亜寒・まりも、今年から小学一年生は、現実に絶望しようとしていた。
桜が咲いたら小学一年生になる、という歌がある。
だけど北海道では五月まで桜が咲かないじゃないか!
つまり自分は五月まで小学一年生になれないんじゃないか!
お父さんに聞いてもお母さんに聞いても「大丈夫、一年生になれるよ」と笑うばかり。つまりお父さんもお母さんもこの小学一年生のピンチに気付いていないに違いない。
どうしよう。
小学一年生になれなかったらどうしよう。
考えたまりもは、ぽむと手を叩いた。
「そっか! みんなが雪のこと、桜の花だって思うようにすればいいんだ!」
――かくして。
6歳の少女は自分が小学一年生になるためにと信じて、大暴走を始めるのだった。
「誰かが彼女を納得させてあげれば、こんなことにはならなかったのかもしれないんだけどね……」
風宮・壱(ブザービーター・d00909)が遠い目をする。
入学式にだいたい桜が咲く(たまに早く咲きすぎて散ってる)この辺りではなかなか想像できない小学一年生の危惧だが、北日本ではこの手の話はたまに語られるところである。
実力行使までしちゃう子はあまりいないが。
「とゆーわけでですね、まりもちゃんは目覚めたシャドウの力を使ってソウルボードにアクセスしまくって、『北海道では雪は桜だ!』って身近な人の認識を書き換えてるわけですよ!」
嵯峨・伊智子(高校生エクスブレイン・dn0063)が壱の隣で口を開く。壱がそれに頷いて、言葉を続ける。
「どうやら既に被害が出ているようだね。雪が残っているうちに『お花見』をしようとしたお年寄りが道で滑ってぎっくり腰になったとか、小学生達が新入生を祝う桜の紙吹雪の代わりにかき氷を作ったりとか、夜桜見物と言いながら吹雪の夜にでかけた人が風邪を引いたりとか……」
非常にリアクションに困る被害だが、エスカレートすると来年の冬が大変なことになる。
その上ソウルボードに入り込む事を覚えたまりもが、いつ完全に闇堕ちしちゃうかわからないわけで。
「灼滅者の素質を持っていれば、亜寒・まりもを救う事が出来る。そうじゃなければ、灼滅しなきゃいけないけど……どちらにせよ、僕ら灼滅者が何とかしないとね?」
そう言った壱の隣で、伊智子が「よろしくお願いしまーす!」と手を合わせる。
「ちなみにまりもちゃんは、戦いになったらシャドウハンターと同じサイキックで戦って来るけど……他にフリージングデスに似てる、吹雪を起こす技を使ってくるのね。まりもちゃん自身、一生懸命雪を桜だと思い込もうとしてるみたいに見えるんだけど……」
そう言った伊智子の言葉を、壱が引き取って。
「亜寒帯には、『桜が咲かなくても小学生になれる』ということを、ちゃんと理由を付けて教えてあげる必要があるんじゃないかな? 小学生にわかる言葉でね」
何せ彼女は小学一年生。大人からは笑い飛ばしてしまうような不安でも、ひどく胸を締め付けるものだから。
「上手く説得できたら、戦いも楽になると思うし! よろしくです!」
横から伊智子がさらっと口を挟む。
「彼女を救出することが出来たら、武蔵坂学園に誘ってみるのもいいかもね? 北海道を離れてしまう事にはなるけど、夢の桜の下での入学式もできるしね」
そう笑みを浮かべて、壱は「よろしくお願いするね」と頭を下げた。
参加者 | |
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風宮・壱(ブザービーター・d00909) |
漣波・煉(片足は墓穴にありて我は立つ・d00991) |
榎本・哲(狂い星・d01221) |
大場・縁(高校生神薙使い・d03350) |
藤堂・丞(弦操舞踏・d03660) |
シュテラ・クリューガー(星の淵源・d09156) |
ハイナ・アルバストル(風に激情の花は枯れ・d09743) |
猪坂・仁恵(贖罪の羊・d10512) |
「純粋ってのぁ聞こえによっちゃー可愛いけどよ。こうなってくるとひたすらに面倒だよな……」
