ぬすめっ! 怪盗少女

    作者:江戸川壱号

    「はにゃ~ん♪ キラキラたくさん、幸せですぅ~」
     ダイヤにプラチナ、ルビーにゴールド、エメラルドにシルバー、オパールに真珠。
     少女は煌びやかな宝飾品を前に、うっとりとそれらを眺めていた。
    「リーダー、あの、時間……」
     だが部下の声に我に返ると、それなりに指示を出し始める。
    「はっ、そうね。急がないと! よし皆、ありったけの宝石という名の夢をかき集めて袋に詰め込みなさい!」
    「ラジャー!」
     部下達がサンタのような白い大きな袋に宝飾品を詰めていくのを満足げに見守る少女の顔には、仮面舞踏会でつけるような華奢で華麗な仮面。
    「あ、ちゃんと『週末美少女怪盗☆キラキラレディー参上!』ってカード置いといてね!」
     ガールとレディーが一緒くたになった謎の名称の少女こそ、今日から活動を開始した自称大泥棒。
     キャッチフレーズは『いま盗める怪盗』にして『女子校生週末美少女怪盗』と色々混ぜすぎたキラキラレディーである。


    「どうもね、怪盗さんが出たみたいなんだよ」
     右手に持ったシャープペンシルの上部をこめかみにあてて、小さく溜息を吐くのは須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)だ。
    「不死王戦争で、ソロモンの悪魔のアモンを倒した影響のひとつ、なんだけど」
     アモンやその部下であるソロモンの悪魔は倒されたが、配下であった強化一般人が全て消えたわけではない。
     このキラキラレディーも、そうした強化一般人の一人だった。
     上からの指示もなく連絡も途絶えた中、とりあえず活動を自粛していた彼女だが、ここにきて考えを変えたらしい。
     もしや主は倒されたか、いなくなったのではないかと。
     与えられた不思議な力はそのままに、指示や命令を出す者もいないことに気が大きくなった彼女は、それまでの怪しげなサークルに一般人をちまちま勧誘するといった地味な活動を放り投げ、自分の欲望の赴くままに行動しようとしている。
    「もともと宝石が大好きだったみたいで、『女子校生週末美少女怪盗キラキラレディー』を名乗って、宝石店に盗みに入る気なんだ」
     この力があればなんでも出来る。
     大好きな宝石なんてそこら辺から奪い取ってくればいい。
     ついでに大いに目立って世間の注目を浴びたい!
     という、かなりどうしようもない理由で、だ。
    「思いつきと私利私欲の行動だから、計画は杜撰でいきあたりばったりだよ。だから計画を阻止するのは簡単だと思う」
     ただ店に迷惑や被害をかけるのは申し訳ないので、出来れば店に入る前に止めて欲しいとまりんは言った。
     狙われるのは、東京郊外にあるショッピングセンター内にある宝石店。
     キラキラレディーの侵入は深夜で、気が大きくなっているせいかあまり周囲を気にする様子もない。
     ショッピングセンターは幾つかの建物が寄り集まったものなので、隣の建物の物陰にでも隠れていれば問題なく待ち伏せできるだろう。
     幾つかの建物の周囲はだだっ広い駐車場になっており、戦闘にも支障は無い。
    「キラキラレディーは、ソロモンの悪魔の配下として地道に活動してきた時に勧誘した仲間の女の子を引き連れてるよ。数は多めだけど、そんなに強くないから」
     キラキラレディーは、マテリアルロッドと契約の指輪のサイキックを使ってくる。
     仲間が使ってくるサイキックは、ロケットハンマーが3人、鋼糸が2人、WOKシールドが2人という構成のようだ。
    「この子もソロモンの悪魔の配下でなければ、こんなことしなかったかもしれないけど……。こうなったらただの犯罪者だし。ビシっとお仕置きしてあげて!」
     力を込めて言って、まりんは灼滅者達を送り出した。


