幸福な悪夢~夢に惑う滅紫の影法師~

    作者:日向環


    「さあ、本番だ!」
     因幡・雪之丞(青春ニトロ・d00328)と稲峰・湊(手堅き領域・d03811)が、ベッドで眠り続けている少女・すみれの体にそっと触れる。すみれの精神世界にアクセスし、夢の扉を開く。
    「この子の夢か……」
     どんな夢なのだろうかと、文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076)は再度思いを巡らせる。彼女の部屋を眺め見るかぎりでは、彼女の見ている夢は想像すらできない。
    「頑張らないとね!」
     ルリ・リュミエール(バースデイ・d08863)がそう言うと、風雅・晶(陰陽交叉・d00066)は肯く。
    「次こそは、必ずシャドウを灼滅しましょう」
    「ああ。次は引き分けは狙わない。必ず勝つ」
     気合い充分といった感じで、神園・和真(カゲホウシ・d11174)は少女の顔に視線を落とした。
    「腕が鳴るぜ!」
     梅澤・大文字(手乗り番長・d02284) はマントをバサリと広げた。
    「ええ。次を勝たねば、意味がありません」
     タキシードの襟元を正し、土岐野・有人(ブルームライダー・d05821)は言った。
     扉が開かれる。
     8人の精神は、すれのソウルボードへと吸い込まれていった。
     

     目の前に広がる街並みには、不審な点はいっさい見受けられなかった。
     現実と変わらない日常が、ここにはあった。
     ここが夢の中であるという事前知識がなければ、現実だと信じて疑うことはなかっただろう。
     すみれは脚光を浴びていた。
     彼女はフィギュアスケートの選手だったらしい。それもペアの。
     パートナーは2つ年上の男子で、すみれのあこがれの先輩でもあった。
     だが、すみれにはライバルがいた。同じ歳の女の子だ。
    「あなたには、彼のパートナーになる資格は無いわ」
     ライバルの女の子は才能も有り、家庭も裕福だった。対してすみれは、フィギュアスケートの経験も彼女より浅く、家庭も決して裕福だとは言えなかった。
     あこがれの先輩は、財界の御曹司でもある。
    「あなたでは釣り合いが取れない」
     すみれへの風当たりは、とても強かった。しかし、すみれはめげなかった。実力でライバルを上回れば、彼はきっと自分をパートナーに選んでくれるはず。
     すみれは人一倍努力し、ライバルとの勝負に勝利することになる。
     晴れて、あこがれの先輩にパートナーとして認めてもらったすみれは、ライバルだった少女からも祝福され、フィギュアスケートのペアで世界一になるべく、歩み始めることとなる。
     

    「なんというか。コテコテの少女漫画風の夢だな、こりゃ」
     見てるこっちが恥ずかしいと、雪之丞は後頭部をボリボリと掻いた。
    「この世界が夢の世界であると彼女に認識させることが出来れば、悪夢から覚まさせることが出来るってわけだよな」
     咲哉は顎を撫でた。
    「おい。これ、もしかしてシャドウと戦うより難しくねぇか?」
     大文字が眉間に皺を刻むと、晶も大きく肩を竦めた。
    「説得を開始すれば、当然、シャドウの邪魔が入るはずだから、シャドウを撃退することになるのは間違いないと思うが、まずは、どう説得するかだな」
     和真は小さく唸った。すみれにこれが夢であることを認識させる必要があるのだが、どうすれば彼女にこれが夢であると分からせることがてぎるか、皆目見当も付かない。
    「いっそのこと、ボクらのサイキックを見せちゃうとかね~っ!」
    「特撮ヒーローみたいに、思いっきり派手なやつとか!」
     湊とルリがとんでもないことを口走っている。
    「案外、それも手かもしれませんよ? だけど、その場合は慎重にやらないといけません」
     良い案だと有人が肯いた。しかし、問題もある。すみれが灼滅者は敵だと思ってしまうと、シャドウに力を与えてしまうかもしれない。
    「何にせよ、シャドウさえ倒しちまえばいいんだろ?」
    「少々手荒ですが、説得が上手くいかなかった場合は強引な方法を取るしかないでしょうね。願わくば、彼女自身の力で、目覚めて欲しいところですが」
     晶は言った。
    「取り敢えず、方針を決めよう」
     咲哉の言葉に、皆は肯いた。


