駆け寄る混毛 にゃるらとほてっぷ

    作者:那珂川未来

     タンポポがちょっぴり咲き始めた原っぱに子猫が二匹。寄り添って思いっきり昼寝している。しかも無防備にお腹を上に向けて、そりゃあもう気持ちよさそうに。
     毛はふんわり。丸い尻尾が超キュート♪
     どこもかしこもふわっふわもっふもふ。
    「きゃー、子猫だー」
    「もしかしてこれが噂の子猫ちゃんじゃない!?」
     ハイキングに来ていたおねーさん二人。あまりの可愛さにふらふらーと。
    『にゃっ』
    『にゃにゃっ』
     ぴくんっ。
     人の気配に、にゃんこ二匹は跳ね起きた!
     そして遊んでーっと言わんばかりに突進して。
    「ちょうかわいいー」
    「いやーんっ!」
     駆けてくる姿にきゅんきゅんしていたら、
     ポーン。
    「ひゃー!?」
    「ばかなー!?」
     おねーさんの両掌に収まるくらいの猫に、鮮やかにふっとばされた。それも百メートルほど。
    『にゃっ、にゃにゃっ♪』
     ごろごろ転がりながら、落ちてくるおねーさんを肉球でねこぱんち回転レシーブ!
     そしてねこジャンプしながらねこきっくでアタック!
     そしてあむっと甘噛み!
     一般人は都市伝説な子猫を満足させるほど遊んであげられないわけで。
    「ふわふわすぎて……」
    「肉球が強烈ぅ……」
     ぱたり。
     とうとうにゃんこの可愛さと強烈な愛に昇天されたおねーさん。
    『ふにゃー……』
     子猫ゆえもう疲れてしまい、また昼寝をしだしたとかなんとか――。

      
     
    「んなぁぁぁぁぁぁ、コイツ卑怯すぎるってぇぇぇぇぇぇぇ!」
     資料を抱きしめ、何か悶絶している仙景・沙汰(高校生エクスブレイン・dn0101)。
    「……どうしたんですか……」
     不審丸出しの目で尋ねるレキ・アヌン(冥府の髭・dn0073)。
    「ずるいっ! ずるいヨ! 猫ってだけで無条件で可愛いのに、更に子猫で超もふもふだなんてっ!」
     頭抱えくるくる回り出す沙汰。ハイトーンボイスのせいで絶叫まるでハウリング状態。 
    「ええーっ!? ネコ!?」
     そして、さっきまでの冷めた目が、たった一言できらっきらに輝いて、亜高速で沙汰に詰め寄るレキ。
    「そう、ネコなんだヨ。としで……」
    「それ行きます! 行きます! どこですか!?」
    「ぶっ!?」
     思いっきり襟つかまれ、締め技に等しいくらいの勢いで引っ張られ、泡吹きそうになっている沙汰。
    「ぐ……ぐるじぃ……」
    「はっ! す、すいませんっ」
     ちょっと取り乱しましたと、慌てて手を離し。
    「灼滅者のオソロシサを瞬間的に味わった気がするヨ……」
     資料を取りだし、謹んで情報を手渡す沙汰。
     レキはわくわくした様子で資料を受け取り、
    「えーと、にゃんこは川原にいて、すでに二名の犠牲者が……って、沙汰さんナニコレ、依頼じゃないですかっ!」
    「レキちゃんちょっと待ってヨ! マジで単純な猫探しか何かと勘違いしてたの!? オレが呼んだんだからとーぜん依頼に決まってるじゃない!」
    「はっ!」
     うっかり先走りすぎのレキ。

     そんな小芝居は放っておいて。
     今回の相手は都市伝説の子猫ちゃん。
     大きさはフツーに子猫。
     しかしねこきっくは鋼鉄拳に酷似しているぞ!
     ねこぱんちは地獄投げに酷似しているぞ!
     甘噛みは抗雷撃に酷似しているぞ!
     それらに謎効果のもふもふやらにくきゅうぷにぷにやらのおまけつき。ええ、もちろん謎効果なので、気分的に幸せになるだけであって、特別不利なものはない。

    「なんだかストリートファイターみたいな猫ですね」
     サイキックが。
    「うん。都市伝説だからね」
     それで説明つく不思議。
    「で、子猫なもんだから、パワーも弱ければ体力もかなり低くて」
    「……それって灼滅者が本気で戦っちゃうと……」
    「たぶん二回叩けばばたんきゅーしちゃうかなぁ……」
     と言うくらい弱い。
    「だから、ねこぱんち食らってもいいからもふもふしたいって人はすればいいと思うし、それこそ命がけで戯れればいいと思うヨ」
     攻撃しないのも、自由ですからね!
    「というわけで、この無邪気な子猫を灼滅よろしくネ」
     


