エンドレスコンティニュー

    作者:呉羽もみじ


     薄暗い部屋の中に、小さな機械音のみがそれを主張するように流れる。
     ゲームの筐体から照らす明かりが薄らと少年の顔を照らす。
    「……。――っ、あー、負けちゃった。でも、良いか。コンティニュー、っと」
     慣れた手付きで「continue?」にカーソルを合わせクリック。
    「さて、次は最高得点狙えると良いんだけど」
     楽しそうに言う少年の顔は頬がこけ、目には生気が無い。
     しかし、それを指摘する人は誰もいない。
     このゲームセンターには彼独りしかいないのだから。
     軽快な機械音が、奇妙に歪んで聴こえる。しかしそれすらも気付かない。
     彼はこの異常な空間に囚われていた。
    「あー、負けちゃった。……コンティニュー、っと」

    「この前は依頼お疲れ様。アリスさんが心配してた事を念の為確認して貰ったら、やっぱり的中してたみたい。本当はこんなこと当たりたくないんだけど」
     シャドウって本当に嫌なところを突いてくるよね。水上・オージュ(中学生シャドウハンター・dn0079)は宿敵でもあるシャドウの暗躍が許せないらしく、少々苛ついたように爪を噛む。
    「今は被害を未然に防ぐ可能性が出来たと喜びましょう? 詳細説明をお願い」
    「はいよー」
     アリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814)はオージュを軽くたしなめると、黄朽葉・エン(中学生エクスブレイン・dn0118)へと説明を促す。
    「今回のシャドウはゲーム好きな男の子をターゲットにしてるみたいだねぇ。名前はカイト。小学生の高学年位の年齢かな。で、このカイト君。ゲームに目がないみたいで、通学路の途中にあるゲームセンターに通い詰めてたみたいだねぇ」
     だが、小学生の小遣い等たかが知れている。軍資金は直ぐに底を尽き、母親に小遣いの前借りを頼んでも遊びに使うお金などもってのほか、と、けんもほろろに断られてしまったようだ。
    「そこに現れたのが、我らがシャドウって訳。現実で叶えられないなら夢で叶えれば良いじゃない? ってことで彼を夢の中でゲーム漬けにするんだ。
     夢だからねぇ。何でも有りだよ。コインを入れるところは無いし、ゲームに負けてもそもそもコインを入れる場所が無いからコンティニューはし放題。カイト君は大喜び。
     さてさてこれで大団円……って訳にはいかないよね? ――彼は徐々に衰弱している。きちんと休息しないと生き物は弱るんだよ。それに気付かせない様に鼻先にニンジンならぬゲームをぶら下げて彼を絡め取ろうとしているんだ。陰湿だねぇ。やっぱりシャドウは好きになれないよ」 
     あー、やだやだ。エンはうんざりしたように両手を上げる。
    「だからさ、そのシャドウの企みを壊しちゃおうよ。先ずはカイトの夢の中に入って、彼の説得をしてね。でも只話しかけるだけだと無視されちゃうだろうから、隣でゲームをするとか、いっそ対戦しちゃうとか仲間意識的なものを芽生えさせると話し掛け易いかもね。それで、自分が衰弱している事実に気付かせて欲しいな。
     説得がある程度成功したらシャドウがやって来るよ。数はシャドウと配下2名。シャドウはひらひらのドレス姿。配下は赤と緑の服を着てるから見分けは簡単に付くよ。
     配下は影業相当のサイキック、シャドウはシャドウハンターと契約の指輪のサイキックを使って攻撃して来るよ。
     で、ちょっと変わってるんだけど、このシャドウ。配下が居るうちは攻撃しないで回復や援護をメインで行うようだよ。配下が倒されたら本性を現すみたいだけど……女の子ってダークネスでも人間でも恐ろしいものだねぇ」
     あ。最後の言葉は失言だったかな? と、エンは慌てた様に口を抑える。
    「正直言っていつまでも遊びたいって気持ちは分からないでも無いんだ。でも、制約があるからこそ楽しいと思うんだよね。その中でどれだけ自分を出せるかっていうの? そういうのって燃えない? って訳でも無いんだけど、ソウルボードからシャドウを出しちゃダメだよー。シャドウさんにはソウルボードっていう制約が無いとこっちが押し負けちゃうからねー」
     俺とのお約束だよー。エンは緊張感のない顔でへらっと笑うと灼滅者達を送り出した。


