幸福な悪夢~ウタウタイのセカイ

    作者:陵かなめ

     10分耐え、シャドウを退けることに成功した。
     灼滅者達は、再びソウルアクセスを試みる。
    「良いな、行くぞ」
     夜兎の確認する言葉。その場に居た仲間は、皆しっかりと頷いた。
    「しっかりと助けてあげるのだわ」
     乙女は気遣うように、そっと眠る少女を覗きこんだ。
    「きっと、なんとかなるよね?」
     麒麟の言葉に、カイが笑顔を見せる。
    「まあ、なんとかするしかないしな」
    「……ああ、その通りだ」
     桐人も、頷いた。
    「さ、さっさと追いかけるぜ」
     弥生の横で、雅も頷く。
    「そうね。あんな可愛くないもの、ほんっとにダメだわ」
     その言葉に、くすり、と采が笑う。
    「もしかしたら、夢の中ではそら美しい姿になってるやもしれへんよ」
    「それはそれで、嫌だわ」
     ともあれ、仲間達は夢の中へ旅立った。

     詩心は最近少し落ち込んでいた。コーラス部の先輩から、音程が変だと指摘を受けたのだ。それに、コーラスには向いていないとも。
     だが、それも昨日までの話。
    「ららら、ららら~」
     歌い終わった詩心に、部活の仲間が駆け寄る。
    「素晴らしいわ、詩心さん。透き通るような声、完璧な音程」
    「貴方がいなければ、この部は成り立たないと思うの」
     自分を称賛する仲間の声に、思わず笑顔が溢れる。
    「ありがとう、私……、頑張ってよかった!」
     コーラスのパートを決めるこの日のために、詩心は毎日好きな曲を口ずさんで練習してきた。
     その成果が、こんなにもはっきり現れるなんて、夢のようだ。
    「詩心さん、先日は厳しいことを言ってしまってごめんなさい」
     詩心に苦言を呈した先輩は、心底申し訳なさそうに頭を下げた。
    「是非、貴方にソロパートを歌って欲しいの。貴方こそ、この部の中心となるべきだと思うわ」
    「ありがとうございます、先輩……!」
     あの厳しい先輩までも、詩心を絶賛する。
     皆の暖かい目が、詩心には心地よかった。

    「あの詩心ちゃんに、ここが夢だって気付かせるんだよね?」
     輝くような笑顔の詩心を見ながら、麒麟が言った。
    「まあ、当然シャドウの邪魔は入るだろうがな。まずは、どう説得するかだ」
     夜兎の言葉に、皆顔を見合わせる。
    「最悪、……サイキックを見せれば、夢だと分かるとは、思うが」
     桐人の言葉に、采が続ける。
    「まあ、灼滅者が敵や思うたら、シャドウに力を与えてしまうやろね」
    「それも合わせて、シャドウを倒せば、問題は解決するんだがな」
     弥生も腕を組み考える。
    「うーん。できれば、詩心が自分から目覚めようと頑張ってほしいかな」
     カイの言葉に、乙女も同意した。
    「乙女もそう思うですことよ」
    「そうねぇ。とにかく、どうするのがいいのか、考えてみましょ」
     雅の言葉に、皆頷いた。


    参加者
    千布里・采(夜藍空・d00110)
    伊丹・弥生(ワイルドカード・d00710)
    浅葱・カイ(高校生ダンピール・d01956)
    逆霧・夜兎(深闇・d02876)
    結城・桐人(静かなる律動・d03367)
    大祓凶神・乙女(剣の花嫁・d05608)
    花京院・雅(宵闇の道化師・d08941)
    天瀬・麒麟(中学生サウンドソルジャー・d14035)

