運動会~校内宝探し大会!

    作者:月形士狼

     5月26日は、武蔵坂学園の運動会。
     組連合ごとに集まった生徒たちが、一丸となって競い合い、優勝を目指すのだ。
     はたして今年の優勝は?
     それぞれの旗のもと、栄冠を勝ち取るための戦いが今、始まろうとしていた。
     ここは武蔵野学園の、とある教室。
     現在のホームルームでは、きたる運動会に行われる競技の参加者が、黒板に次々と書き込まれていた。
    「という訳で、次は校内宝探し大会の立候補者を募るぞ。誰かしたいという人はいるか?」
    「……校内宝探し大会? なんだそりゃ」
    「あなたプリント見てないでしょ。これよ」
     聞きなれない競技名に首を傾げた男子生徒へ、隣の女子生徒が呆れたようにプリントを指で示す。そこに書かれた説明によれば、
    「えーと。要は校内に隠されたソフトボール大のカプセルに入ったコインを、制限時間内に探せばいいのか?」
    「そうね。そのコインにはそれぞれ見つけやすい順に銅が1点、銀が3点、金が5点って点数が付いていて、その合計点数を競い合うみたいよ。これなら体力無くても大丈夫かな」
    「いいんじゃね? よし、面白そうだし俺はこれにしよ! 委員長、俺これに立候補するな!」
    「あ、私も!」
     楽しそうに目を輝かせた少年の勢いにつられるように、隣の少女も手を挙げ。
     他に立候補者がいないのを確認した副委員長が、二人の名前を黒板へと書き記した。
    「よし。これで全部決まったな。当然ながら、やるからには優勝を目指すぞ」
     最後の競技参加者が決まり、強い笑みを浮かべた委員長が力強く宣言する。
    「どの競技も全力で。その方が楽しいに決まっているからな。みんな、頼むぞ!!」
     こうしてまた。
     今年も熱い戦いの火蓋が、切って落とされるのだった。


    ■リプレイ

    ●スタート
     澄み渡る青空の下。
     観客席からの応援の声を聞きながら、鎮は心を躍らせていた。
    「宝探しとか、腕が鳴るなぁ……!」
     目を輝かせながら、隣に立つ親友に問う。
    「仲が良いからこそ、負けたくない時ってあるよね?」
    「ふ、まもちゃんならそう言うと思っていた」
     律嘩はその問いに笑って返し、
    「勝負だ! りっちゃん!!  宝を手に入れたければ、俺の屍を越えていけ……!!」
    「よかろう、だが早々に屍になるなよ。それじゃ張り合いがないからな……?」
     二人の楽しげな視線がぶつかり合い、スタートの合図へと耳を澄ませた。

    「宝探しか。へへっ、さながら探検家の気分になるってもんだぜ」
     白蓮は笑みを浮かべ、自分の考えを纏めるように呟く。
    「巨大施設には、それをサポートする部屋ってのがある」
     まずはその部屋だと、目的の場所へと視線を走らせた。

    「宝探しって、この広大な敷地で……」
     改めて見るこの学園の大きさに、翔琉が感心と呆れが混じった感想を抱く。
    「相手が翔琉と言えど、私は手を抜きません……」
     そう声をかけたのは、親友である磯良。二人はこの競技で勝負するのだ。
    「圧倒的な勝利を収めてみせましょう」
     はらりと扇を広げ、優雅に微笑む友人に、
    「あっちの方なんて怪しいんじゃないか?」
     翔琉があらぬ方を指差し、心理戦を仕掛けるのだった。

     そんな中、沙雪は高まる鼓動を必死に抑えていた。
    (「スタートまであと少しですね。どきどきしてきたのです。落ち着かないとです」)
     そして、高らかなスタートの合図と共に全員が一斉に動き出した。
     武蔵坂学園運動会種目、校内宝探し大会。
     始まりである。
    「ふみゅ!?  始まってるです!?  出遅れたのです!」
     ……訂正。一人出遅れた模様です。

