【はじめての迷宮づくり】闇よりいでしもの

    作者:緋月シン

    ●闇の中にあるモノ
     時間は少し巻き戻る。具体的には灼滅者達が迷宮に侵入し、最初のゾンビ達を倒した辺りだ。
    「あいつがやられたか……くくく、だがやつは四天王の中でも一番の小物」
     迷宮の最奥。その一室の中で、ややくぐもったような声が響く。
     そこに居たのは一人の男……と思われるものだ。断言出来ないのは、外見が人のそれではないからである。
    「次はそう簡単には、って、あっれ何かもうやられてるー!?」
     男はこの迷宮の主、即ちノーライフキングであった。
     その割にはその言動が若干残念というかそういう会話は四天王同士でするべきなんじゃねぇのとかあるが、仕方ないのだ。
     男は色々な意味で不慣れであったし、男の配下のゾンビは喋れない。だから仕方ないのである。
    「ちっ、だが四天王最強のあいつならって最強ー!?」
     四天王の割に配下の数が足りなくて三体しか選別できなかったりしても仕方ない仕方ない。それ四天王じゃない気がするのは気のせいである。
    「……ふっふっふっ、まあこうなってしまったのならば仕方がない。俺が直々に相手をしてやろう」
     その言葉が何処か空しく響いたとしても是非気にしないでやって欲しい。

    「何か今気が抜けるような場面が差し込まれた気がするおっ」
    「突然ナニ言ってンだ?」
     ともあれ時間は元に戻る。

    ●闇の中へ
    「撤退する必要は……なさそうだナ」
     仲間の姿を見回し、確認の意味も込めて久保田・紅(深夜三流俗悪灼滅者の襲来・d13379)が呟いた。
     返ってくるのは力強い眼差しが七対。頷きつつも、しかし即座に突っ込む、というわけにはいかない。
     まずは傷の治療が先だ。相手はノーライフキング、準備をしてしすぎるということはない。
    「ええっと、こんな感じで良かったかな……?」
     初めて心霊手術を行う清浄院・謳歌(アストライア・d07892)は、緊張しているためか若干その手つきが危なっかしい。それでも何とかこなすあたりはさすがといったところか。
    「ようやく終わりか……結構長かったね」
     自らに心霊手術を施しながら、冴木・朽葉(ライア・d00709)はここまでの道のりを思い出す。明らかに戦闘していたよりも歩いていた方が長かったが、まあ迷宮探索なのだからそんなものかもしれない。
    「最後まで気を引き締めていこうか」
     心霊手術を終えたヴェリテージュ・グランシェ(混沌たる白の花・d12844)は、そう言いながら立ち上がった。周囲を見渡してみれば、どうやら皆も終えたようである。
     まだ抜けきれない疲労はあるものの、さすがにそこまで休んではいられない。
    「さて……いよいよご対面か、上等だな」
     念のため警戒を厳にしていた結城・創矢(アカツキの二重奏・d00630)が、扉へと視線を向けた。その先に待っているものは、自身の宿敵でもある。
     少しだけ、力が入る。
    「とっととやっつけて、とっとと帰るおっ」
     マリナ・ガーラント(兵器少女・d11401)は相変わらずのハイテンションだ。帰るということはまた長い道のりを歩く必要があるということだが、その思考は敢えて放り投げた。
     そういう余計なことは、その時に考えればいいのである。
    「ん、頑張るの」
     ピアット・ベルティン(リトルバヨネット・d04427)が小さく握りこぶしを作りながら、頷く。あと少し、ラスボスさえ倒せば、攻略は完了だ。
     もう一度、頑張るの、と呟いてから、扉を見た。
     氷渡・零士(パプリックエネミー・d11856)の脳裏を過ぎるのは、阿佐ヶ谷のことだ。目にしたあの光景は、未だ焼き付いて離れない。
    (「あのような悲劇はもう起こさせん」)
     活動を始める前に粛清すると、そっと拳を握り締めた。
    「それじゃあ行こっか」
     正義の味方の如く、気負わずに謳歌は言った。行って、帰って来る。そんな当たり前のことをするだけである。
     そして、扉は開かれた。


