深夜の駅の蒼き悪夢

    作者:旅望かなた

     始まりは、不幸な事故であった。
     酔っぱらいの転倒に巻き込まれ、部活で帰りが遅くなった少女の軽い体がホームから舞い落ちる。
     そこに、急ブレーキを響かせながらも止まらない電車――けれど、誰もが想像した悲劇は起きなかった。
     蒼き『なにか』が、電車を受け止めていたのだ。それは、少女が一瞬で変貌した姿だった。
     だが、悲劇が防がれたわけではない。
     蒼きモノは素手で電車を引き裂いた。その線上に乗客がいれば、それごと。
     ぴょん、と無造作に、蒼きモノは言葉すら失ったホームに上り――頑強であった酔っぱらいを叩き潰す。
     悲鳴。怒号。叫び。その中で、少女であったモノは殺戮を続けた。
     あの時確かに生きたいと望んだ己が、今は何を望んでいるのかすらわからないままに――。
     
    「ついに『一般人が闇堕ちしてデモノイドになる』事件が発生しちゃったんだね……」
     唇をぎゅっと引き締めてから、嵯峨・伊智子(高校生エクスブレイン・dn0063)は「でも、今回はデモノイドが事件を起こす直前に介入できるよ」と表情を明るくする。
    「デモノイドになっちゃうのは荷福・和奈ちゃんって言って、高校2年生なんだけど……放送局の新人勧誘と番組作りで帰りが遅くなったところを酔っぱらいに突き飛ばされて、電車にひかれそうになった所でデモノイドになっちゃうんだ」
     酔っぱらいに悪意があった訳ではない。単に、足元が狂ったのだ。
     けれど、酔っぱらいの転倒を阻止し、彼女が線路に落ちる前に救う事は出来ない。その場合和奈はデモノイド化せず、別のタイミングでデモノイドとなってしまう可能性が高い。
     それが予知に引っかからなければ、被害を防ぐ事が出来ないのだ。
    「だから、みんなが介入できるのは和奈ちゃんが線路に落ちてから、デモノイドになって電車を引き裂いちゃう前。すっごい短いタイミングだけど、お願いするね」
     そう言って、しばらく考えてから伊智子は口を開く。
    「もしかしたら和奈ちゃんには、まだ人の心が残ってるかもしれない。それに訴えかけれれば、デモノイドヒューマンとして助け出せるかもしれないけど……助けれるかどうかは、和奈ちゃんがどれだけ強く人間に戻りたいと思うかにかかってる。もし人を殺しちゃってたら……人間に戻りたいって思えなくなって、助けるのは難しくなっちゃう」
     彼女をもしデモノイドヒューマンとして助けたいと思うなら、立ち回りも、彼女の人に戻りたいという心を助ける声掛けも、必要になるだろう。
    「あとは……和奈ちゃんがなったデモノイドは、近くの相手を殴ったり、暴れ回って何人かに攻撃したりするよ。特別な効果はサイキックの加護をブレイクしちゃうくらいだけど、とにかく威力が高いから……気を付けて」
     何を目指すにせよ、戦いは避けられない。
    「お願い、本当に気を付けて……和奈ちゃんのこと、よろしくお願いします」
     そう言って、伊智子は深く頭を下げた。


    参加者
    琴月・立花(高校生シャドウハンター・d00205)
    白・理一(空想虚言者・d00213)
    七瀬・遊(ポジティブファイア・d00822)
    雪片・羽衣(春告げ蝶々・d03814)