    参加者
    月風・雪花(辺りを照らす透徹の光・d00014)
    ソルデス・ルクス(不浄なる光・d00596)
    アリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814)
    織神・皇(死音之蒼・d03759)
    泉・火華流(元気なハンマー少女・d03827)
    フィン・アクロイド(デッドサイレンス・d11443)
    神谷・蒼空(揺り籠から墓場まで・d14588)
    曙・加奈(虚ろの眠り姫・d15500)

    ■リプレイ


     軽妙な音楽と、かちかちと小さく鳴らされるボタンの音。ゲームセンター特有の音がアリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814)を取り囲む。
    (「ゲームセンターか。この前の依頼ぶりね」)
     正直、ゲームセンターの騒音は苦手だけれど、これも仕事。しっかりと励むとしよう。
     背中を伸ばして少年、カイトの姿を探す。
     ――と、気付けば既に仲間がカイトを発見しているようだった。速足で合流する。
    「無限コンテニューか……そんなもの逆に楽しくなくなるだけだと思うんだがな。さて、いっちょう目覚まさせようか。――おい、デュエルしろよ」
     フィン・アクロイド(デッドサイレンス・d11443)が颯爽と言い放った台詞は、カイトに華麗にスルーされた。
    「館長、館長。只話し掛けるだけじゃスルーされちゃいますよ」
    「ああ、そうだったな」
     曙・加奈(虚ろの眠り姫・d15500)のフォローにフィンは手をぽんと叩いて納得する。
    「『夢幻の牢獄』……一番厄介なパターンねえ」
    「夢幻の牢獄?」
     泉・火華流(元気なハンマー少女・d03827)の呟きを水上・オージュ(中学生シャドウハンター・dn0079)が耳聡く聞き付け首を傾げる。
    「私が名付けたの。出ようと思えば出られるのに、逃げる意思を起こさせない、夢や幻で作られた実体の無い牢獄って意味よ」
    「ああ、なるほど。言い得て妙だね」
    「……。オージュさん、私、駄目な子なのかな?」
    「……どうしてそう思うの?」
     火華流は以前の戦いの苦い経験によって少し自信を失った事を手短に話す。
    「でも私、このまま終わりたくない」
    「そう思ってる時点で前に進んでるよ。頑張ろう?」
     オージュは火華流を肯定し、にこりと微笑む。
    「さて」
     ソルデス・ルクス(不浄なる光・d00596)がカイトの対面に座る。
    「コインの投入口が無いということは、ボタンを押せば直ぐに対戦可能ということですか。実に興味深い」
     興味津津といった風情で対戦ボタンをクリックすると「challenger」の文字が並ぶ。
     そこで初めてカイトが灼滅者の存在に気付いたらしく顔を上げる。
    「対戦?」
     ひび割れた唇が開かれ、一言そう問われた。
     ――、
     さすがにやりこんでいるだけの事はあると言うべきだろうか。カイトの腕前はなかなかだ。
     ソルデスの画面のパズルピースが投入口を塞いだ。「やった!」と無邪気にカイトは手を叩いて喜ぶ。
    「いやーお強いですね。しかし心無しか、動きにキレがないようにも感じましたね。ちゃんと休んでいますか?」
    「へへ、ありがとう。休憩は……楽しいからつい後回しにしちゃうけど、大丈夫、まだ平気だよ」
    「次はこのゾンビ撃つやつやろうぜ。最大4人まで参加出来るみたいだから、誰の得点が一番になるか――デュエルしろよ」
     フィンのデュエル申し込み、2度目の挑戦だ。
    「あ、面白そう。やりたい!」
     効果は抜群だ!
    「どうせならみんなで遊ぶのもええかもね。うちも参加」
    「私も参加!」
     織神・皇(死音之蒼・d03759)、神谷・蒼空(揺り籠から墓場まで・d14588)が手を挙げメンバーが決まった。
    「俺得意なんだ。何でかって? 本物撃ってきたから」
    「え?」
     フィンの発言に反応がワンテンポ遅れたが、カイトもゲームに集中する。
     ――が。
    「いまのは避けられない攻撃とはちゃうで?」
     ゾンビの攻撃を受けたカイトへと皇の声が飛び、
    「良かったぁ……何とかフォロー出来た。大丈夫、気にしなくて良いよ。仲間なんだから。助けあわないとね」
     蒼空の援護に悔しそうな顔を見せ、
    「え? お前得点低すぎね? そりゃあ、そうか。そんだけふらふらしてりゃあな」
     フィンの言葉に力無く銃を下ろした。
    「おかしいな、いつもはこんなこと無いのに」
    「疲れてるんだよ、自分が思っている以上にね」
    「休み無しでゲームをしているから、 衰弱して勝てなくなっているんですよ」
     月風・雪花(辺りを照らす透徹の光・d00014)と加奈が声を掛ける。
    「ゲームって楽しいし、ついついはまり込んじゃうのもわかるけど、カイトくんのは楽しみ方として不十分だと思うの! 皆でやった方が楽しいし、ゲームって疲れながらやるもんじゃないと思うよ」
    「それは、そうだけど……」
    「本気も出せんコンディションの奴に勝っても面白ろないわ」
     蒼空に反論しかけるが、良い文句が思い浮かばないでいるカイトに皇の容赦の無い言葉が飛ぶ。
    「じゃあ、ちゃんと休んだら……あ、あれ?」
    「あなたが思う以上に限界なんじゃない? 気休めかもしれないけどこれを」
     アリスはよろめくカイトを抱き起こして持参してきた栄養ゼリーを差し出す。
    「こういうのって自覚すると一気に来るのよね。無理しないで休みなさい。――さて、見物するのはもう飽きたでしょうから、そろそろシャドウのお越しかしら?」
    『はう!? ご、ごめんなさいっ』
     慌てた様な声がどこからともなく聞こえ、次の瞬間、妙な3人組が現れた。