    参加者
    結城・創矢(アカツキの二重奏・d00630)
    冴木・朽葉(ライア・d00709)
    ピアット・ベルティン(リトルバヨネット・d04427)
    清浄院・謳歌(アストライア・d07892)
    マリナ・ガーラント(兵器少女・d11401)
    氷渡・零士(パプリックエネミー・d11856)
    ヴェリテージュ・グランシェ(混沌たる白の花・d12844)
    久保田・紅(シャークトレーダー・d13379)

    ■リプレイ

    ●迷宮の主
    「さて、いよいよ迷宮の主とご対面、か」
     眼前に広がる闇へと視線を向け、結城・創矢(アカツキの二重奏・d00630)は呟いた。
     その先に、自分の力の宿敵が居る。そう思えば、自ずと力も入った。
    「ダンジョン探索楽しかったの。後は悪い不死王を退治してダンジョン完全攻略なの」
     強敵みたいだけど負けないの、と拳を握り締めるピアット・ベルティン(リトルバヨネット・d04427)。
     ついに屍王との最終決戦と、清浄院・謳歌(アストライア・d07892)も気合を入れる。
     仲間と力を合わせて、勝利を掴めるように。
    「ったく、折角なんだから赤い扉にしとけッツーノ」
     目の前で開いた無骨な鉄の扉を眺めながら、久保田・紅(シャークトレーダー・d13379)は溜息を零した。
     そこら辺は『判ってねェ』ナ、とぼやきつつ扉を潜る。
    「ふー、ようやくお終いなんだおっ」
     一先ず迷宮が終わったことを喜びながら、マリナ・ガーラント(兵器少女・d11401)は先へと進んでいく。
     そして。
     その部屋は広かった。今までの部屋の倍ほどはあるだろうか。
     だがそこに何かがあるというわけではない。今までと違いがあるとすれば、その奥に一つだけ椅子が存在していることだろう。
     そこに、それは座っていた。
    「くくく、よくぞ来たな。だがまさか四天王が敗れるとはな……まずは天晴れと言っておこうか」
     言いながらゆっくりと立ち上がる。勿体振る様に、そして無駄に大仰な挙動で。
    「だが貴様らの命もここまでだ!」
     腕を振るい、羽織っていた外套が翻る。
     もうこの時点で何人かは察していたが、敢えてそこには触れない。
    「あ、あなたは一体……!?」
     そのうちの一人である謳歌は割とノリノリで反応していた。
     慄くようなフリをしつつ、自然と相手に自己紹介を促す。
    「ふん……恐れ多くもその魂に刻み付けるがいい。我が名はヒルフェブラウレーゲン。屍王ヒルフェブラウレーゲンである!」
    「ヒルフェブラ……よくわからないけど、格好良くて強そうなのっ」
    「くくく、そうだろうそうだろう」
    「ヒルフェブラウレーゲン……つまり佐藤さんだね!」
    「おいそっちの名前出すな! ヒルフェブラウレーゲンだ!」
     元からアレではあったが、色々と台無しであった。
    「そうなのかおっ?」
    「うん、ドイツ語で佐藤はヒルフェブラウレーゲンって言うの」
    「へー、謳歌おねーちゃん物知りなの」
    「たまたま知ってただけなんだけどね。っと、え~と……佐藤さんはどうしてこんなことを……!?」
    「ヒルフェブラウレーゲンだつってんだろうが! ま、まあいい……そんなに知りたくば教えてやろうではないか!」
     気を取り直して喋ろうとする佐藤だが、この時点で大分アレな空気が流れている。
     なんか凄い残念な予感というか既に確信レベルであるが、それでも雰囲気に騙されないようにと気を引き締める冴木・朽葉(ライア・d00709)。
    (「うん大丈夫、だよな」)
     ちょっと自信はなかったが。
    (「油断はしないし隙を見せるつもりはないけれど……随分と、残念な人だなぁ……」)
     そう思いながらも、同じく気を引き締めるヴェリテージュ・グランシェ(混沌たる白の花・d12844)。
     ただ、相手にノリを合わせて此方のペースに巻き込めれば少しは良いかなと、そんなことも思う。
     ちなみにそうしている間も佐藤の話は続いていた。無駄に装飾され無駄に難しい単語が並べられ無駄に遠回しな表現を用いられたそれは、要約してしまえば次のようになる。
