ラブリンスターライブ!

    作者:真壁真人

    ●ラブリンスターライブIN代々木公園野外音楽堂
     日時:2013.5.15(Wed)
     場所:代々木公園野外音楽堂

     知る人ぞ知るスーパーアイドル淫魔が代々木公園に登場!
     3rdシングル『ドキドキ☆ハートLOVE』に続く4thシングル『飛び出せ初恋ハンター!』も初のお披露目!
     激しくやらしいダンスパフォーマンスも初披露!?
     進化する歌姫から目を離すな!

     ライブ終了後には握手会を行います。

     ※雨天決行・休憩あり

    ●淫魔からの招待状
     『通学路で淫魔ラブリンスターがライブのチラシを配る』という珍事は、既に多くの灼滅者達の知るところとなっていた。
     ラブリンスターが配付していたチラシの一枚を手に、五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)は灼滅者達に説明を始めた。

    「既にチラシを読まれた方もいらっしゃると思いますが、改めて説明しておきます。
     淫魔ラブリンスターから武蔵坂学園の灼滅者に、代々木公園野外音楽堂でのライブへの案内が届きました」
     常と変らない柔らかい表情ながら、彼女をして僅かに困惑している様子を灼滅者達は感じ取る。
     桃色のステージ衣装に身を包み、笑顔でチラシを配っていた淫魔の少女。
     彼女こそが、昨年から発生している幾つもの淫魔絡みの事件で存在を示唆されて来た、アイドル淫魔達を率いる存在に違いなかった。

    「おそらく彼女……淫魔『ラブリンスター』は、私達がこれまでに遭遇したダークネスの中でも最強クラスの存在だと予測されます」
     そんな淫魔が、本当に堂々とライブを行うのか。
     灼滅者の中にはそう疑う者もあったが、その懸念を姫子は否定した。
    「代々木公園野外音楽堂でのライブ自体も普通のライブになるようです。出演者がラブリンスターで、スタッフにも淫魔が混じっていることを除いては、ですが」
     もっとも、ラブリンスターをはじめとした淫魔に戦闘の意志はない。
     こちらから攻撃を仕掛けたりしなければ、ライブは平和的に終わるだろう。
     では、ラブリンスターはなぜ、灼滅者達をライブに招待したのか?
    「本気で『友好を深めたい』からのようですね。これまでも他のダークネスに対して接待攻勢を仕掛けているのが確認されていますから、その対象を武蔵坂学園にも広げたのでしょう。ですがラブリンスター本人が出て来るところからすると、向こうは武蔵坂学園に対してかなり好意的なのだろうと思います……理由はよく分かりませんが」

     ダークネス勢力同士は、必ずしも協力関係にあるわけではない。
     むしろイフリートが全国各地のダークネスや眷属に襲撃を仕掛けたり、逆にソロモンの悪魔の襲撃によってイフリートが拠点である鶴見岳を追われたりといった例でも分かるように、敵対関係にあるケースの方が多いのだ。
     ライブやその後の握手会などを通じ、淫魔を統率するラブリンスターと仲良くなることができたなら、将来的に有利に働くこともあるかも知れない。
     相手がダークネスである以上、いつか確実に利害が対立する時が訪れるであろうことは、理解しておかなければならないだろうが。

     そこまで説明して、姫子は言葉を区切ると言った。
    「ただ……別の考え方としては、このライブを機会にラブリンスターを討ち取ってしまうという手も、あるかも知れません」
     何しろ淫魔ラブリンスター本人が、軍勢を引き連れることもなく出て来てくれるのだ。
     討ち取ってしまえば、現在動いているアイドル淫魔を中心としたグループに、大きな打撃を与えることができるのは間違いない。
     この策を取る場合、握手会終了後にラブリンスターを襲撃することになる。
     もちろん、相手はこれまでに遭遇した中でも最強クラスのダークネス。戦闘自体に相応のリスクを伴うし、取り逃がしてしまえばラブリンスター一派と武蔵坂学園との関係は、取り返しのつかないことになるだろう。

    「どちらを取るかは灼滅者の皆さん次第です。
     いずれにしてもまたとない機会ですから、後悔のないようお願いします」
     ラブリンスターによる、代々木公園野外音楽堂でのライブイベント。
     その開催の日は、近づきつつあった。


    ■リプレイ

    ●代々木公園
     広大な敷地を持つ代々木公園は、東京都渋谷区原宿に広がっている。
     JRや地下鉄各線の駅にも隣接した、この公園の南側の一角に存在する野外ステージと併設されたイベント会場が、淫魔ラブリンスターのライブと握手会が行われる会場だった。
     授業も終わり、夕刻を迎えた公園内にはラブリンスターからチケットを受け取った武蔵坂学園の生徒達が公園内を通り、野外音楽堂の周辺に続々と集まって来ていた。

    「はいはい、ライブ会場はあちらー。……一寸そこの方々。歩道で広がり過ぎない騒がない。他の通行中の方々の迷惑にならないようにな」
     風真・和弥(風牙・d03497)は『ラブリンスターライブIN代々木公園野外音楽堂 会場は此方』と書かれた案内板を持ち、代々木公園最寄駅の出口付近へ立って案内員をしていた。
    「そこの変態は警察の厄介になる前に帰れ」
    「公園にたどり着く前にっ!?」
     全裸にムタンガ、頭と足に靴下という二文字でいうと変態、三文字でいうと犯罪者な姿の靴司田・蕪郎(靴下は死んでも手放しません・d14752)が九条・村雲(サイレントストーム・d07049)の通報を受け、目の幅涙を流しながら退場していった。
    「大丈夫なのかアレ……まあいいか」
     警備のバイトとして潜り込んだ相良・巧(研究者気取り・d11696)も、しれっと灼滅者達を会場へと案内していく。
     小鳥遊・結実(貫きて貫く者・d00647)も、警備をしていた淫魔に掛け合い、警備の手伝いを申し出る。
    「基本、真面目ですねアイドル活動……」
     結実はラブリンスター勢力の様子を、そう感じ取る。

    「ライブ会場はこちらだ、良ければ来てくれたまえ」
     女性が苦手だというナハトムジーク・フィルツェーン(十四へ誘う者・d12478)は宣伝を行っていた。効果があるのかはよく分からないが。
    「アイドルのライブに来てくれと言われて、普通の人はそうホイホイと行くものではないね」
     ハードルが少々高いのは否めない。

    「晴れてよかったねぇ」
     雨合羽の用意は無駄に済んでよかったと、鈴城・有斗(高校生殺人鬼・d02155)は微笑む。
    「500人超えてるって、集まり過ぎだろこれ」
     六合・薫(この囚われない者を捕らえよ・d00602)が思わず言う。
     手ずからチケットを渡されたというのは大きかったのかも知れない。
    「まぁ、早めに並んで席を確保しておこう……」
     既にステージに近い方から順番に人の列ができている。
     警備についている男性淫魔の人数もそう多くないが、それで大した混乱も起きていないのは、ステージ周辺にいる者達の大半が灼滅者達……武蔵坂学園の生徒達だからだろう。
    「……ひさりんセンパイ、今日は楽しみ魔性。……ああ、誤字った気がする、でも魔性だよな!」
    「いや、何言ってるのか分かりませんよ。落ち着いてください緋弾さん」
     久織・想司(妄刃領域・d03466)にたしなめられる国津・緋弾(風花雪月・d03695)のように、今日のライブを純粋に楽しみにしていた者も多い。
    「宿敵の敵情視察なのです! 純粋にライブを楽しもうとかいうわけじゃないんです!」
     ラブリンスターのイラストをプリントしたTシャツを着て、説得力のないことを言う天羽・瑠理香(幻想パッサカリア・d00607)も、おそらくその一人なのだろう。
    「でもやっぱりできれば最前列ですよね!」

    「たとえ敵勢力でも、友好的なら多分問題無いとは思うんですよねぇ。仲良くなれるなら仲良くしたいです!」
    「まあ、淫魔だからって毛嫌いする事もないわよね」
     国崎・るか(アンジュノワール・d00085)に応じつつ、レイリアーナ・キッス(新緑の氷姫・d11996)も会場へと向かう。
    「それよりるかちゃん、ライブに行くのは初めてなのでとっても楽しみです!」
    「そういう子、結構多そうよねぇ……」
     レイリアーナが思った通り、灼滅者達の中にはアイドルのライブを見るのは初めてという者も多くいた。
     中には自分自身がアイドルという者もいるが、灼滅者達はあくまでも学生の身分だ。後藤・昌之(キャリバー愛好家・d01440)は周囲の灼滅者達の様子に苦笑する。
    「まあ……曲を楽しんで盛り上がればよいのだろうし、淫魔とはいえ可愛らしいのも確か。今日ばかりは仕事を忘れて素直に彼女らを見ながら曲を楽しむとしようか」
     改めて荷物を確認する辰峯・飛鳥(変身ヒーローはじめました・d04715)。こういうところは事前準備に力を入れる灼滅者の習性だろうか。
    「ケミカルライト、タオル、飲み物……よし、準備OK!」
    「初ライブが淫魔のライブだなんて、誰も思ってなかったやろな……」
     や藤柴・裕士(藍色花びら・d00459)はピンクのケミカルライトを振りつつ、ライブ会場へと向かう。

    「えーっと、盛り上げってどうやったらいいんだろう?」
     椎名・茜(明日はきっと向こう側・d03875)は首をかしげる。
     むやみに自信たっぷりに、千桜家・照姫(百合色サイケデリック・d04201)は持ち込んだ荷物を取り出す。
    「テレビで見たわ……こういうときには光る棒や団扇を使えばいいのよね!」
     工事現場の指示棒や『祭』と書かれた大団扇を取り出す照姫に、斐太・隆也(高校生ご当地ヒーロー・d05842)と護宮・サクラコ(猟虎天使・d08128)はそっと声をかけた。
    「ケミカルライト持ってないなら、配ってるからな」
    「これで『ラブリ~ン♪』とか騒げばよいのです」
     2人や極楽鳥・舞(艶灼姫・d11898)などが、こうした場に不慣れでケミカルライトを持ってこなかった灼滅者達に、次々とケミカルライトを無料で配っていく。
    「アイドルのライブっていったら、やっぱりこれだよね♪」

     比奈下・梨依音(ストリートアーティスト・d01646)が持ち込んだギターで『ドキドキ☆ハートLOVE』の主旋律を弾くのに合わせて、周囲では独特の恰好をした者達がコールの練習をしていた。
    「ケミカルライトとハッピとハチマキ! これで準備おっけーなのです」
     まだ小学2年生のイオノ・アナスタシア(七星皇女・d00380)の姿は、どこかの縁日にでも行くかのようだ。
     他にも手製のハッピを着たり、ウチワを持ったりした灼滅者達がうろついている。
    「思ったよりいい気分でありますね、これは」
     仲間に勧められてハッピ鉢巻ライトという三種の神器で身を固めた内山・弥太郎(覇山への道・d15775)は、周囲との一体感を感じていた。
    「ラブリン★スター様私設親衛隊!出動!!」
     自ら親衛隊を名乗る鈴木・総一郎(鈴木さん家の・d03568)も、会場前列の席を確保してそれに加わっている。
     『演歌の若様』の追っかけのような者達がいるかとも思われたが、ラブリンスターには、特にそういう者達もいないようだった。親衛隊などが出来るほどの人気が無い……強いダークネスが必ずしも人気のある歌手というわけでもないのだろうか。
    「あら、親衛隊ナンバーゼロ・キングはアタシよ?」
    「何ッ?」
     キング・ミゼリア(トノサマキングス・d14144)と総一郎の間で、激しい火花が散ったように周囲の灼滅者達は感じた。
     どちらも手製のハッピにハチマキ、うちわ。
     いずれ劣らぬ親衛隊っぷりである。
    「そう、ラブリンスターのファンで一番凄いやつと言われるのはアタシ!」
    「いや、それは俺だ……!!」
    「「何ッ」」
     千鳥・操(高校生ファイアブラッド・d15349)も加わり、争いはさらに激化する。それをスルーして、他の灼滅者達は練習に励んでいた。
    「ローカルルールとか無いですよね、たぶん」
     レイシー・アーベントロート(宵闇鴉・d05861)が推測したとおり、インターネットなどで調べてもラブリンスターのライブ中のローカルマナー等の情報はろくに出て来なかった。
    「こういうとき、バベルの鎖の良しあしを痛感するよね」
     ラブリンスターのライブについて調べようとした宇佐見・悠(淡い残影・d07809)も、バベルの鎖による情報途絶の壁に阻まれていた。
     不慣れな様子で、野々上・アキラ(レッサーイエロー・d05895)も練習に加わる。
    「アキバの兄ちゃんたちがやってるようなやつだよな?」
    「ええと、僕もここでいいのかな……?」
     自前のペンライトを持ち込んだ時雨・鈴(君影草・d01621)も、オロオロするままに練習に加わっていく。
    「確かに可愛いんだけど、あざといっていうかなんて言うか…僕らと仲良くしたいって気持ちは伝わるんだけど、何考えてるんだろ」
     白・理一(空想虚言者・d00213)はライブに集う灼滅者達の様子を訝しんだ目で見ていた。村雨・嘉市(村時雨・d03146)に誘われなければ、きっと来ることはなかっただろう。
    「ところで、このケミカルライトってどう使えばいいんでしょう?」
    「真ん中から真っ二つに折りゃあいい……って力みすぎだ!」
    「うわぁ」
     灼滅者の力でへし折られたライトの中から、塗料があふれるような事故も起きてはいたが。

     公園に生徒達が集まるにつれ、その旗色は明らかとなりつつあった。
     生徒達の大多数は、警戒心こそあれ純粋にラブリンスターのライブや握手会への参加を望んでいる。ラブリンスターを討つ気で公園を訪れた灼滅者は僅かに14名だ。その灼滅者たちにしてみても、この人数で勝ち目がないことは理解できていた。
     眠目・希見(大祖霊の代弁者・d16255)をはじめ、淫魔と一時的にせよ友好的な関係になることを拒み、ラブリンスターの灼滅を狙おうとする彼らにも、それぞれの考えがある。
     ダークネスを絶対の敵として、滅ぼすことこそが灼滅者にとって第一とする考えもあれば、あるいは御幸・大輔(イデアルクエント・d01452)のような、淫魔に対する強い憎悪を抱く者もいる。
     ダンサーの少女たちを闇堕ちさせたラブリンスターに対し、怒りを抱く白咲・朝乃(キャストリンカー・d01839)のような者もいる。
     それらを頼みに『サイキックアブソーバー環境下で最強』とも言われるラブリンスターに挑もうとした彼らと、ラブリンスターのライブに参加する者達。いずれが夢想的なのかは、すぐに判断することはできないだろう。
    「それにしても、学園への敵意がないと言うだけでこの士気の下がりよう……。ラブリンスターの悪意が全くなかったとして、戦う必要があるときに、躊躇わず戦えるのかしら?」
    「他の灼滅者組織と遭遇した時にどう説明するかが見ものだと思うぜ、俺は」
     如月・春香(クラッキングレッドムーン・d09535)と宮森・武(高校生ファイアブラッド・d03050)は、将来の可能性を危惧していた。

    「しかし、俺達灼滅者を招待してコンサートとか一体どんな風の吹き回しでしょうね。強力なダークネスとしての余裕? それとも、ただの気まぐれか何か?」
     チケット確認の列に並びながら、神木・璃音(アルキバ・d08970)は会場を行きかう淫魔の姿に、不審げな視線を向ける。
    「どんな思惑にせよ、敵になるかもしれない組織の人員をライブに招待するなんて、中々できることでは……ありませンね。そこは……素直に尊敬させていただきます」
     ベルデ・ビエント(虜獣・d01067)は、ラブリンスターの姿勢を度量の大きさととらえていた。
    「相手は淫魔おっぱい。ダークネスがどうやってこの世界に存在しているか考えれば、共生なんて絶対にできないおっぱい。だが俺達の敵は淫魔以外にも多いおっぱい。一時的な友好ならば、結ぶ価値はあるだろうおっぱい」
     宿木・青士郎(パナケアの青き叡智・d12903)に同意するのは、蜂・敬厳(エンジェルフレア・d03965)。
    「『君子危うきに近寄らず』と昔の人も言っていますし、もっと力をつけて、いずれ時が来たら灼滅しましょうっ」
     敬厳の意見は、ダークネスを滅ぼす灼滅者としては、極めて『正しい』ものだっただろう。
    「ラブリンスターさんがわたしたちと仲良くしようとしてるなら、今は無理して戦うことないと思うんだ」
    「まあ、そう目くじら立てなくても何れ決着を着ける時は来るさ」
     西羽・沙季(風舞う陽光・d00008)や柳瀬・高明(スパロウホーク・d04232)は未来の決着をそう考える。
    「まあ、今回は普通に盛り上げて淫魔たちの出方でも見てみるとしようか」
     ライブ自体は楽しみでないというわけでもないと、一花・泉(花遊・d12884)はそう考える。

    「ラブリンスターは生徒たちとの交流に来てるんだし、戦う理由なんて無いと思うなー。無駄に敵を増やさないほうがいいんじゃない?」
     消極的な理由ではあるが、ティルメア・エスパーダ(薄氷に浮かぶ言の葉・d16209)の意見に賛意を示す者も多いだろう。
     一方で、道義的な面から、ラブリンスターの申し出を受け止める者もいる。
    「紳士として、ダークネスとはいえ敵意のない女性に手を挙げるのは気分のいい話ではありませんね」
    「まぁ、100%裏無しの行動やないとは自分も思うとるが、友好を求めて来とる相手を力でねじ伏せるでは、灼滅者の前に人としてあかんしな……」
     ジョアニィール・ジョナウレム(誇りある力持つ紳士・d17085)の言葉に、アイネスト・オールドシール(アガートラーム・d10556)も同意する。
    「オレは彼女が本当に歌が好きなのかどうか、それを見極めたいかな。音を楽しむ心があるなら分かり合える、同じ感動が分かり合えるなら、心は繋がる。オレはそう思うよ。無論、倫理的な問題はあるけど」
     長姫・麗羽(高校生シャドウハンター・d02536)はそう考える。
     淫魔はサウンドソルジャーの宿敵だ。
     ダークネス達の側にしてみれば、淫魔のなりそこないがサウンドソルジャーということになるのだろう。
     その淫魔の中に、音楽に対するこだわりを見せる者が多いというのは、ある意味当然でもあり、皮肉でもあった。

    ●ライブ開始の前に
     一方、坂村・未来(中学生サウンドソルジャー・d06041)と【正義の味方部】の清浄院・謳歌(アストライア・d07892)と白金・ジュン(魔法少女少年・d11361)は、ステージ裏を訪れていた。
     ライブ前の準備に忙しくスタッフが動き回る中、灼滅者達は手近にいたスーツ姿の男性に話しかける。
    「すみません。こちらの責任者の方は……」
    「私ですが、どうかしましたか?」
     メガネをかけた、人好きのする顔立ちの青年だった。おそらくは淫魔なのだろうが、その特徴を完全に隠している今は普通の人間にしか見えない。
    「マネージャーさんですか?」
    「ああ、ラブリンスター担当のプロデューサーです。うちのプロダクションは零細でしてね。マネージャーも兼任ですね。それで、どのようなご用件ですか?」
    「えーとですね……」
     正義の味方部の申し出は、学園の生徒達もライブに出させてもらえないかという事だった。フレナディア・ヘブンズハート(煉獄の舞姫・d03883)が、刺激的なコスチューム姿でいう。
    「前座として、場を盛り上げさせてもらうわよ」
     未来もライブ開始前に、ダンスバトルはできないかと提案する。プロデューサーは、その申し出をしばし吟味する。
    「前座や曲の合間にステージ上でやっていただく分には、問題なさそうですね。ただダンスバトル追加は時間的に厳しいかもしれません。会場のレンタル時間が」
    「……真面目だ……」
     思ったより世知辛い理由に、灼滅者達は顔を見合わせる。
     法律の埒外で生きている灼滅者達ではあるが、ダークネスがそれらを守ろうとしているのに、こちらから破ろうとするのは何となく憚られた。
     と、そこへ別の淫魔らしきスタッフが慌てた様子で声を掛けて来る。
    「プロデューサー!! なんか上手くこっちに来てくれてた御客様が突然帰り始めたんですが! どうも一般人追い払うサイキック使った灼滅者の御客様がいるらしくて……」
     プロデューサーの顔が一瞬ひきつるのを灼滅者達は見た。
    「なんかもうすみません」
     思わず頭を下げる灼滅者達。
     かくして、戒道・蔵乃祐(ソロモンの影・d06549)が『殺界形成』をつかったのは他のダークネス組織からライブを守ろうとする丸っきり善意であったが、ラブリンスター側からすれば、他のダークネスだろうが一般人だろうが来てもらわないと困るのだ。
     不幸な行き違いであった。
    「ところで、空中でのダンスパフォーマンスとか、いかがですか?」
    「今以上にバベルの鎖に引っかかるのは、ちょっと……」
     プロデューサーは睦月・恵理(北の魔女・d00531)の提案を、済まなさそうに断る。これ以上バベルの鎖が作用しては、ますます客寄せが困難になってしまう。

     正義の味方部からの告知を受けて殺界形成の使用禁止とライブ乱入禁止などが連絡され、先にステージに上がろうという者達による前座がスタートした。
    「フフフ、さあさアゲてくわよ美波同輩! 私たちの歌をきけぇー!」
     暁星・成美(コトダマカブル・d04525)と美波・奏音(エルフェンリッターカノン・d07244)
    のユニット『ff(フェアリッシモ)』が演奏を開始する。
     前座に収まらない遠慮のない本気の伝わって来る曲に会場が盛り上がる一方で、ライブへの乱入を目論んでいた【TRI-ST☆R】の3人や一橋・聖(空っぽの仮面・d02156、キティ・グッドフェロウ(サウザンドヴォイス・d03276)らが渋々計画を諦める。

     かたや、ラブリンスター関連の商品を並べた物販コーナーは一種異なる盛り上がりを見せつつあった。
    「スズさんゼンさん、物販見に行きましょう物販」
     正直、グッズのほうがライブそれ自体よりも興味があるという苑城寺・蛍(月光シンドローム・d01663)は、花城・依鈴(ブラストディーヴァ・d01123)、御影・全(モノクローマー・d00408)を連れて物販が行われているテントに向かう。
    「いらっしゃーい」
     自分から志願して雑用を手伝っていた村井・昌利(吾拳に名は要らず・d11397)が、商品リストを渡して来る。
     レジを管理する男性淫魔の前には、ラブリンスターの関連グッズが並んでいた。
    「敵陣の中にいるというのに、みんなはしゃいでまわっている………こんなの、絶対におかしいよ!」
    「良い土産になりますかねぇ」
     コーナーでは、沈痛な表情のハノン・ミラー(ダメな研究所のダメな生物兵器・d17118)や和泉・凪翔(奔放不羈・d05600)がグッズを買い漁っている。
     既に発売済みのCDシングルにTシャツ、ハチマキにうちわ、ブロマイドといった、どこか古さを感じさせる……別の言い方をすれば定番の商品群。デザインは一応考えられているのか、いわゆる普通のアイドルグッズの領域に収まっているように見えた。
    「これなら都条例も安心ね」
    「何を言っているんだ、お前は」
    「……Tシャツ、買ってく……?」
    「着ないぞ、俺は」
     全が蛍や依鈴にTシャツを着るよう無言の圧力を向けられている中、八握脛・篠介(スパイダライン・d02820)は過去のシングルを漁っていた。
    「シングルは新曲含めて一通り買ってくか」
    「あ、こっちにもそれください」
     赤鋼・まるみ(笑顔の突撃少女・d02755)も、篠介と同じようにCDシングルを買っていく。
    「これでディーヴァズメロディの曲のレパートリーも増えるわね」
    「それでいいのかサウンドソルジャー……」
     篠介が胡乱げな目つきになる。
    「これだけ大規模な催しだと、他のダークネス組織のバベルの鎖に引っ掛かりそうな物ですが、その辺りの対策とかってどうなっていますか?」
    「いやー、お客さんに来てもらえれば、こっちとしては万々歳っていうのがラブリンスター様の方針でスし」
     物販の商品を買い込む神楽・三成(新世紀焼却者・d01741)に、売り子の淫魔はそう応じる。
    「うちわ? うちわだと? 一つ貰おうか。ほう、これはなかなか……。可愛い!癒される!萌え!すばらしい、なんてすばらしいんだ! そうか、これが魅了の魔法というやつか……!」
     烏丸・晃(負け犬・d02878)がラブリンスターうちわに魅了されている。
    「……たぶんそれはサイキックじゃないですよ。……ん? こ、これは……」
     ラブリンスター写真集を手に、プルプルと震える赤緒・カイジ(蝦夷青・d08617)。
    「それも間違いなくサイキックじゃないだろ。……ところで、こんな感じの仮装だと淫魔っぽいだろうか?」
    「うーん恰好ばっかり整えてもバレバレだにゃん」
     久遠寺・友(真のルーツは料理人・d04605)は近くにいた淫魔に尋ねるが、ただの変装だけでダークネスを装うのは難しい様子だった。
    「闇堕ちするのが一番にゃん」
    「私シャドウハンターなんで……」

     四天王寺・大和(聖霊至帝サーカイザー・d03600)は開始前の会場を見て考える。
    「常々考えていたことがある。既にダークネスは世界に蔓延しきっている。……俺たち灼滅者達が総力を上げて戦い続けても、最後の一匹まで消し去るのはとても現実的な話ではない。ならば、『適当な所で和解の道を探らねばならない』」
     彼女は、その第一歩になるかもしれない、と申告に捉える大和。
     ならば応援せぬ訳には行くまい。これからの灼滅者とダークネスのより良い未来の為にも。物販で買ったCDを荷物に入れ、彼はハリセンを手にクラスメイトの後を追う。