    参加者
    風雅・晶(陰陽交叉・d00066)
    因幡・雪之丞(青春ニトロ・d00328)
    梅澤・大文字(手乗り番長・d02284)
    稲峰・湊(手堅き領域・d03811)
    文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076)
    土岐野・有人(ブルームライダー・d05821)
    ルリ・リュミエール(バースデイ・d08863)
    神園・和真(カゲホウシ・d11174)

    ■リプレイ


    「で、どうするよ?」
     困惑したような顔つきのまま、文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076)は仲間達に問うた。
    「おれ漢だからスポ魂少女漫画なんて読んだこと無ぇぞ」
     梅澤・大文字(手乗り番長・d02284)が、頭を抱えて座り込んでしまった。
    「…安心しろ、俺も読んだ事は無い。要はノリだノリ」
     きりっと表情を引き締める咲哉。
     あれやこれやと案を出し合うが、なかなか方針が決まらない。
    「今回の説得のポイントは『夢の世界』の肯定ではなく、彼女の『願望』への理解じゃないかなと思うです」
     鶴の一声。ルリ・リュミエール(バースデイ・d08863)は紅一点。女の子の気持ちは、女の子に聞くが一番。
    「すみれちゃんは恋に恋するお年頃で『少女漫画のような恋をしたい』のではないかなと、ルリは思うです」
     ルリの意見に、男性陣の間から「おお!」という声が上がる。
    「なるほど、ルリさんの意見は的を射てそうだね」
     神園・和真(カゲホウシ・d11174)が顎を撫でた。
    「すげぇ、その発想は全然なかったわ…!」
     感心したように、因幡・雪之丞(青春ニトロ・d00328)は掌を拳でポンと叩いた。
     ルリの考えでは、すみれは純情そうなので、熱烈な愛の告白をして自分に好意を向けてくれる人を敵とは認識しないのではということだった。男性陣全員で、すみれに熱烈な愛の告白アタックをぶちかませというのである。
    「こ、こ、告白ッ!」
     大文字が目を丸くしている。
    「皆で告白タイムかー」
     ちょっと気乗りしないけど、という感じで、稲峰・湊(手堅き領域・d03811)は他の男性陣の反応を伺う。
    「こ、告白か…演技とはいえ、少し気が引けるけど、が、頑張るよ」
     和真は納得したらしい。
    「タイプの違うイケメン7人に同時に愛の告白とかされるのは現実離れしてますので、夢の世界であると認識させるのも可能かと思ったりしますです」
     ルリは言い切った。
    「告白、ですか。気は進みませんが、演技と人助けの為と割り切って頑張りましょう。とりあえず、事前に彼女に断っておかないと」
     任務の為にはやむを得ぬと、風雅・晶(陰陽交叉・d00066)は承諾した。
    「俺も彼女に断りを入れておこう…」
     神妙な顔で雪之丞は肯いたが、心無しが口元が緩んでいるようにも見える。この男、実はノリノリのようだ。
     だが諸君。ここはもうすみれの夢の中。今から彼女に断りを入れに行くなどという真似はできないということをお忘れか?
    「うっ! お、おれだって断りを入れ…る相手が居な…」
     大文字の声が、どんどんの萎んでいく。その隣で、土岐野・有人(ブルームライダー・d05821)は、タキシードの身なりを整え始めた。どうやら、その気になっているようだ。
    「7人? 8人じゃないのか、ルリは貴重なゆり枠だろ?」
     ニヤリと笑い、咲哉が視線をルリへ流す。ゆり枠のルリ。つまり、ルリゆり。
    「ゆり枠…」
     何事かを妄想し、大文字がゴクリと喉を鳴らした。
    「タイが、曲がっていてよ。お姉さま…ポッ」
     あ、なんか変なスイッチが入っちゃった。


