運動会~学内1周RBクロスカントリー

    作者:相原あきと

     競技名:
     『学内1周RBクロスカントリー』

     内容:
      学園の敷地内を走り回るクロスカントリー。

     RB:
      リアルバウトの略。
      クロスカントリー中に相手走者を妨害する事を可とする。

     禁止事項:
      サイキックの使用は禁止。
      ライドキャリバーに乗ったり引っ張って貰ったりは禁止。
      学校の備品や校舎を破壊するような事は禁止。

     ――――――――――――――――――――――――――――――

     5月26日(日)は武蔵坂学園の運動会。
     小中高の組ごとの連合が一致団結して優勝を目指す。
     各競技の参加は事前に配布され、学生達はどの競技に出場しようか相談を始める。

     そして……。

     彼らに統率者は無く、全てが同志だった。
     彼らは自然発生し、気がつくと自然へと帰って行く。
     メンバーに誰がいるかは不明、どう連絡を取り合っているかも不明。
     しかし、彼らはリア充が発生するタイミングで確実に自然発生する。
     ある者は覆面を、ある者は三角頭巾を、ある者は素顔で……。
     彼らの名は――RB団。

     運動会まで数日と迫った武蔵坂学園の屋上に、怪しい学生たちが集まっていた。
    「運動会……普段会わない者同士が連合で仲良くなる恐怖のイベント」
    「つまり、リア充発生率が高まる体育会系イベントの一つ、か」
    「運動会出たくねー」
     覆面や頭巾や見バレ覚悟の素顔の団員が何やら相談をしているようだった。
    「だが、運動会中にリア充を狙うのはなかなか難しい、わかるな?」
    「そうだな、競技妨害になればさすがにまずいしな」
    「サボりてー」
     そう、血眼になって優勝を狙う学生もいる中、それを妨害するのはさすがに勇気がいる。
     ならばどうする? そう頭を抱え出した一同だったが、そこに飛び込んでくる1人の同志。
    「みんな! 紛れ込ませておいた俺達の競技が通ったぞ!」
    『なんだってー!?』

     それは『学内1周RBクロスカントリー』。
     ちなみにRBの上にはリアルバウトとるびがふってある。
    「よくやった! この隠語によって同志達は集結するだろう」
    「だが、これに参加してどうやってリア充を爆発させるんだ?」
    「ふふふ……なんでも有りの競技で学内を周るわけだ、流れ弾がリア充に偶然当たることだってあるだろう?」
    『お、おお~!?』
     集まっていた怪しい団員達がじょじょにヒートアップしていく。
     そして異様なオーラが頂点に達した時、吠えるように団員達が叫びをあげる。
    「いつもの行くぞ!」
    『おー!』
    「目的は!」
    「リア充撲滅!」
    「合い言葉は!」
    「リア充爆発しろ!」
    「我ら!」
    『RB団!!!』


    ■リプレイ


     R(リアル)B(バウト)クロスカントリー。
     競技参加者がスタートラインに並ぶ中、秘められし符丁に反応した者達もまた……そして――。

     パーンッ!

