サクラウイロ

    作者:聖山葵

    「やっぱりお花見と言えば花見団子だよなー」
     緑色の団子だけが残った串を持った少年が桜の梢を見上げて呟いた。
    「いやいや、桜餅も捨てがたいだろう」
    「つーかお前等、まだ弁当残ってるってのに……おやつに手を伸ばすの早すぎだろ」
     春の河川敷、レジャーシートに座る少年達は、今まさに花見を満喫しているところだった。
    「けど、いいのかよ? あの子誘わなかったけど」
     少年の一人が投げかけた疑問で場の空気がかわるまでは。
    「あ? だって仕方ないだろ。あいつ呼んだらおやつはみんな『ういろう』だぜ?」
    「だよね。悪くはないけれど、毎回毎回は流石に飽き――」
     いや、それでも一時的に空気が悪くなっただけで済んでいたかもしれない。
    「ふーん、そんなこと思っていたんだ」
     噂をすれば、影。はぶられた少女がたまたま通りかかるまでは。
    「ちょっ」
    「ひぃっ」
    「うわぁぁっ、助けてぇぇぇっ」
     過去に何かされたのか、少年達は料理もお菓子もその場に残して逃げ出し。
    「ふふふ、上等じゃないの。二度と飽きることが無いぐらいに思い知らせてあげるんだから……」
     昏き笑みを浮かべた少女は、ピンク色のぷにぷにしたものを全身鎧のように身に纏うと。
    「簡単に逃げられるとは思わないでよ」
     そう呟いて、逃げた少年達を追いかけ始めた。
     

    「と言う訳で、俺は花見に行きたくなった訳だが」
     一般人が闇堕ちしてダークネスになる事件が発生しようとしている手前、エクスブレインの少年としては、まず灼滅者に事件の詳細を説明する必要があった。
    「通常なら闇堕ちしたところで元の人間の意識は消えてしまうんだが、件の少女は元の人間の意識を残しているみたいでな」
     つまり、ダークネスの力を持ちながらもダークネスになりきっていない状況らしい。
    「その子が灼滅者の素質を持つなら闇堕ちから救い出せるかもしれない」
    「えーと、それじゃあ……」
    「ああ、出来ることなら救出を」
     もし、完全なダークネスになってしまうならその前に灼滅をお願いしたいというのが、鳥井・和馬(小学生ファイアブラッド・dn0046)達灼滅者達が呼ばれた理由だった。
    「闇堕ちしかけている少女の名は、雨色・桜(あましき・さくら)。この四月で中学三年になるはずだが」
     彼女にういろうをしょっちゅう食べさせられていた友人達が実はういろうに辟易していた実態を見せられ、ご当地怪人ウイロナイトと化してしまうらしい。
    「まぁ、よっぽどショックだったんだろうが……なんというかなぁ。そのウイロナイトだが、見たところピンクの全身鎧を纏った騎士に見える」
     ただし、鎧は総ういろう製で下には下着しかつけていない。
    「何だかオチが見えてきたんだけど」
    「言うな」
     あちゃーと言わんがばかりにエクスブレインの少年顔を片手で覆ってため息をつき。
    「この鎧、食べられる」
     と告げた。
    「攻撃のかわりにかじりつくことで防御力を低下させることが出来る」
     所謂服破りの効果があるのだろう。
    「しかも、やっこさんは拒まない。まぁ、ご当地怪人としては食べて貰えるのは願ったりかなったりと言うことなんだろうな」
     ただし、ダメージを与えるわけではないため、攻撃した方が早いのだが。
    「話を戻して、闇堕ちした一般人を救うには戦ってKOする必要がある」
     この為、戦いは避けられない。
    「接触して人の心に呼びかけることで戦闘力を低下させることも出来る訳だが、何というかイロモノだよなぁ」
    「あー、うん」
     思わず遠い目をして頷いた和馬は自分がそのご当地怪人と戦う姿を想像してしまったのかもしれない。
    「で、だ。ウイロナイトはご当地ヒーローのサイキックに似た攻撃をしてくるぞ」
     他にも手にしたでっかい爪楊枝で妖の槍のサイキックに似た攻撃を行ってくるらしい。
    「お前達が桜と接触出来るのは、花見をしていた桜の友人達が逃げ去った直後の河川敷だな」
     これ以外のタイミングで接触した場合、バベルの鎖によって桜の内なる闇にこちらの行動が予知されてしまうだろうと少年は言う。
    「その河川敷は穴場の花見スポットで他の花見客は居ないと思うが」
     一般人対策をしておいても損はないとのこと。
    「シーズンだからな、ついでに花見してくるのもいいんじゃないか?」
     そう言いつつ、少年が差し出したのは五段重ねの重箱。
    「俺の手作り弁当だ。かわりと言っては何だが仕事の方もよろしく頼むぞ」
    「あ、うん。じゃあ行ってくるね」
     ずっしり重いお弁当を受け取った和馬は、頷くと重箱を抱えて踵を返し。
    「とりあえず俺はあれで我慢するか」
     一人残った少年は、鞄から和菓子をのパックを取り出すと窓辺によって校庭の桜を眺めながら教室での花見としゃれ込むのだった。
     


