044)の鼻先を人差し指で、ちょんと突いて、スイ子は、にひっ♪ と笑ってみせた。何だか恥ずかしい感じに出鼻を挫かれた香蕗は気まずそうに顔を赤くしながらスイ子の手をどかす。
    「……っつーことは、何か理由があんだな?」
    「うん。あのねー、選手権の期間限定で闇堕ちしてるご当地ヒーローの人達もたくさんいるらしいんだよね。それに、富士急ハイランドに遊びに来てる一般の人達もいるんだから、大人数で暴れ回ったりなんかしちゃったら大変だよ?」
     スイ子の言う通り、怪人達との全面対決に持ち込んでしまえば、色々な方面で大きな被害が出てしまうだろう。
    「だからね、今回みんなには富士急ハイランドに行って、施設と一般の人達に被害が出ないように、さりげなーく警備して欲しいの。あ、なんだったらご当地怪人選手権に紛れて参加してみても良いかもね~」
     なお、選手権当日、富士急ハイランドの上空にはゲルマンシャークの飛行船もあらわれるらしい。
     富士急ハイランドの平和を守ると共に、今後の対策を立てるため、ご当地怪人幹部、ゲルマンシャークの野望を突きとめるのが、今回の灼滅者達の任務である。
     
    「で! ここに集まってくれたみんなには、ゆるきゃら怪人選手権の対応にあたってもらいたいの」
    「ゆ、ゆるきゃら怪人……」
     そんなカテゴリーがあったのか、と再び灼滅者達はどよめいた。
     集結した全国のご当地怪人達が、あの手この手で自らをアピールする、第2回全国ご当地怪人選手権。その中で、自分のキャラクターの可愛さや濃さ、あるいはキモ可愛い加減を、人の迷惑も省みず、推しに推しまくって愛想を振りまいているのが、ゆるきゃらご当地怪人達なのだという。

     例えば、こんな怪人達だ。
     北海道のゆるきゃらご当地怪人、『ラム肉男爵ジンギス・ハーン』。ヒゲの生えた丸いジンギスカンの鉄鍋という愛嬌のある外見だが、何かあるたび、「お前もジンギスカンにしてやろうか!?」と人を威嚇する困ったさん。
     山形県のゆるきゃらご当地怪人、『さくらん坊ちゃん』。左右のさくらんぼの実の顔を一人二役で演じる、おしゃまさん。「ククク……左の俺が出てくるまで、せいぜいさくらんぼの軸でも口の中で結んで待っているんだな」とか言っちゃうくらいおしゃまさん。
     沖縄県のゆるきゃらご当地怪人『マングースさん』。とっても謙虚なマングースさんは、「え? ハブと対決ですか? ムリムリ、自分にはムリっすわ~」と、観光客の期待をナチュラルにぶち壊す。
     他にも、全国各地からこんな調子のゆるきゃらご当地怪人が目白押しだという。
     
    「ゆるゆるな怪人さん達だからね、一般人の振りして一緒に戯れてみてもいいし……あ、ゆるゆるでも一応ダークネスなワケだから、本当の一般の人が危険な目にあわないようにガードしてくれるのも助かるよ。あと、せっかくだから何かネタのある人は、ゆるきゃらを開発して選手権に飛び入りしちゃうのもいいかもね♪」
     言いながら、スイ子は何やらゴソゴソと側に置いてあったダンボールの中を漁り始める。
    「と、いうワケでぇ……はい、じゃ~ん。あたしも考えて作ってみたよ。名付けて、『アカン星人マリモリアン』!」
    「何だそれ、ただの緑のでかい球じゃねぇか」
    「違うよぉ、ボク、地球に不時着しちゃったアカン星人マリモリアンだよぉ。ボクの生まれたアカン星にそっくりな北海道の阿寒湖を征服するのがボクの野望なんだ。ほぉら、こんなふうに……てやー!」
     緑色の大きな球状の物体を自分の顔に重ねながら、ゆらゆらと不気味に香蕗の元へと近づいていったスイ子が、その緑色の球体を香蕗の頭に勢いよく被せた。
    「!? 何だこれ! なんも見えねぇぞ!!」
     頭部が緑の球体と化した香蕗が狼狽する。
    「っていう感じでぇ、せっかくだからみんなも楽しんでおいでよ。被害が出なければだいたいおっけーだから♪」
     そんな香蕗を無責任に放置して、スイ子は適当な感じに言って笑った。
    「選手権が終わった後は、ゆるきゃら怪人達と一緒にふじやま温泉でまったりしてくるのもいいかもね~、にひひっ♪」
     選手権の後、ゆるきゃら怪人達はこぞってふじやま温泉へと繰り出すらしいので、引き続き施設や一般人に被害が出ないように見守る必要もあるとのこと。
     ゆるきゃら怪人達と戯れたり温泉に入ったり……普段なら絶対にあり得ないシチュエーションではあるが、せっかくの機会だ。自分達も楽しみながら、任務を遂行するのも悪くないだろう。
    ■このシナリオは『TRPGリプレイ連動シナリオ』です
     このシナリオは『サイキックハーツRPGリプレイ(2)灼滅者に刃は輝く』との連動シナリオです。
     是非、第2回全国ご当地怪人選手権を、お楽しみ下さい!

