桜花天流~さくらふるふる、しゃぼんふわふわ~

    作者:那珂川未来

     ――満ちたものが、欠けてゆく世界。
     儚く消えゆく桜花の雨、七色の輝き舞いあがる。
     幻影の一つが空に昇ったのなら、何か一つ願いがかなえばいいのに――。

     例えば、ようやくオレに変声期が来るとかね。

    「レキちゃん♪」
     廊下を歩いていたレキ・アヌン(冥府の髭・dn0073)は、不意に声をかけて振り返れば、
    「わっ!?」
     なんか超ボーイソプラノのヴィジュアル系がフルメイクフル衣装でサングラス掛けているのに、超満面の笑みというお化粧マジックまる崩れ状態で背後に立っていた。
    「沙汰さん、その顔でド笑顔、ちょうこわいよー!」
     軽く戦慄するレキさんと、
    「またまたー。超池(ちょうイケメンの意)の間違いでしょ?」
     ナルシスト仙景・沙汰(高校生エクスブレイン・dn0101)さん。
    「春だからって、頭おめでたくなりすぎですってば!」
    「え? 暖かくなってくると、気分うきうきしちゃうの当然じゃない」
     嗚呼、おめでたいの意味華麗に曲解している……というかかみあっていない。
     アホ満載の会話が展開されていますけれども、それはさておき。
    「何か用ですか?」
     明らかに依頼な雰囲気ではないので、かなり引き気味だが律儀に尋ねるレキ。
    「ね、桜の雨に打たれに行かない?」
    「さくらのあめ……? あ、さくらが散り始めているって事ですね?」
    「うん。こうはらはらと舞う桜と……」
     そう言って、沙汰はポケットからしゃぼん玉のストローと液を取り出して見せると、
    「その中でしゃぼん玉飛ばすの」
     しゃぼん玉って春の季語らしいよと沙汰は言って。
    「はらはら舞う桃色の雨と、ふわふわ舞いあがるしゃぼん玉の七色。春の日差しにきらきらして綺麗かなって」
    「確かに綺麗かも……でも、桜に当たって割れません?」
    「それはそれでいいじゃない? 奇跡みたいにたった一個が青空に昇って行くかもしれないっていう、そんな楽しみとか。桜だって儚く散っている世界だもん。七色の玉だって儚く消えたっていいじゃない。幻みたいな時間楽しめりゃそれはそれでステキでしょ?」
     そう言って、沙汰はレキにしゃぼん玉液とストローを手渡して。レキは嬉しそうにそれを受け取りながら、
    「えへへ。そうですね。さくらとしゃぼん玉、すっごく綺麗そうですよね」
     儚い世界を作るのも楽しそうですよねと、レキはお誘いを受けることにして。
    「でさ、しゃぼん玉製造機も借りてきたんだよネ♪」
    「なんですかそれは?」
    「自動ですっごいいっぱいしゃぼん玉作ってくれるんだヨ。あ、バッテリーで動くから大丈夫♪」
     小さいものなら意外にお安く借りられるんだよねーと沙汰。
    「わー。それも凄い楽しみ」


     さて――これから行く場所は、さくらが散り始めた河川敷。
     微かに風があって、さくらがはらはらと空を流れ、降り落ちる。
     しゃぼん玉をストローで飛ばしてなんでもない時間を過ごしたり、しゃぼん玉製作機の傍で七色と薄紅の中を駆け回ったり、木陰に腰掛け儚い世界の中まったりしたりお弁当を食べたり――。

     さくらふるふる、しゃぼんふわふわ。あなたはこの場所で、どんな休日を過ごしますか?


