オクタマンシュヴァンの奥多摩湖探検隊

    作者:日向環


     机の上には手動式の蓄音機。その上には、塩ビのレコード。
     くるくるくるくる回すと、ロシアの作曲家の手によるバレエ音楽が流れてくる。白鳥がなんとかってやつである。
     しばし聞き入っていたが、やがて、
    「こっこれは!?」
     驚きの声を上げる。
    「これは、我が愛しのゲルマンシャーク様からのメッセージ! オクタマンシュヴァーン。しかと、メッセージをお受け取り申した。お任せ下さい、ゲルマンシャーク様。このオクタマンシュヴァン。必ずや、御身をお捜し致します」
     決意を込め、すっくと立ち上がるオクタマンシュヴァン。しかし、その勢いで机が倒れ、床に落ちた蓄音機が無残な姿になる。
    「いいいいかん! メッセージを受け取ったら直ちに離れねば、爆発に巻き込まれる!」
     大慌てで外に出るオクタマンシュヴァン。大急ぎで配下を掻き集めると、いそいそと奥多摩湖へと向かう。
    「……見つかった?」
    「いえ、オクタマンシュヴァン様。観光客が邪魔で……」
    「観光客が邪魔だったら、追っ払っちゃいなさい! 『ツキノワグマ出没注意!!』の立て札でもしとけば、近付かないわよっ」
     因みに、この奥多摩湖畔は本当にツキノワグマが生息している。
    「とにかく! 邪魔者は追っ払えば良いし、邪魔な物は壊しちゃえばいいから、さっさと捜索なさい!」
    「あいあいさー!」
     手下達を送り出したオクタマンシュヴァンは、ぷかぷかと湖に浮かびながら居眠りを始めた。
     

    「えっとね。ドイツ風味の変なご当地怪人を見付けちゃった」
     木佐貫・みもざ(中学生エクスブレイン・dn0082)は、例によってタブレットPCから情報を引き出す。
    「怪人の名前は、オクタマンシュヴァン」
     アクセントは「オ」に付くらしい。ちょっと言いにくい。
    「シュヴァンってドイツ語で白鳥って意味なんだって」
     そのオクタマンシュヴァンが、奥多摩湖に出現し湖畔周辺を荒らし回っているという。
    「でも黒いんだよね。『白鳥』のくせに」
     黒い白鳥らしい。恐らく、ドイツにかぶれていないオクタマンは白いのだろう。
    「何が不満なんだか分からないけど、暴れ回って近くのログハウス壊したり、観光客を脅したりしてるみたいなのよね、主に配下の人が」
     ツキノワグマの着ぐるみを着て、観光客を襲ったりもしているらしい。
    「オクタマンシュヴァンの特徴なんだけど、ええと、ええと……」
     ちょっと赤面するみもざ。何か言い淀んでいる。が、意を決して口を開いた。
    「こ、こ、股間からにょきっと白鳥の首が伸びてるのね。で、スカートっぽく白鳥の羽が広がっていて、お尻は白鳥のお尻そのまんまな感じ。全体的なシルエットはバレリーナね。にょきっと突き出てるご立派な白鳥の首を除けばっ」
     一息で言い切った。
     その昔、こんな姿でコントしていた人がいたような気が……。東村山が何とかとか。
    「ようは変なおじさんね」
     男なのかよ。
    「配下はイケメンダンサーだよ。全部で7人。通称ドラム缶橋の辺りで観光客の皆さんが襲われてるから、颯爽と登場して、観光客の皆さんを救ってあげてね」
     水中に浮かぶ赤いドラム缶で橋を支えている、奥多摩湖名物の浮き橋である。
    「ドラム缶橋での戦闘になるから、湖に落ちちゃった時の対策も考えていた方がいいかも」
     一度落とされると、戻ってくるまでちょっと時間が掛かるらしい。
    「オクタマンシュヴァンは、シュヴァントゥーキック、オクタマンビーム、オクタマンダイナミックに加えて、白鳥突っつき斬と、シュヴァンシールドを使ってくるよ」
     配下のイケメンダンサー達の攻撃は「イケメンフラッシュ」。女性に対しては【石化】の効果があり、男性に対しては【怒り】の効果かあるという。
    「あ、そうそう。なんかね、この怪人さん『ゲルマンシャーク様はいずこー』とか叫んでたって話だよ。似たような事件が、他にも発生してるみたい」
     どうやら、第二回ご当地怪人選手権の後、行方不明となっているゲルマンシャークの石像を捜しているらしい。
    「あっちこっちで捜してるから、確実に居場所が分かってるってわけじゃないっぽい。でも、もしかしたら、奥多摩湖に沈んでるかもしれないから、一応警戒はしておいてね。ゲルマンシャークと遭遇しちゃった場合は……とにかく逃げの一手だね。あんまり長い間は動けないみたいだから、全力ダッシュで逃げればなんとかなると思うよ?」
     まるで他人事である。
    「そんじゃ、頑張ってきてね!」


