銀行襲撃日和

    作者:白黒茶猫

    ●銀行前で襲撃準備
    「準備は良いか?」
     銀行前に止まった1台の黒い車の中で、リーダー格の男が他の5人の男達に声を掛ける。
    「ああ、問題ない」
     男達がそれぞれ手にした拳銃の安全装置を外しながらそれに答える。
    「でも、いいのか、本当にこんなことして……こんな勝手な事してるって、主様に知られたら……」
     一人の男が、怯えた弱気な声を出す。
     恐れるのは、自分に力を与えた恐ろしく無慈悲な主であるソロモンの悪魔。
    「馬鹿が、もう俺達の主はいねぇんだよ。規則も、ノルマも、罰もねぇ、ってことだ」
     リーダー格の男が、弱気な男の胸倉を掴んで言う。
     いつもあれこれ指示を出す主とは、丸1ヶ月以上連絡が取れず、何の命令もない。
     罰を恐れて大人しく待っていたが、それにももう飽きた。
    「つまり、この力は俺達が好きに使って良いんだよ」
     与えられたバベルの鎖と超人的な身体能力と言った力は今だ健在。
     そして小規模とはいえ、自由に出来る手駒もある。
     それらをこれからは命令に従うではなく、自分の意思で扱えるのだ。
    「いいか、これからはこの俺がリーダーだ。分け前もたんまりくれてやる。分かったらさっさと行くぞ」
     金銭欲という、単純な欲望を満たす為に。

    ●教室
    「銀行強盗かぁ……最近テレビではあんまり見ないけど、やっぱりあるんだね」
     須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)が集まった灼滅者を前にぽつりと呟く。
    「あのね、先日の不死王戦争で灼滅された、ソロモンの悪魔、アモンの配下だった強化一般人が事件を起し始めたんだ」
     と言っても恐らくはアモン傘下のソロモンの悪魔の配下……要するに末端組織と言ったところだろう。
    「戦争直後は様子見してたみたいだけど、自分達の主が居なくなった事を悟って、好き勝手に暴れ出したみたいだね」
     自分の欲を満たす為に、ソロモンの悪魔の下で組織した人員を利用し、悪事を働いているようだ。
    「今回未来予測できた事件だと、強化一般人が銀行強盗をするよ」
     主にサイキックエナジーを得るために活動するダークネスとはまた違ったタイプの事件だ。
    「元々悪人だった人達が、バベルの鎖やサイキックみたいな力を得た上で、首輪が外れて暴走しちゃった、ってところかな?」
     根っからの悪人であり、ソロモンの悪魔によって強化されきっている強盗犯達は救うことは出来ない。
    「敵はリーダー格の幹部と、その配下である強化一般人が5人の計6人だよ。幹部の武器はガトリングガンとガンナイフ。配下は解体ナイフとWOKシールドを使うよ」
     戦闘では配下を盾代わりに使いつつ、リーダーが銃撃で撃ち抜く、という戦闘スタイルを取るようだ。
    「犯人達が銀行を襲撃するのは、一応お客さんが少ない時間帯を狙うみたいだから利用客は数人くらいだね」
     灼滅者全員が利用客として紛れ込んでも襲撃をやめたりなどはしないので問題はない。
    「ただ、利用客や銀行員の人が人質にされちゃう可能性もあるから、気を配ってあげてね」
     銀行員は業務に支障が出るために事前に逃がすことは出来ないが、利用客だけなら工夫次第で鉢合わせさせないようにすることは可能だ。
    「それと、リーダーは配下が全滅したり自分が不利になると、一人で逃げようとするよ。最悪逃がしちゃっても仕方ないけど、できたら倒して欲しいな」
     多少力はつけても、所詮虎の威を借りた狐。
     一人で組織を再び立ち上げる事が出来るような才覚はないため、大したことはできないだろう。
     ただ、小さくとも被害が出る可能性は否めないのは確かだ。
    「あんまり強い相手じゃないけど、銀行強盗犯に傷つけられる人達が出ないように頑張ってね!」


