広い空間。
迷宮とは反対に、どこまでも広がる空間は、開放感を感じさせる。
石畳の通路の両側は柱が天井まであり、全体に闇が強い中では、見通せない程。
通路の奥には台座。
そのちょうど中央には金と銀で彩られた玉座がひとつあり、脇にはサイドテーブルが置かれていた。
迷宮の主、浅黄・菜摘はその玉座に座り、テーブル上にある迷宮の箱庭にアンデッドを配置していく。
シンプルなデザインのワンピースを身に纏い、長く白い髪を乱暴に掴む。
もう誰もあたしを指さして笑わせない。
パパは綺麗な髪って言ってくれたのに。
白雪のようだね、って。
新しいママが来て、あたしの事なんてどうでもよくなっちゃった。
あたしを見捨てたんだ。
だったら、あたしもパパも見捨てる。
あたしの事を笑った奴もみんな、みんな……!
全部見捨てやるわ。
そして、あたしを否定した世界を壊すの。
「トラップも造って、近づかせないようにしなくちゃ」
人形を摘む手は水晶化し、肘掛けに手をつくもう片方の手も同じく水晶化していた。
台座の四隅にある燭台の炎が、水晶をゆらりと煌めかせる。
誰もあたしに近づかないように。
誰もあたしに触れないように。
全て切り捨てて、無かった事にするの。
菜摘の表情は虚ろだ。
孤独の殻に閉じこもって、誰の手も待ってはいない。
自分で造った小さな世界に満足していた。
自由自在に作り替えられる世界。
やがて作り慣れてきたら、あたしの望む世界に飲み込んでやるわ。
「もっと凝ったのも考えたいけれど、何も無いよりは良いわ」
そう言って、菜摘は自分の元に到達できないように、エリアを区切る扉を設置しおえた頃、招かれざる客がやってきた。
「誰……!?」
まだまだ改良の余地のある迷宮なのに。
配置したアンデッド達が打ち倒されていく。
動揺して居る間に、招かれざる客はトラップの扉も突破して、もうすぐそこまで来ていた。
思わず菜摘は玉座から立ち上がって、門を越えてやってくるであろう敵を見据えた。
装飾の施された門が、通路の奥に見える。
両側には等間隔に柱があり、回廊か城の謁見の間へと続く通路を歩く。
先を行くのは、九条・風(紅風・d00691)のライドキャリバー、サラマンダーと橘・蒼朱(アンバランス・d02079)のビハインド、ノウン。そして、鏑木・カンナ(疾駆者・d04682)のライドキャリバー、ハヤテの3体が先行している。
「ようやくって感じか」
風が閉じ込められている感覚から、あと少しで解放されると分かると、表情が僅かに柔らかくなった。
長い通路の果てにある扉の前に立つ。
「あと一仕事頼むよ」
蒼朱は信頼の込めた眼差しを相棒の方へと向けた。
何もない門だが、奥は揺らめくオーロラの様に見通せない。
「……オーロラカーテンを抜けたら、ラストフロア」
エール・ステーク(泡沫琥珀・d14668)が、綺麗に例える。
「気を抜かずに最後まで戦い抜くぞ」
「無論、そのつもりです」
「ここまで来たのだ。当然だ」
立見・尚竹(貫天誠義・d02550)の言葉に、ジンザ・オールドマン(銃梟・d06183)と神崎・摩耶(断崖の白百合・d05262)が力強く応えた。
「ここまで来たんだから、最後まで行かなくちゃね」
迷宮は主を倒してクリアなんだからと、カンナが口元に笑みを刻む。
「全力出し切るだけだ」
神楽・紫桜(紅紫万華・d12837)は、使い慣れた殲術道具を確りと握りなおした。
頷き合い、次の段階へ。
門を潜り、迷宮の主と対面するのだ。
参加者 | |
---|---|
九条・風(紅風・d00691) |
橘・蒼朱(アンバランス・d02079) |
立見・尚竹(貫天誠義・d02550) |
鏑木・カンナ(疾駆者・d04682) |
神崎・摩耶(断崖の白百合・d05262) |