    「他の組織の連中はいないのか?」
     蛇原・銀嶺(ブロークンエコー・d14175)が周囲を見回して首をかしげる。
     『不死王戦争』の際に行われていた『演歌の若様』やアイドル淫魔のライブには多数の他組織のダークネス達がいたものだが、今回はその様子は見受けられない。

     板尾・宗汰(ナーガ幼体・d00195)は会場の警備を買って出ていたが、ダンサーの少女たちの闇堕ち事件を引き起こしたラブリンスターに対して快く思っているわけではなかった。
     もっとも、過去のことを考えれば自分達も不死王戦争などでラブリンスター勢力の淫魔を灼滅している。
    「……どうも感覚が違うような気がするな」
     その差異は、考えねばならない点かも知れなかった。

    ●ドキドキ☆ハートLOVE
     原坂・将平(ガントレット・d12232)、椎葉・武流(ファイアフォージャー・d08137)らのダンスやリタ・エルシャラーナ(タンピン・d09755)による拍手の練習を終えると、いよいよライブは定刻となった。
    「それじゃ、この後はラブリンスターは更に激しくいやらしいから期待してね!」
     ライブの開始まで前座を務めていたフレナディアが拍手を受けてステージから退く。

    「いよいよ登場ですね」
    「心に響く歌を奏でるのかどうか、お手並み拝見と行こうじゃないか」
     2人連れでこの場を訪れた鏡宮・来栖(気まぐれチェシャ・d00015)とレンリ・シャミナード(雪原に咲く菫・d14778)が見守る中、やがてチラシで示された時間になると共に、ステージ上に設置された照明が点灯する。
     同時にステージの上手から、ステージ衣装に身を包んだ一人の少女が姿を現す。
     子供っぽさを強調するようなリボンに清楚さを感じさせる青を基調としたステージ衣装。しかし胸の部分は大きく開き、隠しようもない本人のセクシーさを露わにしている。
     何より頭の角と背中の翼が、彼女が淫魔であることを物語っていた。
    「ラブリンスターさまぁ~!」
    「ラブリンスターちゃーん!!」
     低い身長を利用してうまく最前列を勝ち取った海老塚・藍(エターナルエイティーン・d02826)やシュプレヒコールをあげる両角・式夜(黒猫ラプソディ・d00319)が、両手を振り上げ彼女の名をー呼ぶ。
    「ラブリンちゃーん、がんばってぇー!!」
     朝山・千巻(依存体質・d00396)が、恥ずかしく思う気持ちを振り捨てて声援を送る。
     灼滅者達の声援に手を振り返して応じたラブリンスターは、マイクスタンドの元まで進み出ると声をあげた。
    「みなさん、こんにちは! 『歌って踊ってエッチもできるスーパー淫魔アイドル・ラブリンスター』です☆ 今日は精一杯歌いま~す!!」
     淫魔アイドルラブリンスターに観客席の灼滅者達から、さらなる歓声が上がる。
     グッズを身に着けた灼滅者達や、久篠・織兎(糸の輪世継ぎ・d02057)の持ち込んだ垂れ幕に嬉しそうに視線をよこしたラブリンスターが舞台袖に目配せすると、それと同時にスピーカーから大音量でイントロが流れ始めた。
     典型的なアイドルソングの曲調。
     3rdシングル『ドキドキ☆ハートLOVE』のイントロだ。
     このイントロには、ライブ会場に来ていた灼滅者達の多くも聞き覚えがあった。
     なぜなら、この曲のCDシングルが、ブレイズゲート『世界救済タワー』で殲術道具としてよく発見されていたからだ。
    「……しかし、一生懸命に手売りしたCDがゲートに棄てられていたのか? そう思うと気の毒になるな」
     そう推測する関島・峻(ヴリヒスモス・d08229)だが……。
    「いよいよ本番、せっかくのライブ、盛り上げていくでさあ!」
     久遠・真綾(千年挽歌・d01947)が気合いを入れる。
    「本来は敵なんですよねぇ。まぁ、不要な命のやり取りなんてない方が良いですが……」
     まるでこちらへの害意を感じさせないラブリンスターの様子に、西原・榮太郎(夜霧に詠うもの・d11375)は命のやり取りをする日常を顧みてわずかに嘆息する。

    『ドキドキ(ドキドキ) ドキドキ☆ハート
     ドキドキ(ドキドキ) ドキドキ☆ハート
     ドキドキ(ドキドキ) ドキドキ☆ハート』

     胸に手をあて、切ないような視線を観客席に向けるラブリンスター。
    「……わぁ……」
     相手が自分達サウンドソルジャーの宿敵、淫魔であるということを理解していながらも、リュシール・オーギュスト(お姉ちゃんだから・d04213)は一瞬彼女に見惚れた。むしろ歌が邪魔だ。
    「彼女は『アイドル』としてここに来たんだ……なら」
     アイドルとしてのラブリンスターを理解しようと、西園寺・奏(堕天の守護者・d06871)は目を閉じる。
    「みんなたくさんだね、すごいね!」
     ハッピにハチマキ姿の羽柴・陽桜(ひだまりのうた・d01490)が【Chaser】の仲間たちに笑顔を向ける。
     オタ芸を続けていた東当・悟(紅蓮の翼・d00662)に、陽桜は思わず拍手。
    「悟ちゃんすごいすごい!」
    「そんなものどこで覚えたんだ……迷惑にならないように踊ってくれよ」
     草那岐・勇介(舞台風・d02601)に、悟はスマートフォンを取り出し、真顔で動画サイトを示す。
    「え、けどライブ言うたらこれやろ」
    「えー、でもそれ駄目じゃない? 勇介のみたいなのじゃないと」
    「いいじゃないか……っていうかその胸は何だよ」
    「あたいもすいかっぷー! って」
     ビーチボールを胸に入れたミカエラ・アプリコット(弾ける柘榴・d03125)

     それぞれに「L」「O」「V」「E」「R」「I」「N」「☆」の文字を一文字ずつ書いた紙を持った【Chaser】の面々は、三國・健(真のヒーローの道目指す探求者・d04736)の促しに従い合いの手を入れていく。
    「せーの! L・O・V・E・R・I・N・☆~!!」

    『あなたは覚えてないのかな?
     わたしは絶対忘れない
     だって 忘れるわけがない』

    「これは……」
     ラブリンスターの動きから身体能力を推し量っていた望月・楓(図南鵬翼・d17274)も、思わず歌に耳を傾けた。
     人類を遥かに上回るダークネスの能力は、歌唱力にも及んでいる。ぶっ飛んだ歌詞に耳を傾けさせるだけの力があった。
    「彼女、なんでアイドルを始めたんだろう?」
     山城・大護(高校生ダンピール・d02852)は不思議に思う。芸能など、バベルの鎖の影響を最も受けるジャンルの一つだろう。
    「まあ、『演歌の若様』みたいなR18指定な歌とダンスは遠慮して欲しいものだ」
     ディーン・ブラフォード(バッドムーン・d03180)は、『不死王戦争』の時に猥歌を熱唱していた淫魔歌手のことを思い出し、ピンクのケミカルライトを手に苦笑する。
    「いろんな人に売れたいみたいだし、きわどいけど小さい子でも大丈夫な健全な歌だよね……たぶん」
     『ドキドキ☆ハートLOVE』は問題のある曲ではなさそうだが、この先の曲もそうであって欲しいと因幡・亜理栖(おぼろげな御伽噺・d00497)は思う。
    「える! おー! ぶい! いー! らぶりんらーぶ!」
    「だいご兄さん、声が小さいよ! もっとしっかり声だして!」
    「え……える! おー! ぶい! いー! らぶりんらーぶ!」
     ファンクラブのハッピを着てケミカルライトを持った雲母・夢美(夢幻の錬金術師・d00062)と山城・竹緒(ゆるふわ高校生・d00763)。二人の勢いに呑まれるように、山城・大護(高校生ダンピール・d02852)も声を張り上げる。
     那賀・津比呂(は爆発しました・d02278)もまた、最前列で声援を送る。
    「LOVE!ラ・ブ・リィーン!!」

    『すれちがった だけだったのに
     あんなにビート わたしのハート』

     激しい動きはなく、その場での動きと手の振り、そして視線だけでラブリンスターは最前列にいる灼滅者達の視線を釘づけにする。
    「ライブはな…歌い手だけ頑張らせるもんじゃねぇんだ。ファン皆が一体となって歌い手達が気持ち良くライブ出来るよう俺達も盛り上がらないと意味が無いんだ!」
     外道・黒武(お調子者なんちゃって魔法使い・d13527)は気合いを入れなおすと、指と指の間にケミカルライトを持つ……いわゆる熊手持ちにした状態で、頭上で手拍子しながら回転を繰り返す。
     いわゆる『マワリ』の動作から、一転して腕を体の左上に持ちあげては体に引き付けるようにおろす『ロマンス』の動作につなげる。
    「ラブリンスターに捧げるロマンス!」
    「タイミングを合わせないと台無しですからね」
     古海・真琴(占術魔少女・d00740)をはじめとして、バラバラにオタ芸をしていた者達も、自然と黒武に合わせるかたちになっている。
     そのため最前列中心は、本当にアイドルの親衛隊のマスゲームのような有様となっていた。
    「いえーい、L・O・V・E らぶりーん♪」
     星陵院・綾(パーフェクトディテクティブ・d13622)が、探偵七つ奥義の一つと両手にケミカルライトを何本も持ちながら歓声を上げる。

    『ドキドキ(ドキドキ) ドキドキ☆ハート
     あなたを わたしのものにしたい
     ドキドキ(ドキドキ) ドキドキ☆ハート
     だけど 何かが変わりそう』

    「この日のために鍛えたオタ芸、いくわよ!」
     さらに続けて気合いを入れる風雅・月媛(通りすがりの黒猫紳士・d00155)。
     その様子に、咬山・千尋(中学生ダンピール・d07814)は思いっきり引いていた。
    (「……あれが世に言うオタ芸ってやつか? うわぁ……あいつらウチの学園の奴らじゃないの! もしかして魅了されてんのか?」)
    「おお、盛り上がってるな……!!」
     思わず自分のギターをかき鳴らしそうになりながら、自分もライブ衣装を着こんだ雨松・娘子(逢魔が時の詩・d13768)が目を見張る。
    「ダークネスとはいえ、夢に向かって頑張る女の子だ……盛り上げてやるか!」
     七瀬・遊(ポジティブファイア・d00822)も歓声をあげる。
    「よし、頑張ってれんしゅーしたし、踊り、がんばろーね!」
     雨宮・恋(かみかみヒーロー・d10213)はどもりつつも天野・イタカ(忌垣八重垣・d10784)に促す。
    「若様のライブみたいに……すればいいんだっけ……?」
    「あ、あれ? なんか違うよ!? こうだよ、こう」
     うろ覚えの振付でくねくねと踊ろうとするイタカを止める恋。

     手にしたハート型ペンライトを、ハートマークを描くように振る百瀬・栞(桃鬼もどき・d16207)。
    「気持ちよく歌ってもらえるといいよね」
     和瀬・山吹(エピックノート・d00017)もまた、前方にいる親衛隊に合わせつつ、ペンライトを振っていく。
    「ラブリンちゃーん!!」
     好物のソーセージをペンライトに見立てて振りまくるラーエル・アルムスター(ソーセージ好きのシャドハン・d01001)。

    『たとえ私が 告白しても
     あなたは変わらず ステキかな?
     確かめたいけど やっぱり怖い』

    「さぁご一緒に……ラッブリーン!!」
     迅・正流(黒影の剣士・d02428)の合図に、灼滅者達から声援が上がる。
     【闇堕ち被害者友の会】の灼滅者達も、は、その様子に目を見張る。
    「すごい人の数……これがラブリンスターの能力を伴わない影響力、やっぱりすごい」
    「いや、ほとんど武蔵坂の生徒じゃない?」
    「……うちの学校って……」
     合いの手を入れながら桐咲・美咲(深紅の想い・d10634)の指摘に、塚原・芽衣(中学生ダンピール・d14987)はがっくりと肩を落とす。
    「あの方のせいで、私たちは闇堕ちし、いろんな方に迷惑をかけてしまった……」
     ラブリンスターを見る籠野・美鳥(高校生サウンドソルジャー・d15053)は仏頂面にならないように苦心する。ダンサーの少女が闇堕ちする事件。それを引き起こしていたのがラブリンスターであることは疑いようがない。
    「でも、これだけ聞いていると、悪い人には見えないですね……」
    「……あれ位やれば、オレも変わるのかな」
     過去の闇堕ちした自分の行いを顧みつつも、羽野・竜胆(風疾り雷迅く・d16583)はラブリンスターへと声援を送る。
    「ふぅん、あのタイミングで直下のファンに手を振る、と……」
     若葉・杏子(あんこのだらだらシンデレラ・d16586)はラブリンスターのアイドルとしてのパフォーマンスを観察していた。
     アイドル候補生である杏子は、アイドルのライバルとしてラブリンスターを捉えている。

    『とめどなくなく弾けるハート あなたの笑顔でたちまちビート
     ドキドキ(ドキドキ) ドキドキ☆ハート』

    「きゃ~きゃ~! 角折らせて~!」
     逢魔・歌留多(黒き揚羽蝶・d12972)がどこか物騒な歓声を上げる。
    「胸大きすぎるのよ! ちょっと分けろ~!」
     公称96cmというバストに風花・クラレット(葡萄シューター・d01548)の視線が突き刺さる。
    「さあいきますよ!」
    「『ぱんぱぱんひゅー』だから、間違えないように!」
     Bメロの四拍子に合わせ、白星・樹咲楽(たおやかなる大樹・d06765)と九宝院・黒継(ペイルムーン・d00694)を中心とした一帯が『フー!』という奇声とともに飛び上がる。
     このライブのために、わざわざ歌詞を覚えたり、振り付けなどまで覚えるぐらいに聞いたという熱心な者達も多い。
     千菊・心(中学生殺人鬼・d00172)は『ドキドキ☆ハートLOVE』の盛り上げに合わせて声を張り上げる。
    「らぶりーん!!」
    「よ、よし、妾たちも皆のように合いの手を入れるのじゃ!」
    「せっかく来たんだもの、しっかり楽しんで帰らないとね」
     鳳凰院・那波(朧月姫・d00379)と笙野・響(青闇薄刃・d05985)は、2人並んで声を張り上げる。

    『どうか どうか収まって
     この気持ち まだ知られたくない
     この気持ち まだ大切にしたい』

    「ではみなさん、ウェーブです!」
     皇・銀静(中学生ストリートファイター・d03673)の合図に、前列の灼滅者達が腕を上げ下げして波のような動きを作った。先日淫魔を灼滅したばかりで気まずい思いをしていたギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)も、空気を読んでそれに合わせる。
    「夢中ですね清十郎さん……」
     ノリノリでウェーブに参加していた橘・清十郎(不鳴蛍・d04169)に、伊勢・雪緒(待雪想・d06823)の半目が突き刺さる。
    「……むう……アイドルさんは魅力的ですが…むむむー!」
    「はっ!ちちち、違うんだコレは! ほら、折角代々木まで来たんだし終わったらお茶して帰ろうよ!」
    「もう……しょうがないから誤魔化されてあげます」
     雪緒の返事に冷や汗をかきながら、清十郎は後ろ手にCDを隠した。

    『ドキドキ(ドキドキ) ドキドキ☆ハート
     ドキドキ(ドキドキ) ドキドキ☆ハート
     ドキドキ(ドキドキ) ドキドキ☆ハート』

     歌詞の終わりと共に、灼滅者達から拍手が沸き起こった。
     ステージの準備の間、照明がいったん絞られる。

    ●ライブ中の灼滅者達
    「うーん、表現者として2流以下です。やはりアイドルって微妙なのです」
     仁王立ちした仙道・司(オウルバロン・d00813)は、そのまま会場前方へと突っ込もうとする。
    「ボクが代わりに歌って盛り上げてやります!」
    「ふんっ!」
     天瀬・ひらり(ひらり舞います・d05851)のラリアットが、ステージに向けて突撃しようとしていた司を吹き飛ばす一方、突如としてフンドシ一丁になった榎本・泰三(憤怒の拳・d11151)が周囲の女性陣からの攻撃によってフェードアウトする。
    「える! おー! ぶい! いー! らぶりー! ラブリン! フォオオオオオ!!!!!!!」

     泰三の残した声の残響が響く中、ラブリンスターのライブは再び幕を開ける。
     今度はファーストシングル、セカンドシングルや、カップリング曲を順に歌っていく流れのようだ。
    「うーん、よく見えないなー」
     後ろの方に来てしまった城橋・予記(お茶と神社愛好小学生・d05478)が『ダブルジャンプ』でピョンピョンと飛び跳ねている。

    「よく見えませんか? それじゃ、ラブリンさんに応援の気持ちが届くよう肩車して目立たせてあげましょー」
    「い、いきなり何ですかー!?」
     大胆にも篠原・小鳩(ピジョンブラッド・d01768)を担ぎ上げた花檻・伊織(懶惰の歌留多・d01455)。その顔色が小鳩の足で首を締め上げられて青くなっていく。

    「アイドル淫魔か、こうして見れば普通のアイドルとあまり変わらんな」
     観客席後方から盛り上がる会場の様子を見つめ、有須・芳江(逆十字を背負いし反逆の乙女・d01572)はそう感じていた。逢坂・啓介(赤き瞳の黒龍・d00769)や江田島・龍一郎(修羅を目指し者・d02437)もまた、後方から会場を見張りつつ同意を示す。
    「せやな。スタッフも別に変な動きする様子はなし……」
    「下手な動きを起こそうとする人も、今のところはいないようですね」
     江島・彩夏(高校生殺人鬼・d15927)はほっと安堵の息をついた。
    「もし来ても俺達がいるさ! ライブの邪魔は誰にもさせねぇ!」
     新谷・流鬼(鬼神・d16474)は仕舞ってあるスレイヤーカードを意識する。
    「しかし、友好と一口にいっても……淫魔と僕たちの価値観が同じかどうかは考えないとな」
     最上川・耕平(若き昇竜・d00987)の指摘は、今回の件で、最も気にしなければいけない点ではあろう。

    「にしても……ムゥ、ホントにふつーにアイドルソングデスネ」
    「特に暗号とか……そういうのもない、かな……」
     天鈴・ウルスラ(ぽんこつ・d00165)が顔をしかめるのに、青和・イチ(布団と湿気と仄明かり・d08927)がステージ上を観察しながら、そう告げる。
    「電波曲とは言わんが、こういう曲を聴いていると頭が痛くなりそうだな」
     鏑木・直哉(元倉庫番・d17321)がわずかに顔をゆがめた。
    「テレビとかでしかみたことなかったんですが、ライブってこんなんなんですか?」
     ライブの雰囲気に呑まれた様子で、織部・京(紡ぐ者・d02233)がドキドキとする胸を抑える。

    「会場自体にも、特に不審な点は見当たらず……と」
     事前に周辺を調べてきた小野屋・小町(二面性の死神モドキ・d15372)が報告する。
     エクスブレインが普通のライブだと言っていたが、それでもなお信じられない者がいたというのは、それこそダークネスに対する不信感の表れだろう。
     洗脳などを気にしていた迅・正流(黒影の剣士・d02428)や呉羽・律希(凱歌継承者・d03629)、シュテラ・クルヴァルカ(蒼鴉旋帝の血脈・d13037)の3人組も、歌自体にそうした意図は籠められていないと結論していた。
     彼らだけではなく、桐条・あやめ(小学生神薙使い・d14942)のようにラブリンスターの歌に魅了の力などが籠められているのではないかと考えていた者も少なくないが、歌自体にそうした力はないようだ。
    「でも、歌やラブリンスター自体に魅力を感じて、CDを買う人はいそうですね」
     彼女にとっての問題はバベルの鎖ということなのだろう。
    「まばらに一般人もいますが、本当にライブに聞きに来ただけみたいですね……」
     相手からの提案を鵜呑みにできない自分と、ストレートに信用する他の灼滅者達、どちらが正しいのだろうと御影・ユキト(幻想語り・d15528)は目深にかぶった帽子の下から会場を見る。
    「穏当に終わるか」
     いざとなればサウンドシャッターでも使おうかと考えていた伐龍院・黎嚇(龍殺し・d01695)は、安堵とも期待外れともつかない溜息をついた。

     ライブの合間に上名木・敦真(高校生シャドウハンター・d10188)が調べた限り、ラブリンスター勢力といわれる者達はラブリンプロダクションなる芸能事務所に所属しているらしい。
     ラブリンスターをはじめとして、何人もの男女の淫魔が所属しているが、やはり中心はプロダクション名の通りラブリンスターだ。
    「サイキックアブソーバーによって強力なダークネスの活動が制限された現況において、最強クラスの力を持つラブリンスターを筆頭として、淫魔たちが集ったと考えるのが妥当ですか」

     雨霧・直人(はらぺこダンピール・d11574)は会場の端から、黙り込んだままステージ上を見つめる。
    (「……ラブリンスター……ひたむきに頑張る売れないアイドル……という演技をしているのでなければ、なんというか…普段のキャッチコピーだとかやらしいダンスだとか、プロデューサーにやらされているだけなのでは?」)
     実際、ダークネスとしての全力を尽くせば地道なアイドル活動などする必要もない……が、今のラブリンスターには、そうした『やらされている感じ』は全く感じられない。
    「普通にアイドルなのかな?」
     静かに見学している叢花・天音(孤独の花・d12803)は、じっとステージ上を見る。

     アスル・パハロ(幸せの青い鳥・d14841)は羽嶋・草灯(三千世界の鳥を殺し・d00483)に肩車をされ、歌うラブリンスターを見ていた。
    「ルー、あんな風。なる、かな……」
    「ルーはそのままで居てくれていいわよ……」
     渋い顔をする草灯に、ルーもこくりと頷く。
    「ルーも、そのまま。いい……」

    「キャーッ!!」
     開始前までは淫魔ということで気にしていた飛鳥来・葉月(中学生サウンドソルジャー・d15108)も、今は気を取り直して盛り上げにかかっていた。
     手製のうちわやライトをリズムに合わせて振り回す。

    「ウヒョー! 生ラブリンたんかわいいでござる!!」
    「すごい熱意だねちぽりん! ハイッ! ハイッ! ハイハイハイッ!!」
     息を合わせて2人で踊る篠田・文生(踊る指・d15185)と輝夜坂・千歩(中二病が卒業できない・d15480)。女性的な顔立ちになっている千歩の『エイティーン』が解けた後で待ち受ける悲劇を文生のバベルの鎖は感じ取っていなかった。

    「今は事を荒立てるのは野暮だもんね……踊る・歌う・楽しむ……それが正解!」
     喜屋武・波琉那(淫魔の踊り子・d01788)が場をさらに盛り上げるべくシャウトを上げる。
    「んっきゅーい! らいぶってすげぇの!」
     フリーサイズのはっぴの袖をだぶつかせながら、竜胆路・てりやき(鳳凰戦士ギオンショウジャー・d05494)は、うちわを振りながら場を楽しんでいた。

    「女淫魔仕込みの演奏ですけども、同じ『淫魔』のライブを盛り上げる事に功を奏するとは……」
     ダイナマイトモードで本来以上に露出度を高めたミルフィ・ラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・d03802)が、さらに盛り上げるべく観客席で過激なダンスを見せ始める。
    「演奏会と窺ったので普段通りお着物で参りましたが……私達、少々浮いているようですね?」
     琴葉・いろは(とかなくて・d11000)は、一緒に会場に来た一色・などか(ひとのこひしき・d05591)と姫乃井・茶子(歴女de茶ガール・d02673)に声を向ける。
    「まあいいじゃない!」
     ワクワクした様子でマカロンカラー扇子を振る茶子につられるように、などかは扇子を取り出した。
    「ぼーっとしている場合じゃないですね! 私もがんばります!」
     日舞混じりの舞を踊る友人につられるように、いろはもステップを踏み始める。
    「す、すごい!リズムの取り方やダンスのキレ、表現力が段違いにうまい……!! お~!なるほどっ、ステップはああすると良いのですね!」
     巽・空(白き龍・d00219)が写真を撮りつつ、ダンスのポイントをメモしていく。

     九条・真人(火炎魔人・d02880)は会場の雰囲気に呑まれた様子の藤堂・丞(弦操舞踏・d03660)に、ケミカルライトを渡して促した。
    「ほら、丞も叫ぼうぜ! LOVEラブり~ん!!」
    「なん、だと…」
     いや、お前さんキャラ変わりすぎじゃないか。
     真人の変貌に茫然とする丞。
    「……別にライブとか初めてで楽しみとかじゃないんだからね?」
    「あ、別に私も初めてだけれど、さびしいから師匠呼んだんじゃないんですよ?」
     琴月・立花(高校生シャドウハンター・d00205)と折原・神音(鬼神演舞・d09287)、2人はぎこちない態度ながらも、場の空気に乗っていた。
    「湊君、ライブって案外熱気が凄いでしょ? 汗拭いてあげる」
     タオルで顔を拭い、水分補給にペットボトルを飲んだ海堂・月子(ディープブラッド・d06929)は、稲峰・湊(手堅き領域・d03811)にそれを手渡しする。
    「湊君も。喉渇いてるでしょ?」
    「わ、ありがとっ♪」
     月子から差し出されたペットボトルに口を付けた湊の顔色が、思わず赤くなる。
    「(……あれ、今のって間接キス…っ!?)」