    参加者
    両角・式夜(黒猫ラプソディ・d00319)
    水無月・戒(疾風怒濤のナンパヒーロー・d01041)
    瓜生田・ひいか(世界の平和はあたいが守る!・d01672)
    エリオ・マニングス(おひさますまいる・d03094)
    シャロン・フェレス(彷徨う三日月・d03109)
    白藤・樂(壊音カプリチオ・d04514)
    荻田・愛流(通りすがりの猫好き・d09861)
    星空・みくる(お掃除大好きわん子・d13728)

    ■リプレイ

    ●にゃ♪
     春麗らかな、人里離れた川原の片隅で、
    「ねこ! あたい、ねこ大好き!」
    「子猫あざとい! でもそれがいい!  愛らしい顔、小さい肉球……」
    「ふふ、猫ちゃん達と遊べるだなんて素敵な依頼だわ!」
    「しかも、遊びたい放題とかヤバ過ぎだろ!?」
     といった感じで、子猫とのご対面に胸はずませている若者たちがいた。
     全力でもふもふして抱きしめて遊んで遊んで遊びまくるぞーと、浮かれて足取りスキップ状態の瓜生田・ひいか(世界の平和はあたいが守る!・d01672)と、これぞまさに地上に舞い降りた天使と、猫に対するパトスを熱く語る両角・式夜(黒猫ラプソディ・d00319)。
     普段はクールな荻田・愛流(通りすがりの猫好き・d09861)も、完全に舞い上がった様子で、瞳は盲目的な乙女のようにきらっきら。白藤・樂(壊音カプリチオ・d04514)も、いつもはスタイリッシュに下ろしている髪をしっかりまとめて、さらには斜めがけカバンに大量のおもちゃ投入済み。
    「相手は都市伝説。情けや容赦は無用ですね」
     キリリとした様子でそう言い切ったシャロン・フェレス(彷徨う三日月・d03109)ですけれども。猫じゃらし片手に情け容赦なく挑むのは、勿論にゃんことレッツプレイトゥギャザー。
    「灼滅あるのみ……と今回ばかりは言えないのですよ」
      だって相手は仔猫である!
    「えへへ。皆さんやる気満々ですね!」
     レキ・アヌン(冥府の髭・dn0073)もるんるんしながらサポートで駆けつけてくれた紅鳥の煮干しやらカリカリやらてんこ盛りのリアカーの中を物色して。
    「ボクたちならいっぱい遊んであげられるからね」
     お弁当やらカリカリやら、準備に抜かりないエリオ・マニングス(おひさますまいる・d03094)は、わくわくしている様子が手に取るようにわかるほどで。
     何か大切なこと忘れていやしませんかとつっこんであげたいくらい、もう既にデレッデレKO食らいそうな皆様を前に、
    「まぁ、なんだ。こうな? 子猫って言っても都市伝説ってわけで。被害もでてるわけで、油断無く全力で戦わないといけないわけだぜ」
     こほんと咳払いし、惑わされるな冷静になれよといった雰囲気を醸し出しながら嗜めてみる水無月・戒(疾風怒濤のナンパヒーロー・d01041)。
    「被害が出ている事は確かなのですよね……」
     都市伝説とはいえ相手は子猫というべきか、しかし子猫とはいえ相手は都市伝説と言うべきか。子猫相手に迷っていた星空・みくる(お掃除大好きわん子・d13728)は、確かにその通りですよねと呟いて。
     そんな灼滅者のキビシイ現実を前に、これも立派な執事になるための修行の一部なのでしょうかと、澄み渡る青空に問うてみた。
    「……うん、やはり自然ならざるもの、灼滅しなくちゃね……」
     一部華麗にスルーしている方もいますが、もちろんちゃんと灼滅する気でいたよとエリオが言ったその時、
    『ふにぁ~ぁ』
     ぴくーん!
     そこにいる誰もが、猫のように反射的な反応をしながら振り返る。
     短い草の上、それはそれはちっちゃい体を目一杯伸ばしたあと、グリグリと地面に体擦りつけてから跳ねるように起き上がるなり、
    『みゃ?』
    『にゃう?』
     つぶらな瞳を向けるにゃるらとほてっぷ。
     丸いしっぽが隠れそうなくらいふわふわで柔らかそうな毛。
     ちっちゃい顔と、大きな耳と目。
     手足が短いところもまたいい。
    「わわわ、本当だ、すっごく可愛いねぇ~」
    「た、確かに可愛いですね……」
     エリオはあどけない子猫たちに目をキラキラさせて。みくるは予想以上の可愛らしさに思いもよらず動揺。愛流とシャロンは余りの可愛さに、ほわわ~んと幸せ顔。
    『みゅ?』
     遊んでくれるの? と、いじらしい顔でちょっぴり首をかしげられて。
     ズキューン! ――という効果音が文字になって見えそうなほど、全員その愛くるしさに心の蔵を撃ち抜かれ、キュン死にしそうになっていた!
    「あざとい! 際限なくあざとい!」
    「この子達に殺されるならマジ本望――!」
     ふわもこにゃんこの仕草に悶える式夜と樂。
     いきなり近づいたらビックリさせちゃうから。そう思って少し遠巻きからお誘いしようとしていたひいかは、まずワイヤー製の手作りねこじゃらしを取り出す。
     だってさ、小さな手足を必死に動かし、時には勢い余って転がり、一生懸命自分に向かって駆けてくる姿はご褒美以外の何者でもないじゃないですか!
     猫じゃらしをふりふりしながら、「にゃるらー! ほてっぷー! 遊――」
    「ぼうぜー!!」と言い切る前に、
    「ヒャァッハーーーー! 子猫をもふもふだぁぁぁぁぁぁー!」
     飛び出す戒!
    「えーっ!?」
     みくるとエリオは唖然としながら目をパチクリ。
     この川原という水分十二分すぎる場所で砂煙舞い上がらせるほどの勢いで突っ走りだす、つい一秒前まで油断なく灼滅だとか遊ばず灼滅だとか言っていた人がですよ?
    「バッカ野郎! あんなにかわいい子猫をモフモフしないわけがないだろがァー! 可愛ければよかろうなのだぁぁぁぁ!」
     これですよ。
     おそるべし魅惑のふわもこ。そして負けず劣らずの勢いで、すでに愛流もにゃるらに目標を定め突進中!
    『にゃー!』
    『みゃー♪』
     熱烈なラブを受け止めるかのように、嬉しそうに駆けてくる二匹。
     さあれっつもふにゃんこ!