    参加者
    護宮・マッキ(輝速・d00180)
    龍海・光理(きんいろこねこ・d00500)
    山岸・山桜桃(ヘマトフィリアの魔女・d06622)
    小川・晴美(ハニーホワイト・d09777)
    黒崎・白(モノクロームハート・d11436)
    獅子堂・音夢(未熟な影遣い・d15905)
    山住・伊吹(鬼神に横道なし・d16037)

    ■リプレイ

    ●なにこれ
    「そ、そんなに食べたいって言うんなら仕方ないわね……」
     灼滅者達は、少女を救う戦いに赴いたはずだった。
    「わたしは結構味にうるさいですよ」
     だと言うのに、目の前で繰り広げられる光景は何だろうか。面頬の中からほんのり赤く染まった顔に見返されつつ、黒崎・白(モノクロームハート・d11436)は差し出された腕に、かぶりつく。
    「……あっ」
    「や、そう言う声あげられると微妙に食べづらいんだけど」
     そう言って鳥井・和馬(小学生ファイアブラッド・dn0046)が目をそらすと、もう随分と小さくなった一般人、ご当地怪人と化した少女の友人――の背中が遠くに見える。
    (「ういろうの鎧か」)
     どう想像してもエッチな雰囲気がするのでここはあきらめて素直に流されよう、と胸中で呟いた護宮・マッキ(輝速・d00180)もフラフラと桜色の鎧に近づき。
    「はっ! あ、いや……ゆきなに変な目で見られると困るから」
     何かとてつもなく重要なことを思い出し、直接かじりつくのを思いとどまった。
    「ご当地ヒーローってのも、結構大変なんだな」
     山住・伊吹(鬼神に横道なし・d16037)がちらりと横を見たのは、そこにご測地ヒーロー、もといご当地ヒーローの小川・晴美(ハニーホワイト・d09777)が居たからだが。
    「この子、昔の私と同じだわ。認めて貰いたくて食べさせちゃうのよね……」
     と自分に目の前の少女を重ねていた晴美とて、この状況には困惑せざるを得ない。
    「すごい絵面な敵さんですねぇ」
    「緑茶用意しておいてあげましょうかね」
     どこかから聞こえてきた声は、和馬の応援に来た灼滅者のものだろうか。そもそも、殺界形成やサウンドシャッターの他、応援の力も借りて「毛虫が大量発生してる」と言う作り話まででっち上げ、戦闘の準備を万端にして戦いに望んだはずだったのだ、しかし。
    「ちょうど桜も咲いてることですし、お茶もあります。お茶請けにういろうを食べつつお花見でもしませんか」
     という白の説得にご当地怪人が同意した為、戦いが中断されてしまい、現在に至る。
    「このバベルの鎖とやらは、役に立つが面倒くさくもあるな。力任せで行くのが一番楽なのだが……」
     と逃げ去って行く一般人を眺めていたリーグレット・ブランディーバ(紅蓮獅子・d07050)は、確認が難しくなるほど人影が小さくなったところでピンク色の鎧騎士に向き直ると既に所々穴が開いた鎧の表面へ目を留める。
    (「ういろう……、ふむ。私も聞いた事がないな」)
    「まずはういろうのお味、確かめさせて頂くわよ」
     丁度その鎧試食会に参戦した晴美が一瞬視界を遮り。
    「まぁ、同じ和スイーツでも、私の寒ざらしの方が美味しいに決まってるけれど」
    「飲み物はいかがですか?」
     龍海・光理(きんいろこねこ・d00500)が飲み物を配って桜の枝の下を歩き回る。
    「和菓子の中でもういろうはいいよね。薄甘くて、飽きない。とても上品だ」
    「でしょう?」
     ういろうはけっこう好きなんだよね、とウイロアーマーの欠片を頬ばるマッキに面頬を食べられたご当地怪人の少女は嬉しそうに食いつき。
    「ところで、何故ういろう推ししてるの? ただ好きだからなの?」
    「そ、それもあるけれど……」
     のどかな時間だった。獅子堂・音夢(未熟な影遣い・d15905)の問いにもじもじしつつ話し始めたウイロナイトを見守る灼滅者が数名。
    「っ」
     広がる甘さに感動しつつも、手にした白玉をご当地ヒーローがご当地怪人の口に突っ込むまでは。
    「んぐっ」
    「か、寒ざらしの方が蜂蜜水のお陰で食べやすくて優しい甘さだし……!」
     急に口を塞がれて目を白黒させるご当地怪人の少女こと桜から自分に視線が集中して、晴美はあたふたするが。
    「けほっ、けほ……」
     不意打ちが気管支に入りかけた桜には効果抜群だったようで。
    「ういろうはゆすらも大好きです。ただ、無理に食べさせたらどんなにおいしいものもおいしさが半減してしまうですよ?」
     山岸・山桜桃(ヘマトフィリアの魔女・d06622)の一言は、絶妙のタイミングであり、完璧なフォローだった。