    参加者
    座草・悠(歩き出す現実・d00224)
    ロロット・プリウ(ご当地銘菓を称える唄を・d02640)
    宮森・武(高校生ファイアブラッド・d03050)
    皇・銀静(中学生ストリートファイター・d03673)
    ホセ・ロドリゲス(マカロニ肉弾列車・d10060)
    マリー・レヴィレイナ(千星一月・d11223)
    マイア・トーグ(マジカルストライカー・d16515)
    浦原・嫉美(リア充爆破魔法使い・d17149)

    ■リプレイ


     正式名称・小河内貯水池――それが奥多摩湖である。東京都西部を流れる多摩川を小河内ダムで堰き止めて作られた人造湖である。
     湖畔は緑を多く残し、様々な見所や観光施設がある言わば首都圏のオアシスとも言うべき場所である。
     通称ドラム缶橋は、その名の通り以前はドラム缶を使用した浮き橋だったが、現在は樹脂製のタンクに代わっている。
    「オクタマンシュヴァン様、また観光客が渡ってきます」
    「追い返しちゃいなさい」
     湖の上にぷかぷかと浮いているオクタマンシュヴァンに、ドラム缶橋の上からイケメンの1人が報告すると、面倒くさそうに怪人は答えた。
     人間の上半身さえ見なかったことにすれば、白鳥が優雅に泳いでいるようにも見える。色は黒なのだが。
     実際は立ち泳ぎをしていると思われるので、けっこう大変そうだ。時折湖に潜っているのは、湖底に沈んでいるかもしれない「あるもの」を探しているからなのだろう。
    「ママー。湖に変な人が浮かんでるー」
    「しっ。見ちゃいけません」
     確かに教育上色々な意味でよろしくない。
    「アタシは忙しいんだから、誰も近づけちゃダメよ」
    「あいあいさー」
     何も知らずにドラム缶橋を渡ってきた観光客の皆様を、7人のイケメンダンサー達が襲撃する。1人はツキノワグマの着ぐるみを着ていた。
    「ここはツキノワグマ様の縄張りだー」
    「帰らないと、食べちゃうぞー」
     ドラム缶橋は浮き橋なので、故意に揺らそうと思えば揺らすことができる。7人のイケメン達は、橋の上で暴れて橋をぐらんぐらん揺らし始めた。
     いわゆる、単なる嫌がらせである。
     帰れと言われても、こんなに揺れた状態の橋の上をまともに歩けるはずもない。観光客の皆さんは、橋の上でオロオロするばかり。
     その時、どこからともなく声が響く。
    「待ちなさい!」
    「そこまでです!」
     凜とした声。
    「このような狼藉…許しはしませんよ!」
     皇・銀静(中学生ストリートファイター・d03673)とマイア・トーグ(マジカルストライカー・d16515)が、ドラム缶橋の上を岸の方から駆けてくる。因みに、マイアはピンクのビキニ姿だ。湖に落ちた時の対策に、である。
    「悪事はそこまでだ! ドイツかぶれめ!」
     手すりの上に立ち、ズビシィと7人のイケメンダンサーに人差し指を突き付けつつ、格好良く登場したのは宮森・武(高校生ファイアブラッド・d03050)だ。