     赤の服を着た小太りの男、マリに、特徴が「緑の服を着ている」しか無い無個性極まりない男、ルイ、それに舞踏会にでも行くのだろうかと思わせるようなドレスを纏った女、これがシャドウのモモだろう。
    「出やがったなこの変態拘束Sシャドウ、いたいけな少年を縛って閉じ込めるなんて」
    「そんな言い方しなくても……」
     うるうると瞳を潤ませるモモを庇う様にマリとルイが前に立つ。
    「私、あの人達、嫌い」
     彼らの背後に隠れたモモは、彼らの目が自分に向かない事を良い事に声だけは可憐な儘、灼滅者達に「あっかんべー」をしてみせる。
    (「な、何というあざとさ……!」)
    (「あざといさすがシャドウあざとい!」)
     蒼空と皇はモモのテンプレ的な手法に目眩を起こしそうになる。
    「いきなり敵のペースに巻き込まれちゃ駄目だよ」
     ワナワナしている二人を横目で見やり雪花はルイへとガトリングガンを連射する。咄嗟に足から影を伸ばし、盾にしようとするもソルデスの振るうシャドウテイカーに影ごと刈り取られる。
    「まぁ、緑は二番手と決まってますからね。さっさと退場してもらいましょうか」
     普段は存在意義すらも危ぶまれるルイは、真っ先に攻撃された事に対しダメージ(物理)を受けながらも内心こっそり喜んでいた。が、ソルデスの言葉により手酷いダメージ(精神)を受ける事となった。
    「やだやだー、ルイちゃん大丈夫? 痛いの痛いのとんでけー」
     塩をかけられたなめくじの如くへんにゃりとし始めたルイに向かって、モモは慌てて回復を施す。それによりダメージ(物理・精神共)も回復したらしく、ルイは親指を立てモモに「大丈夫」とアピールする。こいつ結構現金だ。
    「オトコの前だから猫かぶり? ええご趣味やね」
     ぎりぎりと締め付けてくる影から抜け出そうと、腕に力を込めながら皇が煽る様に言う。
    「えー? モモ、猫なんか被ってないにゃん♪」
    「うぜえ!」
     たぁん。
     ムーンウォークをしながら敵へと距離を詰めていたフィンは、不意にブリッジをするとルイにバスタービームを撃ち込んだ。彼のやり場のない思いの標的にされたルイは、その儘後方へと吹き飛んだ。
     フィンの奇怪な動きに全員フリーズしていたが、蒼空が我に返り、
    「あ、回復……するね?」
     皇に向かい符を飛ばす。絡んでいた影の力が弱まるのを確認すると一気に影を引き千切る。
    「館長、絶好調ですね。私も頑張らないと」
     実は少し前からカオス空間から抜け出して、様子を楽しんでいた加奈は糸を張り巡らせマリとルイの自由を奪う。ダメージそのものは少ない攻撃だが、動きが制限されるのは地味に辛い。その様子を見て加奈は楽しそうに笑う。
     何故かって?
    「人の邪魔をするのって楽しいじゃないですか?」
     それはもう良い笑顔だった。