榎本・哲(狂い星・d01221)が肩を竦め、溜息を吐いてみせる。けれど面倒がりの割には作戦のすり合わせなどを積極的に行う哲の姿に、くすりとシュテラ・クリューガー(星の淵源・d09156)は笑って。
「桜が咲かないと小学生になれない、とは可愛らしい間違いだなあ……」
「うむ、子どもは面白い事を考えるものだな」
シュテラの言葉に漣波・煉(片足は墓穴にありて我は立つ・d00991)が頷き、ま、と付け足すように口を開いて。
「その面白い事で周りに被害が行けば笑い事ではすまんがね」
「まあ他愛ない勘違いも、実力行使を伴えば笑い事でもあるまい」
早々に片を付けたいものだ、とシュテラが言えば、ふむ、と藤堂・丞(弦操舞踏・d03660)が首をひねって。
「桜が咲かないと小学生になれない、なんてことはないけれど、やっぱり地方柄そういう勘違いもあるのかな。誤解は解消してあげて素敵な小学生ライフを迎えさせないと」
そう言って丞は、何か思い出すようにくすと笑う。
「小さい女の子は妹を思い出すから放っておけないんだよな」
一瞬重くなりかけた空気に、慌てて丞は付け加える。
「……あ、生きてるぞ? むしろ元気すぎて困るくらいだ」
「ややこしーだろ全く……」
ぷいと顔を背ける哲。心配や安堵を浮かべた表情を、見られまいとするかのように。
その様子にくすくすと風宮・壱(ブザービーター・d00909)が笑って。
「すっごく1年生になるの楽しみにしてるんだろうな。入学式はワクワクとかドキドキとか、楽しい気持ちで迎えさせてあげたいね!」
張り切って言った次の瞬間の寒風に「さっっむ!」と慌ててしっかり巻いたマフラーを押さえ直す壱に、大場・縁(高校生神薙使い・d03350)が真剣な顔で頷く。
「えっと、今年度から小学生になる亜寒さん……これからの素敵な生活を守る為にも頑張って助けなくちゃ」
自分に呟くように、鼓舞するように。
「お待たせしましたー」
そんな決然とした空気を微妙に破壊しつつ猪坂・仁恵(贖罪の羊・d10512)が、大き目の封筒を手に現れる。仲間達が皆揃ったことを確かめ、灼滅者達は歩き出す。
小学生になるのを心待ちにするあまり、暴走してしまった女の子――亜寒・まりもの元へ。
――時刻は、夜。まりもに会えると予知された場所は住宅街、人通りは少ない。
静かに辺りを見回した灼滅者達の目に――聞いていた通りの少女が民家の窓から飛び降りる。その身体能力から彼女がまりもに違いないと、灼滅者達は後を追う。
「どうでもいいけどひどく変質者くさいなこの絵面……」
六歳児を追いかける下は中二から上は高三までの少年少女、という図に、ハイナ・アルバストル(風に激情の花は枯れ・d09743)が眉を寄せる。「そんなこと思いつくのが一番変質者ですよ」と仁恵にあっさり言われ、ハイナの眉間の皺は深くなるばかり。
やがて――人気のない小さな公園の前をまりもが通りかかろうとしたとき、仁恵がすっと桜の押し花を取り出した。小さな花びらが風に乗って舞う。公園を通り過ぎようとした少女が、頬をかすめた桜にはっとし、振り返る。
「……おにーちゃん、おねーちゃんたち、だぁれ?」
「おっと、怪しい者じゃねーですよ。といっても凄く怪しいでしょうが」
「僕ら? 春の精みたいなも」
「ちょと君の誤解を解いておこうと思うのですよ」
思いっきり言葉をかぶせられて、とりあえず口をつぐむハイナ。
「ごかい?」
「まりもちゃんは、桜が咲かないと小学生になれないと思ってるんだよね?」
「そうだよ! だって、そうなんだよね?」
丞の言葉にわ、と目を見開いたまりもが、勢い込んで口を開く。
「大丈夫だ、そんなことはないよ」
安心して、と首を振った丞に続けて、壱がしゃがんで視線を合わせ、「俺も今年から一年生になるんだよ、一緒だね!」とにこと笑って。
「お兄ちゃんも!? いっしょだね!」
親近感を抱いたらしくにこにこ笑顔のまりもに、壱は笑顔で頷いて。