     アップテンポのカッコイイ曲が流れてきて、雰囲気を盛り上げる。演奏しているのはロロット・プリウ(ご当地銘菓を称える唄を・d02640)だ。やはり演出は大事だ。
    「奥多摩の地に舞い降りた救世主、座草悠! ただいま参上っ! …一度やってみたかったんだよねー」
     びしーっと足を上げたポーズを取る座草・悠(歩き出す現実・d00224)。スカートスカート! 今日のあなたはスカートでしょっ。
    「さあ、こっちです」
     マリー・レヴィレイナ(千星一月・d11223)が、ナノナノのりんたろうと共にさりげなく観光客を誘導する。たぶん、環境客の皆さんからは、悠のスカートの中身は見えなかったはずだ。
    「ママー。また変な人たちがー」
    「しっ。見ちゃいけません!」
     助けにきてくれた人たちに対してそれは失礼だとは思うが、ある意味致し方ない。人知れず悪と戦う。それがヒーローの醍醐味だ。
    「あとのことは、ミーたちに任せるのデース!」
     小河内神社付近から全速力で駆け付けたホセ・ロドリゲス(マカロニ肉弾列車・d10060)が、一般ピーポーたちに向かって叫ぶ。
    「ハーリィ! ハーリィアップして逃げてくだサーイ! 慌てて騒がずゆっくりせかせか逃げてクダサーイ!」
     うーん、日本語難しい。
     観光客が慌てて騒がずゆっくりせかせかと岸に辿り着いたのを確認すると、浦原・嫉美(リア充爆破魔法使い・d17149)は殺界を形成する。
    「へ、変態よ! 変態怪人が居るわ! …ダンサーたちはイケメンすぎて物凄く嫉ましいけど、怪人は色々最悪ね! この嫉妬パワーを捻じ込むわ!」
     なんか、物凄いオーラを感じる。
    「な、なんだお前たち!?」
    「オクタマンシュヴァンさまー」
     落ち着いて避難している観光客の皆様に対し、イケメン達は半ばパニック状態である。ちょっと情けない。
    「なによ、あんたたち!? アタシのお仕事の邪魔する気?」
     ばしゃあっと勢いよく湖からドラム缶橋に跳躍してきたオクタマンシュヴァンが、つま先立ちしてくるくると回る。もちろん、バレリーナのつもりである。男だけど。
    「変態怪人の好きにはさせません!」
     こんな変態直視したくないと、マイアは思わずぎゅっと目を瞑った。
    「さあ、あんたたち。踊るわよっ」
     変態扱いされているにも関わらず、オクタマンシュヴァンは何かはりきっちゃってる。
    「あいあいさー」
    「ちゃっちゃちゃちゃ、ちゃっちゃ、ちゃっちゃっちゃー♪」
     メロディーをくちずさむオクタマンシュヴァン。ひらひらと踊り始める。
    「オ、オクタマンシュヴァン様。それはくるみを割る方です…」
    「あ…」
     曲を間違えたらしい。恐らく、湖の上で白鳥が戯れている曲をくちずさむつもりだったのだろう。選曲を間違えるなど、バレリーナにあるまじき失態。
    「って、そんなのはどうでもいいのよっ。とくかく邪魔者は…成敗!」
    「あいあいさー」
     ようやく戦闘を始めることができるらしい。


