四月馬鹿の絶望

    作者:篁みゆ

    ●4月1日の小さな嘘
    「繰生君!」
     クラスの中でも派手なグループに居る大木さんが僕に話しかけてきた時点で疑うべきだった。日付もしっかりと確認しておくべきだった。
     春休み中の学校、部活の資料を探しに図書室に向かう所を見計らってわざわざ声をかけてくるなんて、何事かと変に期待して舞い上がってしまい、それどころではなかったあの時の自分が恨めしい。
    「ここだけの話、西島先生って実は金髪の人が好みらしいよ。真面目すぎるより、少し型から外れたくらいの……教師だから、おおっぴらに言えないみたいだけどね」
    「!?」
     僕の期待は驚きと羞恥に変わった。どうして僕が文芸部の顧問の西島先生のことを好きだと彼女は知っているのだろうか。
    「繰生君も金髪にしちゃえばー?」
     あの時の彼女の、含みある笑顔。そして廊下の影に隠れてくすくすと笑っている数人の男女。それに気がついていれば……。
    「繰生、何だその髪は!」
    「……繰生君、どうしちゃったの? 真面目な子だと思っていたのに……」
     新学期に金髪にして登校した僕を待っていたのは生活指導の先生のお説教と、悲しげに、失望したように僕を見る西島先生。
     そして、それを見て笑う大木さん達のグループだった。
     ああ、悔しい恥ずかしい。最初から僕をからかって笑うつもりだったんだ。心の中に黒い塊が芽生える。
     殺してやりたい殺してやりたい殺してやりたい――でも僕には力がないから、いきなり人は無理だ。そうだ、最初は小さな動物からにしよう……。

    「エイプリルフールの嘘は、人を不幸にしない、悲しませないものにとどめておく方がいいと思うのだがな」
     灼滅者達が教室を訪れると、殺雨・空音(メイド執事・d00394)が神童・瀞真(高校生エクスブレイン・dn0069)に話しかけているのが聞こえた。
    「エイプリルフールに騙された奴が闇堕ちしたらしい」
     やってきた灼滅者達に気がついた空音は、瀞真に説明をバトンタッチすると席についた。
    「エイプリルフールの嘘に騙されてしまって、傷つけられた男の子が六六六人衆に闇堕ちする事件があるんだよ」
     通常ならば闇堕ちしたダークネスからはすぐさま人間の意識は掻き消える。しかし今回のケースは元の人間としての意識を残したままで、ダークネスの力を持ちながらダークネスには成りきっていないのだ。
    「彼が灼滅者の素質を持つようであれば、闇堕ちから救い出して欲しいんだ。ただ、完全なダークネスになってしまうようならば、その前に灼滅をお願いしたい」
     彼が灼滅者の素質を持っているならば、手遅れになる前にKOすることで闇堕ちから救い出すことができる。また、心に響く説得をすれば、その力を減じることもできるかもしれない。
     瀞真はいつもの様に和綴じのノートを繰って説明を続ける。
    「彼の名前は繰生・尚樹(くりゅう・なおき)。真面目なタイプの中学3年生だよ。クラス替えのない学校の文芸部に所属していて、顧問の西島先生に恋心を抱いているんだ」
     その恋心に気がついた派手なグループに属する数人が、面白がってエイプリルフールに尚樹を騙したのが事の始まり。まんまと騙されてしまった尚樹は恥をかいただけでなく、西島先生を失望させてしまったのだ。
    「騙される方が悪いっていう意見もあるかもしれないね。けれども彼も自分の軽率さを認めた上で、自分が嘘に引っかかったことを面白おかしく吹聴しながら馬鹿にしている派手なグループを懲らしめたいという気持ちが勝ってしまったようだよ」
     殺したいほど憎らしい。けれども自分には人を殺すほどの力はまだないからといって、とりあえず小動物を殺して自分の力を確かめようとしている。
    「日の落ちた頃、尚樹君はひと気のない野原へと、捨てられていた子犬三匹を連れてやってくる。君達が接触するのに最もいいタイミングは、彼が子犬たちの入った段ボール箱を地面において、鞄からナタを取り出そうとしている時だね。ナタを取り出して子犬を殺すまでは少しだけ時間がある。直ぐに子犬を殺そうとはしないから、その間に接触するのがいいよ」
     野原は林を超えた奥にあり、よほど人が訝しく思うような音を立てなければ日が落ちた後に人が訪れることはないだろう。だから尚樹もこの場所を選んだのかもしれない。
    「尚樹君は自分を責めると同時に、自分の想いを弄んだ派手なグループに属する、大木という女生徒を筆頭にした数人に憎しみを抱いている。嘘に乗って行動してしまった自分が軽率だったことは充分わかっているだろうから……そこを責めるのはどうだろうね」
     瀞真は苦笑して続けた。
    「尚樹君は殺人鬼の皆と同じサイキック、そして『戦艦斬り』相当のサイキックを使うよ。注意してほしい」
    「引っかかる方も引っかかるほうだと思うが……」
     尚樹が信じた嘘の内容を聞いて、空音は息をついて。
    「まあ、十分反省しているようではあるからな」
    「そうだね。何とか助けてあげて欲しいと思うよ。君達ならできると信じているからね」
     瀞真はそう言って、優しく笑顔を向けた。