    葉月・十三(高校生殺人鬼・d03857)
    五十里・香(魔弾幕の射手・d04239)
    ファム・フォーディア(武神獣姫・d05723)
    ジオッセル・ジジ(小学生デモノイドヒューマン・d16810)

    ■リプレイ

     夜の駅を、灼滅者達は駆け抜けた。
     ぎゅっと雪片・羽衣(春告げ蝶々・d03814)が涙を拭った。あの日から――思うたびに涙が出るのだ。
    「……あの時、わからないなりにも。私も手を伸ばしていたらとか、もしかしたら、かける声の数があと一人多かったらとか――」
     もう一回、目を閉じてから涙を拭い、そして羽衣は決然と前を向く。
    「もう『もしかしたら』と思うのは嫌だし、泣くのも嫌だわ! 泣くのなんか大っキライだわ!」
     駆け抜ける。入場券で改札に飛び込み、ホームへ。
     葉月・十三(高校生殺人鬼・d03857)が隣に並ぶ。死んだ魚の如き目をした男だが、助けたいという意思はその速めた足から感じられた。
    「デモノイドになったお姉さんをがんばって助けよう!」
     ファム・フォーディア(武神獣姫・d05723)がぎゅっと拳を握る。ジオッセル・ジジ(小学生デモノイドヒューマン・d16810)がが、それに深く深く頷いた。
    「私と境遇を同じにする方……助けずにおれませんね……」
     彼女もその身にデモノイド、寄生体を宿す身。
     そしてデモノイドと化すかもしれぬ定めは、己も通る道。
    「助ける命はしっかり助けましょうね」
     そう、仲間達をまとめる様に言ってから――琴月・立花(高校生シャドウハンター・d00205)は、そっと口を開く。
    「大切な仲間を、迎えにいくとしましょう」
     そう、仲間。
    「荷福含め9人で無事に笑って帰るぜ!」
     ホームに躍り出た七瀬・遊(ポジティブファイア・d00822)がにかっと笑って、ぱしんと両の拳を打ち合わせる。
     急いで辿り着いたホームには、まだデモノイドとなる筈の少女――荷福・和奈の姿もない。けれど。
    「良かった、早めに着けて。現場を見ておきたかったし、準備はしっかりしておきたいしね」
     白・理一(空想虚言者・d00213)が静かに微笑む。普段は面倒がりな彼だが、今日の口ぶりや動作にはやる気が垣間見える。
     戦いの場となるであろうホームを、灼滅者達は見て回り、作戦に齟齬がないか確かめる。予知によれば、そろそろ――彼女が、現れる。
    「あっ!」
     ファムが小さく声を上げ、仲間達にホームの入り口を示す。階段を下り、白線のすぐ内側へと立った少女は、確かにエクスブレインの予知の通り。
    「彼女、だね」
     五十里・香(魔弾幕の射手・d04239)が小さく、仲間内にだけ聞こえる声で呟く。そう――荷福・和奈。
     その間に十三は、千鳥足の酔っぱらいの姿を確認していた。そっと指させば、灼滅者達が頷き、動き出す。
     酔っぱらいがふらりとよろめき、転んだ拍子に和奈の身体が押されて。
     二、三歩とよろけたその先には足場はなく、悲鳴と共に彼女の身体は線路へと落ちてくる。
     振り返ったホームの人々の悲鳴。そして、迫る電車の光と轟音――その中で、一気に線路に倒れた少女の身体がデモノイドへと変貌する!