    ●このシナリオは『参加無料』です
     みなさん気軽に右下の『参加する』をクリックし、参加してください。
     ただし、参加するには自分のキャラクターが必要です。まだキャラクターを持っていない人は、ここから作成してください。キャラクター作成も無料です。
     https://secure.tw4.jp/admission/

    ●リプレイには『抽選で選抜された100人』が描写されます
     このシナリオは学園シナリオです。参加者は必ずリプレイで描写される訳ではありませんが、冒険の過程や結果には反映されます。
     なお、今回のシナリオでは、抽選で選抜された100人のキャラクターが描写されます。抽選はトミーウォーカーが行います。

    ●ご当地ヒーロー限定、『選手権だけ闇堕ち』!
     ルーツ『ご当地ヒーロー』の灼滅者は、不思議な選手権パワーに汚染されたとか何とかで、このシナリオでだけ、『ご当地怪人』に闇堕ちすることができます!
     怪人になるときは、プレイングの一行目に【ご当地怪人としての名前】を書いた上で、怪人として、どうしたいかをプレイングに書いてください。
     闇堕ちするのは会場内(リプレイ)でだけです。このシナリオに怪人として参加しても、他の場所では普通にふるまってください。
     もちろん、「システム的な闇堕ち状態の制限」も受けず、リプレイが終わったら勝手に戻ります。


