昏き夜道に待つ者は

    作者:聖山葵

    「さてと、今日はどこで暴れっかなぁ」
     拳を鳴らす男が一人、人気のない路地裏を行く。
    「まぁ、雑魚共も俺の拳にかかった数に入れりゃ本望だろうさ」
     俺の強さの証明になるんだからな、と勝手なことを言いつつ男が進む先には、店でもあるのかネオンの明かりが漏れている。
    「ほぅ、そう言やぁ飯がまだだったなぁ……寄って――」
     見るのも良いかと、男が言いかけた時だった。
    「探せば、居るものですね……」
     目の前に道着姿の女性が立ちふさがったのは。
    「なんだぁ、女? この俺の拳にかかりに来たのか?」
    「うん?」
     にやにやと下卑た笑みを浮かべた男に女性が不思議そうな顔をして首をかしげたのは数秒ほど。
    「ああ、相手との実力差も理解出来ないほどの雑魚なのですね」
    「なっ」
     ポンと掌を拳で叩いた女性の言に男は思わず目を見張り。
    「てめぇ、良い度胸してるじゃねぇか……」
    「お師様ならともかく、あなたのような雑魚に褒められても」
     ヒクヒクとこめかみをけいれんさせた男の顔が、目をそらす女性の態度で一掃怒りに歪む。
    「上等だ!」
     我慢の限界に達したのだろう、もともと沸点は低そうな男であったが。
    「その喧嘩買っってやらぁ!」
    「いいでしょう……では、参ります」
     売り言葉に買い言葉と吼えた男へ向かって、ぺこりと一礼した女性は構えをとって地を蹴った。
     

    「警戒していた甲斐があったと言うべきでしょうか、街へ向かうアンブレイカブルを見つけたんです」
    「そのアンブレイカブルは時折街に繰り出して暴れていたようなのだが――」
     ただ、仰木・瞭(夕凪の陰影・d00999)の確認した情報に座本・はるひ(高校生エクスブレイン・dn0088)は続きがあるとは告げる。
    「私の演算の結果、一人の女性と鉢合わせるが解った。いや、鉢合わせるではないな、出会うべくして出会ったと言うべきか」
     なぜならその女性、このアンブレイカブルが目当てで足を運んだように見えたというのだ。
    「女性はその後アンブレイカブルの男に戦いを挑む」
     相手はダークネスだ。女性の細腕ではひとたまりもないと言いたいところだが。
    「そうはならない。女性の方も道着に身を包み拳に包帯を巻いていた」
     つまり挑んだ側もただの一般人ではないと言うことなのだろう。
    「ただの一般人女性にまるで子供扱いされたあげく惨敗するダークネスが居るなら話は別だと思うが」
     少なくともそんなアンブレイカブルが居るとは思えない。
    「便宜上、以後道着の女性と呼ぶが、彼女が何故そんなことをしているのかは解らなかった」
     ただ一つ言えるのは、このまま放置したとしても街で暴れようとしたアンブレイカブルは道着の女性に叩き伏せられ、事件は解決すると言うこと。
    「とはいえこのまま放置して良い物とは思えない」
     故に君達を呼んだのだとはるひは言う。
    「女性が接触する十分前。そう、十分前のタイミングであればバベルの鎖によって察知されることなくアンブレイカブルの男と接触することが出来る」
     男の性格は残忍かつ嗜虐的。ストリートファイターのサイキックに似た攻撃手段を持ち中でも拳を使う技を特に好んで用いる。
    「他者を拳にかけることを喜ぶ変態だ。女性の意図がどうあれそんな輩を活かしておいては後の禍根となる可能性を否定出来ない」
     よってアンブレイカブルの灼滅をお願いしたいと――はるひは灼滅者達に頭を下げ。
    「尚、道着の女性については無理に接触する必要もないが」
     情報は重要だと言葉を続けた。
    「得られる情報が多ければ、こちらとしてもやりやすくなる」
     道着の女性の目的を知ることが出来れば尚良い、としつつもはるひは釘を刺すのを忘れなかった。
    「ただ、勇敢と無謀は違う。欲をかけば藪をつついて蛇を出すことにもなりかねない」
     接触を試みるなら慎重にに頼むよ、と言い添えて少女は灼滅者達を送り出すと。
    「お師様、か……」
     サイキックアブソーバーから得た情報の欠片を口にして天井を仰いだ。
     


