暴くは悪事だけではなく

    作者:飛翔優

    ●秘密を暴く吸血鬼
     ――校長室の秘密! 酒にまみれた学習指導!!
     とある学校の掲示板に、写真付きで公開されている新聞紙。
     まじまじと生徒たちを、教師たちが怒鳴り声を上げながら掻き分けていく。
     嘘だ、でたらめだと喚き散らしながら新聞紙が剥がされていく光景を、一人の女子生徒が物陰から眺めていた。
    「ふふーん、今回もどうやら成功のようですねっ」
     名を三宅藍。最近転校してきた、元はヴァンパイア学園・朱雀門高校に通っていた生徒である。
     彼女は学園を堕落させるとの意思のもと、様々な醜聞を暴き、時に捏造し、掲示板に公開していた。その効果が現れてきたのか、生徒たちはおろか教師たちの間にも疑心暗鬼の感情が漂い始めている。
    「ふふーん。さて、次のネタは……っと」
     心地よい空気に身を委ねながら、藍はメモを開いていく。
     まだまだネタは沢山ある。次はどんな情報で、みんなの心を煽ろうか。

    ●放課後の教室にて
    「どうやら、ヴァンパイア学園が動き出したみたいです」
     集まった灼滅者たちを前にして、倉科・葉月(高校生エクスブレイン・dn0020)は話を切り出した。
    「場所は東京都清瀬市に存在する高等学校。ここに、三宅藍さんと言う名前のヴァンパイアが転校してきました」
     現在、ヴァンパイアたちの学園である朱雀門高校の生徒達が、各地の高校に転校してその学園の支配に乗り出している。彼女の行動もその一環だ。
    「しかし、ヴァンパイアは強大なダークネス。今の時点で、完全に敵対するのは自殺行為でしょう」
     といっても、このまま多くの学校がヴァンパイアに支配される事を見過ごす事はできない。そして、転校先の学校でのトラブルという程度であれば、戦争に発展する事もおそらくないだろう。
    「今回の目的は、ヴァンパイアの撃退ではありません。学園支配を防ぐことです。故に……」
     戦わずに学園支配の意志を砕くことができれば、最良の結果となる。
     そう概要を説明した上で、葉月は地図を開いた。
    「件の高校はここ。この高校を、藍さんという名前のヴァンパイアが支配しようとしています」
     方法は、学園内に眠る醜聞を暴き、あるいは捏造し、センセーショナルな見出しとともに白日のもとに晒すこと。そうすることで生徒はおろか教師たちの疑心暗鬼をも招き、一人一人を孤立させていく。
     その一方で、正義を成すという旗印の下に自らの信奉者を増やし、然る後の生徒会選挙で最も信頼する信奉者に生徒会長の任を担わせることで、影から学園を操る心づもりである。
    「方法はお任せします。藍さんの行動を阻止するように動いて下さい」
     そして、自分の作戦を邪魔するものがいると気づけば襲ってくるため、戦闘はまず避けられない。その際、灼滅者たちを倒しても作戦は継続できない事を納得させるか、このまま戦えば自分が倒れるだろうと感じさせれば、藍は撤退を選択する。
    「なので、できるだけ藍さんを灼滅しないよう、事件を解決に導いて下さい」
     藍の戦闘能力は無論高く、一人で十分八人を相手取れる程度。
     破壊力に優れており、赤きオーラを纏いし剣による体力吸収、赤き逆十字による催眠、霧による治療と強化と言った、ダンピールに似た力を行使してくる。
     また、その他に三人の幹部が戦列に加わってくる。
     力量はそこまでではないものの防御面に優れており、藍を庇う他、霧による治療と強化を主な行動として行使してくる。
    「以上で説明を終了します」
     葉月は静かな息を吐いた後、地図や制服などを手渡し締めくくりの言葉を紡いだ。
    「目的は、ヴァンパイア・三宅藍の作戦を止めること、灼滅ではないことを心に留め置きつつ、作戦を立てるようお願いします。そして……何よりも無事に帰ってきて下さいね? 約束ですよ?」


