幸福な悪夢~理想の世界

    作者:白黒茶猫

    ●教室
    「時が、来たようだな……!」
     眠っているように目を閉じて待っていた神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)が、灼滅者たちが集まったところで目を開く。
    「今、少年少女が眠り続けるという事件が発生している。恐らく、以前学園の灼滅者たちが接触した『慈愛のコルネリウス』の配下によるものだろう」
     同様の事件が多くのエクスブレインたちによって複数未来予測されている。
     分かっているだけでも実に20名以上の少年少女が覚める事のない夢を見続けている。
    「慈愛のコルネリウスに悪意はないのかもしれない……だが、このまま無視するわけにもいかない」
     夢の中はまるで現実のようなリアルな世界になっており、夢を見ている者の為に特別に作られているようだ。
     夢に囚われた者は夢の中を『現実である』と思い込んで生活している。
     慈愛のコルネリウスは接触した灼滅者達の言葉で『幸福だけの夢』ではダメだと学んだことで、夢の中でもちょっとした不幸があり、努力しなければ結果が生まれないという世界を作り上げたようだ。
    「だがそれは逆に、本当の不幸に陥る事もなければ、努力すればした分だけ報われるということだ。ある意味『理想の世界』と言えるだろう……」
     努力は報われ、辛い出来事も結果的に幸せに転じる、そんな世界だ。
    「一見、放置しても問題ないように思えるかもしれない。だがことはそう単純なものではない」
     慈愛のコルネリウスの『慈愛』の心は広い。
     今回の事件が成功すれば、今度は規模を広げて更に多くの人間を夢に捕らえるようになっていく。
     その場合、20人と言う小規模ではなく、被害は都市規模……数千、数万人と膨れ上がるだろう。
    「それを阻むためにも、この段階で挫かなくてはならない。そして、お前達にはそんな夢に囚われた一人である中学生の少女の下へ行って貰いたい」
     ソウルアクセスで夢の中へ入り、現実のような、『理想の世界』に囚われた者に、それが夢であって現実ではないことを理解してもらい、現実に戻る決意をさせれば夢から連れ出す事が出来るだろう。

    ●宣戦布告
    「だがそれだけではない。慈愛のコルネリウスからの宣戦布告された、という話は聞いたな?」
     慈愛のコルネリウスは夢を見させている少年少女と灼滅者たちが接触するのを嫌っている。
     ソウルアクセスで夢の中に入ろうとすると、慈愛のコルネリウスの配下のシャドウが現実世界へと現れて妨害するのだ。
    「シャドウは現実世界で振るわれるその力は、『強力』なんて生易しいものじゃない……あえて言おう。普通に戦って勝つのは、『不可能』だ」
     今の灼滅者では8人集まったところで、まともに戦ってもまず勝ち目はない。
    「だが俺の脳に秘められた全能計算域が、お前達の生存経路を導き出す!」
     シャドウは強力ではあるが、その強大さゆえに大量のサイキックエナジーを消費するため、活動できる時間に制限があるのだ。
    「故にタイムリミットが指示されている。慈愛のコルネリウスは、配下にも慈愛を向けているようだな」
     現実世界での活動限界が近くなった場合や、戦闘で危機に陥った時は夢の中に逃げるよう指示されているようだ。
    「その時間は10分。シャドウはそのタイムリミットを超えて戦おうとはしない」
     捨て身で戦闘を仕掛けられれば危険だが、『危機に陥れば逃げる』という方針である以上、付け込む隙は充分にある。
     現実側でシャドウを撃退する事に成功したら、改めて夢の中へ入る事ができる。
    「だが闇堕ちした者が出てしまったり、重傷者が複数出た場合は、夢の中のシャドウと戦うのは難しい。……残念だが、その場合は撤退してもらう事になる」
     もしそうなれば、夢に囚われた少女やシャドウの居場所を掴むことはできなくなってしまうだろう。
    「敵はシャドウ一体のみ。何度も言うが、その力は強大だ」
     その姿は、巨大な黒いゲル状の塊。
     使用するサイキックはシャドウハンターに酷似したものに加え、ぶよぶよとした黒い塊のような体から何本もの華奢な腕を伸ばして殴りつけるものや、巨大な闇の塊に取り込み、複数を巻き込む一撃がある。
     華奢な腕による攻撃は、攻撃する度にその本数を増やして威力を増していく。
     闇の塊も、取り込まれれば内部で追撃を受ける事になるだろう。
     どれも桁外れに強力なものだ。
    「相手はその強大な力で、回復などはせずに短期決戦を挑んでくる。……とはいえ、並みの攻撃では回復などそもそも必要としないだろうな」
     よほど極端な構成であれば追い詰める可能性も万一にありえるが、かなり危険な賭けになる。
    「この戦いは、お前達にとって今までになく苦しく、長い10分になる事だろう……」
     ヤマトが辛そうな顔を浮かべる。
     灼滅者たちを今までより遥かに危険な戦い送り出すことにためらいがあるのだろう。
    「目的はシャドウの撃退だが、最終目的は夢に囚われた少女を助けることにある。それを忘れずに、決して、無茶だけはしないでくれ……」