    ●百聞は一見になんとか?
    (「ういろうは美味しいと思う。けど、どんなに美味しいものでも押し付けは駄目なのよ」)
     その通りだと言わんがばかりに音夢は頷き。
    「あなたがういろうを愛する気持ちは素晴らしいことだと思う。けれど、それを他人に強要するのは間違ってるわ」
    「無理矢理食べさせようとしたら、逆に嫌いになると思うぜ?」
     光理が、伊吹が畳みかける。
    「うぅ……」
     ニュアンスというかシチュエーションが微妙に違う気もするが、実際にやられた直後だけあって凄い説得力だった。涙目のご当地怪人に接触当初の迫力はもうなく。
    「人の好みは色々あるから、押し付けてしまってはダメだよ」
    「あなただってういろう以外のお菓子を強要されたら嫌でしょう」
     続く説得の中、戦いは始まる。
    「きゃあっ」
     衝撃波と神秘的な歌声が同時に桜を襲うなか。
    「えっと、和馬君はそのままウイロアーマーをひたすら齧り続けて欲しいです」
    「えっ」
     手渡されたおしぼりを片手に佇むただ一人を置き去りにして。
    (「やはり、好きな物を好きって言うのは構わないが……それを押し付けるのは、良くないよな」)
     握り込んだ伊吹の拳が続く腕もろとも巨大化、異形化し。
    「あなたの気持ちも……まあわかります。人の好きなものを笑う手合いにろくなのはいないですからね」
    「なっ」
     白は、わたしはういろう結構好きですよと言いながら、龍の骨をも叩き斬る一撃をあちこち欠けた鎧の騎士へと見舞う。
    「自分の好きなものを他の人と共有したいって素敵な気持ちだと思う。だからわたし、一緒にやり方を考えたいと思うの」
     その為にも桜を救いたいと、音夢が伸ばしたのは、己の影。
    「ちょっ、何、これ……身動きが」
     戻ってきて、という願いと共に繰り出される攻撃は、真摯な思いがあるからこそ闇を追いつめる。
    「やっぱり、服を破ったり触手でからめたりすることになったか。ヤバい」
     もう既に男性陣には目の毒にしかならないような光景ではあったが、これは戦い。マッキとて、攻撃の手を緩める訳にはいかないのだ。
    「大丈夫。桜ちゃんの大好きなういろうの良さは無理強いしなくてもきっとわかってもらえます」
     語りかけながら、地面を蹴った山桜桃は妖の槍に捻りを加えて突き込み。
    「っ、この――」
    「ほら、そんな風にしてるとみんながういろうのこと嫌いになっちゃうですよ。そんなの嫌ですよね?」
    「っ、あ……」
     大きな爪楊枝の槍で応戦しようとした鎧騎士は、説得の言葉に動きが止まった隙を突かれて脇腹へ一撃を受ける。
    「ふん、何だその格好は? それで守れているつもりなのか?」
     本来ならば打撃には持ち前の弾力性で衝撃を打ち消し、斬撃には一時的に高質化させて応対する筈のウイロアーマーだったが、現状を見ればリーグレットでなくとも、そう言葉を投げたことだろう。
    「よくもまぁそんな格好で戦う気になれるよな」
     あちこち食べられた鎧は、もう殆ど鎧の態をなしていなかったのだから。
    「うぐっ、痛ぅ、きゃ、きゃぁぁっ」
     当然、リーグレットがオーラを集中させ繰り出した拳の連打は鎧の隙間から容赦なく桜に叩き込まれ。
    「緑茶はいかが?」
    「あ、うん。ありがとう……ふぅ」
     顔を引きつらせたまま、倒れた少女から鎧をはぎ取って食べることを続けていた和馬は応援の灼滅者から差し出されたお茶を受け取ると、一息つく。
    「大人しくしなさい!」
    「そうしたらさっきみたいに無理矢理口に押し込むんでしょ! あ」
     影を触手と化して伸ばすご当地ヒーローと立ち止まって叫んだせいで追加の触手に絡み付かれ、更に酷い姿になるご当地怪人。イロモノが相手な時点である意味予想されたカオスだった。