    ■リプレイ

    ●楽しいセカイ
     楽しげな歌声が部室に響く。詩心の所属するコーラス部に他校から交流に来た、と言う体で灼滅者達がコーラスに参加しているのだ。
     今は好きなグループに分かれ、思い思いの曲を練習しているところ。
     大きな声で思いのままに歌いながら、大祓凶神・乙女(剣の花嫁・d05608)は詩心と微笑みあった。
    「大きな声を出すのは楽しいですだわね?」
     乙女の言葉に、詩心がにこやかに頷く。
    「うん。歌うのって、ほんとうに楽しい」
     何曲か一緒に歌い合っているうちに、随分打ち解けたと思う。まずは楽しい気持ちを共有できること。そう考えた乙女は、詩心に受け入れられているように見えた。
    「歌、すごいね、それに詩心さんは楽しそう、歌うの楽しい?」
     一緒の輪に居た天瀬・麒麟(中学生サウンドソルジャー・d14035)も、詩心に話しかける。
    「うふふ。歌っていると、気持ちが晴れやかにならない? 楽しいし、嬉しい。それに、皆も褒めてくれるもの!」
     詩心が両手を広げると、部員達から拍手が沸き上がった。
    「みんなが詩心さんを褒めてる……。詩心さんは歌うのが好き? それとも褒められるのが好き?」
    「え……?」
     麒麟の言葉に詩心が言葉をつまらせる。
     そこに、近くから逆霧・夜兎(深闇・d02876)が話しかけた。
    「透き通るような声、完璧な音程、一体どれ程の努力をしたんだい?」
    「それほどでも……。毎日、歌を口ずさみながら、お風呂に入ったり……」
     謙遜しながらも、詩心は微笑みを崩さずすらすらと答える。
     毎日好きなように鼻歌を歌って風呂に入るだけで、完璧な音程が手に入ったというのが、すでに不自然なのだが。
    「誰よりも必死で努力したんだろ?」
    「え、必死……? うーん」
     夜兎の言葉に、詩心は不思議そうに首を傾げた。
    「今度はコーラスの定番曲をやりたいんだけど、どう?」
     その時、浅葱・カイ(高校生ダンピール・d01956)がにこやかに現れた。
    「え、うん。じゃあ、一緒に。ええと、楽譜はどこだったかな……?」
     若干心許なげに、詩心がきょろきょろとあたりを見回す。
    「あら、混ぜてもらおうかしら? きちんとコーラスになったほうがいいじゃない」
     そこへ、花京院・雅(宵闇の道化師・d08941)と結城・桐人(静かなる律動・d03367)、千布里・采(夜藍空・d00110)もやってきた。
    「せっかくの機会だ……、俺は……詩心と、ユニゾン希望なのだが……」
    「ユニゾン? うん。面白そう!」
     桐人の提案に、詩心がはしゃぐように頷く。
     一同は、いそいそとピアノの近くへ集まった。
    「ピアノ担当の人が風邪ひかはったし代理や」
     言い、采が伴奏をかってでる。
     その様子を、伊丹・弥生(ワイルドカード・d00710)がコーラス部の見学者と言う雰囲気で眺めていた。