    「つまり、壮大な計画を立てようとしたけど、怖いからまずは引きこもって自分の迷宮を大きくしようとしたんだね!」
    「その通りだ!」
     それでいいのか佐藤。
     しかし一通り話して満足したのか、その体勢をゆっくりと戦闘のそれへと変えていく。
     だが。
    「すとーっぷっ!」
     そこでマリナによって遮られた。
    「ダンジョンのボスだったらきちんと名乗りを上げるのも大切だけど、こっちの名乗りを聞かないとはどういうことだおっ。こっちの名乗りが終わるまで、お互い『攻撃は!』 しないのがお約束、なんだおっ」
    「ぬ……? くくく、そうだった、すまんな。貴様らを前にして少々気が逸っていたようだ」
    「気にしないでいいおっ」
     え、それでいいの? みたいな顔が朽葉から向けられるが、佐藤がいいと言っているんだからいいのだろう。
     ともあれ名乗りである。
    「悪いアンデットの親玉をやっつけに来た、マリナ・ガーラントだおっ! 大人しく観念して、年貢を納めるんだおっ!」
     言いながら何故か皆へと防護符を付与していくマリナ。
     当然突っ込みが入った。
    「おいちょっと待て」
    「何だおっ?」
    「何だはこっちの台詞だ! 何もしないのではなかったのか!?」
    「『攻撃は』、攻撃はしない約束なんだおっ! お互い、パワーアップしつつ盛り上げるんだおっ」
    「ぬ……? そ、そうか……? う、うむ……そうだったな!」
     明らかにただの屁理屈だったが、佐藤は納得したらしい。
     いいんだろうか……みたいな雰囲気になりつつも、口上は続く。
    「えっと、ピアット・ベルティンなの。ピア達が来たからには、もう好き勝手させないの。悪のノーライフキング覚悟するといいの」
     こういうのもゲームみたいで楽しいと思いながら、勇者のように、武器を突き付け格好良く名乗りをあげるピアット。
    「結城・創矢。ここで引導を渡す。俺だけではない……俺達の手で!」
     若干やり辛そうではあるものの乗る創矢。
    「氷渡零士だ。難儀な迷宮を創りあげてくれたものだな。だが自慢の四天王は片付けた。貴様も我等が剣の露になるがいい」
     内心ではこんな感じでいいんだろうかと突然の無茶振りに困惑気味の氷渡・零士(パプリックエネミー・d11856)であるが、その雰囲気からむしろ十分すぎるほど似合っていた。
    「ヴェリテージュグランシェだよ。漸く手加減せず本気で戦える相手に巡り合えたみたいだね……」
     出来る限り周囲と温度差が出ないよう、ヴェリテージュもノリを合わせ続ける。
    「清浄院謳歌だよ! 確かにあなたは強敵だけど……それでも、負けるわけにはいかないっ! きて、ルナルティン!」
     プリンセス版へと変身しつつ、戦闘態勢へと移行する謳歌。ちなみに佐藤はそれを見て、何あれ格好いいと一般人じゃないのに軽く感動していた。
    「冴木朽葉だ。貴様の命運も、ここまでのようだな」
     そう言う朽葉は、内心ちょっとアレだった。
     しかし。
    (「あーくっそこういうのってあれだろ。恥ずかしいとか思いながら言うのが一番恥ずかしいんだろ。だったらもう割り切ってやるしかねぇだろ……!」)
     そうしなければこの戦いを乗り切れないというのならば、やるしかないだろう。頑張る方向を激しく間違えている気はするが。
     それとは別の意味で、どうしてこうなった、と嘆くのは紅だ。
    (「どうしてこんな『残念屍王』なんだ……まさかの脱力系とは思わなかったゼ……」)
     そうは思いつつも、折角なので名乗りを上げる。別に紅はそれ自体には特に抵抗とかはないのだ。
    「久保田紅だ。ったく、メンドくせェ迷宮作りやがって……正直、手を焼いたゼ……? だがよ、道中に四天王を配備したのは失敗だったナ」
    「何? どういう意味だ?」
    「気づいてねェみてェだから教えてやる。四天王を失ったことでテメーの実力は大きく削がれているってことをナ……」
    「なん……だと……?」
    「俺が……いや、俺たちがココまで来れたのは一人じゃないからだ……一人きりのテメーにゃ負ける気がしねェナ」
     皆の顔を眺めた後で、Blaze of Gloryを構える。
    「さあ幕引きだゼ。決着を、つけようか」
     そうして、ある意味ようやくといった感じで、戦闘が始まったのだった。