    「うああああ!」
     けれどその時には、ファムと羽衣が既に線路へと下り立っていた。
     ファムが電車へと真っ直ぐに手を伸ばす。電車と手がぶつかり――車体をへこませ高速回転する車輪が線路と擦れて煙を出しながらも、電車はファムを吹き飛ばす事すらなく止まる。死者一人出さず止まった電車に、誇らしげにファムは笑ってから和奈へと向き直る。
     その時には羽衣が、WOKシールドの出力を全開にしてその腕の刃を受け止めていた。反対の手で掴んだのは、太く、蒼く異形化した腕。
    『落ち着いて』
     接触テレパスで、口を開くとともに心に直接声を伝える。WOKシールドに押し付けられた腕から僅かに力が抜けたのを感じ、羽衣は『聞いて!』と心と声で叫ぶ。
    「逃げろ逃げろ!」
     そしてその時には、遊がライドキャリバーのハチに跨り、パニック状態に陥った人々を階段へと追いやっていた。
    (「異形と化した自分から皆が逃げる……なんてのは、女の子にはちょっとショックだろ?」)
     そう――その心遣いゆえに遊はこの役を買って出た。
     パニックテレパスを使って明確な指示を出し、さらに和奈に近付きその視界を一般人から引き離しながら使った香の殺界形成が重なれば、すぐにホームから人影は消える。
     その間にジオッセルが、和奈を突き飛ばしたまま呆然としていた酔っぱらいを引っ張り起こし、階段へと押しやる。理一がホームの奥のベンチからようやく立ち上がったおばあさんを背負って駆け抜ける。ホームに残る一般人は、もうこれで最後。
    「何が原因でこんな姿になったのやら……同時多発的に似たような事件が起こるってことは共通する何かがあるんだろう」
     無事にこちら側へ引き戻して話を聞いてみたいな、と香がソーサルガーターで盾の出力を上げながら荒れ狂う拳を受け止めて。
    「目を覚ませ。お前は生きている。戻れるんだ」
     蒼き外皮の奥の心に、届けと声を張り上げる。おばあさんを階段の上まで送って戻ってきた理一が、素早くクラッシャーを務める立花とファムにシールドリングを飛ばして。
    「……私も貴方と同じよ、荷福さん……」
     そう言ってジオッセルが、武器と一体となった己の腕を示して見せる。そこに宿るのは、確かにデモノイドと同じ蒼。
    「蒼き異形の力を得る運命は、貴方を選んだ……」
    「……ガァッ!」
     大きくその腕が振るわれる。けれどそれはジオッセルに届くことなく、香が両腕をクロスさせて盾を輝かせ受け止める。
     ガチガチと歯を鳴らしながら、デモノイド――和奈の口から、言葉が零れる。
    「え……らば、れ、た……く、な……」
    「けれど……、死の運命にはまだ選ばれてない」
     それは残酷な事実。けれど、優しい宣言。
     異形の力を持ったまま生きてほしいと。
     異形の力を持つ者同士、支え合おうと。
    「まだ高校生だろ? 部活に恋愛にやりたいことが沢山ある筈だ」
     ハチから飛び降りた遊が、和奈の顔を覗き込む。
    「一緒に生きて、もっと青春を楽しもうぜ!」
    「あ……あ、ア……」
     その口が、何か言いたげに開く。けれどそれは言葉になる事なく、ハチを弾き飛ばし大きな拳が遊に迫る。
    「荷福和奈さん!」
     その拳を真っ向から受け止めながら、羽衣は叫んだ。
     心の中からも、言葉に出しても。
    「闇に堕ちちゃ駄目。しっかり自分を持って、感じて」
     腕にすがりついたまま、羽衣は叫ぶ。懸命に、懸命に言葉を重ねて。
    「貴女はこんなこと望んでいるのかしら?」
     そしてその間に前に立った立花が、じっと和奈の顔を見つめて尋ねる。
    「無差別に人を殺したいの? 違うはず」
    「ア、ア……」
     こくり、こくりと蒼き顔が頷いて――けれどやはり腕を振り回す。
    「コロし、た、くな……」
     顔はそれを嫌がるように左右に振られているのに、身体は暴れ回る。
     けれど、それを止めるのがディフェンダーだ。十三が、羽衣が、香が、武器をクロスさせ、シールドを輝かせ、重い乱打を受け止める。
    「何も奪ってない」
     そう、一般人は、誰も怪我一つしなかった。
     そして灼滅者達は、まだこれで倒れるほど弱くはない――!