    参加者
    アプリコーゼ・トルテ(中学生魔法使い・d00684)
    鹿島・狭霧(漆黒の鋭刃・d01181)
    瑞希・夢衣(笑顔をなくした少女・d01798)
    リリシス・ディアブレリス(メイガス・d02323)
    結城・雅臣(黄昏に翔ける梟・d02438)
    三影・幽(魔道の探求者・d05436)
    深束・葵(ミスメイデン・d11424)
    埜渡・慶一(黄昏の均衡・d12405)

    ■リプレイ


    「銀行強盗とはまた大きく出たな……アモンがいなくなったというのに、強かと言うかなんというか」
     埜渡・慶一(黄昏の均衡・d12405)がふむと思案する。
     小さく無いとはいえ街銀行。バベルの鎖で一般人に情報が流れる事はないが派手な動きには変わりない。
    「全く……面倒くさいわね。どうにも今回の相手は小物感が拭えないわ」
     リリシス・ディアブレリス(メイガス・d02323)が気だるげに軽くため息をつく。
    「ロクでもない性根の人間がチカラ持つと、ロクでも無い事をしでかすだけか……」
     結城・雅臣(黄昏に翔ける梟・d02438)が呟くように、ダークネスに操られずとも、力を振るうの人間が悪なら悪事しか成さない。
    「ま、コントロール外れたヤツらって、哀れよね」
     鹿島・狭霧(漆黒の鋭刃・d01181)もリリシスと同様に。
    「にしても強盗とはね……考える事が小さいなぁ……」
     雅臣は呆れたようにため息をつく。
    「折角得た力なのだからもう少し有用に使えば良いと思うのだけれど」
     リリシスの言うように悪い意味で『有用』に使われても困るが、叱る者が居なくなったから好き放題する、なんて程度の相手だ。力の使い道も高が知れている。
    「銀行強盗って昭和のレトロな感じがするけど、映画とかで見る限りではもっと緻密な犯罪っていうイメージがあるんだよね。それこそ一糸乱れぬ軍隊的でスマートでスポーティーな……」
     深束・葵(ミスメイデン・d11424)が「犯罪なんで誉める訳じゃないけど」と前置いて、考えを馳せる。
     一つのチームプレイとして見れば、見るべきところもあるかもしれない。
    「いずれにせよ、一般人に被害遭わせるってコトには変わらないからね。ここはひとつ、灸を据えてやりとしましょうか」
     狭霧の言葉に灼滅者達は頷く。
     小物とはいえ、被害を出す存在であり、制御が外れているために被害も大きくなる可能性も高い。
    「悪いことをしようとするなら……ちゃんと怒ってあげないとだよね?」
     瑞希・夢衣(笑顔をなくした少女・d01798)が人形のように整った顔を崩さずにこくりと頷く。
    「あの脳筋連中が面倒な事を起こす前に何とかしましょうか」
     葵が強盗犯が潜む車を視界に入れると共に、灼滅者は2班に別れて各々行動する。
    「……銀行にタタキとはね。親が見たら泣くわこりゃ」
     強盗犯達の車と客として銀行に入っていった灼滅者達の様子を物陰から伺いながら、狭霧は軽くため息をつく。
     ちなみにタタキとは『強盗』の隠語である。
     銀行強盗のダブルブッキングを装った作戦で、狭霧達は偽強盗班だ。
    「まさか銀行強盗をする羽目になるとは……まあ、腹くくるか……」
     慶一も作戦とはいえ若干の後ろめたさを感じるが、最初で最後だ、と覚悟を決める。
    「着物を着るのは初めてですが……なんだか、サイズが大きくて引きずりそう……というか、これ引きずってませんか……?」
     偽客班である三影・幽(魔道の探求者・d05436)が慣れない着物を纏い、ずるずると引きずりながら苦心して歩く。
     幽は車に潜む強盗犯達に気付かれないように王者の風を用い、ATMを利用する客達に危険が及ばないように丁重にお帰り願った。
    「あ、そういえば……ついでですし、本の通販の振込み、しておきましょうか」
     幽はちらりと強盗犯達が潜む車の様子を伺い、入り口付近に設置されたATMをぽちぽちと操作しだす。
     ATMを利用するために他の客追い払ったような形になったのは偶然だろう。
    「ねぇねぇ……お話、しよ?」
     銀行内では夢衣が女性行員に話しかけていた。
     『ラブフェロモン』によって魅了された行員は、表情を変えない夢衣の他愛無い世間話ににこやかに対応する。
     近くの行員がちらちらと様子を伺っているが、ESPの影響を受けたせいで夢衣と話したいのだろう。
     警戒しすぎて銀行強盗に疑われないよう、夢衣は行員と話しながらリラックスして待った。
    「行員の方々と少々込み入った話があるので、申し訳ないけれど無関係の方は外していただけないかしら?」
     行員達が夢衣に気を取られているうちに、最後の偽客班であるリリシスが利用客へ悪びれずに威風堂々と言い放つ。
     『王者の風』を纏って柔らかな物腰ながら有無を言わさぬ放たれた言葉に、数名順番待ちしていた利用客達はそそくさと銀行を出て行く。
    「それでは行員さん。接客していただけるかしら?」
     リリシスが上品な笑みを浮かべ、行員に口座開設などの話を適当に説明を受ける。
     振込みを終えた幽も行員を護るべく銀行内へと入って行った。
     これで利用客は灼滅者達のみとなり、魅了された行員は2、3名は夢衣と幽の傍におり、もう1人はリリシスへと対面接客している。
    「さて、場は整いました。頃合いとしては十分ですが……?」
     雅臣が強盗犯達の車の様子を伺いながら呟く。
     予想通り、強盗犯達が車を出て銀行へと入っていったのを確認し、すぐさま追いかける。