    ■リプレイ

     Maplechesとそよ風クラブでクラブ対抗しゃぼん玉飛ばし大会しよう。人数調整のお誘い受けて、レキはMaplecheチームにお邪魔して。黒々が用意したしゃぼん玉ガンを一個貸してもらって嬉しそう。沙汰は審判、見逃さないよう頑張る所存。
    「シャボン玉はシャボン水に始まってシャボン水に終わるのです!」
     早速強力洗剤にてシャボン水を作る唯人。だが大量発生した泡の中に沈んで飛ばす前から撃沈。
    「とりあえず軽く吹いてみようかな。う~ん、でもすぐ消えちゃうな。今度はもうちょっと大きめのを……」
     思考錯誤しながら吹いてみる有斗と、皆と同じ目線まで屈んで、風下に向かって静かに吹きつける有人。
    「わぁ……凄く、不思議で綺麗!」
     舞い上がってゆくしゃぼん玉に、つい競争忘れて見とれてしまう瑠璃羽。
    「ゲェッ、の……っ、飲んだ……っゲホゲホゲホッ! だ、誰か水……っ」
     高く飛ばそうとしたら、思いっきり吸い込んでしまってむせる由燠。
    「よーし。ボクも負けないよう一杯作ろうっと」
     勝負そっちのけでしゃぼん玉量産している夏奈の図。
    「楽しいですねぇ。私にとって何年ぶりの花見でしょうか……」
     コッソリ洗濯のり使用のしゃぼん玉で、悠々としゃぼん玉飛ばす恭乃。
    「負けませんっ」
     そしてなかなか上手く飛ばなくて、むきになってお顔を真っ赤にしながらふぅーと頑張るエミーリア。
     結果、一番高く飛ばしたのは有人。上手く風に乗ったみたい。
     待ちに待ったお弁当タイムは、有人が早めに準備してくれていて。
    「今回は桜ミルクティーですよ」
     ほっこりふわふわ、甘くて楽しいひとときを。
     一方こちらは『掴め! 六乃宮・静香の桜餅!』と題してシャボン玉飛ばし対決。無駄に世紀末な雰囲気を醸し出し仁王立ちの和志と、無駄に力み過ぎているアルファと、無駄に殺気だっている梓。
    「春だなー」
     茶をすすりながら、宥氣は景色にほんわり。騒動も日常茶飯事なので景色の一部。飛鳥は煎餅片手に観戦しつつ、
    「この勝負、3人の痛み分けになりそうな気がするけど……」
    「……いや、死人が出ない事を祈るよ」
     セリルはお隣でるんるんしながら桜餅(?)に金粉振りかけている静香を横目で見つつ薬スタンバイ。
     梓のシャボン玉天高く。力み過ぎて形にすらならないアルファは満開の桜の下打ちひしがれていたけれど、セリルお手製桜餅とかご褒美ですか。
    「遠慮なくどうぞ」
     味の方向性が迷走している泡明寺を、静香はそりゃあもうイイ笑顔でお口へ押し込み。
    「嗚呼……時が見える……ぐふっ」
     初めて出会うお味に燃え尽きて、口から魂を抜く梓。それこそシャボン玉のように淡い期待は弾けて、凹む和志。
    「俺の桜餅、どこ行った……」
     お隣では、しゃぼん玉inしゃぼん玉。さらに目指すはin桜の奇跡。
    「花びらは一度シャボン液に浸して、それからシャボン玉を作ってくっつける感じで……」
    「一回……液に浸……?」
     半信半疑の慧杜はじっと七の手元を注目。膨らむ桜しゃぼんに感嘆漏らし。
     怜示が目指すはようやく出来た桜しゃぼんを大きなシャボン玉で包むこと。皆が手に汗握る中、ゆっくりと大きな針金の輪を泳がせる。
    「……と、あ、できた」
     笑顔と歓声。芳春が早速バブルガンでたくさんのしゃぼん玉を空へと放ち。
    「みんな笑ってー!」
     賑やかな七色の中、奇跡の花弁ふんわりと。
    「雨宮! シャッターチャンス!」
     幻想の雨の中に笑う芳春も、慧杜がカメラに収めて。
     不意に飛んできたしゃぼん玉。レドは懐かしいと目を細め。
    「風が気持ちいい、春の香りがする……」
     今日は進級記念のお花見に。翼冷の用意したお花見弁当を広げてのんびりと。
     小さなしゃぼん玉を吹いてレドはちょっぴり悪戯心。美女探しに余念がない、桜そっちのけの羽織と、音楽聴いている翼冷へとしゃぼん玉吹き付けて。翼冷もお返しにレドへとしゃぼん玉。からかいながら薄紅の雨の中を駆け回る。
    「なんにせよ、こんなのも悪くないんだねぇ……」
     と、和みの風景の横では、
    「誰か助けてー」
     春麗らかなある日。大変、椛がとっつかまってる!
     奏と希沙が椛へしゃぼん玉ガンを押し付けて。
    「お前のお弁当を渡せ!」
    「卑怯だぞ弁当強盗め……篠村くん、人質を離すんだ!」
    「椛ちゃんを色落ちさせたくなくば大人しく渡すのだ! ――わぷっ風向きがっ」
     希沙の顔にしゃぼん玉炸裂したのは見なかったことにして、
    「真の狙いは漂白させる事だと……!」
     迫り来るしゃぼん玉の雨あられに、シリアスに(?)驚愕してみる煉火。
    「一張羅が水玉模様にー! ――と見せかけ驚きの白シャツメーイクアップ!」
     魔法少女よろしく茉莉が纏うの白シャツに、驚きの奏と希沙。
    「おのれ白シャツとは!」
    「コイツ……プロか!」
    「どうだ弁当強盗、恐れ入ったか! ってへぶあ、シャボン玉が顔にっ」
     嗚呼デジャヴ。
     ひとしきり遊んで椛の手作り弁当に舌鼓。
    「頑張って……作りすぎちゃったかな?」
     でもあっという間に消えてゆくのは、美味しかった証拠だよね。