    参加者
    椎木・なつみ(ディフェンスに定評のある・d00285)
    御剣・裕也(黒曜石の輝き・d01461)
    エルメンガルト・ガル(アプレンティス・d01742)
    龍餓崎・沙耶(告死無葬・d01745)
    月詠・千尋(ソウルダイバー・d04249)
    咬山・千尋(中学生ダンピール・d07814)
    桐屋・綾鷹(和奏月鬼・d10144)
    月居・巴(ムーンチャイルド・d17082)

    ■リプレイ

    ●悩みを聞きに
     三宅藍の暗躍により、疑心暗鬼の坩堝と化していた東京都西東京市の高等学校。
     しばらく前から会話らしい会話もなくなっていた職員室に、一人の少女が足を運んでいた。
     名を、龍餓崎・沙耶(告死無葬・d01745)。教師たちへの教育を行うため、学校の制服を身に纏いながらも教育委員会の関係者を装ったのである。
    「というわけで、私達としては積極的に生徒と接触すること、会話を行うこと。特に登校時の挨拶を……」
     一度作られた一般大衆の心理の流れを変えるのは容易ではない。故に最大限の効果を発揮する藍の策。
     流れを変えるには、灼滅者たちの側もプロパガンダを。土壌さえ変えるテコ入れを行えば、後は自然に流れが変わるものだから。
    「……」
     演説を終え、沙耶は一礼すると共に退出した。
     必要なのは、教師たちに対してだけではない。次は……!

    「ふむふむ、なるほど……」
     椎木・なつみ(ディフェンスに定評のある・d00285)は目立たぬよう構内を周り、生徒たちの悩みを聞いて回っていた。
     概ね、相談事は藍が公表しているゲリラ新聞に関することが多い。
     いつ、自分が標的になるか。
     昔、標的に関わる存在だったことがある。
     休みがちになってしまった友だちがいる……などなど。
    「そうね……それならまず、励まして見ること……うん、学校じゃなくて、一緒の時を過ごしたり、遠くへ遊びに行ったり……」
    「そうそう、本当はそんなに大したことじゃなかったんだろ?」
     同道するエルメンガルト・ガル(アプレンティス・d01742)も口を挟み、主に女子生徒へのアドバイスを施していく。
    「オレ、そういう子もイイと思うよ」
     時に、褒める事も忘れずに。
    「オレも過去には色々あってさ……でも後悔しても仕方ないよ! 一緒に頑張って取り戻そ!」
     時に、深い悲しみに沈んでいる子を元気づけて。
     軽妙に、時に重く、何れにせよ全力で。
     伊達眼鏡が似合わぬほど明るい笑みとともに。女の子は、泣いているよりも笑っている方がカワイイから。
     可能なら、落ち込んだ気持ちが晴れるまで。
     不可能でも、休み時間が終わるまではずっと。
     己等が相談の窓口になることで、藍へのアクセスを減らしていく。
    「よっし、それじゃ早速電話してみな? ダメなら、放課後にでも会いに行くんだ! 親友なら、きっと待ってくれているはずだぜ!」
     明るい言葉で背中を押し、生徒たちの悩みを解決する。笑顔で別れを告げていく。
     即座に周囲へ意識を向けたが、幸いというべきか……今はまだ、不穏な視線はない。
    「それじゃ、次行くか」
    「ええ!」
     エルメンガルトはなつみと共に、次の生徒を探していく。
     なにせ、この場所は疑心暗鬼の坩堝。悩みを持つ生徒はまだまだ沢山いるのだから……。

