如月・陽菜(蒼穹を照らす太陽娘・d07083)は、こんな噂を耳にした。
『カピバラの都市伝説が現れる』と……。
エクスブレインの話では、このカピバラ……都市伝説であるらしい。
都市伝説は円らな瞳で相手を油断させ、相手が油断したところで頭をパカッと開き、無数の触手を伸ばして相手の動きを封じ込め、パクッと食べてしまうようである。
おそらく、都市伝説はこうしている間にも、一般人を襲っていることだろう。
これ以上、犠牲者を増やさないためにも、都市伝説を倒さねばならない。
ただし、都市伝説の触手はマヒ効果があるため、迂闊に近づくのは危険である。
参加者 | |
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ユニス・ブランシュール(淡雪・d00035) |
江良手・八重華(コープスラダーメイカー・d00337) |
上條・和麻(黒炎宿りし二刀流・d03212) |
緋神・討真(黒翼咆哮・d03253) |
如月・陽菜(蒼穹を照らす太陽娘・d07083) |
夏目・斗摩(高校生ダンピール・d14034) |
斎場・不志彦(燻り狂う太陽・d14524) |
契葉・刹那(響震者・d15537) |
●カピバラ
「あらあら……、自分の可愛さを武器にするだなんて、したたかな敵なんですね。惑わされない様にしないと、ですね」
ユニス・ブランシュール(淡雪・d00035)は事前に配られた資料に目を通しつつ、仲間達と共に都市伝説が確認された場所に向かっていた。
都市伝説はカピバラの姿を模しており、その愛らしい外見を武器にして獲物を引きつけ、相手が油断した瞬間を狙って襲い掛かってくるようだ。
「とっても可愛いと噂の都市伝説なんて厄介だねぇ。でも、カピバラってちょっと怖い顔をしてるよね? キャラクター化されてるグッズは、まあ……可愛いけど。どちらかと言えば、アニメ調なのかな?」
都市伝説をイメージしながら、夏目・斗摩(高校生ダンピール・d14034)が呟いた。
そもそも、都市伝説はカピバラを模しているだけであって、実際のカピバラと同じでなければいけないという訳ではない。
逆の考え方をすれば、本物のカピバラと並べて明らかに別モノだと思えるものであっても、噂を流した者達がカピバラだと言えば問題ないのだから……。
「だからと言って、なぜ都市伝説に……。カピバラ好きな人達が集って、噂でもしていたんでしょうか?」
不思議そうに首を傾げ、契葉・刹那(響震者・d15537)が疑問を口にした。
だが、頭がパカッと割れて触手が出てきた時点で、それはカピバラではなくクリオネである。
「一体、どういう経由で噂になったんだろうね。いや、耳にしたボクがいうものなんだけど」
苦笑いを浮かべながら、如月・陽菜(蒼穹を照らす太陽娘・d07083)が答えを返す。
陽菜も噂を耳にしただけであって、噂を流した張本人ではない。
故に、どういった経緯を経て都市伝説になったのか分からないが、流れ的には『カピバラって可愛いよね』、『可愛いといえば、クリオネ。知ってる? あれって捕食する時に頭がパカッねと割れるんだよ~』、『だったら、カピバラも何か食べる時に……』という感じだったのかも知れない。
「まあ、可愛い姿で獲物を引き寄せて捕食するのは自然界ではごくありきたりなんだがな。人の世にそれを持ち込まれても困る。しかも相手は自然界の生物じゃなくて都市伝説だし。さて、性質の悪い害獣退治と洒落込もうか」
険しい表情を浮かべながら、緋神・討真(黒翼咆哮・d03253)が都市伝説を捜す。
その途端、どこからか『可愛い~』と女の子達が騒いでいる声が聞こえ、小動物と思しき何かが『ぷきゅー』と鳴いた。
「なんだ、あの鳴き声は……」
あからさまに警戒しつつ、斎場・不志彦(燻り狂う太陽・d14524)が現場に急ぐ。
現場には制服姿の女の子達がおり、カピバラと思しき小動物の頭を撫でていた。
しかし、実際のカピバラとは異なり、可愛らしさだけを抽出しており、円らな瞳をきゅるるんとさせていた。
「……カピバラ? いいや、都市伝説だね。灼滅する理由としては十分すぎるな」
少しずつ間合いを取りながら、江良手・八重華(コープスラダーメイカー・d00337)が都市伝説に視線を送る。
都市伝説は『これでもか!』とばかりに愛嬌を振り撒いており、女の子達が『可愛い~』と言って頭を撫でていた。
「いくら可愛くても、敵は敵だ。どんな外見であろうと、非難されようと、俺は躊躇わず斬るだけだ」
そう言って上條・和麻(黒炎宿りし二刀流・d03212)が都市伝説によ近づいていく。
だが、女の子達を先に避難させておかねば、彼女達に危険が及ぶ可能性が高かった。
●女の子達
「それにしても、なにあれ、予想以上に可愛い」
女の子達に抱かれる都市伝説と目が合い、陽菜が攻撃をする事を躊躇った。
思わず抱きしめたくなるほどの可愛らしさ。
宝石のようにキラキラとした瞳が、陽菜の心をグッと掴む。
こんなに可愛らしい存在に傷をつける事など、ましてや敵意を向ける事など有り得ない事であった。
「確かに、これは……やりづらいね」
思わず後ずさりながら、斗摩がダラリと汗を流す。
この状況で攻撃を仕掛ける事が出来るのは、生まれたての雛を素手で握り潰せるほどの卑劣漢くらい。