    ■リプレイ

    ●ゆるきゃら怪人といっしょ!
     ついにやってきた、第2回ご当地怪人選手権。全国各地のゆるきゃら怪人達が集まるこの場所も大賑わい!
     中でも、外見の可愛さを全面に押し出しているのは、動物モチーフのゆるきゃら達だ。
     ぬるりとした長い身体とつぶらな瞳が可愛らしい、沖縄県のゆるきゃら怪人、マングースさん。
    「なんて、なんて可愛いのでしょうっ……! ほら、二人も、一緒に!」
    『えっ、写真っすか。自分そういうのちょっと苦手なんすけど……』
     親戚の兄弟の手を引きつつ、一緒に写真を! と請う、龍華・倖(藤色トロイメライ・d00838)に、渋々だけど選手権だからか頑張るマングースさん。
    「……うん、やっぱりマングース可愛いわ」
     そんなマングースさんの様子に、彼と会場内を見て回っていた、ディアナ・ロードライト(比翼の片羽根・d05023)も、微笑ましいものを見るように目を細めて笑った。
     青森県は白神山地に生息する、クマゲラのご当地ゆるきゃら怪人、クマゲラゲラ。
    「ん。ずいぶん大きいなぁ……」
    『ゲラは鳥だけどクマサイズゲラゲラゲラ!』
     ずいぶんと大きいその身体を見上げて感心する、山城・大護(高校生ダンピール・d02852)に、クマゲラゲラは得意げに鳴き声を上げてみせる。
     群馬県の文福茶釜で有名らしいたぬき怪人は、愛くるしい表情ともふもふの尻尾で女子のハートをがっちり掴んで離さない。
    「こいつ、あざとさを狙ってやがるな……」
     一緒だった姉もいつの間にかもふもふの世界へ。殺雨・空音(メイド執事・d00394)は、ちょっとイラっとしてしまう。女子に囲まれたたぬき怪人が、超ドヤ顔だったからである。
    「庵胡、見て! 猫がいるっ!」
     ゆるゆる可愛い猫の怪人に向かって、北澤・瞳(覇謳曖胡・d13296)は相棒の霊犬を連れ、走り出す。
    「あ……あのっすみません、握手をして頂いてもよろしいでしょうか」
     刄・才蔵(高校生殺人鬼・d15909)もクラスメイトと一緒になって、カメラ片手にはしゃいで握手を求めた。
    『にゃふふ、優勝は頂いたにゃ……!』
     ちやほやされて調子にのった猫のゆるきゃら怪人が、ニヤリとほくそ笑む。
     そうだ、一応忘れてはいけない。こんな可愛い姿でも、彼らはご当地怪人というダークネスなわけであって……。
    「きゃー! 待ってー!」
    「わーい!」
    「もふもふさいこうですのー♪」
     リン・フェイヨン(高校生ファイアブラッド・d12211)が、クマっぽいゆるきゃら怪人を追い掛け回し、香坂・いりす(ビーストプリンセス・d13655)と、獅子堂・永遠(シャドウキャリバー兎・d01595)が、もふもふなゆるきゃら怪人達をもふり倒す。
     うん。まあ、少しくらいなら忘れてもバチは当たらないだろう。それに、ここは富士急ハイランド。任務で赴いたとはいえ、楽しまなければそれはそれで失礼だ。
    「あのっ、一緒に乗りませんか?」
     氷室・アスカ(藍色少女・d11177)は、北海道のご当地ゆるきゃら怪人、マリモのまりもんをジョットコースターへと誘う。でっかい球体から生えた短い手足をバタつかせ、ピー! と鳴くまりもん。嫌がっているようにも見えるが、顔がないのでよく分からない。
    「お、あれは……かわいいな。しらたま、お前みたいだぞ」
     焼きそばパンゆるきゃらに夢中な連れの横で、雪・悠成(高校生神薙使い・d14851)はしらたま団子っぽいゆるきゃらを見つけ、傍らの霊犬の頭を撫でてやる。
     今のところ、目立った被害はない。それどころか話してみれば割とノリのいい怪人も多かった。
    「お、おい、ちょっとそこの。一緒に写真……撮って……くれないっすか」
    「あの、絵のモデルになってくれますか?」
    『おやすいごようだぷ~』
     盧木崎・愛琉(呪えない思慕・d16105)と、小泉・最中(ワーズワースに願いを・d12359)のリクエストに応えるように、もちもち可愛らしいゆるきゃら怪人は、ノリノリであざといほど可愛らしいポーズをとった。これはすごい、すごいあざとい。
    「ああ、僕らは今、立派なモブだ。モブになっているんだ、あはははー」