    ●教室
    (運動会なんてサボる気満々だったんだけどなー)
     きすいが自分を誘った相手に続いて教室に入り、教卓の下に潜り込む。
    「にゃ゛」
     他の場所を探していたレンヤが妙な悲鳴を聞き、振り返ると蹲っている少女の姿が見えた。
    「……大丈夫?」
     声をかけて、彼女の頭を優しく撫ぜるが、痛いと呟くその肩を抱き寄せ、あやすように背を撫ぜる。
     痛みで潤む瞳と、気遣う優しい瞳が交差し、時間が止まるような錯覚を覚え……、
    「……あ、カプセル」
     その声につられて、視線を向けた。

    「やっぱりここにありましたか」
     遥斗は掃除道具を入れるロッカーの中に転がっていたカプセルを見つけ、拾い上げる。
     コインは銅。やはり定番だったかと思い、次の目的地へと歩き出した。

    「何でこう……高い所にある奴が多いのでござるかっ!」
     柚月は、教室のカーテンレールの上にあるカプセルへ、椅子の上から必死に手を伸ばしていた。
    「――って、にゃっ!」
     滑り落ちそうになるも、何とかコインをゲットした。

     林檎は教室を見渡して、どこに隠してあるかを考えていた。
    「ゴミ箱や棚って基本だよね。もっとこう……奇抜な? たとえば……」
     そうして目をつけたのは、晴れますようにとみんなで作った『てるてる坊主』。
    「あった!」
     カプセルの中から取り出した、金コインを嬉しそうに見つめた。

    ●特別教室
    (「やっぱりケースの中って隠しやすいですよね♪」)
     廊下を歩くえりなは、先程音楽室で見つけた銀コインを手に笑みを零すと、隣の少女へと微笑んだ。
    (「えりなさんとは別の組だけど、この方法なら一緒に楽しんで組の勝利も目指せるかも♪」)
     紗里亜もにこやかに笑みを返す。沢山の楽器ケースを動かすのは手間だったが、二人だとかなり時間が短縮できた。
    「次は教室かな。頑張って宝物をゲットしようね!」
     そう言うと、手近な教室の扉を開いて中へと足を踏み出した。

    「これ噛みませんよねぇ……?」
     理科室の人体模型を前に、流希が訝しげに呟いた。
     やがて躊躇いつつ開けた口の中にカプセルを見つけ、点数を確認するのだった。


    「美術室へ行きたいと思うんだ」
    「アンタには言わなくても解るのねアリス」
     その言葉に、暁は笑みを浮かべる。
    「そう、君の庭先。いつもとはまた違う視点で宝探しに行かないかい」
    「贅沢な時間ね。さぁ、見つけに行きましょ」
     誰かが失くして行った、短い鉛筆や埃を被った定規。
     知らない誰かの世界の欠片と共に、描写対象用に飾られた数点の花瓶の中からカプセルを取り出した。
     見つけたのは銀のコイン。
     笑い声と、共に過ごした楽しい時間。

    (「宝探し、か。その単語だけでも、やる気を擽られてしまうな」)
     佳輔は美術室に足を向けると、石膏像を持ち上げ。
    「……本当にあった」
     中から出てきたカプセルを取り出して、笑みを浮かべた。

    (「組のために全力をつくす。私の観察力、甘く見ないほしいな」)
     孤影が探すのは視聴覚室の、スピーカーの上の死角。
    「やはりあったか。さて次は」
     そう呟き、次の場所へと向かっていった。 

    (「……さすがに蔵書の本の中をくりぬいたりはしてないだろうな」)
     ヘカテーはそんな事をしていたら許さんと思いながら、図書室の中を探す。
    (「……うむ? 辞書にしてはやけに軽いな。おぉ、辞書の紙ケースの中が空。ということは、だ」)
     そうして見つけた金コインを、嬉しそうに握りしめた。