    参加者
    周防・雛(少女グランギニョル・d00356)
    水月・鏡花(鏡写しの双月・d00750)
    襟裳・岬(にゃるらとほてぷ・d00930)
    モーリス・ペラダン(マスクザファントム・d03894)
    十束・御魂(天下七剣・d07693)
    ウォーロック・ホームズ(ロリコンじゃない魔術師探偵・d12006)
    村本・寛子(可憐なる桜の舞姫・d12998)
    ギュスターヴ・ベルトラン(救いたまえと僕は祈る・d13153)

    ■リプレイ


     ショッピングセンターにある建物の影に隠れ、ちょうど宝石店が見渡せる位置で敵の登場を待つ十束・御魂(天下七剣・d07693)が思うのは、これから相まみえる敵のこと。
    「美少女怪盗キラキラレディー……なにやら黒歴史の香りがするような」
     怪盗と名乗ってはいるが、行き当たりばったりと言うだけあって、やり口はただの押し込み強盗である。
     そんな相手に対し、アイドルとして『目立つ』ということに譲れないものがある村本・寛子(可憐なる桜の舞姫・d12998)は闘志を燃やしていた。
     全てどこかで見たり聞いたりしたようなやり口から、そのうち盗んだバイクで走り出して夜の校舎を窓ガラス壊して回るに違いないと寛子は思う。
    「バベルの鎖があるからダイジョーブって思ってるのかな? でもそういうのって良くないよ」
     周囲の被害や罪を気にしないのは良くないと断じるのは、ギュスターヴ・ベルトラン(救いたまえと僕は祈る・d13153)。
     今は黙して語らぬモーリス・ペラダン(マスクザファントム・d03894)も、己の見た目がまさに怪盗然としていることもあり、『怪盗』の名には思い入れがある様子。
     だが一方で、面白がる者もいた。
    「セクシー美少女怪盗を追う、正義の美少女探偵団……。少し前にアニメで見ていましたけど、それをヒナ自身が体感できるなんて。うふふ、ワクワクしちゃうわよね?」
     楽しそうにクマと少女型の人形に語りかける周防・雛(少女グランギニョル・d00356)や、襟裳・岬(にゃるらとほてぷ・d00930)である。
    「美少女怪盗を捕まえるのは少年少女探偵団、って相場が決まってるものね。おあつらえ向きに、こっちには探偵クンもいるわけだし?」
     思わせぶりな笑みを浮かべたが岬が視線を向けるのは、彼女らが隠れる建物の屋上付近。
     そこには、ESPを使って箒で空に浮かぶ二つの影があった。
     どこからどう見ても『探偵』といった装いのウォーロック・ホームズ(ロリコンじゃない魔術師探偵・d12006)と水月・鏡花(鏡写しの双月・d00750)である。
    「怪盗を名乗るのは自由だけれど、ネーミングセンスがなさすぎるわね」
     もう少しまともな名前はつけられなかったのかしら? とも思うが、そもそもマトモならあんな格好であんな名前はできないだろうと思い直す。
    「ああ。世間一般でお宝という名の夢と言えば幼女の事だと思うが、やはりどうにもズレた相手だね」
     鏡花の一人言が聞こえたのか傍に浮かぶホームズもまた頷いていたが、彼の言葉も敵並にズレているのだった。