    「ごうと……」
    「強盗だ! 有り金全部……って、おや先約ですか? こりゃ珍しい……」
     強盗犯の一人が行員の傍に近づき、拳銃を突きつけたタイミングで、台詞を奪う形で雅臣が飛び出して叫ぶ。
     スーツ姿でインテリヤクザを装った雅臣に、ライドキャリバー『我是丸』に乗って銀行内に入った葵、シューティンググラスで目元を隠した狭霧と、同様にサングラスを掛けた慶一、コスプレのような仮面で顔を隠したアプリコーゼ・トルテ(中学生魔法使い・d00684)が後に続く。
    「あ? なんだ、お前ら?」
     一瞬ぽかんとした顔を浮かべた強盗犯達だが、リーダーがギロリと偽強盗班達を睨んで拳銃を向け、配下達もそれに倣う。
     行員に銃を突きつけた配下の一人は様子を伺っているようだ。
     夢衣と幽は強盗犯に怯えるフリをしつつ、さり気なく行員と強盗犯の間に位置取る。
     リリシスも両手をあげながら行員を避難するタイミングを伺い、強盗犯と偽強盗班のやり取りを観察する。
    (「面白そうな劇を見せて貰えるかしら?」)
     こっそりと小さく笑みを浮かべて。
    「同業ですよ、銀行強盗のね。おっと拳銃なんてムダです。アノ方亡き今、この力を……」
     雅臣がリーダーの言葉に物怖じせずに言葉を返すと、リーダーは怪訝な顔を浮かべる。
     言葉というよりも灼滅者の反応を見ているようだ。
    「もしや同族ですか? コチラは元アモン傘下の強化人間なのですが」
     リーダーの様子を見つつ、雅臣が口にする。
    「お前らも、あの悪魔共に強化されたってのか?」
    「疑うってんなら、ソロモンの悪魔の力を見せてもいいっすよ?」
     アプリコーゼが杖を構えて魔法の矢の準備をするが、軽く手で制される。
    「いや、いい。俺の『王者の風』が効かないってことは、ただの一般人じゃねぇしな」
     灼滅者達にはそのような感覚はなかったが、いつの間にか使われていたらしい。
     効果が及ばない場合、使用されたことも知覚出来ないようだ。
    「……争ったら互いに無事じゃ済まぬか……ここは山分けといきせんか、兄弟?」
    「ガキが、後から出しゃばって来たくせに、何抜かして……」
     強盗犯の一人が雅臣の言葉に反論しようとすると、リーダーが手で制す。
    「いいぜ。その話乗ってやる」
     リーダーの言葉に、配下の一人が異論を唱え、ひそひそと口論する。
    「……大丈夫ですよ。夢衣ちゃんだけでも、逃がして……」
     その隙に行員が銃に怯えつつも、夢衣だけでも逃がそうと強盗犯(と偽強盗班)の様子を伺う。
     しかし夢衣は小さく首を振って制す。そんな事をすれば行員の身に危険が及ぶだろう。
    「ダメ、もう少し待って。すぐ、大丈夫になるから」
     夢衣は聞こえないように、小声で行員に告げる。
     小さく震えて怯えるフリをしていた少女の、無表情だが強い意志を感じさせる言葉に行員は頷いた。
    「だが分け前はこっちが7、そっちが3だ」
     リーダーと配下は意外とすんなりと話が纏まったらしく、雅臣に高圧的に言う。
    「5:5とはいきませんかね?」
     雅臣はそのまま受けると怪しまれる気がしたため、簡単に交渉を持ちかける。
    「6:4だ」
    「……後から来たのはこちらですしね。それで手を打ちましょう」
     雅臣は軽くため息をつき折れたフリをして受け入れる。
     ここまでは上手く乗せることができた。
    「纏まったようっすね。それじゃあっしは見張りでもしてるっす」
     アプリコーゼが出入り口付近で外から人が入ってこないように監視しているフリをする。
     先に見張っていた強盗犯がこれ幸いと交代し、フリーになって楽をする。
    「アタシはお金だけ受け取って速攻で逃げる運搬役だよ」
     葵はガムを噛みながらチョイ悪風を演じつつ、ぽんぽんと我是丸を叩いて言う。
    「その必要はねぇ。金はこっちに任せてもらおうか」
     その言葉で、葵はリーダーの狙いを察した。
     人質や見張りなどの雑務を灼滅者達に任せ、金を奪った後は自分達だけで逃げるつもりなのだろう。
     山分けに異論を唱えた強盗犯の一人がすんなり引いた理由はそれだと想像がついた。
    「人質が多いと邪魔です。行員等は追い出しなさい。利用客が人質と知れば、本店からもカネを引き出せますし」
    「何言ってんだ、行員には金庫開けさせなきゃならねぇだろうが。身代金なんて遠回しなやり方は面倒だ」
     雅臣は行員も逃がそうと交渉するが、断られてしまった。
     行員4人と偽客班が3人、強盗犯5人と偽強盗班5人。
     人質の人数より強盗が多い状況では通じなかったようだ。
    「余計な口出しはせず黙ってそいつらを見てな。お前は着いて来い、金庫に行くぞ」
     強盗犯は銃を突きつけていた行員を離し、どんと慶一のほうへと押す。
     これで行員は4人全員が灼滅者の手に渡り、絶好の機会が訪れた。