    参加者
    殺雨・空音(メイド執事・d00394)
    田所・一平(赤鬼・d00748)
    レニー・アステリオス(星の珀翼・d01856)
    殺雨・音音(Love Beat!・d02611)
    楯守・盾衛(シールドスパイカ・d03757)
    霧渡・ラルフ(奇劇の殺陣厄者・d09884)
    雨松・娘子(逢魔が時の詩・d13768)
    丹下・小次郎(人力風起こし・d15614)

    ■リプレイ

    ●宵闇迫り
     日が落ちて暗くなり始めた頃、林の木々に紛れて灼滅者達は野原へと歩み出たばかりの尚樹の様子を伺っていた。
    「クオンと一緒~! ふふっ、ネオン張り切っちゃう☆」
    「張り切るのはいいが、無茶だけはしないようにな」
     双子である殺雨・音音(Love Beat!・d02611)と殺雨・空音(メイド執事・d00394)。特に音音は共に依頼に参加できて嬉しそうである。
    「空音君、行きましょう」
    「ああ」
     声をかけた丹下・小次郎(人力風起こし・d15614)に空音が返すと、二人は犬の姿に変身をして。灼滅者たちに視線を投げかけた後、野原へと駆け出していく。
    「騙すアホウに騙されるアホウッてな。同じアホなら殺さにャ損々……ッてイヤいや、短絡的過ぎで俺もDON☆引きだわ」
     犬二匹の後ろ姿を見送りながら、楯守・盾衛(シールドスパイカ・d03757)が軽く呟いた。
    「ヒトの毒で悪酔いしちまッた真面目クンにャ、武蔵坂で悪いアソビの一つも覚えてッて貰おうじャねェの」
    「真に受けた彼も彼だけどさ、大木って子たちはえげつないね。殺したいほど憎む気持ちもわからなくはないよ」
     わからなくはないが実際実行に移すのは違う。レニー・アステリオス(星の珀翼・d01856)はわからなくはないけどね、ともう一度小さく呟いた。
     犬変身した二人が尚樹に近づいていく。林に隠れている灼滅者達はじっとタイミングを伺っていた。