     ともあれ灼滅者達が待ち構える中、ついにキラキラレディーとその一団が現れる。
     仮面舞踏会風の仮面に、レオタードにタイツ。その上から羽織った裾の短い和服のような衣装。
     ちぐはぐで派手なその装いは、間違いなくキラキラレディーだろう。
     確信した灼滅者達は、素早く走り宝石店へ向かう一行の前に立ちはだかった。
    「じゃすともーめんとっ!」
    「さて、そこで止まっていただけますか。美少女怪盗さん?」
     まず前に出たのは、掌を勢いよく前に突きだした岬と、穏やかな笑みを浮かべた御魂の二人。
    「気合の違いってのを、見せてやるの!」
     続いてアイドルとして『目立つ』ことに張り合う気満々な寛子が、キュアコスチュームをプリンセスモードでさらに煌びやかにしてポーズを決めた。
    「犯人はまるっとこの中にいる! やぁ遅かったね、にわか怪盗諸君!」
     そこへ箒の高度を下げながらも、頭上から探偵らしい口調で探偵らしからぬ台詞を吐くのは勿論ホームズである。
    「ボンソワール、お嬢様がた。真夜中遅くにご苦労様。貴女達のハートとお命、逮捕致しますの」
     驚いて若干引いた様子のキラキラレディー達に対し、雛がドレスの裾を軽く持ち上げ優雅にお辞儀をし、突きだした手を銃の形に変えた岬がトドメとばかりに名乗りを上げる。
    「武蔵坂少年少女探偵団SAN上! 惑星(ほし)に代わって灼滅(お仕置き)よ!」
     敵に負けず、何か色々混ざった名乗りだった。
    「わ、私を週末美少女怪盗キラキラレディーと知ってのこと!? ……はっ、もしや私の宝石を横取りに来た悪い奴ですね!?」
     ずさっと後ずさり距離をとる、自分がしようとしていたことを忘れているとしか思えないキラキラレディー。
     だが、その拍子に彼女の仮面の隙間からハラリと何かが舞い落ちる。
     それは一枚のカードだった。
    『今宵、宝石の如き輝くアナタを頂きマス。怪盗ペラダン』
     いつの間にかモーリスが仕込んだらしい、予告状である。
    「隙だらけで笑いが止まりマセンネ、ケハハ」
     マントを華麗にバサリと翻し怪盗らしい笑い声をあげるペラダンを、キラキラレディーは顔を真っ赤にして睨みつけた。
    「参上カードなら用意してますし! 宝石みたいとか褒めても宝石分けてあげませんですから!」
     明らかに屈辱というよりは、別の理由で赤くなっている。
    「……」
     思いがけぬ反応に時が一瞬止まったが、とりあえず隙だらけだったので、鏡花は箒の上から無造作に槍から氷の雨の如く妖冷弾を撃ち込むことにする。
    「きゃあ!?」
    「聖なる聖なる聖なるかな! 我等が主は全てを見ておられる……悪の栄えた試しなし!」
     キラキラレディーの悲鳴を打ち消すように場に響くのは、スレイヤーカードを掲げたギュスターヴの歌うような声。
    「だ、騙しましたね!? ひどいですー!」
     攻撃を受けて流石に現状を把握したらしいキラキラレディーが、配下に指示を出して戦闘態勢を整えるが、既に灼滅者達は攻撃態勢に入っていた。
    「怪盗とは、優雅かつスマートにコトとモノを懐に運びマス」
     モーリスが白手袋に包まれた指を鳴らすようにこすれば、戦場の音を遮断するESPが発動する。
    「取り巻きさんは速攻で! ちょっと失礼しますねー!」
     それを待っていたかのように、御魂が巨大化した腕で配下の少女を殴る重い音が響いた。
    「バカじゃねーの? そんなカッコした泥棒がいるかってハナシだよ!」
     続いて降臨させた十字架から無数の光線を放ちながら、先程までの穏やかで優しげな口調が嘘のような荒々しい口調で言い捨てるのは、なんとギュスターヴである。
     二重人格というわけではなく、日本における戦いの礼儀だと思っているらしいのだが、真相は闇の中。
    「予告状も出さずに怪盗を名乗るとは笑止だね」
     作戦通りまずはジャマーを担う者から落とすべく、ホームズもまた傷ついた配下の少女にオーラを纏わせた槍の連打を打ち込んでいく。
     そうした皆が攻撃に集中できるよう、次の敵の攻撃に備えて前衛陣を広くカバーする為に寛子が盾を広げれば、同じく盾を構えたモーリスがキラキラレディーへと接近し、シールドバッシュの効果を与えつつ盾の影でさりげなく仮面を奪い取った。
    「あー! それがないと週末美少女怪盗じゃなくなっちゃいますーっ。酷い、私はただこの凄い力で好き放題に宝石集めて、はにゃ~んてしたかっただけなのに!」
     最悪な理由を堂々と叫ぶキラキラレディーの瞳に浮かぶのは怒り。
     これで二十歳だというのだから、色々と酷い。
    「……って、ちょい待ち。ハタチ? 女子高生?」
     ウロボロスブレイドを高速で振り回しながら配下の女子校生を斬り刻んでいた岬が、ふと気付いて疑問の声をあげる。
     そう。キラキラレディーは正式に現役女子校生だが、二十歳らしいのだ。
    「二十歳で何が悪いんですー!? 女子校生ブランドをたった三年で捨ててたまるもんですか! べ、別に素行と成績が悪くて卒業できなかったワケじゃないんだからねっ!」
     理由は物凄くどうでも良さそうであるが。
    「ふふ、そうですね。年齢なんてどうでも良いですわ。それよりも……」
     ふわりと微笑む雛がその優しげな顔を黒い仮面で覆うと、鋼糸が瞬時に空間に張り巡らされ敵の動きを阻害する。
    「サァ、アソビマショ!」
     楽しげな声が、殺戮人形劇の幕開けを告げた。