     何の怪人だかよくわからない怪人と、御手洗・敬太(ストリートドコダー・d03219)は見事に人ごみに紛れながら会場内を駆け回る。
    『ちゃ……やっぱり静岡は全国じゃマイナーちゃね……』
     会場の隅っこで落ち込んでいた静岡のご当地怪人、茶摘の衣装が可愛いティータイマーさん。
    「そんなことないよ。静岡はお茶が有名じゃない。それにほら、静岡のあの銘菓はあんこと草もちだよ? お茶に合わないわけがないでしょ」
     何だか放って置けなくて、村瀬・一樹(ちぐはぐ紳士・d04275)はそんな彼女を励ました。
     恥らうような赤いほっぺが可愛い青森県の怪人、奥羽りんご。柔らかな南部弁で差し出されるのは、でっかい丸ごとのリンゴ団子。
    「と、遠目からあなたを見つけて、その、素敵だなと思って……」
    『おいであれ』
     超笑顔で差し出されたそれを、蓮咲・煉(錆色アプフェル・d04035)はちょっぴりためらいつつも、一口かじってみる。
     意外と和んだ。
    『お米~植えるだ~』
    「そんな音楽認めるか! 俺の歌をきけぇぇーー!!」
     一方こちらでは、気分よく野良仕事の歌を歌う石川県の怪人、芝田じいさんと、比奈下・梨依音(ストリートアーティスト・d01646)の歌合戦が始まり。
    「うちの子、黒い毛並みが最高でしょう? さいごーどんのしろくんの凛々しい顔も素敵ですが……」
    『はっはっは、犬は可愛いでごわすなぁ』
     鹿児島県のご当地怪人、さいごーどんと、稲荷坂・里月(迷子の殺人鬼・d13837)が、迷子になりつつも、お互いの連れている犬と霊犬のうちの子自慢をしながら楽しく歩く。
    『私の体の中の納豆が無くなっちゃったの。このままじゃ只のわら人形女になっちゃう……』
    「わかりました。探してみましょう」
     ライン・ケーニッヒ(女騎士・d16531)は、どこかへいってしまった水戸のミス納豆怪人の体の中の納豆を、何故か一緒に探す事となり。
    「手前、生国と発しますは下野国――二荒山の膝元で産湯を浸かった撫桐娑婆蔵たァあっしのことでござんす!」
    『わたしは……宇都宮ぎょうざの羽です……!』
     撫桐・娑婆蔵(鷹の眼を持つ斬込隊長・d10859)は、宇都宮ぎょうざの羽という何ともピンポイントな怪人と出会い、感動の挨拶を交わした。
    「やっぱり北国はいいよな!」
    『そうだべ、そうだべ』
     北国の怪人達とは、熊谷・翔也(寂しがり屋の主夫・d16435)が自然に打ち解け、岩手県名産のリンゴジュースとモナカで北国談議に花を咲かせている。
    「すごいイチゴシロップの匂いだね」
    『これが伊勢崎もんじゃじゃぁ! まあ、わしの婆さんはカレー味じゃがな!』
     群馬県民らしくかかあ天下らしい怪人、赤もんじゃ爺やの話には、恋石・二湖(雷と空っ風の魔法使いの夢と嘘・d16663)が物珍しそうに耳を傾けた。
    「まだだ! もっと! もっとゆるく!!!」
    『ぬぅぅ……! おっ、お前もジンギスカンにしてやるめぇめぇ!!』
     橘・清十郎(不鳴蛍・d04169)の熱血指導に、口の悪かった北海道のご当地怪人、ラム肉男爵ジンギス・ハーンのゆるきゃらっぷりに拍車がかかる。
     すっかり、ゆるきゃらご当地怪人と戯れてしまう灼滅者達。
    「わぁぁかわい~っ!」
    「ああ、癒される……可愛いなぁ」
     別に楽しんでるわけじゃないよ! と突っ張っていた、彩藤・かなで(藍彩奏・d03137)だが、ゆるゆるな怪人にタックルを決めたまま、そのもふもふな身体に顔を埋めっ放しで、水走・ハンナ(東大阪エヴォルヴド・d09975)に至っては、たまにはこういうのもいいよね、と、もふもふなゆるきゃら怪人を触っては癒されている。
    「ちょ、なんだい、この可愛さ……殴れない……私はこの子は殴れないよ……ッ」
     割と大真面目に今回の任務に臨んだ、桜海老・あおさ(悪食のシュリンプ・d10417)でさえ、ゆるきゃら怪人達のあまりの可愛らしさとゆるゆるさに脱力し、葛藤する始末。
    「……僕、何してるんだろう」
     どのような客層にゆるきゃらが受けているのかを観察していた、童子・祢々(影法師・d01673)も、何だか途中で馬鹿らしくなったらしく、書いていたレポートを丸めてゴミ箱へポイっと投下する。
     ゆるきゃら怪人のゆるゆるさ加減は、思ったよりもすごく、ゆるゆるだった。