    (「……とりあえず、丁寧に見て回ろう」)
     図書室でカプセルを探していた瑞樹が、共に行動していた相手が棚から落ちかけている姿を目にし、駆けだした。
    「――すみませんっ、大丈夫ですか!?」
    「っと……俺は大丈夫だよ、メルの方こそ、怪我しなくて良かった」
     安心したように笑う姿に、抱きとめられたメルキューレが腕から抜け出すと、袖を引いて歩き出す。
    「……そろそろ次にいきましょう」
     赤い顔を見られないように、顔を背けたままで。

    (「宝探しなんてとっても楽しそう。 いーっぱいお宝をゲットしないと、だねっ」)
     音楽室を見渡し、夢衣がふらふらと探し回る。
    「トランペットとかにも入ってそうだし、他にもありそう」
     そうして見つけたコインに、嬉しそうな笑みを零した。

     ギルドールが見つけたのは、音楽室のスタンドの中。
    「日中は電気を点けないから隠したんだろうね」
     電球に偽装されていたその中から、金コインを取り出した。
     楽器置き場から出てきたカーティスが、そんな彼を見つけて声をかける。
    「ギルドール君は何点取った?」
     聞いてみると、先程自分が見つけた銀コインよりも上。
    「次の場所は負けないよ」
     気合を入れ直し、次の場所へと向かった。

     依子は音楽室の肖像画の裏を調べようとして、その絵の迫力に一瞬手を止める。
    「この肖像画……夜に動いたりしませんよね?」
     気を取り直し、見つけたカプセルを取り出した。

    「咲紀嬢」
    「霧渡さん」
     保健室で、身長計の上にあるカプセルを何とか取れないかと悪戦苦闘していた咲紀が、仲の良いクラスメイトへと挨拶し、再び高い場所へと目を向ける。
    「――失礼」
     それを見かねたラルフが咲紀を持ち上げるが、絶妙にまだ手が届かない。そして眼に入る、体重計の『乗ってお取りください』という張り紙。
    「……どうしまショウ」
    「見ないでくださいね、霧渡さん……」
     悩んだ末に咲紀の出した決断の代償は、金コインだった。

    「……なんか音がしますね」
     調理室の鍋を探ってみようと取り出した凛音は、一緒に行動していた相手に声をかけた。
    「我が主よ感謝しますー♪」
     その視線の先でニコレッタはロザリオを掲げて感謝し、鍋を開けるとそこにはまた鍋。
    「……これはマトリョーシカ?」
    「全部出すよー、手伝って!」
     そして取り出した鍋の数、実に12。
     中から出てきたコインは、金の輝きをしていた。

    「宝探し、なんて。わくわくしてしまいます、ね」
    「運動は自信ないけど、これなら頑張れそう。それに、華凛ちゃんと一緒だから」
     探偵気分の紡の言葉に、なら私は有能な助手でと華凛が微笑み、調理室へと向かう。
    「一緒にクッキー作ったの。思い出しちゃいます、ね」
    「そうね、懐かしい……あ」
     紡が排水溝に隠されたカプセルを見つけ、煌めく金コインと、大事な思い出に嬉しくなり。
     互いにありがとうと大好きを、笑顔と共に口にした。

    「うーん、こういう時の探し物のコツってなんだろ? またたびの皆はもう見つけたのかな」
     呼太郎はそう呟くと、先程教室で見つけた銅コインを握りしめて図書室の扉を開けた。
    「山内、調子はどうだ? 怪我はしないようにな」
     丁度貸出カウンターの椅子の裏にあったカプセルを取り出していたヒナが、見知った顔へと声をかける。
    「わ、コイン何色だった?」
    「――銀、だな。両角、燈華も来たか」
     その声に振り向けば、扉を開ける見知った顔が更に二つ。
    「よぅ、戦果どうだー? コッチはぼちぼち」
     式夜が仲間の顔を見つけて声をかけ、
    「ヒナ先輩、山内先輩」
     燈華が笑顔を浮かべ、ぺこりと頭を下げる。
    「皆、いくつ見つかった?」
    「こっちは燈華ちゃんと一緒だからな。戦力差は歴然だぞ!」
    「ごごごごめんなさい、私なんかが見つけちゃってごめんなさい!」
     教室の窓の外の上側にあったものを燈華が取ったと式夜が笑うと、燈華が恐縮し。
     皆で楽しげな笑い声を上げた。