     直後、即座に上体を前に倒し屈みこんだのは中川・唯だ。その上をバナナ――では無く参加者が吹っ飛んでいく。
    「えええ!?」
     とりあえず転がる参加者を唯は飛び越えスタート。
    「さぁ鏑木さんのリア充クッキング教室の始まりだ」
     スタートと同時に設置していた地雷を爆発させた鏑木・直哉が覆面エプロン姿でリア充を襲撃に走る。
     さらに同志たるフィン・アクロイドが高い木の上からリア充男の股間を狙撃。スタート直後からカオスである。
     さらにトップ集団が一斉に姿を消す。
    「リア充以外はその辺通っちゃダメよー!」
     幌月・藺生が落とし穴を作っておいた付近を指差すが被害は甚大だ。
     思わず慎重に進む参加者達。
     それを好機と動き出すのは【ちょーほー部】一同!
     銅像に擬態した素破・隼が次々にパイをぶつけていく。
    「地獄の芋虫ごろごろを食らうがいいのじゃ!」
     足下をシルビア・ブギが高速回転、ついでにペンギンがボウリングの玉のごとく飛んできて、2人?して参加者を次々転ばせていく。
    「あの、借り物競走で靴紐が……」
     おどおどとリア充から靴紐を奪おうとしているのはアイスバーン・サマータイム。だが無差別に転がるシルビアが激突、気絶。さらに――。
    「ぎゃーっ!? 連続ヒットで高得点ですのー!?」
     鮎宮・夜鈴にもぶつかり、さらに転がっていた犠牲者を台にして空へ、そしてパイ投げ銅像へ命中……爆発して散ったのだった。
     そんなカオスな中、足を止めてファイティングポーズの2人もいる。
    「一人が寂しいなら寂しいって言えよなー、あ、礼は要らないぞ?」
    「別に個人参加だって寂しくなんてありませんでしたわよ?」
     ロープを武器に持つ玖・空哉とバッドを構える高坂・由良だ。ちなみに2人はリア充だが、RB団は破局かと思ってスルー。
     スタート直後から足を止めて乱闘状態だが、そこを抜けてゴールを目指す者もいる。
    「全く……時と場所を考えなさいよね!」
     リア充を一瞥し駆け抜けるのは神夜・明日等。ツインテールのその少女の横に、ショートの少女――五十里・香が併走する。思わず目が合う2人、やるならやり返す、けれど目指すは1位。
     目で通じ合いライバルのように頷き合うと、2人は校舎内へと駆け込んでいった。
     背後のグラウンドでは、義勇軍に囲まれたフィン達が派手に自爆している。まだ競技は始まったばかり。