    ●怪人になっちゃえ!
     この際だ。ゆるきゃら怪人に扮して楽しんでみるのもまた一興。
    「富士が誇る立山連峰……その地獄谷から来るは灼炎の守護神ツルギダケ! いくぜ!!」
     こういうのはノリが肝心! と、火山の着ぐるみで武装した、綾木・祇翠(紅焔の風雲・d05886)は旅の恥を掻き捨てる!
    「フーハハハハ! この、さ鰻・ぬる子が富士急にやってきたわよ!」
     鰻の着ぐるみをすっぽり被った、沙由凪・葵子(精神刻み・d00433)も選手権に参戦! 普段の天才肌な自分の空を脱ぎ捨てるような、ウネウネした見事な腰振りを披露する!
    「群馬ゆるキャラ『達馬カルテット』此処に☆見参! 君たち其の熱い視線を少しゃあ僕に分け給えよ!」
     絲紙・絲絵(遠千慕・d01399)は、馬耳を生やした達磨顔の赤馬に扮して、群馬のステマを図る。イエス、グンマ・ザ・ステマ!
    「ゆい……じゃなくて、どてらコタツさん、大丈夫ですか? み、みかん食べますか!?」
     怪人どてらコタツを名乗ってもこもこ着膨れている友人に付き合って、鴨宮・寛和(ステラマリス・d10573)は、みかんの皮を剥いてやる。
    「よし、これで一般人を護るぞぅ」
     お面をつけてゆるきゃらに扮する、星祭・祭莉(彷徨える眠り姫・d00322)。どこかで見たような気のせいのようなツインテールの変身少女のお面が、テカテカ光った笑顔を振りまいているのがちょっと不気味だ。
    「ハイルゲルマン! ハイルシャーク!」
     ドイツのバイエルン名産、ソーセージの着ぐるみでナチュラルに怪人に混じった、ワルゼー・マシュヴァンテ(教導のツァオベラー・d11167)が、上空に浮かぶゲルマンシャークの飛行船に敬礼する。
     会場内を見渡せば、他にも着ぐるみやら何やらを着込んで、すっかりゆるきゃら怪人達の輪の中に入っている灼滅者達の姿も多い。
     そんな中、会場内に満ちる熱気と選手権パワーに当てられて、選手権中の期間限定で闇堕ちしてしまうご当地ヒーロー達の姿もちらほらと……。
    「ぬぉぉ、なんだこの選手権パワーはっ! ぐあぁーっ!!」
     狗神・伏姫(GAU-8【アヴェンジャー】・d03782)が、横浜のご当地怪人、にぽまるに闇堕ちした!
     にぽまるとは、横浜に係留する某大型練習帆船を応援し、行く先々でナンパしまくるシベリアンハスキー型怪人! 必殺技は『海の漢のEYEビーム』だ!
    「アライグマンMK‐Ⅱ! 見参!!」
     野々上・アキラ(レッサーイエロー・d05895)は、アライグマの怪人に闇堕ち! アライグマ擁護派を増やすための布教活動をしてしまうアライグマンMK‐Ⅱ! 背中にチャックがないのか探そうとすると、アライグマ・ダイナミックが炸裂する!
    「愛知県良いとこだぞ、食べ物旨いし、食べ物旨いしな。ところでこの犬可愛いだろ?」
     愛知県の県花、カキツバタをモチーフにした怪人に闇堕ちしたのは、三園・小次郎(愛知讃頌・d08390)だ。外見で、一緒に来た友達に何故か持たされたエビフライのぬいぐるみを小脇に抱え、愛知県と共にパピヨンマスクをつけた霊犬パピヨンちゃんを自慢してくる!
    「野球拳はお色気のお遊びではありんせん! よよいのよいでグーを出した後に、じゃんけんぽんでじゃんけんですよ?」
     突如として正統派の野球拳を回りに強要し始めた、渡部・るい(清く正しい野球拳系芸者・d16021)も、松山野球拳怪人に闇堕ちしていた! 野球拳は脱衣などしない! 清く正しいお座敷遊びなのだ!
     ゆるきゃら怪人に加えて、続々と闇堕ちしていくご当地ヒーロー達。
    「なかなかエロティ……気になる怪人さんがいませんね……」
     明らかに今エロティックって言おうとした、王・龍(変態ビギナー・d14969)が自分好みの怪人を探し回る一方で、祟部・彦麻呂(落ちこぼれの退魔師・d14003)はとんでもないものを見てしまう。
    「よろしくお願いしマァス!」
     頭から靴下を被り、全裸にきわどいムタンガ姿。胸板には申し訳程度の『ゆるきゃら』の文字。足元はもちろん靴下一枚。自称、靴下のゆるきゃら怪人、靴下ちゃんに扮した、靴司田・蕪郎(靴下は死んでも手放しません・d14752)が、一般客相手に何故か靴下を配り歩いている!
    「なんてスケベな……!」
    「…………」
     まさしく変態の極み! 思わずハンマーを構える彦麻呂の側で、高月・燐(中学生シャドウハンター・d16605)も無言でゴム弾の狙いを定める。
     そんな彼女達の殺気に気がついたか、蕪郎はカサササっと嫌な動きで逃走した!