    「L・O・V・E! ラブリン! スター!!」
    「キュート! スイート! チャーミング!」
     千葉魂・ジョー(ジャスティスハート・d08510)とエデ・ルキエ(樹氷の魔女・d08814)が盛り上がっている。
    「ラブリンスターの歌とパフォーマンスは正直どうなのって思うけど、まあ2人共楽しそうだからいいか……」
     君津・シズク(積木崩し・d11222)は、ライブを楽しんでいるらしい2人の様子に苦笑しつつ、誰に言い訳するでもなくいう。
    「そういうシズクさんも楽しんでるんじゃない?」
    「べ、別にこんな歌……私の趣味じゃないし。ただライブに来た以上は盛り上げてやろうってだけなんだからねっ」
    「これがツンデレか……」
    「鼻の下伸ばした人に言われたくないわ、ジョー」

    「って、なぁに? 人が多すぎて見えないわぁ。ちょっとジャック、肩車してー」
    「よし来た!」
     いそいそとジャック・アルバートン(ロードランナー・d00663)が野和泉・不律(サイコスピーカー・d12235)を肩車する。
    「っとと、わーいたかーい♪」
     歓声をあげた不律だが、歌詞に顔をしかめる。
    「でも、この作詞作曲趣味悪すぎじゃないかしらー? この声ならもっとちゃんとしたモノ歌えば良くなると思うのだけれどねぇ」
    「野和泉には不評か」
     ジャックは改めて歌詞に耳を傾ける。アイドル的な拙さは感じるものの、本気で歌っていることは伝わってきた。

    「うぉー! いいぞラブリンスター!」
     普段口元を覆っている包帯をほどいた功刀・慧悟(鮫歯の蒼き風・d16781)は、栄養ドリンクでのどを潤すと精一杯の声援をラブリンスターへと送る。
     かたや焔城・虚雨(フリーダム少女・d15536)は割り込みヴォイスも使い、自らの声援をラブリンスターへと届けていた。
    「はいはいはい! はいはいはい! はいはいはいはいラ・ブ・リ~ン! はいはいはいはいラ・ブ・リ~ン! ラ・ブ・リ~ン!」

    「蒼の王やコルネリウスのことも知ってたみたいだし、他の組織ともつながりあるのかな?」
     手拍子を送りつつ、思帰鳥・子規(時鳥・d16722)はラブリンスターの勢力について考える。他の勢力へ接待攻勢を仕掛けることが可能である時点で、その可能性は高いといえた。
    「その割に他の組織のダークネス来てないけど……私たちが来てるのに驚いたのか、それとも単に人気がないのかしら」
     むしろ後者の方が正しいように、ヴィントミューレ・シュトウルム(ジーザスシュラウド・d09689)は感じていた。
     ともあれ、『どんな勢力と戦いになっても出てくる可能性がある』ということで、武蔵坂学園がラブリンスター勢力と友好的な関係になれば、その出現可能性を抑えることができるのかも知れない。
    「友好的に組むことができるのであれば、とっても良いことでしょうね」
     大場・縁(高校生神薙使い・d03350)はそう考える。
    「しかし、いまいち盛り上がりに欠けるかな……ん?」
     オペラグラスで会場を見ていた、武神・勇也(ストームヴァンガード・d04222)は、ふと後方に現れた気配に気付く。

     そこには、羅武輪星と刺繍された特攻服をまとう九葉・紫廉(レッドアングラー・d16186)とフィン・アクロイド(デッドサイレンス・d11443)がいた。2人は花火の発射台を引き、火薬を満載したライドキャリバーで会場に乗り付けていた。
    「ライブを盛り上げるなら派手さが重要、つまり音も見た目も派手な火薬を使う……!!」
     至極当たり前のように言ってのけるフィンの後方、五十川・未散(鬼神見習い・d14834)が会場後方を見る。
    「来たか、神終よ。お主の晴れ舞台だ」
    「列が通ります、開けてください!」
     アイスバーン・サマータイム(精神世界警備員・d11770)がつけた道を、神終・人(酔生夢死・d12336)は全力でダッシュしてくる。
    「ジン君きたーっ!! 受け取ってー!!」
    「部長さんファイトです!」
     全裸に葉っぱ一枚という姿から、途中に潜んでいた部員の柏木・耀亮(シムシャイ・d01725)が取り付けた飾りに未散の持ち出したウィッグ、オリキア・アルムウェン(ハンガーマスター・d12809)が取り出したスカート、荻田・愛流(盗人の猫好き・d09861)が取り付けた巨大猫のぬいぐるみ型パラシュートと猫耳に来海・柚季(柚子の月・d14826)がつける髪飾りと、次第にフリフリになっていく。さらにそれらを統合し、
    「プリンセスモードォォォォオオ!!」
     綺羅光と共に、葉っぱ姿はもはや素敵な衣装へと変貌していた。
    「あの姿を見て頂きたい! あれこそ部員ブロデュースによる部長神終人……否、シャドハンアイドル・カミオワンスターの歓迎衣装! 悪気がある訳ではなく最も似合う衣装こそが歓迎に相応しいという心の現れ! 本当であるよ信じて」
     鬼神楽・神羅(鬼の腕を持つ二代目小僧・d14965)が誰も信じないであろうことを言う。
     愛流に懐柔されていた淫魔の警備員が走ってくるが、時すでに遅し。
     人は勢いをつけ、フィンが運んできた花火の発射台へと飛んだ。
    「聴いてくださいラブリンスターさん! これが! 僕達の! 気持ぐおっ」
     言葉が途中で異音と共に途切れる。
     そのままの姿勢で、ライブを楽しんでいた灼滅者達からの迎撃を受けた人はどこか彼方へと吹っ飛んで行った。
    「あっちゃ~……」
     花火をあげようとしていた桜木・結衣(フリーダム魔法少女・d14241)が、何かマズい音とともに落ちる彼らの部長を見送る。神羅がしみじみと言った。
    「これが神終どのを見る最期になるかも知れぬな」
    「よーし終了ー。あとはライブ楽しもうぜライブ」
     しみじみと言って、紫庵たち部員は何事もなかったかのように再びライブを楽しんでいく。
     あまり心配している様子はなかった。
     どうせサイキックでなければバベルの鎖で大したダメージは受けないのだ。
     むしろ、この状況でも平然と歌い続けるラブリンスターのプロ意識は大したものには違いなかった。
    「もしもし? 警察ですか? 今、変態が代々木公園の西に吹っ飛んで行来ました。捕まえてください」
     容赦なく身内を叩き売る阿久沢・木菟(忍たまだいすき・d12081)。もっとも警察に捕まるようなことはないだろうが、社会的に死んでも頑張ってもらいたいところだ。

    ●飛び出せ初恋ハンター!
     【夢幻回廊】の面々が主に音の被害を受けた周囲の灼滅者達によって叩き出されると、ライブは何事もなかったかのように再開した。
     スピーカーから、テンポの速いイントロが流れ始める。
    「これは!」新曲の予感に駿河・香(ルバート・d00237)が身を乗り出す。
    「新曲だね」
     ケミカルライトの色を変える九条・茜(夢幻泡影・d01834)。
     天鳥・ティナーシャ(夜啼鶯番長・d01553)が見上げるステージの上、ラブリンスターがバックダンサー達を引き連れて現れる。
    「見逃せないですね」
     新曲への期待に、会場の興奮は高まりを見せていた。
    「ライブって初めてだけど、凄い人の流れで……にゅー!?」
    「危ないですよ」
    「ふぅー、助かったのです、ありがとうございます」
     犬神・夕(黑百合・d01568)に服をつかまれ、人波に流されかけた御来屋・胡桃(The Abyss・d00649)はなんとか踏みとどまる。
    「危ないところでしたね」
    「う、うん」
     夕と手をつないだ天峰・結城(全方位戦術師・d02939)が、優しい目を向ける。

    『恋に恋するお年頃 初恋はまだまだなのかな
     告白できない? 勇気がない?
     それじゃあ わたしに初恋choudai☆
     わたしだったら エビバディOK!』

     ドキドキ☆ハートLOVEなどとは打って変わって、ステージ上を左右に動きまわりながら歌うラブリンスター。
     8人で『ラ・ブ・リ・ン・ス・タ・ア・ン♪』と書かれたウチワを手にした【純潔のフィラルジア】の面々のうち、十七夜・狭霧(ロルフフィーダー・d00576)は、『本物』なファン達の本気に軽く引いていた。
     風宮・壱(ブザービーター・d00909)がポツリといった。
    「さっきからスカートの中よく見えるなぁ……」
     水海・途流(音狂・d08440)は感嘆の息を漏らす。
    「すげー、ラブリンスターまじ見た目とか二次元から出て来たみたいじゃん!」
    「けっ、ビッチアイドルじゃねぇか」
     雪吉・リヒト(中学生サウンドソルジャー・d00893)は口では言うが、オタ芸に興味があるようで、先ほどから親衛隊連中を物珍しげに見ている。
     そして、オタ芸を演じるファンの典型のような男が、同クラブに所属する水城・恭太朗(純情ロールバック・d13442)である。
    「あの、先輩。さっきから気になってたんですが、それってもしかして……」
    「ああ、作って来たぜ『旧校舎』でな……!!」
    「「「全部殲術道具かよ……」」」
     つまりは完全武装であった。会場入りの際、警備の淫魔たちの目が微妙にこちらに向いているのはそういうことかと、一同は思わず納得する。
    「もうお前の嫁でいいよ、ラブリンスター」
     星野・優輝(戦場を駆ける喫茶店マスター・d04321)のどこか投げ遣りな応援の言葉を受け、恭太朗はさらに燃え上がった。
    「それラ~ブ! ラ~ブ! ラ~ブ! ラ~ブ!」
     知っている灼滅者の変わり果てた姿に、早鞍・清純(全力少年・d01135)がバックダンサーを物色しながら呟く。
    「これが信者か……」
    「無茶しやがって……」
     駒瀬・真樹(高校生殺人鬼・d15285)が敬礼して恭太朗を見送った。

    『恋は GET ON! GET ON! ハンティング
     誰でもとことん 愛してアゲルっ!』

     ラブリンスターが低い姿勢を取るたび、豊かな胸が大きく揺れる。
     【純潔のフィラルディア】のうちラブリンスターがストライクでない者達がバックダンサーの品評会などしている一方、別の意味でバックダンサーに注目している者達もいた。
    「あいつらは確か……」
     天方・矜人(疾走する魂・d01499)と仲村渠・弥勒(マイトレイヤー・d00917)がラブリンスターの後ろに目を向ける。
    「リーダーはヒヒイロカネ銀虎といったかな」
     ヒヒイロカネ銀虎に佐藤優子。『不死王戦争』で姿を見せた淫魔たちも、ラブリンスターの後ろで、バックダンサーとして彩りを添えている。服装の露出度はある意味では高い。
    「悔しいが、今はやれないな……」
     フードの下で舌打ち一つ、七瀬・仁人(ヘマタイト・d02544)は銀虎を睨む。

    『GET ON! GET ON! 追いかけて
     捕まえてあげる 私は初恋ハンターっっっ!!』

     思いっきり声を張り上げたラブリンスターが、バックダンサーと共に思いっきりジャンプする。
    「あうぅ、着ぐるみだと熱気がキツイクマ……ラブリンスターもアツイクマ?」
     会場の熱気に、パンダの着ぐるみを着ていた海野・歩(ちびっこ拳士・d00124)は目を回しそうだ。
    「りっちゃん、何で前にでるの! みーえーなーいー!」
    「お前にアレはまだ早い。教育上よくないっつの」
     ラブリンスター達の踊りから、水瀬・ゆま(箱庭の空の果て・d09774)の視線を遮る神堂・律(悔恨のアルゴリズム・d09731)。
    「もー、わたしだって子供じゃないんだよ!」
     ゆまの文句をまあまあと受け流す。
    「ううーん、このハッピとメガホン、なんかボッタくられてないか俺!?」
     買った品物と財布の中身を改めて、悩む森・緑郎(ビビットグリーン・d03602)。
    「まあ、いいじゃないか。ほら一緒にやるぞ、『ら~ぶり~ん』」
     いまひとつ乗り切れない様子のライラ・ドットハック(蒼の閃光・d04068)は、周囲に合わせて手を振っていた。
    「あの胸、あのパフォーマンス……! これは……思春期男子ならイチコロだね……!」
     月詠・千尋(ソウルダイバー・d04249)は衝撃を感じたようにメガネの位置を直す。
    「うーん、わたしの背だと全然見えないかも……」
     エーミィ・ロストリンク(黒い魔狼のオルトロス・d03153)は荻原・茉莉(モーリー・d03778)に合わせて、ラブリンスターに合いの手を入れる。
    「すいませーん、ちょっと前屈んでもらっていいですかー?」
     緑郎の声に、前にいた灼滅者が少し姿勢を下げてくれる。
    「ありがとっ!」
     茉莉は緑郎と前の灼滅者に礼を言うと、うちわに書いた『ピースして!』の文字をラブリンスターに向ける。
     その文字が見えたのかどうか、ラブリンスターはVサインを作るとにこやかに一回転。
    「おお……!」
     わずかに反応があったことに喜びが湧き上がるのを感じる茉莉。
    「アイドルの追っかけってみんなこんな気持ちなのかな」
    「ハマってる目だね茉莉ちゃん!」
    「いや、エーミィこそノリノリだよ……」
     ラブリンスターに手を振るエーミィに、千尋はボソリと指摘する。

    『恋するあの人 どんな人?
     あなたの気持ちを 受け止められる?』

     大きく腕を広げ、すべてを受け入れるというかのような仕草を見せるラブリンスター。そのまま腰を揺する動きには、どこか淫靡さが感じられた。
    「この距離なら双眼鏡とかはいらないかな」
     謝華・星瞑(紅蓮童子・d03075)はステージ上を観察していた。大規模なライブ会場と違ってモニターなどはないが、狭い分、声は隅々まで響いている。
    「ラブリンスター。天然だか切れ者だか実際の所は分からんが、場を制しているのは間違いなく奴だ。このカリスマ性、油断は禁物だな」
     渋く決めた文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076)の眼前で、低い姿勢をとったラブリンスターの胸が、衣装からこぼれそうになる。
    「……場を制しているのは間違いなく奴だ」
    「ら~ぶ~り~んっ!」
     かつて淫魔となっていた時期のある綾部・茜(緋桜雪・d07249)にしても、ラブリンスターの想いは悪意なくとも必ず人を傷つけるであろうことが分かっている。
     その辺りは、慈愛の心だけで人の精神を夢に閉じ込めようとした慈愛のコルネリウスと共通する。ダークネスの精神は常人とは一線を画する。別種族のものと考えた方が楽だった。

    『わたしだったら だいじょうぶ
     あんな事こんな事 何でもオッケー!』

     ラブリンスターが再び飛び跳ね、衣装の裾が大きく揺れる。
     樹・三柑(インザウォーター・d07113)が盛り上がる会場の様子に溜息をついた。
    「あたしもご当地アイドルがいいなあ。そーいうのあったらいいのになー」
    「三柑さんも一緒に歌っちゃいましょう! ポンパドールさんも! そんなそっぽ向いてたらもったいないですよ?」
     年下の石屋・あか里(点灯女・d12406)に、ポンパドール・ガレット(ちびフェニックス・d00268)は赤面でいう。
    「ちょ、ちょっとどうすんだよ、どこ見てればいいんだよコレ……!」
    「じゃあ、あのバックダンサーの人でも見てたら?」
     三柑が指差す先には、うまくバックダンサーとしての売り込みに成功した鷹合・湯里(鷹甘の青龍・d03864)の過激な衣装やバックバンドとして潜り込んだ不渡平・あると(父への恨み節・d16338)、水走・ハンナ(東大阪エヴォルヴド・d09975)たちがいる。
     が、最も異彩を放っていたのは、なぜか僧服で踊る卜部・泰孝(アクティブ即身仏・d03626)だった。
     無表情かつ不気味な顔で踊る泰孝は、まさに即身仏が踊っているかのようだ。
    「我が行為、求道者として失格よ。されど、一度俗世を見、誘惑に身を任せ、戻る事も一つの道」
     他のバックダンサー達と同じく胸を強調するポーズをとりながら、泰孝は淡々と踊り続ける。
     その無表情を見ているうち、ポンパドールは素に戻っている自分に気づいた。

    『恋は GET ON! GET ON! ハンティング
     みんなにトキメキ 恋のドキドキ』

     胸を強調し、淫靡な仕草でマイクをさするラブリンスター。
    「やだ、大胆……」
    「えっと、お姉ちゃん、どうかしたの? 見えないよ?」
     日野森・沙希(劫火の巫女・d03306)の目をふさぐ日野森・翠(緩瀬の守り巫女・d03366)。
    「ブロマイドでも買っておきましょうか、まぐろさんへおみやげですよー。喜んでくれるかなー」
     或田・仲次郎(好物はササニシキ・d06741)はステージを見ながらそう考える。
    「あの子にはまだ早そうね」
     まだ刺激が強いと、芦夜・碧(無銘の霧・d04624)は弟の目をふさぐ。
    「あの過激な振付は、お茶の間に放送するには刺激が強すぎる気もするがな」
     ヴァイス・オルブライト(斬鉄姫・d02253)は首をかしげる。
    「でも基準的に18禁じゃないんだよねぇ……」
     『見せられないよっ!!』と書いた立て看板を出すべきか迷う叶・一二三(輝装闘神レイヴァーン・d12033)。
    「イエーイ、ラブリン可愛いよ!」
     朔夜・碧月(さくよにてるつき・d14780)が拳を振って声援を送る。
     リヒト・シュテルンヒンメル(星空のミンストレル・d07590)もリズム感に乗って、体が自然と動くのを感じる。
     見た目派手なパフォーマンスに目を奪われるが、ダンスチューンとしても問題のない出来だ。ラブリンプロダクションの作曲家の仕事はかなり良いものと見える。
    「歌詞は好みが分かれそうですが」
     ラブリンスターが気に入っているなら良いのだろうか、とリヒトは思う。

    『GET ON! GET ON! 追いかけて
     捕まえてあげる 私は初恋ハンターっっっ!!』

    「エローイ! ラブリンエローイ! こっち見てーーーーっ!」
     フィルマ・ヴィオラ(中学生シャドウハンター・d16356)の声援に、ラブリンスターは投げキッスを会場にして寄越す。
    「……ゆ、揺れた! ゆ、揺れた! く、くそ、あの格好はけしからんと思うぞ!? なんだあの谷間! ラブリンスターめ……こんなところで俺達灼滅者を魅了しようなんて、卑怯な!」
     ラブリンスターの体のごく一部を凝視しながら騒ぐ上倉・隼人(伝説のパティシエ・d09281)。
     一方、マリーアーリア・ブラックルーン(腹ペコ幼女・d01794)はより正直だった。
    「……おっぱいでかい……ぷるんぷるんしとる……」
     本人いわく幼女の嗜みと、マリーアーリアはダンスと共に揺れるラブリンスターの胸をまじまじと凝視する。
    「……もっとハードな曲の方がいいんじゃないか、ガールズロック的な」
     重傷のために包帯でぐるぐる巻きにされ、パンクファッションのような姿になった瑠璃垣・恢(キラーチューン・d03192)が口にした寸評に、瑠璃垣・絢(爪紅メロウ・d03191)は肩を貸したままで怪訝な視線を向ける。
    「いや、彼女アイドルでしょ?」
    「心がこもっていれば、きっといい曲なんだろう」
     偲咲・沙花(天涯の一片・d00369)は、激しく踊り、歌いあげるラブリンスターの様子を見つめる。

    『運命の糸 信じてる?
     赤い糸の先 どこにあるのかな
     あれあれ その糸 よく見てみてら
     全部わたしが ゴールじゃない? Yeah!』

    「おっと、瑞樹は見ちゃダメだ」
    「え、いきなりびっくりしたんだよ……どうしたの?」
    「いいから」
     水無月・弥咲(アウトサイダー・d01010)に目隠しをされ、景山・瑞樹(中学生ストリートファイター・d04483)は不思議そうな声を上げる。
    (「ところどころにエロい仕草が入ってくるから油断できないな……」)
     保護者組の悩みは深い。
     【天文台通り中学2年C組】に転入したてのセレスティ・クリスフィード(中学生殺人鬼・d17444)は、会場の雰囲気に感嘆の息をこぼす。
    「これがラブリンスターのライブなんだ、すごいですねー」
    「なんだかすごいところに来ちゃったね」
    「凄い人ですよね…一般の人のライブもこんな感じなのでしょうか?」
     高峰・緋月(全力で突撃娘・d09865)と穂都伽・菫(嘘つきな優しさと想いを込めて・d12259)が、感心した様子でステージ上を見る。
     その横、神橋・宮子(空想殺塵・d12280)はジト目無表情のままに激しくヘッドバンギングを繰り返していた。
     ポニーテールがバサバサ揺れて後ろの客を思いっきり攻撃しているが、バベルの鎖があるから平気だろう。その姿勢でありながらも、ラブリンスターをたたえる論評はとどまることを知らずその唇から溢れ出る。
    「清純を尊ぶ日本のアイドル界に一石を投じるその姿勢は、例え淫魔の性であろうと新たな音楽の幕開けを……」
    「だよね! 淫魔とはいえ可愛らしいアイドルなんだしもっと有名に……」
     伊達メガネをはずした田中・牡丹(幸運の調べ・d16532)が宮子に同意を示す。クラスメイトたちの様子に、セレスティはそっと微笑んだ。

    『恋は GET ON! GET ON! ハンティング
     悩んじゃだめ 悔やんじゃダメっ!
     GET ON! GET ON! 追いかけて
     捕まえてあげる 私は初恋ハンターっっっ!!』

    「しかし仮にもアイドルが激しくやらしいダンスってのはいかがなものか。俺ら思春期男子がアイドルに求めてるのはそういうのじゃなくて。もっとこう、可愛さや清楚さの象徴としての理想像と言うか……!! フォーゥ!」
     そう言いながら、持ち込んだ一眼レフカメラでラブリンスターを撮りまくる下総・文月(夜蜘蛛・d06566)の姿にはまるで説得力というものがなかった。
    「……もしかして、私もアレと同じように見えてるのかしら」
     淫魔たちを写真に収めながら、イリス・ローゼンバーグ(深淵に咲く花・d12070)がゲッソリとした様子でうめく。
     だが、それも写真にかこつけてスタッフの淫魔に話しかけている由井・京夜(道化の笑顔・d01650)に比べればまだマシではあった。
    「ゴメンね、可愛かったからつい写真撮ろうとしちゃった。嫌だったかな?」
    「えー、ぜんぜんそんなことないしー。でもラブリンスター様撮らなくていいの?」
    「今は君に興味があるなぁ。趣味とかは?」
    「君みたいな積極的なコは嫌いじゃないよ?」
    「いや、そういう意味の趣味じゃなくて」
     情報収集と言っているが、明らかにナンパだった。

    「おお、な、何だかすごい――ですね」
     李白・御理(外殻修繕者・d02346)は気まずそうに夕凪・緋沙(暁の格闘家・d10912)を見る。もっとも、とうの緋沙はといえば、ライブに夢中だ。
    「きゃー、ラブリンスターさん素敵ですー。アンコール! アンコール!」
     異叢・流人(白烏・d13451)も声を上げる。
    「アンコール! アンコール!」
     それを待っていたというかのように、ラブリンスターが再び出てくるとアンコールとしてカップリング曲を歌い上げる。
     歓声のうちに、ライブステージは幕を下ろした。
    「ラブリーン!!」
    「おつかれさま!」
     長久手・蛇目(地平のギーク・d00465)や葦原・凪(小学生神薙使い・d06873)が最後に声援を送る。
     ミゼ・レーレ(救憐の渇望者・d02314)の放った花束を受け止め、ラブリンスターは花の咲くような笑顔を浮かべ、ステージ裏へと引っ込んでいく。

    「……終わったか」
     紺野・茉咲(居眠り常習犯・d12002)はほっと息をつく。
     最強クラスといわれるラブリンスターの意図が理解できるまでは、あるいは理解したとしても、こうした不安は消えないのかも知れなかった。

    「えっと、オレのコト、覚えてるッスか?」
     高宮・琥太郎(ロジカライズ・d01463)は、ライブの終わったステージ裏に設けられた、バックダンサー達の控えるスペースにヒヒイロカネ銀虎を訪ねていた。ジュラル・ニート(マグマダイバー・d02576)や、佐藤・優子を探す黒洲・智慧(九十六種外道と織り成す般若・d00816)も一緒だ。
     ダンスを終えた淫魔たちの楽屋は、どこか喉をひりつかせるような香気で満ちていた。
    「先日はお世話になりました」
    「高宮・琥太郎ッス。先日はどうも。……傷、もう平気ッスか?」
    「もう平気よ。それより、これから着替えるんだけど……」
    「それは丁度良い。その乳、揉ませてもらいますよ」
     突然やる気になるジュラルの後ろ襟首をつかんで、琥太郎は慌てた様子で楽屋を後にする。
    「す、すまないッス! 今後はできる限り友好的にいきたいッス!!」
    「それじゃぁ、縁があったらまた今度……ね」
     2人の背に、さざめくような淫魔たちの微笑が届いた。

