ウツロな世界に生きるきみに

    作者:呉羽もみじ


    「何故生きているのか」
     男は出し抜けに問うた。
     だから答えた。「分からない」。
    「分からないのに生きているのか? そんな人生に意味があるのか?」
     再び問われた。だから問い返すことで回答とした。「人生に意味などあるのか? 少なくとも今の俺には意味を見出せない。全てを無くした俺には――」
    「なら、その意味の無い命を俺の為に役立てて欲しい」
     どういう意味だ、と問う間も無く、男の身体は上下に切り離された。
    「これで彼らは現れるのか? 最近、派手な動きをしている元気の良い――灼滅者とかいったか?」
     待つこと暫し。その間に逃げる者、恐怖で身がすくみ動けない者、何かの撮影かと思いカメラを探す者、様々な反応をしている人々を一瞥する。
    「……現れないか。それなら仕方無い。ここにいる人々を狩りながら彼等が現れるのを待とう。ここに居たのが運が悪かったと諦めて欲しい」
     申し訳なさそうに言う彼の目にしゃがみこんでいるOLの姿が目に止まった。逃げる途中にハイヒールが折れ足を挫いてしまい、身動きが取れなくなっていたらしい。
     彼女の眼が限界まで見開かれ、声にならない悲鳴をあげる。助けを求め辺りを見渡す。だが、彼女に手を伸ばす者は誰もいない。
     彼女は、誰にも、助けられない。助からない。
    「――薄情なものだな。哀れな君へのせめてもの情けに、自らの死に気付く前に仕留めよう。しかし、抵抗すら見せないモノを狩るのは、虚しいものだな」
     そこに、新たな赤い花が咲く。

    「最近の六六六人衆の流行って知ってるよね? また彼らからお誘いがありそうだよ。全く、次から次へとぞろぞろぞろぞろ……」
     黄朽葉・エン(中学生エクスブレイン・dn0118)は灼滅者達が集まるのを確認すると、溜息と共に迎え入れた。
    「っと、俺があーだこーだ言ってもしょうがないね。知らない人の為に、六六六人衆さん監修の趣味の悪いゲームの説明をするよ」
     闇落ちゲームとは一言で言ってしまうと「灼滅者達を闇落ちさせる為のゲーム」だ。その為に六六六人衆は手段を選ばない。一般人を餌にして呼び出し現れないなら、殺戮の限りを尽くすという事だから始末に負えない。
    「で、その趣味の悪いゲームに飛びついた趣味の悪い六六六人衆っていうのがナンバー・五六一、落窪・ウツロ(おちくぼ・うつろ)。何か哲学者ぽいこと言って格好つけてるつもりなんだろうけど、こういう人に限って実は何も考えてなかったりするんだけどねぇ。
     そのウツロなんだけど、偶々目が合ったホームレスと2、3会話をした後、突然切り捨てるんだ。それからは目が合った人を次々に手にかける。――そういう一方的なのは許されるべきじゃない。最低だよ」
     エンは最後の言葉は口の中で呟くだけに留め、直ぐに普段の穏やかな表情を浮かべた。
    「事件が起こる場所はアーケード街。時間帯は夜。こればかりは僥倖と言わざるを得ないねぇ。これがもし昼や夕方だったら人の往来はかなりの数になるからねぇ。
     でも、それなりに人は居るし、騒ぎを聞きつけた周辺住民が様子を見に来る可能性もあるからこの辺りは注意してね。まぁ、でもウツロの狙いは君達だから、君達がくれば君達まっしぐらになるとは思うけど……何もしないのは良くないと思うからその辺りの対応も考えておいてね。
     ウツロは、日本刀を堂々と腰に下げてるから見つけるのは簡単だよ。この日本刀と殺人鬼の能力を駆使して戦う様だけど、傾向としては刀で戦うのが好きみたいだねぇ。
     接触のタイミングはウツロがOLさんを手に掛けるまでの数分……下手したら1分無いかもしれない。だけどこのタイミングでウツロの注意をこちらに惹きつければ彼女の命を助けられる可能性はぐっと上がる筈だよ。
     若しくは彼女を斬った直後に奇襲を掛ける方法もあるよ。只、その場合は……彼女の命は助からないねぇ。
     確実に一手を奪うか、彼女の命を救う為に動くかは任せるよ。
     俺が出来るのは出来る限りの情報を提供する事と、選択肢の幅を広げることだけで、戦うのは君達だ。俺にこれ以上の発言権は無いよ」
     俺も戦えたら良かったんだけど。エンはそう言って寂しそうな顔を見せた。
    「一般人の被害をミニマム的な感じに抑えるのが最優先の任務ではあるけど、それで闇落ち者が出たらウツロの思うツボだし、何より闇落ちした人を探す俺の仕事が増えちゃうよ。闇落ちしちゃダメだよー? 俺、仕事するの嫌いだしさぁ?」
     茶化す様な口調だが、灼滅者達を見る目は真剣そのものだった。