     風に吹かれて舞う薄紅色としゃぼん玉。陽桜とレキはそれらを掴まえようと跳ねまわる。
     レキの小さなしゃぼん玉と沙汰の大きなしゃぼん玉。ふわりふわり、天まで届け。
    「えへへー、桜綺麗ー♪ しゃぼん玉と一緒になるとすっごく綺麗なのー!」
     もっといっぱい作っちゃおう。溢れるあわあわに皆ではしゃいで。
    「夢の泡 抱いて運べよ 花吹雪。この桜は皆さんの想いを乗せてどこまで行くのでしょうかねぇ……」
     流希は目を細めて空に舞う花びらとシャボン玉を眺めて。
     しゃぼん玉とぶつかり微かに濡れた桜の花びらを手の平で受け止めれば零れる笑み。
     由衣は空を見上げて、できれば、この景色が少しでも長く続きますようにと、切に願う。
     桜交じりの森には、千鶴はビハインドのたいちゃんが共に。
     桜を眺めれば、はらりと舞う薄紅一枚。キャッチして、傍らに微笑んで。
    「今年も頑張って、来年もまた桜を見にこよう」

     舞う桜と、流れるシャボン玉の中でのんびりと。恋の手作りしたお弁当を広げて。明が点てる茶の香りが、薄紅の甘さと混じる。
    「……あ、桜」
    「ほう……花びらが……」
    「茶柱じゃないけど、これも、縁起、いい、のかな?」
     嬉しそうな恋に、明は微笑ましげに顔を綻ばせ、
    「間違いなく縁起ものだと思うぞ。きっと良い事があるだろう」
     刹那の美の世界で、永久の思い出を紡いで。

     リオーネにとって初めてのしゃぼん玉。飛んでくる七色に綻びながら、良輔にお手本を見せてもらって。
     ふーっと吹けば、飛び出す七色。声を弾ませて。
    「わっ、しゃぼん玉いっぱい出てきたの」
    「上手いじゃねぇかリオ、綺麗に飛んでるぜ」
     そんな姿に、良輔も自然と顔が綻ぶ。
     また桜を見に行こう。夢のような世界の中、確かな約束を。

     原っぱでは、桜の入ったしゃぼん玉にウルスラ挑戦中。
    「散るのも桜の美しさの一つ。風流、と言うのでゴザッタか」
    「んと、わ、たし、も、シャボ、ン玉、ふき、た、いで、す」
     初衣が控えめに吹けば可愛い双子のしゃぼん玉。
     絢は針金で作った大きな輪をふわりと持ち上げ蝶のように沙花を捕まえようと。弾けりゃ液の飛散もすごくて、沙花はお返しとばかりにしゃぼん玉大量生産。絢泡まみれ。
    「楽しそうなことやってる!」
    「こんなにおおきなしゃぼん玉、はじめてみました!」
     でかいしゃぼん玉と大量の小玉に、きゃーきゃー大はしゃぎの空と翼。
    「シャボン玉と桜の組み合わせって今までなかったけど……」
     悠埜は皆がはしゃいでいる姿に目を細め、デジカメのシャッターを切って。
     桜の花弁とシャボン玉が踊り、時に弾けるのを見上げながら今この場にいない友へと想いを馳せていた恢が不意に、
    「もうしばらく遊んだら、何か食べに行こうか」
    「あ、そういえば桜餅作ってきたんだった」
    「みたらし団子買ってきました!」
    「みたらし! え、桜餅は手作り?」
     目を輝かせる絢。
    「花より団子、じゃなくて両方楽しんでこそ正しいお花見だろう?」
     それっぽい理由をつけているけれど、お団子食べたいのが本音。
     さくらの雨に打たれながら、楽しい休憩タイム。