     るんるん気分ですみれが自宅に帰ってきた。
     鼻歌交じりにスキップなど踏んでいる。
    「たっだい…ま?」
    「すみれさん、憧れの先輩とのペア決定おめでとうございます!」
     先ずは先陣を切って、ルリがすみれに声を掛ける。女の子には女の子を。無難な選択だ。
    「ルリは努力を重ねる、そのお姿に感銘をうけました! …あの、お姉さまって呼んでもいいですか?」
     ポッと頬を赤らめてみせるルリ。熱っぽい視線をすみれに向けてみる。ついでにラブフェロモンも全開だ。
    「お、お姉さま…。ちょっといいかも」
     悪い気はしないようだ。天に向けられた彼女の視線の先には、何やら怪しい妄想が映像化されているらしい。一人で勝手に身悶えている。やばいスイッチに触れちゃったかもしんない。
    「そうだ! お姉さまに紹介したい方々がいるのです! お姉さまを守るために世界を超えてきたナイト達です!」
     じゃじゃーん! と効果音付きで、7人のイケメンが、陽の光を浴びながら歩み寄ってくる。しかも横一列に綺麗に並び、歩調まで合わせている。完璧だ。
    「あわっ。あわわ…」
     すみれは完全に腰が引けてしまっている。
     確かに、いきなり見ず知らずの男の子が集団で出現すれば、女の子なら困惑してしまって当然だ。
    「お! キミが噂の美少女フィギュアスケーターすみれちゃんか!」
     だが、すみれが悲鳴を上げる間も与えず、雪之丞が爽やかな笑顔で声を掛けた。
    「キミが噂のシンデレラかい?」
     咲哉が続き、
    「初めまして、お嬢さん」
     相手を怖がらせてはいけないと、有人が優雅な立ち居振る舞いですみれに接する。その姿はまるで、白馬の王子様だ。
    「君があのすみれちゃんだね? 俺は神園・和真って言うんだ。あのターンの瞬間、君のあの姿に、俺の心が奪われてしまったよ」
     和真はすみれの手を握り、彼女の顔を覗き込んだ。
    「あああ、あのっ…」
    「もう、皆我先にって慌て過ぎだよっ!」
     すみれが引き気味だったので、湊が機転を利かせた。群がる男共を軽くいなすと、
    「初めましてっ! 貴女の噂を聞いて駆けつけた稲峰湊って言います」
     ペコリと一礼をすると、エイティーンを発動させて頭をあげた。顔立ちにあどけなさを宿した13歳の少年は、キラキラ光りながら18歳の美男子へと変貌した。
    「宜しければ、フィギュアスケートについてお話を聞かせてもらえないでしょうか」
     紳士的に一礼する湊。
    「ちょっ。こ、こいつ…」
     雪之丞の笑顔が、ちょっとヒクヒクしている。
    「末恐ろしいやつ…」
     咲哉がボソリと呟いた。湊は成長すると超イケメンだった。
    「ええと…。わたし、モテモテ?」
     7人のイケメンから立て続けにラブコールを受けたすみれは、なんかすっかりその気になっていた。どうやら、ルリの読みは正しかったようだ。
     そう。すみれの部屋には、スケートに関するものは一切なかった。なので、すみれの夢はスケートで世界一になるとかそんなことではなく、少女漫画のような乙女チックな恋を夢見る女の子だったのだ。
    「…でもあなた、本気じゃないですね?」
     すみれが晶をビシッと指差した。恋に恋する女の子は、とても鋭い。晶が彼女に対して抱いている後ろめたさを、敏感に感じ取ってしまったらしい。
    「そ、そんなことはありません」
     慌てて取り繕う晶。演技だ演技と、心の中で呪文のように繰り返し、すみれの気を引こうと画策する。我が姉なら、猫の着ぐるみのままでクワドラブルでもキメながら愛の告白をするのだろうが、さすがにそこまでは悪ノリできない。晶は実直なのだ。
    「…なるほど眠れる才能の持ち主って訳か、あいつが惚れたのも頷けるな」
     咲哉が何やら意味深な言葉を口走る。そういえば、この人の弟君も確か着ぐるみマニアである。
    「やっぱアレ? ペアだと、相方の男に惚れちゃったりするの?」
     雪之丞だ。
    「い、いえそういうわけじゃ…」
    「おっし、まだ俺にも目があるとみた!」
     脈あり。ならば畳み掛けるのみ。ダイナマイトモードを発動させ、すみれの注意を惹く。
    「その先輩がいるっつーのに、モテモテよね、すみれちゃん。いや俺がいうのもなんだけどさ!」
    「あ、いえ、そのぅ」
    「俺、因幡雪之丞。みんなからはジョーって呼ばれてる。だから、キミもそう呼んでくれると嬉しいなっ!」
     愛しの彼女のことなんか完全にうっちゃって、雪之丞は立て板に水状態で畳み掛ける。何度も言うようだが、この男ノリノリである。
    「見よ! 漢・梅澤の華麗なスピンをっっっ」
     大文字は跳躍し、超高速で体を回転させ始めた。
    「スパイラルジェイド! トリプルアクセルの100倍高難度!」
     着地も見事だ。大方の予想に反して、全くバランスを崩していない。
    「ここでコケるのがお約束じゃないのか!?」
    「こんなの大文字じゃない!」
     非難轟々だが、大文字は聞いちゃいない。
    「超高校級スケーター、漢・梅澤がキミを迎えに来たぜ! ナントカ先輩じゃおれに叶わねぇぜ! 世界を目指すならおれと組むべき!」
     祖父の形見のマントを翻し、爽やかに微笑した。
    「あ、あなたは…!?」
     ガーン!! という効果音が聞こえるくらい、すみれは激しく仰け反って驚く。
    「で、伝説の下駄スケーター!?」