     この競技はなんでも有りだ。
    「見破れたら何かおごってあげるよ」
     後から来るであろう犠牲者に呟くのは神谷・奏だ。廊下に細い糸で罠を設置。そのまま奏は風のように去っていった。
     健全に走るのはアッシュ・マーベラスと竹尾・登の2人。
     だが、そんな友情をあざ笑うように痺れ薬を塗った吹き矢が放たれる。
    「危ない!」
     アッシュを庇い登が倒れる。
    「アッシュ、頑張って優勝しろよ」
     コクリと頷き走りだすアッシュ。
    「ニホンの運動会ヤバいよー!」
     一方、吹き矢のRB団は、お手製のブラックジャックを持つ秋山・清美の足下でのびていた。
    「どうせなら二人三脚を狙って下さい」
     支離滅裂だった。
     そこに紅羽・流希がハリセン片手に戻ってくる。
    「あれ、その人はRB団じゃ……」
    「迷惑そうなバカップルだったので」
     流希が気絶させたリア充を寝かせる。
     余談だが、彼とは2月の聖戦で出会っているのだが……。
    「さすがに彼は居ないですよねぇ」
     気がついてもらえなかった。
     RB活動に勤しんでいたシリウス・アルマーは同志達の無差別爆破に弟子が巻き込まれそうになっているのを目撃する。
    「ふ……師匠らしい事をしてやるか」
     刮目一閃! 一斉に倒されるRB団達であった。
     優勝を狙う者もいれば2人で仲良くゴールを目指す者達もいる。ふらついた御門・心を抱き留め介抱する御門・美波、2人などは後者だった。
     近場の教室に入って心が怪我してないか体を触り、熱はないかとおでこをくっつける。そしてリア充空間が発生し……。
    「付近にリア充がいるぞ!」
    「どこだ!」
     集まりだすRB団。
    「そんな事より、めぐみと一緒にゴールを目指しませんか?」
     声をかけたのは若生・めぐみだった。
     めぐみの手を取るRB団を、裏切り者と叫ぶ数人が追う。
    「それは扇動だ! くそ、なんで……」
    「面白そうだから」
     しれっと答えたのは観音堂寺・アリスターニャ。さらに「好きでした」と突然の告白!
    「裏切り者がー!」
    「ちょ、違っ!?」
     さらに被害が膨れ上がる。
    「この、暴れてんじゃないわよ!」
     必殺のスタンガンで集まっていたRB団を鎮圧したのは木島・御凛だった。そして先へ進もうとした所で、近くの教室から動物の鳴き声。
     入ってみればそこは猫の楽園。
     猫だけでなく数組みのカップルもいる。
     このトラップを考えた九十九坂・枢がお菓子と紅茶を嗜みながら満足げに微笑む。素晴らしいトラップだった。
     もちろん奇策も存在する。廊下で粉バナナをぶちまけ、奇妙なカポエイラを踊るのは嶋田・絹代だ。
    「みんなこっちだ!」
     リア充達が声に導かれて教室へ入る。
     その瞬間、ブン――と教室内のパソコン画面に男が写る。
    「残念、俺こそRB団は銃沢・翼冷! それじゃあ騙されたままぶっ飛んでね!」
     爆発!
     今回けっこうRB団側優勢である。
     故にリア充にカメラを向けよう。
    「あ、あのね、お昼、作ってきたんだ……一緒に、食べてくれる?」
     手を握りながら言う安藤・小夏に、咲々神・美乃里がコクリと頷く。
     2人は何度もRB団を撃退していたが……。
    「……多い、ですね」
    「なぁに非リア充がリア充に勝てるかよ……」
     RB団が十数人で2人を囲む。さすがに数の暴力。
     その時だ。
    「おい、あのリア充どもが優先だ!」
     RB団達が何かを発見して2人を放置、ダッシュでいなくなる。
     それは灯火町・燈と茂多・静穂の偽装カップルだった。
    「こ、これも大儀の為です!」
     RB団に追われつつ静穂が「あくまで振りです!」と燈に。
    「そりゃあ先輩とは同じドM気質で気は合いますが……」
    「まぁ、そりゃ静穂は俺と同じドMで器量もよいし……」
     偽装?
    『爆発しろ――っ!』
     暴走するRB団は本気で併走する2人を発見、数人が向かう。
    「アナタ達、何者ネ」
     囲まれたロン・メイファンが言い、背を合わせ立つ藤堂・丞が。
    「こいつらを倒さないと続きは無理っぽいな」
    「なら倒すまでネ!」
     暴れる風のように2人がRB団へ襲いかかる。
    「ぜ、絶対リア充のくせにー!」
    「うるせ! まだだよ!」
    「タスク、何か言ったアル?」
    「なんでもねー!」
     戦いはいたる所で起きていた。
    「選ばれし者だったのに!」
     一人凌駕したRB団に叫ばれたのは、3人で参加していたユキ・タティーラだ。
    「異性と参加? 暗黒面に落ちたか!」
    「こ奴、これまでの者とは違いますわ。ご油断めされずに!」
     無慈悲にロープで縛り倒していたミルフィ・ラヴィットが、凌駕したRB団員を警戒して言う。
     だが――。
    「ぐふっ」
     死角からベル・リッチモンドに攻撃され倒れるRB団。
    「ユキが暗黒面に……か、師匠としては、マグマ付近で四肢を落として放置しないと……けど、するとユキは全身サイボーグに……」
    「だから、堕ちませんよ!」