    ●平和を守れ!
     いまいち、悪いんだか悪くないんだか分からないゆるきゃらご当地怪人達でひしめき合う、富士急ハイランド会場内。
    「ゆるきゃらも……増えすぎてもう何が何だか……」
     ゆるきゃら怪人と一般のお客さんの様子に注意しつつ見回っていた、玖珂峰・煉夜(顧みぬ守願の駒刃・d00555)が、短く息をついたその時である。
    『待つでござる~!』
    「きゃー! いきなりご気分害さないでよ!」
     小森・奈穂(焔の穂・d02324)が、小さな侍の姿をしたゆるきゃら怪人に追われて駆け抜けていく。そうして二人はその先で一緒に転んで、侍のちょんまげから飛び出した醤油にまみれた。
     荒ぶる和歌山県のご当地ゆるきゃら怪人、醤油侍!
     そして、それだけではない。
    『食らえぃ!』
    「ぎゃー! いっってぇ!!」
     湘南のご当地怪人、ポセイ丼が飛ばしてくるピチピチ新鮮なシラスが目に入って悶絶する、夜兎・一角(兎番長見習い・d08949)。
    『……ハグゥ』
    「お前いつの間に背後に居たんだよ! てかお前誰だ!! え? ご当地ハグ怪人? 知らねーよ! こっち来るなよ!! 来るなってば!!!」
     ゆるきゃらよりも可愛い女の子で目の保養、と勇んでいた、水海・途流(音狂・d08440)は、何だか気色の悪いゆるきゃら怪人に背後を取られ、思いっきり抱き締められる。
     平和に過ぎていくと思われていた、ゆるきゃら怪人達の選手権。だが、彼らとてゆるゆるでもダークネス。ここはひとつ、灼滅者達の腕の見せどころだ。
    「折角のお祭りです……楽しく行きましょう!」
     迷惑をかける怪人の元へ、迅・正流(黒影の剣士・d02428)は相棒と共に向かう!
     まずは、さり気なく一般人とゆるきゃら怪人達を引き離す!
    「ああいう芸風なんです! すみません!」
    「はーい! こちらの怪人さんたちには触らないようにしてくださーい!」
     一色・眞日(高校生ファイアブラッド・d09810)と、麻神・瑞希(はなまる印の元気っ子・d00993)が、スタッフの振りをしながらざわつき始める一般客の間を縫って進む。
    「はい、風船どうぞなのですー」
    「ゆっくり選んでね。いろんな味があるのよ?」
     それでも怪人達が気になる子ども達には、波多野・師将(いのぐるみすと・d04343)と、刻野・晶(高校生サウンドソルジャー・d02884)が風船や飴を配って幼心をしっかりゲットする。
     一般客とゆるきゃら怪人達の分断が完了したら、次は怪人達へのさり気ないアタック!
    「一緒に写真お願いしていいですかー?」
     一般客に無理やり絡むの怪人を見つけた、柳・真夜(自覚なき逸般人・d00798)は、怪人にぐいぐいと身を寄せて先輩にカメラを渡し、こちらも負けじと無理やり記念撮影してやった。
    「はーい、そこのゆるキャラさん、視線こっちくださーい」
     そして新たな悪さをする隙を与えない、倉澤・紫苑(奇想天外ベーシスト・d10392)のデジカメによる撮影地獄!
     おまけに、黙っていればバレやしないだろうと女性客にいやらしい視線を送っている怪人には……。
    「富士急の平和は! ボクが! 守るっ!」
     楪・颯夏(風纏・d01167)の全力でデコピンが炸裂した!
     よし、この流れならいける!
    「レッサーホワイトここに参上!」
     レッサーパンダの着ぐるみに白いスカーフ。正義のヒーロー、ヒロインって一度はやってみたい願望に駆られた、西羽・沙季(風舞う陽光・d00008)は、仲間と共に飛び出した!
    『HAHAHA! コノ、BLACK☆ZUNDAサマニカテルノカィ?」
     どこから湧いて出たのか、カタコトの南米系外国人な姿の怪人が立ちはだかる!
    「うるせー、その上に乗ってる黒いずんだ引き剥がしてただの餅にすんぞ、つーかまったくもってゆるくねェよ。方向性が迷子なんだよ」
     すかさず、突っ込みどころ全てに、九条・風(紅風・d00691)がズバリ突っ込んだ。
    『オゥ、ノゥ……』
     気にしていたのか、黒いずんだ餅の外国人怪人は、しょんぼりしながらずこずこ引き下がっていく。
     さながらヒーローショー的なものを演出しながらも、ゆるきゃらと戯れる演出にも抜かりは無い。
    「きゃー! かわいいー!!」
     服部・あきゑ(赤烏・d04191)は、抱きつくふりで柔らかいゆるきゃら怪人をサバ折りにし。
    「わぁ、可愛いですね」
     同じく、華鳴・香名(エンプティパペット・d03588)もゆるきゃら怪人に抱きついてはアイアンクローをかまして一般人から遠ざける。
    「一緒に写メとろ~!! はいち~ず☆」
     ひり出したハイテンションで、灯屋・フォルケ(Hound unnötige・d02085)はゆるきゃら怪人に抱き、さり気なく間接をきめてやった。
    「おにぎり、おにぎり……美味しい、だいすき」
     更には、おにぎりっぽい怪人限定で、小谷・リン(凶星を見上げる氷蝶・d04621)の、がっちりホールドが発動し。
    「モフモフ気持ちいぃ……♪」
     モフモフ枠の怪人達には、雪女・麗雪(純白の悪女・d15381)を始めとする、多くの灼滅者達がモフモフを楽しみつつしっかり抱きついて離さない。
    「もふ充、完了!」
     モフモフを存分にモフり倒して、紺野・茉咲(居眠り常習犯・d12002)は満足げに深く頷いた。
     まさに、完璧な布陣。
    『マズイにゃ、このままじゃボク達のゆるゆるっぷりをアピールできないにゃ!』
    『ぷぅ~! こうなったら暴れるぷぅ~!』
    「……そういう事はやめろ」
     この危機的状況に、早速ゆるきゃららしかぬ不穏なことを呟き始めた怪人達を、劉・謙哉(蹴道・d07583)はジロリと睨んだ。
    『む、むむぅ……』
    「ハイハイそこまで、張り切るのは良いけど迷惑かけようとするんじゃありません、ご当地嫌いになったらどうすんの」
     普段なら先手必勝、殴って止めているところだけれども、派手な動きは禁物、と、岡本・拓海(火群・d13730)は努めて穏やかに止めに入る。
    「そうそう、全くさぁ、選手権なんだからもっと愛想振りまいて点数稼ぐのが筋じゃねえの?」
    『……わかったにゃ』
     綾瀬・瑛浬(中学生ファイアブラッド・d03769)にも諭されて、悪巧みをしていたゆるきゃら怪人達は散り、そしてまた何事もなかったように可愛さアピールに専念し始める。
     ようやく、ほとぼりが冷め始めた全国ゆるきゃら怪人選手権。
    「一応保存……と。ゆるきゃらって結構可愛いわよね」
     ゆるきゃら怪人と一緒に撮った2ショット写真の画像を保存しながら、蒼崎・鶫(結晶の魔女・d03901)は、そう満更でもなさそうに言って笑う。
     そういえば、そもそもゆるきゃら怪人の定義って何だったのか。順位とかはどう決められるのか。結局、この会場は何もかもがゆるゆるしていてよく分からなかった。
    「ううん、僕達の宿敵ではあるけれど……」
     正直、何を考えてるのかも分からない、とご当地ヒーローの、山田・二郎(低予算戦士ジロー・d12912)は、ただただ首を捻るのだった。