    参加者
    鏡・剣(喧嘩上等・d00006)
    仰木・瞭(夕凪の陰影・d00999)
    犬神・夕(黑百合・d01568)
    クロノ・ランフォード(白兎・d01888)
    灯屋・フォルケ(Hound unnötige・d02085)
    居島・和己(は逃げだした・d03358)
    サフィ・パール(ホーリーテラー・d10067)
    森沢・心太(隠れ里の寵児・d10363)

    ■リプレイ

    ●乱入者来る
    「なんだぁ、てめぇら?」
    「拳の獲物が増えただけですよ」
     誰何の声に答えたのは、森沢・心太(隠れ里の寵児・d10363)だった。
    「はン、俺のことを些少は知っ」
    「んじゃ、喧嘩は楽しむが前座には早々にご退場願いますかね」
     人に知られるイコール恐れられるとでも受け取ったのか、にやにやと下卑た笑みを浮かべた男の顔は、背後から聞こえた声で一変する。
    「んだがぁっ?!」
     怒りではなく、鏡・剣(喧嘩上等・d00006)の拳で物理的に。
    「熱っ、ちぃっ、てめぇ舐めた真似しやがって!」
     その身を炎が這い出したのは、剣の拳が炎を宿したバトルオーラでコーティングされていたからだろう。先手必勝、挟み打ちからの奇襲で一発貰ったアンブレイカブルの男は今度こそ敵意で顔を歪めたが。
    「ど、どうぞお怒りをお鎮め下さいっす、自分お味方しますんで――と見せかけて、そいやっ!」
    「がはっ」
     奇襲は終わりではない。いきなり土下座したかと思えばくるりと向きを変えた居島・和己(は逃げだした・d03358)がそのまま男の死角に回り込んで斬りつけ。
    「うぐっ」
     傷を押さえてよろめくアンブレイカブルへ言葉を投げたのは、クロノ・ランフォード(白兎・d01888)。
    「悪いなニーちゃん、大人しく倒されてくれ」
    「ふざけン、があっ」
     激昂して顔を上げた時に男が見た場所に声の主は居らず、切り裂かれた傷の痛みだけがクロノの言葉に虚言の無いことを語っていた。
    「挟撃は上手くいきましたね」
     不意打ちと前後からの挟み打ちは功を奏し、ここまでは仰木・瞭(夕凪の陰影・d00999)達が想定したとおりの流れで動いている。
    「ぐぅっ、らぁぁっ!」
     むろん、男もそのまま一方的に屠られるような存在ではなかったが。
    「あ、危な」
    「ぐっ」
     痛みに屈んだ姿勢を利用して剣の顎へと向かうアンブレイカブルのアッパーカットがサフィ・パール(ホーリーテラー・d10067)の分裂させた小光輪にぶつかり、バチバチと雷の爆ぜる音を伴って減速しつつも剣を上空へ打ち上げ。
    「痛ぅ、一応礼はいっとくぜ?」
    「ま、間に合って良かったのです」
     顎を押さえつつも着地してちらりと視線を向けた剣の姿に、サフィは胸をなで下ろす。
    「わんっ」
     あの状況から反撃を繰り出してくるあたり流石はダークネスだが、灼滅者達の攻撃は尚も継続中なのだ。シールドリングが男の攻撃に割り込んだ瞬間、地を蹴っていた霊犬のエルが今、口にくわえた斬魔刀で斬りかかっており。
    「油断大敵です、よっ!」
     別方向からは殲術道具を手にした心太がアンブレイカブルまで後一歩の所まで踏み込んでいた。
    「う、がっ」
     斬撃と分類WOKシールドによる殴打の挟み打ちに男が呻き声を漏らし。
    「何にしても、まずはこいつか……」
     妖の槍を掴む手を捻りながら、犬神・夕(黑百合・d01568)は傷口を押さえるアンブレイカブルを追い打つように突きを繰り出す。戦いが既に始まっている以上、エクスブレインの話にあった道着の女性が来るまでに残された時間は十分を切っている。
    「前でます……」
     仲間と連携すべく、宣言した灯屋・フォルケ(Hound unnötige・d02085)が解体ナイフを抜くなり男の死角へ回り込み。
    「んだってんだ、てめぇら! 獲物は大人しく、俺の拳にかかってろってんだよっ!」
     わめき散らすアンブレイカブルの言葉に、言葉で応じる灼滅者はいない。
    「ぎゃぁっ」
     明確な灼滅の意思を込めた斬撃に、男の口から再び悲鳴が漏れた。