    ●躊躇い
     子犬たちの入ったダンボールが草の上に置かれる。尚樹はナタを取り出そうと持ってきた鞄をいじり始めた。犬に姿を変えた小次郎は気づかれないようにそっと彼に近づいて、三メートルほどの距離を開けて立ち止まった。
    「汝、人の子よ」
    「!?」
     小次郎が声を発した。誰も居ないと思っていた場所でいきなり声を掛けられて、尚樹はびくりと肩を震わせて周囲をキョロキョロと見回す。そして背後に犬がいることに気がついて、目を見開いた。
     その驚きに追い打ちを掛けるように、小次郎が更に言葉を紡ぐ。
    「我らが幼子を殺すか、弱き物を虐げる様は醜き人が人を騙す浅ましさになんぞ相違あらん。汝もまた醜き人か? そうではなかろう?」
     ゆっくりとした口調で語るのは、仲間が駆けつける時間を稼ぐためも兼ねている。
    「な……犬が喋って……」
    「その子らの汝を信用した澄んだ瞳を見よ、わかるのだ、汝もまたそのような瞳であったことが。今はただ道を見失っただけであることが。刃に己の瞳を映してみよ、曇っておろう」
     空音は尚樹が小次郎に気をとられている間にさり気なく子犬たちに近づいて、子犬たちをあやしていた。ふと子犬たちに視線を移した尚樹。彼の視線には「本当にお前は殺れるのか?」という視線を送る。すると尚樹は戸惑ったように空音から視線を逸らした。若干でも後ろめたさがあるのだろう。子犬たちをすぐに殺さなかったのもきっとその証拠。
    「しかし汝は幸運だ、道を照らすべく汝の味方が霧を打ち払わんと集まっておる。見よ」
    「!?」
     犬を視界の中心に置くべく下ばかりを見ていた尚樹は、犬が喋るという驚きに囚われていて人の接近に気が付かなかったことを知った。灼滅者達は彼が小次郎と空音に気を取られている隙に、彼のいる場へと接近したのだった。
    「またお前は裏切るのか?」
    「え……」
     田所・一平(赤鬼・d00748)のきつい言葉に若干怯えるように声を漏らす尚樹。だが一平は構わずに続ける。
    「その犬っころを見てみろよ。暴れたり、威嚇したりしたか? してねぇだろ。お前の事を馬鹿みてぇに信頼してんだよ。裏切れるか? 先生の信頼を裏切ったって反省してるテメェが、また誰かを裏切るなんてできるのか?」
    「う……」
     言葉に詰まった彼を更に責め立てるのは、雨松・娘子(逢魔が時の詩・d13768)。
    「いきなり人間を相手にする勇気がないから、罪もない子犬を手にかけるのか。子犬たちは悪くはない。有り体に言えば、騙された繰生が悪いんだぞ?」
    「っ……! そんなことわかってる!」
    「エイプリルフールに限らず世の中には嘘や誤った情報がそこら中に転がっている。その選択を誤った自身の愚かさの咎を、無垢な子犬たちに押し付けるつもりか?」
    「ちがっ……ちが……」
     尚樹自身、己が迂闊だったことは重々承知しているようで、唇を噛んで悔しそうな、泣きそうな表情で言い返そうとしている。
    「違うのなら、何故子犬たちを犠牲にしようとした? 情報は鵜呑みにせず、自分で確認しなければならない、それも充分わかっているのか?」
    「恥をかかされたから同級生を殺すなんて不健全なコトをするよりも、西島先生の信頼を取り戻すコト、ソチラのほうが遥かに重要なのではないデスか?」
     霧渡・ラルフ(奇劇の殺陣厄者・d09884)の言葉に尚樹はぱっと顔を上げたが、直ぐにまた俯いてしまった。
    「大丈夫、彼も絶対目を覚ましますから、安心して待っててください」
     その隙に小次郎が子犬たちに優しく声を掛け、段ボール箱の中から保護し、戦闘へ巻き込まれないようにと連れ去った。
    「先生はもう僕のことなんか呆れてしまったよ……」
    「それで復讐したくても、殺す練習台に無関係な子犬を使うのは筋違いじゃないかい?」
    「尚樹ちゃん、何も悪いことしてないわんちゃん達を虐めるのは止めよう?」
     レニーの声を音音が追う。
    「尚樹ちゃん自身も、こんなことしててもダメだって分かってるんじゃないかな。それじゃあ、尚樹ちゃんを騙した人たちと同じ、嫌な人になっちゃう」
     いつの間にか犬の姿から戻った空音は、音音に言葉を合わせる。
    「鬱憤を晴らしたいのは分かるが、本当にそれがやりたい事か? 確かに騙した奴等も悪い。だがお前も自分も悪いと思えているのだろう」
     空音の言葉に尚樹はすっと顔を上げて。すがるように見つめてくる。
    「何故それを正直に言わないんだ。裏でこそこそ企む奴の方が相当な悪党。だが人間、手を出したらそこで終わりだぞ。手を出したほうが悪いとされる」
    「意地張らなくって良いんだよ。ここで突っ走っちゃっても後悔しかしない、そう思わない? 逃げてるだけになっちゃう。好きな先生を、もっと失望させることになっちゃう」
    「だって……」
    「別のやり方、一緒に探そ、ね?」
    「ホイホイ金髪にすりャ上手く行くなンて思う時点で1アウト。騙されちッたアハハーで済ませられねェ時点で2アウト。リベンジはまだしも弱ェ相手で練習とか3アウト。総じてガキ臭過ぎ。先ずはテメェが一皮剥けるのが先じャねェ?」
    「なっ……! そんな、そんなのっ……」
     盾衛の言葉が衝撃的だったのだろう。自分でわかっていることを更に上から言われて落ち込みを通り越して怒りを抱いた尚樹。
    (「ま、自分でどうすりャ良いか分かッてンなら、そうするだけなンだケドなー」)
     わかっているのかわかっていないのか、半々なのか、はっきりしない尚樹。その怒りがこちらへ向いて、盾衛はニヤリと笑う。
    「どうしようもない想いを吐き出したいならドウゾ我々にぶつけなさい。ワタクシたちは、その為に来たのデスから」
    「僕らが相手したげるよ。無縁ってわけじゃないし」
     ラルフにレニーが怒りを受け止めると宣言して。
    「キレる矛先がコッチ向いたかネ? ンじャ殴り合いでストレス発散だァ!」
    「ぶっ殺してぇくらいイラついてんならかかってこいや! 俺らが相手になってやるよ!」
     盾衛と一平が叫ぶように啖呵を切る。尚樹がナタを握る手が怒りで震えている。
    「Frön einem Betrug!」
     ラルフがカードを解放する。まやかしに溺れろ、と。
    「逢魔が時、此方は魔が唄う刻、さぁ演舞の幕開けに!」
     娘子がカードを開放すると、男子と見まごう姿から一変してライブ衣装へと変わる。他の灼滅者達も解除コードを唱え、それぞれ武装を整えた。
     さあ、始まりだ!