     校舎内の次は校舎の壁を登るステージだ。
    「これが知略ってモノだ」
     壁を登り切った九葉・紫廉が持ち込んだオイルを大量に垂れ流していく。
     滑り落ちていくリア充達を見下ろす紫廉、だが不意打ちは後ろから。
     パラララッ!
     軽い銃声。
    「見逃すとお思いですか?」
     エアガンを構えた穂都伽・菫だった。
     紫廉はスローで校舎から落下して行ったのだった。
     壁登りはかなりの難易度と化していた。すでにオイルまみれなうえ、どこからか手裏剣が飛び、流れ弾がリア充に。
    「すまぬ、流れ弾が……爆発しろでござる」
     雨崎・弘務……実はRB団?
     さらに純粋な妨害として、地上から参加者へ十・光滋が油の入った水風船が投げつけられ、加速度的に落下者が増えていた(ちなみに光滋は配水管を伝って突破していた)。
     もちろん普通の道具も宙を舞う。バッドや鉄アレイ、ちくわ……ちくわ?
    「ヤハハ、ソンナ投げ方では世界は無理デスネ!」
     壁を登りながらナハトムジーク・フィルツェーンが投げたちくわをモーリス・ペラダンが回避し、ちくわがモーリスの背後にいたリア充を落下させる。
    「おっと手が滑っちまったぜぇ!」
     梓潼・鷹次が特製のカニ足バッドを投げつけ、偶然リア充を落下させる。
     だがRB団的活動もそこまでだった!
    「喰らうアル! 諸葛家秘伝の激流水計!」
     待ち構えていた諸葛・明が白羽扇を振り、バケツから大量の水が襲いかかる。
     即座に鷹次を盾にするナハトムジークと、ビハインドを盾にしたモーリス。2人はそのまま次弾が装填される前に屋上へ駆け上がり。
    「さらばデスネー!」
     逃走。
     ちなみに鷹次は見捨てられました。
     一度リア充も非リア充も関係なく押し流された壁の前。
    「え? あれ……? クォ、クォーツさん!?」
     いきなりクォーツ・インフェルノに姫抱きされた御手洗・黒雛が真っ赤になって思考停止する。
     クォーツは片手で黒雛を抱きしめたまま、豪快に壁を登りきる。
     地上では参加者が2人の勇姿?に見とれ、黒雛はますますをもって顔をクォーツに埋めるしかなかった。
     少し経ち、屋上に現れたのは八嶋・源一郎と神楽・三成だった。
     そして参加者のRB団が壁を登りき――。
    「馬に蹴られるよりはマシじゃと思うぞ?」
     源一郎に蹴り落とされた。
     参加者のリア充が壁を登りき――。
    「オラァ! もう一回登ってこいやぁ!」
     三成にヒャッハーされた。
     思わず見つめ合う源一郎と三成。
     三途の河原の牛頭と馬頭のようであったと後に参加者は語る。