    ●にゃーん☆ みゃうみゃう!
    「にゃるらちゃーん」
    『にゃー』
     全力で鬼ごっこをしている愛流。楽しそうに逃げるにゃるらを捕まえてはもふもふ、くらうねこきっく。
     もふもふもふ、ねこきっく。
     もふもふ、ねこきっく、もふもふ、ねこきっく、もふもふもふもふもふもふ……いつの間にやら鬼ごっこじゃなくて単純なモフモフタイム。ええ、常にねこきっくが炸裂してますがぷにぷにの肉球も癒しなんです!
    「ふわふわでもふもふな可愛い白猫だなんて……反則的だわ!」
     もう離したくないといった様子で、首やら眉間やらかいてあげて、にゃるらを全力で愛でまくる!
    「にゃーにゃにゃっ、にゃー(子猫如きに遅れをとるほど猫業界は甘くないぞぉぉぉ!!・意訳)」
     むしろ猫目線で戯れる絶好のチャンスを逃す理由などなくて。猫変身して立派な黒猫さんになった式夜は、身も心もにゃんこ。
    「にゃっ」
    『みゅっ!』
     お手をしては首傾げ、ころんと横になり腹を見せ。華麗な猫ジャンプのフォームなど、互いにあざとい仕草を競いながら野山駆け回る白黒にゃんこの共演。
     ほてっぷを抱きしめてゴロゴロする戒があっちへいけば、今度はエリオが抱きしめながらゴロゴロ。
    「ほてっぷおひさまの匂いがする」
     エリオの鼻先をくすぐるいい匂い。ふわっふわの首元に顔をうずめてもふもふ。くすぐったそうに身をよじらせるほてっぷ。ああ幸せ気分。
     サポートに来ていたいろはも、ほてっぷのおひさまの匂いを堪能しつつもふもふにこっそり参加。
    「そーら、高いたかーい」
    『うにゃっ、うにゃにゃ♪』
     戒の頭の上、その高さに大興奮のにゃるら。
    「超癒される……」
     頭皮を刺激するぷにぷに肉球。頭の芯まで夢心地。
    「かわいい子たちだなー!!」
     ひいかはお手製猫じゃらしを小刻みに動かしながら、ぴょこぴょこ跳ねながら捕まえようとするほてっぷの仕草にご満悦。普段あんまり見せないようなとろけきった笑顔に。
     きゅっと抱きしめもふもふ。ふんわりしたお腹が柔らかくてもう!
     このまま埋もれて死んでもいいくらい。
     甘噛みされても全然気にしません。
    「にゃにゃっ」
    『みゃー、みゃうみゃう♪』
     黒猫式夜がゴロンと寝そべれば、必死になってよじ登ろうとしているにゃるら。
     ベッタリと大の字になったままずるずるーっと滑り落ちる。
     また飛び乗っては、ずるずるーっと滑り落ちる。
    「やばい、可愛すぎる……」
    「ああ、ずーっと見ていても飽きないわ」
     時々式夜が肉球とふわもこの感触に恍惚の表情浮かべていますけれども。
     チャレンジ精神旺盛かつちょっぴりどんくさいにゃるらに、なごみまくる樂と愛流。
     ようやくたどり着いたにゃるらが、お乳出ないかなと式夜のお腹のところをもみもみもみ。何か親と勘違いしている模様。
     ついでに性別も勘違いしている模様。
     ねこぱんちをくらい続けているけれど幸せなのは、ぷにぷに肉球の感触がたまらなくて。
    「にゃー……」
     もみもみ肉球のあまりの気持ちよさと、先ほどのあざとさ対決の疲れもあって、迂闊にも寝てしまった黒猫式夜。
     こそっと霊犬のお藤がやってきて、ほかの皆様のために、ご主人様自身の背中の上に連行。
    「今度は俺が遊んでやるぜー」
     樂は背中からそっと捕まえて、まずはふわふわ真っ白ふるもっふ。