ジンザ・オールドマン(銃梟・d06183) |
神楽・紫桜(紅紫万華・d12837) |
エール・ステーク(泡沫琥珀・d14668) |
●戦前
眼前にあるのはオーロラの様に揺れる門。背後は今迄進んできた迷宮へと繋がる長い通路。
声を出せば良く響く。壁は土の色に似た灰褐色だが、材質的には石に近いのかもしれない。
(「何だかこの迷宮は、彼女の心の中を表してるみたいだね。高い高い壁、近づかせないための罠。彼女に何があったか分かんないけど、この場所はなんだかいて辛くなる」)
橘・蒼朱(アンバランス・d02079)は、高い天井に見合った巨大な門は、ほのかな威圧感を持って、まるで来る者を拒んでいるかの様に思えた。
浅黄の事を知れば、理解できる所もあるかも知れない。理解する姿勢を持っている目で見るのと、そうでないのでは違うと思うから。
「さァて、迷宮の主に嫌がらせでもすっかね」
リラックスした様子で、九条・風(紅風・d00691)が門を見上げる。
「本番。気合いを入れて行くぞ」
神崎・摩耶(断崖の白百合・d05262)は、凛とした眼差しを仲間へと向けた。
「最後の大勝負だよ。いくよ、相棒っ」
今回も頼むよと、蒼朱は信頼で繋がった相棒のビハインドのノウンに声を掛ける。
辿り着いた安堵感と、これから相対する迷宮の主を思い、湧き上がる緊張感と共に、揺らめくオーロラの様なカーテンを潜ったのだった。
●相対
手を伸ばせばカーテンは触れている様な感覚はなく、その場に固定され視覚化されている様だった。
ライドキャリバーのサラマンダーを先行させ、最奥の間へと至る。もし門に何か罠でも仕掛けられていれば、本隊である自分達にダメージが行かない様にという考えだ。
続々と現れた招かざる来訪者へと、迷宮の主である浅黄・菜摘は強ばった表情を浮かべ立ち尽くす。
迷宮の主の為の間は、全体的に薄暗い。壁は迷宮と同様で灰褐色なのだろうか。天井は高いのだろうが、どれ位の高さがあるのかも分かりにくい。一段、雛壇の様になっている台座の四角には主を照らす燭台。中央には金と銀で彩られた玉座が一つ。傍にはサイドテーブル。テーブルの上に乗せられているのは箱。それが、この空間にある全ての物である様だった。
浅黄も孤独だが、その身を飾る物も数少なく寂しさを感じさせる。中までは見えないが、何かそこにあるのは意味があるように思えた。
「箱庭の改良の余地はまだまだあるって事ね。排除しなくちゃ…」
小さく浅黄が呟き、眼差しに敵意を滲ませる。
「夢の時間は終わりだぜ、お嬢ちゃん。せめて夢の終わりに、全部終わらせてやるよ」
口元に笑みを刻んで殲術道具のcarbuncleの銃口を床下に向け、眼鏡の奥の瞳に不敵さを湛えたまま台詞を口にした。
(「どうしてこんなに寂しい所に住んでるのかな。罠の多さは彼女の心の壁なのかな…。残念だね、俺達にはそんな壁通用しないよ」)
蒼朱は普段無表情になりがちな面に、僅かに眉を寄せた。
「…迷宮、一寸面白かったよ。中々出来ないよね、こういう体験」
金の長い髪をふわりと揺らしロリータファッションを身に纏い、西洋人形の様なエール・ステーク(泡沫琥珀・d14668)が、何処か満足げな表情を浮かべる。
「お姫様、こんな穴倉で何かお探しですか?」
ジンザ・オールドマン(銃梟・d06183)は落ち着いた声で、立ち尽くす浅黄へと声を掛ける。
(「白い髪? 僕には大半が水晶に見えますが。もう気付いてもないのですかね」)
浅黄の髪色がその白い色だけではなく、透明感を湛え煌めいて見えた。
「世界を壊すって思っておきながら、迷宮作って引き篭ってんのかよ」
神楽・紫桜(紅紫万華・d12837)は焚き付ける様に、挑戦的な青い瞳を向ける。