    ●握手会
     ライブ本番が終わると、近くのイベント広場に場所を移し、ラブリンスターとの握手会が始まった。既に日が落ち、暗くなり始める中で、スタッフの淫魔たちが立てるライトが広場を照らし出す。
     ラブリンスターの近くには可愛らしい淫魔のスタッフが控えており、握手前にウェットティッシュでこちらの手を丁寧に拭いてくれる。
    「おっと、案外きちんとしているんだな」
     自分で消毒用指アルコールを持ち込んでいた犬塚・沙雪(アクター・d02462)は思わず感心した。理由は特に説明されなかった。何で手が汚れる心配をしているのか知らないが、淫魔アイドルの握手会というのは、そういうものらしい。
     敷島・雷歌(炎熱の護剣・d04073)が見る限り、他のダークネス組織の介入などもなさそうだ。
    「友好、関係が、築ける、なら、それに、越した、事は、ない」
     願っていない行動をする者がいないか、十六夜・深月紅(哀しみの復讐者・d14170)はラブリンスター達に気付かれないよう、握手会場付近でそっと見守っている。
     列の後方付近では、虹燕・ツバサ(紅焔翼・d00240)がスタッフの淫魔たちに交じって列の整理を請け負っていた。
    「皆が順番待ちしています。どうか落ち着いてお待ちください……っつってんだろそこ! 纏めて最後尾送りにすんぞコラァ!」
    「……おいおい」
     淫魔側の警備の様子を見ようと思っていた元町・ローズ(ネットサルベージ裏情報屋・d02444)は、その姿に思わず肩をコケさせる。
     そして、先頭争いに勝利した美月・五仁(キックスターター・d02553)が、ラブリンスターの手を取る。
    「これからも頑張ってください! 応援してます!」
    「ありがとうございます!」
     五仁の熱い一言と共に、握手会は始まった。

    「らいぶ楽しかった! 応援するぜ!」
    「ありがとうございます! 応援よろしくお願いします!」
     雨冠・六(殺人忘却鬼・d04660)と握手するラブリンスター。灼滅者達の目にも、その様子に悪意を見出すのは困難だった。
    「とても魅力的でびっくりしてしまったよ。ライブも素敵だった。キミとは良い関係が築けそうだね。これからも仲良くしてくれると嬉しいな」
    「はい! これから、武蔵坂学園の皆さんが仲良くしてくれたら嬉しいです!」
     志賀神・磯良(竜殿・d05091)は笑顔でラブリンスターと握手をかわす。

    「お願いです、未成年だからえっちなことはNGですが、それ以外なんでもヤリます! お姉さまと呼ばせてください!」
    「淫魔になったら、こちらに連絡してくださいね」
     芦田野・那雀(伝説の雀姫・d05234)は熱心に頼み込む。
     ラブリンプロダクションの連絡先を伝えられたが、闇堕ちしてそれを覚えていられるのかどうか。
    「初めまして、橘朋佳です。今日はお誘い頂き、嬉しかったです」
    「来て下さってありがとうございます!」
     優しくラブリンスターと握手する橘・朋佳(中学生神薙使い・d07934)。
     えっちな雰囲気のダンスは朋佳の美意識とは合いそうになかった。

    「あ、CD、沢山あったのを見かけたんだおっ。いーっぱい売れるなんて、大人気だと思うんだおっ♪」
    「ホントですか!? 嬉しいです、ありがとうございます!」
     実際はあまり売れていないことを知りつつ、マリナ・ガーラント(兵器少女・d11401)はラブリンスターの手をブンブンと振る。見かけたのがブレイズゲートというのは内緒だ。

    「もっと仲良くなれるといいですぅ。これ、プレゼントですぅ……!」
    「わ、可愛い! ありがとうございます!」
     ラブリンスターは彼岸花・深未(ふえぇ系男子・d09593)から、うさぎのぬいぐるみを嬉しそうに受け取る。
    「ライブ、楽しませてもらいました」
     アンリエル・クロスライン(アイソレータ・d09756)は率直に感想を伝える。
    「ありがとうございます! またライブに来てもらえたら嬉しいです!」

    「3rdシングル聞いたよ。俺、4thシングル楽しみにしてたんだ。……5thシングルも楽しみにしてるぜ。発売はいつ頃なんだ?」
    「作詞作曲をしてくださる先生次第ですね。でも、できるだけ早く頑張ります!」
     楪・奎悟(不死の炎・d09165)に、ラブリンスターはそう応じる。
     じっとラブリンスターを見つめると、イルル・タワナアンナ(勇壮たる竜騎姫・d09812)は尋ねた。
    「のぅ、ラブリンスター殿……そのナイスバディはどうやって成立・維持しておるのじゃ?」
    「淫魔になれば一発ですよ!」
    「人類に役立ちそうにないのう……」
     むしろ正反対の返事であった。

    「歌、悪くなかったよ」
     エリアル・リッグデルム(ニル・d11655)は軽く言うと握手を終え、CDを買いに販売コーナーに向かう。
    「今日のライブ最高でした! 生公演みれて良かったです!」
     越坂・夏海(残炎・d12717)も美少女ぶりに驚きつつもそう答える。
     サインを書いてもらうものを用意してこなかったのが惜しまれた。

     魅咲・冴(下品な悪魔はガラスハート・d10956)は感極まったようにラブリンスターの手を握る。
    「私ラブりんの大ファンなの!これからも頑張ってね! 応援してる!」
    「ありがとうございます! 皆さんの声援があれば、私、もっと頑張れます!」

     憑坐・六合(ワンダーワールド・d11240)は緊張で出た手汗を淫魔にきちんと拭いてもらってからラブリンスターの前に出る。
    「君の歌、生で聞けてホント嬉しいよっ!! 新しいCDも楽しみにしてる!!」
    「ありがとうございます! 新曲、ぜひ聞いてくださいね!」
     微笑むラブリンスターに、六合はしばらく手は洗わないでおこうと思った。

     葉新・百花(お昼ね羽根まくら・d14789)は、ラブリンスターと握手を交わすエアン・エルフォード(ウィンダミア・d14788)の様子に嫉妬心が燃え上がるのを感じていた。
    「エアンさん、すごい嬉しそう……」
    「うっ」
     突き刺さる視線に冷や汗を流すエアン。百花はエアンは渡さないと心で宣言しつつも、
    「これからも、頑張ってくださいね!」
     とにこやかに言うのだった。

    「ワッショイデスネー!」
     ラブリンスターウチワを手に満面の笑みを浮かべるホセ・ロドリゲス(マカロニ肉弾列車・d10060)。
     その後ろで赤松・鶉(蒼き猛禽・d11006)は、ラブリンスターの胸部に視線を走らせていた。
    (「事務所公表は96cmッ私の88cmと比べても戦力差は絶対でしょう! しかし、私には今後成長する余地があります。若々しい弾力は負けませんの!」)
    「ヘイ、ユーの番デース!」
     ロドリゲスに呼ばれてラブリンスターに歩み寄り、鶉はその場にへたり込んだ。
    「ヘイ、どうしたんデスカ、鶉!」
    「ま、負けた……」
     未来への希望こそあれ、現在における絶対的な戦力差はいかんともしがたい。

    「学園に与する気はあるのか?」
    「? よく分かりませんけど、皆さんと仲良くできればいいとは思いますよ」
     繊月・緋桐(フラクタルシンフォニー・d07596)に、ラブリンスターは笑顔で返す。
     龍宮・神奈(闘天緑龍・d00101)と龍宮・巫女(貫天緑龍・d01423)の姉妹が手を差し出す。
    「なんか調子狂うけどよ…ま、戦争なんざ俺もごめんだからな。仲良くできるならそれにこした事はないよな」
    「可愛い女の子ならば、敵意がないなら仲良くしたいのはこちらも同じなの。ふふ…個人的にもこれからよろしくね。」
    「はい! これからも、よろしくお願いします!」
     ラブリンスターは笑顔で2人それぞれと握手を交わす。
     加奈氏・せりあ(ヴェイジェルズ・d00105)はラブリンスターと握手を交わし、目を見つめて問う。
    「学園の動向は一個人には制御できませんが、私個人は仲良くしたいな、と思っています。ラブリンスターさんは学園のことをどうお考えですか?」
    「ライブでノッてくれる方に、悪い方はいません! だから仲良くなりたいな、って思います」

     水晶・黒那(子供の夢・d08432)が頑張って創った美味しいクッキーを、ラブリンスターは嬉しそうに受け取った。
    「ありがとうございます!!」
    「う、うむ!」
     ラブリンスターはしゃがみこんで視線を合わせると、赤面する黒那の手を取り、優しく握手する。
    「ライブ楽しませて貰ったわ。これ食って精力つけてくれ」
     鰻丼を差し出して、山科・深尋(落日の虚像・d00033)はラブリンスターの胸をしげしげと眺めた。
    「やっぱ胸を大きいのは良いもんだなぁ……」
     しみじみと言って、深尋は後ろに並ぶ【卓上競技部】の女性陣の胸に視線を走らせて笑うような鼻息一つ。
    「これは惨殺確定ね……」
    「みっひー先輩死刑」
     橘・彩希(殲鈴・d01890)と篠原・朱梨(闇華・d01868)のこめかみがピクリと動く。
    「大事なのは胸のサイズじゃないから。ハハッ」
    「ねぇ、鷲くん、どうしてそれ、私の方を見ていうの……? じゃあ何が大事なのか言ってもらえるかしら」
     笑いかけた篠原・鷲司(旋槍・d01958)の笑顔が、彩希の顔を見て引きつった。
    「大事なのは感度だ……って深尋が言ってた」
    「胸は大きさだけじゃなくて形も大事だよな。形も」
    「莫迦じゃないの!? 2人分だからもう一度いうけど莫迦じゃないの!?」
    「おねーさまがんばって!」
     言い切った深尋と鷲司に対し、彩希の手に握られる解体ナイフ。逃げ出す2人を、朱希の応援を受けた彩希が追っていく。
    「ねえ、椿さんはあんなこと言わないよね?」
    「女性の魅力には、夫々自分らしさってのがあるからね。胸だけをどうの言うのは如何かなってお兄さん思うな」
     朱希の言葉を受けて、上代・椿(焔血・d02387)がきれいにまとめた。
    「みなさん、とっても仲がいいんですね☆」
     強引にまとめて、ラブリンスターが一人ひとりと握手を交わす。

    「さすがにスタイルがいいわね、着物なんかも似合うんじゃない?」
     自身が着物姿の竜胆・山吹(緋牡丹・d08810)は、ラブリンスターをほめつつ花束を贈る。
     花束の中に仕込んだ携帯電話のメールアドレスには気づいてもらえるだろうか。
     董院・薫(高校生ダンピール・d00139)はラブリンスターとツーショット写真を撮ってもらっていた。
    「ラブリンスターちゃんはアイドルだけあってとっても可愛いにゃ、僕ももっと可愛くなりたいっ」
    「男の人でも、メイクすれば可愛くなれますよっ。最近はそういう需要も……」
     話が怪しい方向に行きかけたせいか、警備の淫魔がラブリンスターを制止する。
    「楽しい時間をありがとう」
    「こちらこそ、来てくださってありがとうございました!」
     花一輪を手渡した桜之・京(花園・d02355)とラブリンスターは微笑みかわす。
    「仲良くしたいと言ってくれるなら断る理由はない、よろしくな」
    「はい! こちらこそ、仲良くしてもらえたら嬉しいです!」
     ラブリンスターの顔を見て、真剣な眼差しでいう神楽・希(シンクオブソード・d02373)。
     見つめるラブリンスターの仲良くしたいという思いに、嘘はないのだろう。
    「今日のライブで歌とは心と心を繋ぐ魂のかけ橋だと教えられた……ありがとうな。いくら言葉にしても伝えきれないことがある。もしよければ、だが、いつか俺の歌も聴いてくれねーかな」
    「いつか聞かせてもらえたら嬉しいです!」
     中島九十三式・銀都(シーヴァナタラージャ・d03248)は三味線の封印を解き、今日から練習を再開しようと誓う。
    「楽しかったですよ、ありがとうございました」
     白灰・黒々(モノクローム・d07838)は好意的に握手する。
    「でも、なんでボクたちに対してライブ開いたんですか?」
    「アイドルが仲良くなりたいって思ったときにすることは、ライブか枕営業の二択です! でも今は、枕営業を禁止されているので……」
     しゅんと可愛くうなだれたラブリンスターの、淫魔そのものの返答に、黒々は一瞬唖然とした。後ろでプロデューサーが頭を抱えている。
    「あの、オレらには色仕掛けじゃなくて今後もこういうやり方でお願いします」
     栗原・嘉哉(幻獣は陽炎に還る・d08263)はそう頼む。
    「そうですねー、小さい子とかもいますし……」
    「いや中学生以上でもいきなり大人の階段を登らせるのはやめてください」
    「えー」
     本気で残念そうな様子に、嘉哉は内心で戦慄する。
    「聞いていい事か解らないのだが……デビューして何年目になるのだろうか?」
    「ひみ」
    「次に君は『秘密です』という」
     してやったりと盾神・織緒(悪鬼と獅子とダークヒーロー・d09222)は笑った。
    「ライブって初めてで、正直アイドルや、ぱふぉ?とか……良く判らんけど、凄いと、思った」
     月原・煌介(月の魔法使い・d07908)は左手を差し出す。ラブリンスターは彼の目を覗き込んでいった。
    「あなたの目……哀しい色に見えるわ。何も言わなくていいの。辛いことがあったら、私の曲を思い出してね」
     微笑むラブリンスターに、何も言えずに煌介は手を離した。
     【武蔵坂軽音部】の豊田・陽生(飯ウマ系中学生男子・d15187)は、ラブリンスターとの握手を前に重大なことに気づいていた。
    「……あれ、僕、もしかして、女の子と手をつないだことない……?」
     記憶を掘り返しているうちに、すぐにラブリンスターの前に誘導される。
    (「(あああいい匂いまでするよう、しかも目の前にはおっきなおっぱい…ちょっと見すぎかなあんまり見てもいけないよね」)
     と考えているうち、視線を上げるとラブリンスターの笑顔が目に入る。
    「幸せすぎて、ボク、昇天しそうですう……」
    「だ、大丈夫ですか?」
     ぽよよん。のぼせた様子の陽生を胸で抱き留めるラブリンスター。
     ただラブリンスターは、全くの無意識で、陽生の服のボタンを外そうとしはじめる。
    「何やってるの?」
     どちらに向けて言った言葉かは不明だが、千茅・奏介(高校生デモノイドヒューマン・d16849)は陽生を引き取りつつ、「楽しかったよ」と握手する。彼のDSKノーズは彼女のダークネスとしての『臭い』を感じてはいたが、他の淫魔たちとの差異はあまり感じられなかった。
    「さーて、連絡はあるかどうか」
     携帯メールアドレスをQRコードにして、ラブリンスターの手頸に張り付けた二十世・紀人(虚言歌・d07907)。実際に連絡があるかどうかは神のみぞ知る、だ。

     白岐・明日香(炎を操る女子中学生・d02868)はピンクの花でできた花束を差し出す。
    「ライブ最高でした」
     言いながら握手と共に、接触テレパスで思念を送る。
    『ステージ衣装として見たら本当にアイドルにしか見えないわね。そんなかわいいアイドルとは仲良くしたいけど、アイドルとしての貴方は応援するわ、でも』
    「楽しい握手会でこれ以上言うのは無粋よね」
    「応援ありがとうございます! これからもよろしくお願いします!」
     その言葉に、明日香は自分が一瞬毒気を抜かれたような表情になるのを感じた。

     糸崎・結留(巫女部部長・d02363)は相談を持ちかける。
    「えっと……ラブリンスターさんっ、相談に乗って欲しいのですよ! 今、身近な好きな人が居て……お姉さまは私の事、妹としか思ってないのです。それで、その、ライクじゃなくてラブとかそういう意味で、気を引いたりする方法を伝授して欲しいのです!」
    「まずは寝室にGOですね!」
    「えっ」
    「えっ?」
     相手が淫魔だということを忘れてはいけないのだと結留は痛感した。
    「……どうして、この場所を、選んだ、のですか……?」
    「都内の適した会場ということで、プロデューサーさんが決めてくれたんです!」
     神宮時・蒼(大地に咲く旋律・d03337)の質問に、ラブリンスターはそう応じた。勢力の大方針はともかく、細かい部分は人任せのようだ。
    「次の方、どうぞー」
     言われラブリンスターに近付く 西院・玉緒(鬼哭ノ淵・d04753)。
     だがラブリンスターまで近づいたところで、彼女は不意にスっ転んだ。
    「んん……つまづいて…しまいました……あら……これは……」
     顔の前を覆う柔らかいもの……ラブリンスターの胸を揉みほぐす玉緒。
    「あんっ!」
    「ふむ……」
     そのままお尻やへそまで触ろうとしたところで、彼女……ではなく、ラブリンスターが、警備の淫魔に引き離された。

     守咲・神楽(地獄の番犬・d09482)の右手も、吸い込まれるようにラブリンスターの胸へと伸びる。
    「あんっ、もう☆」
    「おお……っ!!」
     擬音つきで表現できそうな柔らかさを堪能していた神楽だが、やはり警備の淫魔はラブリンスターの方を引き剥がした。
    「ラブリンスター様、そこまでです!」
     アイドルの握手会に「引き剥がし役」はつきものというが、どうも引き剥がすのはファンではなく、トラブルで盛り上がっちゃうラブリンスターの方のようだ。

    「灼滅者としての存在意義に関わりますので闇堕ちする方を堕ちるままに、とはちょっといきませんけど……代わりにバックダンサーやバックコーラスが必要なのであれば、学園の者が協力できる事もあるかと思いますわ。もちろん私自身も含めて、ですのよ?」
     エイティーンで成長したストレリチア・ミセリコルデ(銀華麗狼・d04238)が、思うままその美を示して言う。
    「ありがとうございます。プロデューサーさんにも話しておきますね」
     ラブリンスターは嬉しそうに答える。
    「次のライブも当然やるんだろ?期待してるぜ!」
    「ありがとうございます! 頑張ります!」
     言いながら、久繰・悠(操演術師・d00140)は連絡先を書いたカードを渡す。
    「こういうの初めてだったけど、楽しめたよ。……プレゼント的なものはないがお気に入りの飴ならあるぞ」
    「美味しそうですね、ありがとうございます!」
     神門・白金(禁忌のぷらちな缶・d01620)は完熟メロン味の飴を渡して握手する。陽瀬・すずめ(パッセロ・d01665)の質問は、ファンクラブに関するものだ。
    「ファンクラブに入りたいんですけど、どうすればいいですか?」
    「物販コーナーで加入できますから、よろしくお願いします♪」
     ちなみに300円(払い切り)で会報が時々送られて来たりファンサイトにアクセスできたりという謎のコストパフォーマンスのファンクラブである。
    「ところで相談ナンやけど、このライブ、もう少し工夫したら、もっとうまいこと儲けられると思うんや。儲かったらそれでさらに大きいライブもやり放題、みんながさらにハッピーや!」
     そう持ちかける東雲・泉霞(サイキック商人・d00021)がこれを事前に知っていれば唖然としただろう。
     もっともサイキックがあれば金の調達など思いのままだ。
    「えーと、私、難しいことは分からないので、プロデューサーさんと相談しないと」
     ラブリンスターの返事からも、泉霞は気乗りのしない様子を受けていた。

    「あんまり無理しないで、頑張ってね」
    「ありがとうございます。でもアイドルは肉体が資本ですから!」
     声だけかけ、手を握る前に離れる夕永・緋織(風晶琳・d02007)に、ラブリンスターはガッツポーズ。
    「一度お会いしたいと思っていました。もっと仲良くなれれば素敵ですよね」
    「はい! 皆さんとはぜひ、仲良くしたいです!」
     ラブリンスターは、高嶺・由布(柚冨峯・d04486)に笑顔を向けて握手する。
    「交換留学とか、そう言う機会が有ればいいのですが」
    「一時的に闇堕ちしてもらうとかですかね」
    「いや、それはちょっと……」
     さすがにこの辺りはダークネスだけあってズレているようだ。
    「今も動ける人に限らなくても良いんだけれど、キミが目標としている存在とかって居るの?」
    「トップアイドルの皆さんが憧れですね!」
     紅白出たいです、というラブリンスターに、そういう意味ではないのだが、と思いつつも四月一日・いろは(剣豪将軍・d03805)は握った手を振る。
    「私達学生の前で、えっちなのは控えてくれると仲良くしやすいです」
    「でも学生ジャンルって人気ありません?」
     黒乃・璃羽(ただそこに在る影・d03447)のお願いに、ラブリンスターはズレた答えを返す。
     淫魔にえっちを控えろというのは、鳥に飛ぶなというようなものだろう。
    「おー! 本物のラブリンスターだー! 握手握手ー! これからもアイドル活動頑張ってねー!」
    「ありがとうございます!! 頑張ります!」
     ラブリンスターは声援を送るアリスエンド・グラスパール(求血鬼・d03503)の手を握り返す。
    「皆が皆手を取ってくれるとは限らないぞ。アイドルなら十分承知だろうがな」
    「でも、きっとみんなに歌は通じるって、私信じます!」
     かつては自分も淫魔だったという神條・エルザ(クリミナルブラック・d01676)にラブリンスターは笑顔で返す。
    「新曲良かったよ。でもボクは前作のが好きかも。応援してるから、頑張って」
    「今度の歌も、もっと好きになってくれると嬉しいです!」
     黒洲・叡智(迅雷風烈・d01763)の手を握り返すラブリンスター。
    「歌と踊りは見たけど、エッチは……?」
    「あっ、すみません! ではさっそく……」
     アシュ・ウィズダムボール(潜撃の魔弾・d01681)にラブリンスターは思いっきり食いついた。飛んで来た警備がラブリンスターを引き剥がし、脱ぎかけたパンツを履かせる。

    「俺たち貴女から見たら弱いですよね。どうして仲良くしたいんですか? そうして皆と仲良くして。淫魔が世界を支配するつもりとか?」
     若宮・想希(希望を想う・d01722)の質問にラブリンスターは首をかしげる。
    「いえいえ、ダークネスはみんな仲良くすればいいって、思ってますよ」
     その返答に、想希だけが背筋の寒さを覚える。
     世界支配者について考える時、ここまで友好的なラブリンスターの頭の中でさえ、人類の存在は失念されるのだ。それが、ダークネスの圧倒的な世界支配の証拠であった。
    「お互い譲れない部分はあるけど、こんな風に手を取り合えたらいいな」
    「はい、仲良くしてもらえたらうれしいです!」
     浅守・双人(一人で二人の灼滅者・d02023)に、ラブリンスターは頷く。

     ラグナ・ユニバス(スリーピングタイラント・d02040)はラブリンスターの手を包み込むように握る。
    「私、美しき全ての女性の応援者でございます。これからも頑張ってくださいませ」
    「はい、これからもがんばります。応援、よろしくお願いします! ……わぁ、かわいい! わたしこういうの貰うことってあんまりなくて、本当に嬉しいです」
     ラグナがそっと手を離すと、ラブリンスターの手にはハートと星の手縫いストラップが残っていた。

    「その、私も…あなたと、仲良くできると嬉しいです。あと……その、新曲、絶対買います」
    「ありがとうございます!」
     ラブリンスターは笑顔で、彼女の衣装に気おくれした様子の古樽・茉莉(百花に咲く華・d02219)の手を握る。

    「事務所発表だとマカロンが好きらしいが、本当は何が好物なのだ? 最近のアイドルはそこらへん素を晒す方が人気が出るらしいぞ?」
    「え……でも」
     クラリーベル・ローゼン(青き血と薔薇・d02377)の言葉に、ラブリンスターは後ろにいるプロデューサーに意識を向けたようだった。
    「そうなんですか……? でも、マカロンです☆」
     とりあえず今はという注意書きがつきそうだ。
    「はい、これほんの気持ちですがー」
     カツ丼とマカロンの袋を同時に差し出す一之瀬・梓(ダイヤモンドダスト・d02222)。一瞬カツ丼にも目をやったラブリンスターだが、まずはマカロンの袋に手を差し伸べる。
    「ありがとうございます♪」
    「くっ……」
     同じくカツ丼を持ってきた九十九折・羽織(はぐれ坊主・d12412)だが、本題は別のところにあった。
    「おっぱいも気になるが、そのスカートの中とかどうなのよ! 尻尾触ったらビクッてしちゃうのか、事務所の許可はとれるのか! さあ答えてもら……っておい! まだ話は終わって……」
     騒いでいるうちに、羽織は警備の淫魔に連れ出されていった(ラブリンスターに聞こえたら面倒な事になりそうだったので)。
     あとに残されたカツ丼を、ラブリンスターは受け取ったプレゼントを置いておく場所によけておく。
    「ラブリンスターさん、ずっと前からファンでした! これからも活動がんばってください!」
     そういいながら、砕牙・誠(阿剛さん家のヘタレ忍者・d12673)は握手をしたまま、じーっとラブリンスターの胸の谷間を凝視していた。
    (ぐふ、ぐふふふ……。もうちょっと、もうちょっとでR17レベルの部分が……)
    「はい、そろそろ時間でーす。ラブリンスター様、胸の谷間を視線に合わせて動かすのやめてくださいねー」
    「ああっ、俺の灼滅者としての使命はまだ……!!」
     時間をかけ過ぎ、警備の淫魔が飛んでくるまで、誠はずっと谷間を見つめていた。
    「これからもっといろいろ仲良くしよーねッ!★」
    「はい! 武蔵坂学園の皆さんとは、もっと仲良くしたいです!」
     東雲・夜好(ホワイトエンジェル・d00152)に、ラブリンスターはにっこりと返答する。
    「サ、サインお願いします!」
    「はい! ありがとうございます!」
     買ったCDにサインを書いてもらう結月・仁奈(華彩フィエリテ・d00171)と橿鳥・ならか(骸鳥・d14751)。
     サインを書いてもらう間、2人の視線はラブリンスターの胸に飛ぶ。
    「マシュマロおっぱいうらやましい……」
    「日頃の努力ですよ! 闇堕ちすると胸が大きくなる人もいるみたいですけど」
    「いや、その勧誘はちょっと……」
     美容法みたいに言わないで欲しいところではある。
    「クククッ、貴様がラブリンスターか……」
     黒いドレスに身を包んだリリシア・ローズマトン(嘲笑する吸血少女・d17187)はラブリンスターの前に来ると周囲を確認。
    「ふぁ、ファンですっ、これからも頑張ってくださいっ!」
    「ありがとうございます! 頑張りますね」
     ラブリンスターに微笑みかけられ、リリシアは緊張しながらもサインまでしてもらう。普段の中二病は消し飛んでいた。
    「私、来栖立夏です。灼滅者ですから、特別ダークネスと親しくするつもりはなかったんですけれど……それでもしばらく、戦う理由がない内は仲良くしませんか?」
    「はい! 皆さんが仲良くしてくださるのなら、本当に嬉しいです!」
     来栖・立夏(来栖の巫女・d00188)の両手を握り、ラブリンスターは心から嬉しそうに微笑む。
     タシュラフェル・メーベルナッハ(夜の誘い子・d00216)は、手紙をラブリンスターに渡しながら言う。
    「ラブりん、って呼ばせてもらってもいいかしら?」
    「はい、ラブリンスターでもラブりんでも好きなように呼んじゃってください!」
     ファンが愛称をつけてくれるということが何より嬉しいようだ。
    「どうすれば、そんなに大きく育って……アイドルとして前向きに頑張れるんですか?」
    「アイドルになって、みんなと仲良くなる。それが私の夢なんです!」
     ラブリンスターの瞳は、淫魔でありながらも深く澄んでいる。
     自分の考えまで読み取られたような気がして、氷美・火蜜(銀のフランメ・d00233)は胸が高鳴るのを覚えた。
     七咲・彩香(ネタになるレベルのダイス運・d00248)はラブリンスターをアイドルの先輩ととらえ、嬉しそうに話しかける。
    「とっても可愛いの! 素敵なアイドルさんなの♪ でも、その……。えっちなのは……いけないと、思うのっ!」
    「あなたもアイドルなんですね。アイドルの世界は厳しいんです! えっちなのを嫌ってたらいけません、枕営業だってやってみせないと! ……でもプロデューサーさんがなかなか枕営業の話とか持ってきてくれないんですよねー」 
    「……そういうこと、普通のお客さん相手には絶対言わない方がいいと思うの」
    「でも、男の子はえっちできる女の子とえっちできない女の子だったら、えっちできる女の子の方が良いって思いますよ。これは間違いありません!」
    「え? そ、それは……」
     小学6年生の彩香には難しい問題であった。