    ●終焉
    「くくく、さて幕を引かれるのはどちらかな? 不死の王の力、耐えられるのならば耐えてみせるがいい!」
     幾ら雰囲気が残念でも、その力は確かなものだ。かざした掌の上に、闇が集まりだす。
     それは暗闇の中でさえそれと分かるほどの、圧倒的な黒。一目で危険で分かるほどの、破壊の塊だ。
     攻撃に特化している相手が放つそれを、疲弊している身で受けたらどうなるか。
     だが。
    「余裕を持って戦うのが王者なの。王者たる不死王さんが、まさか最初から全力とかないよね?」
    「く、くくく……と、当然ではないか」
     ピアットの言葉に、え、マジで? みたいな顔を一瞬見せた佐藤だが、佐藤には佐藤なりの矜持がある。黒い球体となったそれが放たれたが、大きさは明らかに一回り以上小さくなっていた。
     もっともそれでもそれなりの威力があることに変わりはない。咄嗟にBet on itによって展開された障壁で防ぐ紅だが、抑えきれずに障壁が軋む。
    「チッ、四天王を失ってるワリにはヤルじゃねーか」
     しかしただで食らってやる道理はない。
    「だがよ、決定的に『死角』が増えてることには気づいちゃいまい? 今のテメーにこれがかわせるかナ!?」
     足元へと伸びていたのは、スペードのクィーンを模した影。鋭い刃と化したそれに、佐藤の身体が切り刻まれる。
     勿論それだけでは終わらない。忍び寄るのは体温を奪い去る冷気。
    「身も心も凍えて震えるがいい。絶対零度の世界を魅せてやろう」
     苦手とは言うくせに、割とノリがいい零士である。
    「いっくよー! 悪の親玉、覚悟しろ、なんだおっ!」
     こっちは完全にノリノリなマリナ。ガトリングガンを振り回しながら、爆炎の魔力が込められた弾丸をばらまく。
    「これが私の今の全力……勿論、正面から受け止めてくれるでしょう?」
    「ピアのとっておきの一撃をお見舞いしてあげるの。まさか避けるなんて強い不死王さんは言わないよね」
     まさかの二方向から別々の、しかし同じような台詞である。
    「くっくっく、当然だ、その程度の攻撃避ける価値すらないわ!」
     佐藤もノリノリだ。その内心はともかく。
    「くっらえーなの!」
     ピアットの言葉に合わせるように、ヴェリテージュの漆黒の弾丸が魔法の矢に少し遅れて放たれる。
     そしてそこへ意識が向いた瞬間を狙い、創矢が走り込んだ。構えるのは日本刀。
    「貴様と言う存在を……断つ!」
     振り下ろした。
    「仕方ねぇな。……この技だけは使いたくなかったぜ……」
     言いながらガトリングガンを構える朽葉であるが、放つのは普通のブレイジングバーストだ。
     それでもそんなことを言われたらちゃんと食らわなければならないと、サービス精神旺盛な佐藤は余裕で全弾を食らう。
     爆炎に包まれるその前に立つのは謳歌。
    「星よ、この闇を払う光となれ! ジャッジメント!!」
     即興で呪文を詠唱するあたりが実にノリノリ感を表している。裁きの光条が、佐藤の身体を貫いた。
     さて、やりたい放題やっている灼滅者であるが、それでも相手は屍王。ほとんどの攻撃をまともに食らっているにも関わらず、未だ健在なのはさすがと言えるだろう。
     それでもいい加減厳しいらしく、その言動こそギリギリ保たれているものの、攻撃は既に容赦がない。どうやらピンチということで、ピアットにかけられた枷を外したらしい。
    「闇に飲まれるがいい!」
     佐藤を中心に発生した闇が、周囲に物理的な衝撃を伴って広がる。複数に分散するため単独でぶつけられるのに比べればマシだが、それでも威力が高いことに変わりはない。
     それを遮ったのは二人のディフェンダーだ。マリナと謳歌が自身含め周囲へと拡散する衝撃を押さえ込む。
    「防御はマリナにお任せなんだおっ」
    「戦いはまだ、これからだよっ!」
     そして踏ん張る二人を癒すのは二人のメディックの役目である。
    「誰も倒れさせんよ」
    「誰一人も倒させないのっ」
     零士の癒しの矢とピアットのソーサルガーダーが、それぞれ二人の傷を癒す。
    「ちっ、小賢しい!」
     さらなる攻撃を放とうと佐藤が動くが、それを邪魔するのは朽葉。
    「俺もこの力を開放するときが来たようだね」
     言葉と同時、死角からの斬撃でその足を止める。
     続けてヴェリテージュの制約の弾丸が貫き、一瞬だけその動きを止めた。
     そこへ飛び込んだのは創矢だ。
    「拳打は得意ではないがな……仕方あるまい、くらえ!」
     オーラを纏った両拳を、全力で打ち込む。
     ぐらつく眼前に突きつけられたのは、紅のBlaze of Glory。
    「ま、四天王がうんたらは全部嘘なんだけどナ」
     舌を出しながら、無数の弾丸をぶちこんだ。
     地面に倒れ込むその身体に、既に立ち上がる力は残されていない。それでも彼は、最後までその矜持を貫き通した。
    「……まさかこの俺が敗れるとは、な。……だが忘れるな! 闇が世界に満ちる限り、必ずや第二第三の屍王が……!」
     そして、跡形もなく消滅したのだった。
    「……第二第三も何も、既にノーライフキングならいっぱい居ると思うおっ?」
    「……ソイツが消える前に言わなかったのだけは褒めてやるゼ」