    参加者
    結城・創矢(アカツキの二重奏・d00630)
    九条・風(紅風・d00691)
    芳賀・傑人(明けない夜の夢・d01130)
    万事・錠(ハートロッカー・d01615)
    加賀谷・彩雪(小さき六花・d04786)
    杉崎・莉生(白夜の月・d09116)
    伊織・順花(追憶の吸血姫・d14310)
    海千里・鴎(リトルパイレーツ・d15664)

    ■リプレイ


     雑踏の中、微かに聞こえた耳慣れた音に男は顔を上げた。納刀し、目を瞑り呼吸を整える。
    (「ターゲットを捕捉。攻撃を開始する」)
     離れた場所から男――ウツロに放たれたエネルギー弾を撃った結城・創矢(アカツキの二重奏・d00630)の位置を瞳を開け確認すると、そのまま身体を反転させる。撃たれた箇所を庇う事無く伊織・順花(追憶の吸血姫・d14310)の刃をかわすと、流れるような動作で抜刀し順花の胴を斬る。
    「君達が、複数で現れる事は知っている。狙撃手はフェイクだろう? しかし、腑に落ちないな。何故このタイミングで? まるで俺がここに来る事を予め知っているかの様な――」
    「通り魔が出たぞ! バラされたくなきゃとっとと逃げろォォ!!」
     ウツロの思考は万事・錠(ハートロッカー・d01615)の絶叫により遮られた。
     槍と日本刀の鍔迫り合いが行われている隙に、サラマンダーと名付けられたライトキャリバーに乗った九条・風(紅風・d00691)が、その脇にへたり込んだ儘の女性を救い上げる。
    「えと、OLさんの事は一旦忘れて……どうか私達の相手、して下さい」
     傷付いた順花へと杉崎・莉生(白夜の月・d09116)が回復しながらウツロへ控え目に声を掛ける。
    「……ああ。元よりそのつもりだ」
     ウツロは芳賀・傑人(明けない夜の夢・d01130)が生み出す影の触手を刀で切り裂いて逃れると、周囲を一瞥した後、壁を背に出来る場所へと移動する。
     莉生は被害者となるかもしれない女性が戦場から離れていくのを見て安堵していた。周りの誰もが助けられなければ、灼滅者である我々まで見限るのは哀れだと感じていたからだ。
    (「私も堕ちたらこの人みたいになっちゃうのかな」)
     たった独りで悠然と灼滅者と交戦するウツロの姿を見ていると、周囲の気温が心無しか下がった様な気分になり、慌てて腕を摩ると戦闘へと集中した。