    ●不自然とズレ
    「曲は……これか……」
     出てきた楽譜を見ながら、桐人が言葉を切る。
     その曲は、初歩の練習曲として使われる有名な曲だった。だが明らかに譜面がおかしい。詩心の歌うソプラノが、すべて主旋律なのだ。ソプラノが主旋律を歌うのは一般的だが、この曲に限って言えばすべてが主旋律というのは不自然だ。
     楽譜の不自然さに気づいた桐人は、そっと雅の様子を見た。
     当然、雅も気がついている。
    「ねぇ、この楽譜ちょっとおかしくない?」
    「うーん。確かに、これってこんな感じだったっけ?」
     雅とカイが、やんわりと不自然さを指摘した。
    「そう、かな……? でも、これで歌えるんじゃない? 歌いましょう!」
     あくまでも前向きな詩心に、今は合わせることにする。
     詩心と桐人がオクターブ違いのユニゾンをし、カイと雅がそれぞれ声に合ったパートに入る。
     曲はゆっくりとスローテンポで始まった。
     単純明快なリズムと歌詞。主旋律は誰でも聞いたことがある。
     だがそれだけに、適当に歌うとすぐにボロが出る。案の定、詩心の歌声がリズムからも音程からもズレはじめた。
     丁度詩心のソロパートが終わった所で、弥生が拍手を入れた。
    「随分気持よく歌うんだな。こちらも楽しくなるよ」
    「あ、ありがとう」
     夢の中で褒められ慣れたのか、詩心は当然のようにニコリと微笑む。
     弥生は言葉を選びながら、ついに詩心に指摘した。
    「だが、まだ一息足りないな。本当に君はそれで満足かい?」
    「え?」
     心底驚いたように、詩心は声を漏らした。
    「以前に言われた先輩の苦言に対して君は思うことはなかったかな?」
    「え、えぇ? あの、だから私、頑張って練習して……」
     しどろもどろで、訴える。
    「うーん……詩心ちゃん、ちょっと皆と合っていないような……」
     だが、雅も詩心のズレを口にした。
    「そう……だな。合唱として、合っているとは……言いがたい」
     桐人も、極力優しくそのことを告げる。
    「……」
     二人の言葉は決して責めるようなものではなかったが、詩心は今度こそ絶句した。
     詩心は助けを求めるように周囲を見る。けれど、そこに居たのは賛辞を繰り返す部員ではなく、他校のコーラス部を名乗る生徒達だった。
    「なぁ……その歌声は、本当にお前の歌声なのか?」
     夜兎の問いかけ。
    「……薄々気づいてはるんやろ? その声、自分のやと自信持って言えはる?」
     いつの間にかピアノから手を離し、采が立ち上がった。
     自分のズレを指摘され、詩心はうろたえる。
    「そ、そんな……。私は……、私は、練習して、上手になって……」
    「そろそろ気づいたらどうだ?」
     夜兎の言葉に、詩心がビクリと反応した。
     簡単な努力で完璧な声が手に入ったこと、楽譜のこと、指摘されるたび分からないふりをした。
     けれど……。
     詩心が狼狽するたび、セカイが歪んだ。うっすらと消えていく周囲の情景。
    「そろそろおかしいって気付いてくれた? アタシ達、貴女を起こしにきたの」
     雅の言葉に、詩心が目を見開く。
    「そう。ここは、夢の中。そろそろ起きない?」
     詩心だけに優しい不自然な楽譜。すでにそれが現実的ではない。カイの指摘に、一層辺りの情景が消えていく。
    「起きて一緒に歌うですことよ」
     いつの間にか乙女も、説得の輪に加わる。
    「目ぇ覚まし。迎えに来たんや」
     重ねて、采も詩心に訴えた。
    「褒めて貰うのが楽しいなら、ずっとここにいれば良いよ、……でも、それじゃあ詩心さんの歌は誰にも聞いてもらえないね、ここは詩心さんの夢の中だから……」
     最後に麒麟の言葉を聞いて、詩心が混乱したように皆から一歩離れた。
    「だ、だったら……。夢だったら、私は……、私、一体……?」
     周囲の情景が一変する。もはやココは暖かいコーラス部の部室ではない。
     詩心は自分が夢の中にいるのかもしれないと、理解したのだ。
     しかし、それだけでは。詩心からのきちんとした信頼を得なければ、シャドウに力を与えてしまう。
     警戒した表情の詩心は、灼滅者達から少しずつ離れていく。
     今にも力を持ったシャドウが現れようとしていた。
     だが、乙女の言葉が響く。
    「上手くいっている姿を夢想するのは何も悪いことではないと思うなのです」
     『楽しい』は何よりの原動力なのだと、訴えた。