    「万象の理、天壌の法、世界に背きし闇の眷属に断罪を!」
     シリアス担当、アリスの放ったマジックミサイルはルイの身体を執拗に撃ち続け、それに耐え切れなくなったルイは遂に消滅した。
    「じゃあ、次はもう一つの盾を破壊しようか」
     雪花の放つ弾丸はマリに着弾すると共に燃え上がる。
    「熱いの怖いー。消化ー」
    「そうは問屋が卸さへんで」
     モモの回復により少し閉じかけるが、皇の攻撃により複雑に切り刻まれた傷口を完全に治癒するには至らず再び燃焼する。
    「ねえ、生きながら燃やされるのってどんな気持ち? ねえ、どんな気持ち?」
     あくどい笑みを浮かべながらマリの方へとムーンウォークで近づくフィン。
     ちょっと怖くなったのか、マリはフィンへと影を伸ばし接近を止めようとする。そこへすかさずフィンを庇うのは、彼の相棒、ライトキャリバーのエクスカリバー。
    「エクスカリバー……お前だったのか」
     相棒の雄姿に思わずほろりとするフィン。
    「お前の屍を越えて、俺は生きるっ! いくぞBarrett! 狙い撃つッ!」
     とか何とか言ってる間に、蒼空がエクスカリバーの破損部分を修繕していたのだが、突っ込む隙が無かったし、何か怖かったので黙っておいた。
    「隙あり! てあぁぁ!!」
     火華流がハンマーを思い切り振りかぶりマリへと叩きつける。狙い澄ました一撃はマリの身体を吹き飛ばし、それでも勢いは止まらず地面を転がる。そして、起き上がる事無くその儘消滅した。
    「あんたの企みは破れたよ。ここから出てってよっ……それとも痛い目見て帰るっ?」
     ハンマーをモモへと突き付けながら火華流が言い放つ。その姿は、戦闘の前に見せた弱々しい表情は見えない。
     モモが俯く。顔の殆どは髪に隠れ表情を見る事が出来ない。
     僅かに見える唇がほんの少し歪められた。
     そして。