     屋上、そこは恋人達の憩いの場。
     競技中にも関わらず、普段を思いだして普段のお弁当の感謝を恋人に述べるのは橘・清十郎だ。
    「ん、清十郎が喜んでくれると、私も幸せなのですよ」
     また作りますね! 伊勢・雪緒が幸せそうに微笑む。
     だが、即座に現れるはRB団!
    「世界を敵に回す覚悟無くしてリア充が務まるか!」
     ハンマーを持つ雪緒を背に庇い、清十郎が啖呵をきる。
     というわけで屋上もカオスだった。
     婚約者2人で参加していたヴィルヘルム・ギュンターと伊織・順花の前にも、モヒカンなRB団が当たり前のように襲いかかり――(見せられないよ?)――モヒカンRB団がピアノ線を食い込ませながら屋上から釣り下げられていた。
    「なんでこうなるんだろうな、お前らは」
     呆れて言う順花に、ヴィルもやれやれと同意する。
     そんな2人のおかげで一端静かになった屋上を、仲良く手を繋いで駆けていくのは玉越・雪波と安城・翔のカップルだ。先ほどまで姫抱っこされていた雪波だが、屋上ぐらいは、と「翔さん、わたしも走ります」と走る事にした。
    「うん、一緒に頑張ろうね。雪波ちゃん」
     手を繋いで走る2人、なぜか静かな屋上を2人っきりで駆けるのはなかなか悪くない体験だった。
     コースに指定されていない屋上、その一角でドリアン片手にリア充を狙うはRB団。
    「ぐはっ!?(ゴッ」
    「他人の恋愛事情にまで口を出す権利は無いと思います」
     背後から木刀で殴ったのは来海・柚季。
     だが、そのRB団はしぶとく一死報いようと――「ぶっ!?」
     柚季が気配に振り向くと、そのRB団は宙に蹴り飛ばされ屋上から落ちていく所だった。
    「大丈夫ですか?」
     マキシミン・リフクネが柚季を心配する。
     とりあえず屋上の清掃はまだ終わりそうになかった。
     そしてバトルを繰り広げるのは柚季達だけでは無い。
    「残念だったな、俺達は武闘派なんだよ」
    「まるで鯉のぼりやな」
     ぶちのめしサラシで屋上から連結してぶら下げたRB団達を眺めるのは永舘・紅鳥とクリミネル・イェーガーだ。
     その後も現れるRB団を次々にぶっ飛ばす紅鳥。
     だが彼は知らない。プールにて自らも吹っ飛ばされる運命にある事を……。
     そこかしこで乱闘が始まる屋上。彩風・凪紗はフェンスの上を走る事で一直線に駆け抜ける。だが進路上にひょっこり現れたのは錦織・仁來。
    「ち、違うんじゃ! 別に俺はびびってフェンスに登ったわけじゃ」
     ワタワタする仁來を華麗に飛び越え凪紗が走り去っていく。
    「ふぅ……トラブルは断固拒否じゃ」
     フェンスの上で安全を確保し、仁來はこっそり呟いたのだった。


     リア充の声響く時、彼は――。
    「聞こえんなぁ」
     加速して屋上から飛び降りたのは祁答院・在処。
     着地45度、回転、そのままダッシュ!
    「目指すは勝利の二文字のみ!」
    「え、三階じゃないの!?」
     鳴神・裁が高さに驚きながらも屋上からジャンプ。
     さらに裁を見ていた参加者もつられてジャンプであわや大惨事!
    「助けますよ~?」
     ラベリング用の装備を固定し降りていた御手洗・亜美が手を伸ばす。
    「ボクは大丈夫、あっちを!」
     裁はパルクールの技術で衝撃を吸収、亜美はもう1人の参加者を助けて着地。笑顔で頷き合う裁と亜美。
     一方、屋上の端が近づくにつれて心労が増している男がいた。結城・真白である。心配の種は横を走る妹の結城・六六六。
     彼女は今日も上下共に下着をつけていない。「ブラは苦しい、パンツはごわごわする」とは妹談。
     この先を妹はジャンプするだろうしその後はプール……。
     端から見ればラブラブだが、真白は今日も苦労しているのである。
    「……はぁ」
     そして中盤、そこは壁登りと同じく格好のスナイピングポイントとなっていた。壁を降りる参加者がその途中で撃墜されるのだ。
     しかし、それを読んでいる集団がいた。【戦戦研】のメンバーである。
    「あのエネルギーを別の事に使えばいいのだがな」
     そう言ってハート型の矢で狙撃RB団を倒すのは嵯神・松庵だ。ほぼ倒し終わりトランシーバーを手に取る。
     別の屋上で連絡を受けた灯屋・フォルケが、松庵から遮蔽をとったRB団を狙撃。
     倒れた仲間を捨てて残った1名が走り出す。
    「1名逃走……そちらで対処願います」
     再び松庵の矢が放たれ。
     ――ぐさっ。
     RB団衣装の最後の1人が、木刀で近くのリア充に襲いかかろうとしつつも力尽きる。
    「わ、我は死しても、我が志は死なぬ!」
     その男は……天城・兎であった。
     ところでRB団は悪なのか? いや、そんな事は無い。
     RB団風真・和弥は、盗撮者を発見、殴り飛ばしてカメラを回収していた。
    「盗撮犯が出たって聞いたぞ!」
     被害の連絡があったらしく義勇軍が集まってくる。
    「たった今盗撮犯が――ぐっ!?」
    「悪い、大丈夫か?」
     カメラを提出しようとした所で、頭上から落ちてきた中崎・翔汰に踏まれ、カメラを落す。
    「そのカメラ、盗撮犯か!」
     翔汰はそのまま走り去り、和弥は――。
    「違う! 俺じゃ――」

     ――ズーンっ!