    「まだ奪われてもいない。自分を取り戻せ」
     香が盾を必死に重ね、仲間達にも分け与えながら、懸命に声を張り上げる。
    「荷福さん聞こえますか?」
     十三が表情のない瞳で、けれどしっかりと和奈を見つめる。言葉には、必死の感情がこもる。
    「今貴方は不安と恐怖で押し潰されそうな暗い闇の只中にいると思います」
    「ぁ……」
    「和奈お姉ちゃん。今自分がどうなっちゃってるのか分からなくて怖いと思うんだよ」
    「ア……ガ……」
     十三と重ねたファムの言葉に、喉の奥から絞り出すような声が応える。叩き付けられた拳をサイキックソードを輝かせ受け止めながら、ファムはじっとその顔を見つめて。
    「けど、心を閉ざさないで心を強くお持ちなさい。闇に呑まれず溺れず気圧されず闇に抗うのです!」
     それが難しい事だと、十三は知っている。
     けれど、それを乗り越えなければ、もはや彼女は戻って来られぬ事も。
    「心の闇を制するのです!」
    「せい、す……」
     蒼き唇から言葉が零れ、ぷるぷると震える。怯えたように振るわれた腕を、十三はしっかりと受け止めて。
     もう片方の腕は、羽衣が握り締めていた。
    「驚いたよね、怖いよね、大丈夫。助けに来たよ。あなたは生きてる」
     心に直接響かせて、己の口にすることで己をも鼓舞して。
    「キミには選択する権利がある」
     理一が素早く防護符を飛ばし、そのまま腕をすっと上げる。
    「理不尽ばかりの世界で生きるか、このまま全てを諦めるか。急にこんなことを言われても分からないかもしれないけど、ね」
     一瞬、理一は腕を鬼神と化してみせた。系統は別であれど、己も異形の力を持つ者だと。
     けれど――それは、壊すためだけに使うものではないと。その証拠に、理一に向かって振るわれた蒼き拳を、受け止める事が出来る。
    『誰かを殺してしまう』という咎から、彼女を救う事が出来る!
    「ホラ、見ず知らずのキミを命がけでも助けたいってお人好しがさ……ここに8人も居るんだよ」
     理一の言葉に灼滅者達は、大きく頷いてみせた。
     そして己の言葉で、励ましの、鼓舞の、導きの言葉をかける。
    「でもまだ元の姿に戻れるんだよ! だから強く戻りたいって願うんだよ!!」
     ファムが必死に叫ぶ。難しい言葉よりも、ファムそのままの言葉で呼びかける。振り回そうとした拳が、呻き声と共に止まる。
    「自分が何者であるかを、何者でありたいかを強く願うのです。姿形など関係ない、貴方がどうなりたいのかが重要なんです」
     十三の言葉に、和奈はゆっくりと振り向いた。小さく何か言おうとした言葉は、けれど次の瞬間荒れ狂う蒼き嵐となって叩き付けられる。
     それでも、灼滅者達は言葉を止めない。蒼き魔獣の中にいる少女を見つめ、届けと叫ぶことを止めない。
    「大丈夫、あなたはこっちに戻れるよ。手を伸ばして!」
     必死に手を伸ばす。身体の痛みなど、助けられなかった心の痛みに比べれば全く痛くないと、羽衣は思う。
    「何もあなたは失ってない。だいじょうぶ。負けないで――負けないで!」
     負けないで。
     まだ救えるか見えぬ中、己の心にも呼びかける様に。
    「人に戻りたいって、生きたいと同じぐらい望んで!」
     感情の昂ぶり故か――救えなかったあの子を、思ってか。
     羽衣の瞳が、涙に潤む。
    「今だって助ける理由なんかわからない! わからないけど、もうあんなのは見たくないの! 助けたいの! 助けたいのよ!」
     理一のシールドリングが飛び、羽衣を励ますように輝く。
     そしてそれは、和奈を覆う蒼き闇をも照らして。
    「助けてって、生きたいって言ってごらん?」
     出来得る限り、君の望みを叶えてあげるよ。そう言って、理一は微笑む。涙に濡れた瞳で、羽衣が深く頷く。
    「だから、お願い。負けないで……一緒に戻りましょう?」
     立花が真剣な顔で手を伸ばす。心の奥底から、呼び戻そうと――必死に。
     彼女の心が呼びかけに応えられるよう、必死に。
    「私たちの声が貴方の心に届いたなら……どうか応えて!」
     ジオッセルの言葉と同時に、振り上げた左腕を右手が抑えた。
     左手は叩き付けようと、右手はそれを食い止めようと、酷く震える。