    ●再び
     乙女の言葉に、詩心が顔を上げた。
    「そこにずっといたいと思うのも悪いことではないのですだわよ」
     誰だって、楽しい方がいいのだから。
     初めて自分を肯定されて、詩心の緊張が綻んだ。音程を気にせず、楽しく歌いあった乙女の言葉なら、本当のことかもしれない。
     ただ警戒するだけだった詩心の心に変化が訪れる。
    「悪いのはそれを悪用することなのだわ」
     つまり、気持ちを利用して詩心の命を弄んでいるダークネスだ。
    「終らせましょう、努力を否定するこの夢を、貴女の勇気で」
     さらに、雅も説得を続ける。ズレを指摘するときもずっと優しい口調だった雅の言葉に、詩心は恐る恐る頷いた。
    「はは。私に対する嫌味かね。そろそろイイかな?」
     そして、ソレは現れた。
     灼滅者達はすぐに戦闘態勢を取る。これが夢だと詩心が疑った時点でシャドウは現れる。その後の説得の余裕がほとんどないのが悔やまれた。この夢の中に居続けるのなら、これから勝ち取る未来を捨てることになる。それを詩心に訴えたかったが、今はまずシャドウだ。
     武器を構え、カイはシャドウを見据えた。
     シャドウは現実世界と同じ声をしていた。だが、その容姿は若干異なる。何より、まるで人間のような格好をしているのだ。
     真っ黒なタキシードを着こみ、きちんと顔もついている。ただし、顔の部分は黒い闇に覆われていて、そこに瞳があるのかも判断がつかない。
     そして、大きな鎌を手にしている。
    「まさか、本当に追ってくるとは……。力の差を、理解できなかったのか?」
     言いながら、シャドウが片手を上げた。
     大きな譜面台とメトロノームが現れる。完全に詩心を説得するまでには至らなかったということなのか。それらが、灼滅者達に敵意を持った配下なのだと、すぐに解った。
    「あ、ああ……」
     現れたシャドウを見て、詩心が怯える。
    「おじょ~さん、ここからは私たちの時間だぜ!」
     すぐに弥生が詩心を背に庇う。
     なるべくシャドウから距離を取るように動き、同時に詩心をシャドウから引き離す。
    「……、やれ」
     シャドウが短く命じると、譜面台とメトロノームが体当たりをかけてきた。
     譜面台は麒麟へ、メトロノームは夜兎へと襲いかかる。
     だがその攻撃では殆どダメージを受けなかった。
    「さぁ、始めようか」
     逆に、こちらから仕掛ける。
     夜兎が鋼糸をシャドウに向けた。動きを封じるように巻きつけ、行動を制限する。その間に、ユキ(夜兎のナノナノ)が受けた傷を回復した。
     同じく、配下を倒すまでシャドウを抑えるため、采が漆黒の弾丸を放った。同時に、采の霊犬が縫うように走り、シャドウを斬りつける。
    「ぐ……」
     シャドウの身体が早くも傾ぐ。
     どうやら現実世界に存在する時と比べ随分弱体化しているようだ。
     反対側からは、弥生が迫る。
     散々馬鹿にしてくれた借りを返そうじゃないか、と、急所を狙い斬りつけた。
     一方、仲間がシャドウを抑えているうちにと配下へ向かった仲間もいる。
     譜面台に向かったのはカイと乙女だ。
     片腕を異形化させ、乙女が力任せに殴りつける。できた隙に回り込み、カイが譜面台を斬りつけた。
     あっけなく、譜面台は消え去る。
    「聞いて、これがきりんの歌……」
     自分の歌はサイキックで、ただ歌うことなんてない。これは心を惑わすだけの、楽しくもなんともない歌だ。だから、詩心に歌の楽しさを教えて欲しかった。
     思いを込めた歌が、メトロノームに届く。
     動きを止めたメトロノームを捉え、桐人が言った。
    「悪夢は終わりだ。皆で帰る。詩心を連れて、な」
     異形化した片腕が、すべてを粉砕した。
     さて、その間に。
    「虫を相手にするくらいなら、まだアレの方がマシだわ」
     ぶつぶつと言いながら、雅が自らに癒しの光を向けた。