    ●ぽろり
    「甘くておいしいけど、何でピンク色なの?」
     名前にちなんだのではないだろうか。たぶん、花見の席で聞いたなら音夢の問いにウイロナイトは答えてくれただろう。今のような状況でなければ。
    「嘘はよくないよね。それが君を傷つけた」
     だが。
    「良さを知ってもらうことと、無理にわからせるのは違うの」
     灼滅者達の説得は続く。
    「とりあえず、闇堕ちしそうな悪い子にはおしおきなの……!」
    「きゃんっ」
     同時に、攻撃も続いていた。更なる触手攻撃の末、光理の振り下ろすルベルスティアを叩き付けられた鎧騎士は音夢に捕まえられて地面に叩き付けられ、身体が地面に触れた瞬間に爆発が生じる。
    「うぅ……よくもっ、よくもっ」
     体中のあちこちに絡み付いた影を引き摺り、身を起こした少女は巨大爪楊枝を構え首を巡らせた。
    「うわぁぁぁっ!」
     動きを制限された状態で、無理矢理繰り出した爪楊枝の先がリーグレットを狙ったのは、反撃しようとしたタイミングでたまたま向かってきていたからに過ぎない。
    「ふっ」
    「そんな」
     繰り出した突きがあっさりかわされたのは、もういろんな意味で大変なことになっている触手に絡み付かれているところが大きい。
    「ういろうは、身を守るものでは無く腹を満たす物だ、流石に私でもわかるぞ。それを心得ず暴力で使っているお前はまだまだ二流という事さ」
    「あっ」
     かわしざまにリーグレットへ咬み千切られ、胸甲がずり落ちる。
    「そう言えば、ういろうは羊羹と比べて同じ大きさでもずっしりと重いんでしたね」
     見栄を張りたい人には重宝されるお菓子なのかもしれない、つまりは――鎧にも一部にほんのちょっぴり偽装が存在していたらしい。
    「ふん、ういろに包まれて攻撃力まで落ちているんじゃないか?」
     攻撃力というか、ある意味では攻撃力だろうか、ともあれ。
    「っ、きゃぁぁぁぁ!」
     胸を隠して少女は叫んだ。
    「えーと」
    「なんだろ、この空気は」
     起こるべくして起きたというか、何というか。
    「和馬君はそのままで」
    「えっ、オイラまだ食べるの?」
     ただ、桜の動揺は大きな隙でもあった。引きつった顔で聞き返してくる性別和馬にはそれ以上答えず、ご当地怪人との距離を詰めた山桜桃は手にした妖の槍で少女を突く。
    「かはっ」
     無防備な所に一撃をみまわれた少女は身体をくの字に折り曲げ。
    「そろそろ終わりにさせて貰うわよ」
    「う……なっ」
     支えにしようと地についた巨大爪楊枝にまで影の触手は絡み付き。
    「味に自信があるなら、食べてくれる人は多いんじゃね?」
     動きが止まった鎧の少女へ近寄ると、伊吹は躊躇無くういろうの鎧にかじりついた。
    「なかなか美味いぜ……だからよ」
     握った右拳に雷を宿し、戻って来いよと言葉を続けて屈む仲間を眺めつつ、リーグレットは腕を組んだ。少女の疲弊は誰の目にも明らかで、伊吹が放つアッパーカットに耐えうる力はもう無いと踏んだのだろう。
    「きゃあぁぁぁ」
    「その軟弱な精神を武蔵野で鍛え直すんだな」
     宙を舞い、弧を描いて地面へ叩き付けられた桜の声を聞きつつ言い放つと、桜の花びらが風に散るように崩れゆくピンクの鎧から目をそらした。戦いは終わったのだ。