「誰も辿り着けない様にしたのに、どうして…」
警戒心を露わにする浅黄。
「俺ァ性格悪くてなァ。誰にも触れられない、触れない白雪のような人生なんざある訳ねェんだよ。鼠の巣穴みてェなとこで引き籠ろうが、な」
無垢で居られるはずもなく、様々な出来事に触れ、形作られるものだろうと風は思うのだ。それを口にしたとしても、浅黄には理解できるとは思っては居なかったが。
「生憎と『首』でしたら、僕達の仲間がもう確保していますけど」
「何の事を言ってるの?」
ジンザの偽情報に浅黄は分からない事を言われて、不快そうな表情を浮かべた。
浅黄自身は、この場にいる事の意味など気にはしていないのだろう。見捨てられたと思い、自分には味方のひとりも居ないのだと思い込んでいたから。
年齢よりも大人びた容姿と考えを持つ立見・尚竹(貫天誠義・d02550)は、ふむと頷くと、自身の考えを紡ぐ。
「貴女がこの迷宮を作った理由は色々あるのだろう。その理由を否定する事は出来ない。ただ、この迷宮を作る事に拠って、貴女はこの世に害を成す存在と成ってしまった。この様な所でひとりで篭っても致し方あるまい? 人はひとりでは生きられないものだ。願わくば考え直して、この様な愚挙を辞めて欲しいのだが…出来ないだろうか?」
「あたしはあたしのしたい様にするの…! あたしの事、笑いに来たの?」
「…私は笑わないよ、白い髪。雪みたいで綺麗だと思うから。価値観なんて、人それぞれ。例え今は言う事が違っても…、その時に貰った言葉で自分がどう思ったか、それが大事なんじゃない?」
否定よりも受容されていれば、浅黄も迷宮の奥に引っ込んで居なかったのかもしれない。
エールは純粋に思った事を口にする。偽りの思いは、すぐに見透かされてしまうだろうから。
外へ向いたアンテナは敏感で、浅黄の頑なな心に反発を生む。
鏑木・カンナ(疾駆者・d04682)は、ライドキャリバーのハヤテを前に出し、浅黄の傍にある箱庭に目を向ける。
遠目で確りとは捉えられないが上側が見えた。自分達が抜けてきた迷宮と似た作りをしているようだ。その箱庭に興味を惹かれたのは、迷宮を抜けるのに楽が出来たらと思ったからだ。
(「箱庭の壁を弄ったら帰り道が一直線になってくれたり…はしないわよねえ。やっぱ純粋に屍王の能力に拠るもんなのかしら」)
若干、残念そうに箱庭から視線を外した。
「貴女を大切に想い、必要としてくれる人は必ずいるはずだ。居ないというのなら、俺がその人になろう。それで如何か?」
真摯な眼差しを尚竹は浅黄へと向ける。
「…あたしは、もう誰も求めない」
拒絶する浅黄の言葉と仕草。
水晶化した手を握りしめ、かしゃりと音を鳴らした。
「貴様、親に付けられた名はあるのか?」
白髪の浅黄に、黒髪の摩耶が問う。漆黒の瞳に浮かんでいるのは純粋な興味だ。
「…菜摘」
「菜摘、というのか。良い名だな」
名付けてくれた親がいるのだなと、摩耶は長い髪を背へと流し、微笑を浮かべた。
「てめェの過去に何があったかなんて興味ねェよ。幾ら、悲痛に満ちた昔話があろうがてめェはこ此処で終わるんだ」
風の乱暴な言葉に、浅黄の肩がびくりと揺れた。
そして下を向いていた顔をあげ、浅黄は泣き出しそうな表情で、感情のままに吐き出す。
「あたしの気持ちを拒絶する世界なんていらない。あたしの望む世界に変えてやるんだから…! それまで力をつけて籠もって居たかったのに、どうして来たの!」
「強大な気を纏ってはいるが、ほんの小娘。余り刺激するな。この手の娘は、逆上し易い」
浅黄の感情の変化に注意を向けながら、摩耶が喚起する。
「迷宮を拡大していくつもりだったって事か?」
紫桜が冷静さを湛えた声音で問う。
「そうよ。もっともっと作り慣れたら、トラップも沢山作れたわ」