    (「こうしてみると、武蔵坂学園がいかに広いのか改めて実感します……」)
     校内を歩く結唯の口元に、笑みが浮かぶ。
    「……もう少し、探してみましょう。この学園を……皆さんと出会えた、この学園を、もっと知るために……」

    ●体育館
    「個人的には体育倉庫のボール籠とか思うんだけど……」
     一緒に行動できる事に喜びながら、仁奈が声をかける。
    「へえ、体育倉庫か。早速、探してみようぜ?」
     奈兎はその言葉に頷くと、差し出された手を繋ぎ歩き出す。
    (「そういえば、にーなとは昔からこうやって探検とかしたっけ」)
     昔の事を思い出しながら辿り着いた体育倉庫で、二人きりを意識して赤くなりながらカプセルを見つけ出し。
    「「せーの」」
     取り出した銀の輝きを手に、何よりの宝であるこの時間を、大切に感じていた。

    (「ここは校庭や特別教室よりも狭くて死角が多い……つまり物を隠し易い。……探す数で攻める」)
     真剣に楽しむ雪乃は体育館をくまなく探し、天井の骨組みに光るものを見つけて目を細め。
     ボールをぶつけて落とし、中のコインを取り出した。

    「ありました」
     講堂のピアノを調べていた由生が、ピアノ線の中にあるカプセルを見つけて取り出す。
    「皆さんも今頃頑張っているでしょうか」
     先程同じ組連合の人と声を掛け合ったことを思い出しつつ、次の場所へと足を向けた。

    「宝探しか……折角だ、楽しんで、なおかつ上位を狙いたいところだな、うん」
     そう呟く小誇愛は、バスケットゴールの上に目を止め。
    「ふむ、見つけたはいいが、随分とけったいな位置だな。折角だ。……ハッ!」
     軽く助走してダンクを決めると、しっかりとカプセルを回収するのだった。

    「宝探しねェ、このクッソ広い校舎でよくもまァやるもんだ」
     風は笑いながら体育館を探して回り、壇上に上がる階段の裏から銀のコインを取り出した。

    (「小さいときから好きなんだよね、これ。よーし絶対見つけるわよっ」)
     走って体育館に着いた海梨が、あまりの広さに愕然とする。
    「でも諦めたらそこで終わりよね。……あった!」
     弱音を押し込めて探し回り、見つけたカプセルに歓声を上げるのだった。

     体育倉庫の中で、煉糸は道具や沢山の埃の中にあるカプセルを見て悩んでいた。
    (「汚れるのが嫌いでめんどくさがりなため俺的には難易度が高い」)
     そして葛藤の末に意を決して中に入るが、本人のテンションはこれでガタ落していた。

    「鴎、そっちはどう?」
    「まだですが、奥に不自然に埃が払われている一角がありますね。……はい。見つけました」
     暁の声に鴎は返事を返すと、倉庫奥の隅にあったカプセルを見つけ出した。
    「僕はまだ1つだけ。もっと頑張って見つけないとね。ナオはあった?」
     その成果に賞賛の言葉を投げかけ、この場にいるクラスメイトのもう一人。邪魔にならないように髪を括った奈落へと声をかける。
    「卓球台の間と、ソフトボール入れの中にありました。他にも色々ありそうですね」
     この同じクラスの三人は、鴎の提案の元、体育倉庫を重点的に当たっていた。
    「高得点狙えたらいいね」
     笑って言う暁に、鴎と奈落は笑顔で応え。そのまま捜索を続けるのだった。

    「あんなところに隠すとは、さすが灼滅者の学校と言ったところでしょうか」
     照明の一つが光っていないのを不審に思ったラインが確認した所、案の定カプセルと変わっていたことに感心して呟き。
     開けた中には、金のコインが輝いていた。