    「飲み物を持ってきました……紅茶と日本茶どちらが好きですか?」
     緋頼は御弁当の中身も飲み物のチョイスも抜かりない。
    「ひよりさまのじゅうばこも、あいるさまのおにぎりも、とってもおいしいのですよ」
     幸せな顔で頬張る鈴乃。もちろん彼女のお稲荷さんも絶品で。
    「記念写真撮らない?」
     愛流は三脚を用意して、写真を撮ろうと勧めて。
     写真の中、空にはしゃぼん玉舞う薄紅の天の川。そして微笑む緋頼と愛流、鈴乃の可愛い寝顔。

    「このから揚げは美味いな」
    「そーびくんホントにお料理上手だよね~。羨ましいなあ……」
     エビフライ、ポテトサラダ、きんぴらごぼうナドナド。また作ってと催促しちゃう雄大と、美味しくって口も手も止まらない実。
    「そう言って貰えると作った甲斐があるわよね」
     お礼を言いながら、一口サイズにきった実お手製フレンチトーストを頂いて。
     ふっと空を見上げれば、桜の空としゃぼん玉。幻想的な空に溜息。


     司が借りてきたしゃぼん玉自動作成機から溢れる七色と薄紅の雨。おとぎの国のような風情に食いしん坊さんの翔琉も思わず感嘆を漏らし。
    「はりきってお弁当用意しちゃった。みんな、どんどん食べてね!」
     紫苑の手作り料理は重箱にドーンと詰まった御馳走。彩りも華やか。
    「さあ、どうぞお召し上がり下さいまし」
     淑やかな装いと堂に入った作法で点てたアリスのお茶。とってもいい香り。司は頂いたお茶をすすると響斗の大福もぐもぐ。
    「ん、どれもめちゃうま♪ アリスさんのお茶も結構なお手前で……」
    「残念ながらこれはお手製じゃないよ」
     響斗は苦笑しつつ、アリスが手伝い。
     黒々の差し入れは何故かピンクのだけが大きい三色だんご。
    「これなら食べながらでもシャボン玉を作って楽しめる」
     翔琉は自作で作ったしゃぼん玉用の輪っか。どや顔で団子を頬張りつつ腕を振ってシャボン玉を躍らせて。
    「こういうのも楽しいな、いつもより沢山たべれるぜ」
     花より団子のど真ん中を行く竜武。司からツッコミはいるがそこは気にしない。
     理沙はトイカメラで舞う桜の花びらをぱしゃり、ふわふわ飛んでいくしゃぼん玉もぱちり。
    「なんてロマンチックなのかしら!」
     いっぱい今日の思い出を残しちゃうんだからと張り切って。
     散る桜とシャボン玉に手を伸ばし、目を細めながら、響斗は年度初めの一番に改めて。
    「今まで色々ありがとねっ、でもこれからもまだまだ宜しくなんだよ!」