    「キャハハハハハハ!」


    「キャハハハハ! 三下相手に随分時間掛っちゃってるんじゃない?」
    「やっと本性出したかぃ?」
    「本性? ふにぃ? モモはいつでも自然体だよぉ? なぁんちゃって、キャハハハハ!」
     皇の言葉に嘲笑で返す。
    「でもでもぉ、少しは使えそうだからぁ、ねえ? 誰かこっちに来ない? モモを護るナイト様になってよ? ――きゃ!?」
    「冗談じゃない」
    「お断りします」
     モモは雪花と加奈からほぼ同時に発せられた攻撃をかわし切る事が出来ず、頬を膨らませ反論する。
    「もぉぉ、人がお話ししてる時はちゃんと聞かないと駄目なんだよぉ?」
    「随分余裕ね。じゃあ、これはどうかしら」
     ダメージを全く気にしていない様子のモモに向けてアリスがミサイルを撃ち込む。
    「アナタの攻撃はちょぉぉっと怖いかもぉ?」
     アリスのミサイルを叩き落とし、モモは「うふふ」と笑う。
    「雑魚相手に戦ってた時、誰も私の相手してくれなかったんだもん。暇だったからぁ、モモ、ずっとあなた達のこと観察してたんだよ? 皆がどんな動きをするのかじぃぃぃっとね。で、私に攻撃されるのが一番困るだろうなって子は多分、この子!」
    「――っ」
     瞬きする間も無かった。気付けば漆黒の弾丸が蒼空を撃ち抜いていた。
    「想像してたよりずっと痛いんじゃないかなぁ? ダメージ上乗せ出来るようにアナタ達がコンビの相手をしてる時に、モモも自分に術かけてたんだよぉ」
     キャハハハハ!
    「蒼空さん!」
     オージュは蒼空を抱き起こし傷口に治療を施す。
    「僕の能力じゃここまでが限界だよ……」
    「平気、自分で治療出来るから」
     悔しそうに唇を噛み締めるオージュに微笑むと、蒼空は震える手で符を取り出した。
    「……撤退は、しませんか?」
     ソルデスは大鎌を握り直しモモへと向き直る。もしどうしようも無い状況が起これば、闇落ちも辞さない覚悟。
    「うちかて腹括って来てるんよ」
     皇も薄く笑うと仲間達を庇う様に前に立つ。
    「仲間を護ってこそのディフェンダーだろ? 次は抜かせないよ」
    「おお、館長がいつになく格好良い。偶にはこんな状況も悪くないですね」
    「私は絶対に諦めない!」
     火華流の振り下ろしたハンマーが地面を砕く。
     そこにモモの姿は見えない。
    「止めてよ、皆して。……そういうの暑苦しいから」
     宙に浮かんだモモが冷たい目で灼滅者達を見下ろしている。
    「帰る」
     それだけ言うとモモは姿を消した。


     消えたモモが再び現れるのではないかと警戒していた灼滅者達だったが、どうやら本当に撤退したのを確認すると――ゲーム好きの血が騒いでしまい、その湧きあがる衝動を抑える事が出来ずに……――、
    「……参りました」
    「相手の次に来るピースが予め分かっているかのような動き……攻略法とかあるの?」
    「これは『凝視』といって、中・高級者向けの――」
    「これで、ラスト!」
    「お見事! ノーミスでクリア!」
    「えへへ、音楽ゲームなら私に任せて」
    「じっくり腰を据えてやるゲームは苦手だけど、身体を動かすゲームなら!」
     今に至る。
    「楽しくゲームをするのもいいですが、時々休まないといけませんよ。それに、一人でやるよりも、大勢でやったほうが楽しい物です。せっかくゴールにたどり着いても、振り返って誰も居ないのは寂しいでしょう?」
    「少しは元気になった様だけど、まだやつれてるわね。そこまでしてゲームにのめり込むのは大したものだけど、何事も限度があるわ」
    「うん。ハマり過ぎないようにする」
     カイトはソルデスのアリスへと反省の言葉を口にする。
     皆がゲームをしている傍の椅子に腰掛けて足をぶらぶらとさせているが……偶にちらりとゲームの方を見る。
    「全く……本当に反省してるの?」
     そんなカイトの姿を見てアリスはため息をついた。
     その脇ではフィンが、
    「リア充はいねーがー?」
     と、なまはげの様な格好をしてリア充狩りを開催していた。
     ガン無視だった。全総力を上げてガン無視であった。
     その様子に気付いたフィンが、こほんとひとつ咳払いをし、
    「ネタばらしをしよう。俺の今までの不可解な行動は友人知人その他諸々の人から募集した、依頼中にやって欲しい事を実行した結果である。よって普段の俺は人畜無害のただのイケメンだよ」
     周囲に生温かい風が吹く。
    「ゲームばっかりやってると、あのお兄さんみたいになるわよ」
    「ゲーム怖い! ゲームは程ほどにする!」
    「チクショー! 怨むぞ! 友人知人その他諸々っ!!」
    「っく、ふふふ、館長最高です」
     膝をついて滂沱の涙を流すフィンの姿を加奈が嬉々としてカメラに収めていた。

    作者:呉羽もみじ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年5月18日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 4/感動した 2/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 16
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