     御剣・裕也(黒曜石の輝き・d01461)は噂話をしている生徒たちの間に割って入り、問いかけた。
    「それって本当に信憑性……? もしかしたら嘘かもしれませんよ?」
     面白おかしく話していた生徒たちにとって、本来ならばただの邪魔なだけの言の葉。
     しかし、疑心暗鬼を紛らわすために行なっていたのならば話は別。生徒たちはバツの悪そうに互いを見つめ、しどろもどろに言葉にならぬ言葉を紡いでいく。
     だから、畳み掛けた。
     ヴァンパイアの思う通りなどさせぬため。
    「というよりまあ、ああいう風にやるのっていいことだとは思えませんよね。信用に値するとは思えません」
    「新聞の情報を鵜呑みにするだけでは何も意味を成しませんしね」
     同道する桐屋・綾鷹(和奏月鬼・d10144)も同意の言葉を投げかけて、裕也の言説を補強した。
     揺さぶられていた心に届いたのだろう。生徒たちは小さく頷いて、二人にお礼を述べて解散した。
    「……この調子で行きましょうか」
    「ええ」
     今回のように成功するばかりとは限らないが、進まなければ始まらない。
     裕也と綾鷹は歩き出し、更なる噂話を探していく。
     それでもまだ、藍の一味との遭遇はない。

    ●噂の種を断つために
     時を少し進めて授業中。屋上で待機していた月詠・千尋(ソウルダイバー・d04249)は、胸元をゆるめ静かな息を吐き出した。
    「……窮屈だ、主に胸が」
     いわく、制服のサイズがあっていない。仕方のないことではあるけれど。
    「……それにしても、何だかワルに……っと」
     ひとりごちている内に、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
     学校にしては喧騒の少ない廊下へと舞い戻り、掲示板をひとつひとつ確認する。
    「っと」
     掲示されている新聞を発見し、保健室の……などと記されたセンセーショナルな文言を流し読み。
     周囲に他者がいないことを確認し、偽……と記されているカードをピン留めした。
    「これでよし。次は……」
     少しでも信憑性を薄れさせることができればと、次の掲示板へと向かっていく。
     悪事を暴き真実を追求する志は悪くはないが、悪事を巻いてさらなる悪意を撒くなら悪。絶対に許すことなどできないのだから……。

    「ふむ……」
     掲示板に掲載されていた新聞紙を破り取り、月居・巴(ムーンチャイルド・d17082)は構内の見取り図へと目を落とす。
     己が担当する区域を確認し、次の掲示板に向けて歩き出した。
    「早くに出たからか人はいない。藍たいの気配もないとはちと拍子抜っ」
     階段へと差し掛かった時、誰かが登ってくる気配を感じて洗面所へと入り込む。
     薄く扉を開いて伺えば、数人の男子生徒が歩いてくるところだった。
    「あれは……」
     手には画鋲と新聞紙。ならば、彼らが藍のシンパか。
     ――あ、剥がされてる。一体誰が……。
     ――藍様に報告しておこう。その前に……。
     ――うん、貼ってかないとね。
    「……」
     言葉の断片から情報をまとめ、一旦仲間にメールを送信。
     今しばらくやり過ごした後、扉を開き廊下に戻る。
     これからは、より一層の注意を持って事に当たらなければならない。何せ、己らの存在が確固たる形で知れ渡ったのだから……。

     メールを受け、咬山・千尋(中学生ダンピール・d07814)はより神経をとがらせながら掲示されている新聞を剥がし取る。
     荷物の中へしまうと共に素早く立ち去り、己が剥がしたという痕跡を消していく。
    「次で最後……」
     幸い、誰かに見咎められたことはない。
     掲示板の下へ赴くことも億劫な生徒、教師が多いのか、人の行き来もまばらである。
     故に、最後の掲示板にも難なく辿り着くことができた。
     見咎められることなく、剥がし取ることに成功した……!
    「っ!」
     気配を感じ、空き教室へと飛び込んでいく。
     程なくして、一人の少女が二人の少女を引き連れ掲示板の前へとやって来た。
     ――ここもやられてます。一体誰がこんなことを……!
     ――きっと真実を言い当てられた悪いやつですよ。藍様の妨害をするなんて。
     ――……そうですね。ならば、この名探偵三宅藍の名にかけて、暴き出さなければなりませんね!
    「……」
     わいわいきゃあきゃあと励ましあった後、藍とそのシンパは何処かへと立ち去った。
     完全に人がいないことを確認し、咬山千尋は小さな息を吐いて行く。
    「イタチごっこだけど、この調子なら……」
     藍も、灼滅者たちの捜索を開始した様子。この調子なら、そう遠くない未来に遭遇することになるだろう。
     連絡を含めメールを送り、開いていた椅子に腰を下ろしていく。
     次はまた、三十分後。授業が行われている最中に、掲示板をめぐろうか。