     一方、その頃……。
    「先輩! 卵ヒヨコ、どんどん増えていきます!」
    「あー! もー! こらそこのヒヨコー! ニワトリ共々親子丼にするわよ!?」
     ぽっこんぴよぴよ、ぽっこんぴよぴよと卵のようにヒヨコのネジ巻玩具を次々産み落とし、子ども達を危険な場所へ誘い込もうとしていたニワトリの怪人を追って、塚原・芽衣(中学生ダンピール・d14987)と、時坂・綾子(黒百合の誓・d15852)、龍泉堂のメンバーは、は増える卵ヒヨコの回収作業に明け暮れていたという。

    ●まったり温泉!
     第2回全国ご当地怪人選手権は無事に終了したらしい。富士急ハイランドに隣接しているふじやま温泉に、選手権に出場していたゆるきゃら怪人達がこぞってやってくる。
     流石はゆるきゃら。まったり温泉でゆるゆるするのが好きらしい。
     もちろん、温泉が好きなのは彼らだけではない。
    「温泉ですか。いいですねぇ……」
     選手権会場内を忙しく走り回っていた、黒橋・恭乃(慇懃で無礼・d16045)も、ここで今日一日の汗を流せる喜びに思わず表情を緩ませた。
    「これは任務よ。だからちゃんと傍で警戒しないと。ふふふ、面白い、面白いわ!!」
     中には、木下・里美(高校生魔法使い・d09849)のようにすっかりゆるきゃら怪人が気に入ってついてきた者もいるが。
     とにかく、今日は特別。ご当地怪人も灼滅者も、みんな一緒に温泉でゆったりまったり。
    「……行くか」
     緑色の餅なフーテン、葛飾柴又の草餅虎ジロー怪人に扮した、柩・冥(灼熱影刃・d13984)が、行きずりの気の合った美人女幹部としっぽり温泉にしけこみ、そして夜明けのコーヒーを……。
    「なんでやねん!」
     そんな雰囲気の二人を見送った後、武本・悟(ツッコミマスター・d13976)は思わず思い切り突っ込んだ。
     良いキレだ。今日一日、大阪の怪人と漫才をして楽しんでいた成果がありありと出てる。
     ゆるきゃら怪人達の列に着いていくと、ふじやま温泉の大浴場に辿り着いた。ここから男女に分かれるわけだが……。
    「……大丈夫か、あれ」
     女湯の方へ入っていった怪人を目で追って、巨勢・冬崖(蠁蛆・d01647)は心配そうに呟いた。
     秋田県からやってきた、いぶり妖怪ガッ娘ちゃん。女性であることは間違いない。だが、彼女の郷愁を誘う萎びたボディからは、いぶり漬けらしい燻製の芳しい香りが凄まじく臭っているのだ。
     まあ、その辺は女子達が上手くやってくれるだろうと期待を託す。
    「危ないから、温泉じゃ泳いだり、ぷに箱走行しちゃいけないよ~」
    「はいなのです~! へい! 彼女~、一緒に入るます~?」
     ぷに箱と呼ばれる謎の箱に納まって、ゆるきゃららしくゆるゆるする、レニー・アステリオス(星の珀翼・d01856)や、天城・優希那(の鬼神変は肉球ぱんち・d07243)達。ぷに箱達もここで男女に分かれるが、その状態でどうやって入浴するのだろうか。
     謎がまた、ひとつ生まれた。
     大浴場に、ゆるきゃら怪人達と灼滅者達が次々と入っていく。
    「あ、今は中で着ぐるみ脱いだゆるキャラが全員でお風呂入ってるから、今行くと夢壊れるわよ?」
     少し早めに来て一足早くお風呂を頂いていた、エレナ・フラメル(ウィザード・d03233)は、やってきた一般客達にそんな話を広めてフォロー。
    「あの人達はイベントの準備に来ていて、今はパンフレットとかポスターの撮影をしているんだよ。だから、邪魔しちゃだめだよ?」
     ゆるきゃらの中の人なんていないと信じる子ども達には、風華・彼方(小学生エクソシスト・d02968)がそれっぽく説明して回った。

     ゆるきゃら怪人と一緒の温泉。
     女湯では、ゆったりまったり、平和な時間が流れていた。
    「はぁ……いいお湯ですこと……」
    「本当、生き返ります……」
     思わず漏れた、唯川・みえ子(心のままに・d10646)のため息に、ソフィリア・カーディフ(春風駘蕩・d06295)も頷いた。頷きながら、ソフィリアは、できれば怪人達と敵として対峙したくないなぁ、なんて事を考えながら、目の前でもちもちしている猫のゆるきゃら怪人にもふっと触れた。
     いつかこの怪人達とも、戦うことになるかもしれないけれど。
    「ふぅ、ニッポンの温泉は疲れにしみますな」
    「うん! ボク温泉って大好き。広いし気持ちいいよね」
     のびのびと背伸びをする、エルミニア・レイフォード(誇り高き血統・d00908)の横で、鷹月・日織(日に映りし闇月・d12680)も嬉しそうに笑って心地良いお湯にその身を委ねた。