    「ここからはボク達灼滅者が相手になるよ!」
     妙な茶番を垂れ流されて、ちょっと呆気に取られていたが、悠はぐっと身構えた。
     ダンスにはダンスを。ロロットが情熱的なダンスを披露する。
     3人のイケメンが、アホ面して鼻血を流している。
    「あら、素敵なダンス♪」
     オクタマンシュヴァンも拍手喝采。ツキノワグマもポコポコと手を叩く。
    「ツキノワグマのコスプレはちょっと似合わないよぉ」
     悠が指摘した。
    「…だよね」
     どうやら自覚はあったらしい。いそいそと着ぐるみを脱ぎ始めるイケメンの1人。
    「いけめんわあああああああ! みなごろしだあああああああああああ!」
    「ちょっ。まだ準備ができてな…」
     背中のファスナーを下したところへ、武がレーヴァテインをお見舞いした。
    「ほぎゃっ」
     早速1人離脱。
    「イケメンにうまれたことおおおおお! それがきさまのつみだあああああ!」
    「卑怯だぞ! まだ準備中だったというのに」
    「卑怯もへったくれもねえええええ!」
     抗議するイケメンたちを、武はばっさり切り捨てた。
    「おのれぇ。皆、負けるな!」
    「おう! イケメンこそ正義! 故に、正義は必ず勝ぁつっ!!」
    「ゆくぞ必殺! イケメンフラぁぁぁーーーッシュ!!」
     きらりらりん☆
     輝けるばかりのイイ笑顔。白い歯がキラリ。彼らの背後には、薔薇園が幻影のように浮かぶ。
     6人がそれぞれ分担して放ったものだから、この場にいた者全員がフラッシュを浴びてしまった。
    「べ、別にどうって事ないです!」
     まともに見ちゃったマイアが、思わず頬を赤らめた。
    「おのれイケメン」
     嫉妬しつつも、嫉美の体が徐々に石化。
     男女比3:5。圧倒的にこちらが不利かと思われたが、
    「むー!」
     りんたろうがちっちゃなお手々で、イケメンのほっぺたをひっぱたいた。そう。ナノナノのりんたろうは男の子なのだ! なので、男女比は4:5だ。
    「がんばって、りんたろ!」
     マリーの声援を受けて、俄然やる気のりんたろう。お嬢様の為なら例え火の中水の中と、獅子奮迅の活躍…あ、湖に落とされた。「奥多摩湖と周辺は、かつての小河内村デース。総貯水量1億8000万トンの首都圏のウォータージャー(水瓶)を狙うトハ、許せまセーン! ちなみに、今のシーズンは新緑を楽しみマース!」
     うがーっとばかりに、バトルオーラで奥多摩名物わさびの根のようなスタイルを描きながら突進したホセは、イケメンの首根っこをむんずと掴むと、そのまま湖に投げ落とした。
     銀静はイケメンに蹴りを入れて湖に叩き込むと、オクタマンシュヴァンの眼前に躍り出る。
    「もっと穏便にすればいいものを…急ぐ理由でも?」
    「何のことかな?」
     オクタマンシュヴァンは惚ける。
    「彼のげるまんしゃーくさんが居るかもしれない湖。分かっているのですよ?」
    「ななななぜそのことを!?」
    「あったのですか? なかったのですか?」
    「まだ探索中よ!」
     ドン!
     オクタマンシュヴァンは銀静を湖に突き落とす。
    「なんの!」
     二段ジャンプで落下を回避しようとする銀静。ぎりぎりで手摺の上に着地。
    「とととっ」
     でも、ちょっとバランスを崩した。
    「ちょん」
     そんな銀静の脇腹を、オクタマンシュヴァンがちょんと突く。
    「ちょっ。くすぐった…!」
     ドボン!
     落ちた。
     湖に落ちたりんたろうと銀静を、イケメン達が嬉々とした表情で棒で突き始めた。良いのは顔だけで、正確はかなりひねくれているやつらだった。
    「つかまってくだ…」
     手を伸ばしたマイアの背中を、口笛を吹きながらオクタマンシュヴァンが押す。バランスを崩して湖に落ちるマイア。
    「うりうりうり」
     イケメンが棒で突っつく。味方を助ける気なんざ、ミジンコほども考えていなさそうだ。
    「イケメンも変態も敵よー!」
     湖に落ちた者たちを突っつくことに夢中なイケメンを、嫉美が嫉妬のパワーで撃退する。
    「がんばるのよ、みんなっ」
     オクタマンシュヴァンは腰の羽を広げ、お尻をふりふりして配下を応援。
    「この怪人微妙に存在感が薄いような気がするぜ…」
     怪人に気の毒そうな視線を送る武。見た目のインパクトは凄いが、存在感はイケメンたちの方があるような気がする。
    「これも何もかも部下のイケメンが悪いのだ。イケメン許すまじ、マジ殲滅するのみ!」
     武が無防備なイケメンの背中に蹴りを入れ、湖に蹴り落とした。 悠が銀静を助け出し、
    「うう、性格はブサイク揃いじゃないですか…っ!」
     ロロットはマイアを救出する。湖面であっぷあっぷしていたりんたろうは、マリーが救助した。
     その間、ホセがイケメン1人を血祭りにあげた。
    「寒くなったら湖に飛び込むといい…カモ」
     りんたろうを救助したマリーが逆襲。 お互いのフォローがまるでなってないイケメン達が全滅するのに、さほど時間はかからなかった。
    「アタシの可愛い下僕たちを、よくも苛めてくれたわねっ」