    「ウロチョロすんなですー!」
     怒りを付与されたこともあるが、怪盗を名乗る相手に怪盗としてのアイデンティティだったらしい仮面を奪われたこともあり、キラキラレディーは執拗にモーリスを狙い続ける。
    「怪盗を名乗るのならば、シルクハットとモノクルとマントを準備するべきデシタネ、ケハハ」
     モーリスは怪盗紳士らしく常の様子と余裕を保ったまま戦っているが、クラッシャー三人にも怒りを付与して攻撃を引き付けていた為に体力的には限界が近かった。
     己と同じ変装をさせたビハインドのバロリが主を庇い、寛子も構えた盾で攻撃を受け止めるが、全てを受け止めるこは出来ない。
     列攻撃しか後衛のモーリスに届かせることができないクラッシャー三人の攻撃はさほどの威力ではないものの、キラキラレディーの分だけ他より傷は深くなる。
     攻撃の誘導と集中により回復は充分に上手く回っていたが、サイキックでは癒せない傷が積み重なっていたのだ。
     だがその分、他の仲間にはまだまだ余力がある。
    「撃ち抜け、蒼雷っ! ――Blitz Urteils!」
     鏡花が槍の先から放った魔法の矢は、迸る魔力故か蒼い雷を帯びたように表面を波打たせながら一直線に飛び、配下の少女を貫いた。
     キラキラレディーを守っていた最後の一人を討ち取るのは、人形と影を操る雛である。
    「アレ・ヴァズィ!」
     クマの人形を象った影が巨大化して少女を飲み込めば、残るはキラキラレディーただ一人。
    「さて。悪い怪盗さんは、寝る時間です……!」
     愛用する赤銅色のガトリングガン『輝凰』を向け、御魂が宣告する
     もともと計画性も強い思想があったわけでもないキラキラレディーは、あわあわと逃げようとするが勿論それを許す灼滅者達ではなかった。
    「ヤハハ、怪盗は、狙ったエモノを逃しマセン」
     モーリスが放った符が描く五芒星と、幾度となく張り巡らされた雛の糸がキラリと光り、逃げるのは容易ではないと悟らせる。
    「美少女怪盗は捕まったらえろえろ展開と相場が決まっ……!」
     それを見て何故か岬が目を輝かせて身を乗り出したが、鏡花が冷静にその口を塞ぎ、笑顔のまま雛が糸と影でもって暴走しかける岬を押さえつけた。
    「もう観念するの!」
     幸い、そうした邪念とは無縁の寛子が可愛らしい顔に精一杯厳しい表情を作ってキラキラレディーに言い放ったお陰で、場が汚れきらずに済んだようである。
    「うぐぐ……絶対成功する筈だったのにっ」
     さておき、杜撰すぎる計画を棚にあげて灼滅者達のせいと言わんばかりに睨み付けてくるキラキラレディ。
     そこへホームズが、芝居がかった仕草で帽子に手をあて、一歩前へ出た。
    「なに簡単な話だよレディ。君は3つミスを犯した。20歳を過ぎてJKを名乗った事、そのくせ衣装にJK要素がない事。そして……この名探偵の目に止まった事さ」
     推理物のクライマックス風にポーズも顔も決め決めだが、中身はかなり残念な台詞を吐くホームズ。
    「うっさい20歳でJKでもいーんですー!」
     しかも逆鱗に触れたようで、キラキラキレディーが放った竜巻による反撃をくらい吹き飛ばされていく。
     またその際の悲鳴が「ルパーンッ!?」だったりしたものだから、更にギュスターヴからキラキラレディーとまとめて説教される羽目になった。
    「てめぇ……ルパンの国出身の人間なめてんのか! あぁ?!」
     勿論、説教の後にはちゃんと賛美歌で傷を癒してくれたわけだが。
    「と、ともかくっ、終わりにしましょう。貴方が盗めるものは、もう残っていません!」
     気を取り直した御魂がこの戦闘に終止符を打つべくフォースブレイクを叩き込み、寛子も続いてご当地パワーを込めた札幌時計台キックを放つ。
     吹き飛ばされたキラキラレディーに巻き付き切り裂くのは、岬のウロボロスブレイドだ。
    「大丈夫。お持ち帰りしたいなんて思ってないわ……!」
     とのことだが、いい笑顔すぎて若干信憑性が薄い。
    「ぐぅ……っ。お手軽に宝石まみれの生活を目の前にして……!」
     岬以上に懲りていないのか、反省の色が欠片も見えぬ台詞を吐くキラキラレディーに十字の傷が刻まれていく。
     赤きオーラの逆さ十字は、雛からの哀悼の意だ。
    「貫け、氷楔っ――Keil Eises!」
     鏡花の放ったつららが杭のように刻まれた十字の中央を射貫き、モーリスのトランプを模した幾枚もの符が、悲鳴をあげて仰け反る少女の体を最期の眠りに誘う。
    「夢は夢のままに、グッナイ・レディ」
    「きらきら……全部、わたしの……も、の……」
     自称・週末美少女怪盗キラキラレディーは、こうして眠るように逝ったのだった。
    「オ・ルヴォワール……よい夢を」