    「ここは危ない、です。……早く、逃げて。さゆもお手伝い、するです」
     動けない一般人の女性の手を優しく引き、戦闘場所から逃がそうとしている加賀谷・彩雪(小さき六花・d04786)の元へ、女性を避難させた風がサラマンダーの爆音と共に戻ってきた。
    「オラ、そこの! 一人で逃げようとすんな。動けねェ奴等引き摺ってでも連れてけ! 死にたくねェなら死ぬほど走れ!」
     風の側を通り過ぎようとした男性の首根っこを引っ掴み、彩雪が避難させようとしていた一般人を預ける。男性は振り子人形の様にこくこくと頷くと女性を庇いながら遠ざかって行った。
    「お前らは兎に角ここから離れろ! 自力で動ける奴らは動けない奴を援護するんだぞ! 一番の功績を残した奴は僕様からのご褒美がある(かもしれない)ぞ!」
    「「「おお~!」」」
     ラブフェロモンで大勢の注目を惹いた海千里・鴎(リトルパイレーツ・d15664)は彼らに向けててきぱきと指示を出す。恐怖や威圧よりも、ファン心理を突いた扇動が功を奏したのか、人々は手に手を取って我先に走り去った。
     あらかた一般人の気配が消えたのを確認すると3人は急いで戦場へと走る。


    「さっきは遅れを取ったが次は」
     順花は日本刀を構えた儘、影を生み出しウツロを巻き込む。影に囚われ僅かに動きの鈍ったウツロを狙い傑人が盾を撃ちつけ、創矢は魔法の矢を飛ばす。
    「強いな」
     全く表情を変える事無くウツロはそう呟いた。
    「しかし、惜しいな。ダークネスへと身を傾ければ更にその力は増すというのに。追い詰めれば『闇落ち』を選択すると聞いているが……これでどうだ?」
     ウツロは日本刀を再び納めると、抜刀と共に衝撃派を灼滅者達へと放った。その攻撃は防御に重きを置いていた者と、既に防御アップの術を施されていた順花は耐え切る事が出来たが、攻撃特化を選んでいた錠には倒れるには至らないが、それでも重い一撃となった。
    「ってーな、畜生!」
     ウツロの背後に回り込み急所を狙うも刀で軌道を逸らされ、小さな傷をひとつ作るに留まった。錠にとっては男性の六六六人衆は既に堕ちた父親を連想させ、それが一層彼を苛立たせる。
    「錠! 退け!」
    「――っ!?」
     不意に聞こえた風の声に、頭が働く前に咄嗟に後ろに飛びのく。
     先程まで錠が居た場所にはサラマンダーがウツロ目掛けて突進しており、それに合わせる様にして風が盾を撃ちつけウツロの注意を惹いていた。
    「ちょ! 風さん、これで俺が反応出来なかったら、俺ぺっちゃんこ――」
    「その時は謝るから。大丈夫だ、問題無い」
    「酷ぇ!?」
     風のにべもない回答に涙目になりながら反論しようとした錠だったが――、
    「痛い、ですか? さゆが、痛いの治すです……よ。痛いの痛いの飛んでけ……なのです」
    「ああうん、ありがとう」
     彩雪の必死の介抱を見て、涙を飲むことしか出来ないのであった。
    「随分と賑やかになったな。これで仲間は全員か? 君達が集まったら問おうと思っていた。何故君達は生きているのか?」
    「ンなもん生きてェからに決まってんだろうが!」
    「難しいこた云わねえよ。僕様はただ、海賊らしく略奪するだけだぜ。てめェの野望は僕様が奪い尽くしてやらァ。覚えておけこのモヤシ!」
     彼の問いに反射的に答える錠と鴎。
     鴎は答えながらウツロへと駆け寄り、鋭く拳を突き付ける。それをかわしながら「モヤシ?」と首を傾げた後、
    「元気が良くて良い事だな」
     と頬を緩める。
    「生きることに……意味が無くては、いけませんか? 意味が見出せなくて、辛いのですか?……それなら、さゆたちが意味を、あげます。命を賭け合える敵と、して」
     体力の心許ない鴎へと祈る様な仕草をして防御を上げる術を施しながら彩雪が囁く様に言う。
    「辛くは無いが、くれるなら貰おう。ついでに闇落ちしてくれれば嬉しいのだが」
    「それはお断りだ!」
    「つれないな」
     順花の拒否の言葉と共に繰り出される攻撃を受け止めながら、ウツロは表情を殆ど変えることなく小さく溜息をついた。