    ●矛先
    「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
     尚樹は素早く空音の死角に入り、ナタで彼を斬り上げる。一平は闘気を雷に変換して宿した拳を躊躇いなく振るう。アッパーカットをくらった尚樹は少し身体が浮き上がって。上手く着地することが出来ずに尻をついた。
    「おらよッと!」
     その隙に盾衛は『自在刀【七曲】』を上段に構え、早く重い一撃を繰り出す。
    「クオンっ!」
     音音は分裂させた小光輪を空音の前に展開し、すかさず彼の傷を癒した。
    「殺したいくらいの気持ちはわかるよ。僕もそんな時期あったからね。でも聡い君ならわかるだろう。彼女はわざわざ殺すほどの存在かい?」
     レニーは立ち上がった尚樹に指輪から魔法弾を放つ。
    「どうせやり返すなら、受けたマイナスをプラスに転じて見返してやりなよ」
     ラルフの身体から無尽蔵にどす黒い殺気が発せられた。その殺気は尚樹を包み、蝕んでいく。空音は素早く尚樹に接敵し、マテリアルロッドで彼を殴りつける。思い切り魔力を流し込むとその魔力が体内で暴れているのだろう、尚樹の口の端から呻き声が聞こえた。
    「なぁに一度痛い目見たならばもう繰り返す事御座いませぬよ!」
     娘子が激しくギターを掻き鳴らす。その姿は戦闘前の彼女とはかけ離れていて、明るく楽しげに演奏をしている。彼女の紡ぎだす音波が、尚樹を襲う。
    「間に合いましたね」
     子犬を避難させて戻ってきた小次郎は、斧に宿る「龍因子」を開放して自らの守りを固めた。
    「うりゃぁぁぁぁっ!」
     なおも尚樹はナタを振るう。振り上げられたナタは一平を狙う。だがその狙いは若干ずれていて、風圧が一平の頬を撫でただけでナタは地面へとめり込んだ。
    「喧嘩は初めてか? 力があってもそんな素直じゃ当たりゃしねぇぜ!」
     オーラを手足の延長のように使う一平は、超硬度の拳で尚樹を撃ち抜く。ぐわ、と内蔵を穿たれた尚樹は声を上げた。追うようにして盾衛の『連装破銃【ガルムハウル】』から爆炎の魔力を込めた大量の弾丸がばらまかれ、一平は後ろに飛んで巻き込まれぬように距離をとった。音音は守りを固めるべく、盾衛の前に小光輪を展開する。
     レニーが高速で糸を操り、尚樹の肌を斬り裂いていく。ラルフは『Eiserne Jungfrau:アイゼルネ・ユングフラウ』から爆炎の魔力入りの弾丸を大量に打ち出し、空音はチェーンソーで尚樹を斬り裂いて容赦なくその傷口を広げていく。
    「貴方様は授業料を払ったのです、さぁ教訓を生かすべく武蔵坂へおいでませ!」
     明るく楽しげに唄う娘子の歌姫のごとき歌声は、まるで尚樹を導いているようだった。
     小次郎は尚樹に接近し、その膝裏に納刀したままの刀を押し付けるようにして、引きぬく。膝をついた尚樹に体内から噴出させた炎を宿した刀で斬りつけて。衝撃で仰向けに倒れた尚樹に声をかける。
    「人間うまくいかないときは下ばかり見てしまう物です。そんな時は空を見なさい。空はあんなに澄んで高い」
    「そ、ら……、……うがぁっ!」
     小さく呟いたのは本物の尚樹だろうか。だが彼の中のダークネスがそれを拒み、勢い良く起き上がると同時に反動でナタを振るう。だが攻撃を受けた小次郎は守りを固めていたためか、それとも説得が効いているのかそれほど深い傷を負わずに済んだ。
     一平が接敵し、再びアッパーを食らわせる。体勢を崩した尚樹に盾衛は上段からの一撃を加え、音音は防護の札を小次郎へと遣わす。
    「もうそろそろ限界だろう?」
     レニーは自らの腕を異形化させて尚樹に振り下ろす。ラルフが放った漆黒の弾丸は狙い過たず尚樹の肩を打ち抜き、空音が流し込んだ大量の魔力が彼の体内で暴れ、そして尚樹はそのまま倒れ伏した。