     言われた大文字本人が、呆気に取られてしまっている。確かに、下駄のまま回転した。いついかなる時も、下駄を脱ぐことは許されない。だからといって、突然伝説の人物にされてもリアクションに困る。
    「そうなんだよ。そうだって言っとけ!」
     周囲が慌てて耳打ちしてきた。ここはすみれの妄想に付き合うべき場面だ。
    「そ、そうだ。俺がその伝説の下駄ナントカだ!」
     こうなったらヤケである。
    「やっぱり!」
     すみれが瞳をキラキラさせている。尊敬の眼差しだ。
    「おい大文字、抜け駆けすんなよー!」
     雪之丞が大文字肩を掴んだ。
    「すみれは俺のもんだ、手を出そうなんざいい度胸じゃないか」
     咲哉が雪之丞を押し退け、すみれと大文字の間に割って入る。
    「あのっ。あのっ」
    「君は素敵だね」
     困惑しているすみれの手を握ると、再び爽やかスマイルを発動させた。思わず、すみれの頬も赤く染まる。
    「誰を選びますか、すみれさん」
     有人はあくまでも優しく、すみれに問い掛けた。
    「えっと、えっと」
     憧れの先輩のことは、完全にどこかに行ってしまっている。すみれは目の前の展開に酔いしれているようだ。
    「フッ誰を選ぶか迷っているな! お勧めはこの漢・梅澤だが!」
     大文字が咲哉を押し退け、ずいとすみれに歩み寄る。
    「おれに着いて来るならココにぁ居られねぇな。本物の金メダルはココには無ぇからさ」
     フッ。キマったな。大文字は学生帽の鍔を下げ、口元に笑みを浮かべた。
    「どう? この展開、女の子としちゃ夢のようじゃない?」
     そろそろ次のフェイズに移る頃合いだ。雪之丞が話の舵を取る。
    「なんてね。夢の中なら絶対無敵だけどさ。でもそんなチートで、済ませていいほど軽い気持ちじゃないだろ?」
    「確かに、夢みたいな展開ですけど…」
    「夢のような話、それが本当にただの夢だったらどうしますか?」
    「え?」
     晶の言葉に、すみれは困惑したような表情を浮かべた。
    「さぁ、そろそろ夢から覚める時ですよ」
     有人はカードから箒を取り出すと、宙に浮いてみせた。すみれの目が驚きに見開かれた。
    「あなたたちは、本当は何者なんですか?」
    「美しい貴女を夢の魔物から守りに来た、魔法使いです」
     純白のタキシードの胸元から青いバラを引き抜くと、有人はすみれに手渡した。
    「ふふ、人は夢の中であればどんな事だって出来てしまうのですよ」
     湊は元の姿に戻ってみせてから、もう一度エイティーンを発動させた。
    「夢の中?」
    「お姫様、目覚めに王子のキスは必要かい?」
     茶目っ気たっぷりに咲哉はそう口にすると、すみれをお姫様抱っこして跳躍した。
    「え!?」
     民家の屋根から屋根へ、咲哉は重力を無視して飛び移る。エアライドだ。
     ひとしきり空中散歩をすると、咲哉は仲間達の元へと戻る。
    「夢ならこれぐらい普通だろ?」
     すみれを降ろし、ニッと笑みを浮かべた。
    「ココは夢の中。おれ…おれ達は夢の外からキミを迎えに来た。キミの望み通りにしか動かねえあの先輩はキミを幸せにぁ出来ねぇ。目を覚ませ。おれ達と一緒に行こう」
    「この世界が夢でも嘆くことはありません。私達が出会ったことは夢ではなく真実なのですから。ご自身を誇りに思ってください。全員がお姉さまのためにここにいるのですから!」
     大文字に続いて、ルリが言葉を投げ掛ける。自分達は、あなたを救いに来たのだと。
    「私たちが生きるべきは夢の中ではなく現実なのです。思い通りに行かず、辛いと思うことがあっても。だって、誰かと関係を築けるのは、現実だけなのですから」
     晶が優しく笑む。
    「すみれちゃん、これは夢なんだ、現実の君は、まだそこまでたどり着いていないんだ」
    「夢? これは夢なの?」
     本人も薄々おかしいと感じ始めていたのだろう。夢だと断定されても、拒絶するようなことはなかった。
    「俺たちは君を夢の世界から救い出しに来たんだ。一緒に君を夢の世界に閉じ込めた悪いやつを倒して外に出よう」
    「悪いやつ?」
     すみれが首を傾げた瞬間、晶が二刀の小太刀を構えた。
    「出たな影法師野郎、今回はきっちり倒させて貰うぜ」
     咲哉は【十六夜】を手にすると、ニヤリと笑んだ。