     そしてがら空きになったその体を――羽衣は、しっかりと抱きしめた。
    『あなたは人間だよ』
     空気を震わせるような咆哮。地の底から響くような深きそれが――灼滅者達には、和奈自身の慟哭に聞こえた。
     人ならざるモノに飲み込まれようとする彼女の、人でありたいという意志に思えた。
     ――そして、その証拠に、彼女は言ったのだ。
    「…………たすけて」と。
     大きく頷くと同時に、灼滅者達は一気に動きを変える。
    「さあ、いくわよ……暫く我慢してもらうわ!」
     立花が素早く影業を刀状にして解き放ち、そのまま袈裟懸けに斬り下ろす。蒼き表皮が削れ、痛みに耐える様にデモノイドが歯を食いしばる。
     それでも耐え切れずに暴れた腕は、十三がしっかりと受け止めて。
    「お前の悪夢を終わらせる。しっかり自分を保て」
     思いっきり声を張り上げながら、香が己に和奈の攻撃を惹き付けるべく輝かせたWOKシールドを叩きつける。
    「斬っちゃうよ!」
     和奈を覆う闇に向かって、ファムはサイキックソードを叩きつける。羽衣が創世の大気の乙女の名を持つ槍をくるりと回し、穂先ではなく石突で攻撃を仕掛ける。
     十三の槍が、さらに蒼き体に突き刺さった。次の瞬間刺さったままの槍の柄に手を滑らせるように近づいた十三は、閃光を纏った拳を何度も叩きつける。蒼が散り、その奥からちらと覗いたは少女の瞳かもしれぬ。
     理一が鬼神のものへと変貌させた腕を、今度こそ蒼き魔獣に叩きつける。割れるような音と共に、蒼き体にひびが走る。
     俺も頑張るから頑張ろうぜ、と笑って、遊がすらりと抜いた刀でデモノイドの腕の刃を割る。さらにハチが助走を付けてキャリバー突撃を放ち、縛霊手からは霊力の網が現れ、蒼き体を縛り上げる。
     ジオッセルが防護符を抜き、素早く仲間達へと投げ渡す。彼女の符による支えが、こちらからは攻撃せずに説得することを可能にし、今も仲間達を支え続けている。
    「貴女は抜かせてくれるのかしら? ……それだと私が困っちゃうから駄目ね」
     そして――立花の巨大な影業の腕によって振るわれた影の刃が、もう一つの腕の刃を断ち切って。
     十三の拳が殺さぬよう細心の注意を込めて振るわれ――どろりと溶けて行く蒼い表皮から現れた少女の体を、羽衣はぎゅっと抱きしめて。
     ――おかえり、と囁いた。

    「助けることが出来てホントよかったんだよ……」
     ほっとして、そのままくらりとファムが座り込む。怪力を発揮し戦いに挑み、その緊張が安堵によって一気に解けて。
    「お疲れ。すげぇ頑張ったじゃん」
     羽衣の頭をクシャクシャに撫でて、遊がにかっと笑みを浮かべる。その傍らでジオッセルが、そっと毛布を和奈にかけて。
    「残酷な運命を背負ってしまったようだけど……まずは、おかえりなさい」
     これからの人生は決して楽なものではないけど、きっとつらくはないよ、と静かにジオッセルは微笑んで。
    「私たちがいっしょだから……ね」
     うっすらと瞳を開けた和奈は、その言葉を反芻するようにいっしょ、と呟いて、小さく笑みを浮かべてゆっくりと頷く。
    「色々説明することはあるけれど、今は純粋に休んでもらいましょう。これからが大変だし……今くらいはね」
     再び眠りに落ちた少女を、静かに立花は見下ろして。
    (「……あれは強烈だったな、使えたら便利そうだ」)
     そしてデモノイドの力を思い出し、香はふと考える。――デモノイドヒューマンが既に学園に加入しつつある以上、それもいつかは可能になるだろう。
    「可愛い声してるし、もし良ければ、ウチの学校の校内放送もやってもらいたいね」
     遊の言葉が聞こえたかのように、眠る少女がくすと微笑む。闇から解放された彼女が見る夢は、もうきっと辛くはない。

    作者:旅望かなた 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年4月17日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 15/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 0
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