    ●戦い、そして
    「はっ、もっとやり合いたいとこだけどな」
    「っ、何度も同じ手を……そんなに殴られてぇってんなら――」
     実に楽しそうに、イキイキと。鍛え上げた拳を繰り出す剣の声に男の注意が逸れ。
    「よそ見をしてる暇はあるんですか?」
    「がっ、てめぇっ」
     すかさずシールドバッシュを仕掛けた心太に怒りで注意を上書きされる。
    (「失敗したくないですね」)
     戦況を見守り、仲間が傷つけば癒すつもりのサフィに時間を確認する余裕はない。だが、タイムリミットは刻々と近づいているはずで、やがて訪れるであろう女性と話すには、「やって来た時にはまだ戦闘中でした」では拙い。
    (「このニーちゃんをタイマンで叩きのめす女性かー、おっかないなぁ」)
     まぁ強い女性は嫌いじゃないけどね、と胸中で付け加えつつ、クロノは眼前で形成した漆黒の弾丸を仲間と殴り合いを続けるアンブレイカブル目掛けて撃ち出した。
    「ちぃ、ぐおっ?」
     咄嗟に身をねじって回避しようとした男の動きが突っ張られるように止まったのは、瞭の影から伸びた触手が片足を引っ張ったからだが、しっかりと知覚している暇はなかった。
    「次、行きます……」
     視界の中にはもうかわせない距離まで近づいた弾丸の他、ジグザグに変形した刃を手に肉薄してくるフォルケの姿まで見えたのだから。
    「ちくしょうがぁぁぁっ、道連れにしてやらぁぁぁっ」
    「ひぃっ、自分は無関係っすよ」
     防御も回避も捨てて向かってくる灼滅者に拳を見舞おうと吼える男の姿に、和己は怯えたように仲間の影へ隠れ――そのまま死角へ回り込む。
    「ぐぅぅ、ええぃ、ちょこまかしや……」
     だまし討ちには慣れてきたのか、男は和己を目で追おうとしたが、それが間違いだった。
    「がぁっ、ぐっ、うげっ」
    「よそ見をしている余裕があるとは豪気だな」
     僅かな隙を見逃さず、距離を詰めた夕からオーラを集中させた拳のラッシュを叩き込まれたのだから。
    「がぁぁっ!」
    「んぎゃっ」
     それでも死角から斬りかかった和己を殴り飛ばしたのは、男の執念か。
    「はっ、ざまぁみやがれ卑怯モンが、つ」
     ただ、男の意地もそこまでだった。
    「どちらの拳の獲物かは言ってないですよ」
     笑顔を浮かべたままかっ切られた喉を押さえ崩れ落ちるアンブレイカブルへ、和己にシールドを分け与えつつ心太は語りかけた。
    「第一段階クリアっと」
     死角からの斬撃で男を倒したクロノは両手に持った異なる刃を同時に振り払うと、時計を確認するなりくるりと後方に向き直る。
    「割とギリギリでしたね」
     微かに見える人影を見ながら瞭は呟き。
    「これは……」
    「こんばんわ」
     殆ど駆け足で現れ灼滅者達の少し手前で足を止めた女性にフォルケは武装を解いて声をかけたのだった。