     レイラ・キュマライネン(桜花爛漫なる歌姫・d00273)は自らの歌を入れたCDを渡す。
    「あなたが歌っている歌には興味があります」
    「今度聞かせてもらいますね♪」
     若生・めぐみ(癒し系っぽい神薙使い・d01426)は歌のコツを聞いてみる。
    「一つ聞きたいのですけど、おともだちがあなたの歌をカラオケで歌ってるんですけど、うまく歌うコツとか教えてくれませんか?」
    「胸をドキドキさせて、えっちな気分で歌うことですね!」
     これですよ! とドヤ顔で極意を伝授するラブリンスター。

    「皆に好かれるアイドルを目指すのならば、私はそれを応援する。種族からくる価値観などの違いもあるだろうが、私からはそれだけだ」
    「はい、歌を通じてみんなとお友達になれたらいいなって思います!」
     ラムゥフェル・ノスフェラトゥ(欠落せし生存者・d01484)に、ラブリンスターは笑顔で返す。
    「ライブ、とっても楽しかったよ。これからもアイドル活動頑張って、応援してるよ♪」
    「ありがとうございます! これからも、頑張りますね!」
     ダークネスにもいろいろいるものだと綾瀬・栞(空見て歩こう・d01777)は思う。
    「……人とダークネスが、一方的な搾取ではなく共存することが、本当にできると思うか……?」
    「? 今だって、共存してると思いますよ?」
    「……そうか。やはりそこがお前たちとの線になるか……」
     現状を一方的な搾取と認識している叢雲・宗嗣(贖罪の殺人鬼・d01779)は、哀しげに溜息をつく。

     ナノナノのしろちゃんを抱いて、板倉・澪(いつもしろちゃんと一緒・d01786)はラブリンスターと握手。
    「仲良くなるなら、相手が困る事をしちゃ駄目なのです~?」
    「お互いに困ることをしないようにしていきたいですね」
     笑顔でそう答えるラブリンスター。
     葛木・一(適応概念・d01791)は
    「ところで枕営業ってなにすんの? 枕売るの?」
    「では実演……ってうーん、ちょっとまだ小さいですかね……」
     悩んでいるラブリンスターと握手して、葛木・一(適応概念・d01791)は一緒に写真を撮ってもらう。
     穏便に握手を終え、ルシフ・ケルティン(銀の死神・d03612)は周囲を見渡す。客はほとんど灼滅者しかいないと言っていい。一般人もまばらにいたようだが、今日この場に来た人しかいないらしく、握手会までは並んでいないようだ。
     朱逢・環那(エンピレオ・d00274)と両月・葵絲(黒紅のファラーシャ・d02549)の2人は、戸惑いがちにラブリンスターの前に来ると手作りのクッキーを渡す。
    「あ、あのね! えと、おーえん、してます! これ、プレゼントなの!」
    「……あの。……わたしも、応援してるの」
    「ありがとうございます!」
     人見知り気味な葵絲にも、にっこりと笑って握手するラブリンスター。目の前に来た豊満な胸と自分のそれとを見比べて、何やら考え込んでしまう葵絲。
    「あと、おしゃしん、いいですか?」
    「ええ、もちろんいいですよ」
    「ほら、キィちゃんも一緒さんしよう!」
     2人とラブリンスターが並んだところを、スタッフの淫魔がデジカメで撮影してくれる。
    「あのね、わたし、アイドルってあんまり聞かないんだけど。でもあなたの声、歌声は好きだって思ったんだ」
    「ありがとうございます!」
    「え、えっと、でも、やらしいダンスパフォーマンスは……」
     思い出して口ごもる峰崎・スタニスラヴァ(エウカリス・d00290)。
    「もー! ラブリンちゃん可愛いです! 一目惚れですよ!」
    「ありがとうございます!」
     テンションが思いっきり上がりきった様子でラブリンの手を握る朱羽・舞生(狙撃魔法操者・d00338)。手作りのアロマキャンドルを受け取り、ラブリンスターも嬉しそうに微笑む。

     黒ネコ着ぐるみ姿の文月・直哉(着ぐるみ探偵・d06712)を中心とした【文月探偵倶楽部】の者達がラブリンスターに投げる話の主題はやはり着ぐるみだ。
    「ラブリンスターさんは、着ぐるみはお好きですか?」
    「今時のアイドルは多芸でないとダメと聞きましてよ! ほら、我らが団長も着ぐるみひとつでこんなにチャーミング! おひとつ持っておいて、損はないと思いましてよ?」
     周防・雛(少女グランギニョル・d00356)も熱心に営業する。
    「ラブリンスターさんの好きな動物は何なのか、教えて欲しいんだよ?」
     垰田・毬衣(人畜無害系イフリート・d02897)も着ぐるみの手でラブリンスターの握って熱心に質問する。
    「えーと、羊さんとか好きですよ? もふもふで」
    「……まぁ着てみるとわかるのですが、着ぐるみは意外と体のラインがしっかり出まして……」
     いつか部員一同で作ってあげよう。そう思う緋薙・桐香(針入り水晶・d06788)であった。
    「スーパーアイドル・ラブリンスターさんに会えるなんて今日という日を楽しみにしてました。これからもがんばってくださいね」
    「そんなに楽しみしてくれていたなんて……ありがとうございます! 頑張ります!」
     ヴァーリ・シトゥルス(バケツの底は宇宙の真理・d04731)も握手を交わす。

    「最初は半信半疑だったけど、ライブ楽しかったよ。音楽を愛する気持ちは、灼滅者もダークネスも変わらないんだな。音楽活動頑張ってくれ」
     さらりと応援する鬼島・涼(人間災害・d00430)に対し、露木・菖蒲(戦巫覡・d00439)は余裕はないようだ。
    (「ひゃあ! すごい美人さんだ……!」)
     そんな菖蒲に対しても、笑顔のままでラブリンスターは手を握り返す。

    「あの……お願いします……! 尻尾を少しだけ触らせてください……!」
    「もう……いいですよ、でもやさしくして下さいね」
     ラブリンスターは、狐頭・迷子(迷い家の住人・d00442)の頼みに尻尾をテーブルの上に乗せる。先のとがった淫魔の尻尾を、そっと迷子が触るとラブリンスターの体がぴくっと震えた。
     感動しながら、迷子は礼を言ってその場を離れる。
    「握手の意味から外れますがぜひ尻尾を!」
     そういってドキドキしながらお願いするのは、氷野宮・三根(神隠しの傷跡・d13353)。
    「ちょっと恥ずかしいですけど……いいですよ」
     三根が触るのを、ラブリンスターは頬を染めてじっと見つめていた。が、触った瞬間、あっという間に警備に外に放り出されてしまった。どうも迷子の時で警戒されていたらしい。

     月翅・朔耶(天狼の黒魔女・d00470)はストレートに好意を示す。
    「貴女のような素敵な方とお友達になりたいです!」
    「ありがとうございます! ファンの皆さんのこと、私もお友達のように思ってますよ!」
     響・澪(小学生魔法使い・d00501)はラブリンスターの胸を下から見上げて質問する。
    「がんばってください。あと師匠から質問があるの。あなたは、良い巨乳ですか悪い巨乳ですか?」
    「もちろん、良い巨乳ですよ!」
     言って胸を張るラブリンスター。


    「今日のライブ素敵でした」
     用意した花束を渡して、高杉・麻樹(暗闇に漂う者・d12978)は褒めちぎる。
    「そう言って貰えると嬉しいです」
     ラブリンスターは、にこっと微笑んで握手してくれた。

     神前・蒼慰(中学生デモノイドヒューマン・d16904)は、ラブリンスターのCDを手に入れてはいないが、最後までライブを聞いて、こうして握手会に突撃している。
    「いっそ、私とセッションしてみない?」
    「いいんですか? 期待しちゃいますよ」
     笑顔でしっかり握手されて、逆に蒼慰の方が困惑していた。

     ちょっと照れくさそうに手を差し出すのは、織神・かごめ(籠に咲く彼岸花・d02423)。
    「歌の良さとかはよくわかんないけど、君の歌は嫌いじゃないよ」
    「本当ですか? 嬉しいです!」
     そう笑顔で返され、かごめも思わず笑みを零す。

    「お好きな物をどうぞ」
     エヴァンス・マッドハッター(狂蝕の帽子屋・d17468)は、衣装に合わせた自作の帽子をいくつか持ってきたようだ。
    「どれも可愛いですね。全ていただいてもかまいませんか?」
     どうやら、ラブリンスターも気に入ってくれたようだ。

     おどおどしながら、手を差し出すのは、友繁・リア(微睡の中で友と過ごす・d17394)。
    「えっと……もし良かったらよろしくね……?」
    「はい、こちらこそ、どうぞよろしくお願いしますね」
     ぎゅっと柔らかな手でリアの手を握った。

    「ラブンリンスターさんのアイドル活動を邪魔している人達がいるんですか?」
     イリス・ラヴォー(小学生エクソシスト・d17350)は握手の合間に尋ねる。
    「そりゃあもちろん、芸能界だからありますよ! でも、私のガッツとファイトと枕営業で頑張ってますっ!」
     そうラブリンスターが話してくれたが。
    「ちなみに1回もありません」
     警備はそんなことを言っていた。

    「素敵なライブでした! まだお互い知らないことも多いですが、これからはともに歩み寄り、より良い関係を築いていきましょう!」
     そう友好的に握手を求めるのは不破・桃花(小学生ストリートファイター・d17233)。
    「はい、私も良い関係を築いていけると嬉しいです!」
     他のファンよりも長く握ってもらえたような気がしたのは気のせいだろうか。

     降夜・水月(ソングシーカー・d17154)の番が来たのだが、なかなか手を差し出さない。
     その手には、しっかりとラブリンスターのファングッズが大量に入ったバッグが握られている。
    「あ、あの、えっと、その……い、今ファンになりましたっー!」
     握手はしたが、すぐにその場を立ち去ってしまった。
    「まあ、可愛らしい方ですね」
     そう微笑んで彼女を見送っていた。

    「あなたにとって音楽とは、『音』とはどのようなものですか?」
     握手の前にアンジェリカ・トライアングル(天使の楽器・d17143)はそう問う。
    「私にとっての音楽……芸能とは、ひとの心をときめかせる、愛に通じる扉ですね」
    「有難うございました、わたくしのこれからの参考にさせていただきます」
     その答えにアンジェリカは感謝を述べて握手を交わした。

     風舞・氷香(孤高の歌姫・d12133)の質問も、同様だ。
    「私も、誰かの癒しになって欲しいと願いをこめて歌っています」
    「きっと、癒せていますよ♪」
     ラブリンスターは楽観的にそう言ってくる。単なる追従かは分からないが、彼女自身の音楽に対する考え方を聞いた後では、もしかすると自分に近い考えなのかも知れないとすら思えた。

    「貴女は、踊りを、歌を愛しているだろうか?」
     静杜・詩夜(落藤の雫・d17120)は、隙を見て尋ねてみた。
    「はい、とても愛しています! もちろん、ファンのみなさんもですよ!」
     その答えに詩夜は笑顔で礼を述べた。

    「……あ、わたしはこういうものです」
     いろいろ話した上でアデーレ・クライバー(冷えた炎纏う鷹・d16871)は、さっと自分の名刺を差し出した。
    「興味があったり、追っかけから逃げたい時は連絡ちょうだいね!」
    「はい、ありがとうございます!」
     ラブリンスターは大事にその名刺を胸元に仕舞いこむ。

    「あの。もしも今後も私共と良い関係が築けるなら……何時か貴女のバックバンドとして、吹きたいですわ……♪」
     フルート片手にそう申し出るのはスミレ・シラカワ(絡み合う三極のエス・d16787)。
    「私もあなたの演奏で、ぜひ歌ってみたいです!」
     嬉しそうにしっかりと握手してくれた。

     一応と握手会に臨んだ水月・沙霧(暢気な迅雷・d16762)。
    「あの、がんばってください!」
     心の中は少々複雑だ。
    「はい、頑張りますね!」
     笑顔で握手してくるラブリンスターにますます分からなくなっていく。

     ライン・ケーニッヒ(ジプシークイーン・d16531)は、ラブリンスターの様子をずっと追っていたが、邪念があるかどうかまでは測りきれなかった。
    「また、近い内に会うことになるでしょう」
     そういうラインにラブリンスターは。
    「またライブに来てくださいね。待ってます!」
     とにこっと微笑んだ。

     真田・真心(遺零者・d16332)は、花束を渡す際に、接触テレパスで質問を試みる。
    「ラブリンスターさん、今行ってみたい所とかあるんすか?」
    「満員電車でイケナイ事をされたいですね!」
     光の早さで答える、満面の笑みを浮かべたラブリンスター。

    「さ、触らせてください!!」
     そういって差し出した手は、なぜか胸に。むにゅんと、気持ちのいい弾力に、如月・雀太(高校生ストリートファイター・d16284)は思わずにやけてしまう。
     が、それもつかの間、あっという間に警備に引きはがされてしまった(ラブリンスターが)。
    「あの、もう少しだけ……」
     この発言が誰のものか、もはや言うまでもない。

     ライブ前に頑張って用意したものは、ラブリンスターの愛らしいぬいぐるみ。
    「ど、どうぞ!」
     絆創膏だらけの崇田・來鯉(小学生ご当地ヒーロー・d16213)を目ざとく見つけて、ぬいぐるみを受け取り、その手を両手で包んだ。
    「私の為にこんなにしてくれたんだね。本当に……本当にありがとうっ!!」
     とっても感謝されて、來鯉は照れたように頭を掻いた。

     にこっと笑顔で嬉しそうに手を差し伸べるのは綾町・鈴乃(無垢な純白・d15953)。
    「すずのは、いんまのおねーさまにそだてられましたです。だから、いんまのひとたちはわるいダークネスとはちがうっておもっているですよ。すずのはラブリンスターさまとおともだちになりたいのです」
    「そうなんですか? 私もあなたとぜひ、お友達になりたいです。よろしくお願いしますね!」
     嬉しそうに両手で握手してくれた。

     手を差し出してきたラブリンスターの手をぐいっと引き、強く抱き寄せるのは藤野・都(黒水蓮の魔女・d15952)。
    (「友好を示しているのだから、こちらも誠意を見せるべきだろう」)
     都が選んだのは、ハグ。ついでにいうと、ちょっと積極的な熱いハグだ。
    「あっ、いけません! でも、体が勝手に……」
     言葉とは裏腹に、しょっぱなから全然イヤそうな表情をしていなかったラブリンスターを、警備がべりべりと引きはがす。

    「私も、らぶりんすたーさんみたいに可愛い女性になりたいです」
    「絶対、なれますよっ!! 一緒にがんばりましょう!」
     逆に応援されてしまい、神代・御卦(神の子・d15780)はちょっとびっくり。

    「応援してます! これからも頑張ってください!」
     熱の入った言葉だが、その声は小さい。本郷・雄飛(はご当地ヒーローである・d15712)も何かしら胸に秘めているようだ。
    「はい、もっと応援してもらえるよう、頑張りますね。ありがとうございます」
     小さく囁いて、ラブリンスターはにこっと微笑んだ。

    「もし、都合が良ければ7月に学園祭があるのでゲストとして参加してもらえませんか?」
     関・銀麗(高校生神薙使い・d15670)が握手と共にそう告げると。
    「いいんですか!? オファーがあったら、ぜひぜひ行かせていただきますね!!」
     ぶんぶんと力強く握手されて、銀麗はちょっと驚いているようだった。

     どんっとタコのような邪神像をラブリンスターに手渡したのは、深海・るるいえ(深海の秘姫・d15564)。
    「芸能にもご利益がある……時もある」
    「本当ですか? ありがとうございます、大事にしますね!」
     嬉しそうに受け取って、ラブリンスターは握手もしてくれた。

     綺麗にラッピングされたクッキーを曙・加奈(虚ろの眠り姫・d15500)はラブリンスターに差し入れ。
    「ラブリンスターさん、素敵なライブ、お疲れ様でした! これ、バニラ味と抹茶味、唐辛子入りのロシアンクッキーです。スタッフの皆さん方と楽しんで食べてくださいね!」
    「唐辛子が当たらないよう、がんばりますね! ありがとうございますっ! ……辛っ!」
     さっそく食べて唐辛子を当てていたのは、たぶん気のせいだろう。きっと。

     自己紹介してから小早川・美海(理想郷を探す放浪者・d15441)は気になることを尋ねる。
    「私の気になるのは1つだけなの。……仲良くなったら、淫魔のもふもふな人達を、もふもふしてもOK?」
     その質問にラブリンスターは、きょとんとした表情を浮かべていたが。
    「その方の許可が得られたら、大丈夫だと思いますよ! 前進あるのみです!」
     ぐっと、力のないサムズアップを見せてくれた。

     鬼皇・暁(淡青の片翼・d15059)は流れる手つきで、差し出されたラブリンスターの手の甲に、そっと唇を押し当てる。
    「こんなに可憐な君と出会ってしまったら、もしいつか僕たち灼滅者と君たち淫魔とが敵対することになったら……僕は仲間を裏切ってでも君を守ることを選んでしまいそうだよ」
    「まあ……私と一緒に来てくれるのなら……本当に今すぐにでもあなたの胸に飛び込みたいです……」
     ぽうっとした艶やかな顔で暁を見上げるラブリンスターを……警備が無理やり引きはがした。

     名刺をさっと取り出して。
    「学園のことで何か聞きたいことがあればこちらまで」
     三条院・榛(円周外形・d14583)はそういって、ラブリンスターに手渡した。
    「ありがとうございます。何かあったら連絡しますね」
     ラブリンスターは大事にその名刺を胸元に挟み込んだ。

     不愉快そうな笑顔を浮かべて、嶋田・絹代(どうでもいい謎・d14475)はラブリンスターを試している。
    「なんで灼滅者なんかライブに呼んだんすか~? 先の戦争でたくさんの淫魔が消されたってのにね~」
    「そんなの、関係ないですよ。私はただ、皆さんとライブがしたかっただけですから」
     警備が動きそうになったが、ラブリンスターはにこっと微笑んで、他のファンと変わらぬ握手をしてきた。

     ラブリンスターの姿をしっかり見ておこうと手を差し出すのは、結崎・蜜耶(蜜色唱歌・d14369)。
    「チケット、ありがとう」
    「喜んでもらえて、私も嬉しいです。また来てくださいね」
     蜜耶の手をしっかりと握手してくれた。

    「いい歌だったぜ。これ、ラブリンスターをイメージして作ったぬいぐるみだ。良ければ貰ってくれないかな?」
     握手を交わしながら、伊織・順花(追憶の吸血姫・d14310)は、自信作のラブリンスターぬいぐるみを手渡す。
    「追加もいいんですか? それなら……アスタリスクさんも……って、ファンの方にお願いしちゃいけませんね」
     てへっと舌を出しながら、気にしないでくださいとラブリンスターは握手を返した。

     どきどきした面持ちで、靱乃・蜜花(小学生ご当地ヒーロー・d14129)も手を差し出す。
    「初めまして、長野からきた蜜花なのよ。アイドルと握手なんて初めてなのね! ラブリンスターさんは長野や地方には遊びにいったりするのですか?」
    「もちろん地方営業もしますよ! そのときはぜひ、遊びに来てくださいね!」
     きゅっと握手されて、蜜花も嬉しそうだ。

     カロリー控えめ、甘さたっぷりのクッキーを持って、力強く握手を求めるのは、リューネ・フェヴリエ(熱血青春ヒーロー修行中・d14097)。
    「俺はリューネ。ラブリンスター、俺とダチになろうぜ!」
    「そう言って貰えると、すごく嬉しいです! ぜひ、ダチにしてくださいね!!」
     ラブリンスターも笑顔でその握手に応えた。

     握手会に紛れて、央・灰音(弁当・d14075)は大胆な行動に出た。
     ラブリンスターを抱きしめ、自然にかつ、逃げる隙を与えず、絶妙な手つきで触りまくる!
    「あ、ああん……こ、こんなの……すご……」
     が、それもつかの間。あっという間に警備に捕まったはず……なのだが、意気揚々と出かけて行ったのは気のせいではないだろう。

    「もし友好的に交流ができるなら、そして他のダークネスとの関わりをやめてもらえるなら、敵対する必要はないのではないでしょうか」
     プレゼントのリボンを手渡しながら、話しかけるのは海川・凛音(小さな鍵・d14050)。
    「そうかもしれませんね。プレゼント、ありがとうございます」
     にこっと微笑んで握手してくれた。

     ラブリンスターに握手してもらって、硬直しているのは、異性との接触が少ない瑠雪・晃(器用貧乏系寝不足神父・d13878)。
    「そ、それと……自分がお世話になっている孤児院でのライブをお願いしたいんですが。もちろん、ギャラは払います」
    「わあ、いいんですか!? ぜひぜひ、事務所にオファーしてくださいね!! 私、ずっとずっと待ってますから!!」
     好意的に受け取ってもらえたようだ。

    「今日は来てくださってありがとうございます!」
     ぎゅっと握手されて、茅・李狗(中学生ダンピール・d13760)はうんと頷く。
    「まぁ、かわいいっちゃかわいいよな」
     その呟きは、当のラブリンスターには聞かれていない……はず。

     握手しながら、轟磨・煉糸(吟遊糸人・d13483)は一番聞きたいことを尋ねる。
    「なんで、武蔵坂学園の灼滅者たちにこんなにも好意的なんだ?」
    「強そうな人と仲良くなれたら、とっても嬉しいです!」
     にこっと微笑むラブリンスターがキラキラと輝いて見えたのは、たぶん気のせいだろう。きっと。

    「マカロンはありふれてますので、それに合うお茶にしてみました。俺はまだにわかですが、差しのべた手はしっかりと握っていきたいです。頑張って下さい」
     滑川・蛍(富山県の特別天然危険物・d13440)に手渡されたお茶に思わず飛びつくラブリンスター。
    「これはいいお茶ですね~! さっそく頂いても?」
     そう喜びながら、ラブリンスターは幸せそうに握手してくれた。

     こちらは緊張した面持ちで、握手会に臨む天地・玲仁(哀歌奏でし・d13424)。
    「いい曲だった。これからも応援している」
    「そう言って貰えると、私も凄く励まされます。またライブ来てくださいね!」
     なんとかラブリンスターと握手を交わした後、会場付近で人探しをしていたが、探していたその人は見つからなかったようだ。

     神孫子・桐(放浪小学生・d13376)は、ライブの感想を述べた後。
    「あ、あとこれ。CD聞いた感想、とちょっとしたお便りだ」
     事前に書いてきたファンレターをラブリンスターに手渡す。
    「ありがとうございます! 大事に読ませていただきますね!」
     さっと胸元に仕舞いこむと、嬉しそうな微笑みで握手を求めてきた。

    「ラブリンスターさんは、どんな初恋だったの? 今もまだ初恋中?」
     そんな際どい質問を投げかけるのは、奏森・あさひ(騒ぐ陽光・d13355)。しかし、ラブリンスターも怯むことなく、台本のような棒読みで即座にこう答えた。
    「私の初恋の相手は、ファンの皆さんですよ!」