     頬ずりして、撫でまくって、ぐりぐりカキカキしてあげて――ああ、ふわもこで可愛すぎて辛い。
     用意した猫じゃらしをにゃるらの前へ。
     ふりふり~。
     ぺち。
     ふりふり~。
     ぺちっ。
    『にゅー……』
     横へ逃げた猫じゃらしをしっかりと睨みつけ、
    『にゃ!』
     べしっと叩くけれど空振り!
    『にゃ……にゃにゃにゃーーーーっ♪』
     頭の上でふりふりしている猫じゃらしをつかもうと後ろ足で立ち、更にねこじゃんぷ。
    「にゃ! (うっかり寝ちまった!)」
     ピョンピョン跳ねてるその振動に、慌てて起きる式夜。目の前のにゃんこの仕草にまた和み。
    『にゃっ♪』
     樂が手加減したことも露知らず、ようやくフリフリが両手に収まって、嬉々とするにゃるら。だがその瞬間散り散りに。
    「にゃんこの威力半端ねぇ!」
    「可愛いのに攻撃は見事ですね、やはり都市伝説だからでしょうか」
     爆笑する樂。子猫の破壊力(物理・精神含む)の高さに感心するみくる。
    「それにしても……」
     壊れてがっかりしているにゃるらがまたいじらしい。
    「では、ハタキを猫じゃらし代わりにしてみましょう」
     これなら壊れませんよーとみくるがふりふりさせれば、
    『ふにゃっ!』
     これまくた変わった遊び道具に目を輝かせるにゃるら。
    「ノノも遊ぶ?」
     みくるが問いかければ、こくりと頷くナノナノのノノ。ふわふわとにゃるらの前に飛んでゆけば、
    『ふにゃっ!?』
     興味津々、ねこジャンプで捕獲に向かうにゃるら。捕まえてごらんなさーいと言っているかのように見えなくもないふわふわした動きで逃げ出すノノ。
    「可愛い……」
     戯れている姿にほっこり和む。
     そして、もうとっくに猫じゃらしは壊れてしまったので、シャロンはピンク色のお鼻の前で、指を使ってじゃらけさせて。
     ほてっぷは小さな前足を必死に伸ばして捕まえると。
    『うにゃうにゃ』
     差し出した指をおっぱいと勘違いしたようにあむあむして。やっぱりまだまだ子猫ちゃん。
    「プニプニが素敵過ぎます」
     甘噛み食らってますが、可愛い仕草と指を挟んでいる肉球の感触に和み顔。
    「一旦休憩しようよ」
     ボクおにぎりいっぱい持ってきたよとエリオは一式入ったバスケットを見せて。
    「キミ達の分もあるりますよ」
     みくるはみんなで持ち寄ったカリカリや猫缶をお皿に盛り付けてはいどうぞ。
    『うにゃっ、うにゃっ』
    『みゃ、みゃっ』
     こんな美味しいもの食べたことないと言わんばかりに、がっついているにゃるらとほてっぷ。
    『にゅー……』
     そしてありがたい気分になって、大きなあくびをしたあと、二人で寄り添いながらこてんと仰向けに。
     もうその姿だけでムネがキュンキュンしちゃうんですどうしよう!
     シャロンは微睡んでいる子猫をナデナデ。ゴロゴロと喉を鳴らしながら、もっとやってーと寝ぼけながら、後ろ足をくいくい動かして。
    「できるなら連れて帰りたいくらいなのですよ」
     あまりに可愛いし、人懐っこいし。これで都市伝説じゃなければどんなに良かったことか。
     でも、このまま灼滅せずに帰ってしまっては、また被害者が出てしまう。
     まずはみくるが遊んですっかり汚れた体をクリーニングで綺麗にしてあげて。
     せめて夢見るまま痛み無く灼滅してあげられるよう、エリオはフォースブレイクを振り下ろす。が、