    参加者
    姫城・しずく(アニマルキングダム・d00121)
    高嶺・銀(見習いガンナー・d00429)
    椿・諒一郎(Zion・d01382)
    天羽・蘭世(虹蘭の謳姫・d02277)
    白鐘・衛(白銀の翼・d02693)
    神護・朝陽(ドリームクラッシャー・d05560)
    上木・ミキ(ー・d08258)
    山咎・大和(彼女のためならいかなる事も・d11688)

    ■リプレイ

    ●想いはそれぞれ
    「現実でのシャドウ戦……強大な敵ですが、とにかく負けるわけにはいきません。必ず生き残りましょう」
     戦いを前に、山咎・大和(彼女のためならいかなる事も・d11688)が神妙な面持ちで仲間達に告げる。
     その存在の強大さゆえに制限時間こそあれど、10分間でどれほどの暴力を振りまくか、想像も付かない。
     それでも少女を救うため、遥かに強大な敵にも挑む。それが灼滅者なのだから。
     件の少女の家には難なく忍び込むことができた。
     家人は全員すっかり寝静まっており、動く者の気配は感じない。
    「両親のほうもぐっすり眠ってるみたいです」
     一人少女の両親の寝室を確認してきた上木・ミキ(ー・d08258)が戻ってくる。
     既に眠っている事から、魂鎮めの風を使うまでもなかった。
     物音をあまり立てないようにしながら、少女が眠る寝室に灼滅者達が集う。
     シャドウがもたらす覚めない夢に囚われた少女は、まるで死んだように眠っている。
    「現実を模した理想な世界か……あの子をそこから出してあげるのは可哀そう」
     姫城・しずく(アニマルキングダム・d00121)が呟く。
     努力は必ず実を結び、不幸な出来事は起こらず、見ている者は現実だと信じている。それはきっと幸せだろう。
    「どれだけ現実に近い夢でも、最終的に自分に都合のいい世界では他人と接続できません。自分と他人がいて、反発があってもお互いを認めあう、それが人間の……社会というものではないでしょうか?」
     眠る少女を見つめながら、高嶺・銀(見習いガンナー・d00429)がポツリと漏らす。
     どんなに登場人物がいようとも、夢の中には自分しか居ない。
     いるのはシャドウによって、都合よく作られた存在だ。
    「うん。この子が今見ているのはシャドウが見せてる幻影なんだよね。夢は夢。それを分からせてこの子を現実へ取り戻そう。それが僕のやるべき事だね」
     だがそれはシャドウが見せる偽りの幸せ。しずくも少女を連れ戻す事に躊躇いはない。
    「厳しくても現実を生きていくからこそ、夢が美しいんだと思うのです……『理想の世界』は所詮理想。幻想でしかないのですから……」
     天羽・蘭世(虹蘭の謳姫・d02277)もそれに頷く。
     理はあれど、人が想い描く中にしか存在しない。それゆえに『理想』。
     夢は夢だからこそ、その存在意義があると蘭世は考えていた。
    「夢が現実になったら、悪夢を見て怖がる事もできなくなりますね。……それはそれでつまんないです」
     夢は美しくあり、時折刺激にもなる。
     それはありえないことだからこそ、楽しめる。
     ミキも悪夢を例示にあげつつも、それについてはほぼ同意見のようだ。
    「女の子が目を覚ましてくれるように、がんばるのですよっ」
     蘭世はぐっと小さく拳を握り締めて気合を入れる。
     自分の考えを少女にぶつけ、幸福な悪夢から目を覚まさせるために。
    「あんまり無茶すんなよ~? ……俺が言っても仕方ないかもだがなぁ」
    「心配ありがとうございます。自分の回復を最優先にしますので、大丈夫です」
     同じクラブの後輩である銀に、白鐘・衛(白銀の翼・d02693)が声をかける。
     この戦い自体が無茶と言えなくもないが、それでも心配はする。
    「虹蘭、天の羽とともに」
     蘭世を初めとした灼滅者達が解除コードを唱え、殲術道具を手にして防具を纏う。
    「皆、準備は良い?」
    「無論だ。準備は整った。此方はいつでも構わない」
     しずくがソウルアクセスを試みる前に仲間達に確認すると、全員の位置を把握し終えた椿・諒一郎(Zion・d01382)が答える。
    「まずは、助けだすための前段階だな……さて、奴さんのスートは何かねぇ?」
     衛もガンナイフを構えつつ呟く。
     強大な敵だとしても、この戦いは少女を助ける為の一歩でしかない。
     他の灼滅者達も準備は万端だ。
    「それじゃ、行くよ」
     しずくが仲間達が殲術道具を構えるのを確認し、ソウルアクセスを試みようと手を伸ばし、眠る少女の手に触れる。
     だがその瞬間、少女から放たれる力の放流によって後ろへ吹き飛ばされ、しずくは仲間達に受け止められる。
     接触を察知したシャドウが灼滅者達の下へ、現実世界へと現れようとしているのだ。
     灼滅者達の背中にぞわりと悪寒が走り抜け、思わず自らが手にした殲術道具を握り締める。
     出現しかけでもわかる、強大な力とプレッシャー。
     ごくりと息を飲んだ音は誰のものか。それとも自分のものか。
     少女の身体から滲み出るように、黒いゲル状の物体……シャドウが出現した。
     仮面を付けた顔のような部分の下に浮かび上がるスートは、クラブ。
    「これが現実世界のシャドウ……なんか最近死ぬ気でがんばってばっかりです。はあ、死ぬ気にならなくていい程度に、世界が平和ならいいのに」
     『がんばらない』が命題であるはずなのにがんばらざるを得ない状況に、ミキは泣き言を漏らす。
    「おのれコヌリル…コルヌリア」
     全部コルなんとかさんが悪い。
     ミキが部屋の中の音が外に漏れないように遮断しつつ、シャドウへと相対する。