    「……さて、交渉も纏まり、邪魔な一般人もいなくなった、と。後はやるコトは一つ、ってコトね」
    「やる事?」
    「決まってるでしょ? アンタらを一人残らず、完膚なきまでにブチ殺すってコトよ!」
     狭霧は凄みのある笑みを浮かべ、同時に狭霧に聞き返した強盗犯へと斬りかかる。
    「な、何しやがる!?」
    「保安官参上、みたいな……大人しくお縄に付くのじゃ!」
     ライドキャリバーのエンジンを響かせながら、葵が虹色に輝く戦輪『猿神礫手』から小さな光輪を分裂させ周囲に浮かべる。
    「チッ、バベルの鎖には反応がなかったっていうのに……!」
     突然の不意打ちに強盗犯達が浮き足立つ。
    「まんまと罠にひっかかったっすね」
     アプリコーゼが杖を手に、強盗犯へと魔法の矢を放ち、衝撃で吹き飛ぶ。
    「演技とはいえ、強盗をしなくならなくなったのはお前達のせいだ。責任は、取ってもらおうか」
     慶一は冷えた笑みを浮かべながら、静かな怒りと憂さ晴らしを込めてナイフで斬り付ける。
    「演技だと? バカにしやがって! こうなりゃ人質を……」
     強盗犯が拳銃を片手に幼い少女を捕らえようとする。
     だがそれは幼い少女自身――スレイヤーカードを解放した夢衣によって阻まれる。
    「なら行員を……」
    「ダメ、手は出させないよ。行員さんをいじめちゃダメ」
     半分近くが穂先で手元を守るガードの付いた槍、『アールシェピース』から氷弾を撃ち出し、強盗犯を凍て付かせる。
    「今だよ、逃げて」
     夢衣は強盗犯へと相対しながら、行員へ声をかける。
     夢衣の持つ槍に驚きながらも、行員はこくりと頷きアプリコーゼが護る出口へと駆けて行った。
     ならばと別の強盗犯が、もう一人の少女へと向かう。
     だが先程と同様に少女自身によって阻まれる。
    「銀行員の皆さんは……何があっても私が……私達が、お守りします」
     幽の影がその濃さを増し、強盗犯を近づけないように立体的に地面から盛り上がる。
     そして同時に現れた幽の霊犬『ケイ』が、異性が苦手な幽を護るように間に割って入り、強盗犯を威嚇する。
    「悪魔に魅入られた人達の好きになんて、させません……!」
     幽はケイに強盗犯の足止めを命じ、行員を避難するべく誘導する。
    「チッ、客までグルか……! どうなってやがるっ!?」
    「最初から私達の掌の上、ということですよ。目には目を、強盗には強盗、ってね」
     この作戦の立案者である雅臣が、メガネのつるを片手で押し上げて焦るリーダーを見てニヤリと笑みを浮かべた。