    ●お約束は最後まで
    「ふう……終わった、ね。お疲れさま、でした」
     戦闘が終わったのを確認し、創矢の表情と口調が元に戻る。
    「慣れない事をすると疲れるよね、精神的に……」
     皆に労いの言葉をかけつつも、そう言ってヴェリテージュは苦笑を浮かべた。
     佐藤が消えた場所を眺めているのは零士だ。
    「……ダークネスにも色々なやつがいるのだな」
     何処か呆れたように呟いた。
    「うー……終わったけど、帰るのが面倒なんだお……」
     ずーん、と重苦しい空気を背負うマリナ。両腕を力なくだらりと下げ、めんどくさい事をアピールしている。
     まだ全て終わったわけではないものの、自然とここまでのことをピアットは思い出した。ダンジョン探索は楽しかったから、またやってみたいと思いつつ。
    「でも、次は敵が居ないダンジョンがいいの」
     そうも思いつつ。
    「帰るまでが迷宮探索だよ!」
     意外と元気な謳歌は、最後に念のため部屋を確認し、他に敵がいたり、何か役立つ情報があったりしないかを調べていた。
     ところで椅子のところにあるあからさまに怪しげなボタンは何だろうか。
    「さっさと帰りたいよな。地上の空気を吸いたい」
     言いながら、朽葉はマッピングした地図を取り出す。
    「ま、ラスボス倒した以上、後は帰還してエンディングだ」
     それから、紅はふと思い出したように呟いた。
    「……やっぱり迷宮は主を失うと崩れたりするのかネ?」
     その瞬間だった。足元が、いやその部屋全体が唐突に揺れ始める。
    「……紅お兄ちゃん」
    「……おう」
    「何で余計なフラグを立てるんだおっ」
     一時的な地震でないことを示すように、落盤などが始まっていた。
    「わ、わたしじゃないからね?」
     本当である。物凄く気にはなったものの、ギリギリのところで押していない。どうやらダミーだったようだ。
    「とにかく今は逃げるのっ!」
     結局最後までどたばたと。八人は急いでその部屋から逃げ出すのだった。

    作者:緋月シン 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年5月25日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 9
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