    ●1分
     シャドウは少女と灼滅者達との間にその身を置き、少女を背後に庇うように身体を膨らませる。
     眠っている少女を護ろうとでもいうのだろうか。
    「へっ、ダークネスが一丁前にナイト気取りか?」
    「けれど彼女を気にして戦う必要がないのは、こちらとしてもありがたいですね」
     現実のシャドウと対峙すれば、なりふり構わず全力で当たっても難しい。
     シャドウの余裕とも取れるが、少女に当たらないように注意する必要がなくて済んだともいえる。
     神護・朝陽(ドリームクラッシャー・d05560)が、縛霊手と盾をガツンと叩き合わせて気合を一発入れる。
    (「10分耐え切るぞ。次の舞台で思いっきり殴る為に」)
     プレッシャーに押し潰されないよう、ぶよぶよと蠢くシャドウを睨みつけながら。
    (「絶対に10分間、耐えてがんばるのですっ」)
     蘭世もまた、日本刀と盾を構えつつ気合を入れる。
     最初に動いたのはシャドウ。
     ゲル状の身体が鞭のように伸び、先端から少女のような華奢な腕が何本か生えて衛へ目掛けて殴りかかる。
    「させませんよ」
     大和が飛び出してその身を盾とするが、まともに受けてしまう。
     大和はなんとか踏み留まり微笑みを崩さないが、その一撃は大和の体力を半分以上奪い去った。
    「おぉ、コワ。あんな攻撃くらったら、たまったもんじゃねぇなぁ。だけど次はこっちの番、だぜ!」
     衛が導眠符を取り出し、シャドウ目掛けて投げつけるとその身体の中に飲み込まれる。
     続けて蘭世が日本刀を鋭く振り下ろしてゲル状の身体を斬り裂くと、切り離されたゲル状の身体が霧のように消える。
    「全然、斬った感じがしないのです……」
     だがゲル状の身体はまるで空気か水を斬っているかのような手応えだ。
     攻撃が本当に効いているのか不安になる。
    「ダメージは与えてるはず、ですが……」
     銀がバベルの鎖を瞳に集めながら、見極めるため味方の攻撃とシャドウの様子をじっと観察する。
    「当たってんのは確かだろ? なら攻撃し続けるまでだ」
     朝陽が縛霊手で殴りつけ、霊力の網を放出する。
     水を殴ったかのような手応えだが、霊力の網は確かにシャドウを縛り上げる。
    「あの攻撃、殺傷ダメージは大したことないみたいですね。……当たりたくはないですけど」
     ミキの歌声が反響するかのように部屋に響き渡り衛の傷を癒す。
     諒一郎がどす黒い殺気を放ち、蝕む。
     それは僅かにシャドウの身を傷つけただけだが、ダメージは目的ではない。
     恐らくシャドウにとっても、先ほどの攻撃は腕を増やして威力を増す事自体が目的なのだろう。
     逆に言えばそんな片手間の攻撃ですら脅威足りえるとも言えるのだが。
    「では、先ほどのお返しといきましょうか」
     癒せる傷は癒された大和が、砂漠のバラの名を冠するバスターライフルを構え、引き金を引く。
     魔力の閃光が放たれ、シャドウの身に飲み込まれる。
     主に追従するかのように続けざまに霊犬『コロ』が口にくわえた退魔神器で増えた腕を斬りつけると、傷ついた腕がシャドウの身体へと戻った。
    「シャドウ、君たちの目論見はここで終わりだよ。その子を夢から解放するんだ」
     しずくがシャドウへと言い放ちながらガトリングガンで弾丸を撒き散らし、射線を避けて回り込んだジンが飛び掛って闇のような身体を斬り裂く。
     それを受けてシャドウはまるで灼滅者達をあざ笑うかのように身体を揺らす。
     黒い闇を纏った細腕が今度は大和を狙って襲い掛かるが、それはコロによって庇われる。
    「やはり打点をずらされているようですね……良い当たりがまるでありません」
     幾度か灼滅者達の攻撃を観察していた銀が気づく。
     攻撃は命中こそしているが、僅かでも良い当たりはことごとく外されている。
    「だが、回避され続けるよりは良い。当たりさえすれば少しずつ弱体化を狙える」
     シャドウと灼滅者達の実力差から、回避され続ける事を想定していた諒一郎にとってはこの状況はマシと言える。
     灼滅者達の唯一の利点である『手数』を活かすべく、嵐のような暴力をその身受けつつも灼滅者達は攻撃を続ける。