     その時少女が屋上から落下、掴んでいたRB団を地面にめり込ませる。
    「……きゃはっ♪」
     超ハイテンションな病葉・眠兎の笑顔に、とりあえず大人しく捕まる事にした和弥だった。無実なのに。


    「ヒャッハー! とろめー! とろみやがれ!」
     大量のとろみ剤(?)をぶちまけながらプールを泳ぎ回るのはRB団の九条・風だ。
     やがてデロデロになったプールを渡る事になる参加者達。
    「さ、鮫だ!」
     ワルゼー・マシュヴァンテが手製の鮫背鰭を使ってプール内からリア充を狙う。
    「ん?……止まった?」
     デロデロで動けなくなった鮫にリア充が逃げていく。そして――。
    「鮫です!?」
     プールに辿り着いた綾河・唯水流が驚き、手に持っていたスタンガンを取り落とす。

     バチバチバチ!

     浮かぶ鮫。
     大丈夫だろうか?
    「ヴァ、ヴァイヴ……ヴァァ……グ」
     大丈夫だった。
     このプールは普通に難所となっていた。
    「走っていれば暖かくなると思っていたけど、甘かったかな」
     鷹月・漣は呟く。
     そしてクールに背後の悲鳴も聞き流し漣は黙々と先へ進む。
     黙々と進む者もいれば、足を止める者達もいる。
    「捕まえた~♪ らぶらぶな人の邪魔したらアカンえ?」
     濡れ透け体操服姿でRB団を抱きしめつつ説得するのは、サービスシーン担当、神座・澪だ。周囲にはファンクラブのようにRB団が集まっている。
     だが、今回はそれで終わらない。
     ゴスッ!
     ズカッ!
     1人、また1人と姿を消すRB団。
    (「澪には内緒でこっそり参加したけど……」)
     七鞘・虎鉄が惚けている団員を次々に撲殺していく。
     結果、結構なRB団員が倒されました。おのれ。
     少し経ち、デロデロでバチバチな激辛唐辛子が大量に入った(追加事項)プールにRB団達を殴り入れるのは、キレて暴走している黒咬・翼だ。
    「ま、待って翼……わ、私を一人にしないで……」
     やっと翼に追いついたディアナ・ロードライトが、暴走を止めようと背中から抱きつく。
     だが、落ちつきそうになった翼に、浦原・嫉美が強力唐辛子水鉄砲を顔面に命中、再び暴れ出し周囲のRB団達がズバババッとプールに投げ込まれる。
    「さすが我が弟子です。さて、そろそろ潮時……」
     サバト服姿の霈町・刑一が撤退しようと逃走経路を確認する。だが、その視界に標的の一人たるリア充の金井・修李が――。
    「刑一く~ん♪ はい! 飲み物とお弁当!」
     なぜか標的にお弁当を渡される刑一。さっと立ち去る修李。
    「師匠!」
    「なんです? コレは違いますよ!?」
    「囲まれました!」
     見れば黒咬・昴を筆頭にした集団【RB団スレイヤー】が。
    「くっ」
    「さぁ、けーいちを捕らえた奴は賞金を出すわよ」
    「なあ、なぜ俺がこの場にいるんだ?」
    「気にしない! ほら! 杏も行くのよ!」
     昴に突き飛ばされるように蒼月・杏もサバト服の師弟に向かう、さらに上からは分胴付きの投網をシャルロッテ・モルゲンシュテルンが投げ込む。
    「リア充が妬ましいとは思わないのですか?」
     刑一の言葉に思わず手元が狂って投網が外れる。
     チャンス!
     左右に散る師弟、だが――ドスッ!
     アイティア・ゲファリヒトのメリケンサックでプールへと落下する弟子。
    「なぜですアイティア」
     同志よ……刑一の言葉に青い髪の少女は悲しく呟いた。
    「……昴おねーさんに脅されて」
     がたがたぶるぶる。
    「ニヤリ」(←昴)
    「貴方達はヒナ達の大事なもの――素敵な恋人達を奪ってしまったわ」
    「これは許されざる反逆行為といえるの~」
     刑一の背後から2つの声が……エステル・アスピヴァーラと周防・雛だった。
    「会えないのはRB団のせい!」
    「かまってくれないのは刑一のせい!」
     完全な言いがかりである。
    「けーいち、慈悲はないわよ」
     だが、乱入は思いもよらぬ所から。
    「一匹残らず血祭りにあげてくれるわ!」
     絶賛暴走中の翼がモブRB団を倒し切り新たな生贄を求めて突っ込んで来たのだ。
    「って、落ちつけ翼!」
    「ディアナ! 翼ちゃんを!」
     しかし次の瞬間、プールの水が爆発し……RB団の師弟コンビはその姿を消したのだった……。