    ●接触
    「こんばんは」
    「やあこんばんは、何方かお探しかい?」
     後に続くようにサフィが霊犬のエルをだっこしたまま頭を下げて見せ、クロノは挨拶ついでに佇む道着の女性に問いかける。
    「こんばんは。ええ、そのつもりでしたが……」
     丁寧に頭を下げ返す女性の顔が曇ったのは、状況から何かを察したのかもしれない。
    「すみません、目当ての方は先に倒させてもらいました」
    「乱暴な方は、倒しておきました」
     言外に問いかけるような空気の中、謝りつつ明かした心太にこくりと頷いてサフィも口を開く。
    「あなたのターゲット、でしたか」
     と。
    「私達に不要な争いをする気はありません。一般人保護を任務として行動しており、街で被害を出しているアンブレイカブルを放置しておけませんでしたので」
     倒したと、フォルケは手を下した理由を語り。
    (「彼女の力の在り方は何なのだろうか? 何の為にそれだけの力を得たのか、その力の矛先は?」)
     聞きたいことが多々あり、代わる代わる話しかけ、問いかけたからか。じっと灼滅者達の言葉に耳を傾けていた女性の横顔を夕は眺める。勝ちはしたものの、それなりに反撃を許した男を子供扱いしていたとエクスブレインは言った。
    (「その先に一体何を見る……」)
     ただ、灼滅者ともダークネスとも明言しなかった強者が何を目指しているのか、興味を引かれた夕は視線を逸らすことが出来ず。
    「僕は森沢心太と言います、あなたは?」
    「初めまして、貴女は……ダークネスですか?」
    「はい。葛折つつじと申します」
     夕は特に驚かなかった、心太に続いて挨拶した瞭の問いに女性が肯定を返したことについては。ただ、相手がダークネスと解った時点で尚のこと一般人がこの場に現れることを警戒せざるえず。
    「僕達は、灼滅者です」
    「ちょっ」
     先方がダークネスであることを肯定した直後であるにもかかわらず、こちらの正体を暴露した心太に思わず声を上げた。クールだとか実は内気だとかそんなことは関係ない。こちらが灼滅者であることを明かせば最悪そこで戦闘に突入してしまう可能性を考え、夕としては話の後半に持ってくるつもりだったのだが。
    (「まさかこういう展開になるとはな」)
     予想外だったのだろう、ただ。
    「そうですか」
     女性の、つつじの反応は実にあっさりとしたものだった。
    「雑魚とはいえただの人に勝てるような相手ではなく、あなた方の言うダークネスなら雑魚一人にその人数は過剰すぎます」
     だから灼滅者であるという言に疑いを持たなかった、ということか。
    「あんたアイツに比べてかなり強そうだけど……弱い者虐めでも?」
    「そうそう、おたくもあいつの仲間っすか?」
    「どういう定義でお聞きしているかによって、答えは変わります」
     続いて投げかけたクロノと和己問いに、つつじはそう前置きし、武を志すという意味合いでは同じなのでしょうね、と答えると。
    「白胴着には、潔白さや高尚さって意味合いがあるそうですね。それを身に着けている貴女が、真逆そうなあの男とお知り合いとも思えませんが……何故こんな所に?」
    「そう言うあなた方は?」
     仲間達のカマかけを否定する形をとりながら、フォルケが口にした疑問には、逆に問うてくる。
    「僕達は彼を灼滅しに来たのですが」
     これに答えたのも、心太だった。視線を向けた先に崩れ落ちていたアンブレイカブルの男は灼滅されてもはや骸もないが、意味を伝えるには充分だった。
    「では、私も灼滅してみますか?」
     微笑しつつ首を傾げたつつじの身体から視認出来るほどのオーラがあふれ出したのは、この直後。
    「いやいやいや、やり合う気なんてさらさらないっすよ」
     もっとも、そのまま仕掛けてくる気がないのは、灼滅者達の言い分もちゃんと聞いていたからだろう。
    「それは失礼しました。あちらの方は戦いたくてウズウズしてるようにお見受けしましたので、てっきり」
     頭を下げたつつじが視線で示した先には、拳をぐっと握りしめつつじを見ていた剣が居て。
    「足元にも及ばないような方と戦うつもりはありませんよ。稽古としてなら、立ち合ってみたいですが」
     心太は頭を振って見せ。
    「来られること、知ってました。でも、あなたと戦いたいわけじゃないのです。もし私達と戦うというなら、すぐ撤退させて頂く、ですよ」
    「知って、いた?」
     戦意がないことを示そうとサフィが途切れ途切れに話した言葉に、つつじは問い返す。
    「俺達の方が早くつけたことには、ちゃんと理由があるんですよ」
    「ちょっとした裏技があるっすよ」
     情報を得る為には、興味を引く必要がある。瞭も和己そこまでは間違っては居ない。
    「……先んじると言うことは、私の目的があなた達の倒した雑魚にあると知った上で、倒したのですね」
    「あっ」
     だが、灼滅者達が口々に語ったことをパズルの様に組み立てれば、つつじの目的を知った上で妨害していたと白状したようなものであり。
    「すまない」
    「なるほど」
     流石に今度こそ戦いは避けられないだろうと思いつつも、謝罪の言葉を口にしたクロノに対して向かってきたのは、拳でも責める言葉でもなかった。