    ●5分
    「状況・解析……!」
     戦い始めて数分が経ち、傷ついた仲間を癒しながらバベルの鎖を用いてシャドウを観察していた銀は、シャドウの狙いを読み切った。
     シャドウはサーヴァントは狙わずに最も傷ついた灼滅者を狙っている。恐らく、ポジションや殺傷ダメージまで計算して。
     如何に強大なダークネスとはいえ、短時間で全員をKOするのは無理だろう。
     だが例えば倒れた仲間を背負って撤退するのに必要な人数……4人を重傷にするとなれば話は別だ。
     防御を固めた布陣でも、その可能性は有り得る。
    「……やはり、シャドウの狙いは個々の確実な撃破のようです」
     強力な一撃が一人に集中する、最悪の展開だ。
     本能のまま戦うイフリートや、理性なく暴れるデモノイドとは違う。
     強大な力に加え、高い知性まで兼ね備えた存在。それが本来のシャドウなのだと実感する。
     しかしそれがわかったところで、敢えて連携を取らずに個々の判断に任せる作戦を取った灼滅者達には、個人で対処するしかない。
     数人掛かりで確実にブレイクされるため、腕を増やすのを諦めたシャドウが再び衛へとその細腕を振るう。
     それは致命的な一撃となり、衛の身体が壁へと叩きつけられる。
     クリティカルとはいえ、無傷だったはずの衛の体力が一撃で全て奪い去られる。
    「やだねぇ……こうも強くちゃ、きついのなんの……ってね!」
     だが衛の魂が肉体を凌駕し、ギリギリのところで膝を付かぬよう床を踏みつけるように身体を支える。
    「ジン、援護して!」
     しずくの声に答え、ジンは後衛へと下がった衛が受けた傷とトラウマをその瞳によって癒す。
    「女の子を助ける為にも、みんなを倒させるわけにはいかないのですっ!」
     自らを含めたディフェンダー全員に盾を分け与えた蘭世が再び日本刀を振るい、ゲル状の身体を切り落とす。
    「うひゃあ!?」
     後衛に逃れた衛を追いすがるように、巨大な闇のような身体が衛やミキ、ジンを丸ごと包み込もうと襲い掛かる。
     ミキは怯えて目を瞑るも、痛みが襲い掛かることはなかった。
    「倒させるわけにはいかないと――」
    「言ってるのですよっ!」
     諒一郎、蘭世、そしてコロが、それぞれ2人と1匹を庇う。
     取り込まれた闇の中で追撃を受けるものの、ディフェンダーにとっては大したダメージではない。
    「あ、ありがとうございます」
     ミキは礼を言いながら、蘭世を癒す。
     傷を増やしつつも、まだ一人も倒れていない。
     戦況は厳しくも、悪くない運びと言える。