    「帰りましょうか、皆さん。お店と宝石が無事で何よりでした」
     戦闘の後始末を終え、御魂が皆に声をかける。
     幸い店舗に入る前だったので被害はなく、駐車場にもさほど荒れた形跡はなかった。
    「それにしても……怪盗というには、随分とお粗末すぎたわね」
     帰路の途中に落とされた鏡花の呟きに、岬が頷きを返す。
    「なんか黒歴史っぽいセンスだったしねぇ……」
     つい可哀想なものを見る目になってしまう二人とは別に、呆れだけではない感情を抱くのは寛子だ。
    (「キラキラレディー……道を踏み外さなければもしかしたら……」)
     あの目立ちたがりと欲望を別の方向へ向けていたら……と考えかけ、やめておこうと首を振って考えを振り払う。
    「もしまた生を受けることがあれば、その時こそ真の怪盗になってもらいたいものだ」
     同じ『もしも』を考えながら、全く別方向のことを口にするのはホームズだ。
     それを元の穏やかな口調に戻ったギュスターヴが窘める。
    「聖書にもあるよ。『あなたは盗んではならない。またすべて隣人のものを貪ってはならない』って」
    「生まれ変わっても、あの方には難しい気はしますがね。ケハハ」
     悔い改めよ、Amen――とギュスターヴが祈る横で笑うモーリスの手には、キラキラレディーの仮面がきらりと光っていた。

    作者:江戸川壱号 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年5月29日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 3/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 13
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