     体育館裏で木刀を持った男子高校生が2人。
    「そういや隼鷹、彼女とはその後どうなんだよ?」
     楪・奎悟に聞かれた刀祢・隼鷹が「誰の事だ?」と、きょとんとするもすぐに思い当り赤くなる。
    「べ、別に俺とあいつ、そういう仲じゃねーし!」
     先輩こそ、と切り返すが。
    「まぁ、仲の良い女はいるけどさ……どうだろうな?」
     さらりと奎悟は笑う。
     ――と、普通に恋話してる2人の少し横に。
    「だって……多忙でなかなか抱きしめてくれないから……」
    「今日はいつもよりサービスしますよ♪」
     呉羽・律希と迅・正流が抱き合っていた。
     思わず見てしまう奎悟と隼鷹と現れていたRB団達。
     そして……。
     男子高校生2人と、演技だった律希と正流によって壊滅するRB団達。
     そんな中、律希は相棒の雄姿が見られて満足だったり……。
     一方、無差別に戦いを仕掛けるのは西原・榮太郎だ。
    「地獄合宿で鍛えた業とストレス、ぶつけさせて頂きます」
    「八つ当たりじゃねーか!」
     叫ぶ参加者。問答無用の榮太郎。
    「ひゃ!?」
     吹っ飛ぶのは魅咲・小夜、だが影夜・鏡平がお姫様抱っこでキャッチ!
    「あ、ありがとうございます……」
    「!!!」
     その様子を見たRB団怒りゲージがMAXに。
    「ぶべっ」
     小夜を吹き飛ばしたRB団の顔に、鏡平が蹴ったタイヤがめり込む。
    「何してくれてんの? 潰れてもらうよ? 答えは聞かないけど」
     すでに答え言えない状態のまま理不尽な……と倒れるRB団。
     戦いは苛烈さを増す。
     だらしない服装のまま巻き沿いで倒されていたハノン・ミラーを、全力で良い人な因幡・亜理栖が介抱し終わり競技に復帰する。
    「それにしても……死屍累々だなぁ、あ、楽しい悪戯、応援してるから!」
     すれ違ったRB団が、なんとも言えぬ顔をしてサムズアップし通り過ぎて行った。
    「迷子なう」
     ぽつんと周囲の喧騒に取り残されながら体育館裏をウロウロしているのは稲荷坂・里月、迷子の殺人鬼である。
     とりあえずRB団っぽい白いマスクの人に道を聞いてみる。
    「ゴールを知らないか?」
    「え、私に聞く!?」
     草陰でリア充に吹き矢で狙撃していた大浦・政義が、仕方が無いと道を教えてやることに。
     その結果、草陰にいるのがバレ周囲には義勇軍が……。
    「ふっ、勝てないとわかっていてもやらなきゃいけない時がある……RB団万歳!」
     政義が覚悟を決めた時、奇跡が起こる。バタバタと義勇軍が倒れたのだ。
     そして周囲のリア充も……そして政義も。
    「こ、この臭いは……」
    「あはははははは! 某先輩から貰った凶悪兵器! 圧倒的ではないか!」
     それは最近RB団内で頭角を現し始めている夏炉崎・六玖だった。世界一臭い腐った缶詰を52個並べ、次々に開けていく。
    「ピピーッ!」
     飛んでくる義勇軍……ではなく先生方。さすがにその缶52個はまずいって!