    「名称等はわからないが」
     とりあえず作ったとお弁当を取り出す里月。何が出てくるんだと戦々恐々していたら、フツーにハンバーグとかサラダだった!
    「俺は差し入れにフルーツと……」
    「僕は桜餅」
     詠二のフルーツと詩歌の桜餅。日高の団子も揃えば一層華やか。
    「やっぱ花見には三色団子だよね。両手に持って交互に食べるのが通だと思うんだ」
     団子を両手に持って、力説する日高。
    「キコはえっとね……玉子焼とか、野菜のベーコン巻きとか」
     作れるレシピ少なかったーと嘆いているけど、灯倭がいっぱい作っているから大丈夫。取り出したるは、重箱三段!
    「男の子ばっかりだから……量いっぱいでも大丈夫だよね?」
     残さず食べてねとにっこり。
    「すげえ量だなこれ……準備大変だったろ、ありがとな」
     ズラリと並んだ嬉しビックリ、吉篠。労いつつ持参したお茶を配って。紅牙部の一層の活躍と混沌を願って乾杯。
    「オイ男連中、出されたモンはどんな凄い量でも全部食えよ!」
    「ふっふっふ、でも俺は育ち盛りだからな……! いける! この勝負受けてたつぜ!」
     皿と口を亜高速で移動する箸。真二と琉夏は御馳走の奪い合い。
     お腹いっぱいになって、誰かが膝枕御所望してますけれど。
    「こんなちんちくりんで良ければ膝枕してあげようじゃあないか」
     しょうがないほれ来いと言わんばかりにお膝を勧める詩歌。
     まじでーと煌めいている真二。さあ全力で冷やかそうじゃないか♪

    「花見、だよな? お菓子とかお弁当並べて……シャボン玉飛ばしたりしながらのんびり過ごすつもりだったんだよな……?」
     舞う桜としゃぼん玉漂う景色の中、何故か女装している紫桜。頭抱え。
    「相変わらず似合ってるぞ、紫姫おねにーさま」
     都合で来れなかった人のため、央は抜かりなく写真をパチリ。
    「しおうおねえちゃんはいつ見てもびじんさんです」
     にっこり微笑む雪の後ろ、張り切って御馳走しようと並んだ弁当その他菓子一式と、大砲的何か……というか大砲。
    「で、ここからはお約束です」
    「皆を心配させた上に迷惑ばっかりかけたんですから、これくらいのことはしてもらわないと困りますよ」
     大破と雪音は澄み切った笑顔で勧めて(というか強制)。
    「おー、たーまやーって感じかな、派手に飛んでいくものだね」
     弾道を見送りながら、その様子をスケッチブックに描いていく和真と、シュネーはスマホで打ち上げの瞬間を激写。
     問答無用で射出された紫桜の横に何故かエリ。なんで一緒にいるのかという問いににぱっと笑い、
    「花びらの下に詰まってた」
     そして黙って落下点を指差すエリ。
    「打ち上げられてもバべってるからだいじょうぶーーー」
     丁度いい場所に川がありましたとさ。
     皆のはしゃぐ姿を見ながら桜の木に背を預けて、桜の花を目で楽しんで甘酒を飲むベル。
    「これが風流か……父さんが日本の風流を好んでいたのも納得だな、実に雅だ……」
    「なぁ、次は、ベルが女装すればいいじゃないか?」
     だって似合いそうだからと、膝の上でぎゅっと抱き付く奈津姫へ、ベルは困ったように笑って。
     借りたしゃぼん玉製造機から止めどなく溢れるしゃぼん玉。
    「いろんなことがありましたが、こんな穏やかな桜の一日もすてきですね」
     輝きと薄紅を見送り、そして皆にお酌をしながら充は微笑み浮かべて。

     一緒に居て楽しいと思える人って貴重だとどこかで。この出会いに感謝しながら、律は風景や皆をぱしゃりとカメラで。
     弥勒の持ってきた桜づくしのあまーいお菓子。
    「簡単に食べれるよう、小分け包装されてるのがいいかなーと思って」
     好きなのつまんでーと勧める弥勒。
    「……どうぞ」
     檀は用意したレモンマートル入りのルイボスティーをふるまって。
    「飲みやすいっすね、これ。今度また作って欲しいっすわ」
     律に微笑で答える壇。横では鴇永がしゃぼん玉を吹いたりして。何気ない時間がゆったりと過ぎてゆく。
    「今年もよろしくね、皆。で、来年またここに皆でお花見に来よう。誰一人、欠けることなく」
     差し出した手のひら、ふわりと落ちる薄紅と過ぎゆく七色へ、鴇永は穏やかに微笑んだ。

    作者:那珂川未来 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年4月11日
    難度:簡単
    参加:81人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 18/キャラが大事にされていた 10
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