こんな簡単に辿り着ける筈なんて無かったのよ、と悔しさを滲ませて呟いた。
初めての迷宮作りで試行錯誤している最中だったのだろう。
逆に攻略する側であった自分達は、迷宮作成能力が上がっていなかった事もあり、大した損害もなく辿り着けた。
「…そうか。出来ぬならば、貴女を斬らせてもらう」
(「さようなら、俺と同じ髪の色で俺とは違う美しい髪のひと」)
尚竹は重い溜息をひとつつき、決別をする。
「この子が迷惑かけちゃう前に、早く終わらせよう」
早く終わらせて、蒼朱は浅黄を全てから解放してあげられればと思う。
話をしても、浅黄の頑なな心を解きほぐすことは出来ないのだと分かると、完全に戦闘へと移行した。
●その手を振り払って
「俺達がお嬢ちゃんにしてやれんのは『全部終わらせる』それだけだ。哀れとは思わん、それがてめェで選んだ道だ」
覚悟を決めろと風が、浅黄に突きつける。
「引き篭ってるまんまなら害はないかもしれないが、何かしようってんならその前に潰すだけだ」
元に戻れないのなら、倒すしかないと、紫桜は怜悧な面に厳しさを見せる。
(「確かに辛い事もいっぱいだけど、楽しい事もあるよ。一緒にここから出る事出来るのかな。出来ればいいな。…心だけでも」)
蒼朱はこんな暗い場所で独り取り残して行くのは、痛ましいと感じていた。
●頑なな心
玉座の傍に立つ浅黄へと摩耶は静かに歩み寄る。胸に抱くのは守護者としての誇り。花弁にも見える盾を左手の甲に展開させた。
「後ろの主人達を、頼むぞ」
守りを受け持つのは、摩耶の他はサーヴァントのサラマンダー、ノウン、ハヤテの3体。攻め手は尚竹とジンザ、紫桜。阻害役は風。狙撃役はエール。癒し手は蒼朱とカンナ。
彼我の距離は浅黄との心の距離の様。咎人の大鎌を強く握り、横薙ぎに振るう。その黒い波動は守り手、攻め手達に襲い掛かる。
浅黄が幾ら強くと唯一人。心を揺らされ、怒りに染めて向かってくる姿は何処か憐れさを感じさせた。
風のブレイジングバーストがcarbuncleの銃口からばら撒く様に斉射し、サラマンダーが機銃掃射を行う。カンナは自身の周囲に旋回させているシールドリングから分裂させ、尚竹の守りの盾とする。ハヤテはフルスロットルで受けた傷を回復。紫桜は千鳥十文字槍に回転を加え鋭い切っ先で穿つ。ジンザは摩耶と共に浅黄に近くある仲間へとWOKシールドの守りの力を拡大した。蒼朱はまだ仲間が癒しを必要としていないと把握すると、手にした咎人の大鎌を振るい、死の力を現出させる。ノウンが蒼朱の意を受け、身体を青白くさせるとその身から霊撃を降らせた。エールは魔力を抱いたマテリアルロッドでめいっぱい殴りつけ、尚竹は通天撃螺旋槍に捻りを加え、鋭き刃で穿つ。
浅黄は集中する攻撃に、半ばやけになった表情を浮かべ、傷ついた身体を晒す様に段を下りた。無数の刃を出現させ、団結力を見せる尚竹達へと降り注ぐ。自身を癒すよりも、自身も周り全てを傷つける事を選んだ様だった。
それでも戦いの手は緩めない。互いの思いは交わる事は無かったのだから。
徐々に傷ついて、乱れて行く浅黄は孤独な思いを抱えたまま堕ちて行く様。
幾度か刃を交えながら、もう少しだと見た目にも分かる様になった時、室内を見渡し、悔しさを噛みしめ睨みつけた。
風がcarbuncleで蜂の巣にすべく斉射し、サラマンダーは突撃していく。カンナがバイオレンスギターを掻き鳴らし力沸く音色を奏で、ハヤテは自身の回転率を上げ回復した。
紫桜は槍を取り落とした振りをし、下方から拳を炎で包み繰り出す。
「しまった…! …なんてな」
摩耶とジンザはアイコンタクトで頷き合い、摩耶がジンザに守りの力を与えると、そのまま浅黄に接近。ガンナイフの刃を煌めかせ、零距離格闘を仕掛けた。間近にある顔に浅黄の表情が固まった。