     黒い白鳥の首をぶんぶんと振り回しながら、プンプンと怒る。
    「何て格好してるんですかー!? 誰か、その鳥さんの首、もいじゃって下さい!」
     いくら白鳥(黒いけど)の首とはいえ、股間からにょきっと生えているものを直視するのは辛い。マイアは目のやり場に困っている。いや、黒いから余計に見苦しい。
    「…男のヒトなのに、どうしてバレリーナの格好してるの? ホントに男のヒト?」
    「男がバレリーナの格好しちゃいけないって言うの!? 差別よ! 男女差別反対!」
    「女のヒトみたいな言葉遣い…」
    「男が女みたいな言葉を…以下同文」
     マリーの疑問にことごとく反論するオクタマンシュヴァン。
    「格好も白鳥の首が付いてて、よく見るとバレリーナじゃないカモ…。…ワタシにはよくわかりマセン…」
     マリー、諦めた。
    「カモ、カモって、アタシは白鳥よ!」
     黒いくせに大威張りである。
    「つーかなんでイケメンを部下にした…お前のぶちのめす!」
     武の怒りの矛先は、イケメンを従えていたオクタマンシュヴァンに変更になっていた。レーヴァテインが直撃。
    「あつあつっ」
     飛び跳ねながら熱がるオクタマンシュヴァン。暴れるものだから、ドラム缶橋が揺れる揺れる。ついでに黒い白鳥の首も揺れる揺れる。
    「反撃なのよっ」
     ぎゅいーーーんと白鳥の首が伸びた。
    「いやー!? それだけはやめて下さーい!?」
     標的となったマイアは半泣きである。直接のダメージより、精神的なダメージの方が高そうだ。
    「パッド、パッド」
     ぼそりと、ロロットが耳打ち。
    「!?」
     ふたつの膨らみを上手に盛った秘密兵器が、攻撃を受けた拍子にずれてしまったらしい。
    「ぱっど?」
     男子が反応する。どんな状況であれ、こういう類は聞こえてしまうのが男子たるもの。
    「そんな白鳥の首なんて、ちょんぎっちゃうんだからね!」
     悠の体が死角に回り込む。影が残像を伴って、刃の如く走る。
    「はぎゃっ。アタシの大事なところがっっっ」
     悠のティアーズリッパーによって、もげかかった白鳥の首を白鳥の盾で撫で撫でしながら、オクタマンシュヴァンは修復を図る。
    「メンチコフ・ダイナミック!!」
     ロロットの必殺技が、風前の灯だった白鳥の首を切り落とした。
    「シャルトルの郷土菓子よね。って、白鳥様の首がぁ!! ひどいわ、ひどすぎるっ」
     さめざめとなくオクタマンシュヴァン。さめざめと泣いたからといって、ゲルマンな鮫様が助けにきてくれるわけでもない。
    「ええっと…。あの白鳥の頭、真っ先に落としてみたかったですよね。色々な意味で。…色々です」
     ちょっと頬を赤らめるロロット。だが反省はしていない。
    「股間の白鳥が白から黒に変わった時点で貴様の負けはきまっていたのだ! 自分が白鳥であることを見失った愚か者め! 貴様の心をおってやろう股間の白鳥と同時にな!」
    「が、がーーーん!!!!」
     武の言葉に、オクタマンシュヴァンは激しいショックを受けたっぽい。
    「みんなしてアタシのことを苛めるのねっ。シュヴァントゥーキーーーック!!」
     トゥーシューズを突き立て、ホセにキックを浴びせた。
    「オゥ! この辛さデース! やはり山の恵みわさびごはんの素に限りマース! って、痛いデース」
     暇だったので持参していたライスボールに、「山の恵み わさびごはんの素」をかけて食べていたホセのお腹に、オクタマンシュヴァンの爪先が食い込んだ。「嫉妬ビーム! こっち来なさい!」
     なんか自分が無視されているようで腹が立った嫉美が、嫉妬のビームを放つ。
    「我が全霊! 我が魂! その身に刻みましょう!」
     銀静はだんっと地を蹴り、怪人を天より見下ろす。
    「そのまま眠れぇぇぇぇぇ!!! 」
     渾身の戦艦斬りが炸裂。
    「ゲルマンシャーク様に栄光あれぇ!!」
     オクタマンシュヴァンが絶叫しながら湖に飛び込むと、巨大な水柱があがった。


     念の為、銀静は周囲を警戒していたが、特別何も起こりそうな気配は感じない。
    「他もまだみないです」
     学園に電話して他の湖の状況を確認したロロットだったが、まだ全ての箇所の結果が届いていないらしい。
    「ここで戦うんじゃなかったら、楽しかったと思う…観光で来たいな」
     マリーはドラム缶橋は初めてだった。
    「青目立不動尊の休み処でレストしまショウ! せっかくの奥多摩湖をエンジョイしなければモッタイナイデース! ミーのおすすめは、青目しることもりそばデース!」
     ホセが仲間達を引き連れて、休み処に向かった。
    「あれ?」
     1人、湖を探索していたマイアは、置いてけぼりを食らってしまったらしい。

    作者:日向環 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年6月7日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 8
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