     莉生はウツロと仲間達の戦いを冷静に観察していた。ウツロの一撃のダメージ量を推し量る事が出来れば、その後の対処が的確に行える。
    「撃ち抜く……!」
     包囲網から少し離れた位置から放たれる創矢が掌にオーラを集めそれを放出する。注意が創矢の元へと逸れたウツロへ向け傑人が影を飛ばす。横っ跳びに影を避けようとするが全ての影を避けることは叶わずウツロの足を絡め取る。
     その隙に彩雪とさっちゃんが手分けをして傷の深い者から順に治療をする。
    「随分面白そうな遊びが流行ってんじゃねェか。勝手にてめェ等で殺し合って絶滅してろよ」
    「六六六人衆の序列持ちは最大で666人。いわば、絶滅危惧種だ。もっと大事にして貰いたいものだ」
     風の撃ち付ける盾を刀で抑え、ウツロはそう嘯く。
    「そういやお前、何人殺してんの?」
    「……さあ。君を含めればプラス1人になるがな」
    「羨ましい御身分だなァ、オイ」
    「そう思うならこちらに来れば良い。いつでも歓迎する」
     その言葉と共に身体を後ろに引く。支えるものが無くなった風はたたらを踏みかけるが、直ぐに態勢を立て直し攻撃に備える。が、ウツロの姿はそこには既に無く彼は順花へと距離を詰める。
    「――!」
     ウツロの振り下ろす斬撃は重く、彼女は意識を手放しかけるが、それをぐっと堪え攻撃と共にウツロのエネルギーを奪う。
    「珍しい攻撃だな。君はヴァンパイアか」
    「……ダンピール、だ」
    「ヴァンパイアになってしまえばその攻撃だけで、俺を屠る事も出来たかもしれないのに。残念だ」
    (「ディフェンダーなら耐えられる。だけど、クラッシャーではダメージ量が多すぎる……。それでも何とかしないと」)
     莉生は順花へ回復と共に防御力を上げる術を施しながら、どうすれば全員無事に帰還出来るかを考えていた。
     幸いと言うべきか、今回の布陣は防御に重きを置いたもので、回復手も多めに積んである。長期戦に持ち込めは相手も無傷では済まないとは思うのだが……。不気味な違和感を覚えつつもそれを振り払う様に戦闘へと集中する。

    「攻撃だけでは闇落ちはしないのか。それでは少し趣向を変えてみよう」
     ウツロは無造作に看板を蹴り倒す。そこには逃げ遅れ、隠れていた一般人の男の姿が。
     スーツの太ももの部分が大きく赤く染まっている。逃げたくとも怪我のおかげで逃げられず止むを得ず看板の影に隠れていたのか。
     記憶を辿ってみれば、戦いが始まる前にウツロが周囲の確認をした後に、この場所へと陣取った覚えがある。これは彼の存在を知った上でここを戦場と決めたのか。
     ウツロは男の首元へ刃をあてがい灼滅者へと向き直った。
    「先程鼻先で掠め取られた女性と同じ状況だな。さあ、彼をどうしようか? ああ、予め言っておくが不意打ちは通用しないぞ。俺は君達から目を逸らさない」