「可愛かろうとなんだろうと、俺の前に立ちふさがる敵は叩き潰す」
そんな中、討真は怯む事なく、都市伝説に迫っていく。
それに気づいた女の子達が『やめなよっ!』、『暴力反対!』、『人間の皮を被った悪魔!』と討真を罵り、都市伝説を必死になって庇う。
都市伝説もこの状況ならば猫を被っていた方がいいと判断したのか、体を小刻みに震わせて怯えているように見せた。
「そ、そんな顔をしたって駄目ですよ。こっちだって灼滅者、やってるんですから」
覚悟を決めた様子で都市伝説を睨みつけ、刹那がジリジリと距離を縮めていく。
それと同時に女の子達の警戒心が増していき、刹那達に対して鋭い敵意が向けられた。
だが、都市伝説の方が限界に達したのか、頭をパカッと開けて触手を伸ばしてきた。
「今のうちに逃げろ!」
八重華が捨て身の覚悟で、都市伝説に体当たりを食らわせた。
それに合わせて、斗摩が殺界形成を発動させる。
「えっ? なに、どうなっているの!?」
しかし、女の子達がパニックに陥っているせいで、身動きが取れなくなっていた。
「このままパニくられても面倒だな」
すぐさま魂鎮めの風を使い、不志彦が女の子達を眠らせた。
だが、都市伝説の触手は眠りについた女の子達めがけて伸びていく。
「それ以上はさせませんよ。大人しくして下さいね」
都市伝説の行く手を阻むようにして、ユニスが女の子達を守るようにして陣取った。
次の瞬間、都市伝説の触手がユニスの体に両手両足に絡みつき、八つ当たり気味に締め付けていった。
「本性を現したのが運の尽き。正体を現した以上、無傷で済むと思うなよ」
そう言って和麻が都市伝説の触手めがけて黒死斬を放つ。
その一撃を食らって都市伝説の触手が切断され、大量の血を流して頭の中に潜っていった。
●都市伝説
(「……いくら可愛くても、都市伝説である以上、敵なんだから……頑張れ、ボク」)
陽菜は戦っている最中も、そう自分自身に言い聞かせて間合いを取っていた。
相手が都市伝説である以上、どんな姿をしていたとしても、倒さなければならない。
でも、可愛い。可愛すぎる。まるで天使。天から舞い降りた死者。
こんな可愛らしさの結晶体のような存在を攻撃……いや、傷ひとつだってつけられない!
すでに心を鷲掴み。がっちり心を奪われているのだから、都市伝説に対して敵意を向ける事など出来なかった。
「ひっ、こ、こっちに来ないで~! わ、私、美味しくないですよぉ~!」
その間も都市伝説はきゅるるんとした瞳で刹那を見つめていた。
本物のカピバラを知らない刹那にとっては、何もかもがショックであった。
あんなに可愛らしくてもふもふしているのに、頭がパカッと割れるなんて……。
もしかしたら、本物のカピバラも頭がパカッと割れて……と考えたところで、気分が悪くなってきた。
「……やるしかありませんね」
一気に間合いを詰めながら、ユニスがフォースブレイクを仕掛ける。
それと同時に都市伝説の頭がパカッと割れ、無数の触手が伸びてきた。
「アッハッハッハ。それじゃ、ウェルダンで行くか」
高笑いを響かせながら、ユニスが都市伝説の頭めがけて、ブレイジングバーストを撃ち込んだ。
次の瞬間、都市伝説が信じられない様子で悲鳴を上げた。
都市伝説にとって、頭の中は弱点。一番敏感な部分。故にどんな事があっても、攻撃される事など、ましてや攻撃が命中する事など、あってはならない事だった。
だが、今までであれば、そんな事など有り得なかった。
こんなに可愛くて、ぎゅっと抱きしめたいはずなのに……。
目の前の敵は全く躊躇う事なく、しかも一番敏感な部分を狙ってきた。
「例え外見が如何に可愛かろうと、俺は本質しか見ない。悪意や敵意を持ってる時点でお前はアウトだ」
そう言って討真が閃光百裂拳を叩き込む。
その一撃を食らった都市伝説が悔しそうに歯軋りをした。
「見た目にどれだけ愛嬌があろうが、都市伝説という一点だけで撃ちぬくには十分な理由だ」
続いて八重華がバスタービームを放ち、都市伝説にダメージを与えていく。
そのため、都市伝説は頭をパカッと開こうとしたが、続けざまに攻撃を食らったせいか、ほんの少ししか開かない。
「そんなに開きたいのなら……、開いてやる」
それと同時に和麻が居合斬りを放ち、都市伝説の体を切り裂いた。
その途端、無数の触手が和麻の体に纏わりついてきたが、都市伝説の消滅と共に跡形もなく消え去った。
「いやあ、終わった、終わった。それにしても……あんまり思い出したくない光景だったね。こう……、カパァって……。あー、思い出したら嫌な気分になってきた」
都市伝説が消滅した事を確認した後、斗摩が青ざめた表情を浮かべて口元を押さえる。
「……けど、本当可愛かったなぁ、うちで飼えないかなー」
そう言って、陽菜が残念そうに溜息をもらす。
未だに目を閉じれば、都市伝説のふわふわした体と、円らな瞳が浮かんでくる。
それは実際のカピバラと似て非なるモノだが、抱きしめたいほど可愛らしかった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年4月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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