    「な、なにこれ?」
     すみれが驚愕している。有人が彼女の手を引き、安全な位置まで待避させた。ルリと協力し、すみれを背後に匿う。
    「さあ、第二ラウンドの始まりだよっ!」
     湊は元の姿に戻ると戦闘態勢を取った。
     現実世界では、あと一歩のところまで追い詰めた。弱体化しているはずの夢の中で、負ける要素は何も無い。
     説得が功を奏し、滅紫の影法師は配下を率いていない。完全に灼滅者達のペースだ。
    「人様の恋路に嘴突っ込むんじゃねぇよ! 馬の代打で仕置くぜ!」
    「この業炎番長、漢・梅澤が贋物の幸せなんざ灰燼に帰してくれる!」
     雪之丞、大文字、そして咲哉の息の合ったコンビネーション攻撃が炸裂した。
    「シャドウ、お前は何も分かっていないな…。確かに、夢の世界は、心地が良くて、一見すると最高の世界に思える」
     3人の攻撃の間を縫って、和真はシャドウの死角に回り込む。
    「だけど、この世界には未来がない、この世界を構成しているのは、あの子の記憶と、お前の知識か? それを繰り返していっても、いずれは限界が来る」
     4つの武器が音もなくシャドウに迫る。
    「教えてやるよ。夢には限界があっても、現実には限界がないってことをな!」
     激痛に、声なき声を上げるシャドウ。
     スペードのマークを出現させるが、晶がそれを粉砕する。晶に完全に見切られていた。
     滅紫の影法師は為す術もない。
     苦し紛れにもう一度スペードマークを出すが、晶が再度打ち砕いた。
     次々と繰り出される攻撃に抗う力は無く、最後は8人の集中砲火を食らって消滅した。
    「今度は、現実世界で夢を叶えてくださいね」
     シャドウの消滅を確認した有人は、背後のすみれに振り返った。
    「予行演習はここまで、夢の続きは現実世界でのお楽しみだ」
     咲哉が笑顔で語り掛けた。
    「幸せって相対的なものだよなあ。言わば不幸せが幸せを作ってるワケで、幸せばっかじゃ結局何も満たされないと思う」
    「すみれちゃんは、目標に向かって努力ができる人ということ。普通の人なら努力せずに結果を得る夢を見る。でも、夢の中なのに努力を続けたすみれちゃんはスゴイと思う」
     大文字が、ルリが、優しく声を掛けた。
     だから、現実世界に戻っても大丈夫だと。
    「戻ろう。現実の世界へ」
     晶が、和真が、雪之丞が、湊が、ゆっくりと手を差し伸べる。
    「はい」
     すみれは大きく肯いた。

    作者:日向環 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年5月1日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 1
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