    「木の葉を隠すなら森の中、という事ね」
     美星は自分の考えの通り、ソフトボール入れの中からカプセルを見つけて小さく笑みを浮かべ。
     その後に入ってきた、まだ一つも見つからない様子の自分より年上の少年へヒントを告げ、その場を去っていった。

    (「宝探し……小さい頃から、大好きだった遊び、です。 自信ある、よ」)
     何処に隠したら楽しそうかと考えるイチは、捲り上げられている緞帳の中を調べ。
    「あった……」
     取り出した金コインに、楽しげに眼鏡を光らせるのだった。

    「あ、バスケットゴールの後ろも気になっちゃう! ねーねー! みる君かとき君、どっちか肩車してー!」
    「春希、弥勒がしてくれるって。ボクはほら、王子キャラだし」
    「ボクそんなに重くないよ!」
    「肩車? ……はいはい、お安いご用ですよー」
     笑って鴇永に話を振られた弥勒が、ぶーぶーと文句を言う春希を肩車し。
    「どぉー? なんか見えたー? ……ってか、二階上がれば見えるんじゃ」
    「やった! あったよ!」
     そんな声を遮る様に、春希の快哉が上げ。
    「お、みーっけたー♪」
    「やったね、見つかってよかった」
     三人で笑いながらハイタッチする。
    (「なんだか微笑ましいなぁ」)
     思いっきり背伸びしてる春希に、鴇永が微笑みを浮かべながら。


    ●グラウンド
    (「走るも嫌いでない……けれど、こういう競技も楽しそ……ね。精一杯頑張るする……よ」)
     やはり高い所は隠しやすいかと上を気を付けて見ていたユエファは、脇に生えた木に作られた鳥の巣の中にカプセルを見つけ。
     中からコインを取り出した。

    「……注目されるのは、苦手」
     そう口にした文は、スタートの合図にもノンビリしたペースで探し始める。
    「……コレなら、そんなに目立たない……かな?」
     そうして観客席のシートの隅で、カプセルを見つけていた。

    「どんどん探すよー! おっ先ー!」
    「よーし、それならコッチも負けないよ」
     そう言って駆けだしたアッシュを追った登は今、嫌な予感に身を震わせていた。
    「……まさか」
     目の前にあるのは、何故かぽつんとある大玉転がしの玉。意地になってどんどん剥くと、最後にカプセルが出てきて一気に脱力する。こんな物作るならもっと他にとぼやきながら。
     一方アッシュはと言うと、平和にグラウンドのコーンの中や植木鉢の中から、しっかりとコインを獲得していた。

    「組連合とか関係ない! 誰よりも先にゲットする!」
     そう宣言するひかるは、木の上で光るものを見つけて駆けだした。
    「もう全部見つける勢いで行く! 優勝は任せろー!」
     一方、同じような宣言をしていた絢矢もまた、木の上へと目を向けて走り出した。
    「何だおまえは! そこをどくんだ! アレはワタシの獲物だッ!」
    「……殺気っ!? なんだーこの女子はー! くそっ、絶対に渡さん!」
     お互い意地になって走った結果はと言うと。
     そのまま木にぶつかり、落ちたカプセルを6歳ぐらいの女の子が喜んで拾っていったり。

    「……いい? 鈴城君。絶対、上を見たらだめだからね?」
    「うん。肩を貸せばいいかな、風音さん」
     その要請に有斗は頷き、瑠璃羽がその肩に足をかけて木の上を覗いた。
    (「駄目と言われたけど……」)
     有斗がこっそりとそ見上げるが、スカートでないので特に問題は無かったり。
    「あ! あった! カプセルみーっつけた!」
     そして嬉しげな声に、自分もまた笑みを浮かべた。