     再びグランウンドが見えてくると、参加者達の妨害レースはさらにヒートアップする。
     長いリボンを駆使してライバルを絡め転ばしまくっているのは神乃夜・柚羽だ。
     そんな柚羽のリボンを、三節棍で打ち払い切り抜けたのは乾・舞斗だ。
     さらにスタート付近でバトってたRB団が逆走してくる。
    「これはリベンジです」
     三節棍を手と脇下に挟み構えを取る舞斗。
    「邪魔すんな!」
     その横を駆け抜け、凄みで一蹴するは炎導・淼、俺だって運動会を楽しみたかった! なのにRB団も義勇軍も競技そっちのけで楽しみやがって!
     新たなニュータイプRB団覚醒……か?
    「敵は己の中に有り、か。それを改めて痛感させられるな」
     黙々とペースを崩さず走り続けているのは戯・久遠、その横には流れ来る攻撃を木刀でいなしながら、ただ前を向いて走る柩城・刀弥が並ぶ。
    「限界に挑戦する、これも修行の一環か」
     久遠の言葉に、刀弥も思わず心の中で頷く。気を張りながら時に妨害を防ぎつつ走るのはなかなか堪える、だがゴールまではあと少し。
     2人で協力してここまで進んで来たのは鴻上・朱香と片囃・ひかる……だったのだが。
    「ひかる、チームとしての勝利も大事だけど……私は、私が勝者になりたい」
    「わかっている。つまり優勝者は……このワタシだ!」
     朱香が妨害道具の詰まった背負い袋をぶちまけ、ひかるもここまでの道で拾い集めたタイヤやバットを無差別に投げつけ始める。
     大バトルの乱闘の中を抜け身体一個抜け出すのは柿崎・法子。
     だが、裏切り潰し合いを始めた参加者達の妨害道具は誰にも平等に被害を出す。
     ふと背後を振り返った法子。
    「ああ……こんな展開も『よくあること』だよね……」
     目の前に、誰が投げたかRB団製の爆弾が……――。

     ドカーーーンッ!

     RBクロスカントリーの最終トラックは中央の正式競技に被害が出ないようグラウンドの端っこに作られていたが、そこで起こる大爆発。
     もうもうと土煙を爆炎があがる中、その煙から飛び出したのはアンナ・ローレンス! そのままゴールへ倒れ込む。
    「これでアタシが……優勝……」
     だが、係員は『2位』の旗をアンナに渡す。
    「ぐぬぬ、アタシではないのか!」
     『1位』の旗は全力で走りきった小学生、アッシュの下へ。
     もし優勝に理由が必要だとするなら、連合を越えた友情や支援者が誰より多かったおかげだろう。仲間達の力、そのボーナス分が判定に確実な差となり現れたのだ。
     次々にゴールへ飛び込んでくる参加者達。これでRBクロスカントリーも終了だ。
     ゴールする参加者の中には、ボロボロのRB団もいればラブラブなリア充だっている。
    「争いからは何も生まれない……はずだッ! あー、リア充爆発しろ。爆発しろ」

    作者:相原あきと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年5月26日
    難度:簡単
    参加:108人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 1/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 26
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