「えっとね、この辺の桜はちょっと寝坊してるんだって。まりもちゃんは早起き得意?」
「んー……」
まりもが唇をぎゅっと横に引き締めてから、「あんまし、とくいじゃない……」と小さな声で後ろめたそうに言う。
「そっかあ……桜と一緒に寝坊しちゃったら、一年生になれないかもなー」
「そしたら小学生になれないの?」
大きな瞳がうるうるするのに、壱は「大丈夫」と頷いて。
「朝ちゃんと起きるって俺達と約束しよう! 約束できれば大丈夫だよ、絶対なれるよ!」
「ほんと!?」
うるうるからきらきらに。幼い少女の瞳は、ころころ変わる感情を偽ることなく映す。
「……でも、桜はずっとねぼうしちゃうのかな?」
希望に輝いた瞳は、また不安にゆらゆら揺れる。
その瞳に、すっと哲が屈んで視線を合わせる。ガキなんざめんどくせぇ、との普段の言動からは想像できぬような丁寧さで、哲は口を開く。
「ちぃと難しい話だけど、まりもちゃんはもう一年生になるお姉さんだから分かるかな」
「むずかしいの? でも一年生だからわかるよ!」
真剣な顔で頷いたまりもに、哲はああ、と笑って。
「日本では、この日はこの花って、日付によって決まってるんだよ。でな、4月1日の花ってのは『サクラ』なんだ」
「えっと……4月1日はサクラの日? じゃあ、4月2日とかは他のお花の日なの?」
「そうだ。良く分かったな」
うんうんと頷いてから、再び哲は口を開いて。
「つまりな、4月1日を迎えた今、サクラの日は終わってるんだぜ。もうまりもちゃんは日本では一年生になってるんだよ。雪をサクラだと思わせるなんつーワガママ言ってちゃ、お姉さんっぽくないよな?」
「そうなの? でも、ほっかいどうではちがったり……しない?」
だって、桜ないよ、とまりもは困り顔。
「ほっかいどうだけ、5月1日だったりしない?」
そんな『いかにも子ども』なまりもの言い分を聞いて、哲は懐かしげに纏う空気を和らげる。そして彼の隣で、シュテラが口を開く。
「ふーむ、本当に桜が咲かないと小学生になれないのだろうか?」
「だって、桜がさいたらいちねんせい、なんでしょ?」
歌覚えたんだよ、と胸を張る少女に、シュテラは偉いぞ、と頷いて。
「確かにあの歌には、『桜が咲いたら小学生になれる』という歌詞があるな。けれど、歌は歌にすぎない」
例えば、とシュテラが口にしたのは、『幸せなら手を叩こう』という歌。
「そんな歌があるが、幸せなとき、本当にみんな毎回あの歌の通りに手を叩いているかね?」
「たたいてないねー」
「だろう?」
「……んー、歌はうそつきなの?」
きょとんと首を傾げて尋ねるまりもに、嘘つきとはちょっと違うかな、とシュテラは口を開く。
「歌と現実は違うことも多い」
「そっかぁ……」
「だから、確かに今の君の周りでは桜は咲いていないかもしれないが、君は確かに小学生になれる。安心するといい!」
「そっかぁ!」
ぱっと顔を輝かせたまりもが、でも、と難しい顔をして。
「でも、雪が桜だったら、まりもも桜呼べるよ! やっぱり、桜あったらきれいだと思うなぁ……」
ぱっとまりもが腕を広げる。駆け抜けるのは――桜吹雪ではない、本当の、吹雪。
既に本人も思い込もうとしているのだろう。彼女が四月に見つめる雪が、桜であるのだと。
煉が首を振って、そっと懐から袋を取り出す。
「雪は雪、桜は桜だ。似ていてもその物ではない。このようにな」
ふわり、吹雪の中に桜が舞った。
吹雪の主であるまりもさえも、わぁ、と思わず見とれる。街灯の柔らかな光に照らされ、雪とは全く違うどこか温かな手触りに目を細めて。
「近所に年上のお兄ちゃんとかお姉ちゃんとかいないかな?」
それに乗せるように、そっと丞が尋ねる。「いっぱいいるよ!」と笑うまりもに、丞と共に煉が頷いて。
「そうだな。君の周りに一つ上の子等はいないのかね? 居るのならばその子の四月の事を思い出してみるといい」
その子は四月にはちゃんと小学一年生になっては居なかったかね?