蒼朱は死角から刃を繰り出し切りつけ、ノウンが霊障波で援護する。
エールは細身には重そうに見える無敵斬艦刀を手に、見た目に似合う重い一撃を叩き込んだ。
「さらばだ! この一太刀で決める 我が刃に悪を貫く雷を 居合斬り 雷光絶影!」
尚竹は真打・雷光斬兼光を鞘から抜刀し、鋭い刃を繰り出した。
浅黄が倒れる。
全てを投げ出す様に、その身が石床にぶつかり跳ねるのを空虚な眼差しで、此処には未練も何も無くなったとでも言う様に。
全てを投げ出して、何もかも諦めたのかも知れなかった。
●迷宮の主の最期
浅黄が倒れ、迷宮全体が鳴動し始めた。
「…可哀想な娘だ。一本の矢は折れやすい。まして、水晶では、な」
摩耶は目を伏せる。
「さようならお姫様。忘れない事が、せめてもの手向けでしょうか」
自分流の別れをジンザはする。記憶に留めている者が居れば浅黄も寂しくはないだろう。
「…もっと、貴女は世界を見るべきだったんじゃないかな。こんな狭い箱庭に、閉じこもっていないで。そうしたら戦わないで済んだんじゃないかなって。今更…かもしれないけれど」
(「結果的に私達が貴女の前に現れられた事、それはまだ完全に世界を拒んでいなかった証だと思っても良いのかな…」)
他者と関わらずに生きる事は難しい。エールは、浅黄自身がもう戻る事が出来なかったから、対峙する事になったのかも、と考えてしまう。
「彼女に纏わる物は何も残っていないんだな。自分自身だけしか無かったのか」
紫桜は浅黄の私物でもあれば、縁者へと届けられたらと思っていたのだが、何もないようだった。後味の悪さを感じてしまうから。
(「屍王に堕ちる者にも、色々理由があるという事か。ダークネスは熟々心の闇を捕える事が上手いものよ。活人剣の道は険しいな…」)
何事も精進が必要だと、尚竹は内心で呟く。
「しかし、帰りもあの迷路を通って帰るのかと思うと若干うんざりだわ。改めて地図で最短ルートを確認しなくちゃ。…ハヤテに乗って戻りたいわね」
カンナは迷わない様に戻るのは面倒だと感じていた。ハヤテに乗って楽をしたいと思う位に。
主の居なくなった迷宮は、崩壊を始める。小さな揺れだったものも、徐々に大きくなり壁が剥落し始める。
「崩壊してしまう前には脱出しないとやばいね…!」
崩壊を始めた最奥の間を抜けると、迷宮の壁も崩落を始めていた。
カンナはハヤテに瓦礫の少ない道を選ばせながら、後を追う。
天井に亀裂が入り、重さに耐えきれず落下が始まれば、後は瓦礫の雨。瓦礫となった壁を踏み越えて駆ける。
「落下物に気をつけろよ」
紫桜は、細かな瓦礫を腕で弾く。
天井迄あった壁が倒れてきたり、落下してくるのに巻き込まれるのは避けたいもの。最後は互いの存在を認識して、脱出するのが精一杯で、崩落する壁や天井の轟音をBGMに迷宮の中を駆け抜けたのだった。
●綺麗な夜空を見上げて
「っあー…! やっと…! 外、だ! とりあえず風呂と飯だ、飯。なァ、何か食って帰ろうぜ」
風の解き放たれて浮かれた声が空に響く。
身近にある空に安堵の表情を浮かべる仲間に、カンナは笑みを浮かべる。
「随分長い道のりだったし、できればゆっくりと労わり合いたい所だけど、まずは開放感と空腹を満たして休息を取らなくちゃね」
食欲を刺激され、皆の思考が食べ物へと向かう。
今日はきっと、ぐっすりと眠れるだろう。
作者:東城エリ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年6月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 8
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