    ●学校の守護者と成りて
    「見つけました!」
     お昼休みの時間帯。変わらず生徒たちの相談事を聞いていたなつみたちの前に、三人の女子生徒を引き連れた藍がやって来た。
    「来ましたね……」
     メール連絡により心構えのできていたなつみは、生徒たちを庇うように動きながら武装を整えていく。
     にわかに浮き足立つ生徒たちは、エルメンガルトが優しく宥め逃げるよう指示を出した。
    「メールは送ったわ。後は……」
     廊下に佇むのが灼滅者たちとヴァンパイアたちだけとなった頃合いに、沙耶が仲間への連絡完了を伝えていく。
     間髪入れずに槍を抜き、藍を守るように立つ女子生徒に向かって床を蹴る!
    「藍様のために!」
     甲高い音と共に、捻りを入れた穂先は防がれた。
     構わない、次こそが大事だと距離をとる中、エルメンガルトがなつみへ光輪を投げ渡す。
    「そうそう簡単に学校ひとつ支配なんてやらせる訳にはいかないんでね!」
    「ありがとうとざいます……っと」
     沙耶の代わりに前線へと向かったなつみは、女子生徒たちが放つ斬撃を盾で受け止めた。
     弾いた直後に藍が懐へと入り込んできたから、剣が軌跡を描くと思われる場所にオーラを集わせていく。
    「はっ!」
    「っ!」
     想定通り、斬撃はオーラによって受け止めた。
     想像以上の衝撃に晒されて、キツく口を結んでいく。
    「……大丈夫、です。この程度では……」
    「本当に? 私を相手にするには数が足りないんじゃないかしら?」
    「……どうかしらね」
     挑発じみた言葉は受け流し、静かに呼吸を整えた。
     痛みを訴え続ける場所にオーラを集め、ダメージを和らげていく。
    「……」
     概ね小手調べと相成った最初の接触を前にして、沙耶は瞳を細め思考した。
     最高の状況は、誰も倒れることがないまま仲間たちと合流すること。
     次点は、女子生徒を全員倒すこと。
     ならば……。
    「……行くぞ。」
     少しでも多く倒すとの意思を胸に、沙耶は再び女子生徒へと走り寄る。
     手加減など一切しない、できない、する余裕など元からない。
     退こうとした女子生徒の足を踏み、バランスを崩した上で足を切る。
     守りはなつみに任せると、手応えを確認する間もないまま再び退いて……。