    「ラブリンスターさん……おっと」
     警備の淫魔に睨まれたのに気付き、ラブリンスターに抱き着こうとした狐雅原・あきら(アポリア・d00502)はすんでのところで踏みとどまる。
    「今度学園祭でライブでもしてみませんか」
    「学園祭、いいですね!」
     ラブリンスターが目配せすると、後ろの方でプロデューサーがメモを取るのが見える。スケジュールの確認でもしているのだろうか。
    「アイドルとか生で初めて見たんじゃ。もっと仲良うなって、学園祭にも是非!」
    「ねね、武蔵坂学園で運動会とか学園祭とか芸術発表会とかあるんだけど来られたりはできないのかな? もしよかったらさ、一緒に盛り上げようよ。オレも学校にきいてみるからさ!」
     更科・由良(深淵を歩む者・d03007)、小鳥遊・赤花(ルドルフ・d03040)も誘いをかける。
    「いいんですか!? お誘いがあったら、どこでも行きますよ!」
     意気込んで言うラブリンスター。スケジュールに問題がなければ、本当に来る気のようだ。
    「ぜひ武蔵坂学園でもライブをしてもらいたいけど、ウチの学校はラブリンちゃんのステージとしては物足りないかな?」
    「コンサートホールからベッドの上まで、聞いてくれるお客さんがいるなら、どこだって素敵なステージですよ!」
     狩野・スガタ(何処の何奴か・d03740)に言うラブリンスター。
     穂邑・悠(火武人・d00038)は武蔵坂学園のパンフを渡す。
     もし本当にスケジュールが合えば、ライブが武蔵坂学園で行われるということもあるのかも知れない。

     『バベルの鎖』という障害に阻まれながらもアイドル活動を続けるラブリンスター。淫魔であるとはいえ、その姿勢には敬意を表するという灼滅者も少なくない。風嶺・龍夜(闇守の影・d00517)もその一人だ。
    「バベルの鎖にも負けずに努力し続ける姿は素晴らしいと思う……応援できる事があれば出来るだけ協力するつもりだ。これからも頑張って欲しい」
    「ありがとうございます。直接聞いてくれた皆さんがファンになってくれたら、本当に嬉しいです!」
    「友好、結べたら良いと思います。またどこかで。あと、ロックとか織り交ぜると素晴らしいかと」
    「ロックですか。参考にさせてもらいますね!」
     阿々・嗚呼(剣鬼・d00521)のアドバイスに頷くラブリンスター。

    「この関係が長く続くことを願ってます」
     式守・太郎(ニュートラル・d04726)はラブリンスターにそう告げて別れる。
     太郎にしてみれば、活動が人の死に直結する六六六人衆に比べれば、淫魔などまだ可愛いものだ。
    「またライブに呼んでくださる予定はあるのかしら?」
    「仲良くなったら、定期的にライブやってくれるんですか?」
    「全国の色んなところで、ライブはやってるんですよ」
     ラブリンスターはそう藤木・宗佑(ラズワルドの鎖・d04664)と勅使河原・幸乃(鳥籠姫・d14334)に答える。もしオファーがあるのなら、武蔵坂学園の学園祭でのライブも辞さないだろう。

     撫桐・娑婆蔵(鷹の眼を持つ斬込隊長・d10859)はラブリンスターと握手して言う。
    「お前さんの歌も踊りも、確かにバベルの鎖の向こうにまでは届かねえモンやもしれやせん。しかしあっしは灼滅者。お前さんの声も姿もあっしの耳目にゃァ届きやす。ご活躍、聞き届けやしょう。見届けやしょう。いつかアルバムを発売なする日、心待ちにしておりやす!」
    「ありがとうございます!!」
     バベルの鎖は伝播を妨げるが、記憶は残る。娑婆蔵達の記憶から、ラブリンスターの印象が消えることはそうそうないだろう。

    「学園はまだまだダークネスに対して無知だからね、ぜひよろしくして貰えると嬉しいのだよ、君」
    「そうなんですか? でも、それで蒼の王コルベインをやっつけちゃうなんて、みなさん本当にすごいですよ!」
     謙遜とも本気ともつかないポー・アリスランド(熊色の脳細胞・d00524)の言に、ラブリンスターは武蔵坂学園をほめたたえる。

     斑目・立夏(双頭の烏・d01190)と藤谷・徹也(高校生殺人機械・d01892)の2人連れは、握手しながら問いかける。
    「斑目立夏や。よろしゅーに。これからはどないな活動する予定なん?」
    「えーっと、まずは新曲を出しましたから、これの営業活動ですね! 色んなところでライブしちゃいますよ!」
    「……夢は、あるのか?」
    「すごいアイドルになりたいと思います!」

    「またライブしないのかなぁ~……?」
    「ライブは色々なところでやっていますから、また近くでやれたら、ぜひ来て下さいね!」
     デイジー・クルゥブニーカ(ボクたべてもオイシクないよ・d01229)に微笑みかけるラブリンスター。

     迫水・優志(秋霜烈日・d01249)がラブリンスターに招待の礼を述べる。
    「こんな言い方は失礼だけど、思ってた以上に上手いんだな、歌……後、今日はありがとな?」
    「今日は来てくださってありがとうございます!」
    「所謂ひと昔前のアイドル路線つーの? ただ個人的にはもうちょい恥じらいとかある方が好みではあるんだよなー。見えそうで見えないあのギリギリのラインが妄想をかき立てるんじゃん!」
    「ギリギリですか……ありがとうございます、挑戦してみます!」
     神津・暁仁(黎明を待つ焔の獅子・d05572)はそう勧めるが、おそらくラブリンスターは誤解している。

     ラブリンスターの手を握り、ぶんぶんと振る乾・舞夢(スターダストあざらし・d01269)。
    「でもエッチなのはいけないと思います!」
    「えっちなのもいいと思うんですけど……」

     緑釉堂・薄荷(ショコラに溺れるプラリネ・d01311)にしゃがんで視線を合わせてくるラブリンスター。薄荷はその胸に向けて、思い切り飛び込んだ。
    「きゃんっ」
     ラブリンスターの声を聴きながらひとしきり揉み倒した薄荷は警備が飛んでくる前に身を離す。
    「もう、ダメだよ?(棒読み)」
    「ねぇちゃん可愛いな、オレが大人になったら口説きにいくわ」

     紗守・殊亜(幻影の真紅・d01358)は忠告する。
    「歌って踊れるならDVD出せばいいのに。もったいない」
    「でもアイドルならまずはCDからじゃないですか!」
     もしかすると撮影費用の差などもあるのかも知れない。どうせバベルの鎖の力で売れないわけでもあるし。

     香祭・悠花(ファルセット・d01386)と黒岩・りんご(凛と咲き誇る姫神・d13538)、2人示し合わせてラブリンスターの胸を揉みにいった彼女たちは、即座に文字通り飛んできた警備員に引っぺがされる。
    「ふにゃー?!お友達の胸が気になるのは普通のことですよー!?」
    「こ、これはスキンシップですよぅ~」
     ふと見ると、何かのスイッチが入ったらしきラブリンスターも、やっぱり警備員に抑えられている。

    「ポップでキュートな歌も悪くないのだけど。私たちと本当に仲良くなりたいなら、優しい歌も歌うことね」
    「優しい歌ですか。今度、作詞作曲のアスタリスク先生に伝えておきますね」
     霧崎・影薙(ライラライ・d13199)の指摘に、ラブリンスターはそう応じる。

    「あなたがたの目的は人類をダークネスにすること、と認識しております。どうですか?」
    「そういう人もいると思いますよ」
     マーテルーニェ・ミリアンジェ(散矢・d00577)の問いに、ラブリンスターはそう応じる。消極的肯定ととったマーテルーニェは
    「それでは相容れないはず。つまりこれは一時休戦、ということでいいでしょうか?」
    「私はずっと仲良くできればいいと思いますよ♪」
    「……」
     その返事に、マーテルーニェは一瞬絶句する。灼滅者とダークネスが相容れないものだ、などと考えているのは灼滅者達だけかも知れない。
     なぜなら、『人類はダークネスと誕生の頃から共存している』のだ。
    「良いライブだったぜ。また見に来るよ、ラブリンスターさん」
     天上・花之介(連刃・d00664)が硬直した主の手を引いて、その場を離れる。

     桜井・夕月(もふもふ探究者・d13800)と、お目付け役状態の秋山・清美(お茶汲み委員長・d15451)がラブリンスターの前に来る。
    「応援してます。頑張ってください!」
    「ありがとうございます! これからも頑張りますね」
     後輩に情けない姿を見せないよう、ラブリンスターに抱き着こうとする体を精神力で抑え込みながら握手する夕月。だが、清美の方はといえば、
    (「もし抱き着いたら鋼糸ですね……サムにも手伝ってもらって……」)
     などと、物騒なことを考えていた。

    「ライブすてきでした!」
    「ありがとうございます!」
     ちっちゃい手でラブリンスターの手をぎゅっと握るアプリコット・ルター(甘色ドルチェ・d00579)。
    「わぁい、哀しいかな可愛い子の握手はうーれしー……ラブリンスター様の手は柔らか……ってあぶねぇ!!」
     佐藤・司(高校生ファイアブラッド・d00597)はラブリンスターの手の柔らかさにダークネスと武蔵坂学園の関係についての真面目な思考を流されかけ、ふと我に返って荒い息をつく。
     ベルタ・ユーゴー(アベノ・d00617)はラブリンスターに誘いをかける。
    「どや、今度の体育祭へ参加せぇへんか! ゲストとか転入とか方法はあるんちゃうかな!」
    「ありがとうございます、検討させてもらいますね!」

     ラブリンスターの前に来て、久遠・翔(いちたりない・d00621)は硬直した。
    「だいじょうぶですか?」
    「す、すみません思わず見惚れて……ぁっ」
     言って、握手した翔は手作りドーナツをラブリンスターに渡す。箱の中には『あなたの心、いつかいただきます』と書かれた手紙が同封されているのだが、先に心を奪われたのは翔の側のようだ。

     花咲・マヤ(癒し系少年・d02530)は屋上菜園【万華境】の皆と共に握手会に並ぶ。
    「飛び出せ初恋ハンター!も素敵でしたよ、またライブしに来て下さいねー」
    「ありがとうございます! どこかで見かけたら、よろしくお願いします!」
    「次に会えたらプレゼントさせてもらいたいので、ラブリンちゃんの好きな物って何ですか?」
    「マカロンが好きです☆」
     質問するルチャカ・フィフスカラム(マルチプレックスエージェント・d10996)に、ラブリンスターは即答する。
    「逆に苦手な物は何でしょう?」
    「ファンの皆さんから頂いたものなら、何でも宝物ですよ♪」
     模範的な解答であった。
     ミニサボテンを渡して、竜胆・藍蘭(青薔薇の眠り姫・d00645)が握手する。
    「良い曲を披露して下さってありがとうございますね。とても楽しませて頂きましたよ」
    「ありがとうございます!」
    「また次の曲の予定とかもあるのでしょうか?」
    「はい! そう遠くないうちに必ず!」

    「楽しませてもらいましたー、今日はありがとうございます」
     寺見・嘉月(星渡る清風・d01013)はラブリンスターの手をしっかりと握った。こういう関係がどの程度続くかは分からないが、出来るだけ長く良好な関係を築けることを願いつつ。
    「ありがとうございます、頑張ります!」

    「ラブリンスターさま美人さんなの~えへへっ♪ あたしもラブリンスター様みたいになりたいの~」
    「ありがとう! あなたも可愛いですよ!」
     握手して抱き着くロリ・リヒター(小学生ストリートファイター・d15503)。抱き着いて胸をこの辺り許されるのは小学2年生という年齢あってのことだろう。
    「わーい、お友達になろーね♪ ありがとー♪」
     握手して、こちらも流れでハグする愛良・向日葵(元気200%・d01061)。
    「今日はありがとうございました! お友達になってくれると嬉しいです!」
     ラブリンスターの笑顔は揺るぎない。

    「淫魔のくせになかなか面白いことするじゃない。なかなか楽しめたぜい、Thank you。……ま、今後どーなることやら、わからないけどね」
    「ありがとうございます! 今後も仲良くしてもらえたら嬉しいです♪」
     応じるラブリンスターは、おそらく本心なのだろうとジェーン・ホームズ(コズミックライダー・d04640)は思う。

    「ふむ、妾はあまりアイドルなどの活動についてはよくわかっていないのじゃが、お主の歌と踊りを見てお主のアイドル活動への真摯さというのは伝わった。受けるかどうかはそちらの自由じゃが、ぜひいずれお主と歌と踊りで勝負をしてみたいものじゃの!」
    「皆さんの踊りも、きっと素敵だと思いますよ!」
     館・美咲(影甲・d01118)の挑戦を、ラブリンスターは笑顔で流す。

    「ラブリンスター、君こそ俺のプリンセスだ。輝くような笑顔、心地よい音を奏でる声。そして俺を魅了してやまないわがままボディ……俺は君の全てにメロメロさ」
     ナイト・リッター(ナイトナイトナイト・d00899)はタイムキーパーの淫魔が時計を気にしているのに視線を向けながらギターを奏でる。
    「わぁ、とっても素敵だと思いますよ!」
    「もしあなたが助けを欲した時、俺は……あ、ちょっ、まだプレゼント!」
     プレゼントとして楽譜を置いたナイトは、そのまま屈強な淫魔スタッフに引きずられていった。

    「ラブリンちゃんオパーイ揉ませて……いや触らせて!」
    「どうぞどうぞ」
    「やっぱ駄目だよね。ってええっ!」
     襟裳・岬(にゃるらとほてぷ・d00930)は意外な返事に面食らったが、残念ながらラブリンスターは警備に連れていかれてしまったのだった。

    「……がんばってください。……応援してます」
    「はい、ありがとうございます!」
     淫魔に強い恨みを抱く編堵・希亜(全ては夢の中・d01180)は、微笑しながらもラブリンスターの手を強く握った。恨みを必死で抑えるが、瞳が濁る。
    「あの、大丈夫ですか?」
     目いっぱい力を入れて握るが、ラブリンスターの方はむしろ心配そうに希亜の顔を覗き込んでくる。
    「……これから、良い関係を、築いていきたいですね。……それでは、また」
     はっとして手を離し、希亜はその場を離れる。

    「これ、プレゼントです。よければどうぞ。……手、柔らかくて温かいですね」
    「ありがとうございます。あなたの手も、温かいですよ」
     東海・一都(第三段階・d01565)ににっこりと笑顔でラブリンスターはいう。一都はプレゼントの中に携帯番号を仕込んでいるが、それに連絡が来るかどうか。

     相良・太一(土下座王・d01936)は、両手でラブリンスターの手を包み込むように握り、新曲を褒め称えると切り出した。
    「……あああ、後ですね! 歌って踊れて……その、エッチも出来るってマジですか!? 是非ともお、お、俺も……!」
    「もちろんですよ! それじゃさっそく……!」
    「えっ、公開で!?」
     一瞬とまどった隙をついて、警備の淫魔が2人の間に割り込んだ。
    「困りますよラブリンスター様。まだ並んでるんですから」
    「あーっ!?」

    「斬新な感じで、面白かったです。頑張って下さい」
    「ありがとうございます! 頑張ります!」
     青海・竜生(青き海に棲む竜が如く・d03968)の手を握るラブリンスター。
     飾りつけたオダマキの鉢植えを贈るが、その花言葉は『勝利への誓い』。
     もっとも、その意図が理解されたかどうかは怪しいところだったが。

    (「やばい緊張するなんだあれ顔ちっちゃいかわいいうわあああ……」)
    「大丈夫ですか?」
     加賀谷・色(苛烈色・d02643)は緊張している間に、握手の時間は過ぎてしまう。

    「おつか、れ、さま。これ、後、で、読ん、で、欲しい……」
    「ありがとうございます。必ず読ませてもらいますね」
     一生懸命な様子の水島・ユーキ(ディザストロス・d01566)のファンレターを受け取り、ラブリンスターはユーキと握手する。
    「わぁ、私の衣装とおんなじですね!」
    「ええ、いかがでしょう? 少しはあなたに近づけていますかしら?」
     ラブリンスターのコスプレをしたラピスラズリ・ヴリュンヒルド(堕落の戦乙女・d01603)は、ラブリンスターとツーショット写真を撮ってもらう。
    「アイドル活動頑張ってね、敵対さえしなければここにはあなたのファンも多いみたいだから」
    「ありがとうございます。仲良くしましょうね!」
     ラブリンスターは笑顔でエリ・セブンスター(蒼桜特攻隊・d10366)に返す。
     結城・桐人(静かなる律動・d03367)と椙杜・奏(翡翠玉ロウェル・d02815)は、自分達が場違いなような感じを覚えながら、ラブリンスターの前に出る。
    「友好を深めるのは喜んで。けど俺達の集まるのは学校で、幼い子もいるから……もうちょっと、言葉は隠して欲しいかな?」
    「……その、CD、聴かせてもらった。俺も、音楽はやっている、んだが……凄く勉強に、なった……えー、何だ。……これからも、頑張って欲しい」
    「ありがとうございます、これからも頑張りますね! でも、言葉って……?」
    「いや、この場で言ってもなぁ……」
     口に出すのも微妙にはばかられる。

    「ライブお疲れ様でした」
    「ありがとうございます! 来てくれて嬉しいです!」
     詩夜・沙月(紅華の守護者・d03124)は有名店の焼き菓子を渡しつつ言う。
     焼き菓子にはメッセージカードを添えたが、読んでもらえるだろうか。

    「ご当地グルメ選手権で1位になった宇都宮ぎょうざを使ったお菓子……その名も『宇都宮ぎょうざクッキー』の差し入れ……においはきつくないから後で食べてみてね……」
    「宇都宮餃子怪人さんたち、今何してますかねぇ……」
    「ファミレスにでもたむろってそうね」
     八重葎・あき(栃木のぎょうざ好きゲーマー・d01863)のプレゼントに、ラブリンスターは変なことを思い出したようだった。

    「ちょっとだけ、おむねさわっても……あ、なんでもないのだよ?」
    「えっ、別にいいんですよ?」
     手を止める六六・六(不思議の国のアリス症候群・d01883)に、むしろ歓迎といった姿勢だったラブリンスターは一瞬残念そうな表情を浮かべる。
    「すごい歌だったよ! いつか私も一緒に歌いたいなっ! やっぱり歌が本当に好きな人に悪い人はいないって信じてるからっ」
    「ありがとうございます!」
     雨宮・怜奈(リトルセイレーン・d01922)はラブリンスターの手を取り、握手を交わす。
    「活躍して、有名になれることを祈ってるね! お互い頑張ろうっ!」
    「はいっ!」
     茅薙・優衣(宵闇の鬼姫・d01930)はラブリンスターの前に進み出て、顔を真っ赤にして聞いた。
    「かわいかったです。それでそのぅ、おっきくなる秘訣を教えて下さいっ」
    「ええっと……」
     ラブリンスターは優衣をしげしげと眺め、
    「あなたも淫魔になれば大きくなるかも☆」
    「やっぱり種族的なものなんですか──!?」

    「ファンを増やす位にして、無茶はしないで下さいね」
     冴渡・柊弥(影法師・d12299)は血生臭い行動をとらないよう頼んだ手紙を渡し、握手を終えるとその場を離れる。
    「バベルの鎖があるのに、なぜアイドルを目指したんだ?」
    「えへへ、憧れを言葉で説明するのって、ちょっぴり苦手です!」
     赤槻・布都乃(悪態憑き・d01959)や嵯神・松庵(星の銀貨・d03055)の問いに、ラブリンスターは笑顔で答える。アイドルという職業を選んだこと自体は、ただの好みなのかも知れない。
     アイドルである【星空芸能館】の神崎・結月(天使と悪魔の無邪気なアイドル・d00535)、星野・えりな(スターライトエンジェル・d02158)が挨拶する。
    「CDを手売りしてるって聞いたことがあるの。ゆきも頑張らなきゃーって思っちゃった」
    「とっても素敵なライブでしたよ♪ ラブリンスターさんはこれからどんなアーティストになりたいのですか?」
    「みんなに愛されるアイドルになりたいです!」
    「あ、一つ質問ですけど……ラブリンスターさんは……なんでアイドル、するんです……か?」
     同じく【星空芸能館の】観村・瑞央(はいちごとマシュマロが大好き・d12996)にはラブリンスターは笑顔で応じる。
    「アイドルって、とっても素敵じゃないですか!」
     それが全てではないのかも知れないが、アイドル活動に対する思いは本物のようだ。
    「これからも、アイドル同士、がんばろーねっ☆ゆき、負けないけどっ♪」
     ゆきが手を振るのに、ラブリンスターの手を振って返してくれる。
    「どうしてアイドルになったの?」
    「アイドルって、とっても素敵なお仕事だと思うんです」
     水瀬・瑞樹(マリクの娘・d02532)に、ラブリンスターは笑顔で返す。そう言われてしまうと、返す言葉もない。バベルの鎖によって阻まれるアイドル活動。それを選ぶ優位性などないことは、本人たちが一番よく理解しているはずなのだ。
    「CD、集めさせてもらったよ。『飛び出せ初恋ハンター!』も買うぞ!」
    「ありがとうございます!」
     ラブリンスターは淳・周(赤き暴風・d05550)に礼を言う。
    「しかし、何を目標にアイドル活動を続けているんだ?」
    「それはもちろん、トップアイドルですよ!」
     当然とばかりに言うラブリンスター。
    「アイドルを始めた切っ掛けってなんですか?」
    「えーっと、駅前を歩いてたらスカウトされたんです!」
     雨柳・水緒(ムーンレスリッパー・d06633)の質問に、事務所のホームページに載っているのと同じことを答えるラブリンスター。
    「仮に私たち灼滅者がアイドルになろうと思ったら、あなた方淫魔の事務所からデビューって出来ます?」
    「ラブリンプロダクションは若き淫魔の力をいつでも募集してます☆」
     下総・水無(少女魔境・d11060)に、そう答えるラブリンスター。灼滅者が所属して居心地の良い環境ではなさそうだ。
    「腕相撲をせぬか?」
    「いいですけど……」
     アルカンシェル・デッドエンド(ドレッドレッド・d05957)の提案に、握手したまま肘をついて腕相撲をするラブリンスター。
    (「現時点で最強、その力を見極めるにはこれしかない!」)
     というアルカンシェルの思惑は、開始3秒で覆された。
    「あーん、負けちゃいましたー」
    「手加減されたー!?」
     アイドルとしてのイメージを崩さない振る舞いということなのかも知れないと、アルカンシェルは戦慄する。

    「アイドルである以上、イメージって大切ですよね。余り周りに被害を出したりしたらアイドル失格じゃないですか。例えば……自分でやらないにしても『接待』も程々にしないとイメージダウンですよ」
     霧島・絶奈(胞霧城塞のアヴァロン・d03009)はそう釘を刺す。
    「私達はバベルの鎖の影響も受けませんし、今日これだけの灼滅者が集まったんです。一般人を闇堕ちさせたり接待攻勢よりもファン獲得に繋がると思いませんか?」
    「皆さん来てくれて嬉しいです!」
     笑顔で応じるラブリンスター。
     もっともファンの獲得とダークネス種族の増加は別問題だろう。その辺りを突き詰めていくといずれ決裂するのかも知れないと絶奈は思いつつ、ラブリンスターの前を離れる。
     握手を終えてハルトヴィヒ・バウムガルテン(聖征の鎗・d04843)は改めてラブリンスターに目をやる。
    「ふむ……何処にでも居そうな容姿ですね……まぁ、中身は婆なのかもしれませんが」
     相手はダークネス、実年齢は分からない。

     梅干田・冬夏(奏想恋歌・d05991)はラブリンスターをしっかりと見つめ、力強く握手する。
    「頑張ってて、凄いです、皆と仲良くしたいです」
    「ありがとうございます! 私もみんなと仲良くしたいですよ」
     手作りデフォルメラブリンスタークッキーを贈り、冬夏はその場を離れる。

     観察を続けていた佐和・夏槻(物好きな探求者・d06066)にしてみても、少なくとも今回のライブでラブリンスターが妙な動きをしているようには見えなかった。
    「頑張ってね」
    「はい、頑張ります!」
     元気よく応じるラブリンスター。夏槻から花束を受け取る彼女に、不審な点はない。淫魔という点を除いてだが。

     ブーケを渡しながら蓮咲・煉(錆色アプフェル・d04035)が尋ねる。
    「あなた自身にとって重要な事って何?」
    「それはもちろん、スターを目指すことですよ!」
     ラブリンスターの意気込みは、確かなもののようだった。
    「お疲れさん。いいライブだったよ……っと」
     ふ、と滑った七埼・誠(レジーウルフ・d04070)の手が、ラブリンスターの胸へと向かう。なんとか踏みとどまった誠だが、ラブリンスターの方はそうではない。
    「あんっ」
    「……はっ?」
     胸を押し付けられて唖然とする誠。しばらく硬直していると警備の淫魔に肩を叩かれた。

    「あなたの歌声、とても好きなんです。これからも応援してます」
     己斐之原・百舌鳥(空鳴き・d10148)に、住矢・慧樹(クロスファイア・d04132)はニヤニヤと視線を向けつつもしばしかける言葉に迷ってしばし悩んだ末、はそう声をかける。
    「ナニがとは言わないけど、これからもよろしく!」
    「はい、ありがとうございます! これからも頑張ります!」
     歌姫の声は、明るさに満ちている。

    「俺、あんたの歌きらいじゃねーよ!よく聴いてる…CDも買ったんだ。よ、400枚。ホントだぞ!? ……それで、よかったらサインください!!」
     三園・小次郎(愛知讃頌・d08390)が差し出したCDの束に、ラブリンスターは目を丸くした。
    「こ、こんなに!? プロデューサー、これは握手権商法の時代なんでしょうか……!?」
    「ラブリンスター様、商法とか言わないでください!」
     後ろからプロデューサーからの声が飛んでくる。
     400枚全てに書くのは幾らなんでもということで、この場は節度をもってお願いしようということになった。でも風の如き速さで100枚を仕上げるラブリンスター。