     精密狙撃を狙っていた創矢が歯噛みする。それでも、と一縷の望みを託し攻撃を放つ。ウツロはその攻撃を避けることもせずその儘受け止め、日本刀を掴む手に軽く力を込めた。
    「下手な攻撃は彼の命を縮めるぞ」
     男の首へ刃を這わせる。それはまだ皮を一枚切る程度に留まっていたが、ウツロが手に少しの力を加えれば男の命はすぐさま掻き消えるだろう。
     男は小さく悲鳴を上げ、ウツロから少しでも逃れようとするが「動かない方が良い」と囁かれ、頼みの綱である灼滅者へと救いを乞うように目を向ける。
    「……狙いは僕達だろう? 何故一般人を利用する」
     傑人はウツロを刺激しない様に言葉を選びながら慎重に話し掛けた。
    「君達が堕ちる条件が分からないから、こちらとしては試行錯誤してみる必要がある。それに、あれだけ派手な動きをしてまで助けたかった彼女と同じ状況を作れば、君達はどう動くのか? それに興味がある」
     風が無意識にサラマンダーに触れる。あの時、彼女を救うと決断したことも判断も間違っていなかった。だが、同時にその行動が、一般人の存在をウツロに大きく印象付けてしまったのも事実。
    「助けに来ないのか? なら彼は必要無いな。灼滅者にも見捨てられるとは……虚しいものだな」
     ウツロが男へと日本刀を振り上げる。
    「止めろっ!!」
     堪らず錠が飛び出しウツロへと突進する。
    「――悪いな。日本刀はフェイクだ」
     ウツロは男性を突き飛ばすと殺気を灼滅者達へと発する。
     錠はウツロの凶器にまで昇華した殺気を受け止めながら、男性を抱き込み殺気から守る。男性の無事を確認すると灼滅者達は一斉にウツロに攻撃をし、錠と男性を陣営に戻す。
    「止まねえ時化は無ぇんだぜ……乗り切って、やらァ!」
     鴎が威勢良く啖呵をきるが、体力の消耗は隠し切れない。ふらりと揺らぐ身体が倒れてしまわない様に腹に力を入れる。
    「俺の興味はあくまでも君達だ。元々彼を殺す気は無かった。まあ、必要があれば殺すが。――さて、君達にとっては余り芳しくない状況だと言えるが……どうする? 俺はこの儘、闇落ち者が現れるまで戦っていても良いのだが」
    「絶対に……これ以上の被害は、出させ、ません」
    「俺の相棒に唾を付けた このクソゲー考案者の三日月をバラすまで……俺は人間で在り続ける!!」
     彩雪と錠の回答にウツロは暫く思案した後――、
    「君達は蜜蜂の様だ」
     不意にウツロが言う。
    「蜂球、という言葉を知っているか? 蜜蜂が徒党を組んで天敵であるスズメバチを倒す手段だ。集団で立ち向かう君達は蜜蜂を連想させる。健気で、とても可愛らしい」
     但し。ウツロの目が細められる。
    「スズメバチを焼き殺すには蜜蜂の数が些か足りなかった様だな。君達の針をこのまま抜いてしまうのは容易いが、このまま舞わせた後に蜜を採りに行くのも一興。ここは引こう。互いに生きていれば又会う事もあるだろう。――『命を賭け合える敵』として」
     かちん、と金属が触れ合う音がするとウツロからの殺気が薄れた。だらりと下げた腕から血が滴り落ちているのを見ると、ウツロも彼自身が言っている程余裕では無かったのかもしれない。
     その証拠に、まだ殺気は完全に消えていない。何かあれば直ぐに反応出来る様確りと灼滅者達を見据えている。
     ウツロが灼滅者達に背を向け悠々と遠ざかるのを、ただ見ている事しか出来なかった。彼の殺気はまだ消えていない。破れかぶれに背後からの奇襲を狙ったとしても看破される可能性は高い。
     彼の姿が完全に見えなくなり、殺気も感じなくなった頃――誰かの大きくついたため息が疲労感を誘う。それでもその見返りは大きい。誰一人欠ける事無く学園に帰る事が出来る。
    「――助け、てくれ」
     男の声に我に返る。彼の足の傷は思ったよりも深く、自力で帰るのは難しい様に見える。
     彼の伸ばす手を風は力強く握り返す。
    「病院連れてくか。夜間診療って高いの? まァ、死ぬよかマシじゃねェ?」
     女性を救い上げた時は必死で気付かなかったが、彼の――人の掌はとても暖かった。

    作者:呉羽もみじ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年4月19日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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