     結論から述べるなら、残る灼滅者たちが戦場へとやって来た時、三人の戦いは決していた。
     藍が逆十字を描いた時、沙耶が壁に背を預け意識を手放す。
     されど、藍の側にも余裕はない。
    「……リリース!」
     倒れている仲間に混じり、気を失っている二人の女子生徒。死力を尽くしてくれたのだとの思いを胸に抱き、月詠千尋は窮屈な制服から着慣れたダークスーツ姿へと変身する。
    「ん、動きやすい。さて本気モードで行くよッ!」
    「ここまで頑張っていてくれたんです。決して無駄にはさせません!」
     呼応し裕也が走りだす。
     回転のこぎりを唸らせながら。
    「っ!」
    「……あなたも随分と疲れているようですね」
     剣によって受け止められてしまったけれど、弾く力は弱々しい。
     藍も彼女の消耗を分かっているのだろう。剣に赤きオーラを纏わせながら、御剣裕也に向かって駆け出した。
    「キャリバー!」
     咬山千尋の命ずるまま、ライドキャリバーが藍の進路を塞いでいく。
     急ブレーキをかけた彼女に体当たりをかまして行く。
    「させないよ」
     主たる咬山千尋もまた正面へと飛び込んで、輝く剣を振り抜いた。
     勢いを失い中途半端になってしまった斬撃は、影でたやすく受け流す。
    「サクラは治療をお願いします」
     ナノナノのサクラに治療をお願いしながら、綾鷹は光の刃を虚空に振るう。
     空中を走る斬撃で、女子生徒の意識を刈り取った。
    「……」
    「……」
     不利を悟ったか沈黙する藍へと向き直り、静かな眼差しで見つめていく。
     逃げる気配はない。ヴァンパイアとしての矜持故か、或いはまだ勝算があると思っているのか。
    「……畳み掛けましょう。やり過ぎない程度に」
     撤退させなければならないから、心にセーブをかけたまま新たな十字を描いていく。
     合間を縫うように巴が駆け、盾を掲げたまま突撃した。
    「人は、君が思うほど単純ではないよ。疑心暗鬼になるということは、指導者がいても同じ事」
    「っ……そんなわけないじゃない。多感な学生には、十二分に効果があるんですよ?」
     剣に阻まれ、有効打を与えられたかはわからない。
     ならば続ければ良いとはじかれる前に退いて、護りの構えを取っていく。
     仲間が繋いでくれたこの優位。決して崩したりはしないと、強い覚悟のもとに立ち向かう!

    ●そう遠くない未来には
     倒れた仲間と戦う間に重ねられていた加護を砕くため、綾鷹は光り輝く刃で軌跡を描く。
     一つ目の斬撃で剣を弾き、二つ目の斬撃で切り込んだ。
    「……そろそろ危ないんじゃないでしょうか?」
    「このくらい……」
    「こっちです!」
     行き着く暇など与えぬと、裕也が大鎌で足元をなぎ払う。
     転倒した藍の体に刃を当て、静かに睨みつけていく。
    「この……」
    「別に逃げてもいいんだ。あたしたちは、命まで取るつもりはない」
     寝転び強引に離脱しようとした藍に、咬山千尋が光の刃をで斬りかかる。
     バネを生かして立ち上がりかわした藍は、一瞬だけ動きを止めた。
    「……」
    「……っ」
     咬山千尋が見守る中、灼滅者たちに背を向ける。
     逃走を選択したのだろうと、巴が静かに語りかけた。
    「真に人の心をつかむのはわかりやすい成果よりも、地道な努力だ」
    「……ふん」
     返事もせず、藍は窓を破って逃亡した。
     裏庭へと転がり込み駆けて行く藍を目で追った後、月詠千尋はメガネの位置を直していく。
    「いずれまた相見えるさ。その時は決着だ。……と、今はそれよりも」
     古い続けていた槍と鋼糸をしまいながら、倒れている仲間たちへと向き直る。
     目立たぬよう近場の空き教室へと退避して、目覚めるまで見守ろうか。

     昼休みが終わるチャイムとともに、倒れていた灼滅者たちは眼を覚ました。
     自らの状態を確認し大丈夫との結論を出した後、なつみが落ち着いた調子で問いかける。
    「……なんとかなりましたか?」
     答えは是。
     なつみたちが二人を倒し、一人をギリギリまで削っておいてくれたお陰だとの励ましに、静かな笑みが花咲いた。
     心からの安心も得たののだろう。エルメンガルトが安堵の息を吐いて行く。
    「今回は事を構えたいわけじゃなし。引いてくれてよかったな」
    「後は私たちの撒いた種が芽吹き、彼らの傷を癒してくれるのを待ちましょう」
     しかし、それで終わりなのではない。
     この高等学校はこれから立ち直って行かなければならないのだから。
     それでも……良い方向へ進めると、沙耶は瞳を閉ざして行く。各々が行った行動を心に浮かべ、確信に似た答えを得た。
     恐らくは、夏休みまでには更に一歩先へと踏み出せるはず。そう、相談を受けた生徒たちの笑顔が語ってくれていたような気がしたから……。

    作者:飛翔優 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年5月11日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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