    「なら残った行員を人質に……」
    「お生憎様。行員はもう皆避難させたわよ」
     リリシスが余裕の笑みを浮かべながら、戦場へと舞い戻る。
     灼滅者の奇襲に浮き足立っている間に、一般人の避難を終えていた。
    「なかなか面白い劇だったけど。この辺りで終幕にしましょうか」
     リリシスは胸元にトランプのスートを浮かべ、破壊の力を高めながら指輪を煌かせる。
    「まったく主がいなくなった途端、好き放題し始めて……アモンが生きてるうちに見たら、何て言うかしらね」
     狭霧は嘆息と共に漆黒のタクティカルナイフで死角から突き刺し、一撃離脱ですぐさま出口を塞ぐ。
    「力のない相手しか相手にできない三下があっしらに勝てるとでも思ってるっすか?」
     アプリコーゼは入り口を塞ぎつつ、風の刃を振るい遠距離から痛烈な攻撃で配下を切り裂く。
     更にそこへリリシスが宙に浮いた魔法陣から魔法弾で追撃し、確実に仕留める。
    「傷は、これで大丈夫ですね……」
     幽がケイと共に体勢を整えて反撃してきた強盗犯に受けた仲間の傷を癒す。
    「てめぇらの動きには、緻密さやスマートさっていうものが、致命的に欠けているのぅ」
     葵は我是丸に突撃させながら、黄金色に煌めく回転砲『猿神鑼息』から軽く失望を込めた炎の弾丸を撃ち出し、リーダーを炎に包む。
    「逃がすと思うか?」
     逃げる隙を伺うリーダー目掛けて慶一の影が刃となり斬り裂く。
    「ふん、飼い犬が飼い主無くしたからってこのザマとはね。程度が低くて涙がでるわ」
     配下を全て倒された上に逃げ道まで塞がれ、追い詰められたリーダーに向かって狭霧が漆黒のタクティカルナイフを向ける。
    「チッ……折角、自由になったっていうのによぉッ!」
    「むー、悪いことばかりするなら……解体しちゃうよ?」
     夢衣がアールシェピースを薙ぎ払い、防具ごと強盗犯のリーダーを斬り裂く。
    「ぐぅ……ッ! こんなとこで、死ぬわけにはっ! 退け、ガキッ!」
     追い詰められたリーダーが、アプリコーゼが護る出口目掛けてがむしゃらに逃げようとするが。
    「こっちに来ちゃったっすね」
     アプリコーゼは突き飛ばそうとするリーダーを杖で殴りつけ、魔力を流し込む。
    「これで、おしまいっすよ」
     その一撃が致命打となり、強盗犯のリーダーは完全に沈黙した。
    「ま、なんとかなったわね」
     狭霧がナイフをしまいつつ、安堵する。
     バベルの鎖で察知されないか心配だったが、今回は上手く行ったようだ。
     相手が賢くなかったのが成功した理由だろう。
    「……無事、護る事ができましたね」
     そんな様子を見つつ、幽は被害を出さずに済んだとほっと息をついたのだった。

    作者:白黒茶猫 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年5月23日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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