    ●閉幕、そして
    「ふぅ。さて、ではこれはどうかな?」
     言って、シャドウが鎌を振りぬく。黒い波動が前列の仲間を薙ぎ払った。
     だが、弱い。あくまで、現実に存在したあの攻撃に比べれば、の話だが。
     それでも、攻撃を受けてすぐに飛び出す余裕があった。
    「他人の夢に勝手に居座ってないで、とっとと出て行けよな!」
     素早く動き、死角に回りこむ。カイはシャドウの服ごと身体を切り刻んだ。正直、散々コケにされて、ちょーっと腹が立っていたりするのだ。
    「さぁ? それは、私の自由では?」
     ふらふらと身体を揺らしながら、シャドウが笑う。
     慈愛。優しい悪夢はそう呼ぶのに相応しいのかもしれない。けれど、その中で人は成長出来るのだろうか? 真実を知らない、それは……きっと、一つの不幸の形だと、思う。
     コルネリウスへの静かな怒りを胸に桐人は戦う。激しく渦巻く風の刃が現れた。
     それに重ねるように、乙女も風の刃を生み出す。
     二人の刃が、シャドウを切り刻んだ。
     たまらず、後退しようとシャドウが後へ飛んだ。
     だが、麒麟の影がそれを許さない。触手のように伸びた影が、シャドウを絡めとった。
    「……そろそろ夢から覚める時間だぜ?」
     シャドウが上手く動けないのを見て取り、夜兎が大きく影を広げた。
    「そやねえ。そろそろお開きの時間やわ」
     同じく、采も影を広げる。
     二人の影が、交差するようにシャドウを飲み込んだ。
     シャドウは、随分弱っている。
     だが、前列への攻撃はやはり皆の体力を削った。その傷は雅のギターの音がきっちりと癒す。
    「……ふ」
     影を振り払って出てきたシャドウは、すでに攻撃に移る力も無いようだった。
    「最期に聞いてやるよ、何がしたかったんだ?」
     弥生がガンナイフをシャドウへ向ける。
     返答は……。
    「……」
     無かった。
     最後まで、イラつく相手だ。
     弥生はもはや無言で腕を振り下ろした。
    「くくく。まあ、いいさ。後はコルネリウス様がどうとでもしてくださる」
     最後に一つ言葉を残し、シャドウは消えていった。
    「人の見る夢は儚い、夢の中に消えるあなたも儚い、ね……、さようなら」
     麒麟の言葉が静かに響いた。

    「努力すれば必ず報われる世界、か」
     崩れていくセカイを見ながらカイが呟いた。
     けれど、結局ココには詩心一人きりで。歌っても誰にも届かなくて。
    「だからホントの世界で、ホントの詩心の声で歌わなきゃ駄目なんじゃないかな」
     真摯に語りかければ、詩心はコクリと頷いた。
     何より、シャドウを見せられたあとでは、自分の居たまやかしのセカイが良いものとは到底思えない。
    「本当の君の歌、聴かせてくれないか」
     桐人は言う。歌が好きなら、独唱だっていい。曲の作り手側に回ったっていい。優しい悪夢の中で、成長もせずに溺れる事は無いのだと。
    「本当の……」
    「オレも、詩心の本当の声で歌が聞きたい」
     どんなに好きでも、どうしようもない現実というものはある。だが、夢に逃げたって仕方がないと、夜兎は言う。
     悔しかったら、死に物狂いで見返せと。
    「ずっと心配してる人もいはるんやろ?」
     采の言葉に、詩心がはっとした。
    「お父さん、お母さん……」
     そう言えば、ずっと会っていない気がする。
     だんだんと、セカイが終わっていく。詩心の夢が覚めかけているのだ。
    「……楽しい歌、歌えると良いね、きりんでも分かるくらいの」
     麒麟の声に、薄れていく詩心が笑った。
     でも、歌うのは楽しかった。皆と一緒に合唱ができて嬉しかった。
     それだけは、本当。
    「現実で叶えれば、ずっと続きますことよ?」
    「うん。ありがとう」
     最後に、詩心は乙女の手をぎゅっと握りしめた。
    「さぁ帰ろうぜ、本当の仲間の待つ現実へ!」
    「そぉね。きっと詩心ちゃんのこと、待っている人がいるわよね」
     弥生と雅が言葉を交わした所で、夢は終わる。
     詩心が自ら目覚めるのを見届け、灼滅者達は帰路についた。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年5月1日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 7
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