    「仮眠部部員たるもの敗北は許されないわ。 頑張るわよ!」
    「はいな、ぶっちょさん。仮眠部さんさいきょーやもんね? 頑張りましょ」
     歩夏の気合の入った声に、智代がのんびりと答える。連合は違うが、同じクラブの人間として、一緒に行動をするつもりなのだ。
    「智代、そっちあった?」
    「あっちは結構あったさけ、こっち探すほがええかも知らんえ」
     情報交換もそこそこに、再度走り出す部長の後ろ姿に頼もしいものを感じながら。

    「げほっ、ゴホッ……めっちゃ埃っぽいんだけど。……て、うゎっ!」
     倉庫を探しに来た京夜が、足を取られて躓いた。
    「……僕、運動会してるだけだよね? 何で石灰が落ちてきたりバケツに頭突っ込んだりしてるのかな……ハハハ」
     そんな虚ろな声が、木霊していた。

    「まさか運動会で宝探しとはね……面白くなりそうだ」
     光明はそう呟いて仮設テントの屋根の上にカプセルを見つけると、楽しげに微笑んだ。

    「宝探しって燃えるよな! 気合入れて探すぜー!」
     そう宣言した飛鳥は、視界の隅に引っかかったものに振り返った。
    「でかくて丸くてつるつるな……あれかっ!?  って、しまった先生のハゲ頭だったー!?」
     そして叱られ、時間をロスしたのは当然の帰結だった。
    (「宝探しかあ、運動会でこんな競技があるなんて思わなかったなー。たくさん見つけるぞー!」)
     水分補給しつつ捜索開始する屍姫は、植え込み上にあるカプセルを見つけて満面の笑みを浮かべた。

    「ふふふ、待ってろカプセル! 今見つけてあげるよ!」
     あさひが目をつけたのは、野球やサッカーのネットの網の中。
    「なんだか網から探すって、テレビで見る漁みたい。さて、見つかるかなー?」
     そしてその結果は。
    「シルバーゲットーー!」
     そんな高らかな声が辺りに響いた。

    「見つけるならぜってー金!」」
     明莉はそう宣言すると、砂場へと目を向ける。
    「テキトーに埋めたら後が大変だから、きっと覚え易い場所に埋めたに違いない……!!」
     そう信じて掘り始め、中央で見つけたカプセルの金コインに喜びの声を上げた。

    「この学校のことだから変な場所にありそうね……」
     そう呟く舞子は、木の根元にある穴に目を向けて足を止めると、おもむろに水を流し込んだ。
    「……本当に出てきた」
     やがて浮かんで出てきたカプセルに、感心と呆れの混じった声を上げ。
     中の金コインを取り出した。

    「友繁さん、調子はどう?」
     次の場所へと移動していたリアは、同じクラスの春陽に声をかけられて微笑みを返した。
    「グラウンドはある程度探したと思うわ。見つけたのはこことここと……」
    「わ、いっぱい探してる! 時間まであと少しね……お互い頑張りましょう!」
    「ええ、頑張りましょう」
     そう笑顔で別れ、次の場所へと向かって行くのだった。

    「見つけタ! 銀コインデスヨ~!」
     用具入れを探していたユーリが、石灰の中から見つけたカプセルを持って仲間の元に戻る。
    「残り5分よ! 急ぎましょう!」
     その声に賞賛の言葉を贈り、ニコロが焦りつつも楽しげな声で同じクラスの二人へと声をかける。
    「ニコリの旦那! こっちも見つけたで!」
     花壇を探していた美秋が歓声を上げ、残り時間にニコロの探す手が焦り、
    「見つけましたわ!」
     校舎前のこんもりした低木の中にあったカプセルを見つけると同時に、時間切れを示す合図が鳴り響き、全員が達成感と共に笑みを零した。

    ●そして栄冠は
    『皆さんお疲れ様でした! それでは校内宝探し大会、MVPの発表です! 本日のMVPは……1A梅連合の、小野塚・舞子さんです! おめでとうございます!』
     隠した実行委員でさえ見つかりっこ無いと思うものを、見事探し当てた少女。
     そんな彼女へと、惜しみない拍手が贈られるのだった。

    作者:月形士狼 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年5月26日
    難度:簡単
    参加:80人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 12
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