    「アイドル活動は応援してるから、色んな意味で無理しない程度に頑張ってね」
     志那都・達人(風日祈・d10457)はラブリンスターにマカロンを渡しつつ、そう労った。
    「ありがとうございます! でもまだまだ頑張りますよ!」
     達人のCDにサインを書きながら、ラブリンスターは元気な笑顔を見せる。
    「サインお願いします。良かったら」
     高良・美樹(浮草・d01160)の用意した色紙に、ラブリンスターはさらさらとサインを書いていく。
    「はい、できました!」
     最後に☆マークをつけて出来上がりだ。
     美樹に限らずサインを求める者は少なくない。
    「さ、サインをお願いできますか!」
    「はい! シングル買ってくれたんですね、ありがとうございます!」
     3rdシングルを差し出す柳・真夜(自覚なき逸般人・d00798)。手早くサインをして、ラブリンスターは真夜と握手を交わす。
    「このお気に入りの本にサインお願いしていいですか?」
     斎賀・なを(オブセッション・d00890)も、お気に入りの文庫本にサインをしてもらう。

    「ラブリンスターちゃん、はじめまして。これはお土産だよ」
    「ありがとうございます!」
     竜胆・きらら(ハラペコ怪獣きららん☆ミ・d02856)はチョコの詰め合わせをプレゼントして、CDにサインしてもらう。
     火室・梓(質実豪拳・d03700)は4thシングルにサインをもらっていた。
    「そういえば公式ファンクラブって……」
     物販ブースに申込み用紙があったような気がする。
    「今後もライブの情報とかあったら、是非早く知りたいので…公式サイトやブログの解説予定とかありますか?」
    「ファンクラブサイトにいってもらえれば分かると思います」
     仁帝・メイテノーゼ(不死蝶・d06299)の質問にも、そう返事が返ってくる。もっともバベルの鎖がある以上、一定以上は伝播しないのだろう。

    「最近、ヘビロテで聞いてます。CDにサインください!」
    「ありがとうございます!」
     銀・紫桜里(桜華剣征・d07253)は『ドキドキ☆ハートLOVE』にサインをもらう。
     今日のライブで過去のシングル曲も聞くことができ、紫桜里は満足げだ。
    「サインください。あと、一つ聞いていいですか? 私のおとーさんで館に引きこもりなんですが、館の場所が分からなくなって……」
     闇堕ちした父のことを尋ねる皆川・綾(闇に抗い始めた者・d07933)だが、ラブリンスターにも心当たりはないようだった。
     杉凪・宥氣(零落白夜・d13015)は、緊張しながらラブリンスターと握手する。
    「あの……今日のライブ、とってもよかったです。4thシングルのCD絶対買います。あとこれ手作りですけど食べてくれませんか?」
    「ありがとうございます!!」
     手作りのレアチーズケーキを渡す宥氣は、さらにサイン色紙をもらい、メールアドレスを書いた紙を手渡してその場を離れる。
     榊原・智(鷹駆る黒猫・d13025)も、自分の番が回ってくると緊張を隠せない。
    「あ、えと、応援してます。が、頑張って下さい!」
    「ありがとうございます! これからも頑張ります!」
     3rdシングルにサインをしてもらった智は、次のシングルも買って帰ろうと心に決める。

    「本当にいいんですか?」
    「ああ、思いっきりやってくれ!」
     桃地・羅生丸(暴獣・d05045)は自分の頭にラブリンスターのサインを書いてもらう。
    「きゃんっ!」
     書いているラブリンスターの胸に不意に押し付けると、可愛らしい悲鳴が聞こえた。どこか嬉しそうなのは羅生丸の気のせいだろうか。

     穗積・稲葉(稲穗の金色兎・d14271)と手をつないでラブリンスターの前に来たシャルロッテ・モルゲンシュテルン(夜明けの旋律・d05090)は、マイクを差し出してサインを頼む。
    「こちらのマイクにサインをいただけマスか?」
    「ええ、もちろんかまいませんよ!」
     マイクのヘッドカバーの部分に、器用にサインを入れるラブリンスター。シャルロッテは彼女に笑顔で礼を言う。
    「ルーツがサウンドソルジャーだから、宿敵にあたるんだけど……それでも、争いがなく、お互いが傷つかないで仲良くできるなら……オレは貴女の手を取りたい」
     そう思いながら、稲葉もラブリンスターと握手を交わした。

    「……すみません、サインください」
     呪紋紙を差し出す六車・焔迅(彷徨う狩人・d09292)。ラブリンスターはさらさらとそれにサインを書いてくれた。
    「バベルの鎖があるせいで大変だと思いますが頑張ってください」
    「はい、これからも頑張ります! 応援、よろしくお願いします!」

    「なァお前さん、マジでオレ達と仲良くしたいと考えてるんだって? 面白ェよな!喧嘩売ってくる連中ばっかだってのによ。ぶっちゃけオレは全然構わねェ、寧ろ大歓迎だ♪」
     紅竜・真二(レッドドラゴン・d10881)はラブリンスターに顔を近づけ、歓迎の意を伝えると、CDにサインを書いてもらう。

    「マカロン、好き。聞いて。お近づき、印。言う、だったかな」
    「ありがとうございます!」
     ルナール・シャルール(熱を秘める小狐・d11068)は嬉しげなラブリンスターに有名店のマカロンの入った包みを手渡した。
     CDにサインを入れてもらい、嬉しげにその場を離れる。

    「にわかだけどファンです!あえて光栄です!1stと2ndはなんて名前の曲なんですか!?サインください!!」
     大げさに大絶賛する竜崎・蛍(レアモンスター・d11208)。
    「あんまり売れてないですけど、お店に並んでるので探してくださいね♪」
     今度はジェイ・バーデュロン(置狩王・d12242)が問いかける。
    「一つ聞きたいんだが……その……皆にもわかるように、大きな声で、3サイズを教えてくれないか」
    「ええと、96/58/88ですよ?」
     恥じる様子もなく、にっこりと答えるラブリンスター。その質問の様子に、蛍は冷めた視線でジェイを見つめていた。

     御門・心(アルデバラン・d13160)はCDにサインをもらって握手をすると、そっとラブリンスターに話しかける。
    「少数ですが、ここにもあなたに悪意をもつ、こちらの陣営の者がいるかと思います……よろしければ、ボディーガードに加えさせて下さい……万が一の場合にはお力になれるかと」
    「ありがとうございます! でも心配ないと思いますよ」
     ラブリンスターは笑顔で言い、警備担当者に話をするよう教えてくれる。心はそのまま握手会の終了まで、警備に加わることになった。

     藤原・広樹(過ぎる窮月来たる麗月・d05445)は色紙とCDジャケットにサインをもらっていた。
    「握手するッス! 握るのは腕ッスか? おっぱいッスか?」
    「じゃあおっぱい……は警備の人が見てますから、手にしましょうか」
     広樹はどことなく残念そうなラブリンスターと握手を交わす。
    「現状さいきょーって聞いたからどれくらい強いのか、今度良かったら手合せして欲しーなーってー」
     サインを書いてもらいながらの海藤・俊輔(べひもす・d07111)の頼みに、ラブリンスターは笑って答えた。
    「そんなぁ。蒼の王にも勝った皆さんなら、私ぐらい簡単にやっつけられちゃいますよ!」
     過剰とすら思える高評価には、不死王戦争の結果も一因としてあるらしい。

    「えっと……ラブリンスターさん、ライブ、とっても楽しかったです……♪ あの、握手して下さい……それと……もし良かったら、サインをお願いしますっ」
     アリス・クインハート(灼滅者の国のアリス・d03765)は握手して、持ち込んだCDにサインをしてもらう。
    「あ、そうだ、ラブリンスターさん、マカロンがお好きだってお聞きして、召し上がって頂こうと、マカロンを焼いてきたんです♪」
    「ありがとうございます♪」
     嬉しげに微笑みかわすアリスとラブリンスター。

    「春は出逢いの季節……この友好の場を記念して。花はお好きですか?」
    「はい、好きですよ!」
     3rdシングルにサインしてもらい握手する三芳・籐花(和ぎの揺籃・d02380)。相手がダークネスという事実に、手がわずかに震える。

    「こんばんは、初めてライブていうのに来たけど、とても楽しかったよ。あなたが歌う歌もとてもすてきだったよ。これからも頑張ってね」
    「はい! ありがとうございます! これからも頑張ります!」
     警戒心を持たない様子の刀牙・龍輝(蒼穹の剣闘志・d04546)に、ラブリンスターもまた無垢な笑顔を向ける。

     次にラブリンスターの前に来るのは北田・舞那(ダーティエンジェルズ・d04818)と北田・瀬那(ダーティエンジェルズ・d06216)。舞那が さりげなくメールアドレスが書かれた紙を渡す。
    「ラブリンさん、もしキーボード担当とかベース担当とか必要ならここに連絡して」
    「ずるいっ!? え、えーと、じゃあ私はサインください!」
    「えーと、それじゃお2人の分でいいですか?」
     さらさらとサインを書くラブリンスター。
    「ようラブリンスター、こいつは俺のサインだ、受け取ってくれ!」
     自分のサイン色紙を渡し、代わりとばかり別の色紙にサインを書いてもらうファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)。
    「もしよければ、俺の歌も聴いてほしいとこなんだが、握手会で歌うわけにもいかねーし、またの機会に恵まれたら聞いてもらえないかな?」
    「そうですね、機会があったら、是非お願いします!」
     ミュージシャンからの言葉に、ラブリンスターもまんざらでもないようだ。

    「こちらにサインをいただけると嬉しいでござる!」
     南条・忍(ミルキーパープル・d06321)はCDにサインをもらう。一生の宝物にするという忍に、ラブリンスターも満足顔だ。
     次に、柩城・刀弥(高校生ダンピール・d04025)はラブリンスターと握手を交わす。
    「勉強しすぎて参っていたから良い気分転換になったよ、ありがとう。これで4曲目か……頑張って活動しているんだな、これからも頑張ってくれ」
    「ありがとうございます! 頑張ります!」
     頑張っている奴はできるだけ否定したくないと思いながら、刀弥はCDにサインを書いてもらう。
     皇樹・桜夜(家族を守る死神・d06155)と皇樹・桜(家族を守る剣・d06215)も、持ち込んだCDと色紙にサインをもらっていた。皇樹・零桜奈(漆黒の天使・d08424)がそれを後ろから見る。
    「あ、色紙はできれば保存用観賞用でもらえますか」
    「えーと、使用用を入れて合計3枚じゃなくていいんですか?」
    「3rdシングルの曲を聴いたのは偶然でしたがもの凄くいい曲だったので、お会い出来て光栄です♪ よければですけどクッキーどうぞ♪」
    「ありがとうございます!!」
    (「結局何に使うんだろう……」)
     桜に質問を遮られ、桜夜は結局何に使うのかは教えてもらえなかったという。

    「灼滅者の弐之瀬秋夜だ、お見知りおきを、ラブリンスターちゃん」
    「はい! よろしくお願いします!」
     弐之瀬・秋夜(猛る焔界・d04609)の挨拶に応じるラブリンスター。握手しながら、秋夜はラブリンスターに問いかける。
    「ところで、その……胸……なんだが」
    「えっ? 触りますか?」
     どうぞどうぞ、と言わんばかりに胸を近付けるラブリンスター。思わず触ろうとした時、秋夜は自分の後ろに警備が立っているのに気付いた。
    「困りますよラブリンスター様……」
    「え、そっちかよ?」

    「お歌、すごかったの……あぅ、人いっぱいで、見えなかったけどとってもすてきだったの……♪」
    「可愛くて歌も上手でせくしーだなんて凄いです!これからも頑張ってくださいねっ」
     出雲・陽菜(イノセントチャーム・d04804)と手をつないだミルミ・エリンブルグ(焔狐・d04227)は、新譜のCDにサインをもらう。
    「はい、出来ました! ありがとうございます! 気をつけてね!」
     手をつないだ2人を、ラブリンスターは見送った。

    「あ、サインには『いっちゃんへ♪』って書いてね♪」
    「わかりました! 『いっちゃんへ♪』……っと」
     サインに注文をつける天瀬・一子(Panta rhei・d04508)。
     プレゼントにした鹿せんべいはえらく喜ばれたが、まさか食べるとも思えない。
    「今度はツッコんでね」
    「?」
     サインを書きながら、ラブリンスターは不思議そうな顔をする。

     直前まで突っ張っていた東方・亮太郎(ジーティーアール・d03229)。だが、その態度は、ラブリンスターの前に来て脆くも崩れ去った。
    「俺達と仲良くなったらどうするんですか?」
    「喧嘩することがなくなって、ライブとかに来てもらえたら嬉しいです☆」
     サインが書きあがってもなおラブリンスターといろいろと話そうとするうち、警備員が彼を引き剥がす。
    「や、やめろ、もっとラブリンスターさんとお話しするんだ、放せーっ!!」

     ラブリンスターの手を握ってぶんぶんと振り、川代・山女(水底を視る者・d03521)は持参したCDにサインしてもらう。
    「ラブリンスターさんライブおめでとうございます! 楽しかったです」
    「こちらこそ、来て下さって、ありがとうございました!」
     サインをもらったCDを、一生の宝物にしようと思う。

    「戦わずに仲良くしてくれるって意思を持ってくれる人が居るっていうのは嬉しいんだよ」
    「私も、皆さんが仲良くしてくれたら嬉しいです!」
     和菓子を持ち込んだ九条・泰河(陰陽の求道者・d03676)は、サインをしてもらいながら言う。胸に飛びつきたいところだが、ここで飛びついたらサインが書けないだろう。

    「お疲れ様です。次は武道館ライブですね。きっと満員、即日チケット完売ですよ!」
    「武道館!? 武道館ですって、プロデューサーさん!」
     緋乃・愛希姫(緋の齋鬼・d09037)の言葉に、ラブリンスターはプロデューサーの方に顔を向けるが、彼は困ったように首を横に振った。
    「……しばらくは下積みですね!」
    「頑張ってください」
     サインを受け取り、愛希姫はラブリンスターの前を離れる。

    「本当に自分達と仲良くなりたいのなら、貴方の『力』は使わずに仲良くなって下さい」
    「むしろバベルの鎖に反応しないようなら、都合がいいんですけどねー……」
     長門・睦月(正義執行者・d03928)に応じるラブリンスター。素の能力が極めて高い彼女のこと、むしろ歌がサイキックになってしまうことがなければ、ということかも知れない。

    「あ、こちら丹精こめてつくったおはぎでござる」
     上代・絢花(忍び寄るアホ毛マイスター・d01002)はサインの礼にと、可愛らしくラッピングしたおはぎをおいていく。
    「ライブ、楽しかったです。サインをお願いします」
     サインを書いてもらう間、新城・七波(藍弦の討ち手・d01815)はラブリンスターを観察する。淫乱の気はあるようだが、それを除けば問題はない。
    (「……いや、淫乱て」)
     普通なら大問題だろうが相手は淫魔アイドルである。
    「あ、あの……CDのカバーに、サインを下さい!」
    「はい、もちろんです!」
     今井・紅葉(蜜色金糸雀・d01605)はサインの礼と、プレゼントにクマさんマドレーヌの小箱を贈る。
    「どうしたらスタイルが良くなるんですか!?」
     水綴・梢(銀髪銀糸の殺人鬼・d01607)はCDにサインをしてもらいながらそう質問する。
    「私のお友達の淫魔になるとかどうでしょう!」
    「いえ、それはちょっと……」

    『貴女の事を歓迎する。現在敵対する意思はない。──このライブで何かあれば貴女の味方をしよう』
     接触テレパスでラブリンスターに伝えつつ、立見・尚竹(貫天誠義・d02550)はCDにサインを書いてもらう。

    「なぁなぁ、下着ってどこでこうてるん?」
    「衣装さんが用意してくださるんですよ」
     桜庭・智恵理(チェリーブロッサム・d02813)に、自分はたくさんの淫魔達に支えられてアイドル活動をしているのだとラブリンスターはいう。

    「……これからも元気に歌い続けていってくださいね」
     淫魔に闇堕ちしたことのある黎明寺・空凛(木花咲耶・d12208)は、そう言うとラブリンスターから距離を取る。神凪・陽和(天照・d02848)は彼女をかばうようにラブリンスターの手を取った。
    「頑張って、歌い続けてくださいね。家族皆で、応援してますよ」
    「はい、ありがとうございます!」

    「ら、ららラブリンスターさんっ! ですよね……よ、よければサインぉ……」
     緊張しつつ、知り合いに見られていないかと周囲を見回す骸衞・摩那斗(?に仇なす復讐者・d04127)。
     だが、その姿は無論【武蔵坂HC】の武野・織姫(桃色織女星・d02912)と笹銀・鐐(赫月ノ銀嶺・d04707)に見られていた。あとで摩那斗をつついてやろうと思いつつ、織姫はラブリンスターに問いかける。
    「とっても綺麗ですね~。わたしも綺麗になりたいんだけど、何かしたら良い事とかありますか?」
    「淫魔への闇堕ちですね!」
    「いや、それはちょっと」
    「ライブ以外に一般人を誘わないで下さいね……」
     鐐はやっぱり淫魔なのだなぁ、などと思いつつ言う。
    「どうやったらラブリンスターさんみたいに可愛くなれますか?」
    「淫魔に闇堕ちすれば一発だと思うんですけど、なんでか皆さん微妙な顔をするんです」
    「だからさぁ……」
     氷霄・あすか(高校生シャドウハンター・d02917)は、変わらない答えに思わずツッコミを入れる。
    「……でも、本当に?」
     なお、サウンドソルジャーの人々に確かめてみたところ、効果には個人差があるらしい。

    「コレにサインお願いします!」
     出会い頭に、ラブリンスターの3rdシングル『ドキドキ☆ハートLOVE』にサインを求めるのは、河内原・実里(野生のサムズアップ・d17068)。
    「はいどうぞ!」
    「ありがとうございます。応援してますよ」
     その言葉にラブリンスターも笑顔で応えた。

     持っているCDを差し出して、三和・悠仁(影紡ぎ・d17133)はサインを求めた。
     ラブリンスターは突然の申し出にも関わらず、そのCDに快くサインを施す。
    「是非またライブを開催して下さいね」
    「ええ、もちろん。あなたが来てくださるのをお待ちしています!」

     与那嶺・ルカ(花喰み唄・d16959)はCDにサインしてもらいながら、プレゼントとして用意したガーベラの花も手渡した。
    「花言葉は希望と常に前進。輝きつづけるラブリンちゃんにぴったりの花だろ♪」
    「まあ、素敵な花言葉ですね! ありがとうございますっ!!」
     とても気に入ってもらえた様子。

    「ずっとファンだったでござる、サインお願いしますでござる!」
     大きな花束と共にサインを求めるのは、雨崎・弘務(常夜の従僕・d16874)。
    「ありがとうございます! ずっとファンでいてくださいね」
     頬にキスしてもらって、弘務は顔を真っ赤にさせていた。

     天道・奈落(堕落論・d16818)はサインをしてもらいながら、DSKノーズでラブリンスターとその配下達の業を探っていたが……どうやら、それなりの量を持っているとしか分からない。
    「どうかしましたか?」
    「いえ、ありがとうございました」
     気付かれないように奈落はそのまま帰宅したようだ。

    「妾は魔王ラクエル!覚えておくのじゃぞ!」
     そう自己紹介するのは、ラクエル・ルシェイメア(チビ魔王・d16206)。
    「著名人にはサインを貰うのが普通らしいな! これにサインしてくれんじゃろうか?」
    「はい、喜んで!」
     あわよくば、ラブリンスターの乳を揉もうとしていたが、その前に警備に見つかってしまいつまみ出されてしまった。だがしかし、サインはゲット済みだ。

    「あのぅ……これにサイン、お願いできますかぁ~?」
     火土金水・明(いたって普通の魔法使い・d16095)が差し出したのは、ラブリンスターの生写真。
    「ええ、いいですよ。こちらでいいですか?」
    「はい、ありがとうございますぅ~」
     無事サインを貰えて、明もラブリンスターも嬉しそうだ。

     CDを買ったという体で、天城・翡桜(碧色奇術・d15645)はサインをせがむ。
    「ライブに誘ってもらって……有難うございます。あの、これにサインいただけませんか?」
    「お名前も入れますか? ……はい、できましたよ」
     名前入りのサインを貰って、翡桜は笑みを零す。

     表情を変えずにローゼマリー・ランケ(ヴァイスティガー・d15114)は、たくさんの言葉をESPで送りつつ、CDを手渡す。
    「最後にサインお願いできマスカ?」
    「はいどうぞ。また来てくださいね」
     渡した紙は、どうやらラブリンスターに届いたようだ。

     CDにサインを書いてもらいながら斎場・不志彦(燻り狂う太陽・d14524)は尋ねる。
    「失礼かもだが、こんなに人来た事って初なんじゃないの?」
    「言われてみればそうかもしれませんね! だからこんなに忙しいのかもしれません。私としてはとても嬉しいことですけど」
     にこっとサインができたCDを手渡されて、不志彦は。
    「そりゃ良かったな。僕も楽しかった。また来るぜ。ラブりん」

    「ライブお疲れ様です、これ差し入れです」
     差し入れと共にCDにサインを求めるのは、神宮寺・刹那(狼狐・d14143)。ちなみに差し入れの中身はのど飴とスポーツドリンクだ。
    「ありがとうございます、すごく助かります!」
     ぎゅっと力強く握手されて、刹那は照れくさそうに笑った。

     CDに頼む者が多い中、園観・遥香(デッドアイズ・d14061)はきちんとした色紙を用意して、それにサインを求めた。
    「……やー、それにしても。ラブリンスターさん……おっきいです、ね……? 何って……その……あっ、あれですよ? ……胸、が」
    「あ、ああ、胸でしたか! てっきり私……ふがふが」
     それ以上は警備の者に口をふさがれ、それ以上聞くことは叶わなかった。なお、サインはきちんと貰えたのでご安心を。

     ドリンクバーで出した栄養ドリンクを手渡しながら、輪廻・彩喜(小学生殺人鬼・d14059)は手を差し出した。
    「殺し合わずにすむのは、良い事だと思います。種族は違えど、同じ生命、だと思うので……仲良くできるのなら、よろしくお願いします」
    「はい、そうですね。私もそう思いますよ」
     にこっと栄養ドリンクを受け取って、笑顔でサインも書いてくれた。

    「僕、あなたのことを知ってからずっとファンです! これからもがんばってください! 応援してます!」
     安城・翔(疾風の旋律士・d13932)は、ちらちらと胸を見ては、視線を逸らし、視線をそらしながらも、やっぱり盛り上がった谷間を見ている。
    「ありがとうございます! ずっとずっとファンでいてくださいね!」
     念願のサイン色紙とサイン入りCDを受け取って、翔はかなり感激している様子。

     おどおどした様子でCDを取り出すのは、天津原・鈴(小学生魔法使い・d13394)。
    「んと……あの……サイン……貰え……ますか……?」
    「はい、喜んで。それと名前も聞かせてください。サインに書きたいんです」
    「あ……ありがとう……ござい……ます……♪ 大切に……します……ね……♪」
     その可愛らしい鈴の微笑みに、何故かラブリンスターに抱きつかれて、警備員に引きはがされるというハプニングに遭ったのは言うまでもない。

     櫻井・さなえ(甘党で乙女な符術使い・d04327)は、石上・騰蛇(穢れ無き鋼のプライド・d01845)と共に買った花束を手渡す。
    「わぁ、ありがとうございます!」
    「アイドルソングはよくわからないんですが……ごめんなさい」
     一つの要求を騰蛇はラブリンスターへと送る。
    「出来ればもう少し露出を控えて頂けると個人的には助かります」
    「そうですか? この衣装、結構露出控えめだと思うんですけど……ほら公共放送にも全裸で出た例があるって」
    「それはタイツかと」

     樹・咲桜(ガンナーズブルーム・d02110)は鎌倉銘菓の数々を差し入れる。
    「ラブリンスターさん、コンサートお疲れさまでした! これは差し入れです。もしよかったら受け取ってください! あとできたらサインもお願いできますか?」
    「ありがとうございます! もちろんですよ!」
     ラブリンスターは即座にサインをしてくれる。
    「ファンです、CDにサインしてください!」
     成瀬・亮太郎(小学生爆音サウンドソルジャー・d02153)は手持ちのCDにサインしてもらう。
    (「買ったんじゃなくてブレイズゲートで拾ったというのは秘密にしておこう……」)
     嬉しそうにサインするラブリンスターに、亮太郎はそう思う。もっとも、それは他の多くの灼滅者も同様だったりする。

    「これが最上位クラスの淫魔の力ですか~……圧倒的です~」
     氷神・睦月(不滅の氷槍・d02169)は胸のことを言っているのだが、ラブリンスターは普通に力のことと受け取ったようだった。
    「私なんて、最上位なんてとてもとても! すごい人達はもっとすごいですよ!」
    「そうなんですか~……淫魔、侮れません~」
    「俺と亜樹がこうやって一緒になれたのはラブリンスターの歌のおかげだ、ありがとうな。立場は違えど俺達二人はアンタのファンだよ。これからも頑張ってくれ、応援してるよ」
    「いやぁ、ドキドキ☆ハートLOVE聞いてからファンだったんですよラブりん。ラブりんの歌のおかげでもっと素直になれたっていうかラブラブになれたっていうか」
    「ホントですか!? もしそうなら嬉しいです!」
     嬉しそうなラブリンスターに、藤堂・焔弥(赤鉄の鬼神・d04979)と崇宰・亜樹(強襲機甲竜騎兵・d01546)の2人は、記念にCDにサインをしてもらう。
    「……ふむ、こちらの武装はまるで気にしていない様子だな」
     須賀・隆漸(双極単投・d01953)はサインを受けたCDを手につぶやく。ダークネスなので、無手に見えても完全武装している灼滅者達より遥かに強いのだ。
    「嫌だったら答えなくていいけど……ラブリンスターが人間だった時ってどんな娘だったの?」
    「デビュー前は、いわゆる普通の女の子ですよ」
     黒鉄・伝斗(電脳遊戯パラノイア・d02716)に、ラブリンスターはそう答える。
     それが本当かは分からなかったが。