    ●正念場
    「あと2分……耐え抜けば此方の勝ちだ――!」
     灼滅者達に癒えない傷が増えてきたが、それはシャドウも同じ。
     大和やしずくが与え、衛が増やしたプレッシャーによって正確だった狙いが精彩を欠くようになってきた。
     それでも確実に当ててくるのは、実力差を痛感せざるを得ない。
    「ちっ……くしょ……」
     前衛の間を縫うように放たれた漆黒の弾丸が衛を貫き、耐え切れずに倒れ伏す。
     傍目にもその傷は簡単に癒えないように見える。
     傷を可能な限り癒しつつ、少しでも攻撃の狙いを逸らし、その威力を殺ぐために攻撃を叩き込む。
     ラストターン、最後の攻撃が大和の身体へと襲い掛かる。
     だが倒れるまでに至らない。
     最後の攻撃を凌ぎ切ったと灼滅者達が思った瞬間、再び漆黒の弾丸が形成される。
     それは今しがた攻撃を受けたばかりの大和へと向かっている。
    「大和さんっ!」
     仲間の声に、大和は不敵な笑みを浮かべる。
    「ピンチの時こそ、紳士は不敵に微笑むのですよ!」
     この一撃を受ければ確実に倒れるほどの傷を負いながら、それで紳士として。
     ――だがその弾丸は大和の身体を貫く事はなかった。
     シャドウは自らの頭部目掛けて漆黒の弾丸を撃ったのだ。
     最後の最後で、衛が最初に与えた催眠の効果が発揮したようだ。
    「……これで、10分」
     シャドウの傷は浅い。エナジーも行動に支障が出るほど不足していないように見える。
     だが自らの主の命令に従い、夢の中へと逃げ去った。一度だけ振り返り、睨むような強い視線を灼滅者達へと向けて。
    「奇跡か必然か分かりませんが、撃退したことを喜びましょう」
     大和は戦いは終わっていないと考えつつも今は素直に勝利を喜ぶ。
     数段以上格上であるシャドウに対し、この程度の被害で済んだのは幸いと言える。
    「無事……とはいかないが、なんとかなったな」
     仲間達の危機となったら闇堕ちも覚悟していた朝陽が、ほっと一息つく。
    「倒す事はできないが、勝利する事はできるということだな」
     諒一郎は頷きつつ、安堵の声を漏らす。
     灼滅者達のすぐさま追うことはせずに、心霊手術を施しながらゆっくりと休んで傷を癒す。
     だがあまり時間をかければ夢の中に逃げたシャドウがどんな行動を取るか分からないため、10分程度で切り上げる。
    「こっからが本番なんだ。頑張んねぇとな……」
     衛が受けた傷は深いものの、夢の中での戦いまでにはなんとか癒えるだろう。
    「被害状況を確認。次のミッションと行きましょう」
     銀は仲間の被害確認し、心霊手術を終えた諒一郎と共に。
    「さて、追い詰められた奴さんはどう待ち構えてるかねぇ……」
    「散々やられた分、思いっきり殴りに行くか」
     衛が重傷を受けたばかりの身体で、朝陽に支えられながらなんとか歩き。
    「次もがんばるのですよっ!」
    「私はがんばらないで済むといいです……」
     気合を入れる蘭世とミキは正反対の事を言いつつ。
    「皆、追いかけるよ!」
    「では気を引き締めていきましょうか」
     しずくが仲間達へ声を掛け、大和はにこやかに笑みを浮かべ。
     眠る少女の手をそっと握り、灼滅者達は少女の夢の中へと入っていった。

    作者:白黒茶猫 重傷:白鐘・衛(白銀の翼・d02693) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年4月17日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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