     一方、男湯では。
    「……っ、男湯なのに周りの視線がなんか怖いよー」
     砥塚・英明(伝説のメイド長・d15134)が、怪人達に女の子に間違われてジロジロ見られていた。
     けど、そのうち勘違いだと気がついた怪人達。興味の方向は、壁の向こう側へ……。
    「はぁ……湯船に入ると、なんか体が楽になるのよね」
    「いいお湯~」
     耳を澄ませば、聞こえてくる、稲垣・晴香(伝説の後継者・d00450)と、宗・駆(峠クィーン・d06861)の、どこか艶っぽい声。
    「わー、かわいいー♪」
     ゆるきゃらと戯れていると思われる、瀬戸・あずみ(一般人・d04840)の可愛らしい無邪気な声。
    『……どうだい?』
    「え、いや、彼女さんいますから! あ、でもバレなければ……」
     やけに男気溢れる顔つきで、男湯と女湯を仕切る壁の向こうを親指でくいっと指してみせる怪人の誘いに、煙上・銀助(二対頭の銀狼・d10147)の心は揺さぶられた。
    「やめておけばいいのに……」
    「……同感だ」
     銃沢・翼冷(証拠不在の機密暴露背徳諜報犯・d10746)と、天道・御影(高校生殺人鬼・d16700)は、とばっちりを食らわないようにと、そこからそっと距離を置く。
    「駄目。温泉は、ゆるゆる楽しむ場所。だから」
     見かねた、内之倉・帳(夜殺し・d03930)が怪人にお湯をかけて注意して、のぞき大作戦計画は志半ばに惜しまれつつ白紙になった。
    「あの胸板、包容力、たまらない」
     この場はつまり、ムキムキな怪人のムキムキ筋肉を鑑賞して楽しんでいる、斎賀・芥(常闇で見えた光・d10320)の一人勝ちである。
     と、そんな事よりも、小無里・深月(桜吹雪・d15178)には気になって仕方がない事があった。
     向かいからやってくる、もふもふしたゆるきゃら怪人。
    「……うん……おお……マジか」
     何の躊躇もせず、もふもふの身体を湯船に沈めるゆるきゃら怪人。思わずまじまじ見つめていたら、つい目が合ってしまって、深月はへらっと笑って誤魔化した。
     たった今、疑問は、確証に変わった。
     やはり、ゆるきゃら怪人に、中の人など、いないのだ。
    「……っ、そうか、ギョーザ怪人とかだったらこれがホントの蒸しギョーザ……ってアホか!?」
     入間・眞一(平凡たる逸般人・d07772)も思わずノリツッコミしてしまう、衝撃の事実。
    「これがゆるきゃら……!」
     これには、海外育ちの、ユミール・フォルシオン(敬語ポニーテール・d15642)も目を輝かせるのだった。
     いろいろあった男湯だが、大きな事件も起こらず、灼滅者達も怪人達と温泉を楽しんだ。
    「食いもんが旨い!!」
    『広がる大自然!!』
    『でっかいどう!!』
     湯船に浸かりながら、迅魏・辺(人は死ぬために生きている・d11761)は北海道の怪人達と北海道の良いとこについて熱く語り合い。
    「親戚のいた東京は神田に老舗の蕎麦屋があってな……」
    『それは素晴らしい』
     銃神・狼(ハウンドツー・d13566)は、仲良くなった十割そば怪人と仲間達と共に、一列になって背中を流し合った。

     お風呂から上がった後は、定番の瓶牛乳や冷たいお茶で喉を潤す至福の瞬間。
    「本日はお疲れ様でした、かんぱーい!」
     関・銀麗(高校生神薙使い・d15670)の音頭を合図に、あちらこちらで乾杯の音が響いた。
    「温泉ってとても癒されますよね。大好きです……!」
     友達と一緒にお風呂上りのコーヒー牛乳を飲んで、アルギルス・トリシュタン(泡沫六花・d13279)もすっかりご機嫌。
    「こ、こうか……よし、絶対負けねぇ!」
     世話好きな怪人に教わりながら瓶のコーヒー牛乳を開けた、シーゼル・レイフレア(月穿つ鮫の牙・d09717)は、怪人達の牛乳早飲み対決に参戦する。
    「……っ、がんばれこえどくん!」
     コッケーカッキロサ・カギカギカギリィロ(殺人鬼・d09521)は、突如勃発した『ご当地対抗! ゆるきゃらだけの温泉卓球大会!』で、やたらとでかいお気に入りのゆるきゃら怪人、埼玉県川越市の、こえどくんに声援を送った。
     今はこうして怪人達と打ち解けている灼滅者達。状況が変われば、互いにまた戦うことになるだろう。
    「完全勝利は、同時に滅びの始まりだ……ならば……なぜお前達は闘うのだ?」
    『理由などない。戦いとは、そういうものだ……ハードボイルドだろう?』
     展望休憩室で外の風景を眺めつつ、缶紅茶を傾ける、西場・無常(第一級殲術実験音楽再生資格者・d05602)の問いに、温泉玉子のゆるきゃら怪人がニヒルに笑って応えた。
     近くにいた何人の灼滅者達が、心の中でお前は半熟だけどな! と突っ込んだことだろう。
     どこもかしこもゆるゆるだったご当地ゆるきゃら怪人達。
     結局、最後までいろいろゆるゆるなまま、全国ゆるきゃら怪人選手権は幕を閉じたのだった。

    作者:海あゆめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年4月16日
    難度:普通
    参加:1480人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 14/キャラが大事にされていた 70
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