    「個人的には友好的になりたいと思うけど僕らは人間を護ることを前提に戦っているんです。もし共闘するならばそちらにも人間を襲ってほしくないと思う」
    「お互い、お友達を傷つけないように、仲良くしましょうね♪」
     白露・狭霧(夕霧・d02732)にラブリンスターはそう応じるが、重大な懸念点はここにあった。
     『淫魔への闇堕ち』を、当然起こるべき現象ととらえるラブリンスター側と、人類への侵略と捉えている灼滅者達とが、妥協することは困難だろう。
    「お前達がオレ達とだけ戦わなくても、他の人間を闇堕ちさせたりチョッカイ出せば邪魔しないわけにはいかない。ダークネス同士で仲良くするようにはいかない気がするけどその辺どう思う……?」「できるだけ仲良くしたいですね♪」
     真月・誠(道産子くせっ毛ガキ大将・d04004)にラブリンスターはあっさりと応じる。

     【梁山泊】の結島・静菜(清濁のそよぎ・d02781)は、塩せんべいを渡すと、売店で買った新曲のCDにサインしてもらう。
    「ライブに来たのは初めてだったのですけれど、とっても楽しかったです。ラブリンスターさん、ありがとうございます!」
    「こちらこそ、CD買っていただいて、ありがとうございます!」
    「歌詞はともかく、歌声は凄いと思いました。あとこれ、プロデューサーさんに」
     森沢・心太(隠れ里の寵児・d10363)の差し入れた胃薬は、すぐ後ろにいたプロデューサーに渡されたようだ。

     何人かの灼滅者の質問は共通していた。
    「あのさ、なんで俺らと仲良くなりたいんだ……ですか?」
    「どうして『友好を深めたい』のでしょうか?」
     透純・瀝(エメラルドライド・d02203)やアルベルティーヌ・ジュエキュベヴェル(ガブがぶ・d08003)が尋ねたように、武蔵坂学園にこうして接待を仕掛けてきた理由は知っておくべき点だろう。
     それについての答えは、
    「仲良くして、喧嘩せずにいられれば、それが一番いいと思うんです」
     というラブリンスターの言葉が全てだろう。それ以上の考えが無さそうだということは、灼滅者達も感じていた。
     事務所のプロフィール上ではラブリンスターの好みとされているマカロンの箱詰めを渡し、鷲宮・密(散花・d00292)は問う。
    「他の組織とはどうなってるの?」
    「皆さん、仲良くしてもらってます。武蔵坂学園の皆さんとも仲良くできると嬉しいです!」
     微笑むラブリンスター。接待攻勢を仕掛けている組織とは、互いに攻撃されないようにしているのだろう。

    「なぜ武蔵坂学園を信用したの? 灼滅者組織ということは、ダークネスを狩る集団なわけよ」
    「皆さん、蒼の王コルベインを倒したり、すごい人達じゃないですか。仲良くできればいいなって思ったんです♪」
     挑戦的なアリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814)にも、ラブリンスターはあくまで笑顔だ。
    「本心では何を考えておるのじゃ?」
    「皆さんと仲良くしたいと思ってますよ?」
     和泉・風香(ノーブルブラッド・d00975)が問うが、これは聞き方が悪いというべきか。

    「何故そこまで灼滅者を信用できる?」
    「銀虎さんや佐藤さんを見逃してくれましたし、今だって、ほら! こんな沢山の人がライブに来てくれてるじゃないですか!」
     上條・和麻(黒炎宿りし二刀流・d03212)にラブリンスターは列を示してみせる。
     このライブを通じて、ラブリンスターの武蔵坂学園への好意が深まったのは確かなようだ。

     神代・煉(紅と黒の境界を揺蕩うモノ・d04756)や一・威司(鉛時雨・d08891)は単刀直入に尋ねる。
    「オレ達と関わる事で何をして行きたいんだ?」
    「今までのようにアイドル活動ですよ? 皆さんと仲良くして、もっと歌う場が増えたら嬉しいです!」
     武蔵坂学園と仲良くして、それで何か活動を変えようという意思は彼女にはない。
     これまで通り、アイドル活動をやっていくまでということだ。

    「人間とダークネスが仲良く……は、とても難しい話だと思うんですが、ラブリンスターさんは具体的にどういう感じで仲良くするイメージなんでしょう?」
    「どうっていうと……皆さん、とっても強いですから、守ってもらえたら嬉しいです♪」
     御剣・レイラ(中学生ストリートファイター・d04793)の質問に対する答えはストレートだ。
     彼女自身が現状最強のダークネスであることは間違いないはずなのだが、それに対する答えにもまた、本気が感じられ、レイラは一瞬戸惑った。

     禰宜・剣(銀雷閃・d09551)は、気になる点を問いかける。
    「仲良くするのはいいけれど……あの戦争であたしらはあんたの仲間も倒してきたけど……いいの?」
    「そういうのを水に流して、仲良くしませんか?」
     微笑みかけるラブリンスター。多数の灼滅された状況で、これを言い出せるのは度量が大きいのか仲間の命に関心がないのか。
     蒼の王コルベインとの戦いの中でも相当数の淫魔が灼滅されているが、彼女たちにしてみれば『その程度』は許容範囲ということだ。
     致命的な点で武蔵坂学園の介入を招かなければ、それで問題はないのだろう。

    「アイドルとしての誇りを常に忘れないでください」
     神乃夜・柚羽(紅い珠・d13017)は、ラブリンスターにそう語りかける。
    「もちろんです! 私は『歌って踊ってエッチもできるスーパー淫魔アイドル・ラブリンスター』ですから!」
     力強い返事。もっとも、その言葉を実行されると柚羽の考えるアイドル像とは異なる方向に突っ走っていくかも知れなかった。

     結城・真白(月見里響の妖刀・d11282)はラブリンスターと握手をすると、接触テレパスで呼びかける。
    『……お姉さま。学園と手を組み多勢力を倒すことは真白達にとっても多勢力の力を弱める絶好のチャンス』
     マカロンを手渡し、名残惜しげに離れる真白。今すぐにでも可愛がって欲しいと思うが、今は我慢と学園への帰路につく。

     初対面でごめんなさいねと謝りを入れてから、アリッサ・クラーレント(羽に追い風・d15595)は。
    「淫魔が皆、アイドル活動みたいな感じなら、『灼滅者』も攻撃とかしない感じなんだけど。上手く纏めちゃってくれないかしら。死傷者とかの被害が出ちゃうと、感情的になっちゃうし。貴女のカリスマで、何とかできない?」
    「私、まだまだ駆け出しですから、いつかスターになった暁には、そうさせていただきますね!」
     と、にこっと握手を求めてきた。

     有馬・由乃(歌詠・d09414)は握手したまま、こう考えていた。
    (「この可愛さや魅力はダークネスだからなのか、それとも日頃の努力を欠かしていないからなのでしょうか?」)
     ラブリンスターが目を見れば人の心が読めるという噂を確かめるためだが、
    「?」
     ラブリンスターの方は笑顔で握手をするばかりだ。

    「もしも、学園と友好な関係を築く為に何か考えている事や、学園側への希望、案があるなら、またライブをして、聞かせて欲しいな。親密になりたいから」
     華槻・灯倭(紡ぎ・d06983)の質問に、ラブリンスターはこう応じる。
    「うーん、仲良くしてくれたら嬉しいです。危ない時に守ってくれたら、もう大感激ですけど」
     彼女たちの作戦方針の第一は『保身』だ。外交姿勢にもそれがうかがえる。

    「うーん、ダークネスの人にがんばってとは言いづらいですけど、淫魔に闇堕ちした人を灼滅者として元人格に戻したり、勝手なことをするはぐれ淫魔や都市伝説とかはぐれ眷属狩り、手伝ってもらえないでしょうか?」
    「うーん? 淫魔のお友達を灼滅されちゃうと、ちょっと寂しいです」
     華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)の質問に、ラブリンスターはそう返す。相手がダークネスであることを考えれば、既に最初の1つ目で過分な要求というべきだろう。

     鎮杜・玖耀(黄昏の神魔・d06759)は、ラブリンスターに提案をする。
    「灼滅者には私のようにサイキックエナジーを持て余している者も少なくありません。ライブなどで灼滅者からサイキックエナジーを集める事で一般の人に手出しするのを止めてくれるなら、私達は良い関係でいられるのと思うのです」
    「一般の人達に手出しとか、私たちそんなしてないですし……ファンになってくれたら、それはそれで嬉しいですけど」
     ラブリンスターがすべての淫魔を従えているわけでもない。彼女達の勢力がやっていることと言えば、淫魔に闇堕ちする人を出す、といった程度だ。
     人類は魂の中にダークネスを抱えているが、誰もが闇堕ちするわけではない。
     ラブリンスターは闇堕ちする『素養』のある者を淫魔に変えたが、それは『一般の人への手出し』と言えるのだろうか。紫堂・恭也であれば、ラブリンスターも闇堕ちした者もまとめて悪と断じただろうが。

    「プレゼント、何にしようか迷ったけどリボンにしたの。あれだけ長い髪だと纏めるの大変そうだし……」
     獅子堂・音夢(未熟な影遣い・d15905)はそっとプレゼントを差し出して告げた。
    「ありがとうございます。次のライブには、必ず付けて行きますね」
    「はじめまして! あのね、今度武蔵坂で運動会やるの! 一緒に楽しめないかな?」
    「そうなんですか! 楽しそうですね!」
     【井の頭キャンパス小学2年椿組】の天城・桜子(淡墨桜・d01394)の誘いにラブリンスター本人としては歓迎の姿勢のようだが、あとはスケジュールの都合といったところか。
    「……ホントに悪意とかなかったわね。いやそれにしても……」
     ちらりと見やり、桜子はつぶやく。
    「えぇと、まだ成長すると思うけど……勝てる気がしないわね、アレ……」
    「ところで『飛び出せ初恋ハンター!』って凄いネーミングよね。どういう発想なの?」
    「初恋をテーマにした歌っていうことで、作曲家のアスタリスク先生に作詞作曲してもらったんです」
     アスタリスク、と羽丘・結衣菜(歌い詠う蝶々の夜想曲・d06908)は復唱する。

     姫条・セカイ(黎明の響き・d03014)はラブリンスターに申し出る。
    「わたくし、その……エッチな事はできませんが、歌も踊りも、付き人でも頑張りますから、側で貴女方を見させていただけませんか? 貴女達と理解し合い、仲の良いお友達になりたいのです」
    「わかりました、淫魔になったら来て下さい! エッチなことも練習すれば大丈夫です! プロデューサーさん、連絡先を……」
     ラブリンプロダクションはいつでもお待ちしています、とプロデューサーが名刺を渡して来る。

     狩野・翡翠(翠の一撃・d03021)の疑問は、ラブリンスターの目的に関することだ。
    「色んな所にお友達が増えてるみたいですけど、お友達と何かするんですか?」
    「他のダークネスの人達と仲良くしてもらえば、それだけ安全じゃないですか? もしかするとライブに来てくれるかも知れませんし!」

    (「ダークネスと恒久的に仲良くできるとは思いませんけど、絶対に相容れないからって、悪だって罵って排斥するのは私は嫌だな……たとえ戦うことになったって、どうせなら私は好き合って殺したい」)
     殺人鬼たる村山・一途(硝子色の明日・d04649)はにこにこと笑みを浮かべながら、ラブリンスターと握手する。
    「純粋に楽しめる日が来るのを、心待ちにしていますよ」
     ずっと周囲を警戒していた紅羽・流希(挑戦者・d10975)は言って、寂しそうな笑顔を向けると握手をして立ち去っていった。

    「それにしても、随分思いきった事をなさいましたよね。いくら灼滅者が相手とはいえ、淫魔勢力の大物さんご本人がこうして我々をライブに招くとは。万が一にも、襲撃されたりするとは思われなかったのですか?」
    「きっと大丈夫だって信じてました!」
     高倉・光(人の身体に羅刹の心・d11205)に、ラブリンスターはそう応じる。

     灯屋・フォルケ(Hound unn?tige・d02085)は握手を済ませると、プロデューサーに接触する。
    「歌の良し悪し解る方じゃなんですが……本当に熱心なのはわかるんですよね。人を堕とすだけの形だけの物とも違うし、何故ですか?」
    「ラブリンスター様に、『そういうのが好きだから』以上の理由はありませんよ」
     実利を追求するだけならバベルの鎖があったとしても芸能界を制圧するなど容易いであろうことは、フォルケにも分かる。
    「音楽に限らず、芸術とは芸術それ自体を目的とすることもあるでしょう」

     もっとも、握手会に参加していても全ての灼滅者が好意的だったわけではない。
    「あなたのことを快く思っていない生徒もいる。気をつけた方がいい」
     曹・華琳(サウンドポエマー・d03934)がそう忠告したように、戦闘を挑むとまではいかずとも、敵対的な態度をとる者も皆無とは言い難かった。

    「お目にかかれて光栄です。好意の押し売りの感触は如何でしたか? ステージから客の顔がよく見えたでしょう。今夜は誰をテイクアウトするつもり?」
     矢継ぎ早にインタビューをぶつける銀ヶ堂・はじめ(饒舌なジャーナリズム・d16986)。
    「それはですね……」
     言いかけるラブリンスターを押しとどめ、警備ははじめを追い出した。
    「アポのない取材はお引き取りください」

    「また歌いに来てくれるとうれしいな。次は合唱とかもしてみたいぞ!」
     好意的な鴨打・祝人(みんなのお兄さん・d08479)に対して、同行する天外・飛鳥(囚われの蒼い鳥・d08035)は不機嫌だ。
    「俺が今何考えてるかわかる?」
    「おいおい、飛鳥……」
    「?」
     憎悪を叩きつけんばかりの心を秘めて言う飛鳥に、ラブリンスターは不思議そうな顔を返す。

    「淫魔が灼滅者と仲良くなりたくて学園へと来た? ……ハッ、笑わせるなよ。ダークネス。淫魔との友好が一体人類に何をもたらす?」
     黒山・明雄(狩人・d02111)の視線は鋭い。
    「覚えておけ、ラブリンスター。灼滅者はお前達に友好的な者ばかりではない。己の欲望に忠実な淫魔が何を訴えようが、素直に信じない者もいる事をその無駄にデカい胸に刻み込んでいけ。少なくとも俺はお前達にとっての敵だ。例え学園と友好を結ぼうとも、常に誰かの疑惑の目が光っていると思っておけ」
     言い捨てて、明雄はラブリンスターの前を去っていく。
     ラブリンスターは困ったように、その背を見送る。
    「貴様の目的は何だ」
    「皆さんに仲良くしてもらうことですよ?」
     端的に尋ねる社・百合(社の末裔・d08563)の敵意に、あくまでも笑顔で返すラブリンスター。アイドルなら、時に他人から悪意を受けるのも上等というところだろう。
     握手はせず、自己紹介をし始めた霧月・詩音(凍月・d13352)にラブリンスターは、ちょっと首を傾げて、相手の様子を見ているようだ。
    「あなたは、何を考えているのですか?」
    「そうですね、皆さんと仲良くなれたら嬉しいですね」
     にこっと手を差し伸べてきたが、詩音はその手を握ることはなかった。
    『何考えてるのか知りませんけど、もし今後私の仲間達にいらぬ危害を加えるようなことがあれば、どれだけ実力差があろうが食らいついて始末つけますので』
     沖津・星子(笑えぬ闘士・d02136)は接触テレパスで、ラブリンスターに思いを伝える。
    「ええ! そういうことにならないよう、仲良くしてくれると嬉しいです!」
     実際、ラブリンスター勢力に対しては武蔵坂学園の側から仕掛けていることがほとんどだ。そうでなければここまで友好的な態度を示す灼滅者も多くはなかっただろう。
    「ダークネスを決して許しはしない……ただ、私一人息巻いてても仕方がないのでね。今日は様子見兼ねて来ましたよっと」
     死んだ魚のような目をした葉月・十三(高校生殺人鬼・d03857)は、ラブリンスターの右胸へと手を伸ばす。
    「きゃぁんっ!」
    「ん~? 間違えたかなぁ?」
    「……いえ、間違えてませんよ?」
     ラブリンスターが自分から胸を押し付けてくるのに十三は一瞬ひるんだ。
     ラブリンスターの声に警備の淫魔がすっ飛んできて、十三を引き剥がすと会場の外へと放り出す。
     その後、榎本・哲(狂い星・d01221)や漣波・煉(片足は墓穴にありて我は立つ・d00991)、田所・一平(赤鬼・d00748)といった廃工場の面々が同様の行為をして逃げようとするが、花火や煙玉程度で惑わされるダークネスや灼滅者がいるかといえば答えはノーである。彼らは警備についていた灼滅者達の視線を受けつつ会場から叩き出されることとなった。
    「……つーか、あれ、避けられるのに、こっちに殺意ないからわざと避けなかっただろ……」
    「エロいハプニングは大歓迎ってとこじゃね」
    「納得いかねぇー」
     接触しようとした瞬間に感じることのできたラブリンスターの凄まじいまでの能力の高さに、4人は顔を見合わせる。むしろ触られる方に喜びを感じていたような気さえする。

    「痴れ者どもめ。初対面の相手の乳を揉むのが礼儀か。淫魔とは言え娼婦ではないというのに……」
     三味線屋・弦路(あゝ川の流れのように・d12834)は嘆息しながら、ラブリンスターと握手を交わす。
    「うちの馬鹿共が失礼した…代わって詫びさせて貰う。すまない」
    「いえいえ。私、歌って踊ってエッチもできるスーパー淫魔アイドルですから!」
     ドヤ顔でポーズを決めるラブリンスター。
     実際、胸を揉みにかかる者が握手会参加者が少なからず居るのが実情であった。柾・菊乃(同胞殺しの巫女・d12039)も協力してくれてはいたが、どうにも現実は厳しい。
     何しろ、揉まれる本人が全く嫌がっていない。

    「最終的には戦うことになると思うが、それまでは成功すると良いなって思っておく。……あぁでも、被害者を増やすようなら力の限り体を張って妨害させてもらうが」
     鳴神・月人(一刀・d03301)は言う。
     対して桜庭・理彩(闇の奥に・d03959)は回りくどい言い方などせず、直球だ。
    「人を堕とさないと増える事の出来ない貴女達と、貴女達を狩らなければ人で居られない私達。それでも仲良くできると考えているの?」
    「今、しているじゃないですか?」
     ラブリンスターはあくまでも笑顔だ。そういうことであれば、自分達の活動さえ、ある程度見逃してくれれば、それでいいし、いざという時に頼れれば良いという腹積もりらしい。
    「ちょっと前にダンス好きの一般人が淫魔にたぶらかされて闇堕ちしてたみたいだけど、何がしたかったの? どっかのアイドルみたいに大規模グループにするためのメンバーでも集めてたの? それと、何かを邪魔しないよう他のダークネスたちに根回ししてるみたいだけど、大規模なライブでもやんの?」
     八神・菜月(徒花・d16592)の言葉に警備の者がラブリンスターに耳打ちした。
    「また素敵なライブが開けたらいいですよね!」
     そうにこっと笑うと、一瞬のうちに菜月の手を取り、握手する。

    「葉ってピンク髪に眼鏡のダチが暴言吐いたらすまねェ」
     握手会に参加していた万事・錠(ハートロッカー・d01615)が事前に頭を下げていたが、一・葉(デッドロック・d02409)のとった行動は暴言どころではなかった。
    「スーパー淫魔アイドルが武蔵坂まで枕営業お疲れさまッス。あ、握手よりおっぱい触らせて下さい」
    「はい、いいですよ♪」
     胸に契約の指輪を突きつける一・葉(デッドロック・d02409)。ラブリンスターは平然と受け入れるが、葉に攻撃する気がないのを読み取っていたのかどうか。
    (「攻撃しても無力化されるなこりゃ」)
     読み取るとすぐ警備の淫魔が飛んできて、葉とラブリンスターを引き剥がす。

    「最初友好的に近づいて、徐々に牙を抜いて、最終的に堕とす、そんな『ゲーム』ってとこでしょ」
     アリス・セカンドカラー(暇を弄ぶ・d02341)はラブリンスターの狙いをそう見定める。
    「いいわいいわ愉しめそう、この『ゲーム』乗らない手はないわね☆ でも、そう簡単には堕ちないわよ? ギャルゲ的な意味で☆」
    「えーっと……? あ、げ、ゲームとかって楽しいですよね!」
     ラブリンスターのフォローに、指を突きつけたままアリスの顔が赤くなった。どうも外れらしい。
    「すごいYOラブちゃん! 甘美にエロティック!皆の視線・注目を一身に受けるパフォーマンス! どうすれば、そんな風に振舞えるのか、コツとか教えて欲しいナ☆」
    「人のえっちな心を刺激することですよ!!」
    「えっ」
    「えっ」
     王華・道家(フェイタルジェスター・d02342)の質問への回答は、まさしく淫魔らしいものだった。
    「CDの入手が困難なのがなんとも……」
    「全国のCDショップで売ってますから、探してみてくださいね!」
     巴衛・円(くろがね・d02547)にラブリンスターはそういうが、バベルの鎖の力がある以上、彼女の情報はほとんど伝播しない。

    「また機会があれば、ぜひとも招待して欲しいものだぜ。……ライブ以外でもな?」
     そういって、手を差し伸べるのは山住・伊吹(鬼神に横道なし・d16037)。
    「本当ですか? じゃあ、お誘い……」
     警備に止められて引きはがされてしまったが、ラブリンスターは終始笑顔で手を振ってくれた。

     後方から様子を観察していた八川・悟(敗戦少年・d10373)に続いて、最後尾に並んでいた観月・七穂(高校生魔法使い・d17285)の番が来る。
    「招待していただいたお礼に軽くマッサージしてもよろしいでしょうか?」
     最後だからとサービスしてくれたようだ。ラブリンスターは七穂に揉まれて、うっとりと気持ちよさそうだ。ふくらはぎから胸に行こうとしたところで、警備に止められてしまった。
    「もう少し揉んでもらってもよかったんですけど……今日はありがとうございました。私、すごく元気を分けてもらいました」
     ラブリンスターは七穂に、喜びに満ちた笑顔を向けた。

    「皆さーん、今日は本当にありがとうございましたー!!」
     最後にラブリンスターが大きく手を振って言うと、まだ会場に残っていた灼滅者達が手を振りかえす。
     握手会直後に奇襲を仕掛けようとしていた者達も、香坂・澪(ファイティングレディ・d10785)をはじめ、ラブリンスター周辺を固めている灼滅者の多さに襲撃を断念する。
    「灼滅できるとしても生徒にも、町にも被害が出るかもしれないだろ?」
     砂原・皐月(禁じられた爪・d12121)の止める理由はそういったところだ。
     攻撃しようとした側にすれば怨敵ダークネスと手を結ぶなど言語道断だろうし、守っている側にすれば、ここで友好ムードを御破算にされては困る。
     この場では、後者を望む灼滅者の数が上回ったというところだろう。無論、ここに来ていない灼滅者も数多くいるのは確かだが。

     早々に握手会を終わらせたヴィルヘルム・ギュンター(悪食外道・d14899)は、プロデューサーとの接触を果たす。
    「何かあればその名刺の番号へ連絡してくれ」
     何とか自分の連絡先の書いた名刺を手渡すことに成功したが、果たして連絡は来るのか未知数だ。
    「ライブ終わったことですし、みんなで打ち上げいきましょう」
     綾瀬・一美(蒼翼の歌い手・d04463)が提案し、灼滅者達は代々木公園を後にする。

     黒曜・伶(趣味に生きる・d00367)は、ステージを片付ける淫魔たちを手伝いながら話しかけていた。
    「やはり戦うだけが道じゃなくて他にも友好の道があるはずです」
    「ええ、そうね」
     淫魔たちの仲良くする手段といえば、それこそ性的な行為なのだが、伶が理解しているのかどうか。
    「一通りの警備はいるが……大して警戒すらしていない、か」
     東屋・紫王(風見の獣・d12878)は撤収する淫魔たちを見ながら思う。
     淫魔たちと付き合うことになったとして、武蔵坂学園の公序良俗は大丈夫だろうか、と。

     三倉・咲紀(歌う神薙使い・d15495)は、霧渡・ラルフ(奇劇の殺陣厄者・d09884)と共に帰途についていた。
    「プロデューサーさんとアスタリスクさん、だっけ?」
    「名前が出たのはそれぐらいデスねぇ」
     ラブリンスター勢力の情報を、2人は改めて思い返す。
     握手会の時にラルフが渡した「節度」 の花言葉を持つ赤いアザレアの花。その皮肉を彼女は理解しただろうか。
    「いや理解してないでショウネー」
    「?」
     咲紀はきょとんとした様子でラルフを見やる。

    「でも、相手はダークネス。いつか戦うことにもなる間柄、か……楽しい思い出を作った相手と戦うことは、あんまりやりたくないんだけどね……」
     そのときには、せめて悔いの無いようにしたい。
     雨宮・悠(夜の風・d07038)は既に、いつか殺しあう日のことを考えていた。
     武蔵坂学園とラブリンスター勢力。両者は今後、どう関わっていくのだろうか……。

    作者:真壁真人 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年5月15日
    難度:やや難
    参加:677人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 4/感動した 8/素敵だった 113/キャラが大事にされていた 116
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