そう煉が尋ねると、少女はんー、と一生懸命眉を寄せて。
「えっと……おとなりのお兄ちゃんが小学生になったのは、去年の四月で、桜咲いてなかった……かなぁ……」
ううむ。流石に一年生の記憶力。自分が関わっていない部分は曖昧。
「でも、その子達もきちんと小学生になれただろう?」
「そのときだけ、桜咲いてたりしない? まりものときだけ、桜咲かなかったんじゃない?」
不安げに首を傾げるまりもの様子に、丞は急いでスマートフォンから用意した動画を検索する。その間に、ハイナが口を開こうとする。
「もっと世界に」
「ほら、これを見てみて下さい」
何か言おうとしたハイナを遮って、仁恵が自分の膝の上に大き目の封筒からアルバムを取り出して乗せちょいちょいと招く。ハイナのおいちょっと僕にも喋らせろって目は華麗に無視。
「なぁに、おねーちゃん?」
てけてけとやってきたまりもに、仁恵はアルバムを見せて。写真の日付を読み上げて、「入学式の写真ですよ」とにっこり笑って。
「桜が咲いていなくても、みぃんな入学をしたんです。実は世界には、桜の無い地域だって沢山あるんですよ」
「そう、だからもっとせか」
「でも、皆ちゃんと小学生になっていますよ!」
ハイナが思わず「こいつ……わざとやってやがる」と呟く。仁恵が華麗に無視。
「ほら、これは去年のニュースだよ。日付も入ってる」
さらに丞が探し出した北海道のローカルニュースをスマートフォンで流して見せれば、「ほんとだ!」とまりもが顔を輝かせて。
「だからキミも大丈夫だよ」
その丞の言葉に、深く深く縁が頷く。
「大丈夫です、皆さんが仰ってるように、亜寒さんは桜がなくても立派に小学生になれますよ」
プレゼン用の表を作ったりは、縁にはできない。論理的な説明をすることもできない。
でも、だからこそ伝えたい事がある。
「えっと……今はまだ不安かもしれないですけど、きっとこういった不安やワクワクが小学生になるってことなんだと思うんです」
「ふあんで、わくわく……」
繰り返すまりもに、そう、と縁は優しく頷いて。
「それに、もし桜が必要でも亜寒さんなら絶対大丈夫です。だって、亜寒さんの小学生になりたいなって気持ちが桜の代わりになってくれますから……」
「桜の、代わりに? きもちが、なるの?」
じっと己を見つめる少女の瞳に、縁は大きく頷いて。
「雪は桜にならないけど、想いは何にだってなれちゃうんですっ。だから、こんなに小学生になりたいって思ってる亜寒さんなら誰よりも素敵な小学生になれますよ」
「……うん!」
ぱっと少女の顔が輝く。その楽しそうな声が、パッと咲いたような笑顔が桜のようで眩しくて、思わず傍らの哲は目を細めて。
「うむ。もっと世界に目をむけるんだねちびっ子。そもそも桜が無い国の人達だって立派に小学生になっているだろう? アメリカとか」
そしてようやく口を開くことが出来たハイナである。
視線を合わせるためにしゃがみつつ、ちょっと自分が高くなるように調節するのは工夫じゃなくてプライド。相手は小学一年生だけど。
「アメリカって桜ないの!?」
「そうそう、アメリカの桜は日本がプレゼントした奴だけなんだぞ」
「へー! にっぽんの桜すごーい!」
さりげなくちびっ子に知識を誇って胸を張るハイナ。
「ともあれ、ま、どうしても桜が無ければダメだと言うなら……桜のある処に来ればいいじゃないか」
「え? 桜の、あるとこ?」
きょとんと首を傾げたまりもに、仁恵がうんうんと大きく頭を振って。