    ●警告
    「え?」
     思わず顔を上げたクロノの視界の中で、アンブレイカブルの女性は、ただの灼滅者では無いということですねと何やら頷いていた。
    「サイキックハーツに至ったというコルベインが滅びた事とも関係上がるかも知れません。そのまま全て、我が師に報告いたしましょう」
     単に自分の一存で事を起こすのは拙いと断じたのか、それとも別の理由か。
    「我が師?」
     つつじが自分から口にしたことで、誰かに指示していたのではないかというクロノの問いについて尋ねる前に半分だけ答えは得られた訳だが。
    「今回のことはバベルの鎖への過信もあったかも知れません、となれば私の未熟。ですが、次はありません」
     引っ込めたバトルオーラを再び身に纏うと、葛折・つつじは灼滅者達を見据え、拳を握りしめる。
    「私に先んじることが出来るというなら、私の動きは解る筈。もし、再び私が道を示すことを阻むのであれば、その時は――」
     それは、警告だった。
    「うーっ」
    「エル、落ち着くのです」
     ただならぬ闘気にサフィの腕の中でエルが牙を剥くがつつじは全く意に介さず。
    「では、失礼します」
     もはやこの場に止まる理由はないと断じたのだろう。
    「お互い、今は情報も、互いへの信用もありませんから何を話しても平行線でしょう。ここは一度引いて、後日会う機会を作りませんか?」
     礼儀正しく頭を下げた道着のアンブレイカブルは、背中へかけられた声に足を止め。
    「次はこっちで語ろうぜ」
    「……あなた方は」
     振り返ったところで、握り拳を見せた剣の顔を見て一瞬呆れたような表情を作るとすぐに苦笑で崩す。一人が話し合いたいと言えば別の一人は戦おうとポーズをとる、てんでバラバラな対応に苦笑するしか無かったのかもしれない。
    「語ったことが真実で、あるならば再会の約束など不要でしょう?」
     そう、もし行動を察知出来るというのなら自分の行動を補足して会いに来れば良いだけなのだからとつつじは言外に語り。
    「ただし、警告はしましたよ」
     灼滅者達に釘を刺すと、今度こそその場を後にした。
    「……行ってしまいましたね」
    「街中を武道着で歩き回るなんて色気の無いねーさんっすよねぇ」
     後に残されたのは、闇に消える道着の背を見送った灼滅者達のみで。
    「聞けなかったことも色々ありましたが」
     戦いを仕掛けられなかっただけマシと思うべきだろうか。
    「戦うのが拙いのか、灼滅してしまったのが拙いのか」
     つつじと名乗ったアンブレイカブルの目的が果たされなかったというのは、灼滅者達に見せた反応からも明らかだった。
    「あのひとが乱暴な方達と戦いに来た理由、気になりました」
     話の持って行き方によってはもっと詳しく聞けたのかもしれないが、サフィの目に映るのは薄暗い路地裏の風景だけで。
    「聞けるとしても次に会った時ですね。いつかは――」
     戦ってみたい、と心太は呟く。会話で得た情報を持ち帰るべく、帰路に着きながら。
     

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年4月16日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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