    「……駄目……やっぱり、駄目!!」
     突如間に割って入った愛流に、エリオは驚きを隠せぬまま。
    「……どうしてもこの子を灼滅するというのなら、私を倒してからにしなさい!!」
     フォースブレイクの一撃に血をタラタラ流しながらも愛流は、今私はあなたたちの敵に回ったも同然なのよとにゃるらとほてっぷの前に立ち塞がった。
     目が完全にマジである。
    「どけろ! どけてくれ愛流!」
     気持ちは痛いほどわかるんだが仕方ないだろうと悔しげに震える戒。おろおろしつつ傷を癒すシャロン。
     何かドラマ仕立ての展開になっていますが。本人たちは灼滅者の宿命と、子猫たちの愛に真剣なだけなんです!
    『みゃうーん(やめて、僕たちのために皆で争わないで・意訳)』
     いつの間にやら目を覚ましていた子猫たち。もう十分遊んだからと、お祈りするような仕草でうるるんと潤んだ目を向けて。
     都市伝説は思えない清さに、戒と樂と式夜は軽く仰け反りながら、
    「やめろ! 逆に決心が揺らぐたろうが!」
    「そんな目で見るなって!」
    「ふにゃーーーーんっ! (健気だ、健気すぎる! (意訳)」
     運命に打ち震える灼滅者たち。
    「駄目、あなたたちがよくても私自身が許せないの!」
     最初から灼滅なんてする気サラサラない愛流は、健気なにゃるらとほてっぷをぎゅっと抱きしめて。
     子猫たちを灼滅したくない気持ちはみんな一緒なんだ。
     勿論救える方法があるなら救いたいんだ。
     でも現時点で、都市伝説を安全に捕獲する方法がない現実。
    「都市伝説って……残酷なのですよ」
     締め付けられる思いに沈痛な表情のシャロン。
    「ごめんね。でもこれが本来あるべきことだから……」
     くしゃりと歪みそうな顔を必死に押さえつけ、エリオはもう一度覚悟を決める。
    「思い出をありがとうなぁ!」
     戒は涙を飲み込みつつ、二匹を害のない噂の中へと返すべく。
     愛流はやはり、必死に庇おうとしたけれど――ちょっぴり黄昏てきた河原に、もう子猫の鳴き声は聞こえない。
     けれど。
     ふわふわのたんぽぽの綿毛がどこからともなく飛んできて。
     まるでにゃるらみたいな真っ白綿毛を呆然と見つめながら、悔しさと悲しさを抱き、無言で佇む愛流。
    「おまえら、泣くなよな!」
     必死で涙を飲み、歯を食いしばっている男性陣へそう言い放ったひいかだけれども。一番ぽろぽろと涙を流しているのは本人。
    「楽しかったぜ、本物の猫になれたらまた会おうな」
    「あたいは信じてるぜ!!」
     樂やひいかたちは、にゃるらとほてっぷが寝ていた場所へ向け大きく手を振って。

     ――こちらこそ、いっぱいあそんでくれて、ありがとなの。

     陽の光に輝くほてっぷみたいな綿毛が空へ飛び立つ中、ふわふわの産毛の感触を思い出に、彼らは学園へと戻るのでありました。



    作者:那珂川未来 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年4月24日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 16/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 5
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