「そうです、君には才能があるんです。桜の咲く土地で、その才能を発揮するために留学してみませんか? ほら格好良い響きでしょう。留学!」
「りゅうがく!? 外国いくの!?」
目を真ん丸にしたまりもに、「外国じゃなくて東京ですよ!」と仁恵がにこり。
「実は東京では、今が丁度桜の盛りなんだ。いや、既に盛りを過ぎたか……とはいえ、なかなか綺麗に咲いていてな」
わたしたちの学校がちょうど東京にある、とシュテラは笑みを浮かべて。
「東京の小学校に来れば、君の憧れの桜が散る風情を楽しみながら無事に入学式を迎えられると思うが、どうだろう?」
「僕は大人なので君を呼ぶくらいはできるのだよ」
シュテラの言葉に続けてハイナが胸を張る。一生懸命、一生懸命考えたまりもは、やがてこくん、と頷いて。
「うん、とーきょーの学校で、まりもがんば……」
次の瞬間、まりもの瞳の奥に、闇が蠢いた。轟と吹き荒れる吹雪は、今度は確かに灼滅者達を狙ったもの。
まりもの心が灼滅者達に傾きかけたことを悟ったダークネス――シャドウが、彼女への支配力を強めたのだろう。けれど、それさえ破れば、助けられる。
シュテラがサウンドシャッターを起動すると同時、すっと煉が飛び出した。シャドウの死角に飛び込み、その急所を穿ち動きを鈍らせる。
「雪を桜にしちゃおうなんて可愛いなー。だけど放っておくわけにはいかないんだ」
色んな人にケガさせたりメーワクかけてるわけだし、ちゃんとゴメンナサイしないといけないと思うよ?
そう言ってWOKシールドの出力を上げ守りを一気に固めた壱は、丞とタイミングを合わせて踏み込み雷を纏った拳を叩きつける。
「一年生になんだろ。お兄さんお姉さんの言うことはちゃんと聞け」
ぽかんと拳骨を落とすように、哲はシールドを叩きつける。己に闇の攻撃を、惹き付ける様に。
子ども相手で本気を出せないという仲間がいても、己は容赦しないとハイナは決めていた。
「僕は弱そうな相手には強気な人間だか……じゃなくて、加減が時に悲劇を生む事を知っているからね、うん」
螺旋を描く捻りを入れた槍を突き付け、オーラで染めた拳を振るう。仁恵の片腕は異形化したまま、縦横無尽に振るわれ闇を祓う。
吹雪を吹き飛ばすかのように、縁の清めの風。氷を吹き払い、傷を癒していく。
さらに踏み込んだシュテラが叩きつけた閃光百裂拳が――まりもの闇を、吹き飛ばした。
「さてと、大丈夫かい?」
丞が伸ばした手を、「うん!」とまりもは元気いっぱい取って握る。
「小学生になったら色々あるし今から楽しみにしてるといいよ。ランドセルも買ってるんだろう?」
ぴかぴかの一年生ってところだよな、と言われて、まりもはえへへーと嬉しそう。
その手に仁恵が、桜の花びらの押し花を滑り込ませて。
「学園への、桜のチケットです!」
悪戯っぽく頷けば、まりもはぱっと顔を輝かせて。その様子にハイナは、学園に報告して正式にスカウトしてもらおうか、と考える。
桜の花びらを浴びながら、彼女が武蔵坂学園の校門をくぐる日は、きっと遠くない。
作者:旅望かなた |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年4月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 10/キャラが大事にされていた 8
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