    ●これから
     キューンキューン……目を開けた尚樹の側にはつぶらな瞳が三対。ぺろんと頬を舐めてくる。
    「目が覚めたようですね」
    「無事なようでナニヨリってヤツだな」
     子犬を連れてきた小次郎は、犬姿の時の発言でちょっとノリ過ぎてしまったため、やや赤面しつつ。盾衛は少し離れた所で彼の無事を確認して。
    「すっきりしたでしょ。またイラついたら来なさいな。カラテの極意ってやつを教えてあげるからさ」
     にっこり笑いかけるのは、一平。
    「わたくし達は武蔵坂学園の者デス」
    「恥は掻き捨て、恥ずかしさ事捨て去り、其の力を必要としている学園で新たに始めよう」
     ラルフが簡単に学園と尚樹の身に起こったことを説明し、娘子は彼を学園へと誘った。
    「マイナスをプラスに転じるって言ったけど、たとえば、西島先生に事の次第を明かして、そのくらい先生が好きだったんだ! って告っちゃうとかどうだろう。先生からの好感度も上がるし、大木さんの鼻も明かせるんじゃない? そのときはESPラブフェロモンの防具を着ていくようにね」
     冗談っぽく説くレニー。そういえば、と付け加える。
    「大木さんへの仕返し、僕がやってもいいよ。適当に口説いてポイするとかさ」
    「えぇっ!? そ、そんな……」
     その言葉に、尚樹は起き上がって慌てる。先程まで大木達を殺そうと思っていた人の反応とは思えないが、本来はそういう性格なのかもしれない。
    「先生にガッカリされたからって、諦めちゃったら誤解されたままだよ~。きちんと理由説明するべきっ。尚樹ちゃんの普段の様子見てる人なら、嘘なんか言わないって分かるだろ~し」
     力説するのは音音。
    「一人で不安なら、ネオンがクオンと一緒に付き添っても良いしね♪ 誰かが一緒にいるってだけで、心強いものじゃない?」
    「姉さんまた勝手に……まぁ一人より多い方がましだろう」
     勝手に話に出された空音は軽く文句を言いつつも、本当に嫌がっているわけではない。
    「……さて、このまま先生や騙した奴等の前で真実を言うか、それとも、俺達の学園に来て1から始めてみるか。どちらにしろ、手伝いくらいならしてやるからさ」
    「そうだね。少し考えてみようかな、君たちの言う別の方法を」
     少し微笑みを浮かべた尚樹の表情は、憑き物が落ちたようだった。そんな彼に子犬たちが遊んで遊んでとじゃれ付いている。
    「子犬も学園に連れて帰ろうね」
     レニーはそう言い、小次郎と尚樹と一緒に子犬を撫でる。その様子を眺めて、音音は空音にそっと寄り添った。
    「クオン、ケガ無い? 心配してたんだから~」
    「当たり前だろう? 姉さんが回復してくれたしな。お疲れ様」
    「……でもね、守って貰えてる感じがして、幸せだった♪」
    「……ん」
     キャンキャンと子犬が喜びの声を上げて灼滅者達の足元を走り回っている。
     学園が少し賑やかになる日も、近いかもしれない。

    作者:篁みゆ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年4月22日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 5
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