    ●お花見しよう
    「ん、なんだ……その」
     伊吹からすれば、少女が救えた以上最初にすることは、まず謝罪のつもりだった。
    「ほらほら、ぼーっとしてないで男どもは後ろ向きなさい。ささ、桜さんはこっちで着替えましょ~」
     が、男性に見るなと言う女性からの言葉は誰がどう見ても正論で。
    「わ、悪ぃ」
     やむを得ず後ろを向きながら、伊吹は羽織っていたコートを差し出す。実は山桜桃が着替えを用意して居たのだが、後ろを向いてしまっている伊吹には確認のしようもなく。
    「はい、終わったよ」
    「あ?」
     気がついた時には、武蔵坂学園の制服の上からコートを羽織った少女が立っていた。
    「ええと、その……ありがとう」
    「お、おぅ」
     たぶん、謝罪の意思は伝わったのだろう。恥ずかしいのか決まり悪そうに視線を逸らしてしまった桜へ伊吹は応じ。
    「お菓子、持ってきたの……皆で食べよう?」
     袋に詰めたお菓子を取り出す音夢の声に背を押されるようにして、切り出す。
    「もし良かったら、一緒に花見でもしようぜ?」
     と。
    「そ、そうね。せっかく桜が綺麗に咲いてるんだし――」
     断る理由も特にない。一般人対策の効果が残って居るのか、戦いが終わったというのに誰かがやってくる気配はなく。
    「この景色、私達で独占ですね」
     満開の桜の下にしかれたレジャーシートへ灼滅者達は思い思いに腰を下ろして。
    「おにぎり作ってきました……」
     山桜桃が弁当箱の蓋を開けると、具にマグロやキュウリを入れたおにぎりが顔を覗かせ。
    「私からは食後のスイーツを提供しよう。おおっと、ういろうの方が良かったか?」
    「それなら、きっと大丈夫ですよ」
     リーグレットの声に頭を振った白は確信をもって闇から救い出された少女に問いかける。
    「お茶菓子にういろう、出してもらえますよね」
    「もちろんよ」
     微笑み、桜という名の少女が取り出したソレは、桜色だけに止まらず。
    「いろんなおにぎりと唐揚げとか煮物とかだよ、たぁんとおたべ~ 特に和馬くんっ♪」
    「あ、うん。ありがとう」
     持ち寄った料理やお菓子へ手を伸ばし、灼滅者達は舌鼓を打つ。
    「うん。桜綺麗……お弁当も美味しいし」
     風に揺れる桜の梢を眺めながら音夢は箸で摘んだおかずを口元に運び。
    「ま、ちょっと大人の味だよね。彼らもいつかういろうの本当のおいしさに気づくと思うよ」
     少女の友人が逃げ去った方を見つめ、マッキは半分になった一切れのういろうを口の中に押し込んだ。
    「ふっ、景色を楽しみつつ食べる――」
    「これだって美味しいわよ。良かったら」
    「なら、食べ比べてみるとか……」
     花見の席、賑やかなところは多々あって。
    「花も団子も、なの!」
     そう結論づけた音夢は、リーグレット達と張り合う形になっていた一人の少女へ歩み寄り、話しかける。
    「ういろう皮で餡をくるんだ生菓子や、ういろうを使ったちまきなんてものもあるの」
    「えっ」
     唐突ではあったものの、内容がういろうに関係していたからこそ、桜はすぐさま振り返り。
    「だから、ういろうの良さを皆に知ってもらう為に変化をつけるの。ういろう普及委員会の発足なの!」
    「……普及、委員会」
     音夢の提案は目から鱗だったのだろうか。噛み締めるように謎の団体の名を口にした少女は。
    「委員長はあなた、顧問はわたしなのよ?」
     気がつけば、その言葉に笑顔で頷いていた。
     

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年4月8日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 14
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